(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089766
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】金属屋根用換気雨押え及び金属屋根用換気雨押えの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/40 20060101AFI20220609BHJP
E04D 13/14 20060101ALI20220609BHJP
E04D 13/143 20060101ALI20220609BHJP
E04D 13/16 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
E04D3/40 U
E04D13/14 D
E04D13/143
E04D13/16 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182502
(22)【出願日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2020201533
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595133736
【氏名又は名称】株式会社トーコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】森村 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】中谷 浩史
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和彦
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AZ04
2E108CC01
2E108GG09
2E108GG18
(57)【要約】
【課題】屋根勾配が緩勾配であることが多い金属屋根であっても防水性能の高い金属屋根用換気雨押えを提供すること。
【解決手段】換気雨押え本体10と、カバー付き捨水切20とを備え、雨押えカバー部材11は、外壁の内方面に設置される壁面側カバー面材11aと、下屋根の上方に設置される屋根面側カバー面材11bとを有し、捨水切部材21は、下屋根の下方に設置される屋根面側水切面材21aと、屋根面側水切面材21aの野地開口6側の端部から立ち上げた野地開口側水切面材21bとを有し、捨水切カバー部材23は、通気開口22の上方を覆う天面側捨水切カバー面材23aと、天面側捨水切カバー面材23aから垂下させた水切カバー垂下面材23bとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母屋の外壁と下屋根との取り合い部に施工され、下屋の小屋裏空間の排気を行う金属屋根用換気雨押えであって、
雨押えカバー部材と、前記雨押えカバー部材の下方に換気通路を形成する止水板部材とを有する換気雨押え本体と、
前記下屋に形成される野地開口の上方に配置される捨水切部材と、前記捨水切部材の上方に配置される捨水切カバー部材と、前記捨水切部材と前記捨水切カバー部材との間に形成される通気開口とを有するカバー付き捨水切とを備え、
前記雨押えカバー部材は、
前記外壁の内方面に設置される壁面側カバー面材と、
前記下屋根の上方に設置される屋根面側カバー面材と
を有し、
前記捨水切部材は、
前記下屋根の下方に設置される屋根面側水切面材と、
前記屋根面側水切面材の前記野地開口側の端部から立ち上げた野地開口側水切面材と
を有し、
前記捨水切カバー部材は、
前記通気開口の上方を覆う天面側捨水切カバー面材と、
前記天面側捨水切カバー面材から垂下させた水切カバー垂下面材と
を有する
ことを特徴とする金属屋根用換気雨押え。
【請求項2】
前記水切カバー垂下面材の下端を、前記止水板部材より下方に位置させた
ことを特徴とする請求項1に記載の金属屋根用換気雨押え。
【請求項3】
前記水切カバー垂下面材の下端を、前記通気開口より下方に位置させた
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属屋根用換気雨押え。
【請求項4】
前記止水板部材と前記水切カバー垂下面材との間に形成される第1通路面積を、前記通気開口による通気開口面積より大きくした
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押え。
【請求項5】
前記捨水切部材と前記捨水切カバー部材とを板材を折り曲げて形成した
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押え。
【請求項6】
前記野地開口側水切面材の上端から軒先側に折り曲げた水返し水切面材を有し、
前記水返し水切面材の下端から更に延出させた板材に前記通気開口を形成した
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押え。
【請求項7】
前記カバー付き捨水切には、第1通気スペーサーと第2通気スペーサーとを備え、
前記第1通気スペーサー及び前記第2通気スペーサーは、前記野地開口側水切面材の長手方向の両端に形成され、
前記第1通気スペーサーは前記野地開口側水切面材より前記母屋側に突出させ、
前記第2通気スペーサーは前記野地開口側水切面材より前記水切カバー垂下面材側に突出させた
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押え。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押えを用い、
前記カバー付き捨水切を、前記外壁と前記下屋根との前記取り合い部に施工するカバー付き捨水切施工工程と、
前記下屋根に前記止水板部材を配置して前記換気雨押え本体を施工する換気雨押え本体施工工程と
を有する
ことを特徴とする金属屋根用換気雨押えの施工方法。
【請求項9】
前記換気雨押え本体施工工程では、
前記下屋根に下地木材を介して前記止水板部材を配置し、
前記屋根面側カバー面材が前記母屋側より軒先側が低位置となるように前記下地木材を選定する
ことを特徴とする請求項8に記載の金属屋根用換気雨押えの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母屋の外壁と下屋根との取り合い部に施工され、下屋の小屋裏空間の排気を行う金属屋根用換気雨押え、及び金属屋根用換気雨押えの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、下屋と外壁との接合部分に設置する換気雨押えを開示している。
特許文献1で開示している換気雨押えを、下屋と外壁との接合部分に設置することで、下屋の屋根裏の空気を屋外へ放出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下屋と外壁との接合部分は、壁あたりの雨水を受ける位置で、壁と下屋根との取り合いでもあることから漏水リスクが高い。
特に、金属屋根の場合には、屋根勾配が緩勾配であることが多いために、更に漏水リスクが高い。
【0005】
そこで本発明は、屋根勾配が緩勾配であることが多い金属屋根であっても防水性能の高い金属屋根用換気雨押えを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の金属屋根用換気雨押えは、母屋Bの外壁と下屋根との取り合い部に施工され、下屋Aの小屋裏空間の排気を行う金属屋根用換気雨押えであって、雨押えカバー部材11と、前記雨押えカバー部材11の下方に換気通路を形成する止水板部材12とを有する換気雨押え本体10と、前記下屋Aに形成される野地開口6の上方に配置される捨水切部材21と、前記捨水切部材21の上方に配置される捨水切カバー部材23と、前記捨水切部材21と前記捨水切カバー部材23との間に形成される通気開口22とを有するカバー付き捨水切20とを備え、前記雨押えカバー部材11は、前記外壁の内方面に設置される壁面側カバー面材11aと、前記下屋根の上方に設置される屋根面側カバー面材11bとを有し、前記捨水切部材21は、前記下屋根の下方に設置される屋根面側水切面材21aと、前記屋根面側水切面材21aの前記野地開口6側の端部から立ち上げた野地開口側水切面材21bとを有し、前記捨水切カバー部材23は、前記通気開口22の上方を覆う天面側捨水切カバー面材23aと、前記天面側捨水切カバー面材23aから垂下させた水切カバー垂下面材23bとを有することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の金属屋根用換気雨押えにおいて、前記水切カバー垂下面材23bの下端を、前記止水板部材12より下方に位置させたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の金属屋根用換気雨押えにおいて、前記水切カバー垂下面材23bの下端を、前記通気開口22より下方に位置させたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押えにおいて、前記止水板部材12と前記水切カバー垂下面材23bとの間に形成される第1通路面積S1を、前記通気開口22による通気開口面積22Sより大きくしたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押えにおいて、前記捨水切部材21と前記捨水切カバー部材23とを板材を折り曲げて形成したことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押えにおいて、前記野地開口側水切面材21bの上端から軒先側に折り曲げた水返し水切面材21cを有し、前記水返し水切面材21cの下端から更に延出させた板材に前記通気開口22を形成したことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押えにおいて、前記カバー付き捨水切20には、第1通気スペーサー41と第1通気スペーサー42とを備え、前記第1通気スペーサー41及び前記第1通気スペーサー42は、前記野地開口側水切面材21bの長手方向の両端に形成され、前記第1通気スペーサー41は前記野地開口側水切面材21bより前記母屋B側に突出させ、前記第1通気スペーサー42は前記野地開口側水切面材21bより前記水切カバー垂下面材23b側に突出させたことを特徴とする。
請求項8記載の本発明の金属屋根用換気雨押えの施工方法は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の金属屋根用換気雨押えを用い、前記カバー付き捨水切20を、前記外壁と前記下屋根との前記取り合い部に施工するカバー付き捨水切施工工程と、前記下屋根に前記止水板部材12を配置して前記換気雨押え本体10を施工する換気雨押え本体施工工程とを有することを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の金属屋根用換気雨押えの施工方法において、前記換気雨押え本体施工工程では、前記下屋根に下地木材7を介して前記止水板部材12を配置し、前記屋根面側カバー面材11bが前記母屋B側より軒先側が低位置となるように前記下地木材7を選定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属屋根用換気雨押えによれば、捨水切部材と捨水切カバー部材とを有するカバー付き捨水切を備え、捨水切カバー部材が水切カバー垂下面材を有し、水切カバー垂下面材を通気開口に対向する位置に垂下させているため、換気雨押え本体から吹き込む雨水が通気開口から野地開口側に侵入することを防止でき、防水性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による金属屋根用換気雨押えを示す断面図
【
図2】同金属屋根用換気雨押えに用いる換気雨押え本体を示す断面図
【
図3】同金属屋根用換気雨押えに用いるカバー付き捨水切を示す断面図
【
図5】同金属屋根用換気雨押えの施工方法を示す断面図
【
図6】本発明の他の実施例による金属屋根用換気雨押えを示す断面図
【
図7】同金属屋根用換気雨押えに用いる換気雨押え本体を示す断面図
【
図8】同金属屋根用換気雨押えに用いるカバー付き捨水切を示す断面図
【
図10】同金属屋根用換気雨押えの施工方法を示す断面図
【
図11】同金属屋根用換気雨押えの施工状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による金属屋根用換気雨押えは、雨押えカバー部材と、雨押えカバー部材の下方に換気通路を形成する止水板部材とを有する換気雨押え本体と、下屋に形成される野地開口の上方に配置される捨水切部材と、捨水切部材の上方に配置される捨水切カバー部材と、捨水切部材と捨水切カバー部材との間に形成される通気開口とを有するカバー付き捨水切とを備え、雨押えカバー部材は、外壁の内方面に設置される壁面側カバー面材と、下屋根の上方に設置される屋根面側カバー面材とを有し、捨水切部材は、下屋根の下方に設置される屋根面側水切面材と、屋根面側水切面材の野地開口側の端部から立ち上げた野地開口側水切面材とを有し、捨水切カバー部材は、通気開口の上方を覆う天面側捨水切カバー面材と、天面側捨水切カバー面材から垂下させた水切カバー垂下面材とを有するものである。本実施の形態によれば、捨水切部材と捨水切カバー部材とを有するカバー付き捨水切を備え、捨水切カバー部材が水切カバー垂下面材を有し、水切カバー垂下面材と野地開口側水切面材との間に通気開口を配置しているため、換気雨押え本体から吹き込む雨水が通気開口から野地開口側に侵入することを防止でき、防水性能を高めることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による金属屋根用換気雨押えにおいて、水切カバー垂下面材の下端を、止水板部材より下方に位置させたものである。本実施の形態によれば、止水板部材から吹き込む雨水を水切カバー垂下面材によって阻止することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による金属屋根用換気雨押えにおいて、水切カバー垂下面材の下端を、通気開口より下方に位置させたものである。本実施の形態によれば、水切カバー垂下面材によって雨水が通気開口に侵入することを防止できる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による金属屋根用換気雨押えにおいて、止水板部材と水切カバー垂下面材との間に形成される第1通路面積を、通気開口による通気開口面積より大きくしたものである。本実施の形態によれば、通気開口面積より大きな第1通路面積を、止水板部材と水切カバー垂下面材との間に形成することで、止水板部材から吹き込む雨水の流速を低下させることができ、雨水が通気開口に侵入することを防止できる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による金属屋根用換気雨押えにおいて、捨水切部材と捨水切カバー部材とを板材を折り曲げて形成したものである。本実施の形態によれば、捨水切部材と捨水切カバー部材とを同一部材で形成することで施工性が向上する。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態による金属屋根用換気雨押えにおいて、野地開口側水切面材の上端から軒先側に折り曲げた水返し水切面材を有し、水返し水切面材の下端から更に延出させた板材に通気開口を形成したものである。本実施の形態によれば、野地開口側水切面材の上端から軒先側に折り曲げた水返し水切面材によって、換気雨押え本体から吹き込む雨水は、仮に屋外からの強い風圧によって野地開口側水切面材に沿って上昇したとしても、水返し水切面材によって屋根面側水切面材に落下するため、通気開口から野地開口側に侵入することを防止でき、防水性能を高めることができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6のいずれかの実施の形態による金属屋根用換気雨押えにおいて、カバー付き捨水切には、第1通気スペーサーと第2通気スペーサーとを備え、第1通気スペーサー及び第2通気スペーサーは、野地開口側水切面材の長手方向の両端に形成され、第1通気スペーサーは野地開口側水切面材より母屋側に突出させ、第2通気スペーサーは野地開口側水切面材より水切カバー垂下面材側に突出させたものである。本実施の形態によれば、第1通気スペーサー及び第2通気スペーサーを備えることで、野地開口側水切面材の変形を防止し、野地開口側水切面材の母屋側の通路面積と、野地開口側水切面材の天面側捨水切カバー面材側の通路面積とを一定に保つことができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態による金属屋根用換気雨押えの施工方法は、第1から第7のいずれかの実施の形態による金属屋根用換気雨押えを用い、カバー付き捨水切を、外壁と下屋根との取り合い部に施工するカバー付き捨水切施工工程と、下屋根に止水板部材を配置して換気雨押え本体を施工する換気雨押え本体施工工程とを有するものである。本実施の形態によれば、カバー付き捨水切を施工してから、換気雨押え本体を施工できるため、防水性能に優れたカバー付き捨水切を容易に施工できる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態による金属屋根用換気雨押えの施工方法において、換気雨押え本体施工工程では、下屋根に下地木材を介して止水板部材を配置し、屋根面側カバー面材が母屋側より軒先側が低位置となるように下地木材を選定するものである。本実施の形態によれば、金属屋根用換気雨押えは逆勾配とならず、雨水を軒先側に流すことができる。
【実施例0018】
以下本発明の一実施例による金属屋根用換気雨押えについて説明する。
図1は本実施例による金属屋根用換気雨押えを示す断面図、
図2は同金属屋根用換気雨押えに用いる換気雨押え本体を示す断面図、
図3は同金属屋根用換気雨押えに用いるカバー付き捨水切を示す断面図、
図4は同金属屋根用換気雨押えの要部拡大断面図である。
【0019】
図1に示す構造物では、下屋Aには垂木1を斜め下方に傾斜して設けている。垂木1の上方には野地板2を設け、野地板2の上面に屋根材3が敷設されている。屋根材3は縦葺き金属屋根材である。下屋Aが隣接する母屋Bには、外壁下地材4及び外壁材5を設けている。野地開口6は、野地板2の母屋B側端部の一部に形成されている。屋根材3の母屋B側端部には、下地木材7が配置される。
本実施例による金属屋根用換気雨押えは、母屋Bの外壁と下屋Aの屋根材3との取り合い部に施工され、下屋Aの小屋裏空間の排気を行う。
図1に示すように、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、換気雨押え本体10と、カバー付き捨水切20とを備えている。換気雨押え本体10は、下地木材7に固定具30によって固定される。
【0020】
図2を用いて換気雨押え本体10を説明する。
図2(a)は組図、
図2(b)は分解図である。
換気雨押え本体10は、雨押えカバー部材11と、雨押えカバー部材11の下方に換気通路を形成する止水板部材12と、止水板部材12内に配置される内部抵抗部材13とを有する。
雨押えカバー部材11は、外壁材5の内方面に設置される壁面側カバー面材11aと、下屋Aの屋根材3の上方に設置される屋根面側カバー面材11bと、屋根面側カバー面材11bの軒先側端部から垂下して軒先側換気開口11cを形成する軒先側開口面材11dと、軒先側開口面材11dの下端から軒先側に延出させた延出面材11eとを有している。
壁面側カバー面材11aと、屋根面側カバー面材11bと、軒先側開口面材11dと、延出面材11eとは、板材を折り曲げて形成し、軒先側換気開口11cは軒先側開口面材11dの一部を打ち抜いて形成している。
【0021】
止水板部材12は、屋根材3の上面に配置される止水板底面材12aと、止水板底面材12aの軒先側に形成される風雨誘導板12bと、止水板底面材12aの野地開口6側から立ち上げた止水板後面材12cと、止水板後面材12cの上端に形成される止水材取付面材12dとを有している。
風雨誘導板12bは、誘導板立上板12b1と誘導板傾斜板12b2と誘導板端板12b3とを備えている。誘導板立上板12b1は軒先側開口面材11dに対向した位置に配置されている。誘導板傾斜板12b2は誘導板立上板12b1より軒先側に配置されている。誘導板傾斜板12b2は、上端が誘導板立上板12b1の上端と連続し、下端が誘導板端板12b3と連続する。誘導板傾斜板12b2は、下端を上端よりも軒先側に位置させることで傾斜させている。誘導板端板12b3は、誘導板傾斜板12b2の下端から止水板底面材12aに向けて延出している。
止水板底面材12aと、風雨誘導板12bと、止水板後面材12cと、止水材取付面材12dとは、板材を折り曲げて形成している。
【0022】
内部抵抗部材13は、止水板底面材12aに取り付けられる取付面13aと、取付面13aから風雨誘導板12bの方向に延出させた前方傾斜抵抗面13bと、取付面13aから止水板後面材12cの方向に延出させた後方傾斜抵抗面13cとを有している。前方傾斜抵抗面13bは、後方傾斜抵抗面13cより短い。前方傾斜抵抗面13bには開口を形成せず、前方傾斜抵抗面13bの先端と屋根面側カバー面材11bとの間に通風路が形成される。後方傾斜抵抗面13cには開口を形成し、後方傾斜抵抗面13cの先端は屋根面側カバー面材11bに当接するか近接させている。後方傾斜抵抗面13cに形成される開口によって通風路が形成される。
【0023】
図3を用いて、カバー付き捨水切20を説明する。
図3(a)はカバー付き捨水切の側面図、
図3(b)は捨水切カバー部材の要部正面図、
図3(c)は捨水切カバー部材の断面図、
図3(d)は捨水切部材の要部正面図、
図3(c)は捨水切部材の断面図である。
カバー付き捨水切20は、下屋Aに形成される野地開口6の上方に配置される捨水切部材21と、捨水切部材21の上方に配置される捨水切カバー部材23と、捨水切部材21と捨水切カバー部材23との間に形成される通気開口22を有する。通気開口22の上方は、捨水切カバー部材23によって覆われる。
捨水切部材21は、下屋Aの屋根材3の下方に設置される屋根面側水切面材21aと、屋根面側水切面材21aの野地開口6側の端部から立ち上げた野地開口側水切面材21bとを有している。
通気開口22は、野地開口側水切面材21bの上部に形成している。
屋根面側水切面材21aと、野地開口側水切面材21bとは、板材を折り曲げて形成し、通気開口22は野地開口側水切面材21bの一部を打ち抜いて形成している。
捨水切カバー部材23は、通気開口22の上方を覆う天面側捨水切カバー面材23aと、通気開口22に対向する位置に天面側捨水切カバー面材23aから垂下させた水切カバー垂下面材23bとを有している。天面側捨水切カバー面材23aと、水切カバー垂下面材23bとは、板材を折り曲げて形成している。
【0024】
図4に示すように、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、捨水切部材21と捨水切カバー部材23とを有するカバー付き捨水切20を備え、捨水切カバー部材23が水切カバー垂下面材23bを有し、水切カバー垂下面材23bを通気開口22に対向する位置に垂下させている。従って、換気雨押え本体10から吹き込む雨水が通気開口22から野地開口6側に侵入することを防止でき、防水性能を高めることができる。
また、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、水切カバー垂下面材23bの下端を、止水板部材12より下方に位置させている。従って、止水板部材12から吹き込む雨水を水切カバー垂下面材23bによって阻止することができる。
また、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、水切カバー垂下面材23bの下端を、通気開口22より下方に位置させている。従って、通気開口22に対向する位置を、水切カバー垂下面材23bによって完全に覆うことで雨水が通気開口22に侵入することを防止できる。
【0025】
また、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、止水板部材12と水切カバー垂下面材23bとの間に形成される第1通路面積S1を、止水板後面側換気開口12eの止水板後面側換気開口面積12eSより大きくしている。従って、止水板後面側換気開口面積12eSより大きな第1通路面積S1を、止水板部材12と水切カバー垂下面材23bとの間に形成することで、止水板部材12から吹き込む雨水の流速を低下させることができ、雨水が通気開口22に侵入することを防止できる。
【0026】
図5は本実施例による金属屋根用換気雨押えの施工方法を示す断面図である。
図5(a)に示すように、カバー付き捨水切施工工程では、カバー付き捨水切20を、外壁と下屋根との取り合い部に施工する。
そして
図5(b)に示すように、換気雨押え本体施工工程では、下屋Aの屋根材3に止水板部材12を下地木材7を介して配置し、換気雨押え本体10を施工する。なお、下地木材7は、屋根面側カバー面材11bが母屋B側より軒先側が低位置となるように選定する。
このように、カバー付き捨水切20を施工してから、換気雨押え本体10を施工できるため、防水性能に優れたカバー付き捨水切20を容易に施工できる。また、屋根面側カバー面材11bが母屋B側より軒先側が低位置となるように下地木材7を選定することで、金属屋根用換気雨押えは逆勾配とならず、雨水を軒先側に流すことができる。
【0027】
以下本発明の他の実施例による金属屋根用換気雨押えについて説明する。
図6は本実施例による金属屋根用換気雨押えを示す断面図、
図7は同金属屋根用換気雨押えに用いる換気雨押え本体を示す断面図、
図8は同金属屋根用換気雨押えに用いるカバー付き捨水切を示す断面図、
図9は同金属屋根用換気雨押えの要部拡大断面図である。
【0028】
図6に示す構造物では、下屋Aには垂木1を斜め下方に傾斜して設けている。垂木1の上方には野地板2を設け、野地板2の上面に屋根材3が敷設されている。屋根材3は縦葺き金属屋根材である。下屋Aが隣接する母屋Bには、外壁下地材4及び外壁材5を設けている。野地開口6は、野地板2の母屋B側端部の一部に形成されている。屋根材3の母屋B側端部には、下地木材7が配置される。
本実施例による金属屋根用換気雨押えは、母屋Bの外壁と下屋Aの屋根材3との取り合い部に施工され、下屋Aの小屋裏空間の排気を行う。
図6に示すように、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、換気雨押え本体10と、カバー付き捨水切20とを備えている。換気雨押え本体10は、下地木材7に固定具30によって固定される。
【0029】
図7を用いて換気雨押え本体10を説明する。
図7(a)は組図、
図7(b)は分解図である。
換気雨押え本体10は、雨押えカバー部材11と、雨押えカバー部材11の下方に換気通路を形成する止水板部材12と、止水板部材12内に配置される内部抵抗部材13とを有する。
雨押えカバー部材11は、外壁材5の内方面に設置される壁面側カバー面材11aと、下屋Aの屋根材3の上方に設置される屋根面側カバー面材11bと、屋根面側カバー面材11bの軒先側端部から垂下して軒先側換気開口11cを形成する軒先側開口面材11dと、軒先側開口面材11dの下端から軒先側に延出させた延出面材11eとを有している。軒先側開口面材11dは、下端を上端よりも軒先側に位置させることで傾斜させている。
壁面側カバー面材11aと、屋根面側カバー面材11bと、軒先側開口面材11dと、延出面材11eとは、板材を折り曲げて形成し、軒先側換気開口11cは軒先側開口面材11dの一部を打ち抜いて形成している。
【0030】
止水板部材12は、屋根材3の上面に配置される止水板底面材12aと、止水板底面材12aの軒先側に形成される風雨誘導板12bと、止水板底面材12aの野地開口6側から立ち上げた止水板後面材12cと、止水板後面材12cの上端に形成される止水材取付面材12dとを有している。止水板後面材12cは、下端を上端よりも軒先側に位置させることで傾斜させている。
風雨誘導板12bは、誘導板立上板12b1と誘導板傾斜板12b2と誘導板端板12b3とを備えている。誘導板立上板12b1は軒先側開口面材11dに対向した位置に配置されている。誘導板傾斜板12b2は誘導板立上板12b1より軒先側に配置されている。誘導板傾斜板12b2は、上端が誘導板立上板12b1の上端と連続し、下端が誘導板端板12b3と連続する。誘導板傾斜板12b2は、下端を上端よりも軒先側に位置させることで傾斜させている。誘導板端板12b3は、誘導板傾斜板12b2の下端から誘導板傾斜板12b2に重なるように折り曲げている。
止水板底面材12aと、風雨誘導板12bと、止水板後面材12cと、止水材取付面材12dとは、板材を折り曲げて形成している。
【0031】
内部抵抗部材13は、止水板底面材12aに取り付けられる取付面13aと、取付面13aから風雨誘導板12bの方向に延出させた前方傾斜抵抗面13bと、取付面13aから止水板後面材12cの方向に延出させた後方傾斜抵抗面13cとを有している。前方傾斜抵抗面13b及び後方傾斜抵抗面13cには開口を形成し、前方傾斜抵抗面13bの先端及び後方傾斜抵抗面13cの先端は屋根面側カバー面材11bに当接するか近接させている。前方傾斜抵抗面13b及び後方傾斜抵抗面13cに形成される開口によって通風路が形成される。
【0032】
図8を用いて、カバー付き捨水切20を説明する。
図8(a)はカバー付き捨水切の側面図、
図8(b)及び
図8(c)はカバー付き捨水切の要部を示す写真である。
カバー付き捨水切20は、下屋Aに形成される野地開口6の上方に配置される捨水切部材21と、捨水切部材21の上方に配置される捨水切カバー部材23と、捨水切部材21と捨水切カバー部材23との間に形成される通気開口22を有する。通気開口22の上方は、捨水切カバー部材23によって覆われる。
捨水切部材21は、下屋Aの屋根材3の下方に設置される屋根面側水切面材21aと、屋根面側水切面材21aの野地開口6側の端部から立ち上げた野地開口側水切面材21bと、野地開口側水切面材21bの上端から軒先側に折り曲げた水返し水切面材21cとを有している。水返し水切面材21cは、下端を上端より低くして傾斜させている。なお、水返し水切面材21cの下端と上端とを同じ高さ、すなわち水返し水切面材21cを水平としても、換気雨押え本体10から吹き込む雨水を屋根面側水切面材21aに落下させることができる。
通気開口22は、水返し水切面材21cの下端から更に延出させた板材に形成している。通気開口22を形成する板材についても、水返し水切面材21cと同様に傾斜させている。従って、通気開口22についても傾斜している。
捨水切カバー部材23は、通気開口22の上方を覆う天面側捨水切カバー面材23aと、野地開口側水切面材21bと平行に天面側捨水切カバー面材23aから垂下させた水切カバー垂下面材23bとを有している。水切カバー垂下面材23bの下部は、野地開口側水切面材21b側に折り曲げて立ち上げ、立ち上げた端部は通気開口22を形成する板材の下端に至らせている。
天面側捨水切カバー面材23aと、水切カバー垂下面材23bと、通気開口22を形成する板材と、水返し水切面材21cと、野地開口側水切面材21bと、屋根面側水切面材21aとは、1枚の板材を折り曲げて形成し、通気開口22は板材の一部を打ち抜いて形成している。通気開口22は、野地開口側水切面材21bと天面側捨水切カバー面材23aとの間に、軒先側が低くなるように形成されている。
【0033】
カバー付き捨水切20には、第1通気スペーサー41と第2通気スペーサー42とを備えている。第1通気スペーサー41及び第2通気スペーサー42は、野地開口側水切面材21bの長手方向の両端に形成され、第1通気スペーサー41は野地開口側水切面材21bより母屋B側に突出させ、第2通気スペーサー42は野地開口側水切面材21bより水切カバー垂下面材23b側に突出させる。
図8(b)に示すように、第1通気スペーサー41及び第2通気スペーサー42は、野地開口側水切面材21bの長手方向の端部に、野地開口側水切面材21bとともに一体に形成する。
そして
図8(c)に示すように、第1通気スペーサー41は野地開口6の上方側通路に向けて折り曲げ、第2通気スペーサー42は天面側捨水切カバー面材23a側の通路に向けて折り曲げて用いられる。
【0034】
図9に示すように、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、捨水切部材21と捨水切カバー部材23とを有するカバー付き捨水切20を備え、捨水切カバー部材23が水切カバー垂下面材23bを有し、水切カバー垂下面材23bと野地開口側水切面材21bとの間に通気開口22を配置している。更に、野地開口側水切面材21bの上端から軒先側に折り曲げた水返し水切面材21cを、通気開口22側が低くなるように傾斜させている。従って、換気雨押え本体10から吹き込む雨水は、仮に屋外からの強い風圧によって野地開口側水切面材21bに沿って上昇したとしても、水返し水切面材21cによって屋根面側水切面材21aに落下するため、通気開口22から野地開口6側に侵入することを防止でき、防水性能を高めることができる。
また、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、水切カバー垂下面材23bの下端を、止水板部材12より下方に位置させている。従って、止水板部材12から吹き込む雨水を水切カバー垂下面材23bによって阻止することができる。
また、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、水切カバー垂下面材23bの下端を、通気開口22より下方に位置させている。従って、水切カバー垂下面材23bによって雨水が通気開口22に侵入することを防止できる。
【0035】
また、本実施例による金属屋根用換気雨押えは、止水板部材12と水切カバー垂下面材23bとの間に形成される第1通路面積S1を、止水板後面側換気開口12eの止水板後面側換気開口面積12eSより大きくしている。従って、止水板後面側換気開口面積12eSより大きな第1通路面積S1を、止水板部材12と水切カバー垂下面材23bとの間に形成することで、止水板部材12から吹き込む雨水の流速を低下させることができ、雨水が通気開口22に侵入することを防止できる。
【0036】
図10は本実施例による金属屋根用換気雨押えの施工方法を示す断面図である。
図10(a)に示すように、カバー付き捨水切施工工程では、カバー付き捨水切20を、外壁と下屋根との取り合い部に施工する。
そして
図10(b)に示すように、換気雨押え本体施工工程では、下屋Aの屋根材3に止水板部材12を下地木材7を介して配置し、換気雨押え本体10を施工する。なお、下地木材7は、屋根面側カバー面材11bが母屋B側より軒先側が低位置となるように選定する。
このように、カバー付き捨水切20を施工してから、換気雨押え本体10を施工できるため、防水性能に優れたカバー付き捨水切20を容易に施工できる。また、屋根面側カバー面材11bが母屋B側より軒先側が低位置となるように下地木材7を選定することで、金属屋根用換気雨押えは逆勾配とならず、雨水を軒先側に流すことができる。
【0037】
図11は本実施例による金属屋根用換気雨押えの施工状態を示す断面図である。
図11(a)は4.5寸の屋根勾配の構造物に施工した状態を、
図11(b)は0.5寸の屋根勾配の構造物に施工した状態を示している。
このように本実施例による金属屋根用換気雨押えは、壁面側カバー面材11aに対する屋根面側カバー面材11bの角度、及び野地開口側水切面材21bに対する屋根面側水切面材21aの角度を変更することで、異なる屋根勾配の構造物に施工を行うことができる。
図11(c)及び
図11(d)は、第1通気スペーサー及び第2通気スペーサーを備えない場合を比較例として示している。
第1通気スペーサー41及び第2通気スペーサー42を備えない場合には、
図11(c)及び
図11(d)に示すように、野地開口側水切面材21bに対する屋根面側水切面材21aの角度を変更する際に、野地開口側水切面材21bが変形してしまう。
従って、第1通気スペーサー41及び第2通気スペーサー42を備えることで、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、野地開口側水切面材21bの変形を防止し、野地開口側水切面材21bの母屋B側の通路面積と、野地開口側水切面材21bの天面側捨水切カバー面材23a側の通路面積とを一定に保つことができる。