(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008982
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ヒトCTLA-4に対する抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220106BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220106BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220106BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220106BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220106BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220106BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220106BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220106BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220106BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220106BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/00 Z
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/02
A61P35/04
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021166154
(22)【出願日】2021-10-08
(62)【分割の表示】P 2019505381の分割
【原出願日】2017-08-01
(31)【優先権主張番号】2017270
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】512333423
【氏名又は名称】アデュロ・バイオテック・ホールディングス・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ADURO BIOTECH HOLDINGS, EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・エーネンナーム,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ファン・エルサス,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】クレイツ,ヨースト
(72)【発明者】
【氏名】ヒュルシク,ダーフィット・ルーチェ
(72)【発明者】
【氏名】フィンク,パウル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA77X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC01
4C085CC05
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE06
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】先行技術の抗CTLA4抗体と異なるエピトープに結合する新規の抗hCTLA-4抗体、前記抗体を産生する方法、ならびに、前記抗体の治療及び診断の使用を提供する。
【解決手段】ヒトCTLA-4のエピトープに結合する抗体又はその抗原結合断片であって、特定の配列を有するマウス-ヒトキメラCTLA-4分子に結合しない、抗体又はその抗原結合断片。前記抗体は、CTLA4抗原に対し同様の親和性を示し、CD80及び/又はCD86に対するCTLA4の結合をブロックすることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCTLA-4に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、a~fで定義されるポリペプチド配列の1つ以上を含み、任意選択で、前記ポリペプチド配列の各々がa~cで定義され、及び/または前記ポリペプチド配列の各々がd~fで定義される、前記抗体またはその抗原結合断片:
a.配列番号1のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号1と異なるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR1;
b.配列番号2のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号2と異なるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR2;
c.配列番号3のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号3と異なるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR3;
d.配列番号4のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号4と異なるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR1;
e.配列番号5のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号5と異なるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号6のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号6と異なるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR3。
【請求項2】
前記抗体または抗原結合断片が、a~fで定義されるポリペプチド配列のいずれか1つを含み、任意選択で、前記ポリペプチド配列の各々がa~cで定義され、及び/または前記ポリペプチド配列の各々がd~fで定義される、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片:
a.配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
b.配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
c.配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
d.配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
e.配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;
f.配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3。
【請求項3】
以下からなる群から選択される、軽鎖免疫グロブリン、重鎖免疫グロブリン、または軽鎖及び重鎖両方の免疫グロブリンを含む、ヒトCTLA-4に結合する抗体またはその抗原結合断片:
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合断片;
b.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または配列番号22、24、26、または30のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合断片;
c.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のいずれか1つに対し少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を備える可変重鎖、及び/または配列番号22、24、26、もしくは30のいずれか1つに対し少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を備える可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合断片;
d.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のいずれか1つに対し少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を備える可変重鎖、及び/または配列番号22、24、26、もしくは30のいずれか1つに対し少なくとも90%、95%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を備える可変軽鎖を含む抗体もしくはその抗原結合断片であって、任意の配列バリエーションが、前記抗体またはその抗原結合断片のフレームワーク領域内で生じる、前記抗体またはその抗原結合断片;
e.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のいずれか1つについて1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10のアミノ酸置換を含む可変重鎖、及び/または配列番号22、24、26、もしくは30のいずれか1つについて1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10のアミノ酸置換を含む可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合断片;ならびに
f.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のいずれか1つについて1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10のアミノ酸置換を含む可変重鎖、及び/または配列番号22、24、26、もしくは30のいずれか1つについて1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10のアミノ酸置換を含む可変軽鎖を含む抗体またはその抗原結合断片であって、任意の前記置換が、前記抗体またはその抗原結合断片のフレームワーク領域内で生じる、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合断片が、以下の特徴の1、2、3、または4つ全てを有する、請求項3に記載の抗体またはその抗原結合断片:
i.ヒトCTLA-4に対し、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE)または同様の技法(例えば、KinExaまたはOCTET)により少なくとも約1×10-9Mと測定されるKD値で結合する;
ii.hCD80に対するhCTLA-4の結合を、約100nM以下のIC50でブロックする;
iii.hCD86に対するhCTLA-4の結合を、約100nM以下のIC50でブロックする;
iv.イピリムマブまたはトレメリムマブとは異なるCTLA-4エピトープに結合する。
【請求項5】
ヒトCTLA-4のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号44のマウス-ヒトキメラCTLA-4分子に結合しない、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖を含む抗体と同じヒトCTLA-4のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号44のマウス-ヒトキメラCTLA-4分子に結合せず、かつ以下の特徴の少なくとも1つを有する、前記抗体またはその抗原結合断片:
a.ヒトCTLA-4に対し、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE)または同様の技法(例えば、KinExaまたはOCTET)により少なくとも約1×10-9Mと測定されるKD値で結合する;
b.hCD80に対するhCTLA-4の結合を、約100nM以下のIC50でブロックする;
c.hCD86に対するhCTLA-4の結合を、約100nM以下のIC50でブロックする;
d.イピリムマブまたはトレメリムマブとは異なるCTLA-4エピトープに結合する。
【請求項7】
ヒトCTLA-4に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、SFVCEYASPGKAT(配列番号53)の少なくとも8つの連続した残基を含むヒトCTLA-4のエピトープに結合する、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記エピトープがSFVCEYASPGKAT(配列番号53)からなる、請求項7に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
ヒトCTLA-4に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、配列SFVCEY
ASPGKAT(配列番号53)内のヒトCTLA-4における1つ以上の変異が、ヒトCTLA4に対する前記抗体の結合を防止する、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
ヒトCTLA-4に対する結合において抗体hCTLA4.27Aと競合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むヒト化抗体である、請求項1~10のいずれかに記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項12】
配列番号1~8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、または30のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項13】
請求項1~11に記載のいずれか1つの抗体もしくは抗原結合断片または請求項12に記載のいずれか1つのポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の単離された核酸を含む、発現ベクター。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の抗体、結合断片、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
Pichia細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片と、医薬的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、または安定化剤とを含む、組成物。
【請求項18】
以下からなる群から選択される薬剤をさらに含む、請求項17に記載の組成物:
抗PD1抗体またはその抗原結合断片;
抗LAG3抗体またはその抗原結合断片;
抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片;
抗VISTA抗体またはその抗原結合断片;
抗BTLA抗体またはその抗原結合断片;
抗TIM3抗体またはその抗原結合断片;
抗CD27抗体またはその抗原結合断片;
抗HVEM抗体またはその抗原結合断片;
抗CD70抗体またはその抗原結合断片;
抗CD137抗体またはその抗原結合断片;
抗OX40抗体またはその抗原結合断片;
抗CD28抗体またはその抗原結合断片;
抗PDL1抗体またはその抗原結合断片;
抗PDL2抗体またはその抗原結合断片;
抗GITR抗体またはその抗原結合断片;
抗ICOS抗体またはその抗原結合断片;
抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片;
抗ILT2抗体またはその抗原結合断片;
抗ILT3抗体またはその抗原結合断片;
抗ILT4抗体またはその抗原結合断片;
抗ILT5抗体またはその抗原結合断片;
抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片;
抗NK2GA抗体またはその抗原結合断片;
抗NK2GC抗体またはその抗原結合断片;
抗NK2GE抗体またはその抗原結合断片;
抗TSLP抗体またはその抗原結合断片;
STINGアゴニスト;及び
抗IL10抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
前記抗PD1抗体またはその抗原結合断片が、ペムブロリズマブまたはその抗原結合断片及びニボルマブまたはその抗原結合断片からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
以下の群から選択される化合物をさらに含む、請求項17に記載の組成物:ADU-S100、メルファラン、ビンクリスチン、フルダラビン、クロラムブシル、ベンダムスチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、シスプラチン、コルチコステロイドのような免疫調節剤、例えばデキサメタゾンもしくはプレドニゾロン、サリドマイド類似体、例えばサリドマイド、レナリドミド、もしくはポマリドミド、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、イデラリシブ、CD20標的抗体、例えばリツキシマブ、オファツムマブ、もしくはオビヌツズマブ、CD52標的抗体、例えばアレムツズマブ、CD38標的抗体、例えばダラツムマブ、IL-6もしくはIL-6受容体標的抗体、例えばサリルマブもしくはトシリズマブ、CS-1標的抗体、例えばエロツズマブ、BCMA標的抗体、例えばGSK2857916、BAFFもしくはBLyss標的抗体、例えばタバルマブ、ビスホスホネート、例えばパミドロネートもしくはゾレドロン酸、ボルテゾミブ、またはこれらの組合せ。
【請求項21】
抗体または抗原結合断片を産生する方法であって、
請求項1~11に記載のいずれか1つの抗体または抗原結合断片の重鎖及び/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、前記ポリヌクレオチドの発現に好ましい条件下で培養することと、
任意選択で、前記宿主細胞及び/または培地から、前記抗体または抗原結合断片を回収することと
を含む、前記方法。
【請求項22】
対象、好ましくはヒト対象におけるがんを処置する方法であって、前記対象に、有効量の、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、または前記対象内での前記抗体もしくは抗原結合断片の発現を媒介する発現ベクターを、任意選択でさらなる治療剤または治療手順に付随して、投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
対象、好ましくはヒト対象における感染症または感染性疾患を処置する方法であって、前記対象に、有効量の、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、または前記対象内での前記抗体もしくは抗原結合断片の発現を媒介する発現ベクターを、任意選択でさらなる治療剤または治療手順に付随して、投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片及び抗原を含む、ワクチン。
【請求項25】
試料中のCTLA-4ペプチドまたはその断片の存在を検出する方法であって、前記試料を請求項1~11のいずれかに記載の抗体または断片と接触させることと、前記抗体または断片と前記ペプチドとの間の複合体の存在を検出することとを含み、前記複合体の検出が前記CTLA-4ペプチドの存在を示す、前記方法。
【請求項26】
免疫細胞の活性を増大させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、または前記対象内での前記抗体もしくは抗原結合断片の発現を媒介する発現ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
前記方法が、以下の目的で使用される、請求項26に記載の方法:
がんの処置;
感染症もしくは感染性疾患の処置;または
ワクチンアジュバントとして。
【請求項28】
以下を目的とする医薬の調製で使用するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、または対象内での前記抗体もしくは抗原結合断片の発現を媒介する発現ベクター:
免疫細胞活性化の増大;
がんの処置;または
感染症もしくは感染性疾患の処置。
【請求項29】
以下を目的とするがんの処置用の医薬製造のための、請求項1~11に記載の抗体または抗原結合断片の使用:免疫細胞活性化の増大;がんの処置;または感染症もしくは感染性疾患の処置。
【請求項30】
前記断片がFab、F(ab’)2、Fv、または単鎖Fv断片(scFv)である、請求項1~11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項31】
IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、好ましくはIgG1またはIgG4から選択される重鎖定常領域と、軽鎖定常領域カッパまたはラムダから選択される軽鎖定常領域とを含む、請求項1~11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項32】
配列番号50の位置228にSer→Pro変異を有するヒトIgG4重鎖定常領域を含む、請求項31に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項33】
対象における免疫応答を刺激する方法であって、それを必要とする対象に、前記免疫応答を刺激するのに有効な量の、請求項1~11に記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、前記方法。
【請求項34】
前記がんが、肺癌、黒色腫、腎臓癌、肝臓癌、骨髄腫、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、甲状腺癌、血液癌、リンパ腫、骨髄腫、もしくは白血病、または前記がんの転移病変からなる群から選択される、請求項22に記載のがんを処置する方法。
【請求項35】
前記抗体分子が、1つ以上の治療剤または手順との併用で投与され、前記第2の治療剤または手順が、STINGアゴニスト、化学療法、標的抗がん療法、腫瘍溶解性薬物、細胞傷害性薬剤、免疫ベース療法、サイトカイン、外科的手順、放射線手順、共刺激分子の活性化剤、阻害分子の阻害剤、ワクチン、または細胞免疫療法からなる群から選択される、請求項22に記載のがんを処置する方法。
【請求項36】
前記抗体分子が、OX40、CD2、CD27、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、またはCD83リガンドからなる群から選択される1つ以上の共刺激分子のアゴニストとの併用で投与される、請求項35に
記載の方法。
【請求項37】
前記抗体分子が、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3、CEACAM-1、CEACAM-5、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、またはTGFRからなる群から選択される免疫チェックポイント分子の1つ以上の阻害剤との併用で投与される、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年8月2日に出願されたオランダ特許出願第2017270号に対する優先権を主張し、当該出願は、その全体が、全ての表、図、及び請求項を含めて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、免疫応答の刺激により、詳細には抗原特異的Tリンパ球の刺激により、改善される状態の処置に関する。より具体的には、本発明は、抗ヒトCTLA-4抗体、ならびにがん及び感染性疾患のような疾患の処置におけるこの抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の本発明の背景技術の解説は、読者の本発明の理解の一助とするために提供されるに過ぎず、本発明に対する先行技術を説明または構成するように認められるものではない。
【0004】
Tリンパ球は、抗原に対する適応免疫応答で中心的な役割を果たす。ナイーブT細胞は、完全な活性化に2つのシグナルを必要とする(Bretscher 1999,Proc Natl Acad Sci USA 96:185-90)。第1のシグナルは抗原特異的であり、これは、T細胞受容体(TCR)とMHC/ペプチド複合体との抗原提示細胞(APC)上での相互作用によりもたらされる。第2のシグナルは、共刺激シグナルであり、これは、T細胞上の受容体とAPC上のそのリガンドとの間の相互作用によりもたらされる。TCR/MHC及び共刺激の両方の相互作用が係合することにより、複数の細胞内経路(カルシウムカルシニューリン及びRASマイトジェン活性化タンパク質キナーゼを含む)を介したT細胞活性化や、次に続く複数のエフェクター化合物(IL-2のようなサイトカインを含む)に対する転写因子の活性化がもたらされる。
【0005】
複数の正及び負の共刺激経路がT細胞制御に関与しているが、最もクリティカルなものは、T細胞上のCD28とAPC上のB7-1(CD80)及びB7-2(CD86)との間の経路である。CD28は、T細胞分化を促進し、B細胞による抗体産生及びT細胞の活性化を増強する。CD80及びCD86は、樹状細胞及びB細胞のようなAPC上に発現し、これらは重複するが別々の機能を有する。CD86は常在的に発現し、TCR/MHCの係合と同時発生的にAPC上で迅速に上方制御される。CD80の発現量は、静止細胞上では非常に低いが、典型的には持続的なT細胞刺激の後に誘導される。これらの違いから、CD86はT細胞活性化の初期化に重要であり得る一方、CD80は免疫応答の永続化により大きな役割を果たし得ることが示唆される。
【0006】
T細胞活性化に続いて、負の制御受容体である細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4またはCTLA-4、別名CD152)がT細胞上で上方制御される(Alegre
et al.,2001,Nat Rev Immunol 1:220-8)。CTLA-4はCD28に対し構造的に相同であるが、より緊密にCD80及びCD86の両リガンドに結合する。CTLA-4は、2つの主要な方法で免疫応答を阻害する。すなわち、CTLA-4は、CD80及びCD86リガンドに対しCD28と競合することで共刺激をブロックし、また負の方法でシグナルを発してT細胞活性化を阻害する(Krummel and Allison,1995,J Exp Med 182:459-465;Walunas et al.,1994,Immunity 1:405-413)。さらに、CD86は、CTLA-4よりもCD28と免疫シナプスにおいて係合し、一方CD80は、CD28よりもCTLA-4とライゲーションすることが示されている(Collins et al.,2002,Immunity 17:201-21
0;Jansson et al.,2005,J Immunol 175:1575-1585)。
【0007】
CTLA-4ブロックは、in vitro及びin vivoでT細胞応答を増大させ、抗腫瘍免疫を憎悪させ、自己免疫疾患の誘導を増強することが報告されている。また、CTLA-4が、T細胞免疫応答の初期特徴に代替的または追加的影響を及ぼすことも報告されている。これは、一部の自己免疫患者がCTLA-4に対する自己抗体を有するという知見に一致するものである。CTLA-4ブロック自己抗体がこれらの患者において病原的役割を果たしている可能性がある。さらに、ヒトCTLA-4に対するヒト抗体は、例えば、ウイルス及び細菌感染の処置または予防やがんの処置のような、複数の疾患状態における免疫刺激調節物質として説明されている。イピリムマブは、CTLA-4がAPC上に発現するCD80及びCD86に結合するのをブロックし、これらの分子の相互作用により誘発される免疫応答の負の下方制御をブロックする、ヒト抗ヒトCTLA-4抗体である。無進行期間の持続を伴った腫瘍後退のエビデンスが、イピリムマブ(10D1)または別の抗CTLA-4抗体、トレメリムマブ(CP-675,206)を投与された黒色腫患者で見られ、また、イピリムマブによる持続的な応答が黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、及び腎細胞癌の患者で観察されている。興味深いことに、抗腫瘍応答は、短期間の進行後に後退が遅延することを特徴とする可能性があり、抗CTLA-4抗体における重要な、場合によっては固有の臨床的特徴は、臨床的応答の期間が、また安定病態の期間さえも、しばしば非常に持続的であることである。進行した黒色腫の患者の前臨床研究及び早期臨床研究からは、イピリムマブが、単剤療法として、及び化学療法、抗体、ワクチン、またはサイトカインのような処置との組合せで、抗腫瘍活性を促進することが示されている(Weber,J.,The Oncologist,12(7):864-872,2007;Scott,A.M.et al.,Nature Reviews(Cancer)12:278-287,2012;Hodi,F.S.et al.,New Eng.J.Med.363(8):711-723,2010;Schadendorf,D.et al.,J.Clin.Oncol.33(17):1889-1894,2015;Larkin,J.V.et al.,New Eng.J.Med.2015;Ribas,A.et al.,J.Clin.Oncol.31(5):616-622,2013)。
【0008】
イピリムマブによるCTLA-4標的化における第2に提唱される機構は、CTLA-4+制御性T細胞(Treg)の枯渇であり、これは、マウスにおいて、CTLA-4標的化の有効性の背後にあるクリティカルな駆動要因であることが示されている(Peggs et al,J Exp Med,2009,DOI:10.1084/jem.20082492;Simpson et al,J Exp med,2013,DOI:10.1084/jem.20130579;Selby et al Cancer
Immunol,2013 DOI:10.1158/2326-6066.CIR-13-0013)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
イピリムマブは、既に一部のがん療法向けに市販され、他の抗がん適応向けにも試験されており、また、トレメリムマブも臨床試験フェーズが進行しているものの、依然として代替的な抗CTLA-4抗体が必要とされており、特に既知の抗CTLA-4抗体の活性と区別され得る活性を有する抗体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様において、本発明は、ヒトCTLA-4に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、抗体または抗原結合断片が以下の1つ以上、任意選択で以下の各々を含む
、抗体またはその抗原結合断片に関する:
配列番号1のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号1と異なるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR1、
配列番号1のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号2と異なるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR2、
配列番号3のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号3と異なるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR3、
配列番号4のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号4と異なるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR1、
配列番号5のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号5と異なるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR2、及び
配列番号6のアミノ酸配列、または1、2、3、もしくはそれ以上の保存的置換により配列番号6と異なるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR3。
【0011】
好ましくは、前述の抗体または抗原結合断片は、以下の1つ以上、好ましくは以下の各々を含む:
a.配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
b.配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
c.配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
d.配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
e.配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;
f.配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0012】
好ましくは、前述の抗体は、配列番号7の重鎖を有する。さらに好ましくは、前述の抗体は、配列番号8の軽鎖を有する。より好ましくは、重鎖は、配列番号10、12、14、16、18、または20のいずれかから選択される。より好ましくは、軽鎖は、配列番号22、24、26、30のいずれかから選択される。
【0013】
本発明はさらに、以下からなる群から選択される、軽鎖免疫グロブリン、重鎖免疫グロブリン、または軽鎖及び重鎖両方の免疫グロブリンを含む、ヒトCTLA-4に結合する抗体またはその抗原結合断片に関する:
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または配列番号8のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合断片;
b.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のアミノ酸配列を含む可変重鎖、及び/または配列番号22、24、26、または30のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合断片;
c.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のいずれか1つに対し少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を備える可変重鎖、及び/または配列番号22、24、26、もしくは30のいずれか1つに対し少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を備える可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合断片;
d.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のいずれか1つに対し少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を備える可変重鎖、及び/または配列番号22、24、26、もしくは30のいずれか1つに対し少なくとも90%、95%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を備える可変軽鎖を含む抗体もしくはその抗原結合断片であって、任意の配列バリエーションが、抗体または抗原結合断片のフレームワーク領域内で生じる、抗体またはその抗原結合断片;
e.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のいずれか1つについて1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10のアミノ酸置換を含む可変重鎖、及び
/または配列番号22、24、26、もしくは30のいずれか1つについて1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10のアミノ酸置換を含む可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合断片;ならびに
f.配列番号10、12、14、16、18、もしくは20のいずれか1つについて1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10のアミノ酸置換を含む可変重鎖、及び/または配列番号22、24、26、もしくは30のいずれか1つについて1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10のアミノ酸置換を含む可変軽鎖を含む抗体またはその抗原結合断片であって、任意の前述の置換が、抗体または抗原結合断片のフレームワーク領域内で生じる、抗体またはその抗原結合断片。
【0014】
好ましくは、前述の抗体または抗原結合断片は、以下の特徴の少なくとも1つを有する:
a)ヒトCTLA-4に対し、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE)または同様の技法(例えば、KinExaまたはOCTET)により少なくとも約1×10-9Mと測定されるKD値で結合する;
b)hCD80に対するhCTLA-4の結合を、約100nM以下のIC50でブロックする;
c)hCD86に対するhCTLA-4の結合を、約100nM以下のIC50でブロックする;
d)イピリムマブまたはトレメリムマブとは異なるCTLA-4エピトープに結合する。
【0015】
本発明はさらに、ヒトCTLA-4のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前述の抗体または抗原結合断片が、配列番号44のマウス-ヒトキメラCTLA-4分子に結合しない、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0016】
本発明のさらなる態様は、配列番号7の可変重鎖及び配列番号8の可変軽鎖を含む抗体と同じヒトCTLA-4のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号44のマウス-ヒトキメラCTLA-4分子に結合せず、かつ以下の特徴の1、2、3、または4つ全てを有する、抗体またはその抗原結合断片である:
g.ヒトCTLA-4に対し、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE)または同様の技法(例えば、KinExaまたはOCTET)により少なくとも約1×10-9Mと測定されるKD値で結合する;
h.hCD80に対するhCTLA-4の結合を、約100nM以下のIC50でブロックする;
i.hCD86に対するhCTLA-4の結合を、約100nM以下のIC50でブロックする;
j.イピリムマブまたはトレメリムマブとは異なるCTLA-4エピトープに結合する。
【0017】
本発明のさらなる態様は、ヒトCTLA-4に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、SFVCEYASPGKAT(配列番号53)の少なくとも8つの連続した残基を含むヒトCTLA-4のエピトープに結合する、抗体またはその抗原結合断片である。
【0018】
エピトープがSFVCEYASPGKAT(配列番号53)からなる、請求項34に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0019】
ヒトCTLA-4に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、配列SFVCEYASPGKAT(配列番号53)内のヒトCTLA-4における1つ以上の変異が、ヒトCTLA4に対する当該抗体の結合を防止する、抗体またはその抗原結合断片。
【0020】
ヒトCTLA-4に対する結合において抗体hCTLA4.27Aと競合する、抗体またはその抗原結合断片。
【0021】
好ましくは、本発明の抗体または抗原結合断片は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むヒト化抗体である。
【0022】
別の態様において、本発明は、配列番号1~8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、または30のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドに関する。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、本発明のいずれか1つの抗体もしくは抗原結合断片または上記で定義されたいずれか1つのポリペプチドをコードする、単離された核酸を対象とする。また、本発明は、このような単離された核酸を含む発現ベクターも含む。
【0024】
また、本発明は、本発明の抗体、結合断片、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または発現ベクターを含む宿主細胞も含む。前述の宿主細胞は、好ましくは、Pichia細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
【0025】
本発明の一実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、1つ以上の環状ジヌクレオチドまたは他のSTING経路アゴニストに付随して使用される。STING(インターフェロン遺伝子刺激因子、別名TMEM173、MITA、ERIS、及びMPYS)は、ERに局在化された膜貫通タンパク質であり、環状ジヌクレオチド(CDN)の直接的結合に応答したコンフォメーション変化を経て、TBK1活性化、IRF-3リン酸化、ならびにIFN-β及び他のサイトカインの産生を伴う下流シグナリングカスケードをもたらす。腫瘍常在の宿主抗原提示細胞におけるSTING経路は、腫瘍由来抗原に対する自発的なCD8+ T細胞応答の誘導に関与する。この経路の活性化及び次に続くIFN-β産生は、放射線の抗腫瘍効果にも寄与することが報告されている。STINGアゴニスト及びその使用については、例えば、US20060040887、US20080286296、US20120041057、US20140205653、WO2014179335、WO2014179760、US20150056224、WO2016096174、WO2017011444、WO2017027645、及び2017027646に記載されており、当該化合物は、医薬的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される。Stingアゴニストは、1つ以上の経口または非経口経路により投与することができる。一部の実施形態において、投与は、皮下、筋肉内、皮内、粘膜、膣、腫瘍周囲、腫瘍内、または直接腫瘍排出リンパ節(複数可)内である。ある特定の実施形態において、STINGアゴニスト及び本発明の抗体または抗原結合断片は、別々の投与として投与され、例えば、異なる時間に、及び/または異なる投与経路により、投与される。
【0026】
本発明の別の実施形態は、本発明の抗体または抗原結合断片と、医薬的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、または安定化剤とを含む組成物により、形成される。好ましくは、前述の組成物は、以下からなる群から選択される薬剤をさらに含む:
k.抗PD1抗体またはその抗原結合断片;
l.抗LAG3抗体またはその抗原結合断片;
m.抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片;
n.抗VISTA抗体またはその抗原結合断片;
o.抗BTLA抗体またはその抗原結合断片;
p.抗TIM3抗体またはその抗原結合断片;
q.抗CD27抗体またはその抗原結合断片;
r.抗HVEM抗体またはその抗原結合断片;
s.抗CD70抗体またはその抗原結合断片;
t.抗CD137抗体またはその抗原結合断片;
u.抗OX40抗体またはその抗原結合断片;
v.抗CD28抗体またはその抗原結合断片;
w.抗PDL1抗体またはその抗原結合断片;
x.抗PDL2抗体またはその抗原結合断片;
y.抗GITR抗体またはその抗原結合断片;
z.抗ICOS抗体またはその抗原結合断片;
aa.抗SIRPα抗体またはその抗原結合断片;
bb.抗ILT2抗体またはその抗原結合断片;
cc.抗ILT3抗体またはその抗原結合断片;
dd.抗ILT4抗体またはその抗原結合断片;
ee.抗ILT5抗体またはその抗原結合断片;
ff.抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片;
gg.抗NK2GA抗体またはその抗原結合断片;
hh.抗NK2GC抗体またはその抗原結合断片;
ii.抗NK2GE抗体またはその抗原結合断片;
jj.抗TSLP抗体またはその抗原結合断片;
kk.STINGアゴニスト、及び;
ll.抗IL10抗体またはその抗原結合断片。
【0027】
また、好ましくは、前述の組成物において、抗PD1抗体またはその抗原結合断片は、ペムブロリズマブまたはその抗原結合断片及びニボルマブまたはその抗原結合断片からなる群から選択される。
【0028】
別の実施形態において、本発明の組成物は、以下の群から選択される化合物をさらに含む:ADU-S100、メルファラン、ビンクリスチン、フルダラビン、クロラムブシル、ベンダムスチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、シスプラチン、コルチコステロイドのような免疫調節剤、例えばデキサメタゾンもしくはプレドニゾロン、サリドマイド類似体、例えばサリドマイド、レナリドミド、もしくはポマリドミド、キナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブ、イデラリシブ、CD20標的抗体、例えばリツキシマブ、オファツムマブ、もしくはオビヌツズマブ、CD52標的抗体、例えばアレムツズマブ、CD38標的抗体、例えばダラツムマブ、IL-6もしくはIL-6受容体標的抗体、例えばサリルマブもしくはトシリズマブ、CS-1標的抗体、例えばエロツズマブ、BCMA標的抗体、例えばGSK2857916、BAFFもしくはBLyss標的抗体、例えばタバルマブ、ビスホスホネート、例えばパミドロネートもしくはゾレドロン酸、ボルテゾミブ、またはこれらの組合せ。
【0029】
また、本発明は、抗体または抗原結合断片を産生する方法であって、
mm.本発明のいずれか1つの抗体または抗原結合断片の重鎖及び/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、ポリヌクレオチドの発現に好ましい条件下で培養することと、
nn.任意選択で、宿主細胞及び/または培地から、抗体または抗原結合断片を回収することと
を含む、方法にも関する。
【0030】
ある特定の実施形態において、宿主細胞は、このようなポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含み、この発現ベクターは、抗体または抗原結合断片の発現を駆動する、ポリヌクレオチドに対し作用可能に結合した調節配列を含む。好ましい実施形態において、ポリ
ヌクレオチドは、宿主細胞による抗体または抗原結合断片の分泌を媒介する分泌シグナル配列を含む。
【0031】
本発明のさらなる態様は、対象、好ましくはヒト対象におけるがんを処置する方法であって、対象に、有効量の、本発明の抗体もしくは抗原結合断片、または対象内での抗体もしくは抗原結合断片の発現を媒介する発現ベクターを、任意選択でさらなる治療剤または治療手順に付随して、投与することを含む、方法である。
【0032】
また、ヒト対象における感染症または感染性疾患を処置する方法であって、対象に、有効量の、本発明による抗体または抗原結合断片を、任意選択でさらなる治療剤または治療手順と付随して、投与することを含む方法も、本発明の一部である。
【0033】
本発明はさらに、本発明による抗体または抗原結合断片及び抗原を含むワクチンを含む。
【0034】
別の態様において、本発明は、試料中のCTLA-4ペプチドまたはその断片の存在を検出する方法であって、試料を本発明の抗体または断片と接触させることと、抗体または断片とペプチドとの間の複合体の存在を検出することとを含み、複合体の検出がCTLA-4ペプチドの存在を示す、方法を含む。
【0035】
また、本発明は、免疫細胞の活性を増大させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の、本発明による抗体もしくは抗原結合断片、または対象内での抗体もしくは抗原結合断片の発現を媒介する発現ベクターを投与することを含む、方法にも関する。好ましくは、前述の方法は、以下の目的で使用される:
oo.がんの処置;
pp.感染症もしくは感染性疾患の処置;または
qq.ワクチンアジュバントとして。
【0036】
別の態様において、本発明は、以下を目的とする医薬の調製で使用するための、本発明による抗体もしくは抗原結合断片、または対象内での抗体もしくは抗原結合断片の発現を媒介する発現ベクターを対象とする:
rr.免疫細胞活性化の増大;
ss.がんの処置;または
tt.感染症もしくは感染性疾患の処置。
【0037】
以下の態様において、本発明は、以下を目的とするがんの処置用の医薬製造のための、本発明の抗体または抗原結合断片の使用を含む:免疫細胞活性化の増大;がんの処置;または感染症もしくは感染性疾患の処置。
【0038】
また、本発明は、断片がFab、F(ab’)2、Fv、または単鎖Fv断片(scFv)である、本発明の抗体またはその抗原結合断片も含む。
【0039】
以下の態様において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、好ましくはIgG1またはIgG4から選択される重鎖定常領域と、軽鎖定常領域カッパまたはラムダから選択される軽鎖定常領域とを含む。抗体またはその抗原結合断片がヒトIgG4重鎖定常領域を含む実施形態において、前述のIgG4配列は、好ましくは、配列番号50に示されるように、位置228にSer→Pro変異を有する。
【0040】
また、本発明は、対象における免疫応答を刺激する方法であって、それを必要とする対
象に、免疫応答を刺激するのに有効な量の、本発明の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法も対象とする。好ましくは、このような方法において、抗体分子は、1つ以上の共刺激分子のアゴニスト、例えば、OX40、CD2、CD27、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、またはCD83リガンドからなる群から選択される1つ以上の分子のアゴニストとの併用で、投与される。代替的に、抗体分子は、免疫チェックポイント分子の1つ以上の阻害剤、例えば、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3、CEACAM-1、CEACAM-5、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、またはTGFRからなる群から選択される免疫チェックポイント分子の1つ以上の阻害剤との併用で、投与される。
【0041】
さらなる実施形態において、本発明は、がんを処置する方法であって、当該がんが、肺癌、黒色腫、腎臓癌、肝臓癌、骨髄腫、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、甲状腺癌、血液癌、リンパ腫、骨髄腫、もしくは白血病、または当該がんの転移病変からなる群から選択される、方法を含む。
【0042】
また、がんを処置する方法に関連して、本発明は、抗体分子が、1つ以上の第2の治療剤または手順との併用で投与される方法であって、例えば、第2の治療剤または手順が、化学療法、標的抗がん療法、腫瘍溶解性薬物、細胞傷害性薬剤、免疫ベース療法、サイトカイン、外科的手順、放射線手順、共刺激分子の活性化剤、阻害分子の阻害剤、ワクチン、または細胞免疫療法からなる群から選択される、方法も対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】ジャーカットベースのレポーターアッセイにおけるhCTLA4.27A抗体の機能性。
【
図2】hCTLA4.27抗体の他との差異を示すhCD80ブロックプロファイル。
【
図3】PBMC SEBアッセイにおけるhCTLA4.27抗体によるIL2産生誘導。
【
図4A】hCTLA4.27抗体及び対照抗体:ADCCアッセイにおけるエフェクター機能。
【
図4B】hCTLA4.27抗体及び対照抗体:CDCアッセイにおけるエフェクター機能。
【
図5】ヒト/マウスCTLA-4交換変異体に対するhCTLA4.27AキメラhIgG4の固有な結合プロファイル。
【
図6】rhCTLA-4/Fcに対するhCTLA4.27Aの結合のエピトープマッピング結果を示している。種々のタンパク質分解アプローチにより検出される架橋ペプチドは、配列番号54-57である。hCTLA-4残基46-76(配列番号48)は、参照のために示されている。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明を実施するための形態及び本発明の実施例の全体において、以下の略語が使用される。
ADCC 抗体依存性細胞傷害
CDC 補体依存性細胞傷害
CDR 免疫グロブリン可変領域における相補性決定領域(Kabatナンバリングシステムを用いて定義される)
CHO チャイニーズハムスター卵巣細胞
EC50 50%の総結合をもたらす濃度
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
FR 抗体フレームワーク領域:CDR領域を除外した免疫グロブリン可変領域
HRP ホースラディッシュペルオキシダーゼ
IFN インターフェロン
IC50 50%阻害の総シグナルをもたらす濃度
IgG 免疫グロブリンG
Kabat Elvin A.Kabat((1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)により開発された免疫グロブリンアラインメント及びナンバリングシステム
mAbまたはMabまたはMAb モノクローナル抗体
SEB StaphylococcusエンテロトキシンB
TT 破傷風トキソイド
V領域 異なる抗体間で配列が可変であるIgG鎖のセグメント。V領域は、軽鎖における109及び重鎖における113のKabat残基に及ぶ。
VH 免疫グロブリン重鎖可変領域
VL 免疫グロブリン軽鎖可変領域
VK 免疫グロブリンカッパ軽鎖可変領域
【0045】
以下は、本明細書で参照される配列のリスト(表1)である。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
「処置する」または「処置すること」とは、治療剤、例えば、本発明のいずれかの抗体
または抗原結合断片を含有する組成物を、当該治療剤が治療活性を有する1つ以上の疾患症状を有するまたは疾患を有する疑いのある対象または患者に、内部的または外部的に投与することを意味する。典型的には、この治療剤は、任意の臨床的に測定可能な程度にこのような症状(複数可)の後退を誘導するまたは進行を阻害することにより、処置を受ける対象または集団における1つ以上の疾患症状を緩和するのに有効な量で投与される。任意の特定の疾患症状を緩和するのに有効な治療剤の量は、患者の疾患状態、年齢、及び体重のような諸因子、ならびに患者において所望の応答を誘発する薬物の能力に応じて変動し得る。疾患症状が緩和したかどうかは、典型的には医師または技量を有する他の医療提供者により症状の重症度または進行状態を評価するために使用される、任意の臨床的測定により評価することができる。
【0056】
本発明は、抗CTLA-4抗体及びその使用方法を含む。本明細書において、「抗体」という用語は、所望の生物学的活性を示す任意の形態の抗体を指す。したがって、「抗体」は、最も広い意味で使用され、具体的には、以下に限定されないが、モノクローナル抗体(2つの軽鎖及び2つの重鎖を含む全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、及びラクダ化単一ドメイン抗体を網羅する。
【0057】
本発明は、抗CTLA-4抗原結合断片及びその使用方法を含む。本明細書において、別段の指示がない限り、「抗体断片」または「抗原結合断片」とは、抗体の抗原結合断片を指し、すなわち、全長抗体により結合される抗原に対し特異的に結合する能力を保持する抗体断片、例えば、1つ以上のCDR領域を保持する断片を指す。抗原結合断片の例としては、以下に限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子、例えばsc-Fv;ナノボディ、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0058】
本発明は、抗CTLA-4 Fab断片及びその使用方法を含む。「Fab断片」は、1つの軽鎖と、1つの重鎖のCH1及び可変領域とから構成される。Fab分子の重鎖は、もう1つの重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fab断片」は、抗体のパパイン切断の産物であり得る。
【0059】
本発明は、抗CTLA-4抗体及びFc領域を含むその抗原結合断片、ならびにこれらの使用方法を含む。「Fc」領域は、抗体のCH2及びCH3ドメインを含む2つの重鎖断片を含有する。この2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合により、そしてCH3ドメインの疎水性相互作用により、一緒に保持される。
【0060】
本発明は、抗CTLA-4 Fab’断片及びその使用方法を含む。「Fab’断片」は、1つの軽鎖と、2つのFab’断片の2つの重鎖間で鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab’)2分子を形成することができるように、VHドメイン及びCH1ドメイン、ならびにCH1及びCH2ドメイン間の領域を含有する、1つの重鎖の一部または断片とを含有する。
【0061】
本発明は、抗CTLA-4 F(ab’)2断片及びその使用方法を含む。「F(ab’)2断片」は、2つの軽鎖と、2つの重鎖間で鎖間ジスルフィド結合が形成されるように、CH1及びCH2ドメイン間の定常領域の一部を含有する、2つの重鎖とを含有する。したがって、F(ab’)2断片は、2つの重鎖によるジスルフィド結合により一緒に保持されている、2つのFab’断片から構成されている。「F(ab’)2断片」は、抗体のペプシン切断の産物であり得る。
【0062】
本発明は、抗CTLA-4 Fv断片及びその使用方法を含む。「Fv領域」は、重鎖
及び軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域を欠いている。
【0063】
本発明は、抗CTLA-4 scFv断片及びその使用方法を含む。「単鎖Fv」または「scFv」抗体という用語は、抗体のVH及びVLドメインを含む抗体断片を指し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般的には、Fvポリペプチドはさらに、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にする、VH及びVLドメイン間のポリペプチドリンカーを含む。scFvの概説としては、Pluckthun(1994)The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315を参照。また、国際特許出願公開第WO88/01649号及び米国特許第4,946,778及び第5,260,203号も参照。
【0064】
本発明は、抗CTLA-4ドメイン抗体及びその使用方法を含む。「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含有する、免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片である。場合によっては、2つ以上のVH領域はペプチドリンカーと共有結合して、二価のドメイン抗体を創出する。この二価のドメイン抗体の2つのVH領域は、同じ抗原を標的化することもあれば、異なる抗原を標的化することもある。
【0065】
本発明は、抗CTLA-4二価抗体及びその使用方法を含む。「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。場合によっては、この2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。ただし、二価抗体は二重特異性であってもよい(以下参照)。
【0066】
本発明は、抗CTLA-4ラクダ化単一ドメイン抗体及びその使用方法を含む。ある特定の実施形態において、本明細書における抗体は、ラクダ化単一ドメイン抗体も含む。例えば、Muyldermans et al.(2001)Trends Biochem.Sci.26:230;Reichmann et al.(1999)J.Immunol.Methods 231:25;WO94/04678;WO 94/25591;米国特許第6,005,079号を参照。
【0067】
一実施形態において、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるような修飾を伴った2つのVHドメインを含む、単一ドメイン抗体を提供する。
【0068】
本発明は、抗CTLA-4ダイアボディ及びその使用方法を含む。本明細書において、「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する低分子の抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖内で軽鎖可変ドメイン(VL)に接続している重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VLまたはVL-VH)を含む。同じ鎖上で2つのドメイン間を対合させることができない程度に短いリンカーを使用することにより、これらのドメインは、強制的に別の鎖の相補的なドメインと対合して2つの抗原結合部位を創出する。ダイアボディについては、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHolliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448において、より十分に説明されている。操作された抗体バリアントの概説については、概してHolliger and Hudson(2005)Nat.Biotechnol.23:1126-1136を参照。
【0069】
典型的には、何らかの方法で修飾されている本発明の抗体または抗原結合断片は、その結合活性をモルベースで表現した場合に、(親抗体との比較で)結合活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、本発明の抗体または抗原結合断片は、親抗体としてのCTLA-4結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%、もしくは100%、またはそれ以上を保持する。また、本発明の抗体またはその抗原結合断
片は、その生物学的活性を実質的に改変しない保存的または非保存的アミノ酸置換(抗体の「保存的バリアント」または「機能保存されたバリアント」と呼ばれる)を含み得ることも意図されている。
【0070】
本発明は、単離された抗CTLA-4抗体及びその抗原結合断片、ならびにこれらの使用方法を含む。「単離された」抗体またはその抗原結合断片は、これらが産生される細胞または細胞培養物からの他の生物学的分子を少なくとも部分的に含まない。このような生物学的分子としては、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または細胞デブリ及び成長培地のような他の材料が挙げられる。単離された抗体または抗原結合断片はさらに、宿主細胞からのまたはその成長培地の生物学的分子のような発現システム構成成分を少なくとも部分的に含まなくてもよい。一般的には、「単離された」という用語は、このような生物学的分子の完全な不在、または水、緩衝液、もしくは塩、または抗体もしくは断片を含む医薬製剤の構成成分の不在を指すようには意図されていない。
【0071】
本発明は、抗CTLA-4キメラ抗体(例えば、ヒト定常ドメイン/マウス可変ドメイン)及びその使用方法を含む。本明細書において、「キメラ抗体」は、第1の抗体からの可変ドメイン及び第2の抗体からの定常ドメインを有する抗体であり、この第1及び第2の抗体は異なる種からのものである(米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855)。典型的には、可変ドメインはげっ歯類のような実験動物からの抗体(「親抗体」)から取得され、定常ドメイン配列はヒト抗体から取得され、これにより、得られるキメラ抗体が、親(例えば、マウス)抗体の場合よりも、ヒト対象において有害な免疫応答を誘発しにくいようにする。
【0072】
本発明は、抗CTLA-4ヒト化抗体及びその抗原結合断片(例えば、ヒト化されたラットまたはマウス抗体)、ならびにこれらの使用方法を含む。本発明は、実施例に示すような任意のヒト化バージョンのhCTLA4.27A抗体を含む。本明細書において、「27抗体」及び「hCTLA4.27」は互換的に使用され、配列番号7のVH領域及び配列番号8のVL領域を含む抗体、より好ましくは、配列番号10、12、14、16、18、または20のいずれかのVH領域と、配列番号22、24、26、または30のいずれかのVL領域とを含む抗体を指す。本明細書において、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト及び非ヒト(例えば、マウスまたはラット)両方の抗体からの配列を含有する、抗体の形態を指す。概して、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、フレームワーク領域(FR)の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含むことができる。
【0073】
概して、基本的な抗体構造ユニットは、四量体を含む。各四量体は、同一な2対のポリペプチド鎖を含み、各対が1つの「軽」(約25kDa)鎖及び1つの「重」(約50~70kDa)鎖を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う、約100から110、またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を定義し得る。典型的には、ヒト軽鎖は、カッパ及びラムダ軽鎖として分類される。さらにヒト重鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして定義する。軽鎖及び重鎖内において、可変領域及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域により連結され、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。概して、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照。
【0074】
各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。したがって、概して、インタクトな抗体は2つの結合部位を有する。二機能性または二重特異性抗体以外では、概して、2つの結合部位は同じである。
【0075】
典型的には、重鎖及び軽鎖両方の可変ドメインは、比較的保存的なフレームワーク領域(FR)に位置する3つの超可変領域(別名相補性決定領域(CDR))を含む。CDRは、通常、フレームワーク領域により整列され、それにより、特定のエピトープへの結合が可能になる。概して、軽鎖及び重鎖両方の可変ドメインは、N末端からC末端にかけて、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。各ドメインに対するアミノ酸の割当ては、一般的には、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabat,et al.,(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothia,et al.,(1987)J Mol.Biol.196:901-917、またはChothia,et al.,(1989)Nature 342:878-883の定義に従う。
【0076】
本明細書において、「超可変領域」という用語は、抗原結合を担う抗体またはその抗原結合断片のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」(すなわち、軽鎖可変ドメインのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3、ならびに重鎖可変ドメインのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3)からのアミノ酸残基を含む。Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(配列による抗体のCDR領域の定義)を参照。また、Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917(構造による抗体のCDR領域の定義)も参照。本明細書において、「フレームワーク」残基または「FR」残基という用語は、本明細書でCDR残基として定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。
【0077】
「単離された核酸分子」または「単離されたポリヌクレオチド」とは、この単離されたポリヌクレオチドが天然に見いだされるポリヌクレオチドの全てもしくは一部に関連していない、または天然に結合していないポリヌクレオチドに結合している、ゲノム、mRNA、cDNA、もしくは合成由来のDNAもしくはRNA、またはこれらの何らかの組合せを意味する。本開示の目的において、特定のヌクレオチド配列を「含む核酸分子」は、インタクトな染色体を含まないものと理解されるべきである。指定された核酸配列を「含む」単離された核酸分子は、この指定された配列に加えて、10まで、または20もしくはそれ以上までの他のタンパク質またはその一部もしくは断片のコード配列を含むことができ、あるいは、列挙された核酸配列のコード領域の発現を調節する作用可能に結合した制御配列を含むことができ、及び/またはベクター配列を含むことができる。
【0078】
「調節配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現させるのに必要なDNA配列を指す。原核生物に好適な調節配列としては、例えば、プロモーター、任意選択でオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを使用することが知られている。
【0079】
核酸またはポリヌクレオチドは、別の核酸配列と機能的な関係に置かれているときに「作用可能に結合」している。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドのDNAに対し作用可能に結合しており、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に提供を及ぼす場合、コード配列に対し作用可能に結合しており、あるいは、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように位置付けられている場合、コード配列に対し作用可能に結合している。一般的には、ただし常にではないが、「作用可能に結合」とは、結合しているDNA配列が近接していることを意味し、分泌リーダーの場合には、近接し、かつリーディングフェーズにあることを意味する。ただし、エンハンサーは近接していなくてもよい。結合は、好都合な制限部位におけるライゲーションにより遂行される。このような部位が存在しない場合、従来の慣例に従って合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを使用する。
【0080】
本明細書において、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」という表現は互換的に使用され、全てのこのような呼称は後代を含む。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語は、初代の主題細胞と、移行の回数に関係なくそれに由来する培養物とを含む。また、計画的または偶発的な変異に起因して、全ての後代が正確に同一なDNA内容物を有するわけではないことも理解される。最初に形質転換された細胞において同じ機能または生物学的活性を有するものとしてスクリーニングされる変異後代も含まれる。別々の名称が意図されている場合、それは文脈から明らかとなる。
【0081】
本明細書において、「生殖系列配列」とは、再編成されていない免疫グロブリンDNA配列の配列を指す。任意の好適な再編成されていない免疫グロブリン配列の供給源を使用することができる。ヒト生殖系列配列は、例えば、米国国立衛生試験所のNational Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin DiseasesのウェブサイトにあるJOINSOLVER生殖系列データベースから取得することができる。マウス生殖系列配列は、例えば、Giudicelli et al.(2005)Nucleic Acids Res.33:D256-D261に記載のように取得することができる。
【0082】
本発明の抗体は、本出願で定義する配列番号7及び8で提示する重鎖及び軽鎖の任意の組合せ、より好ましくは、配列番号10、12、14、16、18、または20で提示する重鎖と、配列番号22、24、26、及び30で提示する軽鎖とを含むことができる。
【0083】
このことは、以下の組合せがなされ得ることを意味する:
配列番号10の重鎖及び配列番号22の軽鎖を有する抗体;
配列番号12の重鎖及び配列番号22の軽鎖を有する抗体;
配列番号14の重鎖及び配列番号22の軽鎖を有する抗体;
配列番号16の重鎖及び配列番号22の軽鎖を有する抗体;
配列番号18の重鎖及び配列番号22の軽鎖を有する抗体;
配列番号20の重鎖及び配列番号22の軽鎖を有する抗体;
配列番号10の重鎖及び配列番号24の軽鎖を有する抗体;
配列番号12の重鎖及び配列番号24の軽鎖を有する抗体;
配列番号14の重鎖及び配列番号24の軽鎖を有する抗体;
配列番号16の重鎖及び配列番号24の軽鎖を有する抗体;
配列番号18の重鎖及び配列番号24の軽鎖を有する抗体;
配列番号20の重鎖及び配列番号24の軽鎖を有する抗体;
配列番号10の重鎖及び配列番号26の軽鎖を有する抗体;
配列番号12の重鎖及び配列番号26の軽鎖を有する抗体;
配列番号14の重鎖及び配列番号26の軽鎖を有する抗体;
配列番号16の重鎖及び配列番号26の軽鎖を有する抗体;
配列番号18の重鎖及び配列番号26の軽鎖を有する抗体;
配列番号20の重鎖及び配列番号26の軽鎖を有する抗体;
配列番号10の重鎖及び配列番号30の軽鎖を有する抗体;
配列番号12の重鎖及び配列番号30の軽鎖を有する抗体;
配列番号14の重鎖及び配列番号30の軽鎖を有する抗体;
配列番号16の重鎖及び配列番号30の軽鎖を有する抗体;
配列番号18の重鎖及び配列番号30の軽鎖を有する抗体;
配列番号20の重鎖及び配列番号30の軽鎖を有する抗体。
【0084】
例示的な抗CTLA-4抗体の物理的及び機能的特性
本発明は、指定された構造的及び機能的特徴を有する抗CTLA-4抗体及びその抗原結合断片、ならびに疾患(例えば、がんまたは感染性疾患)の処置または予防における抗体またはその抗原結合断片の使用方法を提供する。これらは全て、実施例に記載のように見いだされた、配列番号32の重鎖及び配列番号34の軽鎖を有する(これらをコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号31及び33である)マウス抗体に由来するものである。
【0085】
この抗体及びこれに由来するヒト化抗体は、20nM未満、好ましくは1nM未満のEC50でヒトCTLA-4(hCTLA-4)に結合し、hCD80またはhCD86に対するhCTLA-4の結合を、hCD80のブロックについては100nM未満、好ましくは10nM未満のIC50で、hCD86のブロックについては好ましくは10nM未満、より好ましくは2.5nM未満のIC50でブロックすることができることから特徴づけられる。注目すべきことは、本発明の抗体のhCD80ブロックプロファイルが、10D1(イピリムマブ)及びCP-675,206(トレメリムマブ)のhCD80ブロックプロファイルの間にあることである(
図2参照)。当該抗体は、CTLA-4分子の異なるエピトープに結合するため、イピリムマブ及びトレメリムマブとは異なる。相違点の1つは、配列が配列番号44で示されるキメラマウス-ヒトCTLA4分子(
図5も参照)に対し、本発明の抗体または抗原結合断片は結合せず、一方10D1及びCP-675,206は結合することである。
【0086】
標的抗原に対する抗体エピトープの精細なマッピングに利用できる方法はいくつか存在し、これにはH/D-Ex質量分析、X線結晶解析、ペプチドアレイ、及び部位特異的変異誘発が含まれる。例えば、HDX(水素-重水素交換)をタンパク質分解及び質量分析と共に使用して、特定の抗原Yに対する抗体のエピトープを決定することができる。HDX-MSは、抗原単独及び抗体の存在下で、様々な時間間隔においてD2Oでインキュベートしたときの、抗原による重水素取込み程度の正確な測定及び比較に依存する。重水素は、露出エリア内のタンパク質のアミド骨格上にある水素と交換される一方、抗体に結合した抗原の領域は、保護され、タンパク質分解断片のLC-MS/MSによる解析の後にほとんどまたは全く交換を示さない。
【0087】
また、本発明は、ヒトCTLA-4のエピトープに結合し、ただし配列番号44のマウス-ヒトキメラCTLA-4分子には結合しない、抗CTLA-4抗体も含む。
【0088】
他の実施形態において、本発明は、ヒトCTLA-4(例えば、ヒト化抗体)に結合し、配列番号7~30のアミノ酸配列に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、好ましくは配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または30に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、VLドメイン及びVHドメインを有する抗体またはその抗原結合断片であって、こ
のバリアントが所望の結合及び特性、すなわちCTLA-4に結合する能力ならびにCD80及び/またはCD86に対するCTLA-4の結合をブロックする能力を提供する、抗体またはその抗原結合断片を提供する。他の実施形態において、本発明は、ヒトCTLA-4(例えば、ヒト化抗体)に結合し、配列番号7~30のアミノ酸配列に対し少なくとも95%の配列同一性を有する、好ましくは配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または30に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、VLドメイン及びVHドメインを有する抗体またはその抗原結合断片を提供する。他の実施形態において、本発明は、ヒトCTLA-4(例えば、ヒト化抗体)に結合し、配列番号7~30のアミノ酸配列に対し少なくとも97%の配列同一性を有する、好ましくは配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または30に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、VLドメイン及びVHドメインを有する抗体またはその抗原結合断片を提供する。他の実施形態において、本発明は、ヒトCTLA-4(例えば、ヒト化抗体)に結合し、配列番号7-30のアミノ酸配列に対し少なくとも99%の配列同一性を有する、好ましくは配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、または30に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、VLドメイン及びVHドメインを有する抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0089】
「保存的に修飾されたバリアント」または「保存的置換」とは、タンパク質内のアミノ酸が、同様の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格コンフォメーション、及び合成など)を有する他のアミノ酸との置換であって、この変更が、タンパク質の生物学的活性を改変することなく頻繁に行うことができるような置換を指す。当業者は、概して、ポリペプチドの本質的でない領域における単一のアミノ酸置換は、生物学活性を実質的に改変しないことを認識している(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照)。加えて、構造的または機能的に類似するアミノ酸の置換は、生物学的活性を損なう可能性がより低い。例示的な保存的置換を、表2に示す。
【0090】
【0091】
本発明の抗体の機能保存的バリアントも、本発明により企図されている。本明細書において「機能保存的バリアント」とは、抗原親和性及び/または特異性のような所望の特性を改変することなく、1つ以上のアミノ酸残基が変更された抗体または断片を指す。このようなバリアントとしては、以下に限定されないが、同様の特性を有するアミノ酸によるアミノ酸の置き換え、例えば、表2の保存的アミノ酸置換が挙げられる。また、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上までのアミノ酸置換を有する、本発明の抗CTLA-4抗体のVLドメイン(例えば、配列番号22、24、26、30)を含む単離されたポリペプチド、及び本発明のCTLA-4抗体のVHドメイン(例えば、配列番号10、12、14、16、18、20)を含む単離されたポリペプチドも提供される。
【0092】
別の実施形態において、ヒトCTLA-4に結合し、本明細書に記載のVLドメイン及びVHドメインの1つ以上に対し少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、または75%の配列同一性を有するVLドメイン及びVHドメインを有し、CTLA-4に対する特異的な結合を示す、抗体またはその抗原結合断片が提供される。別の実施形態において、本発明の結合する抗体またはその抗原結合断片は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25またはそれ以上までのアミノ酸置換を有するVL及びVHドメイン(シグナル配列を伴うまたは伴わない)を含み、CTLA-4に対する特異的な結合を示す。
【0093】
ポリヌクレオチド及びポリペプチド
本発明はさらに、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片のポリペプチドまたは免疫グロブリン鎖のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む。例えば、本発明は、配列番号1~30に記載のアミノ酸をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0094】
一実施形態において、本明細書に示される単離された抗体または抗原結合断片のポリペプチド鎖をコードする、単離されたポリヌクレオチド(例えば、DNA)が提供される。一実施形態において、この単離されたポリヌクレオチドは、本発明による少なくとも1つの成熟した免疫グロブリン軽鎖可変(VL)ドメイン及び/または本発明による少なくとも1つの成熟した免疫グロブリン重鎖可変(VH)ドメインを含む、抗体またはその抗原結合断片をコードする。一部の実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、単一のポリヌクレオチド分子上の軽鎖及び重鎖の両方をコードし、他の実施形態において、軽鎖及び重鎖は、別々のポリヌクレオチド分子上でコードされる。別の実施形態において、ポリヌクレオチドはさらに、シグナル配列をコードする。
【0095】
一実施形態において、本発明は、HCDR-1(配列番号1)、HCDR-2(配列番号2)、及びHCDR-3(配列番号3)を含む抗体の重鎖可変(VH)ドメインまたはその抗原結合断片をコードする、単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0096】
一実施形態において、本発明は、LCDR-1(配列番号4)、LCDR-2(配列番号5)、及びLCDR-3(配列番号6)を含む抗体の軽鎖可変(VL)ドメインまたはその抗原結合断片をコードする、単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0097】
一実施形態において、本発明は、配列番号7の免疫グロブリン重鎖可変(VH)ドメインをコードする、単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0098】
一実施形態において、本発明は、配列番号8の免疫グロブリン軽鎖可変(VL)ドメインをコードする、単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0099】
一実施形態において、本発明は、ヒト化重鎖をコードする配列番号9、11、13、15、17、または19のいずれかによる単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0100】
一実施形態において、本発明は、ヒト化軽鎖をコードする配列番号21、23、25、または29のいずれかによる単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0101】
本発明のさらなる実施形態において、ヒト化重鎖をコードする配列番号9、11、13、15、17、または19のいずれかによる単離されたポリヌクレオチドと、ヒト化軽鎖をコードする配列番号21、23、25、または29による単離されたポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチドが含まれる。これらの全ての考えられる組合せが含まれる。したがって、本発明は、配列番号9及び配列番号21を含むポリヌクレオチド、配列番号11及び配列番号21を含むポリヌクレオチド、配列番号13及び配列番号21を含むポリヌクレオチド、配列番号15及び配列番号21を含むポリヌクレオチド、配列番号17及び配列番号21を含むポリヌクレオチド、配列番号19及び配列番号21を含むポリヌクレオチド、配列番号9及び配列番号23を含むポリヌクレオチド、配列番号11及び配列番号23を含むポリヌクレオチド、配列番号13及び配列番号23を含むポリヌクレオチド、配列番号15及び配列番号23を含むポリヌクレオチド、配列番号17及び配列番号23を含むポリヌクレオチド、配列番号19及び配列番号23を含むポリヌクレオチド、配列番号9及び配列番号25を含むポリヌクレオチド、配列番号11及び配列番号25を含むポリヌクレオチド、配列番号13及び配列番号25を含むポリヌクレオチド、配列番号15及び配列番号25を含むポリヌクレオチド、配列番号17及び配列番号
25を含むポリヌクレオチド、配列番号19及び配列番号25を含むポリヌクレオチド、配列番号9及び配列番号29を含むポリヌクレオチド、配列番号11及び配列番号29を含むポリヌクレオチド、配列番号13及び配列番号29を含むポリヌクレオチド、配列番号15及び配列番号29を含むポリヌクレオチド、配列番号17及び配列番号29を含むポリヌクレオチド、及び/または配列番号19及び配列番号29を含むポリヌクレオチドを含む。
【0102】
また、本発明は、本発明の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、プラスミドのような発現ベクター)であって、ポリヌクレオチドが、宿主細胞がベクターで形質移入されたときに宿主細胞により認識される制御配列に対し作用可能に結合している、ベクターも提供する。また、本発明のベクターを含む宿主細胞、及び本明細書で開示されている抗体もしくはその抗原結合断片またはポリペプチドを産生する方法であって、抗体またはその抗原結合断片の免疫グロブリン鎖をコードする発現ベクターまたは核酸を有する宿主細胞を培地中で培養することと、抗体またはその抗原結合断片を宿主細胞または培地から単離することとを含む、方法も提供される。
【0103】
また、本発明には、ポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチド)であって、BLASTアルゴリズムにより比較を実施したときに、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列に対し、少なくとも約75%同一な、80%同一な、より好ましくは少なくとも約90%同一な、最も好ましくは少なくとも約95%同一な(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)アミノ酸配列を含む、ポリペプチドも含まれ、BLASTアルゴリズムのパラメーターは、それぞれの配列とそれぞれの全長の参照配列との間で最大のマッチをもたらすように選択される(例えば、予測閾値:10;ワードサイズ:3;クエリー範囲における最大マッチ:0;BLOSUM 62マトリックス;ギャップコスト:existence 11、extension 1;条件付き組成スコアマトリックス調整)。
【0104】
配列同一性とは、2つの配列を最適にアラインメントしたときに、2つのポリペプチドのアミノ酸が、同等の位置において同じである程度を指す。
【0105】
以下の参考文献は、配列解析にしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関するものである:BLASTアルゴリズム:Altschul et al.(2005)FEBS J.272(20):5101-5109;Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.et al.,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;アラインメントスコアリングシステム:Dayhoff,M.O.,et al.,“A model of evolutionary change in proteins.”(Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC);Schwartz,R.M.,et al.,“Matrices for detecting distant relationships.”(Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.”M.O.Dayhof
f(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC);Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;アラインメント統計:Karlin,S.,et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;及びAltschul,S.F.“Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.”(Theoretical and Computational Methods in
Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997)pp.1-14,Plenum,New York)。
【0106】
結合親和性
限定ではなく例として、本明細書で開示されている抗体及び抗原結合断片は、以下のアミノ酸配列:(配列番号36):
【0107】
【0108】
を含むヒトCTLA-4(NCBIアクセッション番号NM_005214.4)に対し、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE)または同様の技法(例えば、KinExaまたはOCTET)により少なくとも約1×10-9Mと測定されるKD値(すなわち、1×10-9M以下のKD値)で、結合することができる。
【0109】
免疫細胞活性化
一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、免疫細胞の活性を増大させる。免疫細胞の活性の増大は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて検出することができる。一実施形態において、免疫細胞の活性の増大は、免疫細胞の増殖を測定することにより検出することができる。例えば、T細胞の活性の増大は、T細胞の増殖、またはシグナル伝達事象(例えば、転写調節因子にシグナルを伝える免疫受容体もしくは下流キナーゼのチロシンリン酸化)を測定することにより、検出することができる。他の実施形態において、免疫細胞の活性の増大は、特定の標的細胞に対するCTLもしくはNK細胞の細胞傷害機能、または抗腫瘍免疫の刺激に付随するIFNγサイトカイン応答を測定することにより、検出することができる。また他の実施形態において、免疫細胞の活性の増大は、対象に由来する試料においてT細胞活性化をex vivoで測定することにより、検出することができる。一実施形態において、T細胞活性の増大は、以下により決定される:(i)IL-2、TNFα、IL-17、IFNγ、IL-1β、GM-CSF、RANTES、IL-6、IL-8、IL-5、及びIL-13から選択される1つ以上の炎症促進性サイトカインのSEB(StaphylococcusエンテロトキシンB)誘導産生、またはCD25及びCD69からなる群からの膜活性化マーカーの上方制御、またはフローサイトメトリーもしくは3H取込みによる芽細胞形成の検出を用いた増殖の誘導を測定すること、あるいは(ii)IL-2、TNFα、IL-17、IFNγ、
IL-1β、GM-CSF、RANTES、IL-6、IL-8、IL-5、及びIL-13からなる群から選択されるサイトカインの産生を誘導するための、混合リンパ球反応またはT細胞受容体(TCR)シグナリングの直接的抗CD3 mAb刺激、またはCD25及びCD69からなる群からの膜活性化マーカーの上方制御、またはフローサイトメトリーもしくは3H取込みによる芽細胞形成の検出を用いた増殖の誘導を測定すること。ある特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、CD80及びCD86を発現するラージ細胞に提示されたときにCD3+ T細胞を刺激して、IL-2、TNFα、IL-17、IFNγ、IL-1β、GM-CSF、RANTES、IL-6、IL-8、IL-5、及びIL-13からなる群から選択される炎症促進性サイトカイン、またはCD25及びCD69からなる群からの膜活性化マーカーの上方制御、またはフローサイトメトリーもしくは3H取込みによる芽細胞形成の検出を用いた増殖の誘導をもたらす。ある特定の実施形態において、本発明の抗CTLA4抗体またはその抗原結合断片は、活性化T細胞によるIL-2及び/またはIFNγの産生を少なくとも1.5倍刺激する。実験部分から明らかであるように、本発明の抗体におけるT細胞活性化の特徴は、公知の先行技術のhCTLA4抗体イピリムマブ及びトレメリムマブにおけるT細胞刺激の特徴にほぼ等しい。
【0110】
抗hCTLA-4抗体のエフェクター機能
一部の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体または抗原結合断片は、CTLA-4+制御性T細胞を枯渇させることができる。このようなエフェクター機能を発揮する抗体の能力は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて決定することができる。一実施形態において、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を誘導する抗体の能力は、エフェクター細胞としてのナチュラルキラー細胞と、ヒトCTLA-4を安定的に発現する細胞株とを用いて決定する。実験セクションで示すように、ヒトIgG1 Fc部分を有するhCTLA-4抗体は、CTLA-4+細胞上でADCCを誘導することができる。
【0111】
別の実施形態において、抗体における補体依存性細胞傷害を誘導する能力は、ヒト補体と、ヒトCTLA-4を安定的に発現する細胞株とを用いて決定される。実験セクションで示すように、ヒトIgG1 Fc部分を有するhCTLA-4抗体は、CTLA-4+細胞上でCDCを誘導することができる。
【0112】
別の実施形態において、細胞媒介性溶解を誘導する抗体の能力は、イピリムマブのようなhIgG1 CTLA-4抗体の文脈でCTLA-4+ TregのFcγRIIIA依存性溶解を誘導する非古典的なCD14+CD16++単球を用いて決定することができる(Romano et al;PNAS;2015;6140-6145;doi:10.1073/pnas.1417320112)。
【0113】
hCD80及びhCD86に対する結合をブロックする抗hCTLA-4抗体の能力
一部の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体または抗原結合断片は、ヒトCD80及び/またはヒトCD86に対するヒトCTLA-4の結合をブロックすることができる。ヒトCD80及び/またはヒトCD86に対しヒトCTLA-4が結合するのをブロックする能力は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて決定することができる。一実施形態において、ヒトCD80及び/またはヒトCD86に対するヒトCTLA-4の結合をブロックする抗体の能力は、ELISAアッセイを用いて決定する。
【0114】
実験セクションで示すように、CTLA-4がヒトCD80及び/またはヒトCD86に結合するのをブロックする効力は、公知の抗CTLA-4抗体イピリムマブ及びトレメリムマブの活性に似ている。強調されるべきは、本発明の抗CTLA-4抗体が、hCD80のブロックについて、イピリムマブ及びトレメリムマブの効果の中間の有効性を示したことである(
図2参照)。
【0115】
抗体及びその抗原結合断片を作製する方法
したがって、本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を作製する方法であって、抗体または断片を発現するハイブリドーマ細胞をこのような発現に好ましい条件下で培養することと、任意選択で、ハイブリドーマ及び/または成長培地(例えば、細胞培地)から抗体または断片を単離することとを含む、方法を含む。
【0116】
ラット及びマウス以外の動物に由来するモノクローナル抗体は、固有の利点をもたらす。マウス、ラット、及びヒト間では、シグナル伝達及び疾患に関連する多くのタンパク質標的が高度に保存されており、そのため、このようなタンパク質標的はマウスまたはラット宿主により自己抗原として認識され、免疫原性を低下させる恐れがある。この問題は、ウサギを宿主動物として使用すると回避することができる。例えば、Rossi et al.,Am.J.Clin.Pathol.,124,295-302,2005を参照。
【0117】
ハイブリドーマ技術を用いて特定の抗体を産生しスクリーニングする方法は、通常に行われており、当技術分野において周知である。非限定的な一例では、マウスは、対象の抗原またはこのような抗原を発現する細胞で免疫化することができる。ひとたび免疫応答が検出されたら(例えば、抗原に対し特異的な抗体がマウス血清中で検出されたら)、マウスの脾臓を採取し、脾細胞を単離する。Steenbakkers et al.,1994,Mol.Biol.Rep.19:125-134で説明されているように、B細胞を培養した。
【0118】
次に、反応性上清からのB細胞クローンを、例えば、公開されている手順に従ったミニ電気融合により、不死化する(Steenbakkers et al.,1992,J.Immunol.Meth.152:69-77;Steenbakkers et al.,1994,Mol.Biol.Rep.19:125-34)。ハイブリドーマを選択し、限界希釈によりクローニングする。
【0119】
次に、ハイブリドーマクローンについて、当技術分野で公知の方法により、抗原に結合可能な抗体を分泌する細胞をアッセイする。腹水液(一般的には高レベルの抗体を含有する)は、マウスの腹腔内に陽性ハイブリドーマクローンを接種することにより生成することができる。
【0120】
抗体生成の方法で使用され得るアジュバントとしては、以下に限定されないが、タンパク質アジュバント;細菌アジュバント、例えば、全細菌(BCG、Corynebacterium parvum、Salmonella minnesota)及び細菌構成成分(細胞壁骨格、トレハロースジマイコレート、モノホスホリルリピドA、tubercle bacillusのメタノール抽出可能な残渣(MER)、完全もしくは不完全フロイントアジュバント);ウイルスアジュバント;化学アジュバント、例えば水酸化アルミニウム、ヨード酢酸塩、及びヘミコハク酸コレステリル;またはネイキッドDNAアジュバントが挙げられる。本発明の方法で使用され得る他のアジュバントとしては、コレラ毒素、パロポックス(paropox)タンパク質、MF-59(Chiron Corporation;以下も参照:Bieg et al.(1999)“GAD65 And Insulin B Chain Peptide(9-23)Are Not
Primary Autoantigens In The Type 1 Diabetes Syndrome Of The BB Rat,”Autoimmunity,31(1):15-24(参照により本明細書に組み込まれる))、MPL(登録商標)(Corixa Corporation;以下も参照:Lodmell et al.(2000)“DNA Vaccination Of Mice Against
Rabies Virus:Effects Of The Route Of Vaccination And The Adjuvant Monophosphoryl Lipid A(MPL),”Vaccine,18:1059-1066;Johnson et al.(1999)“3-O-Desacyl Monophosphoryl Lipid A Derivatives:Synthesis And Immunostimulant Activities,”Journal of Medicinal Chemistry,42:4640-4649;Baldridge
et al.(1999)“Monophosphoryl Lipid A(MPL)Formulations For The Next Generation Of
Vaccines,”Methods,19:103-107(いずれも参照により本明細書に組み込まれる))、RC-529アジュバント(Corixa Corporation;Corixaのアミノアルキルグルコサミニド-4-ホスフェート(AGP)化学物質ライブラリーからのリード化合物、www.corixa.comも参照)、及びDETOX(商標)アジュバント(Corixa Corporation;DETOX(商標)アジュバントは、MPL(登録商標)アジュバント(モノホスホリルリピドA)及びマイコバクテリア細胞壁骨格を含む;以下も参照:Eton et al.(1998)“Active Immunotherapy With Ultraviolet B-Irradiated Autologous Whole Melanoma
Cells Plus DETOX In Patients With Metastatic Melanoma,”Clin.Cancer Res.4(3):619-627;及びGupta et al.(1995)“Adjuvants For Human Vaccines - Current Status,Problems
And Future Prospects,”Vaccine,13(14):1263-1276(いずれも参照により本明細書に組み込まれる))。
【0121】
多数の刊行物が、選択アナライトに結合するポリペプチドのライブラリーを産生しスクリーニングするためのファージディスプレイ技術の使用について論じている。例えば、Cwirla et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,6378-82,1990;Devlin et al.,Science 249,404-6,1990,Scott and Smith,Science 249,386-88,1990;及びLadner et al.,米国特許第5,571,698号を参照。ファージディスプレイ法の基本概念は、スクリーニング対象のポリペプチドをコードするDNAと、当該ポリペプチドとの間の物理的会合の確立である。この物理的会合はファージ粒子によりもたらされ、ファージ粒子は、ポリペプチドを、当該ポリペプチドをコードするファージゲノムを封入するカプシドの一部として提示する。ポリペプチドとその遺伝的材料との間の物理的会合が確立することにより、極めて多数の異なるファージ担持ポリペプチドを同時に質量スクリーニングすることが可能になる。ある標的に対する親和性を有するポリペプチドを提示するファージはこの標的に結合し、このファージは標的に対する親和性スクリーニングにより濃縮される。このファージから提示されるポリペプチドの同一性は、それぞれのゲノムから決定することができる。この方法を用いて、所望の標的に対する結合親和性を有すると同定されたポリペプチドは、次に、従来的手段によりバルク合成することができる。例えば、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,057,098号を、全ての表、図、及び請求項を含めて参照。
【0122】
これらの方法により生成される抗体は、次に、精製された対象ポリペプチドとの親和性及び特異性についての第1のスクリーニングにより選択され、必要な場合、その結果は、結合から除外されることが所望されるポリペプチドとの親和性及び特異性と比較することができる。スクリーニング手順は、精製されたポリペプチドをマイクロタイタープレートの別々のウェルに固定化することを伴い得る。次に、潜在的な抗体または抗体集団を含有する溶液をそれぞれのマイクロタイターウェルに淹れ、約30分から2時間インキュベー
トする。次にマイクロタイターウェルを洗浄し、標識された二次抗体(例えば、産生抗体がマウス抗体の場合は、アルカリホスファターゼに結合した抗マウス抗体)をウェルに添加し、約30分間インキュベートし、次に洗浄する。基質をウェルに添加すると、固定化されたポリペプチド(複数可)に対する抗体の存在箇所に着色反応が表れる。
【0123】
このように同定された抗体は、次に、選択されたアッセイ設計において親和性及び特異性についてさらに解析することができる。標的タンパク質に対する免疫アッセイの開発において、精製された標的タンパク質は、選択された抗体を用いた免疫アッセイの感受性及び特異性を判断するための標準物質として作用する。種々の抗体の結合親和性は異なることがあり、(例えば、サンドイッチアッセイにおける)ある特定の抗体のペアは、互いに立体的に干渉するなどの可能性があるため、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対的な親和性及び特異性よりも重要であり得る。
【0124】
また、抗体は、機能的な内在性免疫グロブリンを発現不可能でヒト免疫グロブリン遺伝子を発現可能なトランスジェニックマウスを用いて、産生することもできる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖の免疫グロブリン遺伝子複合体を、ランダムに、または相同的組換えにより、マウス胚幹細胞に導入することができる。代替的に、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域を、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えてマウス胚幹細胞に導入してもよい。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同的組換えによるヒト免疫グロブリン座位の導入と別々にまたは同時に、機能しないようにすることができる。詳細には、JH領域のホモ接合性欠失は、内在性抗体の産生を防止する。修飾された胚幹細胞を増やし、胚盤胞にマイクロインジェクトして、キメラマウスを作製する。次に、キメラマウスを繁殖させて、ヒト抗体を発現するホモ接合性の子孫を作製する。トランスジェニックマウスを、選択された抗原(例えば、本発明のポリペプチドの全てまたは一部)により、従来的方法論を用いて免疫化する。この抗原を対象とするモノクローナル抗体は、従来的なハイブリドーマ技術を用いて、免疫化されたトランスジェニックマウスから取得することができる。トランスジェニックマウスが有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中に再編成し、続いてクラススイッチ及び体細胞変異を経る。したがって、このような技法を用いて、治療的に有用なIgG、IgA、IgM、及びIgE抗体を産生することが可能である。このヒト抗体産生のための技術の概要については、Lonberg et al.(1995)“Human Antibodies From Transgenic Mice,”Int.Rev.Immunol.13:65-93を参照(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。このヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体の産生のための技術ならびにこのような抗体産生のためのプロトコルについては、例えば、国際公開第WO98/24893号、第WO96/34096号、及びWO96/33735号;ならびに米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、及び第5,939,598号を参照(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。加えて、Abgenix/Amgen(Freemont,Calif.)及びMedarex/BMS(Princeton,N.J.)、Kymab(Cambridge,UK)及びMerus(Utrecht,Netherlands)のような企業は、上述と同様の技術を用いて、選択された抗原を対象とするヒト抗体の提供に従事している可能性がある。
【0125】
本明細書で開示されている抗CTLA-4抗体は、組換えにより産生することもできる(例えば、E.coli/T7発現システム、哺乳類細胞発現システム、またはより下等な真核生物発現システムにおいて)。この実施形態において、本発明の免疫グロブリン分子をコードする核酸(例えば、VHまたはVL)は、pETベースのプラスミドに挿入し、E.coli/T7発現システムで発現させることができる。例えば、本発明は、抗体もしくはその抗原結合断片、またはその免疫グロブリン鎖を宿主細胞(例えば、E.co
li(例えば、BL21またはBL21DE3)のような細菌宿主細胞)内で発現させる方法であって、T7 RNAポリメラーゼを、T7プロモーターに作用可能に結合した免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチドも含む細胞内で発現させることを含む、方法を含む。例えば、本発明の一実施形態において、E.coliのような細菌宿主細胞は、lacプロモーターに作用可能に結合したT7 RNAポリメラーゼ遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み、このポリメラーゼ及び鎖の発現は、宿主細胞をIPTG(イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド)と共にインキュベートすることにより誘導される。
【0126】
モノクローナル抗体調製物は、ハイブリドーマの使用、組換え体、及びファージディスプレイ技術、またはこれらの組合せを含めた、当技術分野で公知の多岐にわたる技法を用いて産生することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の技法や、例えば、Harlow et al.,ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,(Cold Spring Harbor Laboratory
Press,2nd ed.1988);Hammerling,et al.,(MONOCLONAL ANTIBODIES AND T-CELL HYBRIDOMAS,pp.563-681(Elsevier,N.Y.,1981))(いずれについても、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で教示されている技法を含めたハイブリドーマ技法を用いて、産生することができる。本明細書において「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により産生される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、真核生物、原核生物、またはファージのクローンを含めた単一クローンに由来する抗体を指し、その産生に用いる方法を指すものではない。抗体の組換え産生のための方法の一例は、米国特許第4,816,567号に開示されている。
【0127】
したがって、本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体もしくはその抗原結合断片、またはその免疫グロブリン鎖を作製するための組換え方法であって、抗体または断片の1つ以上の免疫グロブリン鎖(例えば、免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖)をコードするポリヌクレオチドを導入することと、宿主細胞(例えば、CHOまたはPichiaもしくはPichia pastoris)を、このような発現に好ましい条件下で培養することと、任意選択で、抗体もしくは断片または鎖を、宿主細胞及び/または宿主細胞が成長する培地から単離させることとを含む、方法を含む。
【0128】
また、抗CTLA-4抗体は、米国特許第6,331,415号に示されている方法のいずれかにより合成することもできる。
【0129】
真核生物及び原核生物の宿主細胞は、本明細書で開示されている抗体もしくは断片または免疫グロブリン鎖の発現のための宿主としての哺乳類細胞を含めて、当技術分野で周知であり、これには、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。これらには、特に、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、HEK-293細胞、及び他の多くの細胞株が含まれる。哺乳類宿主細胞としては、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、及びハムスターの細胞が挙げられる。特定の好ましい細胞株は、どの細胞株が高発現レベルを有するかを決定することにより選択される。使用され得る他の細胞株は、Sf9細胞のような昆虫細胞株、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞、及び真菌細胞である。真菌細胞としては酵母及び糸状菌細胞が挙げられ、これには例えば、Pichia
pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranae
faciens、Pichia minuta(Ogataea minuta、Pichia lindneri)、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia sp.、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces sp.、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces sp.、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、Physcomitrella patens及びNeurospora crassa、Pichia sp.、任意のSaccharomyces sp.、Hansenula polymorpha、任意のKluyveromyces sp.Candida albicans、任意のAspergillus sp.、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、任意のFusarium sp.、Yarrowia lipolytica、ならびにNeurospora crassaが含まれる。重鎖または抗原結合部分もしくはその断片、軽鎖及び/またはその抗原結合断片をコードする組換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入されるとき、抗体は、宿主細胞内での抗体もしくは断片または鎖の発現、あるいは宿主細胞が成長する培地内への分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することにより、産生される。
【0130】
様々な宿主発現ベクターシステムを利用して、本発明の抗体を発現させることができる。このような宿主発現システムは、抗体のコード配列が産生され、続いて精製され得るためのビヒクルに相当するが、さらに、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換または形質移入されたときに本発明の抗体をin situで発現する細胞にも相当するものである。これらには、以下に限定されないが、免疫グロブリンコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物、例えば、細菌(例えば、E.coli及びB.subtilis);免疫グロブリンコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);免疫グロブリンコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞システム;免疫グロブリンコード配列を含有する、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)及びタバコモザイクウイルス(TMV))に感染させた、または組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された、植物細胞システム;あるいは、哺乳類細胞のゲノム(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳類ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5kプロモーター)に由来するプロモーターを含有する組換え発現コンストラクトを有する哺乳類細胞システム(例えば、COS、CHO、BHK、293、293T、3T3細胞、リンパ細胞(米国特許第5,807,715号参照)、Per C.6細胞(Crucellにより開発されたラット網膜細胞))が含まれる。
【0131】
細菌システムでは、発現させる抗体について意図されている使用に応じて、複数の発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、ある抗体の医薬組成物の生成のためにこのようなタンパク質を大量に産生しようとする場合、容易に精製される融合タンパク質産物が高レベルに発現するように方向付けるベクターが望ましいと考えられる。このようなベクターとしては、以下に限定されないが、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther et al.(1983)“Easy Identification Of cDNA Clones,”EMBO J.2:1791-1794)(抗体のコ
ード配列は、融合タンパク質が産生されるように、lac Zコード領域とインフレームでベクターに個別にライゲーションさせることができる);pINベクター(Inouye et al.(1985)“Up-Promoter Mutations In The Lpp Gene Of Escherichia coli,”Nucleic Acids Res.13:3101-3110;Van Heeke et al.(1989)“Expression Of Human Asparagine Synthetase In Escherichia coli,”J.Biol.Chem.24:5503-5509);などが挙げられる。また、pGEXベクターを使用して、外部ポリペプチドをグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることもできる。概して、このような融合タンパク質は可溶性であり、溶解した細胞からの精製は、マトリックスグルタチオン-アガロースビーズに吸着及び結合させ、次に遊離グルタチオンの存在下で溶離させることにより、容易に行うことができる。pGEXベクターは、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計され、これにより、クローニングされた標的遺伝子産物をGST部分から放出させることができる。
【0132】
昆虫システムでは、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外部遺伝子を発現させるためのベクターとして使用される。このウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞内で成長する。抗体のコード配列は、ウイルスの本質的でない領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の調節下で配置することができる。
【0133】
哺乳類宿主細胞では、複数のウイルスベースの発現システムを利用することができる。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、対象の抗体のコード配列は、アデノウイルス転写/翻訳調節複合体、例えば、後期プロモーター及びトリパータイトリーダー配列に、ライゲーションさせることができる。次に、このキメラ遺伝子を、in vitroまたはin vivoの組換えにより、アデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムにおける本質的でない領域(例えば、領域E1またはE3)に挿入することにより、生存可能であり、感染された宿主内で免疫グロブリン分子を発現可能である組換えウイルスがもたらされる(例えば、Logan et al.(1984)“Adenovirus Tripartite Leader Sequence Enhances Translation Of mRNAs Late After Infection,”Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)81:3655-3659を参照)。特定の開始シグナルも、挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳に必要とされ得る。このシグナルは、ATG開始コドン及び隣接配列を含む。さらに、開始コドンは、挿入配列全体の翻訳を確実にするために、所望のコード配列のリーディングフレームと一致していなければならない。この外来の翻訳調節シグナル及び開始コドンの由来は、天然及び合成の両方において様々であり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることにより強化することができる(Bitter et al.(1987)“Expression And Secretion Vectors For Yeast,”Methods in Enzymol.153:516-544を参照)。
【0134】
加えて、宿主細胞株は、挿入された配列の発現を調節するもの、または遺伝子産物を所望される特定の様式で修飾しプロセシングするものが選択され得る。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能のために重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための、特徴的かつ特定の機構を有する。適切な細胞株または宿主システムは、発現した外部タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にするよ
うに選択され得る。この目的に対し、適正な一次転写物のプロセシング、グリコシル化、及び遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を使用することができる。このような哺乳類宿主細胞としては、以下に限定されないが、CHO、VERY、Hela、COS、MDCK、293、293T、3T3、WI38、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47D、CRL7030及びHs578Bstが挙げられる。
【0135】
長期においては、組換えタンパク質の高収率産生、安定した発現が好ましい。例えば、本発明の抗体を安定的に発現する細胞株が操作されてもよい。ウイルス由来の反復を含有する発現ベクターを使用するのではなく、適切は発現調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)により調節されたDNA及び選択マーカーを用いて、宿主細胞を形質転換させることができる。外部DNAの導入後、操作された細胞は、濃縮培地で1~2日間成長させることができ、次に選択的培地に切り替える。組換えプラスミドにおける選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞が安定的にプラスミドを染色体に統合し、成長して、細胞株にクローニングさせ増やすことができる増殖巣を形成することができるようにする。この方法は、本発明の抗体を発現する細胞株を操作するのに有利に使用することができる。このような操作された細胞株は、本発明の抗体と直接的または間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価に特に有用であり得る。
【0136】
複数の選択システムを使用することができ、これには、以下に限定されないが、単純ヘルペスチミジンキナーゼ(Wigler et al.(1977)“Transfer
Of Purified Herpes Virus Thymidine Kinase Gene To Cultured Mouse Cells,”Cell 11:223-232)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al.(1962)“Genetics Of Human Cess Line.IV.DNA-Mediated Heritable Transformation Of A Biochemical Trait,”Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)48:2026-2034)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.(1980)“Isolation Of Transforming DNA:Cloning The Hamster Aprt Gene,”Cell 22:817-823)が含まれ、遺伝子は、それぞれtk-、hgprt-、またはaprt-細胞で用いられる。また、代謝拮抗物質耐性は、以下の遺伝子に対する選択の基盤として使用することができる:dhfr(メトトレキセートに対する耐性を付与)(Wigler et al.(1980)“Transformation Of Mammalian Cells With
An Amplfiable Dominant-Acting Gene,”Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)77:3567-3570;O’Hare et al.(1981)“Transformation Of Mouse
Fibroblasts To Methotrexate Resistance By A Recombinant Plasmid Expressing A Prokaryotic Dihydrofolate Reductase,”Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)78:1527-1531);gpt(ミコフェノール酸に対する耐性を付与)(Mulligan et al.(1981)“Selection For Animal Cells That Express
The Escherichia coli Gene Coding For Xanthine-Guanine Phosphoribosyltransferase,”Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)78:2072-2076);neo(アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与)(Tachibana
et al.(1991)“Altered Reactivity Of Immu
noglobutin Produced By Human-Human Hybridoma Cells Transfected By pSV2-Neo Gene,”Cytotechnology 6(3):219-226;Tolstoshev(1993)“Gene Therapy,Concepts,Current Trials And Future Directions,”Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573-596;Mulligan(1993)“The Basic Science Of Gene Therapy,”Science
260:926-932;及びMorgan et al.(1993)“Human
gene therapy,”Ann.Rev.Biochem.62:191-217)。組換えDNA技術の技術分野で一般的に知られている、使用され得る方法は、以下に記載されている:Ausubel et al.(eds.),1993,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,NY;Kriegler,1990,GENE TRANSFER AND EXPRESSION,A LABORATORY MANUAL,Stockton Press,NY;及びChapters 12 and 13,Dracopoli et al.(eds),1994,CURRENT PROTOCOLS IN HUMAN GENETICS,John Wiley & Sons,NY.;Colbere-Garapin et al.(1981)“A New Dominant Hybrid Selective Marker For Higher
Eukaryotic Cells,”J.Mol.Biol.150:1-14;及びhygro(ハイグロマイシンに対する耐性を付与)(Santerre et al.(1984)“Expression Of Prokaryotic Genes For Hygromycin B And G418 Resistance As Dominant-Selection Markers In Mouse L Cells,”Gene 30:147-156)。
【0137】
本発明の抗体の発現レベルは、ベクター増幅により増大させることができる(概説については、Bebbington and Hentschel,“The Use Of
Vectors Based On Gene Amplification For
The Expression Of Cloned Genes In Mammaian Cells,”(DNA CLONING,Vol.3.)(Academic
Press,New York,1987)を参照)。抗体を発現するベクターシステム内のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物中に存在する阻害剤のレベルを増大させることで、マーカー遺伝子のコピー数が増大する。増幅された領域は抗体のヌクレオチド配列に関連するため、抗体の産生も増大する(Crouse et al.(1983)“Expression And Amplification Of Engineered Mouse Dihydrofolate Reductase Minigenes,”Mol.Cell.Biol.3:257-266)。
【0138】
宿主細胞に対し、本発明の2つの発現ベクター、重鎖由来のポリペプチドをコードする第1のベクター及び軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクターを同時形質移入することができる。この2つのベクターは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含有してもよい。代替的に、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターを使用することができる。このような状況において、軽鎖は、過剰量の毒性フリーの重鎖を回避するために、重鎖の前に配置するべきである(Proudfoot(1986)“Expression And Amplification Of Engineered Mouse Dihydrofolate Reductase Minigenes,”Nature 322:562-565;Kohler(1980)“Immunoglobulin Chain Loss In Hybridoma Lines,”Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S
.A.)77:2197-2199)。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含むことができる。
【0139】
抗体及びその抗原結合断片ならびに免疫グロブリン鎖は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、培地から回収することができる。さらに、産生細胞株からの、本発明の抗体及びその抗原結合断片ならびに免疫グロブリン鎖(またはそれに由来する他の部分)の発現は、複数の公知の技法を用いて増強することができる。例えば、グルタミンシンセターゼ遺伝子発現システム(GSシステム)は、ある特定の条件下で発現を増強するための一般的なアプローチである。GSシステムは、欧州特許第0 216 846号、第0 256 055号、及び0 323 997号、ならびに欧州特許出願第89303964.4号に関連して、全体的または部分的に論じられている。したがって、本発明の一実施形態において、哺乳類宿主細胞(例えば、CHO)は、グルタミンシンセターゼ遺伝子を欠いており、培地中、グルタミンの不在下で成長するが、免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチドはグルタミンシンセターゼ遺伝子を含み、宿主細胞における遺伝子の欠如を補完する。
【0140】
本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を精製する方法であって、抗体または断片を含む試料を精製培地(例えば、カチオン交換培地、アニオン交換培地、疎水性交換培地、親和性精製培地(例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、プロテインL))に導入することと、前述の試料の精製された抗体または断片を培地に結合しないフロースルー画分から収集するか、またはフロースルー画分を廃棄し、結合した抗体もしくは断片を培地から溶離し、溶離物を収集することとを含む、方法を含む。本発明の一実施形態において、培地は、試料が適用されるカラム中にある。本発明の一実施形態において、この精製方法は、宿主細胞内での抗体または断片の組換え発現の後に行われ、このとき、例えば、最初に宿主細胞を溶解し、任意選択で、この溶解物を不溶性の材料から精製してから培地上での精製を行う。
【0141】
概して、特定の細胞株またはトランスジェニック動物内で産生される糖タンパク質であれば、この細胞株またはトランスジェニック動物内で産生される糖タンパク質に特徴的なグリコシル化パターンを有する。そのため、ある抗体における特定のグリコシル化パターンは、この抗体の産生に使用される特定の細胞株またはトランスジェニック動物に依存することになる。しかし、本明細書で提供される核酸分子によりコードされる、または本明細書で提供されるアミノ酸配列を含む全ての抗体は、抗体が有し得るグリコシル化パターンとは無関係に、本発明を含む。同様に、特定の実施形態において、非フコシル化N-グリカンのみを含むグリコシル化パターンを有する抗体は、典型的に、フコシル化された対応物よりも強力な有効性をin vitro及びin vivoの両方で呈することが示されているため、有利であり得る(例えば、Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278:3466-3473(2003);米国特許第6,946,292号及び第7,214,775号)。非フコシル化N-グリカンを有するこの抗体は、その炭水化物構造がヒト血清IgGに存在する集団の正常な構成成分であるため、免疫原性ではない可能性がある。
【0142】
本発明は、CTLA-4及び別の抗原、例えば、免疫刺激においてある役割を担う抗原(例えば、PD-1、PD-L1、TSLP、IL-10、4-IBB、SIRP-alpha、ICOS、NKG2C、NKG2A、KR2DL及びKIR3DL抗原、OX40、CD40、ITL-1からITL-8、GITR、CD137、CS1、CD27、APRIL、もしくはLAG-3)、またはがん細胞への標的化及び認識においてある役割を担う抗原(例えば、EGFR(ERBB1)、HER2(ERBB2)、ERBB3、CD19、CD20、CD30、CD33、CD52、CEA、アルファ-フェトプロテイン、CC49、VEGF、VEGFR、HGFR(MET)、CA-125、テネイ
シン、インテグリン、FAB、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、もしくはRANKL)に対し結合特異性を有する、二重特異性及び二重機能性抗体及び抗原結合断片、ならびにその使用方法を含む。本発明の一実施形態において、抗CTLA-4鎖は、配列番号7~30に示されるVH/VL配列のいずれか1つ(または前述の配列、例えば配列番号1~6に示されるようなもののいずれかの抗原結合断片)を含む。二重特異性または二重機能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対及び2つの異なる結合部位を有する、人工のハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合やFab’断片の結合を含めた様々な方法により、産生することができる。例えば、Songsivilai,et al.,(1990)Clin.Exp.Immunol.79:315-321,Kostelny,et al.,(1992)J Immunol.148:1547-1553を参照。加えて、二重特異性抗体は、「ダイアボディ」(Holliger,et al.,(1993)PNAS USA 90:6444-6448)として、または「ジャヌシン(Janusin)」(Traunecker,et al.,(1991)EMBO J.10:3655-3659及びTraunecker,et al.,(1992)Int.J.Cancer Suppl.7:51-52)として形成されることもある。加えて、二重特異性抗体は、「デュオボディ」(Labrijn et al,PNAS 2013;110(13):5145-5150)として形成されることもある。
【0143】
本発明は、さらに、本明細書で開示されている抗CTLA-4抗体の抗CTLA-4抗原結合断片を含む。この抗体断片はF(ab)2断片を含み、これは(例えば、ペプシンによる)IgG酵素切断により、産生することができる。Fab断片は、例えば、ジチオスレイトールまたはメルカプトエチルアミンによるF(ab)2の還元により、産生することができる。
【0144】
免疫グロブリンは、重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てることができる。一部の実施形態において、異なる定常ドメインは、本明細書で提供されるCDRに由来するヒト化VL及びVH領域に付加され得る。免疫グロブリンには少なくとも5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4;IgA1及びIgA2)に分類することができる。本発明は、抗体におけるこれらのクラスまたはサブクラスのいずれかについての抗体及び抗原結合断片を含む。
【0145】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、重鎖定常領域、例えば、ヒト定常領域、例えば、γ1、γ2、γ3、もしくはγ4ヒト重鎖定常領域、またはそのバリアントを含む。別の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、軽鎖定常領域、例えば、ヒト軽鎖定常領域、例えば、ラムダもしくはカッパヒト軽鎖領域、またはそのバリアントを含む。限定ではなく例として、ヒト重鎖定常領域はγ4とすることができ、ヒト軽鎖定常領域はカッパとすることができる。代替的な実施形態において、抗体のFc領域は、Ser228Pro変異を伴ったγ4である(Angal S.et al.,1993,Mol Immunol.30:105-108、241位はKabatナンバリングシステムに基づく)。
【0146】
一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、IgG1サブタイプの重鎖定常領域を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、IgG2サブタイプの重鎖定常領域を含む。一実施形態において、抗体または抗原結合断片は、IgG4サブタイプの重鎖定常領域を含む。
【0147】
抗体の操作
さらに含まれるのは、抗CTLA-4抗体及びその抗原結合断片が、例えば、抗体または断片の特性を改善するために、親hCTLA4.27Aモノクローナル抗体の可変ドメイン内のフレームワーク残基に対する修飾を含むように操作された抗体である、実施形態である。典型的には、このようなフレームワーク修飾は、抗体または断片の免疫原性を低下させるために行われる。これは、通常、親(例えば、げっ歯類)抗体または断片における可変ドメイン(すなわち、フレームワーク残基)内の非CDR残基を、抗体が使用される種(例えば、ヒト用治療薬の場合にはヒト残基)の免疫レパートリーからの類似する残基で置き換えることにより、遂行される。このような抗体または断片は、「ヒト化」抗体または断片と呼ばれる。場合によっては、操作(例えば、ヒト化)された抗体の親和性を増大させるか、または特異性を改変することが望ましい。1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「復帰変異させる(backmutate)」ことである。より具体的には、体細胞変異を経た抗体または断片は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含有することができる。このような残基は、抗体または断片のフレームワーク配列を、抗体または断片が由来する生殖系列配列と比較することにより、同定することができる。もう1つのアプローチは、操作(例えば、ヒト化)された抗体の1つ以上の位置において元の親(例えば、げっ歯類)の残基に復帰して、例えば、フレームワーク残基を置き換えるプロセスで失われた可能性のある結合親和性を回復することである(例えば、米国特許第5,693,762号、米国特許第5,585,089号、及び米国特許第5,530,101号を参照)。
【0148】
ある特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体及びその抗原結合断片は、その特性を改善するためのフレームワーク及び/またはCDRに対する修飾を含むように、操作(例えば、ヒト化)される。このような操作された変更は、分子モデリングに基づき得る。親(非ヒト)抗体の配列の可変領域についての分子モデルは、抗体の構造的特徴を理解するために構築し、抗原と相互作用し得る抗体上の潜在的な領域を同定するために使用することができる。従来的なCDRは、免疫グロブリン配列のアラインメント及び可変領域の同定に基づいている。Kabat et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242;Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabat,et al.,(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616。Chothia及び共同研究者らは、抗体の結晶構造におけるループコンフォメーションを慎重に検証し、超可変ループを提唱した。Chothia,et al.,(1987)J Mol.Biol.196:901-917またはChothia,et al.,(1989)Nature 342:878-883。「CDR」及び「超可変ループ」として分類される領域間にはバリエーションが存在する。その後の研究(Raghunathan et al,(2012)J.Mol Recog.25,3,103-113)ではいくつかの抗体-抗原結晶複合体が解析され、抗体における抗原結合領域が必ずしも厳密に「CDR」残基または「超可変」ループに従うわけではないことが観察された。非ヒト抗体の可変領域についての分子モデルは、潜在的に抗原に結合し得る領域の選択の指針とするために使用することができる。実際には、モデルに基づいた潜在的な抗原結合領域は、従来的な「CDR」または「超可変」ループと異なる。Discovery Studio(BIOVIA,Dassault Systemes)のような市販の科学ソフトウェアを分子モデリングに使用することができる。ヒトフレームワークは、フレームワーク及びCDRの両方において、非ヒト配列とのベストマッチに基づき選択することができる。VH内のFR4(フレームワーク4)については、ヒト生殖系列のVJ領域が、対応する非ヒト領域と比較される。VL内のFR4(フレームワーク4)については、ヒト生殖系列のJ-カッパ及びJ-ラムダ領域が、対応する非ヒト領域と比較される。ひとたび好適なヒトフレームワークが同定されると、CDRが、選択されたヒトフレーム
ワークにグラフトされる。場合によっては、VL-VH界面におけるある特定の残基は、非ヒト(親)配列内のように保持され得る。また、分子モデルは、潜在的にCDRコンフォメーションを改変し抗原に結合する可能性のある残基を同定するために使用することもできる。場合によっては、この残基は、非ヒト(親)配列内のように保持される。また、分子モデルは、グリコシル化、脱アミド、及び酸化のような望ましくない効果をもたらし得る溶媒露出アミノ酸の同定に使用することもできる。これらの潜在的な問題を排除/最小化するために、設計段階の早い時期に開発可能性フィルターを導入することができる。
【0149】
もう1つのタイプのフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内で、または1つ以上のCDR領域内でも、1つ以上の残基を変異させてT細胞エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的な免疫原性を低減することを伴う。このアプローチは、「脱免疫(deimmunization)」と呼ばれ、米国特許第7,125,689号でさらに詳細に説明されている。
【0150】
特定の実施形態では、最終抗体の化学的安定性をより高めて脱アミドまたは異性化を回避するために、露出側鎖を含有するある特定のアミノ酸を別のアミノ酸残基に変更することが望ましいと考えられる。アスパラギンの脱アミドは、NG、DG、NG、NS、NA、NT、QG、またはQSの配列で生じ、また、ポリペプチドにねじれを導入しその安定性を低下させる、イソアスパラギン酸残基の創出をもたらし得る(イソアスパラギン酸効果)。異性化は、DG、DS、DA、またはDT配列に生じ得る。ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、脱アミド部位もアスパラギン異性化部位も含有しない。
【0151】
例えば、(特にCDR内の)任意のAsn-Gly配列でイソアスパルテートが形成される可能性を低減するために、アスパラギン(Asn)残基をGlnまたはAlaに変更してもよい。同様の問題が、Asp-Gly配列で生じ得る。Reissner and
Aswad(2003)Cell.Mol.Life Sci.60:1281。イソアスパルテート形成は、抗体がその標的抗原に結合するのを弱めるか、または完全に抑止する恐れがある。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731(734頁)を参照。一実施形態において、アスパラギンは、グルタミン(Gln)に変更される。また、アスパラギン(Asn)またはグルタミン(Gln)残基に隣接するアミノ酸を、脱アミドの可能性を低減するように改変することが望ましい場合もある(脱アミドは、アスパラギンまたはグルタミンに隣接して低分子アミノ酸が生じたときに、より高い割合で生じる)。Bischoff & Kolbe(1994)J.Chromatog.662:261を参照。加えて、CDR内の任意のメチオニン残基(典型的には溶媒露出Met)は、メチオニン硫黄が酸化する(抗原結合親和性を低減し、また最終抗体調製物における分子不均一性に寄与する恐れもある)可能性を低減するため、Lys、Leu、Ala、もしくはPhe、または他のアミノ酸に変更することができる。同上。加えて、潜在的な切断しやすいAsn-Proペプチド結合を防止または最小化するため、CDR内に見いだされる任意のAsn-Proの組合せをGln-Pro、Ala-Pro、またはAsn-Alaに改変することが望ましい場合がある。このような置換を有する抗体は、続いてスクリーニングにかけて、この置換が、CTLA-4に対する抗体の親和性もしくは特異性、または他の所望の生物学的活性を許容されないレベルに低下させないことを確実にする。
【0152】
【0153】
Fc領域の抗体操作
本明細書で開示されている抗体(例えば、ヒト化抗体)及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、Fc領域内に修飾を含むように、典型的には、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/またはエフェクター機能(例えば、抗原依存的な細胞の細胞傷害性)のような、抗体の1つ以上の特性を変更するように、操作してもよい。さらに、本明細書で開示されている抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、化学修飾し(例えば、1つ以上の化学的部分を抗体に付着させてもよい)、またはそのグリコシル化を改変するように修飾して、さらに抗体または断片の1つ以上の特性を変更してもよい。これらの実施形態の各々が、以下でさらに詳細に説明される。Fc領域内の残基のナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングである。
【0154】
本明細書で開示されている抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、エフェクター機能の改変をもたらすように修飾(またはブロック)されたFc領域を有する抗体及び断片も含む。例えば、米国特許第5,624,821号;WO2003/086310;WO2005/120571;WO2006/0057702を参照。このような修飾は、診断及び治療において考えられる有益な効果を伴って、免疫システムの様々な反応を増強または抑制するために使用することができる。Fc領域の改変としては、アミノ酸変更(置換、欠失、及び挿入)、グリコシル化または脱グリコシル化、ならびに複数のFc領域の付加が挙げられる。Fcに対する変更は、治療用抗体における抗体の半減期も改変することができ、これは、投薬頻度の低下や、それによる利便性の向上及び材料使用の減少を可能にする。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731(734-35頁)を参照。
【0155】
一実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、重鎖定常領域のヒンジ領域において228位に対応する位置におけるセリンからプロリンへの変異(S228P;EUインデックス)を含む、IgG4アイソタイプ抗体または断片である。この変異は、ヒンジ領域における重鎖ジスルフィド架橋間の不均一性を消失させることが報告されている(Angal S.et al.,1993,Mol Immunol.30:105-108;241位は、Kabatナンバリングシステムに基づく)。
【0156】
本発明の一実施形態において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域におけるシステイン
残基の数が増加または減少するように修飾される。このアプローチは、米国特許第5,677,425号でさらに説明されている。CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖の組立を容易にするように、または抗体の安定性を向上もしくは低下させるように、改変される。
【0157】
別の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)のFcヒンジ領域は、抗体または断片の生物学的半減期を減少させるように変異させる。より具体的には、1つ以上のアミノ酸変異をFc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に導入し、抗体または断片が、天然のFc-ヒンジドメインSpA結合に対してStaphylococcylプロテインA(SpA)結合障害を有するようにする。このアプローチは、米国特許第6,165,745号でさらに詳細に説明されている。
【0158】
別の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、その生物学的半減期を増大させるように修飾される。様々なアプローチが考えられる。例えば、米国特許第6,277,375号に記載のように、以下の変異:T252L、T254S、T256Fを導入することができる。代替的に、生物学的半減期を増大させるため、米国特許第5,869,046号及び第6,121,022号に記載のように、抗体は、CH1またはCL領域内で、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルベージ受容体結合エピトープを含有するように改変することができる。
【0159】
また他の実施形態において、Fc領域は、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えて、抗体または抗原結合断片のエフェクター機能(複数可)を改変することにより、改変される。例えば、アミノ酸残基234,235、236,237、297、318、320、及び322から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体が、エフェクターリガンドに対し改変された親和性を有し、親抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。親和性が改変されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1構成成分であり得る。このアプローチは、米国特許第5,624,821号及び第5,648,260号でさらに詳細に説明されている。
【0160】
別の例において、アミノ酸残基329、331、及び322から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体が、C1q結合の改変及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)の低減もしくは消失を有するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。このアプローチは、米国特許第6,194,551号でさらに詳細に説明されている。
【0161】
別の例において、アミノ酸位置231及び239内の1つ以上のアミノ酸残基は、抗体の補体固定能力を改変するように改変される。このアプローチは、PCT公開第WO94/29351号でさらに説明されている。
【0162】
また別の例において、Fc領域は、以下の位置:238、239、243、248、249、252、254、255、256、258、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438、または439で1つ以上のアミノ酸を修飾することにより、本発明の抗体または抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)
における抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介能力を減少させるように、及び/またはFcγ受容体に対する抗体または断片の親和性を減少させるように、修飾される。このアプローチは、PCT公開第WO00/42072号でさらに説明されている。さらに、ヒトIgG1上のFcγR1、FcγRII、FcγRIII、及びFcRnに対する結合部位がマッピングされており、結合が改善されたバリアントが説明されている(Shields et al.(2001)J.Biol.Chem.276:6591-6604を参照)。
【0163】
本発明の一実施形態において、Fc領域は、残基243及び264を修飾することにより、本発明の抗体(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)におけるエフェクター機能媒介能力を減少させるように、及び/または抗炎症特性を向上させるように、修飾される。一実施形態において、抗体または断片のFc領域は、243位及び264位における残基をアラニンに変更することにより、修飾される。一実施形態において、Fc領域は、243、264、267、及び328の残基を修飾することにより、抗体または断片におけるエフェクター機能媒介能力を減少させるように、及び/または抗炎症特性を向上させるように、修飾される。
【0164】
エフェクター機能の増強
一部の実施形態において、抗CTLA-4抗体のFc領域は、抗体または抗原結合断片におけるエフェクター機能媒介能力を向上させるように、及び/またはFcガンマ受容体(FcγRs)に対するそれらの結合を向上させるように、修飾される。
【0165】
本明細書において「エフェクター機能」という用語は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害活性(ADCC)、補体依存性細胞傷害活性(CDC)介在性応答、Fc媒介性貪食作用または抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、及びFcRn受容体を介した抗体再利用の1つ以上を指すように意図されている。
【0166】
抗原結合タンパク質と、FcガンマRI(CD64)、FcガンマRII(CD32)、及びFcガンマRIII(CD16)を含めた様々なFc受容体(FcR)との間の相互作用は、抗原結合タンパク質のエフェクター機能(例えば、ADCC及びCDC)を媒介すると考えられている。また、Fc受容体は、抗腫瘍免疫にとって重要であり得る抗体の架橋にとっても重要である。
【0167】
エフェクター機能は複数の方法で測定することができ、これには、例えば、FcガンマRIIIのナチュラルキラー細胞に対する結合またはFcガンマRIの単球/マクロファージに対する結合を介してADCCエフェクター機能を測定する方法が含まれる。例えば、本発明の抗原結合タンパク質は、ナチュラルキラー細胞アッセイでADCCエフェクター機能について評価することができる。このようなアッセイの例は、Shields et al,2001 J.Biol.Chem.,Vol.276,p6591-6604;Chappel et al,1993 J.Biol.Chem.,Vol 268,p25124-25131;Lazar et al,2006 PNAS,103;4005-4010に見いだすことができる。
【0168】
本発明の抗体におけるADCCまたはCDC特性、またはその架橋特性は、複数の方法で増強することができる。
【0169】
Asn297の残基に特定の変異またはグリコシル化改変を含有するヒトIgG1定常領域は、Fc受容体に対する結合を増強することが示されている。場合によっては、この変異は、ADCC及びCDCを増強することも示されている(Lazar et al.PNAS 2006,103;4005-4010;Shields et al.J
Biol Chem 2001,276;6591-6604;Nechansky et al.Mol Immunol,2007,44;1815-1817)。
【0170】
本発明の一実施形態において、このような変異は、239、332、及び330(IgG1)から選択される1つ以上の位置、または他のIgGアイソタイプにおける同等の位置にある。好適な変異の例は、S239D及びI332E及びA330Lである。一実施形態において、本明細書に記載の本発明の抗原結合タンパク質は、239位及び332位で変異しており(例えば、S239D及びI332E)、またはさらなる実施形態では、239及び332及び330から選択される3つ以上の位置で変異している(例えば、S239D及びI332E及びA330L)(EUインデックスナンバリング)。
【0171】
本発明の代替的な実施形態において、抗原結合タンパク質が増強されたエフェクター機能を有するようなグリコシル化プロファイルの改変を伴った重鎖定常領域を含む、抗体が提供される。例えば、抗体が、増強されたADCCもしくは増強されたCDCを有する場合、または抗体が、増強されたADCC及び増強されたCDC両方のエフェクター機能を有する場合である。グリコシル化プロファイルの改変を伴った抗原結合タンパク質を産生するための好適な方法論の例は、WO2003011878、WO2006014679、及びEP1229125で説明されている。
【0172】
さらなる態様において、本発明は、「非フコシル化(non-fucosylated)」抗体または「無フコシル化(afucosylated)」抗体を提供する。非フコシル化抗体は、フコース残基を伴わないFcの複合型N-グリカンのトリマンノシルコア構造を有する。Fc N-グリカンからコアフコース残基を欠いている、この糖鎖操作された(glycoengineered)抗体は、FcガンマRIIIa結合能力が増強されているため、フコシル化された同等物よりも強力なADCCを示し得る。
【0173】
また、本発明は、本発明による抗体を産生する方法であって、以下ステップ:a)本明細書に記載の単離された核酸を含む発現ベクターを含む組換え宿主細胞を培養することであって、組換え宿主細胞がアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼを含まない、培養することと、b)抗原結合タンパク質を回収することと、を含む方法も提供する。組換え宿主細胞は、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を通常含有しないこともあれば(例えば、Pichia sp.のような酵母宿主細胞)、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼを不活性化するように遺伝子修飾されていることもある。アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を不活性化するように遺伝子修飾されている組換え宿主細胞が入手可能である。例えば、FUT8遺伝子の機能コピーを欠いたCHOK1SV細胞が、増強された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性(機能的なFUT8遺伝子を有する細胞で産生された同一のモノクローナル抗体と比べて増大している)を有するモノクローナル抗体を産生する、BioWa,Inc.(Princeton,N.J.)から入手可能なPOTELLIGENT(商標)テクノロジーシステムを参照。POTELLIGENT(商標)テクノロジーシステムの態様は、US7214775、US6946292、WO0061739、及びWO0231240で説明されている。当業者であれば、他の適切なシステムも認識する。
【0174】
このような修飾は、単体で使用されてもよいだけでなく、エフェクター機能をさらに増強するために互いとの併用で使用されてもよいことが、当業者には明らかとなる。
【0175】
グリコシル化修飾を伴った抗体の産生
さらに別の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、特定のグリコシル化パターンを含む。例えば、無フコシ
ル化もしくは無グリコシル化された抗体または断片を作製することができる(すなわち、抗体が、それぞれフコースまたはグリコシル化を欠いている)。抗体または断片のグリコシル化パターンは、例えば、CTLA-4抗原に対する抗体または断片の親和性または結合活性を増大させるように改変することができる。このような修飾は、例えば、抗体または断片の配列内の1つ以上のグリコシル化部位を改変することにより、遂行することができる。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらし、それにより当該部位におけるグリコシル化を排除する、1つ以上のアミノ酸置換を行うことができる。このような無グリコシル化は、抗原に対する抗体または断片の親和性または結合活性を増大させ得る。例えば、米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号を参照。
【0176】
本明細書で開示されている抗体及び抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)はさらに、哺乳類またはヒト類似グリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝子操作された、より下等な真核生物宿主細胞、特に真菌宿主細胞(例えば、酵母及び糸状菌)内で産生されたものを含むことができる(例えば、Choi
et al,(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100:5022-5027;Hamilton et al.,(2003)Science 301:1244-1246;Hamilton et al.,(2006)Science 313:1441-1443;Nett et al.,Yeast 28(3):237-52(2011);Hamilton et al.,Curr Opin Biotechnol.Oct;18(5):387-92(2007)を参照)。これらの遺伝子修飾された宿主細胞の、現在使用されている哺乳類細胞株に対する特定の利点は、特定のN-グリカン構造が優勢である糖タンパク質の組成物が産生され得るように、細胞内で産生される糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを調節する能力である(例えば、米国特許第7,029,872号及び米国特許第7,449,308号)。これらの遺伝子修飾された宿主細胞は、優勢に特定のN-グリカン構造を有する抗体を産生するために使用されている(例えば、Li et al.,(2006)Nat.Biotechnol.24:210-215を参照)。
【0177】
特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、さらに、より下等な真核生物宿主細胞内で産生され、フコシル化及び非フコシル化されたハイブリッド及び複合型N-グリカン(以下に限定されないが、GlcNAc(1-4)Man3GlcNAc2;Gal(1-4)GlcNAc(1-4)Man3GlcNAc2;NANA(1-4)Gal(1-4)GlcNAc(1-4)Man3GlcNAc2のようなN-グリカンを含めた、二分岐及び多分岐種が含まれる)を含むものを含む。
【0178】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、GlcNAcMan5GlcNAc2;GalGlcNAcMan5GlcNAc2;及びNANAGalGlcNAcMan5GlcNAc2からなる群から選択される、少なくとも1つのハイブリッドN-グリカンを有する抗体または断片を含むことができる。特定の態様において、ハイブリッドN-グリカンは、組成物中で優勢なN-グリカン種である。
【0179】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、GlcNAcMan3GlcNAc2;GalGlcNAcMan3GlcNAc2;NANAGalGlcNAcMan3GlcNAc2;GlcNAc2Man3GlcNAc2;GalGlcNAc2Man3GlcNAc2;Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2;NANAGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2;及びNANA2Gal2GlcNAc2Man3Glc
NAc2からなる群から選択される、少なくとも1つの複合型N-グリカンを有する抗体及び断片を含む。特定の態様において、複合型N-グリカンは、組成物中で優勢なN-グリカン種である。さらなる態様において、複合型N-グリカンは、組成物中に約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の複合型N-グリカンを含む、特定のN-グリカン種である。一実施形態において、本明細書で提供される抗体及びその抗原結合断片は、複合型N-グリカンを含み、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の複合型N-グリカンが構造NANA2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2を含み、このような構造は無フコシル化されている。このような構造は、例えば、操作されたPichia pastoris宿主細胞内で産生させることができる。
【0180】
特定の実施形態において、N-グリカンはフコシル化されている。概して、フコースは、N-グリカンの還元末端にあるGlcNAcとのα1,3-結合、N-グリカンの還元末端にあるGlcNAcとのα1,6-結合、N-グリカンの非還元末端にあるGalとのα1,2-結合、N-グリカンの非還元末端にあるGlcNacとのα1,3-結合、またはN-グリカンの非還元末端にあるGlcNAcとのα1,4-結合をとる。
【0181】
そのため、上記の糖タンパク質組成物の特定の態様において、グリコフォームは、α1,3-結合またはα1,6-結合フコースをとって、Man5GlcNAc2(Fuc)、GlcNAcMan5GlcNAc2(Fuc)、Man3GlcNAc2(Fuc)、GlcNAcMan3GlcNAc2(Fuc)、GlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)、GalGlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)、NANAGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)、及びNANA2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2(Fuc)からなる群から選択されるグリコフォームを産生するか、α1,3-結合もしくはα1,4-結合フコースをとって、GlcNAc(Fuc)Man5GlcNAc2、GlcNAc(Fuc)Man3GlcNAc2、GlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2、GalGlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2、Gal2GlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2、NANAGal2GlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2、及びNANA2Gal2GlcNAc2(Fuc1-2)Man3GlcNAc2からなる群から選択されるグリコフォームを産生するか、またはα1,2-結合フコースをとって、Gal(Fuc)GlcNAc2Man3GlcNAc2、Gal2(Fuc1-2)GlcNAc2Man3GlcNAc2、NANAGal2(Fuc1-2)GlcNAc2Man3GlcNAc2、及びNANA2Gal2(Fuc1-2)GlcNAc2Man3GlcNAc2からなる群から選択されるグリコフォームを産生する。
【0182】
さらなる態様において、抗体(例えば、ヒト化抗体)またはその抗原結合断片は、高マンノースN-グリカン(以下に限定されないが、Man8GlcNAc2、Man7GlcNAc2、Man6GlcNAc2、Man5GlcNAc2、Man4GlcNAc2を含む)、またはMan3GlcNAc2 N-グリカン構造からなるN-グリカンが含まれる。
【0183】
上記のさらなる態様において、複合型N-グリカンは、さらに、フコシル化及び非フコシル化された、二分岐及び多分岐種を含む。
【0184】
本明細書において、「N-グリカン」及び「グリコフォーム」という用語は互換的に使用され、N-結合オリゴ糖、例えば、アスパラギン-N-アセチルグルコサミン結合によりポリペプチドのアスパラギン残基に付着しているものを指す。N-結合糖タンパク質は
、タンパク質におけるアスパラギン残基のアミド窒素に結合したN-アセチルグルコサミン残基を含有する。糖タンパク質上に見いだされる優勢な糖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、及びシアル酸(例えば、N-アセチル-ノイラミン酸(NANA))である。糖の群のプロセシングは、ERのルーメン内で同時翻訳的に生じ、翻訳後にゴルジ体内でN-結合糖タンパク質のために継続する。
【0185】
N-グリカンは、共通のペンタサッカライドコアMan3GlcNAc2(「Man」とはマンノースを指し、「Glc」とはグルコースを指し、「NAc」とはN-アセチルを指し、GlcNAcとはN-アセチルグルコサミンを指す)を有する。通常、N-グリカン構造は、左側に非還元末端、右側に還元末端を呈する。N-グリカンの還元末端は、タンパク質上のグリコシル化部位を含むAsn残基に付着している末端である。N-グリカンは、Man3GlcNAc2(「Man3」)コア構造(「トリマンノースコア」、「ペンタサッカライドコア」、または「少マンノースコア」とも呼ばれる)に付加される周辺の糖(例えば、GlcNAc、ガラクトース、フコース、及びシアル酸)を含む分枝(分岐)の数に関して異なる。N-グリカンは、その枝分かれした構成要素に従って分類される(例えば、高マンノース、複合型、またはハイブリッド)。「高マンノース」型N-グリカンは、5つ以上のマンノース残基を有する。「複合」型N-グリカンは、典型的には、「トリマンノース」コアの1,3-マンノースアームに付着している少なくとも1つのGlcNAcと、1,6-マンノースアームに付着している少なくとも1つのGlcNAcとを有する。また、複合型N-グリカンは、任意選択でシアル酸または誘導体(例えば、「NANA」または「NeuAc」(Neuとはノイラミン酸を指し、「Ac」とはアセチルを指す))で修飾される、ガラクトース(「Gal」)またはN-アセチルガラクトサミン(「GalNAc」)残基を有してもよい。また、複合型N-グリカンは、「二分岐」GlcNAc及びコアフコース(「Fuc」)を含む鎖内置換を有してもよい。また、複合型N-グリカンは、「トリマンノースコア」上に複数の分岐を有してもよい(しばしば「多分岐グリカン」と呼ばれる)。「ハイブリッド」N-グリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端上に少なくとも1つのGlcNAcと、トリマンノースコアの1,6-マンノースアーム上にゼロ以上のマンノースとを有する。この様々なN-グリカンは、「グリコフォーム」とも呼ばれる。
【0186】
複合型N-グリカンに関して、「G-2」、「G-1」、「G0」、「G1」、「G2」、「A1」、及び「A2」という用語は、下記の意味を有する。「G-2」とは、Man3GlcNAc2として特徴づけることができるN-グリカン構造を指し、「G-1」という用語は、GlcNAcMan3GlcNAc2として特徴づけることができるN-グリカン構造を指し、「G0」という用語は、GlcNAc2Man3GlcNAc2として特徴づけることができるN-グリカン構造を指し、「G1」という用語は、GalGlcNAc2Man3GlcNAc2として特徴づけることができるN-グリカン構造を指し、「G2」という用語は、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2として特徴づけることができるN-グリカン構造を指し、「A1」という用語は、NANAGal2GlcNAc2Man3GlcNAc2として特徴づけることができるN-グリカン構造を指し、「A2」という用語は、NANA2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2として特徴づけることができるN-グリカン構造を指す。別段の指示がない限り、「G-2」、「G-1」、「G0」、「G1」、「G2」、「A1」、及び「A2」という用語は、N-グリカンの還元末端にあるGlcNAc残基に付着しているフコースを欠いたN-グリカン種を指す。この用語が「F」を含む場合、「F」は、N-グリカン種が、N-グリカンの還元末端にあるGlcNAc残基上にフコース残基を含有することを示す。例えば、G0F、G1F、G2F、A1F、及びA2Fはいずれも、N-グリカンが、N-グリカンの還元末端にあるGlcNAc残基に付着しているフコース残基をさらに含むことを示す。酵母及び糸状菌のようなより下等な真核生物は、通常、フコースを産生
するN-グリカンを産生しない。
【0187】
多分岐N-グリカンに関して、「多分岐N-グリカン」という用語は、N-グリカンの1,6アームもしくは1,3アームの非還元末端を含むマンノース残基上にGlcNAc残基をさらに含むN-グリカン、またはN-グリカンの1,6アーム及び1,3アームの非還元末端を含む各マンノース残基上にGlcNAc残基をさらに含むN-グリカンを指す。したがって、多分岐N-グリカンは、式GlcNAc(2-4)Man3GlcNAc2、Gal(1-4)GlcNAc(2-4)Man3GlcNAc2、またはNANA(1-4)Gal(1-4)GlcNAc(2-4)Man3GlcNAc2により特徴づけることができる。「1-4」という用語は、1、2、3、または4つの残基を指す。
【0188】
二分岐N-グリカンに関して、「二分岐N-グリカン」という用語は、GlcNAc残基がN-グリカンの還元末端にあるマンノース残基に結合しているN-グリカンを指す。二分岐N-グリカンは、式GlcNAc3Man3GlcNAc2により特徴づけることができ、各マンノース残基は、その非還元末端でGlcNAc残基に結合している。これに対し、多分岐N-グリカンはGlcNAc3Man3GlcNAc2として特徴づけられ、この式は、2つのGlcNAc残基が、N-グリカンの2つのアームの一方の非還元末端にあるマンノース残基に結合し、1つのGlcNAc残基が、N-グリカンの他方のアームの非還元末端にあるマンノース残基に結合していることを示す。
【0189】
抗体の物理的特性
本明細書で開示されている抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、さらに、軽鎖または重鎖いずれかの免疫グロブリン可変領域内の1つ以上のグリコシル化部位を含有することができる。このようなグリコシル化部位は、抗原結合の改変に起因して、抗体もしくは断片の免疫原性の増加、または抗体のpKの改変をもたらし得る(Marshall et al.(1972)Annu Rev Biochem 41:673-702;Gala and Morrison(2004)J Immunol 172:5489-94;Wallick et al(1988)J Exp Med 168:1099-109;Spiro(2002)Glycobiology 12:43R-56R;Parekh et al(1985)Nature 316:452-7;Mimura et al.(2000)Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含有するモチーフで生じることが知られている。
【0190】
各抗体または抗原結合断片(例えば、27Aまたはそのヒト化バージョン)は固有の等電点(pI)を有し、等電点は、一般的には6から9.5の間のpH範囲内に収まる。IgG1抗体のpIは、典型的には7~9.5のpH範囲内に収まり、IgG4抗体のpIは、典型的には6~8のpH範囲内に収まる。
【0191】
各抗体または抗原結合断片(例えば、27Aまたはそのヒト化バージョン)は、特徴的な融解温度を有し、高い融解温度ほどin vivoにおける全体的な安定性が高いことを示す(Krishnamurthy R and Manning MC(2002)Curr Pharm Biotechnol 3:361-71)。概して、TM1(初期アンフォールディングの温度)は、60℃超、65℃超、または70℃超とすることができる。抗体または断片の融点は、示差走査熱量測定(Chen et al(2003)Pharm Res 20:1952-60;Ghirlando et al(1999)Immunol Lett 68:47-52)または円偏光二色性(Murray et al.(2002)J.Chromatogr Sci 40:343-9)を用いて測定することができる。
【0192】
さらなる実施形態において、抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、急速に分解しないものが選択される。抗体または断片の分解は、キャピラリー電気泳動(CE)及びMALDI-MS(Alexander AJ and Hughes DE(1995)Anal Chem 67:3626-32)を用いて測定することができる。
【0193】
さらなる実施形態において、抗体(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)及びその抗原結合断片は、凝集効果(望ましくない免疫応答、及び/または改変されたもしくは好ましくない薬物動態特性を作動させる恐れがある)を最小限有するものが選択される。一般的には、抗体及び断片は、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、または5%以下の凝集が許容される。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び光散乱を含めたいくつかの技法により測定することができる。
【0194】
抗体結合体
本明細書で開示されている抗CTLA-4抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、化学部分に結合していてもよい。化学部分は、特に、ポリマー、放射性核種、または細胞傷害性因子とすることができる。特定の実施形態において、化学部分は、対象の体内で抗体または断片の半減期を増大させるポリマーである。好適なポリマーとしては、以下に限定されないが親水性ポリマーが挙げられ、親水性ポリマーとしては、以下に限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDa、または40kDaの分子量を有するPEG)、デキストラン、及びモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が挙げられる。Lee,et al.,(1999)(Bioconj.Chem.10:973-981)は、PEG結合単鎖抗体を開示している。Wen,et al.,(2001)(Bioconj.Chem.12:545-553)は、放射性金属キレート剤(ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))に付着しているPEGとの結合抗体を開示している。
【0195】
また、抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、3H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67CU、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、及び40K、157Gd、55Mn、52Tr、及び56Feのような標識と結合させてもよい。
【0196】
また、本明細書で開示されている抗体及び抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、例えば、その生物学的(例えば、血清)半減期を増大させるために、PEG化してもよい。抗体または断片をPEG化するには、抗体または断片を、典型的には反応性形態のポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)と、1つ以上のPEG基が抗体または抗体断片に付着するような条件下で反応させる。特定の実施形態において、PEG化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して行われる。本明細書において、「ポリエチレングリコール」という用語は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの任意の形態(例えば、モノ(C1-C10)アルコキシ-もしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミド)を含むように意図されている。ある特定の実施形態において、PEG化される抗体または断片は、無グリコシル化された抗体または断片である。タンパク質をPEG化する方法は、当技術分野で公知であり、本発明の抗体に適用することができる
。例えば、EP 0 154 316及びEP 0 401 384を参照。
【0197】
また、本明細書で開示されている抗体及び抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、蛍光または化学発光標識と結合してもよく、これには、フルオロフォア、例えば希土類キレート、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、イソシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナル標識、イソルミナル標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識、及び安定性のフリーラジカルが含まれる。
【0198】
また、本発明の抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、細胞傷害性因子、例えば、ジフテリア毒素、Pseudomonas aeruginosa外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質及び化合物(例えば、脂肪酸)、ジアンシンタンパク質、Phytoiacca americanaタンパク質PAPI、PAPII、及びPAP-S、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、saponaria officinalis阻害剤、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、及びエノマイシンに結合させてもよい。
【0199】
本発明の抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)を様々な部分に結合させるために、当技術分野で公知の任意の方法を用いることができ、これには、Hunter,et al.,(1962)Nature 144:945;David,et al.,(1974)Biochemistry 13:1014;Pain,et al.,(1981)J.Immunol.Meth.40:219;及びNygren,J.,(1982)Histochem.and Cytochem.30:407により説明されている方法が含まれる。抗体及び断片を結合させる方法は、当技術分野において従来的であり周知のものである。
【0200】
抗体または他のポリペプチドは、アッセイで使用するために様々な固体担体に固定することができる。特定の結合メンバーの固定に使用することができる固相には、固相結合アッセイで固相として開発され及び/または使用されているものが含まれる。好適な固相の例としては、膜フィルター、セルロースベースの紙、ビーズ(ポリマー、ラテックス、及び常磁性の粒子を含む)、ガラス、シリコンウェハー、微粒子、ナノ粒子、TentaGel、AgroGel、PEGAゲル、SPOCCゲル、及びマルチウェルプレートが挙げられる。アッセイストリップは、固体担体上のアレイ内の1つの抗体または複数の抗体をコーティングすることにより、調製することができる。このストリップを、次に試験試料に浸漬し、次に洗浄及び検出ステップにより迅速に処理して、測定可能なシグナル(例えば、着色スポット)を精製することができる。抗体または他のポリペプチドは、アッセイデバイス表面に直接結合させるか、または間接的に結合させることにより、アッセイデバイスの特定のゾーンに結合させることができる。後者の場合の一例では、抗体または他のポリペプチドは、粒子またはデバイス表面に固定された他の固体担体上に固定することができる。
【0201】
生物学的アッセイには検出方法が必要であり、結果の定量化のための最も一般的な方法の1つは、検出可能な標識を、研究対象の生物学的システム内の1つ以上の構成成分に対し親和性を有するタンパク質または核酸に結合させることである。検出可能な標識としては、それ自体が検出可能な分子(例えば、蛍光部分、電気化学的標識、金属キレートなど)に加えて、検出可能な反応産物(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホス
ファターゼなど)の産生により、またはそれ自体が検出可能であり得る特定の結合分子(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4-ジニトロベンゼン、フェニルアルセネート、ssDNA、dsDNAなど)により、間接的に検出され得る分子を挙げることができる。
【0202】
固相及び検出可能な標識結合体の調製は、しばしば化学的架橋剤の使用を含む。架橋試薬は、少なくとも2つの反応性基を含有し、一般的には、ホモ官能性架橋剤(同一の反応性基を含有)及びヘテロ官能性架橋剤(同一でない反応性基)に分類される。アミン、スルフヒドリルを介して結合するか、または非特異的に反応するホモ二官能性架橋剤は、多くの市販供給元から入手可能である。マレイミド、アルキル及びアリールハロゲン化物、アルファ-ハロアシル、ならびにピリジルジスルフィドは、チオール反応性基である。マレイミド、アルキル及びアリールハロゲン化物、及びアルファ-ハロアシルは、スルフヒドリルと反応してチオールエーテル結合を形成し、一方ピリジルジスルフィドは、スルフヒドリルと反応して混合ジスルフィドを産生する。ピリジルジスルフィド産物は、切断可能である。イミドエステルも、タンパク質間の架橋に対し非常に有用である。首尾よい結合のために各々が異なる属性を組み合わせている、様々なヘテロ二官能性架橋剤が市販されている。
【0203】
抗CTLA-4抗体の治療的使用
さらに提供されるのは、本明細書で開示されている単離された抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)による処置を必要とする、対象(ヒト対象を含む)を処置する方法である。本発明の一実施形態において、このような対象は、感染症または感染性疾患を患っている。本発明の別の実施形態において、このような対象は、がんを患っている。一実施形態において、がんは、例えば、骨肉腫、横紋筋肉腫、神経芽腫、腎臓癌、白血病、腎移行上皮癌、膀胱癌、ウィルム癌、卵巣癌、膵癌、乳癌、前立腺癌、骨癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、胃癌、結腸直腸癌、子宮頚癌、滑膜肉腫、頭頚部癌、扁平上皮癌、多発性骨髄腫、腎細胞癌、網膜芽腫、肝芽腫、肝細胞癌、黒色腫、腎臓のラブドイド腫瘍、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、脳癌、神経膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原始神経外胚葉性腫瘍、髄芽腫、星状細胞腫、未分化星状細胞腫、乏突起神経膠腫、脳室上皮腫、脈絡叢乳頭腫、真性多血症、血小板血症、特発性骨髄線維症、軟部組織肉腫、甲状腺癌、子宮内膜癌、カルチノイド癌または肝臓癌、乳癌または胃癌である。本発明の一実施形態において、当該がんは、(例えば、上記バラエティーの)転移性癌である。
【0204】
一実施形態において、本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)を用いて、ウイルス感染症を患っている対象を処置する方法を提供する。一実施形態において、ウイルス感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、(A、B、またはC型)肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-I、HAV-6、HSV-II、及びCMV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、またはアルボウイルス脳炎からなる群から選択されるウイルスによる、感染症である。
【0205】
一実施形態において、本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を用いて、細菌感染症を患っている対象を処置する方法を提供する。一実施形態において、細菌感染症は、Chlamydia trachomatis、リケッチア細菌、例えば、Ehrlichia、Orientia、及びRicekettsia、マイコバクテリア、例えば、Mycobacterium leprae、またはMycobact
erium lepromatosis、ブドウ球菌、例えば、Staphylococcus aureus、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、及び淋菌、Klebsiella、Proteus、Serratia、Pseudomonas、Legionella、Corynebacterium diphtheriae、Salmonella、桿菌、Vibrio cholerae、Clostridium tetan、Clostridium botulinum、Bacillus anthracis、Yersinia pestis、Haemophilus influenza、Actinomyces、Leptospira、Treponema、Shigella、Chlamydophila psittaci、ならびにBorriellaからなる群から選択される細菌による、感染症である。
【0206】
一実施形態において、本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を用いて、真菌感染症を患っている対象を処置する方法を提供する。一実施形態において、真菌感染症は、Candida(albicans、krusei、glabrata、tropicalisなど)、Cryptococcus neoformans、Aspergillus(fumigatus、nigerなど)、Genus Mucorales(mucor、absidia、rhizopus)、Sporothrix
schenkii、Blastomyces dermatitidis、Paracoccidioides brasiliensis、Coccidioides immitis、及びHistoplasma capsulatumからなる群から選択される真菌による、感染症である。
【0207】
一実施形態において、本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を用いて、寄生虫感染症を患っている対象を処置する方法を提供する。一実施形態において、寄生虫感染症は、Entamoeba histolytica、Balantidium coli、Naegleria fowleri、Acanthamoeba、Giardia lambia、Cryptosporidium、Pneumocystis carinii、Plasmodium vivax、Babesia microti、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzi、Leishmania donovani、Toxoplasma gondii and、及びNippostrongylus brasiliensisからなる群から選択される寄生虫による、感染症である。
【0208】
「対象」は、哺乳類、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、サル(Macaca fascicularis(カニクイザル))、またはウサギとすることができる。本発明の好ましい実施形態において、対象とは、ヒト対象である。
【0209】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物は、他の抗体分子、STINGアゴニスト、化学療法、他の抗がん療法(例えば、標的抗がん療法、遺伝子療法、ウイルス療法、RNA療法、骨髄移植、ナノ療法、もしくは腫瘍溶解性薬物)、細胞傷害性薬剤、免疫療法(例えば、サイトカインもしくは細胞に基づく免疫療法)、外科的手順(例えば、乳腺腫瘍摘出術もしくは乳房切除術)、または放射線手順、あるいは上記のいずれかの組合せの1つ以上との併用で、投与される。追加的療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態をとることができる。一部の実施形態において、追加的療法は、酵素阻害剤(例えば、低分子酵素阻害剤)または転移阻害剤である。併用で投与することができる例示的な細胞傷害性薬剤としては、微小管阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、挿入剤、シグナル伝達経路を妨害可能な薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、プロテオソーム阻害剤、及び放射線(例えば、局所または全身の照射(例えば、ガンマ照射))が挙げられる。他の実施形態において、追加的療法は、手術もしくは放射線、また
はその組合せである。他の実施形態において、追加的療法は、PI3K/AKT/mTOR経路の1つ以上を標的化する療法、HSP90阻害剤、またはチューブリン阻害剤である。代替的に、または前述の組合せとの併用で、本明細書に記載の方法及び組成物は、免疫調節剤(例えば、共刺激分子の活性化剤、もしくは阻害分子(例えば、免疫チェックポイント分子)の阻害剤)、ワクチン(例えば、治療用がんワクチン)、または他の形態の細胞免疫療法の1つ以上との併用で投与することができる。
【0210】
特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、がんのような任意の疾患を処置または予防するために、このような処置または予防を必要としている対象において、単体で使用しても、他のさらなる治療剤及び/または治療手順に付随して使用してもよい。このような抗体及び断片をさらなる治療剤に付随して含む組成物(例えば、医薬的に許容される担体を含む医薬組成物)も、本発明の一部である。
【0211】
特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、単体で使用しても、腫瘍ワクチンに付随して使用してもよい。
【0212】
特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、単体で使用しても、化学療法剤に付随して使用してもよい。
【0213】
特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、単体で使用しても、放射線療法に付随して使用してもよい。
【0214】
特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、単体で使用しても、標的療法に付随して使用してもよい。標的療法の例としては、ホルモン療法、シグナル伝達阻害剤(例えば、EGFR阻害剤、例えば、セツキシマブ(Erbitux)及びエルロチニブ(Tarceva))、HER2阻害剤(例えば、トラスツズマブ(Herceptin)及びペルツズマブ(Perjeta))、BCR-ABL阻害剤(例えば、イマチニブ(Gleevec)及びダサチニブ(Sprycel))、ALK阻害剤(例えば、クリゾチニブ(Xalkori)及びセリチニブ(Zykadia))、BRAF阻害剤(例えば、ベムラフェニブ(Zelboraf)及びダブラフェニブ(Tafinlar))、遺伝子発現調節剤、アポトーシス誘導剤(例えば、ボルテゾミブ(Velcade)及びカルフィルゾミブ(Kyprolis))、血管新生阻害剤(例えば、ベバシズマブ(Avastin)及びラムシルマブ(Cyramza))、毒素に付着したモノクローナル抗体(例えば、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris)及びアド-トラスツズマブエムタンシン(Kadcyla))が挙げられる。
【0215】
特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、抗がん治療剤または免疫調節受容体阻害剤のような免疫調節薬物、例えば、免疫調節受容体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片との併用で使用することができる。
【0216】
したがって、本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)を、以下PD-1/PD-L1ブロック抗体の1つ以上:ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、REGN2810、MEDI-0680、PDR-001、SHR-1210、BGB-A317、PF-0680
1591、TSR-042、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、BMS-936559に付随して含む組成物、ならびに対象におけるがんを処置または予防する方法であって、有効量の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片と、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、REGN2810の1つ以上とを、対象に投与することを含む、方法を含む。任意選択で、対象は、さらなる治療剤も投与される。
【0217】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、ペムブロリズマブの重鎖及び軽鎖をコードする単離された抗体に付随する。
【0218】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、ニボルマブの重鎖及び軽鎖をコードする単離された抗体に付随する。
【0219】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、以下の1つ以上に付随する:抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ(CT-011))、抗PDL1抗体、抗TIGIT抗体、抗CD27抗体、抗CS1K応対(例えば、エロツズマブ)、抗KIR2DL1/2/3抗体(例えば、リリルマブ)、抗CD137抗体(例えば、ウレルマブ)、抗GITR抗体(例えば、TRX518)、抗PD-L1抗体(例えば、BMS-936559、MSB0010718C、またはMPDL3280A)、抗PD-L2抗体、抗ILT1抗体、抗ILT2抗体、抗ILT3抗体、抗ILT4抗体、抗ILT5抗体、抗ILT6抗体、抗ILT7抗体、抗ILT8抗体、抗CD40K応対、抗OX40抗体、抗ICOS、抗SIRPα、抗KIR2DL1抗体、抗KIR2DL2/3抗体、抗KIR2DL4抗体、抗KIR2DL5A抗体、抗KIR2DL5B抗体、抗KIR3DL1抗体、抗KIR3DL2抗体、抗KIR3DL3抗体、抗NKG2A抗体、抗NKG2C抗体、抗NKG2E抗体、抗4-1BB抗体(例えば、PF-05082566)、抗TSLP抗体、抗IL-10抗体、抗APRIL(例えば、BION1301)、抗CD38(ダラツムマブ)、抗IL-10もしくはPEG化IL-10、またはこのような標的における任意の小有機分子阻害剤。
【0220】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗PD1抗体に付随する。
【0221】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗PDL1抗体(例えば、BMS-936559、MSB0010718C、またはMPDL3280A)に付随する。
【0222】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗CD27抗体に付随する。
【0223】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗CS1抗体に付随する。
【0224】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗KIR2DL1/2/3抗体に付随する。
【0225】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗CD137(例えば、ウレルマ
ブ)抗体に付随する。
【0226】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗GITR(例えば、TRX518)抗体に付随する。
【0227】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗PD-L2抗体に付随する。
【0228】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗ITL1抗体に付随する。
【0229】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗ITL2抗体に付随する。
【0230】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗ITL3抗体に付随する。
【0231】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗ITL4抗体に付随する。
【0232】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗ITL5抗体に付随する。
【0233】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗ITL6抗体に付随する。
【0234】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗ITL7抗体に付随する。
【0235】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗ITL8抗体に付随する。
【0236】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗CD40抗体に付随する。
【0237】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗OX40抗体に付随する。
【0238】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗KIR2DL1抗体に付随する。
【0239】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗KIR2DL2/3抗体に付随する。
【0240】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗KIR2DL4抗体に付随する。
【0241】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗KIR2DL5A抗体に付随する。
【0242】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗KIR2DL5B抗体に付随する。
【0243】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗KIR3DL1抗体に付随する。
【0244】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗KIR3DL2抗体に付随する。
【0245】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗KIR3DL3抗体に付随する。
【0246】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗NKG2A抗体に付随する。
【0247】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗NKG2C抗体に付随する。
【0248】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗ICOS抗体に付随する。
【0249】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗SIRPα抗体に付随する。
【0250】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗4-1BB抗体に付随する。
【0251】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗IL-10抗体に付随する。
【0252】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗TSLP抗体に付随する。
【0253】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、IL-10またはPEG化IL-10に付随する。
【0254】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTKLA-4抗体またはその抗原結合断片は、好ましくは医薬組成物の一部として、Tim-3経路アンタゴニストに付随する。
【0255】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は
、好ましくは医薬組成物の一部として、Vista経路アンタゴニストに付随する。
【0256】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、好ましくは医薬組成物の一部として、BTLA経路アンタゴニストに付随する。
【0257】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、好ましくは医薬組成物の一部として、LAG-3経路アンタゴニストに付随する。
【0258】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、好ましくは医薬組成物の一部として、TIGIT経路アンタゴニストに付随する。
【0259】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、好ましくは医薬組成物の一部として、STINGアゴニストに付随する。環状ジヌクレオチド(CDN)である環状ジ-AMP(Listeria monocytogenes及び他の細菌)ならびにその類似体である環状ジ-GMP及び環状ジ-GMP-AMPは、宿主細胞により病原体関連分子パターン(PAMP)として認識され、病原体認識受容体(PRR)(インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)として知られる)に結合する。STINGは、宿主哺乳類細胞の細胞質中のアダプタータンパク質であり、TANK結合キナーゼ(TBK1)-IRF3及びNF-カッパBシグナリング軸を活性化し、強力に先天免疫を活性化するIFN-βや他の遺伝子産物の誘導をもたらす。現在、STINGが宿主細胞基質サーベイランス経路(Vance et al.,2009)の構成成分であることが認識されているが、この経路は、細胞内病原体による感染を関知し、それに応答してIFN-βの産生を誘導し、抗原特異的なCD4+及びCD8+ 両T細胞ならびに病原体特異的抗体からなる、適応保護的な病原体特異的免疫応答の発生をもたらす。環状プリンジヌクレオチドの例は、例えば、米国特許第7,709458号及び7,592,326号、特許出願WO2007/054279、WO2014/093936、及びWO2014/189805、ならびにYan et al.,Bioorg.Med.Chem Lett.18:5631(2008)で、ある程度詳細に説明されている。
【0260】
一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、免疫細胞の活性を増大させる。免疫細胞の活性の増大は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて検出することができる。一実施形態において、免疫細胞の活性の増大は、免疫細胞の増殖を測定することにより検出することができる。例えば、T細胞の活性の増大は、T細胞の増殖、またはシグナル伝達事象(例えば、転写調節因子にシグナルを伝える免疫受容体もしくは下流キナーゼのチロシンリン酸化)を測定することにより、検出することができる。他の実施形態において、免疫細胞の活性の増大は、特定の標的細胞に対するCTLもしくはNK細胞の細胞傷害機能、または抗腫瘍免疫の刺激に付随するIFNγサイトカイン応答を測定することにより、検出することができる。また他の実施形態において、免疫細胞の活性の増大は、対象に由来する試料においてT細胞活性化をex vivoで測定することにより、検出することができる。一実施形態において、T細胞活性の増大は、以下により決定される:(i)IL-2、TNFα、IL-17、IFNγ、IL-1β、GM-CSF、RANTES、IL-6、IL-8、IL-5、及びIL-13から選択される1つ以上の炎症促進性サイトカインのSEB(StaphylococcusエンテロトキシンB)誘導産生を測定すること、または(ii)IL-2、TNFα、IL-17、IFNγ、IL-1β、GM-CSF、RANTES、IL-6、IL-8、IL-5、及びIL-13からなる群から選択されるサイトカインの産生を誘導するための、混合リンパ球反応またはT細胞受容体(TCR)シグナリングの直接的抗CD3 mAb刺激を測定すること。ある特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、IL-2及び/またはIFNγの抗原特異的なT細胞産生、及び/またはCD25
及び/またはCD69の上方制御を、少なくとも1.5倍刺激する。ある特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、CD80及びCD86を発現するラージ細胞に提示されると、CD3+ T細胞を刺激して、IL-2、TNFα、IL-17、IFNγ、IL-1β、GM-CSF、RANTES、IL-6、IL-8、IL-5、及びIL-13からなる群から選択される炎症促進性サイトカインを産生する。
【0261】
細胞溶解性T細胞応答を生じさせるのに有益な追加的薬剤を、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片との併用で使用することができる。この薬剤としては、以下に限定されないが、B7共刺激分子、インターロイキン-2、インターフェロン-γ、GM-CSF、PD-1アンタゴニスト、OX-40/OX-40リガンド、CD40/CD40リガンド、サルグラモスチム、レバミソール、ワクシニアウイルス、Bacille Calmette-Guerin(BCG)、リポソーム、ミョウバン、フロイント完全または不完全アジュバント、無毒化エンドトキシン、鉱油、表面活性物質、例えばリポレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、及び油または炭化水素のエマルジョンが挙げられる。
【0262】
T細胞免疫応答を誘導する組成物は、抗体応答に対し細胞溶解性T細胞応答を優先的に刺激するものが好ましいが、両タイプの応答を刺激する組成物も使用することができる。薬剤がポリペプチドである場合、ポリペプチド自体またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与することができる。担体は、抗原提示細胞(APC)または樹状細胞のような細胞とすることができる。抗原提示細胞には、マクロファージ、樹状細胞、及びB細胞のような細胞タイプが含まれる。他の専門的な抗原提示細胞としては、単球、辺縁帯クッパー細胞、ミクログリア、ランゲルハンス細胞、指状嵌入樹状細胞、濾胞性樹状細胞、及びT細胞が挙げられる。通性抗原提示細胞も使用することができる。通性抗原提示細胞の例としては、星状細胞、濾胞細胞、内皮、及び線維芽細胞が挙げられる。
【0263】
組成物は、ポリペプチドを発現するように、またはワクチン接種された個体の細胞内でその後発現するポリヌクレオチドを送達するように形質転換されている、細菌細胞を含むことができる。アジュバント、例えば、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムを、免疫応答を作動させる、増強する、または延長するワクチンの能力を増大させるために添加してもよい。
【0264】
組成物は、ポリペプチドを発現するように、またはワクチン接種された個体の細胞内でその後発現するポリヌクレオチドを送達するように形質転換されている、細菌細胞を含むことができる。以下に限定されないが、Shigella flexneri、Escherichia coli、Listeria monocytogenes、Yersinia enterocolitica、Salmonella typhimurium、Salmonella typhi、またはマイコバクテリア種を含めた複数の細菌種がワクチン用に開発されており、これらは本発明におけるワクチンプラットフォームとして使用することができる。このリストは、限定的であるようには意図されていない。本発明は、弱毒化細菌株、共生細菌株、及び/または殺滅され、ただし代謝的に活性の細菌株をワクチンプラットフォームとして使用することを企図している。好ましい実施形態において、細菌は、Listeria monocytogenesである。
【0265】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、不活性化腫瘍細胞ワクチンと一緒である。「不活性化腫瘍細胞」とは、細胞の分割を防止するように処理された(患者由来または患者と同種の)腫瘍細胞を意味する。本発明の目的において、このような細胞は、その免疫原性及び代謝活性を保持する。このような腫瘍細胞は遺伝子修飾されて、がん療法の一部として患者内で発現する導入遺伝子を発現さ
せる。したがって、本発明の組成物またはワクチンは、処置を受ける患者に由来するまたは患者と同種である、最も好ましくは患者が罹患しているものと同じ一般型の腫瘍細胞である、新生物性(例えば、腫瘍)細胞を含む。例えば、黒色腫を患っている患者であれば、典型的には、黒色腫に由来する遺伝子修飾細胞を投与される。本発明で使用するための(例えば、照射用)腫瘍細胞を不活性化する方法は、当技術分野において周知である。
【0266】
一部の実施形態において、本発明の不活性化腫瘍細胞は、1つ以上のヒートショックタンパク質を発現及び分泌させるように修飾される。例えば、gp96-Ig融合タンパク質を発現及び分泌させて、免疫応答を刺激することができる(Yamazaki et al.,The Journal of Immunology,1999,163:5178-5182;Strbo et al.,Immunol Res.2013 Dec;57(1-3):311-25)。一部の実施形態において、不活性化腫瘍細胞は、gp96-Ig融合タンパク質を発現及び分泌させるように修飾される。
【0267】
本発明の不活性化腫瘍細胞は、1つ以上の共刺激分子または共刺激剤と共に患者に投与される。好ましい共刺激剤は、樹状細胞の誘導、動員、及び/または成熟を刺激する1つ以上のサイトカインを含む。このような共刺激剤を評価する方法は、文献において周知である。DCの誘導及び成熟は、典型的には、CD80及びCD86のようなある特定の膜分子の発現の増加、及び/または刺激後のIL12-及びI型インターフェロンのような炎症促進性サイトカインの分泌により、評価される。
【0268】
好ましい実施形態において、不活性化腫瘍細胞自体は、樹状細胞の誘導、動員、及び/または成熟を刺激する1つ以上のサイトカインを発現及び分泌させるように修飾される。本発明は、GM-CSFの使用に関して、例示的な用語で説明されている。したがって、例として、腫瘍細胞は、米国特許第5,637,483号、第5,904,920号、第6,277,368号、及び6,350,445号、ならびに米国特許公開第20100150946号で説明されているように、GM-CSFをコードする導入遺伝子を発現させることができる。膵臓癌の処置のためのGM-CSF発現遺伝子操作がん細胞または「サイトカイン発現細胞ワクチン」の一形態は、米国特許第6,033,674号及び第5,985,290号で説明されている。
【0269】
このような非活性化腫瘍細胞及び/またはバイスタンダー細胞により、GM-CSF以外に、またはGM-CSFと共に発現し得る他の好適なサイトカインとしては、以下に限定されないが、CD40リガンド、FLT-3リガンド、IL-12、CCL3、CCL20、及びCCL21の1つ以上が挙げられる。このリストは、限定的であるようには意図されていない。
【0270】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、1つ以上の所定の抗原に対する免疫応答を刺激するように意図されている1つ以上のワクチンと共に投与される。抗原(複数可)は、個体に直接投与してもよく、または、例えば、自己由来または同種であり得る腫瘍細胞ワクチン(例えば、GVAX)、樹状細胞ワクチン、DNAワクチン、RNAワクチン、ウイルスベースのワクチン、細菌もしくは酵母ワクチン(例えば、Listeria monocytogenesもしくはSaccharomyces cerevisiae)などから、個体内で発現させてもよい。例えば、Guo et al.,Adv.Cancer Res.2013;119:421-475;Obeid et al.,Semin Oncol.2015 Aug;42(4):549-561を参照。本発明で使用され得る標的抗原の例が、以下の表に収載されている。また、標的抗原は、表に収載された抗原の免疫学的活性部分を含む、断片または融合ポリペプチドであってもよい。このリストは、限定的であるようには意図されていない。
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
【0278】
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
当技術分野で好適な抗原が公知である他の生物としては、以下に限定されないが、Chlamydia trachomatis、Streptococcus pyogenes(グループA Strep)、Streptococcus agalactia(グループB Strep)、Streptococcus pneumonia、Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Haemophilus influenzae、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrheae、Vibrio cholerae、Salmonella種(typhi、typhimuriumを含む)、enterica(Helicobactor pylori、Shigella flexneri、及び他のグループD shigella種を含む)、Burkholderia mallei、Burkholderia pseudomallei、Klebsiella
pneumonia、Clostridium種(C.difficileを含む)、Vibrio parahaemolyticusが挙げられる。このリストは、限定的であるようには意図されていない。
【0288】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、以下のような阻害剤(例えば、小有機分子または抗体もしくはその抗原結合断片)の1つ以上に付随する:MTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)阻害剤、細胞傷害性薬剤、白金薬剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、微小管安定化剤、タキサン、CD20阻害剤、CD52阻害剤、CD30阻害剤、RANK(核内因子カッパ-B活性化受容体)阻害剤、RANKL(核内因子カッパ-B活性化受容体リガンド)阻害剤、ERK阻害剤、MAPキナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、MEK阻害剤、PI3K阻害剤、HER1阻害剤、HER2阻害剤、HER3阻害剤、HER4阻害剤、Bcl2阻害剤、CD22阻害剤、CD79b阻害剤、ErbB2阻害剤、またはファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤。
【0289】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、以下のいずれか1つ以上に付随する:13-シス-レチノイン酸、3-[5-(メチルスルホニルピペラジンメチル)-インドリル]-キノロン、4-ヒドロキシタモキシフェン、5-デオキシウリジン、5’-デオキシ-5-フルオロウリジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、7-ヒドロキシスタウロスポリン、A-443654、アビラテロン酢酸エステル、アブラキサン、ABT-578、アコルビフェン、ADS-100380、ALT-110、アルトレタミン、アミホスチン、アミノグルテチミド、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンジオスタチン、AP-23573、ARQ-197、アルゾキシフェン、AS-252424、AS-605240、アスパラギナーゼ、AT-9263、アトラセンタン、アキシチニブ、AZD1152、Bacillus Calmette-Guerin(BCG)ワクチン、バタブリン、BC-210、ベスドトクス、ベバシズマブ、ビカルタミド、Bio111、BIO140、ブレオマイシン、BMS-214662、BMS-247550、BMS-275291、BMS-310705、ボルテジミブ、ブセレリン、ブスルファン、カルシトリオール、カンプトテシン、カネルチニブ、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、CC8490、セジラニブ、CG-1521、CG-781、クラミドシン、クロラムブシル、クロロトキシン、シレンジタイド、シメチジン、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、COL-3、CP-724714、シクロホスファミド、シプロテロン、シプロテロン酢酸エステル、シタラビン、シトシンアラビノシド、ダカルバジン、ダシノスタット、ダクチノマイシン、ダロツズマブ、ダヌセルチブ、ダサタニブ、ダウノルビシン、デカタニブ、デグエリン、デニロイキン、デオキシコホルマイシン、デプシペプチド、ジアリールプロピオニトリル、ジエチルスチルベストロール、ジフチトクス、ドセタキセル、ドビチニブ、ドキソルビシン、ドロロキシフェン、エドテカリン、イットリウム90標識エドトレオチド、エドトレオチド、EKB-569、EMD121974、エンドスタチン、エンザルタミド、エンザスタウリン、エピルビシン、エピチロンB、ERA-923、エルビタックス、エルロチニブ、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フィクラツズマブ、フィナステリド、フラボピリドール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、フルタミド、FOLFOXレジメン、フルベストラント、ガレテロン、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ギマテカン、ゴセレリン、ゴセレリン酢酸塩、ゴシポール、GSK461364、GSK690693、HMR-3339、ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル、ヒドロキシウレア、IC87114、イダルビシン、イドキシフェン、イホスファミド、IM862、イマチニブ、IMC-1C11、INCB24360、INO1001、インターフェロン、インターロイキン-12、イピリムマブ、イリノテカン、JNJ-16241199、ケトコナゾール、KRX-0402、ラパチニブ、ラソフォキシフェン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、ロイプロリド酢酸塩、レバミソール、リポソーム内包パクリタキセル、ロムスチン、ロナファルニブ、ルカントン、LY292223、LY292
696、LY293646、LY293684、LY294002、LY294002、LY317615、マリマスタット、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、メゲストロール酢酸エステル、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、ミスラマイシン、ミトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、トザセルチブ、MLN8054、ネオバスタット、ネラチニブ、ノイラジアブ(neuradiab)、ニロチニブ、ニルタミド、ノラトレキセド、NVP-BEZ235、オブリメルセン、オクトレオチド、オファツムマブ、オレゴボマブ、オルテロネル、オキサリプラチン、パクリタキセル、パルボシクリブ、パミドロネート、パニツムマブ、パゾパニブ、PD0325901、PD184352、PEG-インターフェロン、ペメトレキセド、ペントスタチン、ペリフォシン、フェニルアラニンマスタード、PI-103、ピクチリシブ、PIK-75、ピペンドキシフェン、PKI-166、プリカマイシン、ポルフィマー、プレドニゾン、プロカルバジン、プロゲスチン、PX-866、R-763、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラゾキシン、リダホロリムス、リツキシマブ、ロミデプシン、RTA744、ルビテカン、スクリプタイド、Sdx102、セリシクリブ、セルメチニブ、セマキサニブ、SF1126、シロリムス、SN36093、ソラフェニブ、スピロノラクトン、スクアラミン、SR13668、ストレプトゾシン、SU6668、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、スニチニブ、合成エストロゲン、タラムパネル、タリモジーン・ラハーパレプベック、タモキシフェン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テスミリフェン、テストステロン、テトランドリン、TGX-221、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、チシリムマブ、チピファルニブ、チボザニブ、TKI-258、TLK286、トポテカン、トレミフェンクエン酸塩、トラベクテジン、トラスツズマブ、トレチノイン、トリコスタチンA、トリシリビンホスフェート一水和物(triciribinephosphate monohydrate)、トリプトレリンパモ酸塩、TSE-424、ウラシルマスタード、バルプロ酸、バルルビシン、バンデタニブ、バタラニブ、VEGFトラップ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビタキシン、ビテスパン、ボリノスタット、VX-745、ウォルトマニン、Xr311、ザノリムマブ、ZK186619、ZK-304709、ZM336372、ZSTK474。
【0290】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、以下に限定されないが、以下の1つ以上の制吐薬に付随する:カソピタント(GlaxoSmithKline)、ネツピタント(MGI-Helsinn)及び他のNK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン(AloxiとしてMGI Pharmaが販売)、アプレピタント(EmendとしてMerck and Co.;Rahway,NJが販売)、ジフェンヒドラミン(Benadryl(登録商標)としてPfizer;New York,NYが販売)、ヒドロキシジン(Atarax(登録商標)としてPfizer;New York,NYが販売)、メトクロプラミド(Reglan(登録商標)としてAH Robins Co,;Richmond,VAが販売)、ロラゼパム(Ativan(登録商標)としてWyeth;Madison,NJが販売)、アルプラゾラム(Xanax(登録商標)としてPfizer;New York,NYが販売)、ハロペリドール(Haldol(登録商標)としてOrtho-McNeil;Raritan,NJが販売)、ドロペリドール(Inapsine(登録商標))、ドロナビノール(Marinol(登録商標)としてSolvay Pharmaceuticals,Inc.;Marietta,GAが販売)、デキサメタゾン(Decadron(登録商標)としてMerck
and Co.;Rahway,NJが販売)、メチルプレドニゾロン(Medrol(登録商標)としてPfizer;New York,NYが販売)、プロクロルペラジン(Compazine(登録商標)としてGlaxosmithkline;Research Triangle Park,NCが販売)、グラニセトロン(Kytril(登録商標)としてHoffmann-La Roche Inc.;Nutley,N
Jが販売)、オンダンセトロン(Zofran(登録商標)としてGlaxosmithkline;Research Triangle Park,NCが販売)、ドラセトロン(Anzemet(登録商標)としてSanofi-Aventis;New York,NYが販売)、トロピセトロン(Navoban(登録商標)としてNovartis;East Hanover,NJが販売)。
【0291】
がん処置における他の副作用としては、赤血球及び白血球の欠乏が挙げられる。したがって、本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、このような欠乏を処置または予防する薬剤(例えば、フィルグラスチム、PEG-フィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンアルファ、またはダルベポエチンアルファ)に付随する。
【0292】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、抗がん放射線療法に付随して投与される。例えば、本発明の一実施形態において、放射線療法とは、外部照射療法(EBT)(高エネルギーX線ビームを腫瘍の位置に送達させる方法)のことである。ビームは患者の外部で(例えば、直線加速器により)生成され、腫瘍部位において標的化される。このX線はがん細胞を破壊することができ、入念な処置計画により、周囲の正常な組織の温存が可能である。患者の体内には放射性線源を配置しない。本発明の一実施形態において、放射線療法は、プロトンビーム療法(X線ではなくプロトンで病的組織を衝撃する原体療法の一タイプ)である。本発明の一実施形態において、放射線療法は、原体外部ビーム放射線療法(高度な技術を使用して放射線療法を個々の身体構造に合わせる手順)である。本発明の一実施形態において、放射線療法は、近接照射療法(体内に一時的に放射性物質を配置。通常、ある区域に過剰線量(または追加量)の放射線を投与するために用いられる)である。
【0293】
本発明の一実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)に付随して適用することができる外科的手順は、外科的腫瘍摘出術である。
【0294】
「~に付随して(in association with)」という用語は、本発明の方法で投与される構成成分(例えば、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)及びペムブロリズマブ)は、同時送達のための単一の組成物に製剤化しても、別々に2つ以上の組成物(例えば、キット)に製剤化してもよいことを示す。各構成成分は、対象に対し、他方の構成成分を投与するときとは異なる時間に投与してもよく、例えば、各投与は、所与の時間期間にわたるいくつかの間隔をおいて、非同時に(例えば、別々にまたは逐次的に)行うことができる。さらに、別々の構成成分は、同じ経路でも異なる経路でも対象に投与することができる。
【0295】
実験的及び診断的使用
本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、親和性精製剤として使用することができる。このプロセスにおいて、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、当技術分野で周知の方法を用いて、Sephadex、ガラスもしくはアガロース樹脂、または濾紙のような固相に固定される。固定された抗体または断片を、CTLA-4タンパク質(またはその断片)試料と接触させて精製し、その後に、試料中のCTLA-4タンパク質以外の実質的に全ての材料を除去する好適な溶媒で支持体を洗浄し、固定された抗体または断片に結合させる。最後に、結合したCTLA-4(例えば、プロテインA)を溶離させる溶媒で支持体を洗浄する。このような固定された抗体及び断片は、本発明の一部を形成する。
【0296】
さらに提供されるのは、二次抗体を生成する抗原であり、これは、例えば、ウェスタンブロットや本明細書で論じられている他のイムノアッセイの実施に有用である。
【0297】
また、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト化抗体)及びその抗原結合断片は、CTLA-4タンパク質の診断アッセイ、例えば、特定の細胞、組織、または血清(例えば、黒色腫細胞のような腫瘍細胞)内でその発現を検出することにも有用であり得る。このような診断方法は、様々な疾患の診断において有用であり得る。
【0298】
本発明は、本明細書で開示されている抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)の使用を組み込むELISAアッセイ(酵素結合免疫吸着アッセイ)を含む。
【0299】
例えば、このような方法は、以下のステップを含む:
(a)基質(例えば、マイクロタイタープレートウェル(例えば、プラスチックプレート)の表面)を抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片でコーティングする;
(b)CTLA-4の有無を調べるために試験する試料を基質に適用する;
(c)プレートを洗浄して、試料中の結合していない材料を除去する;
(d)検出可能に標識され、またCTLA-4抗原に対し特異性も有する抗体(例えば、酵素結合抗体)を適用する;
(e)基質を洗浄し、結合していない標識された抗体を除去する;
(f)標識された抗体が酵素に結合している場合、酵素により蛍光シグナルに変換される化学物質を適用する;及び
(g)標識された抗体の存在を検出する。
基質に結び付いた標識の検出は、CTLA-4タンパク質が存在することを示す。
【0300】
さらなる実施形態において、標識された抗体またはその抗原結合断片は、ABTS(例えば、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))または3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジンと反応して、検出可能な色の変化をもたらすペルオキシダーゼで標識される。代替的に、標識された抗体または断片は、シンチレーション物質の存在下でシンチレーションカウンターにより検出することができる、検出可能な放射性同位体(例えば、3H)で標識される。
【0301】
本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)は、ウェスタンブロットまたは免疫タンパク質ブロット手順で使用することができる。このような手順は、本発明の一部を形成するものであり、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)任意選択で、CTLA-4の有無を調べるために試験する試料からの(例えば、試料中のタンパク質におけるPAGEまたはSDS-PAGE電気泳動分離からの)タンパク質を、当技術分野で公知の方法(例えば、セミドライブロッティングまたはタンクブロッティング)を用いて、膜または他の固体基質に移し、結合したCTLA-4の有無を調べるために試験する膜または他の固体基質を、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片に接触させる。
このような、CTLA-4の有無を調べるために試験する、未変性PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲルまたはSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲル中のタンパク質を(例えば、ゲル中の電気泳動分離後に)移す対象となる膜は、ニトロセルロースまたはビニール系(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF))の膜の形態をとることができる。膜を抗CTLA-4抗体または断片に接触させる前に、任意選択で膜を(例えば、無脂肪粉乳などで)ブロックして、膜上で非特異的なタンパク質結合部位を結合させるようにする。
(2)膜を1回以上洗浄して、結合していない抗CTLA-4抗体または断片や、他の結
合していない物質を除去する。
(3)結合した抗CTLA-4抗体または断片を検出する。
結合した抗体または断片の検出は、CTLA-4タンパク質が、膜または基質上及び試料中に存在することを示す。結合した抗体または断片の検出は、抗体または断片が、検出可能に標識された二次抗体(抗免疫グロブリン抗体)と結合し、次に二次抗体の存在を検出することによるものと考えられる。
【0302】
本明細書で開示されているある特定の抗CTLA-4抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、免疫組織化学検査に使用することもできる。このような方法は、本発明の一部を形成するものであり、例えば、以下を含む:
(1)CTLA-4タンパク質の有無を調べるために試験する細胞(例えば、黒色腫細胞のような腫瘍細胞)を、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片に接触させる;及び
(2)細胞上または細胞内の抗体または断片を検出する。
【0303】
抗体または断片自体が検出可能に標識されている場合、抗体または断片を直接検出することができる。代替的に、抗体または断片は、検出可能に標的された二次抗体(検出される)と結合させてもよい。
【0304】
本明細書で開示されているある特定の抗CTLA-4抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、in vivoの腫瘍イメージングに使用することもできる。このような方法は、放射標識された抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片を、CTLA-4発現に結び付いた腫瘍(例えば、CTLA-4を(例えば、腫瘍浸潤リンパ球上で)発現させる腫瘍)の有無を調べるために試験する患者の体内に注射することと、その次に患者の身体の核イメージングを行って、標識された抗体または断片の存在を、例えば、高濃度の抗体または断片を含む、腫瘍に結合した座位で検出することと、を含むことができる。この座位の検出は、腫瘍内にCTLA-4+細胞が存在することを示す。
【0305】
イメージング技法としては、SPECTイメージング(単一光子放射型コンピューター断層撮影法)またはPETイメージング(陽電子放出断層撮影法)が挙げられる。標識としては、例えば、(例えば、SPECTイメージングと共に用いる)ヨウ素-123(123I)及びテクネチウム-99m(99mTc)、または(例えば、PETイメージングと共に用いる)11C、13N、15O、もしくは18F、またはインジウム-111が挙げられる(例えば、Gordon et al.,(2005)International Rev.Neurobiol.67:385-440を参照)。
【0306】
医薬組成物及び投与
本発明の抗CTLA-4抗体及びその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)の医薬組成物または無菌組成物を調製するために、抗体またはその抗原結合断片は、医薬的に許容される担体または賦形剤と混合する。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984)を参照。
【0307】
治療及び診断用薬剤の製剤は、許容される担体、賦形剤、または安定化剤と共に、例えば、凍結乾燥された粉末、スラリー、水性溶液、または懸濁液の形態で混合することにより、調製することができる(例えば、Hardman,et al.(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York
,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avis,et al.(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照)。
【0308】
単体で、または他の治療剤との併用で投与される、本発明の抗体の毒性及び治療効果は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、LD50の判定(個体群の50%に対する致死的用量)及びED50の判定(個体群の50%において治療的に有効な用量)、によって判定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数(LD50/ED50)である。この細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトで使用するための薬用量範囲を公式化するのに使用することができる。このような化合物の薬用量は、毒性がわずかであるか全くないED50を含む血中濃度の範囲内であることが好ましい。薬用量は、用いられる剤形及び投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。
【0309】
さらなる実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)に付随して対象に投与されるさらなる治療剤は、Physicians’ Desk Reference 2003(Thomson Healthcare;57th edition(November 1,2002))に従う。
【0310】
投与様式は様々であり得る。投与経路としては、経口、直腸、経粘膜、腸管の、非経口、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼球内、吸入、ガス注入、局所、皮膚、経皮、または動脈内が挙げられる。
【0311】
特定の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、注射のような侵襲的経路により投与することができる。本発明のさらなる実施形態において、抗CTLA-4抗体もしくはその抗原結合断片、またはその医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、腫瘍内に、または吸入、エアロゾル送達により、投与される。非侵襲的経路(例えば、経口(例えば、ピル、カプセル、または錠剤で))による投与も、本発明の範囲内にある。
【0312】
本発明は、本発明の抗体もしくは抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)またはその医薬組成物のいずれかを含む、容器(例えば、プラスチックもしくはガラスのバイアル(例えば、キャップ付き)、またはクロマトグラフィーカラム、中空穿孔針、もしくはシリンジシリンダー)を提供する。また、本発明は、本発明の抗体もしくは抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)またはその医薬組成物のいずれかを含む、注射デバイスも提供する。注射デバイスは、非経口経路(例えば、筋肉内、皮下、または静脈内)を介して、ある物質を患者の体内に導入するデバイスである。例えば、注射デバイスは、シリンジ(例えば、オートインジェクターのような、医薬組成物が予め充填されているもの)とすることができ、シリンジは、例えば、注射する液体(例えば、抗体もしくは断片またはその医薬組成物)を保持するためのシリンダーもし
くは注射筒、液体を注射するために皮膚及び/または血管を貫通させるための針、ならびにシリンダー外から液体を押し出し穿孔針に通すためのプランジャーを含む。本発明の一実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片またはその医薬組成物を含む注射デバイスは、静脈内(IV)注射デバイスである。このようなデバイスは、抗体もしくは断片またはその医薬組成物をカニューレまたはトロカール/針内に含み、カニューレまたはトロカール/針は、チューブに取り付けることができ、チューブは、カニューレまたはトロカール/針を通じて患者の体内に導入される液体(例えば、食塩水;またはNaCl、乳酸ナトリウム、KCl、CaCl2を含み、任意選択でグルコースを含む乳酸リンゲル液)を保持するバッグまたはリザーバーに取り付けることができる。本発明の一実施形態において、抗体もしくは断片またはその医薬組成物は、ひとたびトロカールカニューレが対象の静脈に挿入され、挿入されたカニューレからトロカールが除去されたら、このデバイスに導入することができる。IVデバイスは、例えば、(例えば、手または腕の)末梢静脈、上大静脈、または下大静脈に挿入しても、心臓の右心房(例えば、中心IV)内に挿入しても、鎖骨下静脈、内頸静脈、または大腿静脈に挿入してもよく、さらに、例えば、上大静脈または右心房に達するまで心臓に向けて進めてもよい(例えば、中心静脈カテーテル)。本発明の一実施形態において、注射デバイスは、オートインジェクター、ジェットインジェクター、または外部注入ポンプである。ジェットインジェクターは、患者の体内に抗体もしくは断片またはその医薬組成物を導入するために、表皮を貫通する高圧で幅狭の液体ジェットを使用している。外部注入ポンプは、調節された量の抗体もしくは断片またはその医薬組成物を患者の体内に送達させる医療デバイスである。外部注入ポンプの動力供給は、電気的であっても機械的であってもよい。異なるポンプは異なる方法で作動し、例えば、シリンジポンプはシリンジのリザーバーに液体を保持し、可動ピストンが液体送達を調節しており、エラストマーポンプは伸縮性のバルーンリザーバーに液体を保持し、バルーンの弾性の壁からの圧力が液体の送達を推進している。蠕動ポンプでは、一式のローラーが柔軟な管を端から端へ圧迫していき液体を押し出す。マルチチャネルポンプでは、複数種の液体を複数のリザーバーから複数の速度で送達させることができる。
【0313】
本明細書で開示されている医薬組成物は、米国特許第6,620,135号;第6,096,002号;第5,399,163号;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,941,880号;第4,790,824号;または第4,596,556号で開示されているデバイスのような、針のない皮下注射デバイスで投与することもできる。このような医薬組成物を含む針のないデバイスも、本発明の一部である。本明細書で開示されている医薬組成物は、注入により投与することもできる。医薬組成物を投与するための、周知された植込み装置及びモジュールの例としては、米国特許第4,487,603号(調節された速度で薬剤を投与するための植込み型マイクロ注入ポンプを開示);米国特許第4,447,233号(正確な注入速度で薬物を送達するための薬物注入ポンプを開示);米国特許第4,447,224号(持続的な薬物送達のための可変流植え込み型注入装置を開示);米国特許第4,439,196号(マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬物送達システムを開示)が挙げられる。他にも多くのこのような植込み装置、送達システム、及びモジュールが当業者に周知されており、本発明の医薬組成物を含むものは本発明の範囲内にある。
【0314】
代替的に、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、全身的方法ではなく局所的方法で、例えば、抗体または断片を直接腫瘍内に注射することにより、投与してもよい。さらに、抗体または断片は、標的化された薬物送達システムにおいて、例えば、(例えば免疫病理学により特徴づけられた、例えば腫瘍を標的化する)組織特異的抗体でコーティングされたリポソームにおいて、投与してもよい。リポソームは、罹患組織を標的とし、罹患組織により選択的に取り入れられる。このような方法及びリポソームは、本発明の一部である。
【0315】
投与レジメンは、治療用抗体または抗原結合断片における血清または組織のターンオーバー速度、症状のレベル、治療用抗体の免疫原性、及び生物学的マトリックスにおける標的細胞のアクセス性を含めたいくつかの因子に依存する。好ましくは、投与レジメンは、標的疾患状態における改善をもたらし、それと同時に所望されない副作用を最小化するために十分な治療用抗体または断片を送達する。したがって、送達される生物学的薬剤の量は、部分的には、特定の治療用抗体や、処置対象の状態の重症度に依存する。治療用抗体または断片における適切な用量を選択するための指針が利用可能である(例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(ed.)(1993)Monoclonal Antibodies and
Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baert,et al.(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgrom et al.(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamon et al.(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitz et al.(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghosh et al.(2003)New
Engl.J.Med.348:24-32;Lipsky et al.(2000)New Engl.J.Med.343:1594-1602を参照)。
【0316】
適切な用量の決定は、臨床医により、例えば、当技術分野で処置に影響を及ぼすことが知られているまたはその可能性が疑われるパラメーターまたは因子を用いて、行われる。一般的には、用量は、最適な用量よりも多少少ない量から開始し、その後、任意の負の副作用に対し所望のまたは最適の効果が達成されるまで、少量ずつ増加させる。重要な診断尺度には、例えば、炎症の症状の尺度、または産生された炎症性サイトカインのレベルが含まれる。概して、使用する生物学的薬剤は、処置の対象となる動物と同じ種に由来し、それにより試薬に対する任意の免疫応答を最小化することが望ましい。例えば、ヒト対象の場合には、ヒト化抗体及び完全ヒト抗体が望ましいと考えられる。
【0317】
本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、持続注入により、または投与用量、例えば、1日1回、1週間に1~7回、1週間に1回、2週間に1回、1ヵ月に1回、2ヵ月に1回、4ヵ月に1回、半年に1回、1年に1回などの用量により、提供することができる。用量は、例えば、静脈内、皮下、局所、経口、経鼻、直腸、筋肉内、脳内、脊髄内に、または吸入により、提供することができる。1週間当たりの合計用量は、一般的には、少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には、少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgまたはそれ以上である(例えば、Yang,et al.(2003)New Engl.J.Med.349:427-434;Herold,et al.(2002)New Engl.J.Med.346:1692-1698;Liu,et al.(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451-456;Portielji,et al.(20003)Cancer Immunol.Immunother.52:151-144を参照)。また、用量は、対象の血清中の抗CTLA-4抗体において所定の標的濃度、例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mlまたはそれ以上の濃度を達成するように提供することもできる。他の実施形態において、本発明の抗CTLA-4抗体は、例えば、皮下または静脈内
に、1週間に1回、2週間に1回、「4週間ごと」、1ヵ月に1回、2ヵ月に1回、または3ヵ月に1回、10、20、50、80、100、200、500、1000、または2500mg/対象にて投与される。
【0318】
本明細書において、「有効量」という用語は、本発明の抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)が、単体で、または追加的治療剤との併用で細胞、組織、または対象に投与されたときに、疾患の1つ以上の症状(例えば、がんまたはがんの進行)における測定可能な改善をもたらすのに有効である、本発明の抗体またはその抗原結合断片の量を指す。さらに、有効用量とは、少なくとも部分的な症状の軽減(例えば、腫瘍の縮小または消失、腫瘍成長の欠如、生存時間の増加)をもたらすのに十分な抗体または断片の量を指す。個々の活性成分単体に対し適用する場合、有効用量は、その成分単体を指す。ある組合せに対し適用する場合、併用で、連続的に、または同時に投与されるいずれの場合においても、有効用量は、治療効果をもたらすこれらの活性成分を合わせた量を指す。有効量の治療薬は、少なくとも10%、通常は少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の診断基準またはパラメーターにおける改善をもたらす。また、有効量は、疾患の重症度の評価に主観的尺度が使用される場合、主観的尺度における改善ももたらすことができる。
【0319】
キット
さらに提供されるのは、以下に限定されないが、本明細書で論じられている抗CTLA-4抗体または抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)を含む1つ以上の構成成分を、以下に限定されないが、本明細書で論じられている医薬的に許容される担体及び/または治療剤を含む1つ以上の追加的構成成分に付随して含む、キットである。抗体もしくは断片及び/または治療剤は、純粋な組成物として製剤化しても、医薬的に許容される担体との併用で医薬組成物に製剤化してもよい。
【0320】
一実施形態において、キットは、本発明の抗CTLA-4抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、抗体27Aまたはそのヒト化バージョン)またはその医薬組成物を、1つの容器(例えば、無菌のガラスまたはプラスチックのバイアル)内に含み、及び/または治療剤をもう1つの容器(例えば、無菌のガラスまたはプラスチックのバイアル)内に含む。
【0321】
別の実施形態において、キットは、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、ヒト化27A)及び医薬的に許容される担体を含めた本発明の組合せを、任意選択で、一緒に製剤化された1つ以上の治療剤との併用で、任意選択で、1つの医薬組成物において、単一の共通の容器内に含む。
【0322】
キットが、対象への非経口投与用の医薬組成物を含む場合、キットは、そのような投与を実施するためのデバイスを含むことができる。例えば、キットは、1つ以上の皮下注射針、または上記で論じられている他の注射デバイスを含むことができる。
【0323】
キットは、キット内の医薬組成物や剤形に関する情報を含む添付文書を含むことができる。一般的には、このような情報は、患者及び医師が封入された医薬組成物や剤形を有効かつ安全に使用するための一助となる。例えば、本発明の組合せに関する以下の情報が、添付文書で提供され得る:薬物動態、薬物力学、臨床研究、有効性パラメーター、指示及び用法、禁忌、警告、注意、有害反応、過量投与、適切な薬用量及び投与、供給方法、適切な保管条件、文献、製造業者/販売業者の情報、ならびに特許情報。
【0324】
検出キット及び治療キット
利便性のため、本発明の抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体27A及びそのヒト化バージョン)は、キット、すなわち、所定量の試薬の組合せをパッケージ化したものを、診断アッセイまたは検出アッセイを実施するための使用説明書と共に提供してもよい。抗体または断片が酵素で標識される場合、キットは、酵素に必要な基質及び補因子(例えば、検出可能な発色団または蛍光団をもたらす基質前駆体)を含むことになる。加えて、安定化剤、緩衝液(例えば、ブロック緩衝液または溶解緩衝液)などのような他の添加物が含まれてもよい。種々の試薬の相対量は、試薬の溶液中濃度がアッセイの感受性を実質的に最適化するように、広範囲に変動させることができる。詳細には、試薬は、溶解すると適切な濃度の試薬溶液をもたらす賦形剤を含む、(通常は凍結乾燥された)乾燥粉末として提供することができる。
【0325】
また、診断用または検出用の試薬や、様々な検出アッセイ(例えば、ELISA(サンドイッチ型または競合フォーマット)のような免疫アッセイを含む)で使用するための、1つ以上のこのような試薬を含むキットも提供される。キットの構成成分は、固体担体に予め付着していてもよく、またはキットの使用時に固体担体の表面に適用されてもよい。本発明の一部の実施形態において、シグナル発生手段は、本発明の抗体または断片に予め付随してもたらされる場合もあれば、使用前に、1つ以上の構成成分(例えば、緩衝液、抗体-酵素結合体、酵素基質など)と合わせることを必要とする場合もある。また、キットは、追加的試薬、例えば、固体担体表面への非特異的結合を低減するためのブロック試薬、洗浄用試薬、酵素基質なども含むことができる。固体担体表面は、管、ビーズ、マイクロタイタープレート、ミクロスフェア、またはタンパク質、ペプチド、もしくはポリペプチドの固定に好適な他の材料の形態をとることができる。特定の態様において、化学発光性産物もしくは発色性産物の形成、または化学発光性基質または発色性基質の還元を触媒する酵素は、シグナル生成手段の一構成成分である。このような酵素は、当技術分野で周知されている。キットは、捕捉剤及び本明細書で説明されている検出試薬のいずれかを含むことができる。任意選択で、キットは、本発明の方法を行うための使用説明書も含むことができる。
【0326】
また、容器内にパッケージ化された抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト化抗体)またはその抗原結合断片を含み、さらに、容器に添付または容器と共にパッケージ化された標識であって、容器の内容物を記載し、本明細書で説明されている1つ以上の疾患状態を処置するための容器の内容物の用法に関する指示及び/または使用説明を提供する、標識を含むキットも提供される。
【0327】
一態様において、キットは、がんを処置するためのものであり、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト化抗体)またはその抗原結合断片と、さらなる治療剤またはワクチンとを含む。キットは、任意選択で、さらに非経口(例えば、静脈内)用のシリンジを含んでもよい。別の態様において、キットは、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト化抗体)またはその抗原結合断片と、容器に添付または容器と共にパッケージ化された、ワクチンまたはさらなる治療剤を伴った抗体または断片の用法を記載する標識とを含む。また別の態様において、キットは、ワクチンまたはさらなる治療剤と、容器に添付または容器と共にパッケージ化された、抗CTLA-4抗体または断片を伴ったワクチンまたはさらなる治療剤の用法を記載する標識とを含む。ある特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体及びワクチンまたはさらなる治療剤は、別々のバイアルに入れるか、同じ医薬組成物中で一緒に合わせる。
【0328】
上記の併用療法セクションで論じられているように、2つの治療剤の同時発生的投与は、これらの薬剤が治療効果を発揮する時間期間の重複が存在する限りにおいて、これらの薬剤の同時投与も同じ経路での投与も必要とされない。同時投与または逐次投与が企図されており、異なる日または週の投与も同様である。
【0329】
また、本明細書で開示されている治療キット及び検出キットは、本明細書で開示されている抗体、ペプチド、抗原結合断片、またはポリヌクレオチドの少なくとも1つと、検出試薬または治療剤としての組成物を使用するための使用説明書を含むように調製することもできる。このようなキットで使用する容器は、典型的には、1つ以上の検出組成物及び/または治療組成物(複数可)を入れ、好ましくは好適に分割することができる、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ、または他の好適な容器を含むことができる。第2の治療剤も提供される場合、キットは、この第2の検出組成物及び/または治療組成物を入れることができる、第2の別個の容器も含むことができる。代替的に、複数の化合物は、単一の医薬組成物に調製してもよく、また、単一の容器手段(例えば、バイアル、フラスコ、シリンジ、瓶、または他の好適な単一の容器)の中にパッケージ化してもよい。本明細書で開示されているキットは、典型的には、市販向けにバイアル(複数可)を密閉して収容するための手段(例えば、所望のバイアル(複数可)を保持する射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器)も含むことになる。放射標識、発色性、蛍光発生的、または他のタイプの検出可能な標識または検出手段がキット内に含まれる場合、標識剤は、同じ容器内で検出組成物または治療組成物そのものとして提供してもよく、代替的に、この第2の組成物を入れ好適に分割することができる、第2の別個の容器手段に入れてもよい。代替的に、検出試薬及び標識は、単一の容器手段内で調製してもよく、ほとんどの場合において、キットは、典型的には、市販向けに、及び/または好都合なパッケージ化及び運搬のために、バイアル(複数可)を密閉して収容するための手段も含むことになる。
【0330】
また、本明細書で説明されている検出またはモニタリングの方法を行うためのデバイスまたは装置も提供される。このような装置は、試料を投入することができるチャンバーまたは管と、試料の流れがデバイスを通るように向けるためのバルブまたはポンプを任意選択で含む液体操作システムと、任意選択で、血液から血漿または血清を分離するためのフィルターと、捕捉剤または検出試薬を添加するための混合チャンバーと、任意選択で、捕捉剤免疫複合体に結合した検出可能な標識の量を検出するための検出デバイスと、を含むことができる。試料の流れは、受動的(例えば、毛管力、静水力、またはひとたび試料が適用されたらデバイスのさらなる操作を要しない他の力)であってもよく、能動的(例えば、機械的ポンプ、電気浸透ポンプ、遠心力、または空気圧上昇を介し生成された力の適用によるもの)であってもよく、能動的力と受動的力との組合せによるものであってもよい。
【0331】
さらなる実施形態において、プロセッサー、コンピューター可読メモリー、及びコンピューター可読メモリーに格納し、プロセッサー上で実行させて、本明細書で説明されている方法のいずれかを実施するように適合させたルーチンも提供される。好適なコンピューティングシステム、環境、及び/または構成の例としては、パーソナルコンピューター、サーバーコンピューター、ハンドヘルドもしくはラップトップデバイス、マルチプロセッサーシステム、マイクロプロセッサーベースシステム、セットトップボックス、プログラム可能な一般向け電子装置、ネットワークPC、ミニコンピューター、メインフレームコンピューター、上記のシステムもしくはデバイスのいずれかを含む分散型コンピューティング環境、または当技術分野で公知の他のシステムが挙げられる。
【0332】
一般的な方法
分子生物学における標準的な方法は、Sambrook,Fritsch and Maniatis(1982 & 1989 2nd Edition,2001 3rd
Edition)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Sambrook and Ru
ssell(2001)Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CAで説明されている。標準的な方法は、Ausbel,et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NYにも掲載されており、細菌細胞におけるクローニング及びDNA変異誘発(Vol.1)、哺乳類細胞及び酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合糖質及びタンパク質の発現(Vol.3)、及びバイオインフォマティクス(Vol.4)について説明されている。
【0333】
免疫沈殿法、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、及び結晶化を含めたタンパク質精製方法が説明されている(Coligan,et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、タンパク質のグリコシル化が説明されている(例えば、Coligan,et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubel,et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照)。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の産生、精製、及び断片化が説明されている(Coligan,et al.(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Harlow and Lane,上記参照)。リガンド/受容体相互作用を特徴づけるための標準的な技法が利用可能である(例えば、Coligan,et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照)。
【0334】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及びヒト化抗体を調製することができる(例えば、Sheperd and Dean(eds.)(2000)Monoclonal Antibodies,Oxford Univ.Press,New York,NY;Kontermann and Dubel(eds.)(2001)Antibody Engineering,Springer-Verlag,New York;Harlow and Lane(1988)Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.139-243;Carpenter,et al.(2000)J.Immunol.165:6205;He,et al.(1998)J.Immunol.160:1029;Tang et al.(1999)J.Biol.Chem.274:27371-27378;Baca et al.(1997)J.Biol.Chem.272:10678-10684;Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883;Foote and Winter(1992)J.Mol.Biol.
224:487-499;米国特許第6,329,511号を参照)。
【0335】
ヒト化に替わる方法は、ファージ上に示されるヒト抗体ライブラリーまたはトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体ライブラリーの使用である(Vaughan et al.(1996)Nature Biotechnol.14:309-314;Barbas(1995)Nature Medicine 1:837-839;Mendez et al.(1997)Nature Genetics 15:146-156;Hoogenboom and Chames(2000)Immunol.Today 21:371-377;Barbas et al.(2001)Phage Display:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York;Kay et al.(1996)Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual,Academic Press,San Diego,CA;de Bruin et al.(1999)Nature Biotechnol.17:397-399)。
【0336】
単鎖抗体及びダイアボディが説明されている(例えば、Malecki et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:213-218;Conrath et al.(2001)J.Biol.Chem.276:7346-7350;Desmyter et al.(2001)J.Biol.Chem.276:26285-26290;Hudson and Kortt(1999)J.Immunol.Methods 231:177-189;及び米国特許第4,946,778号を参照)。二機能性抗体が提供される(例えば、Mack,et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7021-7025;Carter(2001)J.Immunol.Methods 248:7-15;Volkel,et al.(2001)Protein Engineering 14:815-823;Segal,et al.(2001)J.Immunol.Methods 248:1-6;Brennan,et al.(1985)Science 229:81-83;Raso,et al.(1997)J.Biol.Chem.272:27623;Morrison(1985)Science 229:1202-1207;Traunecker,et al.(1991)EMBO J.10:3655-3659;ならびに米国特許第5,932,448号、第5,532,210号、及び第6,129,914号を参照)。
【0337】
二重特異性抗体も提供される(例えば、Azzoni et al.(1998)J.Immunol.161:3493;Kita et al.(1999)J.Immunol.162:6901;Merchant et al.(2000)J.Biol.Chem.74:9115;Pandey et al.(2000)J.Biol.Chem.275:38633;Zheng et al.(2001)J.Biol Chem.276:12999;Propst et al.(2000)J.Immunol.165:2214;Long(1999)Ann.Rev.Immunol.17:875を参照)。
【0338】
抗原の精製は、抗体の生成に必須ではない。動物は、対象の抗原を有する細胞で免疫化することができる。次に、免疫化した動物から脾細胞を単離することができ、脾細胞は黒色腫細胞株と融合してハイブリドーマを産生させることができる(例えば、Meyaard et al.(1997)Immunity 7:283-290;Wright et al.(2000)Immunity 13:233-242;Preston et al.,supra;Kaithamana et al.(1999)J.Im
munol.163:5157-5164を参照)。
【0339】
抗体は、例えば、小薬物分子、酵素、リポソーム、ポリエチレングリコール(PEG)に結合させてもよい。抗体は、治療、診断、キット、またはその他の目的に有用であり、例えば、色素、放射性同位体、酵素、または金属(例えば、コロイド金)に結合した抗体を含む(例えば、Le Doussal et al.(1991)J.Immunol.146:169-175;Gibellini et al.(1998)J.Immunol.160:3891-3898;Hsing and Bishop(1999)J.Immunol.162:2804-2811;Everts et al.(2002)J.Immunol.168:883-889を参照)。
【0340】
蛍光活性化セルソーティング(FACS)を含めたフローサイトメトリーの方法が利用可能である(例えば、Owens,et al.(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(2001)Flow Cytometry,2nd ed.;Wiley-Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照)。核酸の修飾に好適な蛍光試薬(例えば、診断試薬として使用するための、核酸プライマー及びプローブ、ポリペプチド、ならびに抗体を含む)が利用可能である(Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma-Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MO)。
【0341】
免疫システムの組織診断の標準的な方法が説明されている(例えば、Muller-Harmelink(ed.)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New
York,NY;Hiatt,et al.(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louis,et al.(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw-Hill,New York,NYを参照)。
【0342】
例えば、抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能的ドメイン、グリコシル化部位、及び配列アラインメントを決定するための、ソフトウェアパッケージ及びデータベースが利用可能である(例えば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menne,et al.(2000)Bioinformatics 16:741-742;Menne,et al.(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741-742;Wren,et al.(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177-181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17-21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683-4690を参照)。
【実施例0343】
以下の実施例は、本発明を例示する役割を果たすものである。これらの実施例は、決して本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【0344】
実施例1:抗hCTLA-4抗体の免疫化及び選択
ヒトCTLA-4タンパク質に対する抗体を単離するため、hCTLA-4をコードする発現コンストラクトでマウスを免疫化した。このコンストラクトを生成するため、hCTLA-4の全長オープンリーディングフレームをコードするcDNA(NCBI参照配列:NM_005214.4、配列番号35)をpCI-neo(Promega,Madison,WI)ベクターにサブクローニングした。Helios Gene gun(BioRad,Hercules,CA)及びDNAコーティング金弾丸(BioRad)を製造業者の指示に従って用いた遺伝子銃免疫化により、マウスを免疫化した。簡潔に述べると、1μmの金粒子を、2:1:1の比率のpCI-neo-CTLA-4 cDNAならびにマウスFlt3L及びマウスGM-CSFの市販の発現ベクター(いずれもAldevron(Frago,ND)製)でコーティングした。合計1μgのプラスミドDNAを使用して、500μgの金粒子をコーティングした。具体的には、7~8週齢のメスBALB/Cマウスの耳に対し遺伝子銃で免疫化を行い、両耳において4投与サイクルを受けさせた。3回のDNA免疫化後のマウス血清において、フローサイトメトリーにより、およそ1:125-625の抗hCTLA-4力価が検出された。このスクリーニングに関しては、Lipofectamine2000(Invitrogen)を用いてpCI-neo-CTLA-4コンストラクトを一時的に形質移入したCHO-K1細胞を使用した。形質移入細胞を一晩培養し、続いて細胞解離溶液(Sigma)を用いて単細胞懸濁液を得た。7,5*105個の細胞を、希釈したマウス血清の各試料と共に、4℃にて30分間インキュベートした。次に、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)/2%のウシ胎児血清(FBS)で洗浄し、FITC標識ヤギ抗マウスIgG(BD Pharmingen)による染色を4℃にて30分間行った。再び細胞をPBS/2%のFBSで洗浄し、次にPBS/2%のFBSに再懸濁させ、FITC標識に基づいて抗体結合細胞を検出し、フローサイトメトリー(FACS Canto II;BD Biosciences)により評価した。hCTLA-4に対する反応性を示したマウスに対し、最後の4回目の免疫化を行い、4日後に屠殺した。赤血球枯渇脾臓及びリンパ節細胞集団を、先に説明されているように調製し(Steenbakkers et al.,1992,J.Immunol.Meth.152:69-77;Steenbakkers et al.,1994,Mol.Biol.Rep.19:125-134)、-140℃で凍結させた。
【0345】
B細胞選択及びCELISAのため、CHO-K1細胞(American Type
Culture Collection)に、変異体hCTLA-4 cDNA(Y166G及びY183G、配列番号37)をコードするpCI-neoベクターをトランスフェクトすることにより、CHO-K1.hCTLA-4安定性細胞株を生成した。限界希釈により、安定したクローンを得た。
【0346】
抗hCTLA-4抗体を産生するB細胞を選択するため、このhCTLA-4に結合する抗体を発現する優先結合B細胞の選択戦略を設計及び開発した。hCTLA-4免疫化マウスから脾細胞及びリンパ節を採取し、単離した細胞を、3,000RADにて照射されたCHO-K1.hCTLA-4細胞と共にインキュベートした。1時間後、培地を用いた複数回の洗浄ステップにより、結合していない細胞を除去した。続いて、結合リンパ球を伴うCHO-K1.hCTLA-4細胞を解離緩衝液で採取した。Steenbakkers et al.,1994,Mol.Biol.Rep.19:125-134で説明されているように、結合B細胞を培養した。簡潔に述べると、96ウェル平底組織培養プレートにおける最終体積200μlの培地中で、選択されたB細胞を、7.5%(v/v)のT細胞上清及び50,000個の照射された(2,500RAD)EL-4 B5フィーダー細胞と混合した。8日目に、以下で説明するCELISAにより、上清に対しhCTLA-4反応性をスクリーニングした。
【0347】
CHO-K1.hCTLA-4細胞を、組織培養プレート中の培地(DMEM-F12(Gibco)に10%のウシ胎児血清(Hyclone)及びPen/Strep(Gibco)を加えたもの)に播種し、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて、細胞がコンフルエントになるまで培養した。続いて培地を除去し、細胞を、B細胞培養物からの上清と共に、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。次に、細胞をPBS/0.05%のTween(PBST)で洗浄し、ヤギ抗マウスIgG-HRP(Southern Biotechnology)と共に、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。続いて、細胞をPBSTで3回洗浄し、抗hCTLA-4免疫反応性をTMB安定化色原体(Invitrogen)で可視化した。0.5MのH2SO4で反応を停止させ、450nm及び610nmにおける吸光度を読み取った。
【0348】
加えて、均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイフォーマットを用いて、上清のhCTLA-4/hCD80相互作用遮断を評価した。上清を、ビオチン化組換え型hCD80と共に、HTRF緩衝液(PBS/0.53Mのフッ化カリウム/0.1%のBSA)中で共インキュベートした。組換え型ヒトCTLA-4/Fcを、検出試薬のストレプトアビジンK(Donor)及び抗ヒトFc D2(Acceptor)と組み合わせて添加した。完全な混合物を室温(RT)にて3時間インキュベートし、続いて、Victor2リーダー(Perkin Elmer)を用いて、615nm及び665nmの波長における蛍光を測定した。hCD80に対するhCTLA-4の結合は、このセットアップ(100%に設定)において蛍光シグナルをもたらす。ブロック抗体を含有する上清は、蛍光を低減させた。
【0349】
hCTLA-4/hCD80相互作用をブロックすることが示されたhCTLA-4反応性上清からのB細胞クローンを、公開されている手順(Steenbakkers et al.,1992,J.Immunol.Meth.152:69-77;Steenbakkers et al.,1994,Mol.Biol.Rep.19:125-34)に従ったミニ電気融合により、不死化させた。簡潔に述べると、電気融合等モル浸透圧(isomolar)緩衝液中で、B細胞を106個のSp4/0-Ag14 黒色腫細胞と混合した。50μLの融合チャンバー内で、30秒、1MHz、15Vrmsの交番電界、次に10マイクロ秒、3kV/cmの方形高電界パルス、そして再び30秒、1MHz、15Vrmsの交番電界により、電気融合を実施した。チャンバーの内容物をハイブリドーマ選択培地に移し、限界希釈条件下で96ウェルプレートにプレーティングした。12日目の電気融合後、上で説明されているように、ハイブリドーマ上清に対しhCTLA-4結合活性をスクリーニングした。hCTLA-4に結合した上清中で抗体を分泌したハイブリドーマを、限界希釈によりサブクローニングして、ハイブリドーマの完全性及び安定性を保護した。安定性のハイブリドーマを無血清培地中で7~10日間培養した。上清を採取し、MabSelect SureプロテインAを製造業者(GE Healthcare)の指示に従って用いて、抗体を精製した。分光光度法を用いて、抗体濃度を定量化した。ハイブリドーマ培養物の上清を使用して、ハイブリドーマのアイソタイピングを行った。簡単に述べると、アイソタイピングは、一般的なマウスのアイソタイプ及び軽鎖の各々に対する固定されたヤギ抗マウス抗体バンドを有する試験紙に基づいた、マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Biorad)を用いて行った。回収された抗体は、全てマウスIgG1として同定された。以下の方法を用いて、マウスIgG1ハイブリドーマ材料の可変領域をシークエンシングすることにより、抗体の配列を解明した:ハイブリドーマ細胞の総RNAを抽出することで、cDNA合成を行った。TOPO(ThermoFisher)ベクター内での陽性断片のクローニングを可能にするcDNA末端高速増幅(Rapid Amplification of cDNA)(RACE)を実施した。TOPOクローンをシークエンシングし、VBASE2
(http://www.vbase2.org)を用いて配列にアノテーションを付けた。
【0350】
実験において、結合及びブロックを、10D1(US20020086014)またはCP-675,206(WO2007113648)(それぞれヒトIgG1カッパ及びIgG2カッパとして発現)と比較した。293fectin形質移入試薬(Invitrogen)を製造業者の指示に従って用いた、FreeStyle 293-Fヒト胚腎細胞(HEK293T/17、ATCC-CRL-11268)への形質移入により、VHコンストラクト及びVLコンストラクトをコードするプラスミドを一時的に発現させた。7日後に上清(30ml)を採取し、MabSelect SureプロテインAを製造業者(GE Healthcare)の指示に従って用いて、抗体を精製した。Zeba脱塩カラム(Thermo Scientific)を用いて、緩衝液を10mMのヒスチジン、100mMのNaCl pH5.5緩衝液に交換した。精製した抗体の濃度をOD280(Nanodrop ND-1000)に基づいて決定した。製造業者(Lonza)の指示に従うLAL試験により、エンドトキシンレベルを決定した。
【0351】
hCTLA-4抗体のキャラクタリゼーションを、hCTLA-4、Macaca fascicularis(カニクイザル)CTLA-4に対する結合及びリガンド結合(hCD80/hCD86)の遮断について行った。次に、ジャーカットベースのレポーターアッセイ(Promega)を製造業者の指示に従って用いて、in vitro機能性を決定した。簡単に述べると、hCD80/hCD86を発現するラージ細胞を、膜CTLA-4及びIL2-REルシフェラーゼレポーターを安定的に発現するジャーカットT細胞と共インキュベートした。この混合物に、マウス抗ヒトCD3抗体(BD Pharmingen)及びヤギ抗マウスIgG抗体(Thermo Fisher)を添加し、次に、ある希釈範囲のhCTLA-4マウス抗体(200μg/ml及びその希釈物で開始)を添加した。37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度における6時間のインキュベート後、Bio-Glo(商標)基質(Promega)の添加及びEnvisionリーダー(Perkin Elmer)の使用により、IL-2プロモーター活性を検出した。
図1に示すように、hCTLA4.27Aは10D1よりも強力にIL-2プロモーターを増強している。
【0352】
実施例2:ヒト化抗体設計及びCDRグラフト
CDRグラフト技術により、マウスhCTLA4.27A抗体をヒト化した(例えば、米国特許第5,225,539号及びWilliams,D.G.et al.,2010,Antibody Engineering,volume 1,Chapter 21を参照)。
【0353】
最初に、IgBLASTを用いてヒト生殖系列配列を同定した(Ye J.et al.,2013,Nucleic Acids Res.41:W34-40)。hCTLA4.27A VHヒト生殖系列配列に関しては、V遺伝子IGHV1-46*01が同定され(62.2%の同一性)、VLヒト生殖系列配列に関しては、IGKV1-NL1*01が同定された(68.4%の同一性)。これら2つの生殖系列配列を使用してマウスCDRに直接グラフトし、以下2つのcDNAコンストラクト:配列番号15(VH、配列番号16をコード)及び配列番号27(VL:配列番号28をコード)が得られた。次に、82,958の個別の配列を同定するIMGTデータベース(Lefranc,M.-P.et al.,1999,Nucleic Acid Res.27:209-212)で入手可能な、全てのヒトの配列を含むデータベースを構築した。TBLASTN(2.2.30+)を用いてこれらの配列をクエリーにかけて、hCTLA4.27A
VH及びVL配列のフレームワークに対し最も高い同一性を示す鋳型配列を同定した。70%以上の類似性スコアを示し、hCTLA4.27A VH CDR1、CDR2、
CDR3ならびにVL CDR1、CDR2、及びCDR3のCDR長とそれぞれ同様な、好ましくは同一なCDR長を示す、3つのVH配列及び3つのVL配列を同定した。
【0354】
重鎖に関しては、GenBank(Benson,D.A.et al.,2013,Nucleic Acids Res.41(D1):D36-42)アクセッション番号L39130、DI109259、及びDD431634によりコードされたフレームワークを、hCTLA4.27A VH CDRのストレートグラフト用鋳型として選択し、その結果、それぞれについて以下のcDNAコンストラクト:配列番号9、11、及び13が得られた。軽鎖に関しては、GenBankアクセッション番号AB063955、DI112350、及びAB363305によりコードされたフレームワークを、hCTLA4.27A VL CDRのストレートグラフト用鋳型として選択し、その結果、以下のcDNAコンストラクト:配列番号21、23、及び25が得られた。フレームワーク及びCDRの定義は、Kabat et al.により説明されている定義とした。
【0355】
ヒト化フレームワーク残基がFvの構造に及ぼす効果を調べるため、Discovery Studio 4.5における「Antibody Modeling Cascade」(デフォルトのパラメーター)を用いて、マウスhCTLA4.27A Fvの相同性モデルを作製した。相同性モデルは、PDB ID 3V7Aに基づいて構築した。
【0356】
CDRをin silicoでグラフトして、CDRのいずれかに近接し、ループコンフォメーションに影響を及ぼし得る残基(Vernier残基と呼ばれる)を調べた。ループコンフォメーションに影響を及ぼす可能性があり、CDR表面に対し<5Å以内にある残基を同定し、この位置にあるマウスアミノ酸で置換した。得られた鋳型における翻訳後修飾(PTM)モチーフの有無をDiscovery Studio 4.5を用いてチェックし、可能な場合(すなわち、CDRでもVernier残基でもない場合)はPTMを防止するように変更した。重鎖に関しては、hCTLA4.27A VHにおける予測された配列PTMモチーフの除去及び構造的考慮(すなわち、骨格の剛性)の結果、2つの追加的コンストラクト:配列番号17及び19の設計がもたらされた。軽鎖に関しては、PTM除去の結果、以下のコンストラクト:配列番号29がもたらされた。
【0357】
同定した鋳型の各々にCDRをグラフトし、これらを、pcDNA3.1(+)ベクター内でクローニングしHEK293 Free-style細胞内で一時的に形質移入した、ヒトIgG4(配列番号50)、カッパ(配列番号52)抗体として発現させた。セリン228がプロリンに変換された安定化Adair変異(Angal S.et al.,1993,Mol Immunol.30:105-108)を伴う、IgG4バージョンのヒト化抗体を産生した。
【0358】
hCTLA4.27IgG1も、pcDNA3.1(+)ベクター内でクローニングしHEK293 Free-style細胞内で一時的に形質移入した、ヒトIgG1(配列番号48)、カッパ抗体(配列番号52)として発現させた。ヒトIgG1重鎖及び軽鎖のコンストラクトをコードするプラスミドを1:1の比(合計1280μg)で混合し、293fectin形質移入試薬(Invitrogen)を製造業者の指示に従って用いた、FreeStyle 293-Fヒト胚腎細胞(HEK293T/17、ATCC-CRL-11268)への形質移入により、一時的に発現させた。7日後に上清(1250ml)を採取し、MabSelect SureプロテインAを製造業者(GE Healthcare)の指示に従って用いて、hCTLA4.27IgG1を精製した。Zeba脱塩カラム(Thermo Scientific)を用いて、緩衝液を10mMのヒスチジン、100mMのNaCl pH5.5緩衝液に交換した。精製したhCTLA4.27IgG1の濃度をOD280(Nanodrop ND-1000)に基
づいて決定した。
【0359】
加えて、マウスhCTLA4.27A VH及びVL(配列番号32及び34)を、pcDNA3.1(+)ベクター内でクローニングしHEK293 Free-style細胞内で一時的に形質移入した、キメラヒトIgG1(hCTLA4.27A.C1)及びIgG4(hCTLA4.27A.C4)、カッパ抗体として発現させた。
【0360】
実施例3:ヒト化コンストラクトの合成、発現、及び精製
重鎖及び軽鎖のコンストラクトをコードするプラスミドを1:1の比(合計30μg)で混合し、293fectin形質移入試薬(Invitrogen)を製造業者の指示に従って用いた、FreeStyle 293-Fヒト胚腎細胞(HEK293T/17、ATCC-CRL-11268)への形質移入により、一時的に発現させた。7日後に上清(30ml)を採取し、MabSelect SureプロテインAを製造業者(GE Healthcare)の指示に従って用いて、抗体を精製した。Zeba脱塩カラム(Thermo Scientific)を用いて、緩衝液を10mMのヒスチジン、100mMのNaCl pH5.5緩衝液に交換した。精製した抗体の濃度をOD280(Nanodrop ND-1000)に基づいて決定した。製造業者(Lonza)の指示に従うLAL試験により、エンドトキシンレベルを決定した。
【0361】
実施例4:ヒト化CTLA-4抗体の結合
hCTLA-4に対するヒト化抗体の結合をCELISAフォーマットで調べた。CHO-K1.hCTLA-4細胞を、組織培養プレート中の培地(DMEM-F12(Gibco)に10%のウシ胎児血清(Hyclone)及びPen/Strep(Gibco)を加えたもの)に播種し、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて、細胞がコンフルエントになるまで培養した。続いて培地を除去し、細胞を、精製されたhCTLA-4抗体(10μg/ml及びその希釈物)と共に、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。次に、細胞をPBS/0.05%のTween(PBST)で洗浄し、ヤギ抗ヒトIgG-HRP(Southern Biotechnology)またはヤギ抗マウスIgG-HRP(Southern Biotechnology)と共に、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。続いて、細胞をPBSTで3回洗浄し、抗hCTLA-4免疫反応性をTMB安定化色原体(Invitrogen)で可視化した。0.5MのH2SO4で反応を停止させ、450nm及び610nmにおける吸光度を読み取った。Graphpad Prism 6を用いて、EC50値(合計結合シグナルの50%が観察される濃度)を計算した。表5に、ヒト化hCTLA4.27抗体のEC50値を示す。
【0362】
【0363】
pCI-neoベクター(Promega)にサブクローニングした、カニクイザルCTLA-4(配列番号39)の全長オープンリーディングフレームをコードするcDNAを一時的に形質移入したCHO-K1細胞(American Type Culture Collection,Manassas,VA)を用いて、カニクイザルCTLA-4(配列番号40)に対するhCTLA-4抗体の結合を確認した。CHO-K1.c
ynoCTLA-4細胞を組織培養プレートに播種し、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて、細胞層がコンフルエントになるまでインキュベートした。続いて、培地を除去し、細胞を、精製されたhCTLA-4抗体(10μg/ml及びその希釈物)と共に、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。次に、細胞をPBSTで洗浄し、ヤギ抗ヒトIgG-HRP(Jackson Immuno Research)と共に、37℃にて1時間インキュベートした。続いて、細胞をPBSTで3回洗浄し、抗CTLA-4免疫反応性をTMB安定化色原体(Invitrogen)で可視化した。0.5MのH2SO4で反応を停止させ、450nm及び610nmにおける吸光度を読み取った。
【0364】
ヒトCD3+ T細胞上で発現したCTLA-4に対するhCTLA4.27ヒト化抗体の結合を、フローサイトメトリーにより確認した。以下のようにして、ヒトバフィーコートからヒトCD3+ T細胞を単離した。最初に、バフィーコートを室温にてPBSで希釈して、合計体積180mlにした。細胞懸濁液を混合した後、Sepmateチューブ(Stemcell Technologies)内のFicoll-Paque Plus勾配上で分割量を装填し、遠心処理を1200gで10分間、20℃にてブレーキなしで行った。次に、血漿を吸引により除去し、血漿/Ficoll界面からPBMCを回収した。PBMCをPBS中で3回洗浄した。続いて、磁気ビーズを用いてCD3+ T細胞単離を行った(CD3+ T細胞ビオチン-Abカクテル;Miltenyi Biotec)。次に、T細胞をαCD3/αCD28コーティングビーズ(Thermo
Fisher Scientific)で48時間刺激した。フローサイトメトリーを用いた芽球形成の検出により、最初のT細胞刺激を確認した。Cytofix/Cytoperm(BD)によるT細胞の固定及び透過処理の後、hCTLA4.27ヒト化抗体の構築を評価した。細胞をperm/wash緩衝液(BD)中で2回洗浄し、hCTLA4.27ヒト化抗体と共にインキュベートし、3回洗浄し、最後にFITC標識ヤギ抗ヒトhIgG検出抗体(Southern Biotech)と共にインキュベートした。この標識手順の後、細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁させ、FACS Canto II(BD)上でのフローサイトメトリーにより解析した。Flowjo Softwareを用いてデータを処理し解析した。
【0365】
Macaca fascicularis(カニクイザル)PBMC上で発現したCTLA-4に対するhCTLA4.27ヒト化抗体の結合を、フローサイトメトリーにより確認した。この目的に対し、カニクイザルの血液をPBSで1:1希釈し、13mlのLymphoprep 95%/PBS 5%を含有する50mlのチューブに添加した。細胞の遠心処理を30分間、450g及び20℃にてブレーキなしで行った。次に、血漿を吸引により除去し、血漿/Ficoll界面からPBMCを回収した。PBMCをPBS中で2回洗浄した。細胞を液体窒素中で凍結させ、実験当日に冷凍庫から取り出した。静止免疫細胞上でのCTLA-4の内在性発現量は低いことから、解凍したPBMCをαCD3/αCD28/αCD2コーティングビーズ(Milteny Biotec)で48時間刺激した。続いて、フローサイトメトリーを用いた芽球形成の検出により、PBMCの刺激を確認した。次に、細胞に対し、フローサイトメトリーにより、hCTLA4.27抗体の細胞内結合について解析した。
【0366】
実施例5:ヒト化hCTLA4.27抗体による、hCTLA-4に対するhCD80結合の遮断
hCD80遮断の評価を、CELISAフォーマットでヒト化hCTLA4.27抗体の完全パネルに対し行った。CHO-K1.hCTLA-4細胞を組織培養プレートに播種し、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて培地中でインキュベートした。ひとたび細胞がコンフルエントになったら培地を除去し、細胞を、ヒト化hCTL4.27抗体バリアント(10μg/ml及びその希釈物)と共に、37℃、5%のCO2、及び9
5%の湿度にて1時間インキュベートした。次に、細胞をPBS/0.05%のTween-20(PBST)で洗浄し、ビオチン化組換え型hCD80/Fcタンパク質と共に、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。次に細胞をPBSTで洗浄し、次にストレプトアビジン-HRP結合体を細胞に添加し、これを37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。続いて細胞をPBSTで3回洗浄し、hCD80/Fcタンパク質の結合をTMB安定化色原体(Invitrogen)で可視化した。0.5MのH2SO4で反応を停止させ、450nm及び610nmにおける吸光度を読み取った。このデータからhCD80の遮断についてのIC50値を計算した。このIC50値を表6に示す。IC50値は、阻害の半数が観察される濃度に相当する。
【0367】
【0368】
実施例6:10D1(イピリムマブ)及びCP-675,206(トレメリムマブ)と比較してのhCTLA4.27の親和性、hCTLA-4に対する結合、及びhCD80/hCD86相互作用のブロック能力
Octet RED96上でバイオライトインターフェロメトリー(bio-light interferometry)を用いてhCTLA4.27の結合動態及び平衡結合定数をプロファイリングし、当技術分野で公知のいくつかの抗体と比較した。最初に、標準的なアミン化学を用いて抗hCTLA-4 mAbをアミン反応性第2世代バイオセンサー(Fortebio)に結合させた。次に、バイオセンサーに対するhCTLA-4の結合及び解離を様々なhCTLA-4濃度で観察した。アミン反応性バイオセンサー
は、0.1MのMES pH=5.5を含むウェルに10分間浸漬することにより、予め湿らせた。次に、0.1MのNHS/0.4MのEDC混合物を用いてバイオセンサーを5分間活性化した。0.1MのMES中2.5または12ug/mLの抗体の溶液に7.5分間バイオセンサーを浸漬することにより、抗体を結合させた。1Mのエタノールアミンの溶液を用いてバイオセンサー表面を5分間クエンチした。バイオセンサーをOctet動態緩衝液(ForteBio)中で5分間平衡化した。様々なrhCTLA-4/Fc濃度(2.5-40nM)を含有するウェルにバイオセンサーを入れ、15分間インターフェロメトリーをモニタリングすることにより、rhCTLA-4/Fc(R&D Systems)の会合を観察した。バイオセンサーを動態緩衝液に移し、インターフェロメトリーシグナルを45分間モニタリングした後に、解離を測定した。このアッセイは、30℃のプレート温度で実行した。全試験濃度を含む1:1結合の全体的適合モデルを用いて、観察したオン速度及びオフ速度(kon及びkdis)を適合させ、平衡結合定数KDを計算した。表7に示すように、hCTLA4.27は、対照抗体と同様の結合親和性を有する。
【0369】
【0370】
次に、hCTLA-4に対するhCTLA4.27抗体の結合と、hCTLA4.27抗体のhCD80/hCD86相互作用ブロック能力とを、CELISAフォーマットにおいて10D1及びCP-675,206と比較した。簡単に述べると、CHO-K1.hCTLA-4細胞において、hCTLA-4結合についてのCELISAを実施した。結合抗体の検出を、マウスhCTLA4.27Aについてはヤギ抗マウスIgG-HRP(Southern Biotech)を用いて、hCTLA4.27AキメラhIgG1及びhIgG4ならびに対照抗体についてはヤギ抗ヒトIgG-HRP(Southern Biotech)を用いてそれぞれ行った。hCD80及びhCD86の遮断の評価に関しては、CHO-K1.hCTLA-4細胞を組織培養プレートに播種し、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて培地中でインキュベートした。ひとたび細胞がコンフルエントになったら培地を除去し、細胞を、hCTL4.27抗体及び対照抗体(10μg/ml及びその希釈物)と共に、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。次に、細胞をPBS/0.05%のTween-20(PBST)で洗浄し、ビオチン化組換え型hCD80/Fcタンパク質またはhCD86/Fcタンパク質と共に、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。次に細胞をPBSTで洗浄し、次にストレプトアビジン-HRP結合体を細胞に添加し、これを37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。続いて細胞をPBSTで3回洗浄し、hCD80/Fcタンパク質またはhCD86 /Fcタンパク質の結合をTMB安定化色原体(Invitrogen)で可視化した。0.5MのH2SO4で反応を停止させ、450nm及び610nmにおける吸光度を読み取った。IC50値は、阻害の半数が観察される濃度に相当する。
【0371】
図2に示すように、hCTLA4.27IgG1及びhCTLA4.27IgG4のh
CD80ブロックプロファイルは、イピリムマブ及びトレメリムマブのhCD80プロファイルの間にある。したがって、IC50値は同等であるが、有効性プラトーは異なる。
【0372】
【0373】
実施例7:ヒトPBMC SEBアッセイにおけるヒト化hCTLA4.27抗体の機能性
一次抗体細胞におけるヒト化hCTLA4.27の機能性を確認するため、ヒトドナー血液のバフィーコートからPBMCを単離した。最初に、バフィーコートを室温にてPBSで希釈し混合して、合計体積180mlにした。Sepmateチューブ(Stemcell Technologies)内のFicoll-Paque Plus勾配上で分割量を装填し、遠心処理を1200gで10分間、20℃にてブレーキなしで行った。次に、血漿を吸引により除去し、血漿/Ficoll界面からPBMCを回収した。アッセイで使用する前に、PBMCをPBS中で3回洗浄した。PBMCをウェル当たり2*105細胞にて播種した。続いて、10%のウシ胎児血清を追加したRPMI 1650培地(Gibco)中にヒト化hCTLA4.27及び対照抗体を希釈し、10の平方根の希釈ステップによる100ug/mlで開始する濃度範囲で添加した。10%のウシ胎児血清を追加したRPMI 1640培地中に希釈したStaphylococcusエンテロトキシンB(Sigma)を、10μg/mlの濃度で添加した。プレートを37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にて7時間インキュベートし、次に上清を単離した。
【0374】
上清中で、免疫活性化の尺度となるIL-2分泌を検出した。遠心分離により、任意の細胞材料から上清を除去し、4℃における最小限期間16時間のインキュベートによりPBS中の抗hIL-2抗体(BD Pharmingen)でコーティングしておいたNunc maxisorp ELISAパネルに添加した。上清を添加する前にウェルを空にし、室温(RT)にて1時間、PBS/1%のBSAでブロックした。上清を抗hIL-2抗体コーティングプレート中で室温にて1時間インキュベートし、その後にプレートをPBST(PBS及び0.05%のTween 20)で3回洗浄した。続いて、0.5μg/mlの抗hIL2ビオチン(BD Pharmingen)をPBST/0.5%のBSAに添加し、室温にて1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、1:5000希釈のストレプトアビジン-HRP(BD Pharmingen)をPBST/0.5%のBSAに添加した。PBSTで6回洗浄した後、TMB安定化色原体(Invitrogen)の添加によりIL-2を検出した。0.5MのH
2SO
4で反
応を停止させ、450nm及び610nmにおける吸光度を読み取った。このアッセイでは、組換え型ヒトIL-2(Sigma)を、上清中のIL-2タンパク質レベルを定量化するための参照物質として使用した。
図3は、hCTLA4.27抗体が免疫活性化を増強することを示している。
【0375】
実施例8:エフェクター機能アッセイにおけるhCTLA4.27
キメラhCTLA4.27A抗体:hCTLA4.27A.C1及びhCTLA4.27A.C4における抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導する能力について調べた。このADCCアッセイに関しては、ヒトNK細胞をエフェクター細胞として使用した。NK細胞は、ヒト血液から単離した。Rosette SEP NK濃縮カクテル(Stemcell Technologies)を用いてバフィーコートのNK細胞を濃縮した。続いて、バフィーコートをPBS/2%のFBSと1:1混合し、Ficol Paque plus(GE Healthcare)で層状化させた。遠心分離後に中間相を収集し、細胞をPBS/2%のFBSで洗浄した。フローサイトメトリーによる単離NK細胞のキャラクタリゼーションにより、CD16及びCD56の発現が確認された。
【0376】
CHO-K1.hCTLA-4を標的細胞として使用し、NK細胞と共に、10:1のエフェクター:標的比で平底細胞培養プレートに播種した。hCTLA4.27抗体または対照抗体(10D1またはアイソタイプが一致した対照抗体(hIgG1、hIgG4))を添加した(100μg/ml及びその希釈物)。プレートを37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度にて一晩インキュベートした。一晩インキュベートした後、細胞をPBST(PBS及び0.01%のTween 20)で洗浄し、10%のウシ胎児血清(Hyclone)及び1%のPen/Strep(Gibco)を加えたRPMI(Gibco)中で、37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度にて30分間インキュベートした。続いてCelltiter 96 Aqueous One溶液(Promega)を添加し、次に37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度にて3時間インキュベートした。iEMSリーダー(Labsystems)を用いたOD492-690の解析により、細胞生存能を評価した。
図4Aに示すように、hCTLA4.27A.C1は2名の異なるドナーにおいてNK媒介性細胞溶解を誘導したが、その一方でhIgG4としてフォーマットされたものは細胞傷害性を誘導することができなかった。
【0377】
補体依存性細胞傷害を評価するため、CHO-K1.hCTLA-4標的細胞のコンフルエントな単層に対し、ある濃度範囲のhCTLA4.27抗体を添加した。15分のインキュベート期間後、50%のヒト補体血清(Sigma)を細胞に添加した。3,5時間のインキュベート後、細胞をPBST(PBS及び0.01%のTween 20)で洗浄し、追加のRPMI(Gibco)と共にインキュベートし、37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度にて30分間インキュベートした。続いてCelltiter 96
Aqueous One溶液(Promega)を添加し、次に37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度にて3時間インキュベートした。iEMSリーダー(Labsystems)におけるOD492-690の解析により、細胞生存能を評価した。
図4Bに示すように、hCTLA4.27A.C1はCDCアッセイにおいて補体媒介性細胞溶解を誘導しているが、その一方でhIgG4としてフォーマットされたものは補体媒介性細胞傷害性を誘導していない。
【0378】
実施例9:hCTLA4.27及び対照抗体のクロス競合
10D1(イピリムマブ)及びCP-675,206(トレメリムマブ)と比較してのhCTLA4.27の結合部位の違いを特徴づけるため、先に説明されているようにバイオライトインターフェロメトリーを用いて抗体間の競合をプロファイリングした。アミン反応性バイオセンサーは、0.1MのMES pH=5.5を含むウェルに10分間浸漬
することにより、予め湿らせた。次に、0.1MのNHS/0.4MのEDC混合物を用いてバイオセンサーを5分間活性化した。ヒトIgG1またはヒトIgG4としてフォーマットされたhCTLA4.27を、0.1MのMES中12μg/mlのmAbの溶液に7.5分間バイオセンサーを浸漬することにより結合させた。1Mのエタノールアミンの溶液を用いてバイオセンサー表面を5分間クエンチした。バイオセンサーをOctet動態緩衝液(ForteBio)中で5分間平衡化した。固定濃度のrhCTLA-4/Fc(12μg/ml)を含有するウェルにバイオセンサーを入れ、15分間インターフェロメトリーをモニタリングすることにより、rhCTLA-4/Fcの会合を観察した。次に、さらなる2分間、バイオセンサーに結合させた同じ抗hCTLA-4 mAbを結合させて、全ての利用可能なrhCTLA-4/Fc結合部位の結合を確実にした。競合か非競合かの判定は、バイオセンサーを5分間、固定濃度(6μg/ml)の別のまたは同じ抗hCTLA-4 mAbを含有するウェルに入れるか、または動態緩衝液のみを含有する参照ウェルに入れることにより行った。表9に示すように、この直接競合アッセイでは、rhCTLA-4に対するhCTLA4.27の結合は、rhCTLA-4/Fcに対する対照抗体の結合をブロックしていない。
【0379】
【0380】
実施例10:ヒト/マウスCTLA-4交換変異体への結合
2つのhCTLA-4変異体を用いて、10D1及びCP-675,206と比較してのhCTLA4.27間の結合領域の違いを確認した。hCTLA-4を、半分がヒトで半分がマウスであるように設計した。CTLA-4の折り畳み、Ig様V型(免疫グロブリン様)ドメインに基づいて、タンパク質を2つのサブドメイン(1つは接続ループを含めてベータストランド1、2、5、及び6を含有し、1つは接続ループを含めてベータストランド3、4、7、8を含有する)に分けることができる。ヒト-マウスバリアント(配列番号42、Hum-Mou-CTLA-4)は、ストランド1、2、5、及び6にヒト残基を含有し、ストランド3、4、7、及び8にマウス残基(配列番号46)を含有する。マウス-ヒトバリアント(配列番号44、Mou-Hum-CTLA-4)は、ストランド1、2、5、及び6にマウス残基を含有し、ストランド3、4、7、及び8にヒト残基を含有する。
【0381】
これらのコンストラクト(それぞれ配列番号41及び43)をコードするcDNAを合成し、pCI-Neoベクター(GeneArt)にサブクローニングした。この交換変異体に対するhCTLA4.27AキメラhIgG4(hCTLA4.27A.C4)、10D1、及びCP-675,205の結合を、CELISAを用いて試験した。この目的に対し、CHO-K1細胞への一時的な形質移入を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、マウスCTLA-4(mCTLA-4)(配列番号45)、Hum-Mou-CTLA-4、及びMou-Hum-CTLA4をそれぞれ発現するpCI-Neoベクターで行った。形質移入した細胞を、37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度にて、培地(5%の新生仔ウシ血清(Biowest)及びPen/Strep(Gibco)を含むDMEM-F12(Gibco))中で、コンフルエントになるまで培養した。続いて、細胞をトリ
プシン処理し、組織培養プレートに播種し、37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度にて培地中でコンフルエントになるまで培養した。次に、培地を除去し、細胞を、hCTLA-4抗体と共に、37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。次に、細胞をPBS/0.05%のTween(PBST)で洗浄し、1:2,000ヤギ抗ヒトIgG-HRP(Jackson ImmunoResearch)と共に、37℃、5%のCO
2、及び95%の湿度にて1時間インキュベートした。その後、細胞をPBSTで3回洗浄し、抗CTLA-4免疫反応性をTMB安定化色原体(Invitrogen)で可視化した。0.5MのH
2SO
4で反応を停止させ、450nm及び610nmにおける吸光度を読み取った。hCTLA4.27A.C4はヒト-マウス交換変異体に対する結合を示したが、その一方で、10D1及びCP-675,206はマウス-ヒト交換変異体に結合することができなかった(
図5)。
【0382】
実施例11:hCTLA-4とhCTLA4.27Aとの間の相互作用界面のマッピング
重水素化した化学架橋を行い、次に酵素消化を行い、質量分析法を用いて検出することを伴う手順により、hCTLA-4に対するhCTLA4.27Aの結合エピトープを解明した。最初に、抗体hCTLA4.27A及び抗原rhCTLA-4/Fc6His(R&D systems;配列番号59)をインキュベートして結合及び完全性を促進し、HM4相互作用モジュール(CovalX)を搭載したUltraflex III MALDI ToF質量分析計(Bruker)により、凝集レベルを検証した。この対照実験向けに、抗体または抗原の10μLの試料の希釈系列(1から128倍希釈、1mg/mLで開始)を調製した。各試料のうち、9μLは、K200 MALDI MS解析キットを製造業者(CovalX)の指示に従って用いて架橋に供し、180分間インキュベートした。一方、1μLは質量分析法解析(High-Mass MALDI)に直接使用した。質量分析法解析により、抗体及び抗原が予測された分子量を有することが示され、それぞれ152.25kDa(架橋剤を伴って160.94kDa)及び88.25kDa(架橋剤を伴って95.19kDa)であった。抗原-抗体複合体のキャラクタリゼーション向けに、2倍過剰の抗原(抗原:抗体の比は4μM:2μM)を用いて混合物を作製した。抗原-抗体複合体混合物のうち、9μLは、K200 MALDI MS解析キットを製造業者の指示に従って用いて架橋に供し、一方1μLは、質量分析法解析に直接使用した。検出された質量(抗体(149.916kDa)及び抗原(88.211))は、先に検出された分子量に対応している。抗原-抗体複合体は、架橋後、1:1(239.113kDa)及び1:2(326.415kDa)の化学量論(hCTLA4.27A:rhCTLA-4/Fc)を有する2つの非共有結合の複合体として検出された。非共有結合的に結合した抗体及び抗原、非共有結合の凝集体、または非特異性の多量体は検出されなかった。
【0383】
次に、rhCTLA-4/Fcのペプチドマスフィンガープリンティングを実施した。試料を、製造業者の指示に従って、ASP-N、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、及びサーモリシン(Roche Diagnostic)のタンパク質分解に供し、次にLTQ Orbitrap XL質量分析計(Thermo Scientific)に適合したUltimate 3000(Dionex)システムを用いたnLC-LTQ Orbitrap MS/MSによる解析を行った。このタンパク質分解アレイの結果から、同定されたペプチドにより網羅される配列の92.52%がもたらされた。
【0384】
rhCTLA-4/Fc抗原上における抗体hCTLA4.27Aのエピトープを高分解能で決定するため、抗体/抗原複合体(抗原:抗体の比4μM:2μM)を、重水素化した架橋剤d0/d12(K200 MALDIキット)と共に180分間インキュベートし、酵素ASP-N、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、及びサーモリシンによる多酵素切断に供した。架橋ペプチドを濃縮した後、高分解能質量分析法(nLC-
Orbitrap MS)により試料を解析し、XQuest[Y.J.Lee,Mol.BioSyst.,2008,4,816-823]及びStavrox[Gotze
M et al.J Am Soc Mass Spectrom.2012 Jan;23(1):76-87]を用いて生成データを解析した。これらの種々のタンパク質分解アプローチから得られた架橋ペプチドを
図6に示す。hCTLA4.27Aの結合エピトープは、SFVCEYASPGKAT(配列番号53)として同定された。これは、抗CTLA-4抗体10D1のエピトープ(Ramagopal et al.PNAS
2017;114(21):E4223-E4232)やCP-675,206のエピトープ(Lee et al.Nat Commun.2016;7:13354)とは明確に異なる。
【0385】
当業者は、本発明が、目的の実行や、言及された目標及び利点、そしてその中に本来備わるものの取得に十分適応していることを容易に理解する。本明細書で提供される実施例は、好ましい実施形態を代表するものであり、例示であり、本発明の範囲を限定するものとして意図されていない。
【0386】
本発明が、その適用において、以下の説明で示されているまたは図面で例示されている構成の詳細にも構成成分の配置にも限定されないことを理解されたい。本発明は、記載されているもの以外の実施形態も可能であり、また様々なやり方で実施及び実行が可能である。また、本明細書及び要約で用いられる表現や用語は、説明を目的としているものであり、限定的なものとしてみなされるべきではないことも理解されたい。
【0387】
そのため、当業者であれば、本開示が基づいている概念が、本発明のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、及びシステムの設計の基礎として、容易に利用され得ることを理解する。したがって、このような等価的構成が本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限りにおいて、請求項が当該構成を含むものとしてみなされることは重要である。
【0388】
本発明は、当業者が作製及び使用するのに十分に詳細な説明及び例示がなされてきたが、様々な代替物、修正、及び改善が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく明らかであるはずである。本明細書で提供される実施例は、好ましい実施形態を代表するものであり、例示であり、本発明の範囲を限定するものとして意図されていない。当業者であれば、これにおける修正及び他の用法を想到する。このような修正は、本発明の趣旨の範囲内に含まれ、請求項の範囲により定義される。
【0389】
本明細書で開示されている本発明に対し、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、様々な置き換え及び修正がなされ得ることが、当業者には容易に明らかとなる。
【0390】
本明細書で言及されている全ての特許及び刊行物は、本発明が関係する技術分野における当業者のレベルを示すものである。
【0391】
本明細書で例示的に説明されている本発明は、本明細書で具体的に開示されていない任意の要素(1つまたは複数)、限定(1つまたは複数)の不在下で、好適に実施することができる。したがって、本発明は好ましい実施形態及び任意選択の特徴により具体的に開示されているものの、本明細書で開示されている概要の修正及びバリエーションは当業者に委ねられ得るものであり、このような修正及びバリエーションは、付属の請求項により定義される本発明の範囲内にあると考えられる。
【0392】
その他の実施形態は、以下の請求項内に示される。