(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089825
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】構造補強体を伴う生体適合性構成要素
(51)【国際特許分類】
G01N 30/32 20060101AFI20220609BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G01N30/32 C
F04B53/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045185
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2019554974の分割
【原出願日】2018-04-06
(31)【優先権主張番号】62/543,151
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/483,277
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511203086
【氏名又は名称】アイデックス ヘルス アンド サイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド メデイロス
(72)【発明者】
【氏名】スコット エリス
(72)【発明者】
【氏名】エリック ビーマー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ポリー
(57)【要約】
【課題】液体クロマトグラフィおよび他の分析器具システムに有用なポンプのための構造補強および生体適合性ポンプヘッドを提供すること
【解決手段】ポンプのための構造補強および生体適合性ポンプヘッドは、複数のポートおよび流体路をその中に有する補強構造を含む。補強体内の流体路は、生体適合性材料でコーティングまたは裏打ちされ、液体クロマトグラフィおよび他の分析器具システムに有用な生体適合性ポンプヘッドを形成してもよい。生体適合性材料は、補強構造の流体路の中に射出成形されてもよく、コアピンが除去された後、機械加工され、ポンプヘッドの生体適合性流体路の所望の表面仕上げおよび/またはサイズを取得してもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析器具システムのための生体適合性構成要素であって、
ステンレス鋼構成要素基部であって、前記ステンレス鋼構成要素基部は、それを通る少なくとも2つの流体路と、その中の少なくとも1つの付加的経路とを備える、ステンレス鋼構成要素基部と、
生体適合性コーティングと
を備え、前記生体適合性コーティングは、前記構成要素基部の前記少なくとも2つの流体路の内部表面の少なくとも一部を裏打ちし、
前記内部表面を裏打ちする前記生体適合性コーティングは、前記内部表面のための表面仕上げを提供する、生体適合性構成要素。
【請求項2】
前記生体適合性コーティングは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む生体適合性材料から形成されている、請求項1に記載の生体適合性構成要素。
【請求項3】
前記構成要素は、ポンプヘッドを備える、請求項2に記載の生体適合性構成要素。
【請求項4】
前記構成要素は、逆止弁を備える、請求項2に記載の生体適合性構成要素。
【請求項5】
前記生体適合性構成要素は、生体適合性ポンプヘッドである、請求項3に記載の生体適合性構成要素。
【請求項6】
前記生体適合性構成要素は、生体適合性逆止弁である、請求項4に記載の生体適合性構成要素。
【請求項7】
前記内部表面の前記表面仕上げは、約0.05~0.8μmの平均表面粗度(R
a
)である、請求項2に記載の生体適合性構成要素。
【請求項8】
前記内部表面を裏打ちする前記生体適合性コーティングは、0.2~2.0ミリメートルの厚さである、請求項1に記載の生体適合性構成要素。
【請求項9】
前記生体適合性構成要素は、-40~140℃および最大少なくとも10,000psi(68,947.6kPa)で動作可能である、請求項1に記載の生体適合性構成要素。
【請求項10】
分析器具システムのための生体適合性構成要素を形成する方法であって、前記方法は、
補強構成要素基部を提供することであって、前記補強構成要素基部は、その中の少なくとも2つのポートを有し、各々は、各ポートから前記基部内の中心通路への流体連通を提供する流体路を有する、ことと、
前記流体路の少なくとも1つおよび中心通路を通して生体適合性材料を注入し、これにより、前記構成要素基部の前記経路および中心通路の内部表面を裏打ちする生体適合性コーティングを作成することと
を含む、方法。
【請求項11】
前記生体適合性材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生体適合性材料を注入するステップは、PEEKを射出成形することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記生体適合性構成要素は、ポンプヘッドを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記生体適合性構成要素は、弁を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記補強構成要素基部は、金属を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記金属は、ステンレス鋼を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生体適合性コーティングを機械加工することにより、所望の表面仕上げを有する裏打ち表面を提供することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記裏打ち表面は、0.05~0.8μmの平均表面粗度(R
a
)の表面仕上げを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記内部表面を裏打ちする前記生体適合性コーティングは、0.2~2.0ミリメートルの厚さである、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記生体適合性材料を注入する前に、1つ以上のコアピンを前記中心通路および経路のうちの1つ以上の少なくとも一部の中に挿入することと、
前記生体適合性材料を注入するステップの後、前記1つ以上のコアピンを除去することと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記経路のうちの少なくとも1つおよび中心通路を通して前記生体適合性材料を注入した後に前記生体適合性材料を機械加工することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記生体適合性材料を機械加工することは、穿設、フライス加工、旋削、またはレーザ機械加工を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生体適合性材料を冷却するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記冷却するステップは、冷蔵、または、冷たい空気または液体への暴露をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年4月7日に出願された米国仮特許出願第62/483,277号の優先権の利益を主張するものであり、また、2017年8月9日に出願された米国仮特許出願第62/543,151号の優先権の利益も主張するものであり、これらの各々は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(連邦政府資金による研究開発の記載)
該当せず
【0003】
(共同研究契約の当事者の名前)
該当せず
【0004】
(コンパクトディスクによる提出材料の参照による援用)
該当せず
【0005】
(発明の分野)
本発明は、概して、液体クロマトグラフィおよび他の分析システムにおいて使用するための改良された生体適合性構成要素およびそれを作製する方法に関し、より具体的には、様々な継手またはアセンブリにおいて有用な構造補強体および1つ以上の生体適合性流体通路を伴う、ポンプヘッド、ポンプ、逆止弁、または同等物に関する。
【背景技術】
【0006】
液体クロマトグラフィ(LC)、イオンクロマトグラフィ(IC)、およびガスクロマトグラフィ(GC)は、所与のサンプル内の組成要素を分離するための分析システムにおいて使用される周知の技法である。従来のLCシステムでは、液体溶媒(「移動相」と称される)は、リザーバから導入され、LCシステムを通して送出される。移動相は、圧力下、ポンプから流出する。移動相は、次いで、管類を介して、サンプル注入弁に進行する。その名が示唆するように、サンプル注入弁は、オペレータが、サンプルをLCシステムの中に注入することを可能にし、そこで、サンプルは、移動相とともに搬送されるであろう。LCおよび関連技術、および関連付けられた管類、ポート、継手、および他の構成要素は、米国特許出願第13/206,873号(第US2012/0024411号として公開)、第13/292,667号(第US2012/0223520号として公開)、および第13/686,260号(「microfluidic interconnect」と題される)に議論されており、それぞれ、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0007】
従来のLCシステムでは、サンプルおよび移動相は、カラムに入る前に、1つ以上のフィルタと、多くの場合、ガードカラムとを通して通過する。典型的カラムは、通常、「填材」材料でパッキングされた管類の部片から成る。「填材」は、カラムの内側に「パッキングされた」粒子状材料から成る。通常、多くの場合、化学機能性で化学的に結合される、シリカまたはポリマー系粒子から成る。サンプルが、カラム(移動相とともに)を通して搬送されると、サンプル中の種々の成分が、異なるレートでカラム内の填材を通して移動する(すなわち、溶質の差分移動が存在する)。言い換えると、サンプル中の種々の成分は、異なるレートでカラムを通して移動する。異なる移動レートのため、成分は、カラムを通して移動するにつれて、徐々に分離する。差分移動は、移動相の組成物、定常相の組成物(すなわち、カラムが「パッキングされる」材料)、および分離が生じる温度等の要因によって影響される。したがって、そのような要因は、サンプルの種々の成分の分離に影響を及ぼすであろう。
【0008】
いったんサンプル(その成分は、現時点では、分離されている)がカラムから流出すると、移動相とともに、MEMS技術を使用して構築され得る、検出器を越えて流動する。検出器は、具体的分子または化合物の存在を検出する。2つの一般的タイプの検出器が、LC用途では、典型的には、使用される。1つのタイプは、移動相およびサンプルのいくつかの全体的物理的特性(その屈折率等)の変化を測定する。他のタイプは、サンプルのみのいくつかの特性を測定する(紫外線放射の吸収等)。本質的に、LCシステムにおける典型的検出器は、サンプルの成分の体積単位あたりの質量(1ミリリットルあたりのグラム等)または時間単位あたりの質量(1秒あたりのグラム等)の観点から、出力を測定および提供することができる。そのような出力信号から、「クロマトグラム」が、提供されることができる。クロマトグラムは、次いで、オペレータによって、サンプル中に存在する化学成分を決定するために使用されることができる。加えて、LCシステムは、前述の従来の検出器に加え、またはその代替としてのいずれかにおいて、サンプルの同定および定量化のための質量分析検出を利用してもよい。イオンクロマトグラフィは、溶液中のイオンの検出に依拠しており、したがって、流路内の殆どの金属材料は、背景イオンを生成するため、検出方式に干渉をもたらし得る。
【0009】
前述の構成要素に加え、LCシステムは、多くの場合、サンプルの汚染またはLCシステムへの損傷を防止するために、フィルタ、逆止弁、ガードカラム、または同等物を含むであろう。例えば、入口溶媒フィルタが、ポンプに到達する前に、溶媒(または、移動相)から粒子を濾過するために使用されてもよい。ガードカラムは、多くの場合、分析または調製カラム、すなわち、一次カラムの前に設置される。そのようなガードカラムの目的は、そうでなければ、分析または調製カラムに不可逆的に結合する場合がある、望ましくないサンプル成分を吸着することによって、一次カラムを「保護」することである。
【0010】
実際は、LCシステムにおける種々の構成要素は、オペレータによって、所与のタスクを行なうために接続されてもよい。例えば、オペレータは、適切な移動相およびカラムを選択し、次いで、動作前に、選択された移動相の供給源および選択されたカラムをLCシステムに接続するであろう。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)用途のために好適となるために、各接続は、LCシステムの典型的動作圧力に耐えることが可能でなければならない。接続が弱すぎる場合、漏出し得る。時として移動相として使用される溶媒のタイプは、多くの場合、毒性であるため、かつ多くの場合、使用のための多くのサンプルを取得および調製するには高価であるため、いかなるそのような接続不良も、深刻な懸念となる。高圧継手は、米国特許出願第13/038,110号(米国特許公開第US2012/0223522A1号として公開)にさらに論じられており、その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0011】
大部分の従来のHPLCシステムは、最大約5,000psi(34,473.8kPa)~6,000psi(41,368.5kPa)程度の比較的に高圧を発生し得る、ポンプを含む。多くの状況では、オペレータは、わずか数psi(kPa)~最大1,000psi(6,894.8kPa)程度のいずれかの「低」圧力でLCシステムを動作させることによって、正常結果を取得することができる。しかしながら、多くの場合、オペレータは、1,000psi(6,894.8kPa)を上回る比較的に「より高い」圧力でLCシステムを動作させることが望ましいことを見出すであろう。接続が十分な構造強度を有していない場合、より高い圧力において漏出し得る。
【0012】
別の比較的により新しい液体クロマトグラフィ形態は、システム圧力が、1,400バールまたは20,000psi(137,895.2kPa)まで上昇する、超高性能液体クロマトグラフィ(UHPLC)である。HPLCおよびUHPLCは両方とも、高圧における流体移送を利用する、分析器具類の実施例である。例えば、米国特許第8,173,078号(「Sample Injector System for Liquid Chromatography」と題される)では、20,000psi(137,895.2kPa)~120,000psi(827,370.9kPa)の範囲内の圧力を伴うと言われる、UHPLC用途と併用するための注入システムが、説明されている。米国特許第7,311,502号(「Method for Using a Hydraulic Amplifier Pump in Ultrahigh Pressure Liquid Chromatography」)では、25,000psi(172,368.9kPa)を超える圧力を伴うUHPLCシステムと併用するための油圧増幅器の使用が、説明されている。米国特許第7,144,502号(「Chromatography System with Gradient Storage and Method for Operating the Same」と題される)では、UHPLCを行なうためのシステムが、開示されており、UHPLCは、5,000psi(34,473.8kPa)を上回る圧力(最大60,000psi(413,685.4kPa))を伴うとして説明されている。本出願人は、本明細書に全体として記載される場合と同様に、米国特許第7,311,502号、第7,14,502号、および第8,173,078号を参照することによって本明細書に組み込む。
【0013】
漏れのない接続の必要性の所望を前提として、従来の接続は、ステンレス鋼管類およびステンレス鋼端部継手を用いて行なわれている。しかしながら、より最近では、LCシステムにおけるステンレス鋼構成要素の使用は、生物学的サンプルを伴う状況では、潜在的短所を有する可能性があり、イオンクロマトグラフィのために日常的に使用されることができないことが認識されている。例えば、サンプル中の成分は、それ自体が、ステンレス鋼管類の壁に付着し得る。これは、所与のサンプルの検出器の測定(したがって、クロマトグラム)が、サンプルの成分またはイオンの一部が、管類の中に留まり、検出器を通過しない場合、サンプルを正確に反映し得ないため、問題を呈する可能性がある。しかしながら、おそらく、より大きな懸念は、ステンレス鋼管類からのイオンが、管類から離れ、検出器を越えて流動し、したがって、潜在的に、誤った結果につながり得るという事実である。故に、イオンが、管類によって解放されず、したがって、サンプルを汚染しないように、そのような生物学的サンプルおよびそのようなサンプルと併用される移動相に対して化学的に不活性である材料の使用を通して、生体適合性接続の必要性がある。そのような接続および管類は、米国特許出願第13/206,873号(US2012/0024411号として公開)にさらに説明されており、その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0014】
選択器/注入器弁を使用して、流体流動を指向させる、多くの用途では、特に、液体クロマトグラフィでは、流体の体積は、小さい。これは、特に、液体クロマトグラフィが、調製方法とは対照的に、分析方法として使用されるときに該当する。そのような方法は、多くの場合、毛管カラムを使用し、概して、毛管クロマトグラフィと称される。毛管クロマトグラフィでは、多くの場合、選択器または注入器弁の内部体積を最小限にすることが望ましい。これに関する理由の1つは、大きい体積を有する弁が、比較的に大きい液体の体積を含有し、サンプルが弁の中に注入されるとき、サンプルが希釈され、分析方法の分解能および感度を低下させるであろうことである。
【0015】
微小流体分析プロセスもまた、小サンプルサイズを伴う。本明細書で使用されるように、微小流体技法を伴うと見なされるサンプル体積は、わずか数ピコリットル程度の小体積~最大数ミリリットル程度の体積範囲であり得る一方、より従来のLC技法、例えば、歴史的には、多くの場合、約1マイクロリットル~約100ミリリットルの体積のサンプルを伴っていた。したがって、本明細書に説明される微小流体技法は、従来のLC技法より1桁以上のサイズが小さい体積を伴う。微小流体技法は、典型的には、約0.5ml/分以下の流体流量を伴うものとして表され得る。
【0016】
記載のように、液体クロマトグラフィ(および他の分析器具)システムは、典型的には、いくつかの構成要素を含む。例えば、そのようなシステムは、検体を注入するためのポンプ、注入弁、または自動サンプラ、カラムを詰まらせ得る検体溶液中の粒子状物質を除去するためのカラム前フィルタ、不可逆的に吸着された化学物質を保持するためのパッキングされた層、LCカラム自体、およびカラムから流出するにつれて搬送流体を分析する検出器を含み得る。イオンクロマトグラフィはまた、サプレッサカラムを利用して、検出動作範囲を促進してもよい。これらの種々の構成要素は、典型的には、通常、内径0.003~0.040インチを有する金属またはポリマー管類(イオンクロマトグラフィ用)等の小型流体導管または管類によって接続されてもよい。
【0017】
本明細書で使用されるように、用語「LCシステム」は、液体クロマトグラフィシステム(限定ではないが、HPLCまたはUHPLCを含む)と併用されるシステム内の全装置および構成要素を含むものとして、その広義の意味において意図され、LCシステムに関連する構成要素の議論は、例示的であって、本発明は、LCシステム以外にも、ガスおよびイオンクロマトグラフィだけではなく、インビトロ診断(IVD)または環境分析、および他の分析器具(AI)およびシステムにも適用されてもよく、わずか数個の単純構成要素から作製される、またはコンピュータ制御される多数の高度な構成要素または同等物から作製されてもよいことが、当業者によって理解されるであろう。当業者はまた、LCシステムが、AIシステムの1つのタイプであることを理解するであろう。例えば、ガスクロマトグラフィは、多くの点において、液体クロマトグラフィに類似するが、明らかなこととして、分析されるべきガスサンプルを伴う。以下の議論は、液体クロマトグラフィに焦点を当てるが、当業者は、LCシステムに関して言及されるその多くがまた、ガスクロマトグラフィ、イオンクロマトグラフィ、および他のタイプのAIシステムおよび方法にも用途を有することを理解するであろう。他のそのようなAIシステムおよび方法は、例えば、ラボオンチップ、印刷、センサ、マイクロクロマトグラフィ、生化学的検出、質量分析、生物学的感知、薬物発見、薬物送達、分子分離、プロテオミクス、燃料電池、光学および流体光学、および研究ツールを含み得る。
【0018】
液体クロマトグラフィにおける圧力要件の増加は、高圧流体成分の使用を余儀なくしている。多くの用途に対して、通常のステンレス鋼管類は、典型的には、12,000psi(82,737.1kPa)程度を超えるもの等の高圧に耐えるために使用される。しかしながら、いくつかのタイプの分析に対して(例えば、生物学的試験および金属/イオン分析)、ステンレス鋼または他の金属は、金属が試験に干渉し得るため、流体路内で望ましくない。例えば、いくつかの方法は、鋼鉄と非互換性であり得る、腐食性の塩を使用し、ステンレス鋼は、分離の移動相において使用される化学物質とイオンレベルで反応し得る。加えて、いくつかの使用分野(例えば、ナノスケールまたはナノ体積分析)は、これらの用途によって要求される非常に低体積に対応するために極小の内径を要求する。そのような小内径は、典型的には、ステンレス鋼または他の高圧管類内では利用不可能である。生物化学およびイオン化学を標的とする器具のために利用される従来の材料は、PEEKおよびフッ素ポリマー(例えば、PTFE、ETFE、PFA、FEP、およびPCTFE)である。しかしながら、そのような材料は、材料の降伏強度によって、圧力能力が限定される。
【0019】
(2015年12月1日に発行され、「Connector with Structural Reinforcement and Biocompatible Fluid Passageway」と題された)米国特許第9,201,049B2号および(2016年10月4日に発行され、「Column Filter Retainer「Connector with Structural Reinforcement and Biocompatible Fluid Passageway」と題された)第9,457,504B2号では、ある生体適合性構成要素が、説明されており、これは、構造的に補強されていることと、分析器具(AI)システムと併用するために生体適合性であることとの両方である、通路を伴う、コネクタを含む。コネクタは、補強インサートと、補強インサートの一部を被覆する生体適合性成形体との両方を有する。補強インサートは、構造強度をコネクタに提供する一方、成形体は、生体適合性を提供し、12,000psi(82,737.1kPa)を上回る動作圧力および25,000psi(172,368.9kPa)を上回る動作圧力にさえ耐えることが可能であるように説明されている。米国特許第9,201,049B2号および第9,457,504B2号は両方とも、本明細書に完全に記載される場合と同様に、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0024411号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0223520号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本開示は、液体クロマトグラフィおよび他の分析器具システムに有用なポンプのための構造補強および生体適合性ポンプヘッドを説明および図示し、これは、複数のポートおよび流体路をその中に有する補強構造を含んでもよい。補強体内の流体路は、生体適合性材料でコーティングまたは裏打ちされ、液体クロマトグラフィおよび他の分析器具システムに有用な生体適合性ポンプヘッドを形成してもよい。生体適合性材料は、補強構造の流体路の中に射出成形されてもよく、コアピンが除去された後、機械加工され、ポンプヘッドの生体適合性流体路の所望の表面仕上げおよび/またはサイズを取得してもよい。生体適合性ポンプヘッドは、高圧で、種々のサンプルおよび溶媒とともに、動作することが可能である。
【0022】
一実施形態では、本開示は、ポンプのための生体適合性ポンプヘッドを備え、生体適合性ポンプヘッドは、ポンプヘッドのための構造補強体を備え、補強体は、金属を含み、それを通る少なくとも2つの流体路を有し、その中に少なくとも1つの付加的流体路を有し、ポンプヘッドはさらに、該補強体の少なくとも2つの流体路のそれぞれを裏打ちする生体適合性層を備える。補強体は、ステンレス鋼を含んでもよく、および/または生体適合性層は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含んでもよい。生体適合性ポンプヘッドは、少なくとも5,000psi(34,473.8kPa)、10,000psi(68,947.6kPa)、15,000psi(103,421.4kPa)、または20,000psi(137,895.2kPa)の圧力に耐えることが可能であってもよい。
【0023】
別の実施形態では、本開示は、ポンプを備える、分析器具システムを提供し、該ポンプはさらに、ポンプヘッド基部を備え、該ポンプヘッド基部は、金属を含み、それを通る少なくとも2つの流体路を有し、その中に少なくとも1つの付加的経路を有し、ポンプヘッド基部の少なくとも2つの流体路のそれぞれを裏打ちする生体適合性層を有し、該ポンプヘッド基部は、ステンレス鋼を含み、該生体適合性層は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む。そのような分析器具システムのポンプヘッドは、少なくとも5,000psi(34,473.8kPa)、10,000psi(68,947.6kPa)、15,000psi(103,421.4kPa)、または20,000psi(137,895.2kPa)の圧力に耐えることが可能であってもよい。分析器具システムは、液体クロマトグラフィシステム、イオンクロマトグラフィシステム、高圧液体クロマトグラフィシステム、超高圧液体クロマトグラフィシステム、またはガスクロマトグラフィシステムを備えてもよい。
【0024】
本開示はまた、分析器具システムのための生体適合性構成要素を形成するための方法を含み、そのような方法は、以下のステップ、すなわち、金属(例えば、ステンレス鋼)構成要素基部を提供するステップであって、該金属構成要素基部は、それを通る少なくとも2つの流体路を有し、その中に少なくとも1つの付加的経路を有する、ステップと、生体適合性材料を構成要素基部の少なくとも1つの付加的経路を通して注入し、生体適合性材料が、構成要素基部の少なくとも2つの流体路の内部表面を裏打ちする裏打ち表面を作成することを可能にするステップと、裏打ち表面を機械加工し、約0.8μm平均表面粗度(Ra)またはそれよりも良い所望の表面仕上げを提供するステップとのうちの1つ以上のものを含んでもよい。本方法の生体適合性材料は、PEEKまたは他の生体適合性材料を含んでもよい。加えて、構成要素は、ポンプヘッドまたは逆止弁または他のタイプの弁を含んでもよい。本方法はまた、1つ以上のコアピンを少なくとも2つの流体路および少なくとも1つの付加的経路の少なくとも一部の中に挿入するステップと、生体適合性材料を注入するステップ後、1つ以上のコアピンを除去するステップとを含んでもよい。生体適合性材料を注入するステップは、射出成形を含んでもよい。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ポンプのための生体適合性ポンプヘッドであって、
ポンプヘッドのための補強体であって、前記補強体は、金属を含み、それを通る少なくとも2つの流体路を有し、その中に少なくとも1つの付加的流体路を有する、補強体と、
前記補強体の少なくとも2つの流体路のそれぞれを裏打ちする生体適合性層と
を備える、ポンプのための生体適合性ポンプヘッド。
(項目2)
前記補強体は、ステンレス鋼を含む、項目1に記載のポンプのための生体適合性ポンプヘッド。
(項目3)
前記生体適合性層は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、項目2に記載のポンプのための生体適合性ポンプヘッド。
(項目4)
前記ポンプヘッドは、少なくとも5,000psi(34,473.8kPa)の圧力に耐えることが可能である、項目3に記載のポンプのための生体適合性ポンプヘッド。
(項目5)
前記ポンプヘッドは、少なくとも10,000psi(68,947.6kPa)の圧力に耐えることが可能である、項目3に記載のポンプのための生体適合性ポンプヘッド。(項目6)
前記ポンプヘッドは、少なくとも15,000psi(103,421.4kPa)の圧力に耐えることが可能である、項目3に記載のポンプのための生体適合性ポンプヘッド。
(項目7)
前記ポンプヘッドは、少なくとも20,000psi(137,895.2kPa)の圧力に耐えることが可能である、項目3に記載のポンプのための生体適合性ポンプヘッド。
(項目8)
ポンプを備える分析器具システムであって、前記ポンプはさらに、ポンプヘッド基部を備え、前記ポンプヘッド基部は、金属を含み、それを通る少なくとも2つの流体路を有し、その中に少なくとも1つの付加的経路を有し、ポンプヘッド基部の少なくとも2つの流体路のそれぞれを裏打ちする生体適合性層を有し、前記ポンプヘッド基部は、ステンレス鋼を含み、前記生体適合性層は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、分析器具システム。
(項目9)
前記ポンプヘッドは、少なくとも5,000psi(34,473.8kPa)の圧力に耐えることが可能である、項目8に記載の分析器具システム。
(項目10)
前記ポンプヘッドは、少なくとも10,000psi(68,947.6kPa)の圧力に耐えることが可能である、項目8に記載の分析器具システム。
(項目11)
前記ポンプヘッドは、少なくとも15,000psi(103,421.4kPa)のの圧力に耐えることが可能である、項目8に記載の分析器具システム。
(項目12)
前記ポンプヘッドは、少なくとも20,000psi(137,895.2kPa)の圧力に耐えることが可能である、項目8に記載の分析器具システム。
(項目13)
前記分析器具システムは、液体クロマトグラフィシステム、イオンクロマトグラフィシステム、高圧液体クロマトグラフィシステム、超高圧液体クロマトグラフィシステム、またはガスクロマトグラフィシステムのうちの少なくとも1つを備える、項目8に記載の分析器具システム。
(項目14)
分析器具システムのための生体適合性構成要素を形成する方法であって、
ステンレス鋼構成要素基部を提供するステップであって、前記ステンレス鋼構成要素基部は、それを通る少なくとも2つの流体路を有し、その中に少なくとも1つの付加的経路を有する、ステップと、
生体適合性材料を前記構成要素基部の少なくとも1つの付加的経路を通して注入し、前記生体適合性材料が、前記構成要素基部の少なくとも2つの流体路の内部表面を裏打ちする裏打ち表面を作成することを可能にするステップと、
前記裏打ち表面を機械加工し、約0.8μm平均表面粗度(Ra)またはより良好な表面仕上げを提供するステップと
を含む、方法。
(項目15)
前記生体適合性材料は、PEEKを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記構成要素は、ポンプヘッドを備える、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記構成要素は、逆止弁を備える、項目15に記載の方法。
(項目18)
項目15に記載のプロセスに従って作製される、生体適合性ポンプヘッド。
(項目19)
項目15に記載のプロセスに従って作製される、生体適合性逆止弁。
(項目20)
1つ以上のコアピンを前記少なくとも2つの流体路および少なくとも1つの付加的経路の少なくとも一部の中に挿入するステップと、前記生体適合性材料を注入するステップ後、前記1つ以上のコアピンを除去するステップとをさらに含む、項目15に記載の方法。
(項目21)
生体適合性材料を注入するステップは、射出成形を含む、項目14に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、液体クロマトグラフィシステムの概略図である。
【0026】
【
図2】
図2A-2Cは、それぞれ、本開示のある実施形態による、ポンプヘッドのための構造補強体の上部、正面、および底面図である。
【0027】
【
図3】
図3は、
図2Bの線A-Aに沿って得られた補強体の断面図である。
【0028】
【0029】
【
図5】
図5A-5Cは、それぞれ、本開示のある実施形態による、不活性または生体適合性ポンプヘッドの上部、正面、および底面図である。
【0030】
【
図6】
図6は、
図5Bの線A-Aに沿って得られたポンプヘッドの断面図である。
【0031】
【
図7】
図7は、
図6のポンプヘッドの一部の詳細な断面図である。
【0032】
【
図8】
図8A-8Cは、それぞれ、本開示による、代替実施形態におけるポンプヘッドのための構造補強体の上部、正面、および底面図である。
【0033】
【
図9】
図9は、
図8Bの線A-Aに沿って得られた本開示による
図8A-8Cの構造補強体の断面図である。
【0034】
【
図10】
図10は、本開示によるポンプヘッドの代替実施形態の一部の詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1では、従来の液体クロマトグラフィ(LC)システムのある要素のブロック図が、提供される。リザーバ101は、溶媒または移動相102を含有する。管類103は、リザーバ101内の移動相102をポンプ105に接続する。ポンプ105は、サンプル注入弁110に接続され、これは、ひいては、管類を介して、ガードカラム(図示せず)の第1の端部に接続される。ガードカラム(図示せず)の第2の端部は、ひいては、一次カラム115の第1の端部に接続される。一次カラム115の第2の端部は、次いで、管類を介して、検出器117に接続される。検出器117を通して通過後、移動相102および注入弁110を介して注入されたサンプルは、第2のリザーバ118の中に投入され、これは、化学廃棄物119を含有する。前述のように、サンプル注入弁110は、研究される材料のサンプルをLCシステムの中に注入するために使用される。移動相102は、LCシステムの種々の要素をともに接続するために使用される、管類103を通して流動する。
【0036】
サンプルが、LCシステム内のサンプル注入弁110を介して注入されると、サンプルは、移動相によって、管類を通してカラム115の中に搬送される。当技術分野において周知のように、カラム115は、サンプルの成分要素を分離するように作用する、充塞材料を含有する。カラム115から退出後、サンプル(カラム115を介して分離されるにつれて)は、次いで、種々の化学物質の有無を検出する、検出器117に搬送され、そこに進入する。検出器117によって得られた情報は、次いで、LCシステムのオペレータによって記憶および使用され、LCシステムの中に注入されるサンプルの成分要素を決定することができる。当業者は、
図1および前述の議論が、Schickの1995年12月5日に発行され、本明細書に完全に記載される場合と同様に、参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,472,598号に図示および説明されるように、従来かつ当技術分野において周知の非常に単純化されたLCシステムの概要を提供するにすぎないことを理解するであろう。当業者はまた、本明細書における議論が、LCシステム(HPLCおよびUHPLCを含む)に焦点を当てるが、質量分析、マイクロ流動クロマトグラフィ、ナノ流動クロマトグラフィ、ナノスケール液体クロマトグラフィ、キャピラリー電気泳動、または逆相勾配クロマトグラフィシステム等の他の分析器具(AI)システムも、本発明の種々の実施形態と併用され得ることを理解するであろう。
【0037】
図2-4は、1つの具体的例示的実施形態による、ポンプヘッドのための使用のための構造補強体1を図示する。
図2A-2Cは、それぞれ、補強体またはポンプヘッド基部1の上部、正面、および底面図を示す。図示されるポンプヘッド補強体1は、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、または1つ以上の金属の合金等の金属材料から作製されることができる。
図3および4に示されるように、ポンプヘッド基部1は、少なくとも2つの雌ねじポート5aおよび5bをその中に有する補強体形状を提供し、ポートのそれぞれの底部は、そこからポンプヘッド基部1内の中心通路10まで延在する、経路7a、7bを有する。示されるように、中心通路10は、ポンプ補強体1を通して延在し、一端において、より広い直径を伴う部分12において終端する。また、示されるように、中心通路10は、一連の異なる部分11a、11b、11c、11d、および12を含み、それぞれ、異なる直径を有する。
図3-4に示されるような異なる直径を伴う中心通路10の異なる部分は、ポンプのピストン(図示せず)を除去可能に受容するための座部の輪郭を画定し得、これは、生体適合性ポンプヘッドと協働するように適合される。
【0038】
一実施形態では、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の生体適合性材料が、ポンプヘッド基部1の中に射出成形され、ポンプヘッド基部1の流体路および中心通路10の生体適合性コーティングまたは裏打ちを提供してもよい。生体適合性コーティングは、したがって、分析器具システムにおいて使用されるとき、流体サンプルが、金属表面と接触せず、代わりに、生体適合性材料(例えば、本特定の実施例では、PEEK)とのみ接触するであろうように、補強体1の流体路を裏打ちし、生体適合性ポンプヘッド50(
図5A-5Cおよび6に示される)を提供する。
【0039】
PEEKに加え、またはその代わりに、1つ以上の他のまたは付加的な生体適合性材料が、生体適合性コーティングのために使用されてもよく、以下、すなわち、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、または前述のもののいずれかまたは全ての組み合わせのうちの任意の1つ以上を含むことに留意されたい。
【0040】
本開示による生体適合性ポンプヘッドを作製するための方法は、ポンプヘッド補強体1を提供するステップを含み、これは、ステンレス鋼等の金属を含んでもよく、補強体は、少なくとも2つのポート5a、5bをその中に有し、中心通路10を有し、経路7a、7bは、
図3および4に示されるように、流体連通をポート5a、5bの底部と中心通路10との間に提供する。コアピン(図示せず)が、少なくとも2つのポート5a、5bの少なくとも一部および/または中心通路10の少なくとも一部の中に挿入されてもよい。いったんコアピンまたはピンが所望通り設置されると、生体適合性材料が、ポンプヘッド補強体1の中心通路10の上部部分の開口部の中に注入されてもよい(射出成形等によって)。代替として、生体適合性材料は、ポート5a、5bのうちの任意の1つ以上のものを含む、1つ以上の付加的または異なる開口部を通して、補強体1に添加されてもよい。記載されるように、生体適合性材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含んでもよい。PEEKが、ポンプヘッド基部1の中に射出成形されると、PEEKは、コアピンの周囲を流動し、中心通路10と、ポート5a、5bの底部および中心通路10を接続する流体路7a、7bとの内壁をコーティングするであろう(
図6および7に図示されるコーティングされた状態とともに
図3に示される)。生体適合性材料は、冷却および硬化させられる。代替として、添加された生体適合性材料を伴う補強体1は、冷蔵、冷たい空気または液体への暴露、または同等物等によって冷却されてもよい。コアピンまたはピンは、次いで、除去されてもよい。いったんコアピンまたはピンが、除去されると、付加的機械加工(穿設等)が、行われ、ポート5a、5bの底部と中心通路10を接続する経路7a、7b内の生体適合性材料を通して、流体路を生成してもよい。加えて、生体適合性裏打ちの内部表面の一部または全部を機械加工することは、生体適合性裏打ち表面のための所望の表面仕上げを達成するために適切であり得る。
【0041】
生体適合性ポンプヘッド50は、ポンプヘッド基部1に起因して、分析化学において典型的に見出される、様々な腐食性化学物質に耐え、広範囲の温度(例えば、-40~140℃)で動作し、最大少なくとも5,000psi(34,473.8kPa)、10,000psi(68,947.6kPa)、15,000psi(103,421.4kPa)、および20,000psi(137,895.2kPa)を含む、非常に高圧まで動作することが可能である、ポンプの一部として動作することが可能であることに留意されたい。
【0042】
生体適合性材料が、ポンプヘッド基部1の中に射出成形または別様に添加された後、結果として生じるポンプヘッド50は、フライス加工、旋削、またはレーザ機械加工等によって、さらに機械加工されてもよい。生体適合性材料の裏打ちは、約0.2~2.0ミリメートルの厚さであって、生体適合性材料の裏打ちの表面仕上げは、約0.05~0.8μm平均表面粗度(Ra)であってもよい。
【0043】
図5-7は、本開示による、生体適合性ポンプヘッド50を図示する。
図5-7に示されるように、ポンプヘッド50内のポート55a、55bの底部をポンプヘッド50の中心通路60に接続する、流体路57a、57bはそれぞれ、ポート55a、55bの底部、流体路57a、57b、および中心通路60を通して流動する、任意の流体が、任意の金属と接触せず、生体適合性材料(本実施例では、PEEK)とのみ接触するであろうように、それぞれ、生体適合性材料(PEEK等)によって形成される、裏打ち58a、58bを有する。
【0044】
図6では、生体適合性材料54が、ここで、補強体の中心通路10(
図3および4参照)の一部を充填し、ポンプヘッド50を通して部分的に延在する、流体路60を残すことが分かる。
図6はまた、ポンプヘッド50の部分11a、11b、および11cの内部表面が、生体適合性材料で裏打ちまたはコーティングされていることを示す。
【0045】
図7では、ポート55a、55bの底部は、それぞれ、生体適合性コーティングまたは裏打ち56a、56bを含むことができることが分かる。コアピン(図示せず)は、適切なサイズおよび形状であるように選択され、所望の生体適合性流路と、また、ポート55a、55bの一部または全部のコーティング(または場合によっては、非コーティング)とを提供するように適切に設置されることができる。
【0046】
図8-10は、本開示による、代替実施形態を図示する。最初に、
図8A-8Cおよび9を参照すると、ポンプヘッド基部70または補強体が、示される。図示されるポンプヘッド補強体70は、ステンレス鋼または上記の他の金属および/または合金のいずれか等の金属材料から作製されることができる。
図8A-8Cおよび9に示されるように、ポンプヘッド基部70は、少なくとも2つの雌ねじポート75a、75bをその中に有する補強形状を提供し、ポートのそれぞれの底部は、そこからポンプヘッド基部70内の中心通路80まで延在する、経路(それぞれ、77aおよび77b)を有する。
図9に示されるように、中心通路80は、ポンプ補強体70を通して延在し、一端において、より広い直径を伴う部分82で終端する。また、
図9に示されるように、中心通路80は、一連の異なる部分81a、81bを含み、それぞれ、異なる直径を有する。
図8-9に示されるように、中心通路80の下側部分の異なる部分81a、81b、および/または82は、ポンプのピストン(図示せず)を除去可能に受容するための座部の輪郭を画定し得、これは、
図10に示される生体適合性ポンプヘッド90と協働するように適合されることに留意されたい。
【0047】
一実施形態では、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の生体適合性材料は、ポンプヘッド基部70の中に射出成形され、ポンプヘッド基部70の流体路77a、77bおよび中心通路80の生体適合性コーティングまたは裏打ちを提供してもよい。生体適合性コーティングは、分析器具システムにおいて使用されるとき、流体サンプルが、金属表面と接触せず、代わりに、生体適合性材料(例えば、本特定の実施例では、PEEK)とのみ接触するであろうように、流体路を裏打ちし、生体適合性ポンプヘッド90を提供する。
【0048】
本開示による、生体適合性ポンプヘッド90を作製するための方法は、ポンプヘッド補強体70を提供するステップを含み、これは、ステンレス鋼、または上記の金属のいずれかまたは組み合わせ等の金属を含んでもよく、補強体70は、少なくとも2つのポート75a、75bをその中に有し、中心通路80を有し、経路77a、77bは、流体連通をポート75a、75bの底部と中心通路80との間に提供する。コアピン(図示せず)が、次いで、少なくとも2つのポート75a、75bの少なくとも一部、経路77a、77b、および/または中心通路80の少なくとも一部の中に挿入されてもよい。いったんコアピンまたはピンが所望通り設置されると、生体適合性材料が、ポンプヘッド補強体70の中心通路80の上部部分の開口部の中に注入されてもよい。記載されるように、生体適合性材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)または上記の他の生体適合性材料のいずれかを含んでもよい。PEEKが、ポンプヘッド基部70の中に射出成形されると、PEEKは、コアピンの周囲を流動し、中心通路80と、ポート75a、75bの底部および中心通路80を接続する流体路77a、77bとの内壁をコーティングするであろう。コアピンまたはピンは、次いで、除去されてもよい。いったんピンまたは複数のピンが、除去されると、付加的機械加工(穿設等)が、行われ、ポート75a、75bの底部と中心通路80を接続する経路77a、77b内のPEEKを通して、流体路を生成してもよい。加えて、PEEK裏打ちの内部表面の一部または全部を機械加工することは、PEEK裏打ち表面のための所望の表面仕上げを達成するために適切であり得る。
【0049】
図10に示されるような生体適合性ポンプヘッド90は、ポンプヘッド基部70に起因して、分析化学において典型的に見出される、様々な腐食性化学物質に耐え、広範囲の温度(例えば、-40~140℃)で動作し、最大少なくとも5,000psi(34,473.8kPa)、10,000psi(68,947.6kPa)、15,000psi(103,421.4kPa)、および20,000psi(137,895.2kPa)を含む、非常に高圧まで動作することが可能である、ポンプの一部として動作することが可能である。
【0050】
生体適合性材料が、ポンプヘッド基部70の中に射出成形(または別様に添加)された後、結果として生じるポンプヘッド90は、フライス加工、旋削、またはレーザ機械加工等によってさらに機械加工されてもよい。生体適合性材料の裏打ちは、約0.2~2.0ミリメートルの厚さであって、生体適合性材料の裏打ちの表面仕上げは、約0.05~0.8μm平均表面粗度(Ra)であってもよい。
【0051】
図10は、本開示による、生体適合性ポンプヘッド90を図示する。
図10に示されるように、上記に説明される、ポンプヘッド90内のポート95a、95bの底部を補強体70の中心通路80に接続する流体路97a、97bは、ポート95a、95bの底部、流体路97a、97b、および中心通路92(通路92の一部は、可変直径を有する)を通して流動する、任意の流体が、任意の金属と接触せず、生体適合性材料(本実施例では、PEEK)とのみ接触するであろうように、PEEKによって形成される裏打ちを有する。
【0052】
図10では、生体適合性材料94が、ここで、補強体70の中心通路80の一部を充填し、ポンプヘッド90を通して部分的に延在する流体路92を残すことが分かる。
図10はまた、ポンプヘッド90の部分93の内部表面が、生体適合性材料で裏打ちまたはコーティングされていることを示す。
【0053】
ポンプヘッド基部および結果として生じるポンプヘッドのみが、付随の図に図示されるが、ポンプの他の構成要素も同様に、ポンプ内の流体通路の全てを通した流体路全体が、生体適合性であって、ポンプを通して移動する流体が、ポンプ構成要素のいずれかの金属表面と接触しないように、生体適合性材料でコーティングされてもよいことが、当業者によって理解されるであろう。さらに、前述の議論は、ポンプのためのポンプヘッドに焦点を当てるが、分析システムの他の構成要素も同様に、生体適合性特徴を備えてもよく、本明細書に説明される方法は、例えば、生体適合性逆止弁、および他のタイプの弁を作製するために使用されてもよい。
【0054】
本開示は、種々の実施形態を図示および説明したが、当業者は、図面および前述の議論から、種々の変更、修正、および変形例が、請求項に記載される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、行なわれてもよいことを理解するであろう。例えば、当業者は、本明細書における教示が、ポンプ、逆止弁、他の弁、および同等物に対する構成要素などのAIシステム内の様々な実装のために使用されることができることを理解するであろう。加えて、当業者は、本明細書における教示が、種々の固定相および移動相を含む、様々なプロセス条件を用いて、かつ種々の動作圧力において、実装されることができることを理解するであろう。本明細書に図示および説明されるように、ポンプヘッド補強体は、一体型であるが、当業者は、図面および前述の議論に説明される補強体が、別個かつ別々の構成要素から形成されることができることを理解するであろう。したがって、図面および前述で示され述べられた実施形態は、単に例証であって、本発明の範囲をここでの請求項に定義するように限定されない。本実施形態および特定の形態、材料、および同等物は、単に例証であって、本発明または本明細書の請求項の範囲に限定されない。