(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089831
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】タンニン酸組成物を調製するための改良された濃縮法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7024 20060101AFI20220609BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220609BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220609BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220609BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220609BHJP
A61K 36/49 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61K31/7024
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P25/00 101
A61K36/49
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022045760
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2020530581の分割
【原出願日】2017-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】518343246
【氏名又は名称】シニュークス インターナショナル(タイワン)コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ クオチョアン エミル
(72)【発明者】
【氏名】ワン チン-チョン
(72)【発明者】
【氏名】シェ ティエン-ラン
(72)【発明者】
【氏名】マオ イー-ウェン
(57)【要約】
【課題】DAAO活性を阻害し、CNS及び肥満に関連する疾患及び障害を軽減するのに使用するための、タンニン酸組成物及びタンニン酸組成物、例えば、本明細書中に開示された濃縮法によって製造されるものを製造するための濃縮法を提供することを目的とする。
【解決手段】
D-アミノ酸オキシダーゼの阻害に優れた効力、及び優れた純度と安全性プロファイルを有するタンニン酸組成物を調製するための改善された濃縮法。タンニン酸組成物(例えば、医薬組成物、栄養補助食品組成物又は医療食品組成物)は、CNS障害及び糖尿病、高血糖症、高脂血症又は高コレステロール血症を含む肥満症の治療に使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)タンニン酸又はその許容される塩の混合物、及び(ii)担体を含む組成物であって、組成物中のタンニン酸の98%以上が4~12ガロイル部分、組成物中の97%以上のタンニン酸が5~12ガロイル部分、組成物中のタンニン酸の90%以上が6~12個のガロイル部分、又は組成物中のタンニン酸の60%以上が8~12ガロイル部分を有する上記組成物。
【請求項2】
組成物において、タンニン酸の約4~20%が5ガロイル部分を有し、タンニン酸の約10~35%が6~7ガロイル部分を有し、及び/又はタンニン酸の約55~85%が8~12のガロイル部分を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
医薬組成物、栄養補助食品組成物、健康食品、又は医療食品である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、錠剤、カプセル、ソフトチュー、又はゲルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
対象におけるD-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)の阻害に使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
対象における中枢神経系(CNS)障害又は肥満に関連する障害の治療に使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
CNS障害が、統合失調症、精神病性障害、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、老人性認知症、軽度認知障害、良性忘却、閉鎖性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、脆弱X症候群、注意欠陥多動性障害、注意欠陥障害、強迫性障害、チック症、小児期学習障害、月経前症候群、うつ病、大うつ病性障害、無快感症、自殺念慮及び/又は行動、双極性障害、不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、慢性の軽度で予測不可能なストレス、摂食障害、中毒障害、人格障害、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、トゥレット症候群、夜間遺尿症、非てんかん性発作、眼瞼炎けいれん、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脳卒中、慢性疼痛、痛覚過敏及び異痛症を含む神経障害性疼痛、糖尿病性多発神経障害、及び慢性疼痛症候群からなる群から選択される、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
肥満に関連する障害が、摂食障害、神経性食欲不振、神経性過食症、脳卒中、冠状動脈性心臓病、心臓発作、うっ血性心不全、先天性心疾患、高血圧、非アルコール性脂肪性肝炎、インスリン抵抗性、高尿酸血症、甲状腺機能低下症、変形性関節症、胆石、不妊症、肥満性低換気症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性閉塞性肺疾患、及び喘息からなる群から選択される、請求項6記載の使用のための組成物。
【請求項9】
肥満に関連する障害が、糖尿病、高血糖症、高脂血症、及び高コレステロール血症からなる群から選択される肥満障害である、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
組成物が、対象への1日3回から2ヶ月ごとの1回の頻度での投与のために処方される、請求項6~9のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
組成物が、CNS障害又は肥満に関連する障害を治療するための1つ以上の追加の医薬品との併用用である、請求項6~10のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
組成物及び1つ以上の追加の薬剤が同時に又は連続して対象に投与される、請求項11記載の使用のための組成物。
【請求項13】
タンニン酸組成物を調製する方法であって、
(i)タンニン酸を含む組成物を提供すること;
(ii)組成物の複数のバッチを第1の溶媒とともに20~80℃でインキュベートして、順次第1のタンニン酸抽出物を生成すること;
(iii)第1のタンニン酸抽出物を木炭、金属炭酸塩、及び金属硫酸塩の1つ以上と20~80℃で接触させて、木炭及び/又は金属炭酸塩に吸収された物質、又は金属硫酸塩によって除去された物質を除去し、それにより第1のタンニン酸組成物を生成すること;
(iv)第1のタンニン酸組成物を第2の溶媒と混合して溶液を形成すること;
(v)溶液をジクロロメタン、ジクロロエタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、又はそれらの混合物と20~40℃で接触させて、タンニン酸を固体形態で沈殿させること;ならびに
(vi)タンニン酸を固体形態で回収し、それにより第2のタンニン酸組成物を生成すること
を含み、ここで、第2のタンニン酸組成物中の2%以下のタンニン酸は1~4のガロイル部分を有する上記方法。
【請求項14】
工程(iii)が、(a)第1のタンニン酸抽出物を金属炭酸塩と20~60℃で接触させて、混合物を形成すること、(b)混合物を酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はそれらの組み合わせを用いて20~50℃で抽出して、有機溶液を生成し、ならびに(c)有機溶液を木炭及び金属硫酸塩とともに20~60℃で同時に又は順次インキュベートすることによって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(ii)が、(a)組成物の第1のバッチを第1の溶媒とともにインキュベートすること、(b)組成物の第2のバッチを(a)で形成された混合物とともにインキュベートすること;ならびに(c)組成物の第3のバッチを(b)で形成された混合物とともにインキュベートして、第1のタンニン酸抽出物を生成することによって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
第1又は第2のタンニン酸組成物からデキストリン、ガム、及びレジンを除去する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
除去工程が、(a)第1のタンニン酸組成物又は第2のタンニン酸組成物を極性溶媒と混合して、こうして形成された有機層を回収することを含むプロセスによって行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
極性溶媒が、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、1,4-ジオキサン、又はテトラヒドロフランである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
除去工程のプロセスが、(b)有機層をアルキル溶媒、塩素化溶媒、又はそれらの混合物と10~70℃で接触させること、ならびにこうして形成された底部の油性層を回収することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
アルキル溶媒が、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
塩素化溶媒が、ジクロロメタン、又はジクロロエタンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
(a)第2のタンニン酸組成物をアルキル溶媒、塩素化溶媒、又はそれらの組み合わせと混合すること、及び(b)このように形成された混合物を撹拌して溶媒残留物を10~70℃で除去することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
アルキル溶媒が、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
塩素化溶媒が、ジクロロメタン、又はジクロロエタンである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
工程(ii)が20~60℃の温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
工程(iii)が、混合物を二酸化ケイ素と接触させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
工程(i)のタンニン酸を含有する組成物が、植物の没食子から得られる没食子粉末又は没食子チップである、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
植物が、Rhus chinensis、Rhus javanica、Rhus semialata、Rhus coriaria、Rhus potaninii、Rhus punjabensis var.sinica(Diels)Rehder & E.H.Wilson、Camellia sinensis、Berry、Bixa orellana、Vitis vinifera、Punica granatum、Quercus infectoria、Quercus cerris、Acacia mearnsii、Pseudotsuga menziesii、Caesalpinia spinosa、Fagus hayata Palib.ex Hayata、及びMachilus thunbergii Sieb.&Zuccからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
植物が、Rhus chinensis、Rhus javanica、Rhus semialata、Rhus coriaria、Rhus potaninii、及びRhus punjabensis var.sinica(Diels)Rehder & E.H.Wilsonからなる群から選択される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
没食子が1~8cmの範囲の直径を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
没食子が中国ベリー型没食子又は角型没食子である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
没食子が中国ベリー型没食子である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
中国角型没食子が1~8cmの範囲の直径を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
没食子が2~6cmの範囲の直径を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
没食子が3~5cmの範囲の直径を有する、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
工程(iii)における金属炭酸塩が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項37】
工程(iii)における金属硫酸塩が、硫酸カルシウム又は硫酸マグネシウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項38】
工程(ii)の第1の溶媒が、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ヘプタン、ヘキサン、水、又はそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項39】
工程(v)における第2の溶媒が、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロパノール、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項40】
組成物が、請求項13~39のいずれか一項に記載の方法によって生成される、タンニン酸含有組成物。
【請求項41】
タンニン酸組成物からデキストリン、ガム、及び/又はレジンを除去する方法であって、
(i)デキストリン、ガム、レジン、又はそれらの組み合わせを含むタンニン酸組成物を用意すること;
(ii)タンニン酸組成物を極性溶媒と混合して有機層を形成すること;
(iii)有機層をアルキル溶媒、塩素化溶媒、又はそれらの組み合わせと10~70℃で接触させること;ならびに
(iv)こうして形成された底部の油性層を回収すること
を含む上記方法。
【請求項42】
タンニン酸組成物から溶媒残留物を除去する方法であって、
(i)少なくとも1つの溶媒の残留物を含むタンニン酸組成物を用意すること;
(ii)タンニン酸組成物をアルキル溶媒、塩素化溶媒、又はそれらの組み合わせと混合して混合物を形成すること;ならびに
(iii)混合物を撹拌して、少なくとも1つの溶媒の残留物を10~70℃で除去すること
を含む上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンニン酸組成物を調製するための改良された濃縮法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンニンは、種々の植物に存在する天然化合物のグループであり、例えば、Rhus chinensis、Rhus javanica、Rhus semialata、Rhus coriaria、Rhus potaninii、Rhus punjabensis var. sinica (Diels) Rehder & E.H. Wilson、Camellia sinensis、Berry、Bixa orellana、Vitis vinifera、Punica granatum、Quercus infectoria、Quercus cerris、Acacia mearnsii、Pseudotsuga menziesii、Caesalpinia spinosa、Fagus hayata Palib. ex Hayata、又はMachilus thunbergii Sieb. & Zuccが挙げられる。タンニンには、加水分解性タンニン(タンニン酸としても知られる)、縮合タンニン、及び塩基単位として没食子酸、フラボン、及びフロログルシノールをそれぞれ含むフロロタンニンの3つの主要なクラスがある。タンニンは、産業用パーティクルボード接着剤の一種として、及び防食プライマー又はレジンの製造に広く使用されている。また、タンニンがヒトの健康に様々な影響を及ぼす可能性も示唆された。
【0003】
D-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)は、D-アミノ酸を対応するイミノ酸に酸化するペルオキシソーム酵素である。DAAOは、D-セリンを含む脳D-アミノ酸の代謝、及びグルタミン酸作動性神経伝達の調節に関与することが報告されている。このように、DAAOは、D-セリン及び/又はグルタミン酸作動性神経伝達に関連する中枢神経系(CNS)障害を治療する標的である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、少なくとも、増強された生物活性、安全性及び純度プロフィールを有するタンニン酸混合物を調製するための改良された増菌方法の開発に基づく。したがって、本明細書では、DAAO活性を阻害し、CNS及び肥満に関連する疾患及び障害を軽減するのに使用するための、タンニン酸組成物及びタンニン酸組成物(例えば、本明細書中に開示された濃縮法によって製造される)を製造するための濃縮法が提供される。
【0005】
したがって、本開示の1つの態様は、タンニン酸を調製するための方法を特徴とし、該方法は、(i)タンニン酸を含む組成物を提供する工程;(ii)組成物の複数のバッチを第1の溶媒と共に20~80℃で順次インキュベートして、第1のタンニン酸抽出物を生成する工程;(iii)第1のタンニン酸抽出物を、木炭、金属炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウム)、及び金属硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム又は硫酸マグネシウム)の1つ以上と20~80℃で接触させ、木炭及び/又は金属炭酸塩に吸収された物質、又は金属硫酸塩によって除去された物質を除去し、それによって第1のタンニン酸組成物を生成する工程;(iv)第1のタンニン酸組成物を第2の溶媒と混合して、溶液を形成する工程;(v)溶液をジクロロメタン、ジクロロエタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、又はそれらの混合物と20~40℃で接触させて、タンニン酸を固体形態で沈殿させる工程;及び(vi)タンニン酸を固体形態で回収し、それにより第2のタンニン酸組成物を生成することを含み、第2のタンニン酸組成物中の≦2%のタンニン酸は1~4個のガロイル部分を有する。場合によっては、工程(iii)は、混合物を二酸化ケイ素と接触させることをさらに含むことができる。
【0006】
適切な第1の溶媒は、限定されないが、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ヘプタン、ヘキサン、水、又はそれらの組み合わせを含む。適切な第2の溶媒は、限定されないが、アセトンアセトニトリル、酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロパノール、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0007】
工程(i)のタンニン酸を含有する組成物は、植物の没食子から得られる没食子粉末又は没食子チップであり得る。例示的な植物としては、限定されないが、Rhus chinensis、Rhus javanica、Rhus semialata、Rhus coriaria、Rhus potaninii、Rhus punjabensis var. sinica (Diels) Rehder & E.H. Wilson、Camellia sinensis、Berry、Bixa orellana、Vitis vinifera、Punica granatum、Quercus infectoria、Quercus cerris、Acacia mearnsii、Pseudotsuga menziesii、Caesalpinia spinosa、Fagus hayata Palib. ex Hayata、及びMachilus thunbergii Sieb. & Zuccを含む。場合によっては、この植物は、Rhus chinensis、Rhus javanica、Rhus semialata、Rhus coriaria、Rhus potaninii、and Rhus punjabensis var. sinica (Diels) Rehder & E.H. Wilsonである。
【0008】
いくつかの実施態様において、没食子は、1~8cmの直径を有することができる。いくつかの例では、没食子は、チャイニーズベリー状の没食子又は角状の没食子であってもよい。中国の角没食子が使用される場合、そのような没食子の直径は1~8cm、例えば2~6cm又は3~5cmの範囲であり得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、工程(ii)は、(a)組成物の第1のバッチを第1の溶媒とインキュベートすること、(b)組成物の第2のバッチを(a)で形成された混合物とインキュベートすること、及び(c)組成物の第3のバッチを(b)で形成された混合物とインキュベートして、第1のタンニン酸抽出物を生成することによって行うことができる。いくつかの例では、工程(ii)は、20~60℃の温度で実施することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、工程(iii)は、(a)第1のタンニン酸抽出物を金属炭酸塩と20~60℃で接触させて混合物を形成し、(b)混合物を酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン又はそれらの組合せで20~50℃で抽出し、有機溶液を生成し、及び(c)有機溶液を活性炭及び金属硫酸塩と20~60℃で同時に又は連続的にインキュベートすることによって実施することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、第1又は第2のタンニン酸組成物からデキストリン、ガム、及びレジンを除去する工程をさらに含むことができる。この除去工程は、(a)第1のタンニン酸組成物又は第2のタンニン酸組成物を極性溶媒と混合し、このようにして形成された有機層を回収する工程;場合により(b)有機層をアルキル溶媒、塩素化溶媒又はこれらの混合物と10~70℃で接触させ、このようにして形成された底部油層を回収する工程を含むプロセスによって行うことができる。この除去工程に使用するための例示的な極性溶媒は、限定されないが、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、1,4-ジオキサン、又はテトラヒドロフランを含む。この除去工程で使用するための例示的なアルキル溶媒は、限定されないが、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタンを含む。例示的な塩素化溶媒は、限定されないが、ジクロロメタン又はジクロロエタンを含む。
【0012】
あるいは又は加えて、本明細書に記載される方法は、(a)第2のタンニン酸組成物をアルキル溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン)、塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタン、又はジクロロエタン)又はそれらの組合せと混合する工程、(b)このようにして形成された混合物を撹拌して、溶媒残留物を10~70℃で除去する工程をさらに含み得る。
【0013】
別の態様では、本開示は、タンニン酸組成物からデキストリン、ゴム、及び/又はレジンを除去する方法を提供し、(i)デキストリン、ガム、レジン、又はそれらの組み合わせを含むタンニン酸組成物を提供する工程;(ii)タンニン酸組成物を極性溶媒と混合して有機層を形成する工程;(iii)有機層をアルキル溶媒、塩素化溶媒、又はそれらの組み合わせと10~70℃で接触させる工程;及び(iv)このようにして形成された底部油層を回収する工程を含む。
【0014】
さらに別の態様では、本開示は、タンニン酸組成物から溶媒残留物を除去するための方法を提供し、(i)少なくとも1つの溶媒の残基を含むタンニン酸組成物を提供する工程、(ii)タンニン酸組成物をアルキル溶媒、塩素化溶媒又はそれらの組合せと混合して混合物を形成する工程、(iii)混合物を撹拌して、少なくとも1つの溶媒の残基を少なくとも10~70℃除去する工程を含む。
【0015】
さらに、本開示は、(i)タンニン酸又はその許容される塩の混合物、及び(ii)組成物中のタンニン酸の≧98%が4~12ガロイル部分を有し、組成物中のタンニン酸の≧97%が5~12ガロイル部分を有し、組成物中のタンニン酸の≧90%が6~12ガロイル部分を有し、又は組成物中のタンニン酸の≧60%が8~12ガロイル部分を有する担体を含む組成物を特徴とする。いくつかの実施形態において、組成物は、5ガロイル部分を有するタンニン酸の約4~20%、6~7ガロイル部分を有するタンニン酸の約10~35%、及び/又は8~12ガロイル部分を有するタンニン酸の約55~85%を含む。また、本開示の範囲内には、本明細書に記載された濃縮法のいずれかによって調製されたタンニン酸含有組成物も含まれる。
【0016】
本明細書に記載される組成物は、医薬組成物、栄養補助組成物、健康食品、又は医療食品であり得る。錠剤、カプセル、軟かん、又はゲルとして処方することができる。
【0017】
本明細書に記載される組成物のいずれも、対象におけるD-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)の阻害に用いることができ、又は対象における中枢神経系(CNS)障害若しくは肥満に関連する障害の治療に用いることができる。典型的なCNS障害には、限定されないが、統合失調症、精神病性障害、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、老人性認知症、軽度の認知障害、良性の物忘れ、閉鎖性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、脆弱X症候群、注意欠陥多動性障害、注意欠陥障害、強迫性障害、チック障害、小児期学習障害、月経前症候群、うつ病、大うつ病性障害、無快感症、自殺念慮及び/又は行動、双極性障害、不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、慢性の軽度で予測不可能なストレス、摂食障害、中毒障害、人格障害、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、トゥレット症候群、夜尿症、非てんかん発作、眼瞼けいれん、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脳卒中、慢性痛、痛覚過敏や異痛症を含む神経障害性疼痛、糖尿病性多発神経障害、慢性疼痛症候群が含まれる。いくつかの例では、障害は肥満、例えば摂食障害、神経性食欲不振、神経性過食症、脳卒中、冠状動脈性心臓病、心臓発作、うっ血性心不全、先天性心疾患、高血圧、非アルコール性脂肪性肝炎、インスリン抵抗性、高尿酸血症、甲状腺機能低下症、変形性関節症、胆石、不妊症、肥満低換気症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性閉塞性肺疾患、喘息に関連する。他の例には、糖尿病、高血糖、高脂血症、及び高コレステロール血症が含まれる。
【0018】
本明細書に記載される組成物は、本明細書に記載される治療を必要とする対象に、1日3回から2ヶ月毎に1回の頻度で投与するために製剤化することができる。場合によっては、組成物は、CNS障害、又は肥満に関連する障害を治療するために、1種以上の追加の医薬と共に使用される。組成物及び1以上のさらなる薬学的剤は、同時に又は連続的に対象に投与される。
【0019】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明、ならびに添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【0020】
以下の図面は、本明細書の一部を構成し、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれる。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することによってよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、一群としてのタンニン酸がD-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)を阻害することを示すチャートである。
【
図2】
図2は、300nMにおける種々の数のガロイル部分を有するタンニン酸の抗DAAO活性を示すチャートである。3ガロイル部分は低い活性を示した。4ガロイル部分を有するタンニン酸は、3ガロイル部分を有するタンニン酸と比較してDAAOの阻害においてより高い活性を示した。ガロイル部分の数が多いほど、DAAOを阻害する効力が強くなる。
【
図3】
図3は、基本的行動機能、不安、抑うつ、記憶、感覚運動ゲート及び認知行動の改善に対するタンニン酸の活性を検証するための例示的デザインの概略図である。マウスにビヒクル対照又はタンニン酸10mg/kg又は30mg/kgを隔日注射した。処置マウスの体重を隔日に測定した。行動試験は、注射を行わなかった日に実施した。
【
図4】
図4は、ビヒクル対照及びタンニン酸で処置されたマウスの体重変化を、処置の経過中に示されるような種々の用量で示すチャートである。タンニン酸10mg/kgは体重増加を止め、30mg/kgは体重を減少させる。これは、体重減少及び肥満疾患の治療のためのタンニン酸の例である。
【
図5】
図5は、タンニン酸又は担体対照の反復注射後のマウスの自発運動活性の用量依存的低下を示すチャートである。
【
図6】
図6は、種々の用量のタンニン酸(Merck Millipore、Germany)を単回強制経口投与することにより、用量依存的にマウスの運動活性を低下させたことを示すチャートである。
【
図7】
図7は、タンニン酸の反復注射後のマウスの不安様行動の用量依存的改善を、賦形剤対照と比較して示す図を含む。パネルA:各群の嫌悪期間。パネルB:各群の嫌悪距離比。パネルC:各グループのリスクアセスメントの回数。
【
図8】
図8は、タンニン酸対ビヒクル対照の反復注射後のマウスの空間記憶検索の用量依存的改善性能を示すチャートである。30mg/kg群の動物の成績は10mg/kg群より良好である。
【
図9】
図9は、実施例3に記載されているように、MK-801で処理されたマウスにおけるタンニン酸の効果を検証するための例示的な実験デザインの概略図である。タンニン酸又はビヒクル対照のいずれかで処置された各マウスの自発運動活性及び感覚運動機能を、オープンフィールド及びプレパルス阻害により、それぞれ、試験間に少なくとも1週間の間隔を置いて試験した。MK-801(又はビヒクル)投与の20分前に、タンニン酸(又はビヒクル)を各マウスに投与した。また、行動試験の20分前に、MK-801(又は溶媒)を各マウスに投与した。
【
図10】
図10は、単回経口投与によるタンニン酸の、MK-801誘発性高運動の用量依存的な減少作用を示すチャートである。
【
図11】
図11は、用量依存的にプレパルス抑制を改善するタンニン酸の効果を示すチャートである。プレパルス抑制の改善は対照よりも良好である。10mg/kg群は、15、20、30mg/kg群と比較してプレパルス抑制の改善が少ない。
【
図12】
図12は、プレパルス抑制に対する異なる供給源からのタンニン酸の改善効果を示すチャートである。タンニン酸はSigma-Aldrich(供給源A)又はSpectrum、USA(供給源B)からのものである。プレパルス抑制の改善は対照よりも良好である。
【
図13】
図13は、実施例3に記載されているように、MK-801で処理されたマウスにおけるタンニン酸の効果を検証するための例示的な実験デザインの概略図である。MK-801に加えてタンニン酸又はビヒクル対照のいずれかで処理された各マウスの自発運動活性と感覚運動機能を、オープンフィールド、プレパルス抑制、バーンズ迷路、ショ糖選択性により、各々、試験間に少なくとも1週間の間隔を置いて試験した。MK-801(又はビヒクル)注射の20分前に、タンニン酸(又はビヒクル)をi.p.注入により各マウスに投与した。また、行動試験の20分前に、MK-801(又は溶媒)をi.p.注入により各マウスに投与した。
【
図14】
図14は、MK-801誘導性の多動性を用量依存的に改善するタンニン酸の効果を示す図である。
【
図15】
図15は、MK-801で破壊されたプレパルス抑制を用量依存的に改善するタンニン酸の効果を示す図である。
【
図16】
図16は、バーンズ迷路においてMK-801で破壊された作業記憶を用量依存的に改善するタンニン酸の効果を示す図である。
【
図17】
図17は、MK-801で破壊されたショ糖選択性を用量依存的に改善するタンニン酸の効果を示すチャートである。
【
図18】
図18は、Frey試験に対するマウスにおけるタンニン酸の効果を検証するための例示的な実験デザインの概略図である。タンニン酸(又はビヒクル)をi.p.注入により各マウスに投与した。
【
図19】
図19は、タンニン酸又はビヒクル対照(PBS)の注射後の足離脱痛閾値の経時的な改善を示すチャートである。タンニン酸治療は疼痛閾値を大幅に改善する。
【
図20】Ouercus infectoriaからのタンニン酸を含む組成物のHPLCクロマトグラムを示す図である。1~4ガロイル部分を有する不純物及び相当量のタンニン酸が存在する。
【
図21】
図21は、Rhus chinensis由来のタンニン酸を含む組成物のHPLCクロマトグラムを示す2つの図を含む。1~4ガロイル部分を有する不純物及び相当量のタンニン酸が存在する。
【
図22】
図22は、Rhus chinensis由来のタンニン酸を含む組成物のHPLCクロマトグラムを示す2つの図を含む。1~4ガロイル部分を有する不純物及び相当量のタンニン酸が存在する。
【
図23】
図23は、示されるような種々の植物又は植物源の没食子から抽出されたタンニン酸のDAAOに対する阻害活性を示す図である。Rhus chinensisの没食子からのタンニンジン酸抽出物は、Rhus potanii又はQuercus infectoriaよりも高い阻害活性を有し、Rhus chinensisの直径3~4cmの没食子は直径6~7cmの没食子よりも高い阻害活性を有する。
【
図24】
図24は、MK-801が誘発する運動亢進を減少させる、異なる供給源からのタンニン酸の単回経口投与による影響を示す図である。濃縮#10法のタンニン酸は最も高い阻害活性を有する。
【
図25】
図25は、濃縮#10法によって抽出されたタンニン酸が高い効力を有し、50mg/kg群の動物及び200mg/kg群がMK-801で破壊されたプレパルス抑制を改善する上限効果を有することを示すチャートである。
【
図26】
図26は、濃縮法#10、USP標準、及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationからのタンニン酸の組成物のHPLC-MSクロマトグラムを示す図であり、濃縮法#10の組成物は、非タンニン酸不純物を0.35%未満含有するが、UPS標準及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationの組成物は、それぞれ15.99%及び6.46%の非タンニン酸不純物をはるかに多く含有する。
【
図27】
図27は、本明細書に記載されるタンニン酸組成物を調製するための例示的な濃縮法の概略図である。下記の濃縮法11も参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
タンニン酸は様々な植物に存在するタンニンのサブファミリーである。植物から抽出されるタンニン酸は、2~12ガロイル部分を含有するポリガロイルグルコース又はポリガロイルキナ酸エステルの混合物である。以下に、グルコース部分に連結された10ガロイル部分を含む例示的なタンニン酸分子の構造を提供する。
【0023】
【0024】
歴史的に、タンニン酸は毒物を浸漬する解毒剤として、また出血、発疹、その他の痛みなどの短期的な状態の治療に使用されてきた。
【0025】
本明細書で提供されるタンニン酸組成物は、実質的に小さなタンニン酸分子(例えば、4ガロイル部分未満を有する2重量%未満のタンニン酸を含有する)を含まず、実質的にデキストリン、ガム、及び/又はレジンを含まず、及び/又は適切な供給源(例えば、本明細書に記載される植物源)からタンニン酸を抽出する際に使用される溶媒の残留物を実質的に含まないタンニン酸組成物を調製するための改良された濃縮法である。成分の「実質的に含まない」という用語は、そのような成分が存在しない(すなわち、ルーチンの方法によって検出できない)か、又はそのような成分を含有する組成物の特性に実質的な影響を及ぼさないように、成分の微量のみが存在することを意味する。場合によっては、組成物中の成分の「実質的に含まない」とは、組成物の重量に基づく成分の10重量%未満(例えば、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満)を意味する。また、本明細書には、デキストリン、ガム、及び/又はレジンを実質的に含まない、及び/又は適切な供給源(例えば、本明細書に記載される植物源)からタンニン酸を抽出する際に使用される溶媒の残留物を実質的に含まない、タンニン酸の混合物を含有するタンニン酸組成物も提供される。このようなタンニン酸の混合物は、本明細書に記載される方法のいずれかによって調製することができる。本明細書に記載されたタンニン酸混合物は、肥満障害、高脂血症、高コレステロール血症、高血糖症、糖尿病、及びCNS障害などの種々の疾患及び障害に関与することが知られているDAAOに対して強い阻害活性を示した。このようなタンニン酸混合物はまた、マウスモデルにおいて、タンニン酸が体重をうまく減少させ、基本的行動機能、多動、不安、抑うつ、感覚運動性ゲーティング、疼痛閾値、記憶及び認知行動を改善することを示した。さらに、タンニン酸は、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDA受容体)のアンタゴニストであるMK-801で処理したマウスに対して救済及び保護効果を示した。NMDA受容体は、神経細胞に発現するグルタミン酸受容体及びイオンチャネルタンパク質であり、シナプス可塑性、修復、神経発達、学習及び記憶機能の制御において重要な役割を果たす。ほとんどの中枢神経系障害はNMDA受容体の機能障害を有する。したがって、本明細書に記載されるタンニン酸混合物を含有する組成物は、NMDA受容体の機能不全に関連するCNS障害の治療に有益であると期待される。このようなタンニン酸組成物はまた、肥満並びに肥満に関連する疾患及び障害の治療に有益であると期待される。
【0026】
I.タンニン酸組成物を調製するための改良された増菌方法
本明細書に記載される改良された濃縮法は、(i)複数バッチ抽出プロセス;(ii)デキストリン/ガム/レジン除去プロセス;及び(iii)溶媒残留物除去プロセスの1つ以上の特徴を含む。
【0027】
(a)マルチバッチ抽出
一部の実施形態において、タンニン酸は、適切な溶媒を用いて、タンニン酸、例えば、本明細書に記載される没食子パワー又はチップを含む組成物から抽出することができる。このようなタンニン酸含有組成物は、タンニン酸の不均一な集団を含むことができる。次いで、適切な溶媒をこの抽出プロセスで使用することができる。本明細書中で使用される場合、用語「溶媒」は、1つ以上の溶質を溶解することができる液体を指す。溶媒は、目的の溶質を溶解する物質の純粋な集団を含み得る。あるいは、本明細書中で使用される溶媒は、溶質を溶解するための複数の物質の混合物であってもよい。タンニン酸を抽出するのに適した溶媒は、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、水、又はそれらの組み合わせを含む。
【0028】
抽出プロセスは、複数バッチ方式で実行することができる。簡単に説明すると、タンニン酸含有組成物の多数のバッチを適切な溶媒中に順次置き、適切な時間、例えば1~6時間、(例えば、撹拌しながら)インキュベートする。例えば、タンニン酸含有組成物の第一バッチを、適切な溶媒と共に、適切な期間、例えば、1~6時間又は2~4時間インキュベートすることができる。次いで、タンニン酸含有組成物の第2のバッチ(第1のバッチと実質的に同じ量であってもよい)を、適切な溶媒(第1のバッチを含む)に入れ、適切な期間、例えば、1~6時間又は2~4時間インキュベートすることができる。その後、タンニン酸含有組成物の第3のバッチ(第1のバッチ及び/又は第2のバッチと実質的に同じ量であってもよい)を、同じ適切な溶媒(第1及び第2のバッチを含む)に入れ、適切な期間、例えば、1~10時間、2~8時間、又は3~6時間インキュベートすることができる。必要に応じて、タンニン酸含有組成物のさらなるバッチを、同様の方法で適切な溶媒と共にインキュベートすることができる。次いで、形成された混合物の可溶性部分を濾過して不溶性物質を除去し、真空中で濃縮して粗タンニン酸抽出物を生成することができる。驚くべきことに、マルチバッチアプローチを用いたタンニン酸の収率は、単一バッチアプローチ(同じ量のタンニン酸含有組成物を同じ量の溶媒中で同時にインキュベートする)を用いたタンニン酸の収率よりも少なくとも2倍高いことが分かった。下記の濃縮法11を参照されたい。
【0029】
(b)デキストリン/ガム/レジン除去
本明細書に記載されているもののような植物源から抽出されたタンニン酸は、しばしばデキストリン、ガム、及び/又はレジンを含み、これはタンニン酸組成物の治療用途を制限するであろう。本明細書に記載される改良された濃縮法は、必要に応じて、デキストリン、ガム、及び/又はレジンを効果的に除去するプロセスを含み得る。
【0030】
デキストリン/ガム/レジン除去プロセスは、タンニン酸含有組成物を適切な量のアルキル溶媒と混合し、適切な温度(例えば、室温)で適切な期間(例えば、1~4時間又は2~3時間)形成された混合物を撹拌することによって実施することができる。タンニン酸含有組成物は、必要に応じて、適切な溶媒(タンニン酸を例えばアセトンに溶解することができる)中で希釈することができる。「アルキル溶媒」は、アルキル鎖を有する溶媒、例えば、C1-C10アルキル鎖を意味する。例としては、ヘキサン、ペンタン又はヘプタンが挙げられるが、これらに限定されない。撹拌プロセスの後、混合物をしばらく保持して、2つの層の分離を可能にすることができる。このようにして形成された底部油層を回収することができる。必要に応じて、レジン除去工程を複数回(例えば、2~4回)繰り返すことができる。
【0031】
アルキル溶媒で処理する前に、タンニン酸含有組成物を、まず、適切な期間、極性溶媒と混合して、有機層の形成を可能にし、これを回収し、本明細書に記載されるようなアルキル溶媒での以下の処理に付すことができる。極性溶媒は、部分的に電荷(大きな双極子モーメントを有する)であり、典型的には、酸素と水素の間など、非常に異なる電気陰性度を有する原子間の結合を含む分子を含む。場合によっては、極性溶媒は、酸素又は窒素に結合した水素原子を有する分子を含むプロトン性溶媒であってもよい。例としては、ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール、ニトロメタン、エタノール、メタノール、酢酸、及び水が挙げられる。他の例では、極性溶媒は、酸性水素を欠く非プロトン性溶媒であり得る。例としては、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び炭酸プロピレン(PC)が挙げられる。
【0032】
この研究の結果は、前述のレジン除去工程を2回行うと、MgSO4、Na2CO3、及び/又はK2CO3処理と比較してレジン除去効率が有意に向上することを示した。以下の例を参照されたい。
【0033】
(c)溶媒残留物除去
溶媒は典型的に天然源からタンニン酸を抽出するのに使用されるので、得られるタンニン酸組成物はしばしば溶媒残留物を含み、これはタンニン酸組成物の治療用途及び/又は治療効果にも影響を与える。本明細書は、必要に応じて、タンニン酸生成物からそのような溶媒残留物を除去するための有効なアプローチである。
【0034】
溶媒残留物は、本明細書に記載される通常の方法又は手順にしたがって得られるタンニン酸固体から除去することができる。この除去工程を行うために、適切な量の適切な溶媒(例えば、5~30×mL、例えば、20×mL)を適切な温度(例えば、40~70℃、例えば、60℃)で、適切な期間(例えば、12~24時間、例えば、16時間)スラリー化することができる。次いで、得られた混合物を濾過し、適切な温度(例えば、10~80℃好ましくは、70℃のような60~80℃)で減圧蒸発させて、調製工程で使用される溶媒の残留物を除去することができる。この工程で使用される溶媒は、アルキル溶媒(例えば、ヘキサンのようなC1-C10アルキル溶媒)、ジクロロメタンのような塩素化溶媒、又はジクロロエタン、又はそれらの組合せであり得る。必要に応じて、この工程を複数回(例えば、2~5回)繰り返して、溶媒残渣を最終タンニン酸生成物から実質的に除去することができる。下表に示すように、この工程を実施することにより、溶媒抽出を含むタンニン酸組成物から溶媒残留物を著しく除去することができる。
【0035】
【0036】
(d)例示的な濃縮法
以下に、小さなタンニン酸分子(例えば、4ガロイル部分未満を有する2重量%未満のタンニン酸を含有する)を実質的に含まず、デキストリン、ガム及び/又はレジンを実質的に含まず、及び/又は適切な供給源(例えば、本明細書に記載される植物源)からタンニン酸を抽出する際に使用される溶媒の残留物を実質的に含まない、タンニン酸組成物を製造するための例示的な濃縮法を提供する。
【0037】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるタンニン酸組成物は、以下のように調製することができる。適切な植物又は植物源、例えば本明細書に記載されているものからの没食子は、ルーチンの方法によって得ることができる。没食子を粉砕して没食子粉末又は没食子チップを形成することができる。いくつかの例では、没食子粉末は、適切なサイズ(例えば、20メッシュ、30メッシュ、40メッシュ、50メッシュ、又は60メッシュ)を有する篩を通過させて、微細な没食子パワーを形成することができる。
【0038】
適切な植物源としては、限定されないが、Rhus chinensis、Rhus javanica、Rhus semialata、Rhus coriaria、Rhus potaninii、Rhus punjabensis var. sinica (Diels) Rehder & E.H. Wilson、Camellia sinensis、Berry、Bixa orellana、Vitis vinifera、Punica granatum、Quercus infectoria、Quercus cerris、Acacia mearnsii、Pseudotsuga menziesii、Caesalpinia spinosa、Fagus hayata Palib. ex Hayata、又はMachilus thunbergii Sieb. & Zucc.が挙げられる。一部の実施態様において、本発明の組成物に含まれるタンニン酸又はタンニン酸混合物は、Rhus chinensis、Rhus javanica、Rhus semialata、Rhus coriaria、Rhus potaninii、or Rhus punjabensis var. sinica (Diels) Rehder & E.H. Wilsonから抽出される。
【0039】
本明細書に記載される植物源は、営巣昆虫を必要とし得て、限定されないが、Andricus kollari、Andricus fecundatrix、Andricus quercuscalicis、Andricus quercuscalicis、Biorhiza pallida、Neuroterus quercusbaccarum、Neuroterus albipes、Neuroterus numismalis、Cynips quercusfolii、Melaphis chinensis (Bell)、Melaphis peitan Tsai et Tang、Nurudea sinica Tsai et Tang、Nurudea shiraii Matsumura、Nurudea rosea Matsumura、Meitanaphis elongallis Tsai et Tang、Macrorhinarium ensigallis Tsai et Tang、Macrorhinarium ovagallis Tsai et Tang、Floraphis meitanensis Tsai et Tang、Meitanaphis flavogallis Tang、Kaburagia rhusicola Takagi、Kaburagia ovatihuicola Xiang、Kaburagia ensigallis Tsai et Tang、Kaburagia ovogallis、Kaburagia thusicola Takagi、Meitanaphis microgallis Xiang、及びFloraphis choui Xiangが挙げられる。
【0040】
一部の実施態様において、タンニン酸又はタンニン酸混合物は、限定されるものではないが、中国産の腹形の没食子、角形の没食子、硬いエンシフォルムの没食子、卵-硬いエンシフォルムの没食子、及び少なくとも植物又は植物源の花序没食子から抽出され、本明細書に記載される営巣昆虫を必要とする。タンニン酸の製造に使用する没食子は、1~8cm(例えば、1cm、2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、又は8cm)の範囲の直径を有することができる。いくつかの例では、没食子は、2~6cm(例えば、3~5cm)の範囲の直径を有することができる。
【0041】
【0042】
粗タンニン酸抽出物は、本明細書に記載される没食子パワー及び/又はチップから、本明細書に記載される従来の方法又はマルチバッチアプローチを用いて抽出することができる。次いで、粗タンニン酸抽出物を水、有機溶媒、又はそれらの組合せに溶解してタンニン酸溶液を形成し、これを木炭、金属炭酸塩(例えば、Na2CO3又はK2CO3)、及び金属硫酸塩(例えば、CaSO4、MgSO4)の1つ以上と混合して、同時に又は連続的に、望ましくない物質(例えば、炭酸金属及び/又は金属硫酸塩に吸収され得る物質、又は金属炭酸塩及び/又は金属硫酸塩によって沈殿/除去され得る物質)を除去することができる。金属炭酸塩の例としては、限定されないが、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウムが挙げられる。例示的な金属硫酸塩は、硫酸カルシウム又は硫酸マグネシウムであり得る。
【0043】
いくつかの例において、本明細書に記載される粗タンニン酸抽出物は、最初に、適切な期間、活性炭と混合することができる(例えば、室温で1~24時間撹拌する)。次いで、金属炭酸塩及び/又は金属硫酸塩(例えば、Na2CO3、K2CO3、CaSO4及び/又はMgSO4)を混合物に添加することができ、これを適切な温度(例えば、室温)で適切な期間(例えば、30分~6時間)撹拌することができる。次いで、混合物を、例えばセライトのベッドを通して濾過し、適切な溶媒(例えば、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エタノール、又はそれらの組み合わせ)で洗浄し、ルーチンの方法で濃縮してタンニン酸組成物を生成することができる。
【0044】
他の実施例では、粗タンニン酸抽出物を、最初に、適切な時間、活性炭と混合することができる(例えば、室温で1~24時間、例えば、6~12時間又は12~18時間撹拌する)。次いで、活性炭を混合物から除去して溶液を形成することができる。次いで、金属炭酸塩及び/又は金属硫酸塩(例えば、Na2CO3、K2CO3、CaSO4及び/又はMgSO4)を溶液に添加することができ、これを適切な温度(例えば、室温)で適切な期間(例えば、30分~6時間、例えば、30分~2時間、又は1時間)撹拌することができる。次いで、混合物を、例えばセライトのベッドを通して濾過し、適切な溶媒(例えば、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、又はそれらの組み合わせ)で洗浄し、ルーチンの方法で濃縮してタンニン酸組成物を生成することができる。
【0045】
いくつかの実施例では、上述の工程のいずれかで形成されたタンニン酸混合物を、適切な量の酢酸エチル、酢酸メチル、及び/又はメチルエチルケトン(例えば、3~8×mL又は6×mL)に入れ、適切な温度(例えば、室温)で、適切な期間(例えば、1~2時間)インキュベートすることができる。このようにして形成された有機層は、タンニン酸を含む回収することができる。
【0046】
いくつかの例において、本明細書に記載される粗タンニン酸抽出物は、適切な温度(例えば、30~40℃のような20~60℃)で、適切な期間、炭酸金属とインキュベートすることができる。こうして形成された混合物は、次いで、適量の酢酸エチル、酢酸メチル、及び/又はメチルエチルケトン(例えば、3~8×mL又は6×mL)によって抽出され、適切な温度(例えば、室温又は20~50℃)で適切な期間(例えば、1~2時間)インキュベートされて、有機溶液を生成することができる。有機溶液は、木炭及び1つ以上の金属硫酸塩と同時に又は連続的にインキュベートして、炭に吸収された物質及び/又は金属硫酸塩によって沈殿した物質を除去し、それによって濃縮タンニン酸混合物を生成することができる。必要に応じて、タンニン酸混合物を、例えば、セライトの床を通して濾過し、適切な溶媒(例えば、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、又はそれらの組み合わせ)で洗浄し、ルーチンの方法で濃縮してタンニン酸組成物を生成することができる。
【0047】
本明細書に記載されるいずれのタンニン酸混合物も、望ましくない物質をさらに除去するために、適切な期間、二酸化ケイ素とインキュベートすることができる。
【0048】
本明細書に記載されているような粗タンニン酸抽出物又は濃縮タンニン酸混合物のいずれも、本明細書に記載されているように、デキストリン/ガム/レジンを除去するプロセスに供することができる。得られた油性残留物は、適切な溶媒、例えば、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、又はそれらの組み合わせ中で希釈することができる。このようにして形成された溶液を撹拌し、CH2Cl2又はジクロロエタンのような塩素化溶媒を溶液にゆっくりと滴下して添加して、所望のタンニン酸を沈殿させることができる。次いで、固体は、ルーチンの実施(例えば、濾過及び/又は乾燥)によって収集され、濃縮タンニン酸組成物を生成することができる。
【0049】
こうして調製されたタンニン酸固体は、次いで、本明細書に記載される溶媒残留除去プロセスに付され得る。
【0050】
いくつかの例は、単なる例示であり、決して、本開示をこれらの特定の例に限定するものではない。
【0051】
本方法は、以下を含む:(i)適切な植物の没食子を粉砕して、微粉又は小さなチップを形成する;(ii)粗粉末タンニン酸抽出物を生成するために、本明細書に記載されるような複数回バッチアプローチを介して第1の溶媒(例えば、本明細書に記載のもの)で微粉末又は小さなチップを抽出する;(iii)粗タンニン酸抽出物を水に溶解し、形成されたタンニン酸溶液をK2CO3と混合する;(iv)(iii)で形成された混合物を適切な溶媒(例えば、酢酸エチル)で抽出し、こうして形成された有機層を収集する; (v)有機層を木炭と混合し、このようにして形成された混合物を適切な時間(例えば、0.5時間)攪拌する;(vi)混合物をMgSO4と適切な期間インキュベートする;(vii)(vi)で形成された混合物をセライトで濾過し、濾液を収集する;(viii)濾液(希釈してもよい)をアルキル溶媒(例えば、ヘキサン)と混合し、こうして形成された油性残留物を収集する;(ix)必要に応じて工程(viii)を繰り返す;(x)結果として得られる油性残留物を収集し、これを任意でアセトンで希釈し、油性残留物をCH2Cl2と混合する;(xi)このようにして形成された混合物を適切な時間撹拌して、固体タンニン酸の沈殿を可能にする;(xii)必要に応じて真空下で乾燥できる固体タンニン酸を回収する;(xiii)固体タンニン酸をアルキル溶媒、塩素化溶媒、又はそれらの組み合わせでスラリー化する;(xiv)必要に応じて工程(xiii)を繰り返す;(xv)このようにして形成された混合物を真空中で蒸発させ、それによってタンニン酸組成物を生成する。
【0052】
【0053】
II.タンニン酸含有組成物及びこれを含有するキット
本開示の1つの態様は、組成物、例えば、薬学的組成物、栄養補助食品組成物のような健康食品、及び1つ以上のタンニン酸及び担体、例えば、薬学的に許容される担体及び/又は食用担体を含む医療食品に関する。そのような担体は、天然又は非天然(合成)のいずれかで、組成物中のタンニン酸に種々の利点を与え、例えば、タンニン酸のインビトロ及び/又はインビボ安定性を改善し、タンニン酸のバイオアベイラビリティを増強し、タンニン酸の生物活性を増強し、及び/又は副作用を減少させることができる。適切な担体としては、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、緩衝剤、保存剤、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、担体は安息香酸ナトリウムのような安息香酸塩を含むことができる。
【0054】
(A)タンニン酸含量
本明細書に記載される組成物中のタンニン酸集団は、小さなタンニン酸分子(例えば、4ガロイル部分未満を有する2重量%未満のタンニン酸を含有する)を実質的に含まず、デキストリン、ガム及び/又はレジンを実質的に含まず、及び/又は適切な供給源(例えば、本明細書に記載される植物源)からタンニン酸を抽出する際に使用される溶媒の残留物を実質的に含まないことができる。成分の「実質的に遊離」という用語は、そのような成分が存在しない(すなわち、ルーチンの方法によって検出できない)か、又はそのような成分を含有する組成物の特性に実質的な影響を及ぼさないように、成分の微量のみが存在することを意味する。場合によっては、組成物中の成分の「実質的に遊離」とは、組成物の重量に基づく成分の10重量%未満(例えば、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満)を意味する。このようなタンニン酸集団は、本明細書に記載される改良された濃縮法のいずれかによって調製することができる。
【0055】
不均質又は実質的に均質なタンニン酸集団は、適切な天然源から精製することができるが、本明細書に記載されるタンニン酸含有組成物は、様々な局面において天然に存在するタンニン酸組成物とは異なる。いくつかの例において、組成物中のタンニン酸混合物は、天然に存在するタンニン酸混合物中に存在する4ガロイル部分未満を有するタンニン酸を実質的に含まない。少数のガロイル部分を有するタンニン酸の除去は、得られたタンニン酸混合物の生物学的活性(例えば、DAAOの阻害)を増強することができる。他の例では、本明細書に記載される組成物は、天然に存在するタンニン酸混合物中で、そのようなタンニン酸よりも実質的に高いレベルで、高数のガロリル部分(例えば、5-12、6-12、7-12、又は8-12)を有するタンニン酸を含有する。本明細書中に提供されるように、本明細書中に記載される組成物中に含有されるタンニン酸集団は、ガロリル部分の数が少ないタンニン酸と比較して、生物学的活性の増強(例えば、DAAOの阻害)を示した。さらに他の例において、組成物は、天然に存在するタンニン酸の不均一な集団とは対照的に、実質的に均一な集団のタンニン酸を含有することができる。
【0056】
ある態様において、本明細書に記載される組成物は、4~12ガロイル部分を有するタンニン酸を≧98%(例えば、98.5%、99%、又は99.5%)含有し得る。他の実施形態において、組成物は、5~12ガロイル部分を有するタンニン酸を≧97%(例えば、97.5%、98%、98.5%、99%、又は99.5%)含有することができる。さらに他の態様において、組成物は、6~12ガロイル部分を有するタンニン酸を≧90%(例えば、92%、95%、97%、98%又はそれ以上)含有し得る。あるいは、本明細書に記載される組成物は、8~12ガロイル部分を有するタンニン酸を≧60%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はそれ以上)含有することができる。
【0057】
特定の例において、本明細書に記載される組成物は、5ガロイル部分を有するタンニン酸約4~20%(例えば、約10~20%、例えば、約15%)、6~7ガロイル部分を有するタンニン酸約10~35%(例えば、約15~25%、約20%)、及び8~12ガロイル部分を有するタンニン酸約55~85%(例えば、約55~65%、例えば、約60%又は65%)を含有し得る。
【0058】
本明細書に記載されるタンニン酸集団(例えば、本明細書に記載される改良された濃縮法のいずれかによって調製される)、又はその薬学的に許容される塩は、1以上の担体(例えば、薬学的に許容される担体)と混合して組成物を形成することができる。用語「薬学的に許容される塩」は、タンニン酸の比較的非毒性、無機又は有機塩基付加塩を指す。これらの塩は、投与ビヒクル又は剤形製造プロセスにおいてインサイチュで調製することができ、又は1種以上のタンニン酸を適切な有機塩基又は無機塩基と別々に反応させ、次の精製の間に形成された塩を単離することによって調製することができる。適切な無機塩基としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、又は水酸化リチウムが挙げられる。適切な有機塩基としては、限定されないが、ピリジン、メチルアミン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、ホスファゼン塩基、又は有機カチオンの水酸化物、例えば第四級水酸化アンモニウム及び水酸化ホスホニウムが挙げられる。例えば、Berge et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい。
【0059】
(B)医薬組成物
本明細書に記載されるタンニン酸含有組成物、例えば、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物は、本明細書に記載される標的疾患のいずれかを治療するために使用することができる。いくつかの実施形態において、組成物中のタンニン酸集団は、縮合タンニン及び/又はフロロタンニンを実質的に含まない。「許容される」とは、担体が、組成物の活性成分と適合しなければならず(好ましくは、活性成分を安定化することができる)、処置される対象に対して有害でなければならないことを意味する。当技術分野で周知の緩衝液を含む薬学的に許容される賦形剤(担体)。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hooverを参照されたい。
【0060】
薬学的に許容される担体としては、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、及び当該技術分野で周知の他の物質が挙げられる。タンニン酸又はその塩のための例示的な薬学的に許容される担体は、特に、米国特許第5,211,657号に記載されている。このような調製物は、塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、及び所望により他の治療剤を日常的に含有することができる。医薬に使用される場合、塩は医薬的に許容されるべきであるが、非医薬的に許容される塩は、その医薬的に許容される塩を調製するために便利に使用することができ、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的及び薬学的に許容される塩としては、限定されないが、適切な無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化鉄、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、又は水酸化リチウム)、又は適切な有機塩基(例えば、ピリジン、メチルアミン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、ホスファゼン塩基、又は第四級水酸化アンモニウム及び水酸化ホスホニウムのような有機カチオンの水酸化物)から調製される塩が挙げられる。また、薬学的に許容される塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩のようなアルカリ金属又はアルカリ土類塩として調製することができる。
【0061】
本明細書に記載されるタンニン酸含有医薬組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態の医薬的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤を含むことができる。Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hoover。そのような担体、賦形剤又は安定剤は、本明細書に記載される組成物中の活性成分(例えば、タンニン酸)の1つ以上の特性、例えば、生物活性、安定性、生物学的利用能、及び他の薬物動態学及び/又は生物活性を増強することができる。
【0062】
許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、安息香酸塩、ソルビン酸塩、m-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、セリン、アラニン、リジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、デキストランなどのその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属錯体(例:Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(しょう(ポリソルベート)、PLURONICS(商標)(非イオン性界面活性剤)、またはポリエチレングリコール(PEG)などが含まれる。
【0063】
他の例において、本明細書に記載される医薬組成物は、徐放性フォーマットで処方することができる。徐放性製剤の適切な例には、タンニン酸を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、マトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7-エチル-L-グルタミン酸、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸共重合体と酢酸ロイプロリドで構成される注射用ミクロスフェア)、ショ糖酢酸イソ酪酸、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0064】
インビボ投与に使用される薬学的組成物は、無菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。治療組成物は、一般に、無菌アクセスポート、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルを有する容器内に配置される。
【0065】
本明細書に記載される医薬組成物は、経口、非経口又は直腸投与のための、又は吸入若しくは通気による投与のための、又は脳内若しくは脳内経路のための、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液若しくは懸濁液、又は座薬のような単位投与形態であり得る。
【0066】
錠剤のような固体組成物を調製するために、主活性成分を医薬担体、例えばコーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又はガムのような従来の錠剤成分、及び他の医薬希釈剤、例えば水と混合して、本発明の化合物の均質混合物を含有する固体予備製剤組成物、又はそれらの無毒性の医薬的に許容される塩を形成することができる。これらの予備処方組成物を均一なものとして参照する場合、組成物が錠剤、丸剤及びカプセルのような等しく有効な単位投与形態に容易に分割できるように、活性成分が組成物全体に均一に分散されることを意味する。次いで、この固体予備製剤組成物を、0.1~約500mgの本発明の活性成分を含有する上述のタイプの単位投与形態に細分する。新規組成物の錠剤又は丸剤は、延長作用の利点を与える投与形態を提供するために、コーティング又は他の方法で配合することができる。例えば、錠剤又は丸剤は、内部投与量及び外部投与量成分を含むことができ、後者は、前者を覆う封筒の形態である。これら2つの成分は、胃内での崩壊に抵抗し、内部成分を無傷で十二指腸に通過させたり放出を遅らせたりする腸内層によって分離される。このような腸溶層又はコーティングには、多数のポリマー酸及びセラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースのような材料とのポリマー酸の混合物を含む種々の材料を用いることができる。
【0067】
適切な界面活性剤は、特に、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標)20、40、60、80又は85)及び他のソルビタン(例えば、Span(商標)20、40、60、80又は85)のような非イオン性剤を含む。界面活性剤との組成物は、好都合には0.05~5%の界面活性剤を含み、0.1~2.5%であり得る。必要に応じて、他の成分、例えばマンニトール又は他の薬学的に許容されるビヒクルを添加してもよいことが理解されよう。
【0068】
適切なエマルジョンは、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)およびLipiphysan(商標) のような市販の脂肪エマルジョンを用いて調製することができる。活性成分は、予め混合されたエマルジョン組成物に溶解されてもよく、あるいは、油(例えば、大豆油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油又はアーモンド油)及びリン脂質(例えば、卵リン脂質、大豆リン脂質又は大豆レシチン)及び水と混合して形成されたエマルジョンに溶解されてもよい。他の成分、例えばグリセロール又はグルコースを添加して、エマルジョンの浸透圧を調節することができることが理解されよう。適切なエマルジョンは、典型的には20%までの油、例えば5~20%を含有するであろう。脂肪乳剤は、0.1~1.0μm、特に0.1~0.5μmの脂肪滴を含むことができ、5.5~8.0の範囲のpHを有する。
【0069】
吸入又は通気のための薬学的組成物は、薬学的に許容される水性若しくは有機溶媒、又はそれらの混合物、及び粉末中の溶液及び懸濁液を含む。液体又は固体組成物は、上述のように、適切な薬学的に許容される賦形剤を含有することができる。いくつかの態様において、組成物は、局所又は全身作用のために経口又は鼻呼吸経路により投与される。
【0070】
好ましくは滅菌された薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスを使用して噴霧することができる。噴霧された溶液は、噴霧装置から直接呼吸されてもよく、又は噴霧装置は、フェイスマスク、断続的又は断続的陽圧呼吸装置に取り付けられてもよい。溶液、懸濁液又は粉末組成物は、製剤を適切な方法で送達するデバイスから、好ましくは経口又は鼻腔で投与することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、タンニン酸含有医薬組成物のいずれも、組成物の意図された治療用途に基づく第2の治療剤をさらに含むことができる。
【0072】
いくつかの例において、第2の治療剤は、限定されるものではないが、オルリスタット、ロルカセリン、シブトラミン、リモナバント、メトホルミン、エキセナチド、プラリンチド、フェンテルミン、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミントピラメート、ジニトロフェノール、ブプロピオン、及びゾニサミドを含む抗肥満剤である。
【0073】
他の実施例では、第2の治療剤は、CNS疾患/障害を治療するための薬剤である。このような治療剤は、抗精神病薬であり得る。抗精神病薬の例としては、限定されないが、ブチロフェノン(例えば、ハロペリドール(HALDOL(商標)))、フェノチアジン(例えば、クロルプロマジン(THORAZINE(商標))、フルフェナジン(PROLIXIN(商標))、ペルフェナジン(TRILAFON(商標))、プロクロルペラジン(COMPAZINE(商標))、チオオペラジン(MELLARIL(商標))、トリオペラジン(STELAZINE(商標))、メソリダジン、プロマジン、トリフルプロマジン(VESPRIN(商標))、レボメプロマジン(NOZINAN(商標))、プロメタジン(PHENERGAN(商標))、チオキサンテン(例えば、クロルプロチキセン、フルペンチキソール(DEPIXOL(商標)、FLUANXOL(商標))、チオチキセン(NAVANE(商標))、ズクロペンチキソール(CLOPIXOL(商標)、ACUPHASE(商標))、クロザピン(CLOZARIL(商標))、オランザピン(ZYPREXA(商標))、リスペリドン(RISPERDAL(商標)、RISPERDAL CONSTA(商標))、クエチアピン(SEROQUEL(商標))、ジプラシドン(GEODON(商標))、アミスルプリド(SOLIAN(商標))、アセナピン、パリペリドン(INVEGA(登録商標))、アリピプラゾール(ABILIFY(商標))、ドーパミン部分アゴニスト(BIFEPRUNOX(商標)、NORCLOZAPINE(商標)(ACP-104))、ラモトリジン(LAMICTAL(商標))、テトラベナジン(NITOMAN(商標)、XENAZINE(商標))、カンナビジオール、LY2140023などが含まれる。
【0074】
別法として、第2の治療剤は、抗うつ剤及び/又は気分安定剤であり得る。ある態様において、抗うつ薬は、モノアミン酸化酵素阻害剤(MAOI)、三環系抗うつ剤(TCA)、四環系抗うつ剤(TeCA)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、ノルアドレナリン及び特異的セロトニン作動性抗うつ剤(NASSA)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤、及び/又はセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)を含む。例示的なSSRIとしては、フルオキセチン(PROZAC(商標))、パロキセチン(PAXIL(商標)、SEROXAT(商標))、エスシタロプラム(LEXAPRO(商標)、ESIPRAM(商標))、シタロプラム(CELEXA(商標))、セルトラリン(ZOLOFT(商標))、フルボキサミン(LUVOX(商標))が挙げられる。例示的なSNRIは、ベンラファキシン(EFFEXOR(商標))、ミルナシプラム及びデュロキセチン(CYMBALTA(商標))を含む。追加の抗うつ薬には、ノルアドレナリン作動性及び特異的なセロトニン作動性抗うつ薬(NASSA)(例えば、ミルタザピン(AVANZA(商標)、ZISPIN(商標)、REMERON(商標))、
(アザピン、レメロオック)、又はミアンセリン、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害薬(NRI)(例えば、レボキセチン(EDRONAX(商標)))、ノルアドレナリン-ドーパミン再取り込み阻害薬(例えば、ブプロピオン(WELBUTRINOE、ZYBAN(商標)))、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、イミプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、ブプロピオン、ブプロピオンSR、クロミプラミン、ドキセピン、イソカルボキサジド、ベンラファキシンXR、トラゾドン、ネファゾドン、フェネルジン、ラマトロギン、リチウム、トピラメート、ガバペンチン、カルバマゼピン、オキサカルバゼピン、バルポレート、マプロチリン、ミルタザピン、ブロファロミン、ゲピロン、モクロベミド、イソニアジド、イプロニアジドなどが含まれる。
【0075】
他の実施例では、第2の治療剤は、ADD及び/又はADHDの治療のための薬剤であり得る。適切なADHD薬には、限定されないが、アンフェタミン、モダフィニル、デソキシン、メタンフェタミン、コカイン、アレコリン、デキスメチルフェニデート(フォーカリン、フォーカリンXR)、デキストロアンフェタミン(デキセドリン、デキセドリンスパンスル、デキストロアンフェタミンER、デキストロスタット)、メタフェニデート、メタフェニデートCD、メタデートER、メチリン、メチリンER、リタリン、リタリンLA、リタリンSR)、リスデキサンフェタミンジメシレート(ビバンス)、混合塩アンフェタミン(アデロール、アデロールXR)、アトモキセチン(ストラテラ)、塩酸クロニジン(カタプレス)、塩酸グアンファシン(テネックス)、アレコリン、およびペモリンが含まれる。
【0076】
さらに、第2の治療剤は、認知障害、及び/又は神経変性を特徴とする状態(例えば、アルツハイマー病又はパーキンソン病)を治療するのに使用するための薬剤であり得る。そのような治療剤としては、限定されないが、タクリン、リバスチグミン、メマンチン(AXURA(商標)、AKATINOL(商標)、NAMENDA(商標)、EBIXA(商標)、ABIXA(商標))、ドネペジル(Aricept(商標))、フィゾスチグミン、ニコチン、アレコリン、ヒューペルジンα、セレギリン、リルテック(商標)(リルゾール)、ビタミンC、ビタミンE、カロチノイド、イチョウ葉などが挙げられる。
【0077】
(C)健康食品
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるタンニン酸含有組成物は、ヒト及び動物に栄養を与えるため、基本的行動機能、多動、不安、抑うつ、自殺念慮及び/又は行動、感覚運動性ゲート、疼痛閾値、記憶及び/又は認知機能を改善するため、又は本明細書に記載される標的疾患(例えば、本明細書に記載されるものを含む、肥満障害、高脂血症、高血糖、糖尿病、又はCNS障害)のいずれかの治療を促進するために使用される任意の種類の液体及び固体/半固体材料であり得る健康食品であり得る。健康食品は、食品(例えば、茶系飲料、ジュース、ソフトドリンク、コーヒー、ミルク、ゼリー、クッキー、シリアル、チョコレート、スナックバー、ハーブエキス、乳製品(例えば、アイスクリーム、及びヨーグルト))、食品/栄養補助食品、又は栄養補助食品製剤であり得る。
【0078】
本明細書に記載される健康食品は、1つ以上のタンニン酸(例えば、本明細書に記載されるタンニン酸混合物、又は本明細書に記載されるような定義された数のガロイル部分を有する実質的に均質なタンニン酸の集団)を含有し、1つ以上の食用担体を含むことができ、これは、本明細書に記載されるように、製品中のタンニン酸に1つ以上の利点を付与する。食用担体の例としては、デンプン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、メチルセルロース、カーボンメトキシセルロース、キサンタンガム、及びそれらの水溶液が挙げられる。他の例としては、当業者に知られているように、溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、着香剤、染料などの材料及びそれらの組み合わせが挙げられ、これらは当業者に公知である。いくつかの例において、本明細書に記載される健康食品は、魚油、亜麻種子油、及び/又は安息香酸塩などの神経保護食品をさらに含むことができる。
【0079】
いくつかの例では、健康食品は栄養補助食品組成物であり、これは、食品源からの成分を含み、食品に見られる基本的な栄養価に加えて、追加的な健康上の利益を与える組成物を指す。本明細書中に記載される栄養補助食品組成物は、本明細書中に記載されるタンニン酸含量(例えば、本明細書中に記載されるタンニン酸混合物又は実質的に均一なタンニン酸集団)、及びタンニン酸の良好な健康を促進し、及び/又は安定性及び生物活性を増強する追加の成分及び補給物を含む。
【0080】
栄養補助食品組成物の作用は、速く、及び/又は短期であってもよく、例えば、本明細書に記載されるものと同様に、基本的な行動機能、多動性、不安、抑うつ、感覚運動性ゲート、疼痛閾値、記憶及び/又は認知機能を改善するのに役立ち、又は、例えば、肥満障害を有しているか、又は、肥満障害のリスクがあるCNS障害などのDAAOに関連する疾患を有するか、又はそのリスクがあるヒト対象において、長期的な健康目的を達成するのに役立ち得る。栄養補助食品組成物は、食用材料、例えば、栄養補助食品又は医薬製剤として含有され得る。栄養補助食品として、ビタミン、ミネラル又はアミノ酸のような追加の栄養素が含まれてもよい。組成物はまた、飲料又は食品、例えば、茶、ソフトドリンク、ジュース、ミルク、コーヒー、クッキー、シリアル、チョコレート、及びスナックバーであってもよい。所望であれば、組成物は、ソルビトール、マルチトール、水素化グルコースシロップ及び水素化デンプン加水分解物、高フルクトースコーンシロップ、サトウキビ砂糖、ビート砂糖、ペクチン又はスクラロースのような甘味料を添加することによって甘味付けすることができる。
【0081】
本明細書に開示される栄養補助食品組成物は、溶液の形態であってもよい。例えば、栄養補助製剤は、緩衝液、溶媒、希釈剤、不活性担体、油、又はクレームのような媒体で提供することができる。いくつかの例では、製剤は、アルコールのような非水性共溶媒を任意に含む水溶液中に存在する。栄養補助食品組成物はまた、粉末、ペースト、ゼリー、カプセル、又は錠剤の形態であってもよい。ラクトース及びトウモロコシデンプンは、カプセルの希釈剤及び錠剤の担体として一般に使用される。典型的には、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤を添加して錠剤を形成する。
【0082】
健康食品は、適切な投与経路、例えば経口投与のために製剤化することができる。経口投与のためには、組成物は、結合剤(例えば、前ゼラチン化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉又はグリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの許容可能な賦形剤と共に通常の手段によって調製される錠剤又はカプセルの形態をとることができる。錠剤は、当該技術分野で周知の方法によってコーティングすることができる。バーや他のチュアブルな配合物も含まれる。
【0083】
いくつかの例において、健康食品は液体形態であり得て、1つ以上の食用担体は、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用;例えば、液体ポリオール又は脂質のような担体中への分散による必要な粒径の維持;例えば、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤の使用;又はそれらの組み合わせによって維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム又はそれらの組み合わせを含むことが望ましい。
【0084】
経口投与のための液体製剤は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとることができ、又はそれらは、使用前に水又は他の適切なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供することができる。1つの実施形態において、液体調製物は、フルーツジュースと共に投与するために製剤化することができる。そのような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分画植物油);及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸塩、安息香酸塩又はソルベート)などの薬学的に許容される添加剤を用いて通常の手段によって調製することができる。
【0085】
本明細書中に記載される健康食品は、本明細書中に記載されるものを含め、1つ以上の第2の治療剤をさらに含むことができる。
【0086】
(D)医療用食品
本開示はまた、基本的な行動機能、多動、不安、抑うつ、感覚運動性ゲート、疼痛閾値、記憶及び/又は認知機能を改善するのに使用される、及び/又は本明細書に記載される標的疾患(例えば、肥満障害、高脂血症、高血糖、糖尿病、又はCNS障害)を治療するのに使用される、医療食品の組成物を提供する。医療用食品とは、経腸的に摂取又は投与されるように調合された食品である。このような食品は、通常、本明細書に記載されているような標的疾患の特定の食事管理のために、医師の監督下で使用される。場合によっては、このような医療用食品組成物は、治療を必要とする患者(例えば、疾病に苦しむか、又は特定の食事管理を介して疾患又は状態を緩和するための主要な活性剤として製品の使用を必要とするヒト患者)のために、(天然状態で使用される天然食品とは対照的に)特に調合及び加工される。いくつかの例では、本明細書に記載されている医用食品組成物は、症状を管理し、又は疾患又は状態のリスクを低減するために、全体的な食事の一部として医師によって単に推奨されるものの1つではない。
【0087】
1以上のタンニン酸分子又はその塩及び少なくとも1つの担体(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む本明細書に記載される医用食品組成物のいずれも、以下に詳述するように、液体溶液;粉末、バー、ウエハ、適切な液体中又は適切なエマルジョン中の懸濁液の形態であり得る。天然又は合成(非天然)のいずれかであり得る少なくとも1つの担体は、組成物中のタンニン酸含有量に1つ以上の利点、例えば、安定性、バイオアベイラビリティ、及び/又は生物活性を与えるであろう。本明細書に記載される担体のいずれも、医用食品組成物を作製するために使用することができる。いくつかの実施形態において、医療食品組成物は、限定されないが、天然香料、人工香料、主要微量及び超微量ミネラル、ミネラル、ビタミン、オート麦、ナッツ、香辛料、牛乳、卵、塩、小麦粉、レシチン、キサンタンガム及び/又は甘味料を含む群から選択される1種以上の追加成分をさらに含むことができる。医薬食品組成物は、適切な容器に入れることができ、この容器は、本明細書に記載されたもののような少なくとも追加の治療剤をさらに含むことができる。
【0088】
(E)キット
本開示はまた、基本的な行動機能、多動、不安、抑うつ、感覚運動性ゲート、疼痛閾値、記憶及び/又は認知機能を改善するため、及び/又は本明細書に記載される標的疾患(例えば、肥満障害、高脂血症、高血糖、糖尿病、又はCNS障害)を治療するためのキットを提供する。このようなキットは、本明細書に記載されるようなタンニン酸含有組成物、及び所望により、本明細書に記載されるような第2の治療剤の1つ又は複数を含む1つ又は複数の容器を含むことができる。
【0089】
いくつかの態様において、キットは、本明細書に記載されるいずれかの方法にしたがって使用するための説明書を含むことができる。含まれる指示は、例えば、タンニン酸含有組成物の投与の説明、及び所望により、基本的行動機能、多動性、不安、抑うつ、感覚運動性ゲート、疼痛閾値、記憶及び/又は認知機能を改善するための、又は本明細書に記載される標的疾患を治療するための第2の治療剤の投与の説明を含むことができる。キットは、さらに、その個体が疾患を有するか、又は疾患のリスクがあるかを同定することに基づいて、治療に適した個体を選択する記載を含み得る。さらに他の実施形態では、本説明書は、疾患のリスクがある個体、又は基本的な行動機能、多動、不安、抑うつ、感覚運動ゲート、疼痛閾値、記憶及び/又は認知機能を改善する必要がある個体に、本開示の1種以上の薬剤を投与する記載を含む。
【0090】
意図された治療効果を達成するためのタンニン酸含有組成物の使用に関する指示は、一般に、意図された治療のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位投与量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量のパッケージ)又はサブユニット投与量であってもよい。本発明のキットで提供される指示は、典型的には、ラベル又はパッケージ挿入物(例えば、キットに含まれる紙シート)上に書かれた指示であるが、機械読み取り可能な指示(例えば、磁気又は光記憶ディスク上に担持される指示)もまた許容される。
【0091】
ラベル又は添付文書は、組成物が意図された治療用途に使用されることを示すことができる。本明細書に記載される方法のいずれかを実施するための説明を提供することができる。
【0092】
本発明のキットは、適切なパッケージングである。適切なパッケージには、バイアル、ボトル、ジャー、軟包装(例えば、密封されたマイラー又はプラスチックバッグ)などが含まれるが、これらに限定されない。また、吸入器、鼻腔投与装置(例えば噴霧器)、又はミニポンプのような輸液装置のような特定の装置と組み合わせて使用するためのパッケージも考えられる。キットは、無菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。容器はまた、無菌アクセス口を有してもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。
【0093】
キットは、必要に応じて、緩衝液及び解釈情報のような追加の構成要素を提供することができる。通常、キットは、容器と、容器上又は容器に関連するラベル又は添付文書とを含む。一部の実施形態において、本発明は、上述のキットの内容物を含む製造物品を提供する。
【0094】
III.タンニン酸含有組成物の応用
本明細書に記載されるタンニン酸含有組成物のいずれも、治療を必要とする対象において、基本的行動機能、体重減少、多動、不安、抑うつ、自殺念慮及び/又は行動、感覚運動性ゲーティング、疼痛閾値、記憶、及び/又は認知機能を改善するために使用され得る。そのような組成物はまた、中枢神経障害(例えば、本明細書に記載されるもの)のようなDAAOに関連する疾患又は障害を治療するために使用され得る。この組成物はまた、肥満障害を治療するために使用することもできる。
【0095】
本明細書中で使用する場合、用語「治療する」とは、治療を必要とする対象への1種以上の活性剤を含む組成物の適用又は投与を指し、例えば、標的疾患若しくは障害、疾患/障害の症状、又は疾患/障害に対する素因を有し、疾患、疾患の症状、又は疾患若しくは障害に対する素因を治癒、治癒、治癒、緩和、緩和、変更、治療、改善、改善、改善、又は影響することを目的とする組成物の適用又は投与を指す。
【0096】
標的疾患/障害の軽減には、疾患の発現又は進行の遅延、又は疾患の重症度の軽減が含まれる。疾患を軽減するには、必ずしも治癒的な結果が必要ではない。そこで使用される「遅延」とは、疾患の進行を遅らせ、妨げ、遅らせ、安定させ、及び/又は延期することを意味する。この遅延は、疾患の病歴及び/又は治療される個人に応じて、様々な長さの時間であり得る。疾患の発症を「遅らせる」又は軽減する方法、又は疾患の発症を遅らせる方法は、その方法を使用しない場合と比較して、所定の時間枠内に疾患の1つ又は複数の症状を発現する確率を低下させ、及び/又は所定の時間枠内の症状の範囲を減少させる方法である。このような比較は、一般に臨床試験に基づいており、統計学的に有意な結果を得るのに十分な対象数を用いている。
【0097】
疾患の「発症」又は「進行」とは、疾患の初期症状及び/又はその後の進行を意味する。疾患の発症は、当技術分野で周知の標準的な臨床技術を用いて検出可能であり、評価することができる。しかしながら、発達とは、検出不能な進行も指す。本開示の目的上、発達又は進行は、症状の生物学的経過を指す。「発症」には、発現、再発、発現が含まれる。本明細書中で使用される場合、標的疾患又は障害の「開始」又は「出現」は、初期発症及び/又は再発を含む。
【0098】
本明細書に記載される意図された治療効果のいずれかを達成するために、有効量のタンニン酸含有組成物を、適切な経路を介して、治療を必要とする対象に投与することができる。
【0099】
用語「対象」、「個体」、及び「患者」は、本明細書中で互換的に使用され、治療及び/又は治療について評価される哺乳動物を指す。対象はヒトであってもよいが、他の哺乳動物、特にヒト疾患の実験モデルとして有用な哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌなども含む。
【0100】
治療を必要とするヒト対象は、中枢神経系障害などの標的疾患/障害、又は肥満に関連する疾患、例えば糖尿病、高血糖、高コレステロール血症又は高脂血症を有する、そのリスクがある、又はその疑いのあるヒト患者であり得る。標的疾患又は障害を有する対象は、ルーチンの医学的検査、例えば、臨床検査、臓器機能検査、及び/又は行動検査によって同定することができる。そのような標的疾患/障害のいずれかを有することが疑われる対象は、その疾患/障害の1つ以上の症状を示すことがある。疾患/障害のリスクを有する対象は、その疾患/障害の危険因子、例えば、遺伝因子を1つ以上有する対象であり得る。場合によっては、ヒト対象は、例えば注意欠陥/多動性障害(ADHD)、自閉症、アスペルガー障害、強迫性障害、抑うつ、精神病、慢性疼痛、及び学習障害など、小児と関連する肥満又はCNS障害を有する、その疑いがある、又はその危険性がある小児である。
【0101】
本明細書に記載される方法及び組成物は、CNS障害を治療するために使用され得る。本明細書に記載される方法及び組成物によって治療することができる例示的なCNS障害には、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、統合失調症、疼痛、抑うつ、自殺念慮及び/又は行動、双極性障害、外傷後ストレス障害、不安障害、不安障害、社会不安障害、パニック障害、パニック障害、アスペルガー障害、強迫性障害、学習障害、トーレット症候群、軽度認知障害、認知症、血管性認知症、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病又はパーキンソン病、前頭側頭型認知症、ハンチントン病)、夜尿症、眼瞼痙攣、非てんかん発作、躁病、躁病、脳マラリア及び認知症の行動及び心理学的症状(BPSD)が含まれる。
【0102】
肥満に伴う疾病には、肥満に至る疾病及び障害のほか、肥満患者において高い発生率を示す疾病・障害が含まれる。肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積し、健康に悪影響を及ぼすことを特徴とする病態である。肥満はボディマスインデックス(BMI)と呼ばれ、体重を身長の2乗で割って測定する。例えば、30kg/m2を超えるBMIは肥満を示すことがある。肥満に関連する例示的な疾患には、摂食障害、神経性食欲不振、脳卒中、冠動脈心疾患、心臓発作、うっ血性心不全、先天性心疾患、高血圧、非アルコール性脂肪肝炎、インスリン抵抗性、高尿酸血症、甲状腺機能低下症、変形性関節症、胆石、不妊症、肥満低換気症候群、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、慢性閉塞性肺疾患、及び喘息が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
本明細書中で使用される場合、「有効量」とは、単独で、又は本明細書中に記載される1種以上の第2の治療剤のような1種以上の他の活性剤と組み合わせて、対象に対する治療効果を付与するのに必要な各活性剤(例えば、本明細書中に記載されるタンニン酸混合物又はタンニン酸の実質的に均一な集団)の量を指す。一部の実施形態において、治療効果は、対象におけるDAAOの活性(例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上)を阻害することである。いくつかの態様において、治療効果は、基本的行動機能、体重減少、多動、不安、抑うつ、感覚運動性ゲーティング、疼痛閾値、記憶、及び/又は認知機能の改善の改善である。一部の実施形態において、治療効果は、本明細書に記載されるいずれかのCNS障害に関連する1つ以上の症状を緩和することである。あるいは、又はそれに加えて、治療効果は、対象の体重を維持又は減少させることである。
【0104】
本明細書中に記載される組成物の量が治療効果を達成したか否かの決定は、当業者に明らかであろう。有効量は、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別及び体重を含む個々の患者パラメーター、治療の持続期間、同時治療の性質、特定の投与経路、遺伝的因子、及び医療従事者の知識及び専門知識内の類似の因子に依存して、当業者によって認識されるように変化する。これらの要因は、当業者には周知であり、ルーチンの実験を超えない範囲で対処することができる。一般に、個々の成分又はそれらの組み合わせの最大用量、すなわち、健全な医学的判断に従った最高安全用量を用いることが好ましい。
【0105】
半減期のような経験的考察は、一般に投与量の決定に寄与するであろう。投与の頻度は、治療の経過にわたって決定及び調整され得、一般に、必ずしもそうではないが、標的疾患/障害の治療及び/又は抑制及び/又は改善及び/又は遅延に基づいて決定され得る。あるいは、本明細書に記載される組成物の持続放出性製剤が適切であり得る。持続放出を達成するための種々の製剤及びデバイスは、当該技術分野で公知である。
【0106】
一般に、組成物のいずれかの投与のために、例示的な1日投与量は、上述の因子に依存して、約0.1μg/kg~3μg/kg~30μg/kg~300μg/kg~3mg/kg、30mg/kg~100mg/kg又はそれ以上のいずれかの範囲であり得る。数日以上にわたる反復投与については、状態に応じて、所望の症状抑制が生じるまで、又は標的の疾患若しくは障害、又はその症状を緩和するために十分な治療レベルが達成されるまで、治療は持続される。例示的な投与レジメンは、適切な期間にわたって適切な間隔で1つ以上の初期用量を投与することを含む。必要に応じて、適切な期間にわたって適切な間隔で、対象に複数回の維持用量を投与することができる。
しかし、医師が達成したいと望む薬物動態学的減衰のパターンに依存して、他の投与法が有用であり得る。例えば、1日に1回から4回、又は1週間に1回投与することが考えられる。いくつかの態様において、約3μg/mg~約2mg/kg(例えば、約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、及び約2mg/kg)の投与量が使用され得る。ある態様において、投与頻度は、1日3回、1日2回、1日1回、1日1回、隔日1回、週1回、2週1回、4週1回、2ヵ月ごと、又は3ヵ月ごとであり得る。投与法は経時的に変化することがある。
【0107】
一部の実施形態において、正常体重の成人患者に対して、約0.3~50.00mg/kg/日(例えば、0.5~40mg/kg/日、1~30mg/kg/日、5~30mg/kg/日、又は10~20mg/kg/日)の用量を投与することができる。特定の投与法、すなわち、用量、タイミング及び反復は、特定の個体及びその個体の病歴、ならびに個々の薬剤の特性(薬剤の半減期、及び当該技術分野で周知の他の考慮事項など)に依存するであろう。
【0108】
本開示の目的のために、本明細書に記載されるタンニン酸-組成物の適切な投与量は、使用される特定のタンニン酸又はタンニン酸混合物、及び/又は他の活性成分、疾患/障害のタイプ及び重症度、組成物が予防又は治療目的で投与されるかどうか、以前の治療、患者の臨床歴及びDAAO阻害剤に対する反応、ならびに主治医の裁量に依存するであろう。典型的には、臨床医は、所望の結果を達成する用量に到達するまで組成物を投与するであろう。
【0109】
医学分野の当業者に公知の従来の方法を使用して、治療される疾患のタイプ又は疾患の部位に依存して、組成物(例えば、医薬組成物、健康食品組成物、栄養補助組成物又は医薬食品組成物)を対象に投与することができる。この組成物は、他の従来の経路、例えば、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、鼻腔、口腔、膣、又は埋め込みリザーバーを介して投与することもできる。本明細書中で使用される用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、病変内、及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。さらに、1週間、半分(又は2週間)、1ヵ月、3ヵ月、又は6ヵ月のデポ注射可能又は生分解性材料及び方法を用いるなど、注射可能なデポ投与経路を介して対象に投与することができる。いくつかの例において、医薬組成物は眼内又は硝子体内に投与される。
【0110】
注射可能な組成物は、植物油、ジメチルラクトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)のような種々の担体を含有することができる。静脈内注射では、水溶性抗体を滴下法により投与することができ、これによりタンニン酸及び生理学的に許容される賦形剤を含有する製剤が注入される。生理学的に許容される賦形剤は、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンゲル溶液又は他の適切な賦形剤を含み得る。筋肉内調製物、例えば、適切な可溶性塩型のタンニン酸の無菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水又は5%グルコース溶液のような医薬賦形剤に溶解及び投与することができる。
【0111】
一実施形態において、タンニン酸含有組成物は、部位特異的又は標的局所送達技術を介して投与される。部位特異的又は標的局所送達技術の例には、タンニン酸含有組成物又は局所送達カテーテルの種々の移植可能デポ源、例えば、注入カテーテル、留置カテーテル、又は針カテーテル、合成移植片、外膜ラップ、シャント及びステント、又は他の移植可能デバイス、部位特異的担体、直接注射、又は直接塗布が含まれる。例えば、PCT公開WO00/53211及び米国特許5,981,568を参照されたい。
【0112】
標的疾患/障害に対する治療効果は、当該技術分野で周知の方法によって評価することができる。
【0113】
IV.併用療法
本明細書には、本明細書に記載されたタンニン酸含有組成物のいずれかと、本明細書に記載されたもののような第2の治療剤とを使用する組み合わされた治療法も提供される。本明細書中で使用される「併用療法」という用語は、これらの薬剤(例えば、タンニン酸含有組成物及び抗CNS障害又は抗肥満剤)の連続的な様式での投与を包含し、すなわち、各治療剤は、実質的に同時に、これらの治療剤、又は少なくとも2つの治療剤の投与と同様に、異なる時間に投与される。各薬剤の連続的又は実質的に同時の投与は、限定されるものではないが、経口経路、静脈経路、筋肉内経路、皮下経路、及び粘膜組織を介する直接吸収を含む任意の適切な経路によって影響を受けることができる。薬剤は、同じ経路又は異なる経路で投与することができる。例えば、第一の物質(例えば、タンニン酸含有組成物)を経口投与することができ、第二の物質(例えば、抗CNS障害剤又は抗肥満剤)を静脈内投与することができる。
【0114】
本明細書中で使用される場合、用語「連続的」は、別段の指定がない限り、規則的な順序又は順序で特徴付けられる、例えば、投与レジメンがタンニン酸含有組成物及び抗CNS障害又は抗肥満剤の投与を含む場合、逐次投与レジメンは、抗CNS障害又は抗肥満剤の投与の前、同時、実質的に同時に、又は後にタンニン酸含有組成物の投与を含み得るが、両方の薬剤は、規則的な順序又は順序で投与される。「別個の」という用語は、別段の指定がない限り、一方を他方から隔離することを意味する。用語「同時に」とは、別段の指定がない限り、同時に発生又は実施される、すなわち、本発明の薬剤が同時に投与されることを意味する。用語「実質的に同時に」とは、薬剤が互いに数分以内(例えば、互いに10分以内)に投与され、関節投与及び連続投与を受け入れる意図を有するが、投与が連続的である場合、それは短期間だけの時間(例えば、2つの化合物を別々に投与するのに医師がかかる時間)で分離されることを意味する。本明細書中で使用される場合、同時投与及び実質的に同時投与は、互換的に使用される。逐次投与とは、本明細書に記載される薬剤の一時的に分離された投与を意味する。
【0115】
併用療法はまた、他の生物学的活性成分(例えば、異なる抗CNS障害剤)及び非薬物療法(例えば、手術)とさらに組み合わせて、本明細書に記載される薬物(例えば、タンニン酸含有組成物及び抗CNS障害又は抗肥満剤)の投与を包含することができる。
【0116】
タンニン酸含有組成物と第2の治療剤(例えば、抗CNS障害又は抗肥満剤)との任意の組み合わせが、標的疾患を治療するための任意の順序で使用され得ることが理解されるべきである。本明細書に記載される組み合わせは、DAAOの阻害、基本的行動機能の改善、体重減少、多動、不安、抑うつ、感覚運動性ゲーティング、疼痛閾値、記憶又は認知機能の増強、及び/又は標的疾患に関連する少なくとも1つの症状の緩和、又は組み合わせの別の薬剤の副作用を緩和するための有効性を含むが、これらに限定されない、多数の因子に基づいて選択され得る。例えば、本明細書に記載される併用療法は、組み合わせの各個々のメンバーに関連する副作用、例えば、第2の治療剤に関連する副作用のいずれかを低減することができる。
【0117】
V.一般的な技術
本発明の実施は、特に断らない限り、当業者の範囲内の神経科学、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を用いる。
このような技術は、文献において十分に説明され、例えば、Current protocol in Neuroscience (Developmental Editor: Eric Prager, Online ISBN: 9780471142300, DOI: 10.1002/0471142301); Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook, et al., 1989) Cold Spring Harbor Press; Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987); Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel, et al., eds., 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis, et al., eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995)が挙げられる。
【0118】
さらなる詳細な説明なしに、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、本明細書に提供される特定の実施形態は、単なる例示的なものであり、いかなる方法であれ、本開示の残りの部分を限定するものではないと解釈されるべきである。本明細書に引用される全ての刊行物は、本明細書に参照される目的又は主題のために、参照により援用される。
【実施例0119】
実施例1.中枢神経系(CNS)障害を治療するためのタンニン酸の強力な部分の同定及びその有効性の決定
D-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)を阻害するタンニン酸の活性は、以下のように決定された。
【0120】
DAAOの活性は、既知の基質であるD-プロリンの異化の阻害を測定することにより、インビトロで決定された。補因子FAD(40μM)を最初にDAAO溶液に追加した。アッセイでは、タンニン酸の潜在的な阻害剤を、リン酸緩衝生理食塩水(137mM NaCl、3mM KCl、10mM Na2HPO4、2mM NaH2PO4、pH7.4)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(5U/ml)、o-フェニレンジアミン(OPD、0.03%)、及び0.6μgのヒト(又はブタ)DAAOを含む反応混合物と混合し、約5分間インキュベートした。プレインキュベーション期間後、40mM D-プロリンを基質として加え、反応を10分間継続した。OPDは西洋ワサビペルオキシダーゼによって酸化され、2,3-ジアミノフェナジン(DAP)を形成した。DAPの吸光度は、分光光度法により453nmで測定された。アッセイは、IC50を生成するために阻害剤の連続希釈で行われ、Prism(Graphpad Software)によって分析された。分析では、分光光度法の測定値を標準方程式に適合させ、50%阻害(IC50)の濃度を決定した。すべての酵素アッセイは、96ウェルプレート形式で室温にて行った。
【0121】
図1に示すように、粗タンニン酸はグループとして、強力なD-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)阻害活性を示し、IC
50値は5.47μMであった。
【0122】
タンニン酸のサブグループ(特定の数のガロイル部分を有する)のDAAO阻害活性は、次のように決定された。ガロイル部分の数が異なるタンニン酸画分を、グラジエント溶出でアセトニトリルと蒸留水の移動相を使用した逆相カラム(LiChroprep(登録商標)RP-18)で分離した。80μM(表2)及び300nM(
図2、表2)での各タンニン酸画分のDAAO阻害活性は、ブランク対照として蒸留水及び10%DMSO水溶液と、ポジティブ対照として安息香酸ナトリウムを使用して、上記の方法で分析した。
【0123】
【0124】
表2は、ガロイル部分の数が異なるタンニン酸の抗DAAO活性を示す。4つ以上のガロイル部分を有するタンニン酸は、4つ未満のガロイル部分を有するタンニン酸と比較して、DAAOの阻害においてはるかに高い活性を示した。すべてのDAAOアッセイは、80μMのタンニン酸を用いて行われた。
【0125】
【0126】
表3は、30nMでガロイル部分の数が異なるタンニン酸の抗DAAO活性を示す。3のガロイル部分は弱い活性を示したが、より多くの数のガロイル部分はDAAO活性の有意に高い阻害を示した。(G=ガロイル基の数)。
【0127】
【0128】
以下の表4は、ガロイル部分の数が異なるタンニン酸の抗DAAO活性のIC50(μM)を示す。IC50は、ガロイル部分の数が異なるタンニン酸ごとに決定された。これは、3を超えるガロイル部分を有する強力なタンニン酸を示す。4以上のガロイル部分を有するタンニン酸は、4未満のガロイル部分を有するタンニン酸と比較して、はるかに小さいIC50を示し、DAAOの阻害により強力である。(G=ガロイル基の数)。
【0129】
【0130】
したがって、3を超えるガロイル部分を有するタンニン酸の精製は、タンニン酸混合物と比較して、より小さいIC50で示される効力を高める(表5)。結果は、3以上のガロイル部分(例えば、4~10)を有するタンニン酸が、3以下のガロイル部分を有するタンニン酸よりも高いDAAO阻害効力を示したことを示す。
【0131】
実施例2.基本的な行動機能と認知行動に対するタンニン酸の効果
この研究の目的は、タンニン酸の複数回投与が基本的な代謝、行動機能、認知行動に及ぼす影響を検証することであった。この実験では、タンニン酸の反復注射又は経口投与後、各マウスの体重、自発運動、不安様行動、空間学習と記憶、うつ病様行動、感覚運動ゲーティング機能を調べた。これらの活動は、NMDA受容体によって媒介されることが知られている。(Wu et al., PNAS; 110(36):14765-70 (2013); Furuya et al., Eur J Pharmacol, 364(2-3):133-140 [1999]; Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014]; McLamb et al., Pharmacol Biochem Behav, 37(1):41-45 [1990]; Vardigan et al., Pharmacol Biochem Behav, 95(2):223-229 [2010]; Wiley et al, Eur J Pharmacol, 294(1):101-107 [1995]; Wu et al., Psychopharmacology (Berl), 177(3):256-263 [2005])。この研究の例示的な図を
図3に示す。
【0132】
方法と材料
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3~5匹のマウス)で、動物部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる食物と水を用意された。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に行われた。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0133】
タンニン酸の反復注射
タンニン酸はSigma(Sigma-Aldrich、USA)から購入した。成体マウスは、3つのグループにランダムに割り当てられた:(1)対照、(2)タンニン酸(10mg/kg)、及び(3)タンニン酸(30mg/kg)、それぞれ、ベヒクル対照(PBS)、10mg/kgのタンニン酸、及び30mg/kgのタンニン酸によって処理された。行動試験の2週間前に、すべてのマウスに1日おきにベヒクル対照又はタンニン酸を腹腔内(i.p.)に注射した。身体の発達と代謝の指標となる各マウスの体重を注射の日に記録した。
【0134】
タンニン酸の反復注射がマウスの基本的な行動機能及び認知的行動に及ぼす影響の調査上記のベヒクル対照又はタンニン酸で処理されたすべてのマウスは、5つのタスクで順次試験された:(1)自発運動試験のオープンフィールドタスク、(2)高架式十字迷路による不安様行動試験、(3)空間バーンズ迷路による学習及び記憶試験、(4)尾懸垂による抑うつ様行動試験、及び(5)プレパルス阻害による感覚運動機能試験。異なるタスクの間に少なくとも1週間の間隔を空けた。キャリーオーバーの影響を最小限に抑えるために、タスクをシーケンスに配置して、ストレスの少ないタスクの前にストレスの多いタスクが発生しないようにした。手順については、Current protocol in Neuroscience (Developmental Editor: Eric Prager, Online ISBN: 9780471142300, DOI: 10.1002/0471142301)で説明され、これらの関連する開示は、意図された目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
結果
身体発達と体重減少
反復注射の期間中、タンニン酸(10mg/kg)群の体重は対照群よりも低いレベルで増加したが、タンニン酸(30mg/kg)の体重は対照よりも非常に軽かった。
図4を参照されたい。
【0136】
自発的な自発運動
オープンフィールドタスクは、新規性によって引き起こされる探索行動とマウスとラットの両方の一般的な活動の一般的な測定である。この研究では、マウスをPLEXIGLAS(登録商標)ケージ(37.5cm×21.5cm×18cm)に50~65ルクスの光度で配置した。それらの自発的な自発運動は、EthoVisionビデオ追跡システム(Noldus Information Technology、オランダ)を使用して60分間測定された。各マウスの移動距離を運動活動の指標として測定した。
図5に示すように、タンニン酸は、投与量に依存して、処理されたマウスの移動距離を短縮した。
【0137】
同様の実験が行われ、マウスに単回投与で10mg/kg、30mg/kg、100mg/kg、300mg/kg、600mg/kgが経口投与され、その運動活動が30分、60分、90分、120測定された。試験されたすべての用量のタンニン酸は、ビヒクル対照で処置されたマウスと比較して、処置されたマウスの運動を減少させた。結果を
図6に示す。
【0138】
不安様行動
2本の開いたアームと2本の閉じたアームからなる高架式十字迷路を使用して、本能的に不安な行動を評価した。迷路は床から50cm上昇し、2本の開いたアーム(それぞれ長さ50cm×幅10cm)、2つの閉じたアームと屋根のない高さ45cmの壁(それぞれ長さ50cm×幅10cm)、及び四角形中央プラットフォーム(10×10cm)を有した。各マウスを中央プラットフォームに配置し、閉じたアームの1つに向けて、50~65ルクスの光強度で5分間観察した。迷路の各部分に費やされた時間と、迷路の各部分の移動距離は、EthoVision追跡システム(Noldus Information Technology、オランダ)によって記録された。
【0139】
各グループの嫌悪期間の比率を
図7パネルAに示した。対照グループと比較して、タンニン酸(30mg/kg)グループはわずかに高い嫌悪期間の比率を示したが、タンニン酸(10mg/kg)グループでは示さなかった。各グループの嫌悪距離比を
図7パネルBに示した。タンニン酸(30mg/kg)グループは、対照グループと比較して有意に高い嫌悪距離比を示した。各グループのリスク評価の数を
図7パネルCに示す。対照グループと比較して、両方のタンニン酸グループは有意に低いリスク評価を示した(すべてp<0.05)。
【0140】
空間学習と記憶
以前に記載されているように(Barnes, J Comp Physiol Psychol, 93(1):74-104 [1979])、空間学習と記憶を調べるために、マウスをバーンズ迷路で試験した。このパラダイムは、限定されないが、統合失調症、うつ病、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、中毒障害、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脳卒中、及び脆弱X症候群などのCNS障害のマウスモデルでよく検討されている(Cook et al., 2014; Gotz and Ittner, 2008; Hendriksen and Vles, 2008; Conklin et al., 2000; Song et al., 2006; Lai et al., 2014; Vasterling et al., 2002; Hyman, 2005; Schaar et al., 2010; Santos et al., 2014; Zhu et al., 2007; Deckersbach et al., 2000を参照されたい。 試験装置は、周囲に等間隔に配置された20個の穴(直径7cm、穴の間は7cm)の高さ(床から50cm)の円形PLEXIGLAS(登録商標)プレート(直径100cm)であった。マウスをプレート上で訓練して、標的穴の後ろに隠されたエスケープボックス(25×8×6cm)を特定した。これは、モリス水迷路タスクの隠されたプラットフォームのアナログとして指定された。ターゲットホールの位置は、マウスごとに選択されたが、マウス間でランダム化された。マウスは最初、不透明なシリンダーで覆われたプレートの中央に置かれ、シリンダーは、嫌悪感のあるトーン(440Hz、85dB)とライト(100ルクス)の両方をオンにして、試験の開始から10秒後に取り外された。マウスは、周囲の視覚的手がかりにしたがって標的穴を見つけるように訓練され、連続する3日間にわたって1日あたり3回の訓練試行で嫌悪トーンから脱出した。空間記憶は「プローブ試験」によって測定された。トレーニングトライアルとプローブトライアルはすべて3分間録画された。次に、トレーニング試験のエスケープレイテンシと、プローブ試験中の異なる象限(ターゲット、左、右、及び反対)の時間の割合を分析した。プローブ試験では、
図8に示すように、タンニン酸(30mg/kg)グループはターゲットゾーンに対して有意な優先度を示したが、他のグループはそうではなかった。
【0141】
タンニン酸を様々な用量で複数回注射して処置したマウスの基本的な代謝、行動機能、及び認知行動特性を、実施例2に記載の実験で調べた。要約すると、3つの主要な所見が認められた。
【0142】
第1に、タンニン酸(30mg/kg)グループのマウスの体重が減少した。このグループのマウスは、オープンフィールドで低い自発運動も示した。オープンフィールドタスクは、新規性が誘発する自発運動と一般的な運動機能を試験するために使用された(Powell et al., Biol Psychiatry, 59(12):1198-1207 [2006]; van den Buuse, Schizophr Bull, 36(2):246-270 [2010])。理論に縛られることなく、タンニン酸の注射を繰り返し行ったマウスの運動活動の低下は、新しい環境への慣れが速いためであると考えられる。
【0143】
第2に、タンニン酸で処理したマウスの不安様行動は、高架式十字迷路で減少した。高架式十字迷路タスクは、抗不安薬又は不安誘発性化合物の推定スクリーニングのためのマウスモデルである(Rodgers et al., Braz J Med Biol Res, 30(3):289-304 [1997]; Steimer, Dialogues Clin Neurosci, 13(4):495-506 [2011])。オープンアームで過ごす時間の割合の増加は、プラス迷路での不安の低下を表す。実験では、繰り返し注射を行ったマウスは、開いたアームで過ごす時間の割合が高いだけでなく、開いたアームで移動距離の割合が高く、リスク評価が低かった。これらの結果は、タンニン酸の繰り返し注射が高架式十字迷路の不安様行動を軽減したことを裏付けている。
【0144】
第3に、タンニン酸を繰り返し注射したマウスは、バーンズ迷路で空間記憶検索の強化を示した。バーンズ迷路は、マウスの認知機能、特に空間学習と記憶を評価するタスクである(Rosenfeld et al., J Vis Exp, (84):e51194 [2014])。特定の認知機能領域の理解の進歩に基づいて、統合研究、認知症、アルツハイマー病、うつ病、強迫性障害(OCD)などを含む多くの精神疾患における認知障害の影響が強調される臨床研究が増加している(Kirova et al., Biomed Res Int, 748212 [2015]; Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014]; Okasha et al., Acta Psychiatr Scand, 101(4):281-285 [2000]; Rosenblat et al., Int J Neuropsychopharmacol, pii: pyv082 [2015]; Terry et al., Ann Neurol, 30(4):572-580 [1991])。プローブ試験(記憶回復フェーズ)では、タンニン酸(30グループ)がターゲットゾーンに対する優先度を表示した。この証拠は、高用量のタンニン酸の反復注射が正常なマウスの認知機能を高めることができることを示した。さらに、NMDA受容体シグナル伝達は、学習プロセスと記憶の統合における重要な役割と考えられる(Newcomer et al., Hippocampus, 11(5):529-542 [2001]; Rezvani, Animal Models of Cognitive Impairment, 1(4) [2006])。したがって、タンニン酸の繰り返し注射は、マウスのNMDAシグナル伝達を介して認知機能を高める可能性がある。
【0145】
したがって、この研究の結果は、タンニン酸が体重減少及び基本的な行動機能、多動性、不安、記憶、及び/又は認知行動の改善に効果的であることを示す。例えば、ADHDの子どもの大部分は併存性の学習障害を抱えており、学習と記憶への影響を考えると、タンニン酸によっても改善することができる。
【0146】
実施例3.MK-801処理されたマウスにおけるタンニン酸注射の救出及び保護効果
この実験の目的は、よく知られたNMDA受容体拮抗薬であるMK-801を使用して、CNS障害の治療におけるタンニン酸の潜在的な作用機序を評価することであった。タンニン酸とMK-801は、それぞれ行動試験(つまり、オープンフィールドとプレパルス阻害)の前に腹腔内(i.p.)注射によってマウスに投与された。
【0147】
実験計画
この実験は、タンニン酸の作用メカニズムを特徴付けるために設計された。MK-801はジゾシルピンとしても知られ、NMDA受容体の拮抗薬である(Kovacic et al., Oxid Med Cell Longev, 3(1):13-22 [2010])。これは、常同行動、無快感症、学習及び記憶障害、作業記憶障害及び感覚運動機能異常を含む、中枢神経系疾患のNMDA低機能誘発症状の多くの側面で使用される(Furuya et al., Eur J Pharmacol, 364(2-3):133-140 [1999]; McLamb et al., Pharmacol Biochem Behav, 37(1):41-45 [1990]; Vardigan et al., Pharmacol Biochem Behav, 95(2):223-229 [2010]; White et al., Pharmacol Biochem Behav, 59(3):613-617 [1998]; Wu et al., Psychopharmacology (Berl), 177(3):256-263 [2005])。これらの実験の目的は、低機能NMDA受容体のマウスに対するタンニン酸の影響を評価することであった。例示的な実験計画を
図9に示す。
【0148】
方法と材料
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3~5匹のマウス)で、動物の部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる食物と水を用意した。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行される。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0149】
薬物投与
マウスはランダムに6つのグループに割り当てられた:
グループ1:PBS+生理食塩水対照;
グループ2:PBS+MK-801;
グループ3:タンニン酸(10mg/kg)+MK-801;
グループ4:タンニン酸(15mg/kg)+MK-801;
グループ5:タンニン酸(20mg/kg)+MK-801;及び
グループ6:タンニン酸(30mg/kg)+MK-801
【0150】
グループ2~6の各マウスには、生理食塩水に溶解したMK-801(Sigma-Aldrich、米国)の急性投与(0.1mg/kg、i.p.)を行動試験の20分前に受けた。グループ3~6の各マウスには、MK-801投与の20分前にタンニン酸(Sigma-Aldrich、米国;PBSに溶解した10、15、20、又は30mg/kg、i.p.)の急性投与を受けた。
【0151】
MK-801処置されたマウスに対するタンニン酸投与の影響の検討
この研究のすべてのマウスは、2つのタスクの間に少なくとも1週間の間隔をあけて、オープンフィールドタスクとプレパルス阻害タスクで試験された。追加のマウスコホートを使用して、プレパルス阻害に対するタンニン酸の様々な供給源の効果を試験した。
【0152】
結果
MK-801処理マウスの運動に対するタンニン酸の影響対照グループ(グループ1)と比較して、MK-801グループ(グループ2)は、超運動活動を示した。
図10に示すように、タンニン酸の10、20、及び30グループ(グループ3、5、及び6)は、対照グループよりも低い歩行活動を示した。MK-801グループ(グループ2)と比較して、すべてのタンニン酸
図10に示すように、グループはより低い歩行活動を示した。
【0153】
MK-801は、限定されないが、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、パーキンソン病、レビーを伴う認知症、及び老人性認知症を含む動物モデルとして頻繁に適用される多動を生じる(Rubia et al., 2010; Sheppard and Bradshaw, 1999; Bent et al., 2014; Powell and Miyakawa, 2006; Nestler and Hyman, 2010; Bubenikova -Valesova et al., 2008; Gobira et al., 2013; Lai et al., 2014; Maio et al., 2014; Sontag et al., 2010; Ding et al., 2014; Walitza et al., 2007; Finestone et al., 1982; Golimstok et al., 2011)。
【0154】
MK-801処理マウスのプレパルス阻害に対するタンニン酸の影響-感覚運動機能
事前注意プロセスは自動的かつ迅速で、意識的な認識の外で動作する傾向があるが、意図的注意プロセスはリソースが限られており、より多くの努力を必要とし、動作がより遅くなる。前注意プロセスの一般的な尺度は、プレパルス阻害である。このパラダイムは、限定されないが、統合失調症、大うつ病性障害、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、チック障害、強迫性障害、トゥレット症候群、眼瞼けいれん、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、アルツハイマー病、アルツハイマーの軽度認知症、レビー小体型認知症、ハンチントン病、人格障害、夜尿症、及び非てんかん発作を含むいくつかのCNS障害のマウスモデルで一般的に検討されている(McAlonan et al., 2002; Braff et al., 2001; Giakoumaki et al., 2007; Ueki et al., 2006; Perriol et al., 2005; Ludewig et al., 2002; Castellanos et al., 1996; Cadenhead et al., 2000; Matsuo et al., 2017; Lai et al., 2014; McCool et al., 2003; Arguello & Gogos, 2006を参照されたい)。これは、欠陥は、ヒト症状と同じように現れるためである。
【0155】
プレパルス阻害は、SR-LAB驚異的な装置(San Diego Instruments, San Diego, CA, USA)を使用した感覚運動ゲーティング機能の指標として使用された。72dBのバックグラウンドノイズの下では、各セッションは5分の蓄積期間と、それに続く4つのブロックでの64回の試行で構成された。パルスのみ(PA)の試験は、40ms、120dBのホワイトノイズバーストであった。プレパルス(pp)+パルス試験では、40ms、120dBパルスの100ms前に、78dB(pp6)、82dB(pp10)、及び90dB(pp18)の20msホワイトノイズプレパルス刺激が提示された。非刺激(NS)試験では、バックグラウンドノイズのみが表示された。最初のブロックと最後のブロックは、それぞれ6つのPA試験で構成された。中央の2つのブロックは、PA、pp+パルス、及びNSトライアルで構成された。これらの試験は疑似ランダムに提示され、平均15秒の種族間の間隔で区切られていた(10~20秒の間で変化する)。プレパルス阻害のパーセンテージは、次の式で評価された:%PPI=100×[(PAスコア)-(pp-Pスコア)]/(PAスコア)(式中、PAスコアは、中央ブロックにおけるPA値の平均であった)。タンニン酸は、
図11及び12に示すように、
図11に示すように、用量依存的にプレパルス阻害を改善した。
【0156】
78dBのプレパルス強度では、6つのグループ間に有意差は見られなかった。82dBのプレパルス強度で、MK-801とタンニン酸(10mg/kg)のグループは、対照グループとの差を示さなかった。対照群と比較して、タンニン酸(15mg/kg)群は、わずかに高い割合のプレパルス阻害を示し、タンニン酸(20mg/kg)とタンニン酸(30mg/kg)群は、プレパルス阻害の有意に高い割合を示した。対照群と比較して90dBのプレパルス強度に関して、タンニン酸(15mg/kg)、タンニン酸(20mg/kg)、タンニン酸(30mg/kg)のグループでは、プレパルス阻害の割合が大幅に高くなっている。
図11に示すように、対照群と比較して、MK-801及びタンニン酸(10mg/kg)群ではそのような結果は観察されなかった。
【0157】
MK-801処理マウスのプレパルス阻害に対する異なるタンニン酸源の影響
この実験の目的は、プレパルス阻害に対するタンニン酸の様々な供給源の影響を評価することであった。この研究では、15mg/kgでSigma-Aldrich(供給源A)及びSpectrum、USA(供給源B)から購入したタンニン酸を使用した。供給源A及びBのタンニン酸の抗DAAO活性のIC50(μM)は、それぞれ0.291及び0.636である。
【0158】
78dB及び82dBのプレパルス強度に関して、2つの供給源のタンニン酸で処理したマウスと対照グループ又はMK-801グループとの間に有意差は観察されなかった。90dBのプレパルス強度に関して、両方のタンニン酸グループは、対照グループと比較して有意に高い割合のプレパルス阻害を示したが、MK-801グループではそのような結果は観察されなかった。
図12に示すように、供給源A(Sigma-Aldrich)タンニン酸とソースB(Spectrum、米国)タンニン酸で処理したマウスから得られた結果は類似していた。
【0159】
精神病の症状は動物モデルで観察及び測定することが困難であるが、精神病関連の行動は、精神運動興奮、興奮症状、感覚ゲーティング、MK-801などの精神模倣薬に対する感受性などを試験することができる(Arguello et al., Neuron, 52(1): 179-196 [2006]; Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014])。マウスでは、オープンフィールドタスクでの超運動活動と新規性誘発運動活動の変化(新規性への慣れの障害又は探索の増加)に関連するパラメーターを使用して、精神運動の興奮と興奮症状をそれぞれ測定できる(Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014]; Powell et al., Biol Psychiatry, 59(12):1198-1207 [2006]; Vardigan et al., Pharmacol Biochem Behav, 95(2):223-229 [2010])。本研究では、タンパク酸の投与、i.p.による又はos(p.o.)経路あたりの両方で、逆転/保護されたMK-801がオープンフィールドで運動亢進活動を誘発した。結果は、タンニン酸が精神病の症状(例えば、妄想及び幻覚)を治療するための潜在的な治療薬であることを示した。
【0160】
プレパルス阻害タスクでは、15mg/kgのタンニン酸が、MK-801で処理されたマウスの感覚運動ゲーティング機能を強化するのに十分であった。さらに、タンニン酸の様々な供給源は、プレパルス阻害課題における感覚運動機能の増強に影響を与えなかった。プレパルス阻害の障害は、マウスモデルでは統合失調症の表現型として一般的に考えられている。これは、欠損の症状がヒトでも同様に確認できるためである(Arguello et al., Neuron, 52(1):179-196 [2006]; Geyer et al., Schizophr Bull, 13(4):643-668 [1987]; Lai et al., Curr Pharm Des, 20(32):5139-5150 [2014])。プレパルス阻害の障害は、他の中枢神経疾患にも見出され、例えば、自閉症スペクトラム障害((McAlonan et al., Brain, 125(Pt 7):1594-1606 [2002])、強迫性障害、ハンチントン病、夜尿症、注意欠陥障害、トゥレット症候群、眼瞼けいれん、非てんかん発作、心的外傷後ストレス障害(Braff et al., Psychopharmacology (Berl), 156(2-3):234-258 [2001])、パニック障害、双極性障害障害、アルツハイマー病の軽度認知症、レビー小体型認知症、注意欠陥多動性障害とチック障害の合併(Giakoumaki et al., Biol Psychiatry, 62(12):1418-1422 [2007]; Ludewig et al., Depress Anxiety, 15(2):55-60 [2002]; Perriol et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry, 76(1):106-108 [2005]; Ueki et al., Psychiatry Clin Neurosci, 60(1):55-62 [2006])が挙げられる。
【0161】
そのため、タンニン酸は様々なCNS障害の有望な治療薬である。さらに、タンニン酸は自発運動とMK-801誘発性運動亢進の両方を低減し、タンニン酸がADHDとその関連疾患の症状を改善する治療薬として機能できることを示す。
【0162】
さらに、タンニン酸はそれによって治療されるマウスの体重を維持及び/又は減少させることができることが観察され、タンニン酸が体重の制御及び/又は肥満及びその障害、例えば、摂食障害、神経性食欲不振、神経性過食症、脳卒中、冠状動脈性心臓病、心臓発作、うっ血性心不全、先天性心疾患、高血圧、非アルコール性脂肪性肝炎、インスリン抵抗性、高尿酸血症、甲状腺機能低下症、変形性関節症、胆石、不妊症(性腺機能低下症と性欲亢進症)、肥満性低換気症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性閉塞性肺疾患、及び喘息の治療に有効であることを示す。
【0163】
実施例4.MK-801処理マウスに対するタンニン酸経口投与の救出及び保護効果
この実験の目的は、よく知られたNMDA受容体拮抗薬であるMK-801を使用して、CNS障害の治療におけるタンニン酸の潜在的な作用機序を評価することであった。タンニン酸とMK-801は、それぞれ行動試験(すなわち、オープンフィールド、プレパルス阻害、バーンズ迷路とショ糖選好)の前に、それぞれ経口強制飼養(p.o.)と腹腔内(i.p.)注射によってマウスに投与された。
【0164】
実験計画
この実験は、タンニン酸の作用メカニズムを特徴付けるために設計された。MK-801はジゾシルピンとしても知られ、NMDA受容体の拮抗薬である(Kovacic et al., Oxid Med Cell Longev, 3(1):13-22 [2010])。これは、常同行動、無快感症、学習及び記憶障害、作業記憶障害及び感覚運動機能異常を含む、中枢神経系疾患のNMDA低機能誘発症状の多くの側面で使用されている(Furuya et al., Eur J Pharmacol, 364(2-3):133-140 [1999]; McLamb et al., Pharmacol Biochem Behav, 37(1):41-45 [1990]; Vardigan et al., Pharmacol Biochem Behav, 95(2):223-229 [2010]; White et al., Pharmacol Biochem Behav, 59(3):613-617 [1998]; Wu et al., Psychopharmacology (Berl), 177(3):256-263 [2005])。これらの実験の目的は、低機能NMDA受容体のマウスに対するタンニン酸の影響を評価することであった。例示的な実験計画を
図13に示す。
【0165】
方法と材料
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3~5匹のマウス)で、動物の部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる食物と水を用意した。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行された。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0166】
薬物投与
マウスは無作為に5つのグループに割り当てられた:
グループ1:PBS+生理食塩水対照;
グループ2:PBS+MK-801;
グループ3:タンニン酸(10mg/kg)+MK-801;
グループ4:タンニン酸(30mg/kg)+MK-801;及び
グループ5:タンニン酸(100mg/kg)+MK-801。
【0167】
グループ2~5の各マウスは、行動試験の20分前に、IP注射により、通常の生理食塩水に溶解したMK-801(Sigma-Aldrich、米国)(オープンフィールド及びバーンズ迷路課題では0.1mg/kg、プレパルス阻害及びショ糖選好タスクでは0.2mg/kg)の急性投与を受けた。グループ3-6の各マウスは、MK-801投与の20分前に、タンニン酸(メルクミリポア、ドイツ;PBSに溶解、10、30、又は100mg/kg、経口)の急性経口投与を受けた。
【0168】
結果
MK-801投与マウスに対するタンニン酸投与の影響の検討
この研究のすべてのマウスは、オープンフィールドタスク、プレパルス阻害タスク、バーンズ迷路、ショ糖選好で、タスク間の間隔が少なくとも1週間である状態で試験された。
【0169】
MK-801処理マウスの歩行運動に対するタンニン酸経口投与の効果
この試験では、MK-801(0.1mg/kg)注射の20分前にタンニン酸を経口投与した。
図14に示すように、MK-801は運動量亢進を誘発し、タンニン酸はMK-801が誘発する運動量亢進を用量依存的に救出した。
【0170】
MK-801処理マウスのプレパルス阻害に対するタンニン酸の影響
対照群と比較して、MK-801(0.2mg/kg)は強力なプレパルス阻害障害を誘発した。78dB及び82dBのプレパルス強度では、タンニン酸(10、30、及び100mg/kg)は、MK-801によって誘発されるプレパルス阻害の障害を救出/保護しなかった。90dBのプレパルス強度の観点から、MK-801グループと比較して、タンニン酸(30mg/kg)及びタンニン酸(100mg/kg)グループは、MK-801によって誘発されたプレパルス阻害欠損に対して、大幅な救出/保護効果を示した。
図15に示すように、MK-801とタンニン酸(10mg/kg)のグループでは同様の結果は観察されなかった。
【0171】
MK-801処理マウスの空間学習と記憶に対するタンニン酸の影響
図16に示すように、タンニン酸は用量依存的にMK-801処理マウスのバーンズ迷路課題の記憶検索を改善する。
【0172】
MK-801投与マウスのうつ病様行動(無快感症)に対するタンニン酸の影響
対照群と比較して、MK-801群のマウスは、ショ糖溶液(2%)への選好を示さなかった。MK-801グループと比較して、タンニン酸30mg/kg及び100mg/kgのマウスは、
図17に示すように、MK-801によって誘発されるうつ病様行動(快感消失)に対して救出/保護効果を示した。ショ糖選好試験は、通常、限定されないが、うつ病、大うつ病性障害、無快感症、統合失調症の陰性症状、慢性の軽度で予測不可能なストレスなどのいくつかの精神疾患のマウスモデルで調べられている(Anderson et al., 2006; Carvalho et al., 2013; Briones et al., 2011; Der-Avakian and Markou, 2012; Tye et al., 2013; Edwards and Koob, 2012; Brigman et al., 2010; Koo and Duman, 2007; Nestler and Hyman, 2010; Overstreet, 2012; Papp et al., 1991; Santiago et al., 2010; Skalisz et al., 2002; Szczypka et al., 2001; Taylor et al., 2010; Vardigan et al., 2010; Willner et al., 1987; You et al., 2011)。
【0173】
実施例5.マウスにおけるタンニン酸の鎮痛効果
この実験の目的は、マウスにおけるタンニン酸の鎮痛効果を評価することであった。タンニン酸は、行動試験(すなわち、フォンフレイ試験)の前に腹腔内(i.p.)注射によってマウスに投与された。
【0174】
実験計画
別のコホートは、フォン・フライ試験(痛み感覚の典型的なアッセイ)に使用された。
図22に示すように、各マウスの足を引っ込める閾値は、薬物注射前と薬物注射の30、60、90、120分後にサンプリングされた。
【0175】
方法と材料
動物及び飼育
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり5匹のマウス)で、動物の部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる餌と水を用意した。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行された。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも8週齢)であった。
【0176】
薬物投与
マウスはランダムに2つのグループに割り当てられた:
グループ1:PBS対照;
グループ2:タンニン酸(15mg/kg)
グループ1の各マウスは、i.p.注射によるビヒクル対照としてPBSの急性投与を受けた。グループ2の各マウスは、タンニン酸の急性投与を受けた(Merck Millipore, Germany、PBSに溶解、15mg/kg、腹腔内)。
【0177】
結果
マウスにおけるタンニン酸注射の鎮痛効果
ベースライン時、グループ間に差は見られなかった。PBS対照と比較して、グループ2の閾値は、
図19に示すように、薬物注射後30分、60分、90分で有意に高かった。フォンフレイ試験は、限定されないが、痛覚過敏及び異痛症を含む神経因性疼痛、糖尿病性多発神経障害の感覚異常、慢性疼痛症候群(Park et al., 2015; Savage and Ma, 2015; Caterha et al., 2000; Nicotra et al., 2014; Keizer et al., 2007; Chakrabarty et al., 2011; Obrosova et al., 2007; Orita et al., 2011; Reeve et al., 2000参照)を含むいくつかのCNS障害のマウスモデルで一般的に検討されている。
【0178】
実施例6.異なるタンニン酸組成の比較様々なサプライヤーからの3つの市販タンニン酸の組成とD-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)に対する阻害活性を比較した。
【0179】
実験計画
3つの市販タンニン酸の組成をHPLCにより決定し、D-AAOに対する阻害活性を実施例1に例示された方法により決定した
【0180】
方法と材料
HPLC条件
-機器:Agilent 1260カラム:Atlantis T3 150×4.6mm、30μm
-移動相A:水+0.1%トリフルオロ酢酸
-移動相B:メタノール:アセトニトリル2:8(v/v)
-カラム温度:25℃
-検出器:DAD 280nm
-流量:1.5mL/分
-試料の前処理:10mg/mL
-注入量:10μL
-希釈剤:水
-勾配:
【0181】
【0182】
結果
組成:
異なる植物又は植物由来の3つのタンニン酸のHPLCクロマトグラムを
図20~22に示す。
【0183】
DAAOに対する阻害活性:
3つの市販タンニン酸のDAAOとその組成に対する阻害活性を表6に示す。
【0184】
【0185】
Rhus chinensisから抽出されたタンニン酸は、Quercus infectoriaのタンニン酸よりも6~12Gの割合がはるかに高く、2~5Gの割合がはるかに低いため、他の2つよりもDAAO阻害力が高くなる。
【0186】
実施例7.比較のための異なる植物又は植物源の没食子からのタンニン酸の抽出
タンニン酸は、示されているように異なる植物又は植物源の胡桃から抽出され、D-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)に対する阻害活性が調査された。
【0187】
方法
没食子粉砕法
適切な植物又は植物源(下記の表6を参照)からタンニン酸を生成する没食子を機械式粉砕機で粉砕し、40メッシュのふるいに通して、細かい没食子粉末を生成した。
【0188】
細かい没食子粉末抽出法
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの適切な溶媒(例えば、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル(EtOAc)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、又は1,4-ジオキサン)に入れた。このようにして形成された混合物を室温又は40℃で一晩撹拌した。得られた溶液を濾過し、濾液を真空中で濃縮して、タンニン酸を含む組成物を生成した。
【0189】
結果
DAAOに対する阻害活性:
上記の方法に従った、DAAOに対する様々な植物又は植物源の没食子から抽出されたタンニン酸の阻害活性を表7に示す。様々な直径の没食子とそのDAAO IC
50の比較を
図23に示す。
【0190】
【0191】
表6及び
図23に示されているように、Rhus chinensis又はRhus potaniniiのいずれの没食子も、Quercus infectoriaのものよりも、DAAOに対するIC
50が低くなっている(強い阻害)。さらに、Rhus chinensis(直径3~4cm)及びRhus potaninii(直径4~5cm)からの小さな没食子は、同じ植物又は植物源からの大きい(直径6~7cm)没食子と比較して、IC
50が低くなる。
【0192】
実施例8.異なる植物又は植物源の没食子から抽出されたタンニン酸の濃縮法
本明細書に記載されている各植物又は植物源の胡桃から抽出されたタンニン酸は、下記のように濃縮された。DAAOに対するそれらの阻害活性を調査した。
【0193】
濃縮法1
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はエタノール)に入れ、このようにして形成された混合物をRT又は20~60℃のいずれかで12時間撹拌した。得られた溶液を濾過し、濾液を真空中で濃縮して、タンニン酸を含む組成物を形成した。組成物を50.0mLの50又は30%メチルエチルケトン/ヘキサン溶液(ヘキサン中の50%又は30%メチルエチルケトン)と混合した。このようにして形成された混合物をさらに室温で12時間撹拌し、得られた2つの有機層を分離した。油性の層(下層)を真空で濃縮して、粗固体を生成した。固形物を適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)50.0mLに溶解し、得られた溶液を木炭(1.6g)と混合した。得られた混合物を室温で12時間撹拌し、CaSO4又はMgSO4(2.5g)を混合物に加えた。このようにして形成された混合物をさらに室温で30分間撹拌し、セライトのベッドで濾過し、適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL×2)で洗浄し、真空で濃縮した。得られた固体(タンニン酸を含む)をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解し、次にこのように形成された溶液を撹拌し、CH2Cl2(72.0mL)と滴下混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸固体を生成した。
【0194】
濃縮法2
細かい粉末状の粉末(20.0g)を200.0mLの適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール)に入れ、室温で12時間撹拌した。このようにして形成された溶液を濾過し、収集した濾液を200.0mLのヘキサンと混合した。混合物を室温で12時間撹拌し、得られた2つの有機層を分離した。油層(下層)を真空中で濃縮し、こうして得られた固体を50.0mLの適切な溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノールなど)に溶解した。得られた溶液を木炭(1.6g)と混合し、さらに室温で12時間撹拌した。このようにして得られた混合物をCaSO4又はMgSO4(2.5g)とさらに混合し、室温で30分間撹拌した。混合物をセライトのベッドを通して濾過し、(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノールなど)(100mL×2)で洗浄し、真空で濃縮した。このようにして得られた粗残留物をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解し、このように形成された溶液を撹拌し、CH2Cl2(72.0mL)とゆっくりと混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0195】
濃縮法3
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)に入れ、RTで12時間撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を回収した。次に濾液をヘキサン200.0mLに加えた。このようにして形成された混合物を室温で12時間撹拌し、得られた2つの有機層を分離した。油性層(下層)を収集し、40.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)及び木炭(1.6g)と混合し、得られた混合物を室温で12時間撹拌した。混合物をCaSO4又はMgSO4(2.5g)とさらに混合し、RTで30分間撹拌し、セライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)で洗浄した(100mLx2)。得られた濾液を減圧濃縮し、得られた固形物をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解した。このようにして形成された溶液を撹拌し、CH2Cl2(72.0mL)と滴下して混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、真空下、40℃で2時間乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を形成した。
【0196】
濃縮法4
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)に入れて混合物を形成し、これを室温で12時間撹拌した。混合物を木炭(1.6g)と混合し、RTで12時間撹拌した。得られた混合物をさらにCaSO4又はMgSO4(2.5g)と混合し、RTで30分間撹拌し、セライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)で洗浄した(100mL×2)。濾液を真空で濃縮し、得られた残渣をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解し、こうして形成された溶液を撹拌し、CH2Cl2(72.0mL)とゆっくりと混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0197】
濃縮法5
細かい没食子粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)に入れ、このようにして形成された混合物を室温で12時間撹拌した。混合物を木炭(1.6g)と混合し、室温で12時間撹拌した。混合物をさらにCaSO4又はMgSO4(2.5g)と混合し、RTで30分間撹拌した。混合物をセライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL×2)で洗浄した。濾液を約10~15mLに濃縮し、得られた溶液をCH2Cl2(60~90mL)と滴下して混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、真空下、40℃で2時間乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を形成した。
【0198】
濃縮法6
細かい粉末状の粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)に入れ、形成された溶液を室温で12時間撹拌してから、ろ過した。濾液を集め、木炭(1.6g)と混合し、室温で12時間撹拌した。混合物をさらにCaSO4又はMgSO4(2.5g)と混合し、RTで30分間撹拌した。次いで、得られた混合物をベッドセライトで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL×2)で洗浄し、合わせた濾液を真空蒸発により濃縮した。このようにして形成された粗固体をアセトン又は酢酸エチル(12.0mL)に溶解し、溶液を撹拌し、CH2Cl2(72.0mL)とゆっくりと混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、真空下、40℃で2時間乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を得た。
【0199】
濃縮法7
細かい没食子粉末(20.0g)を50.0mLの50%又は30%メチルエチルケトン/ヘキサンに入れ、室温で12時間撹拌した。得られた混合物を濾過し、固体を収集した。次に、固形物を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)と混合した。このようにして形成された混合物を室温で12時間撹拌し、濾過し、濾液を収集した。次に濾液を木炭(1.6g)と混合し、室温で12時間撹拌した。得られた混合物をCaSO4又はMgSO4(2.5g)とさらに混合し、RTで30分間撹拌し、セライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)で洗浄した(100mL×2)、そして濾液を真空蒸発により濃縮した。得られた残渣をアセトン又は酢酸エチル(12mL)に溶解し、撹拌後、CH2Cl2(72.0mL)を滴下した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0200】
濃縮法8
細かい没食子粉末(20.0g)を50%又は30%メチルエチルケトン/ヘキサン50mLに入れ、室温で12時間撹拌した。溶液を濾過し、収集した固体を溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)200.0mLと混合した。混合物を室温で12時間撹拌し、濾過し、収集した濾液を木炭(1.6g)と混合し、室温で12時間撹拌した。得られた混合物をさらにCaSO4又はMgSO4(2.5g)と混合し、室温で30分間撹拌した。次に、混合物をセライトのベッドで濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL帰る2)で洗浄し、濾液を約10~15mLまで濃縮した。残留溶液をCH2Cl2(60~90mL)とゆっくりと混合し、このようにして形成された固体を濾過により収集し、40℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0201】
濃縮法9
細かい粉末状の粉末(20.0g)を200.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はエタノール)に入れ、20~60℃で12時間撹拌した。溶液を濾過し、集めた濾液をヘキサン200.0mLに入れた。このようにして形成された混合物を室温で12時間撹拌し、得られた2つの有機層を分離した。油層(下層)を収集し、40.0mLの溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)と混合し、このようにして形成された溶液を木炭(1.6g)と混合し、RTで12時間撹拌した。混合物をさらにCaSO4又はMgSO4(2.5g)と混合し、RTで30分間撹拌した。次に、混合物をセライトのベッドを通して濾過し、溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はエタノール)(100mL×2)で洗浄し、濾液を真空下で濃縮した。このようにして形成された残留物をアセトン又は酢酸エチル(12mL)に溶解し、次に溶液を撹拌し、CH2Cl2(72.0mL)と滴下混合した。このようにして形成された固体を濾過により収集し、40~45℃で2時間真空乾燥して、濃縮タンニン酸組成物を生成した。
【0202】
濃縮法10
250mLの水に溶解したタンニン固体(100g)の商業供給源からの溶液、又は没食子の粉末又は小さなチップからの粗抽出物を、すべての固体が溶解するまでRTで撹拌し、その後、溶液に3.0gのK
2CO
3は50mLの水に溶解した。次に混合物を溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど)600mLでRTで1時間抽出し、この有機層を分離した。有機層にさらに20gのMgSO
4(複数可)を加え、室温で0.5時間撹拌した。次に、混合物をセライトのベッド(20g)で濾過し、溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、100mL)で洗浄し、濾液を真空で濃縮した。得られた残留物を溶媒(アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、110mL)で希釈し、次に660mlの別の溶媒をRTで得られた溶液と混合し、得られた溶液を、添加が完了するまで撹拌した。混合物を室温で12~18時間撹拌した。形成された固体を濾過により収集し、真空下、45℃で12時間乾燥した。得られたタンニン酸の組成を、HPLC-MS(
図26)及び
1H-NMRで分析した。濃縮法#10のタンニン酸の組成のHPLC-MSクロマトグラム(
図26)は、それぞれ15.99%と6.46%の非常に多量を含むUPS標準とWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationと比較して、0.35%未満の非タンニン酸不純物を含む。濃縮法#10のタンニン酸の組成の
1H-NMRスペクトルは、ガロリル及びグルコース部分のピークのみを示すが、USPスタンダード及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationのピークは、ガロイル及びグルコース部分以外のいくつかのピークを示す。濃縮法#10、USP標準、及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationからのタンニン酸の組成のさらなるHPLC-MS分析を表8に示す。濃縮法#10、USP。標準及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationからのタンニン酸の組成のさらに
1H-NMR分析を表9に示す。このように、濃縮法#10の後、タンニン酸の組成は、USP標準及びWenzhou Ouhai Fine Chemicals Corporationのタンニン酸よりもはるかに高い純度を示すことが実証された。
【0203】
【0204】
【0205】
スラリー化法
上記のいずれかの濃縮法で得られた固形物を、2000mLの溶媒(ヘプタン、CH2Cl2、又はヘプタン/CH2Cl2(1:9から9:1)など)で35~60℃にて8~16時間スラリー化し、次に、形成された固体を濾過し、真空中で60~70℃にて8時間蒸発させた。次に、固体を溶媒(ヘプタン、CH2Cl2又はヘプタン/CH2Cl2(1:9から9:1)など)2000mLで35~60℃にて8~16時間スラリー化した後、60~70℃で8時間、固体を濾過し、真空で蒸発させた。最後に、固体をさらに2000mLの溶媒(ヘプタン、CH2Cl2又はヘプタン/CH2Cl2(1:9から9:1)など)で35~60℃にて8~16時間スラリー化し、生成した固体をろ過して、60~70℃にて8時間真空中で蒸発させ、タンニン酸の固体を得た(収率:80%)。
【0206】
濃縮法11-没食子の抽出
没食子を完全に粉砕して細かい粉末を形成するか、大まかに小さなチップを最初に形成した。60~100mLの溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、エタノール、又は水など)中の没食子粉末又は小さなチップ(10.0g)の溶液を35~60℃で3時間、次に2番目の10.0gの没食子粉末又は小さなチップのバッチを溶液に加え、35~60℃で3時間撹拌し続けた。10.0gの没食子粉末又は小さなチップの3番目のバッチを溶液に追加し、35~60℃で8~14時間撹拌した。撹拌期間が終了した後、溶液を濾過し、収集した濾液を真空で濃縮して、粗タンニン酸固体を得た(収率:54~60%)。
【0207】
このマルチバッチのアプローチにより、粗タンニン酸抽出物の収率が大幅に向上することが判明した。比較結果については、以下の表10を参照されたい。
【0208】
【0209】
以下の表11に示すように、没食子粉末と没食子スモールチップを使用すると、同様のタンニン酸抽出効率が得られることも判明した。
【0210】
【0211】
濃縮法11-タンニン酸のさらなる濃縮
上記の粗タンニン酸固体(80g)を700mLの水に溶解した溶液を、すべての固体が溶解するまで室温で撹拌し、その後、溶液に、2.4gのK2CO3を100mLの水に溶解した溶液を加えた。次に混合物を1600mLの溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンを含む)でRTにて1時間抽出し、この有機層を分離した。有機層にさらに16gのMgSO4(複数可)を加え、さらに室温で0.5時間撹拌した。次に、混合物をセライトのベッドを通して濾過し(16g)、溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、80mL)で洗浄し、濾液を真空で濃縮した。残留物を溶媒(アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトン、240mLを含む)で希釈した後、その溶液にヘキサン(720mL)を加え、室温で2時間撹拌した後、この有機層を分離された。得られた油性残留物を溶媒(アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、240mL)で希釈した後、その溶液にヘキサン(720mL)を加え、RTで2時間撹拌し、次にこの有機層を分離した。得られた油性残留物を溶媒(アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、又はメチルエチルケトンなど、100mL)で希釈し、次に別の溶媒660mlを室温で得られた溶液と混合し、添加が完了するまで撹拌した。混合物をさらに室温で12~18時間撹拌した。形成された固体を濾過により収集し、真空下、45℃で6時間乾燥した。固体は、1600mLの溶媒(ヘプタン、CH2Cl2又はヘプタン/CH2Cl2(1:9から9:1)など)を用いて35~60℃で16時間、スラリー化し、その後、固体をろ過し、60~70℃で8時間、真空中で蒸発させた。次に、固体を1600mLの溶媒(ヘプタン、CH2Cl2又はヘプタン/CH2Cl2(1:9~9:1)など)で35~60℃で8~16時間スラリー化し、固体をろ過して、60~70℃で8時間真空で蒸発させた。固体をさらに1600mLの溶媒(ヘプタン、CH2Cl2又はヘプタン/CH2Cl2(1:9から9:1)を含む)で35~60℃で8~16時間スラリー化し、固体をろ過して真空で60~70℃で8時間蒸発させ、望ましいタンニン酸を得た(収率:62%)。
【0212】
以下の表12は、HPLCにより決定された、本明細書に記載の濃縮法11により調製されたタンニン酸組成物中のタンニン酸の含有量を示す。この方法で調製されたタンニン酸組成物は、小さなタンニン酸(例えば、4未満のガロイル部分を有する)を実質的に含まず、かなりの部分が大きなタンニン酸である(例えば、8を超えるガロイル部分を有する)。本明細書に開示されるように、このようなタンニン酸組成物は、優れた治療効果が期待される。
【0213】
【0214】
【0215】
結果
DAAOに対する阻害活性:
DAAOに対する、様々な植物又は植物源の没食子から抽出された、様々に濃縮されたタンニン酸の阻害活性を表13及び14に示す。
【0216】
【0217】
表13に示すように、本明細書に記載されているいずれかの調製方法によるすべての濃縮タンニン酸は、濃縮されていないタンニン酸(直接抽出のみであり、1~5ガロイル部分を有するタンニン酸の除去なし、木炭及びCaSO4又はMgSO4による処理なし、ならびに/又は第2の溶媒及び塩化メチレンによるさらなる処理なし)よりも低いIC50値(より強い阻害を示す)を示した。さらに、濃縮法2及び3では、方法1及び7と比較して、DAAOに対するIC50の活性が最も低い濃縮タンニン酸が得られ、濃縮法3では、濃縮法2よりもIC50値が低い濃縮タンニン酸が得られた。さらに示されるように、EtOHとそれに続く濃縮法1による抽出からのタンニン酸は、同じ濃縮法と続くMEKによるものよりもわずかに弱い阻害を示した。
【0218】
【0219】
表14に示すように、40℃の抽出温度での酢酸エチル(EtOAc)による抽出と、それに続く濃縮法3により、DAAOに対して、それぞれ、室温でのMEKによる抽出、40℃でのMEKによる抽出、及び40℃でのMEKに続く濃縮法3による抽出よりもはるかに低いIC50の濃縮タンニン酸が得られた。さらに、表13と表14に示すように、直径6cm以下のRhus chinensisの没食子は、6cmより大きいものよりも低いIC50値を示した。
【0220】
【0221】
表15に示すように、濃縮法10のタンニン酸は、上記で示したように、最低量1~4G、最高量5~12Gの組成のDAAO IC50が最低であった。
【0222】
残留溶媒:
1H-NMRで測定された残留溶媒を表16に示す。
【0223】
【0224】
上記のように、3回のスラリー化後、残留溶媒、すなわちアセトンとジクロロメタンがさらに減少した。
【0225】
実施例9.MK-801処理されたマウスにおける濃縮#10タンニン酸の救出及び保護効果
この実験の目的は、よく知られているNMDA受容体拮抗薬であるMK-801モデルを使用して、CNS障害の治療における濃縮#10タンニン酸を評価することであった。タンニン酸とMK-801は、それぞれ行動試験(つまり、オープンフィールドとプレパルス阻害)の前に、それぞれ経口強制飼養(p.o.)と腹腔内(i.p.)注射によってマウスに投与された。
【0226】
方法と材料
動物及び飼育条件
C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3~5匹のマウス)で、動物の部屋のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、USA)で自由に利用できる食物と水を用意した。コロニーは12/12時間の明/暗サイクルで22±2℃の温度で維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行される。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0227】
歩行試験のための薬物投与
マウスは無作為に5つのグループに割り当てられた:
グループ1:ddH2O+生理食塩水対照;
グループ2:ddH2O+MK-801;
グループ3:Merck TA(50mg/kg)+MK-801;
グループ4:CCBiotech TA(50mg/kg)+MK-801;及び
グループ5:濃縮#10(50mg/kg)+MK-801。
【0228】
グループ2~5の各マウスには、生理食塩水に溶解した0.2mg/kgのMK-801(Sigma-Aldrich、米国)の急性投与を、運動活動試験の20分前にi.p.注射で受けた。グループ3-6の各マウスは、MK-801投与20分前にp.o.により、ddH2Oに溶解した50mg/kgのタンニン酸の急性経口投与を受けた。Merch Millipore(Merck TA)及びWufeng Chicheng Biotech(CCBiotech TA)から購入したタンニン酸、及び濃縮法10(濃縮#10)から50mg/kgのタンニン酸をこの研究で使用した。
【0229】
プレパルス阻害試験のための薬物投与
マウスは無作為に4つのグループに割り当てられた:
グループ1:ddH2O+生理食塩水対照;
グループ2:ddH2O+MK-801;
グループ3:濃縮#10(50mg/kg)+MK-801;及び
グループ4:濃縮#10(200mg/kg)+MK-801。
【0230】
グループ2~4の各マウスは、プレパルスインヒビチン試験の20分前にi.p.注射により、生理食塩水に溶解した0.3mg/kgMK-801(Sigma-Aldrich、米国)の急性投与を受けた。グループ3~4の各マウスは、MK-801投与の20分前にp.o.により、ddH2Oに溶解した濃縮#10タンニン酸50又は200mg/kgの急性経口投与を受けた。
【0231】
結果
濃縮#10タンニン酸がMK-801処理マウスの運動活動に及ぼす影響
オープンフィールドタスクは、新規性によって引き起こされる探索行動とマウスとラットの両方の一般的な活動の一般的な測定である。この研究では、マウスをPLEXIGLAS(登録商標)ケージ(37.5cm×21.5cm×18cm)に50~65ルクスの光度で配置した。それらの自発的な自発運動は、SMARTビデオ追跡システム(Panlab、Harvard Apparatus)を使用して30分間測定された。各マウスの移動距離を運動活動の指標として測定した。
【0232】
この実験の目的は、運動活動に対するタンニン酸の様々な供給源の影響を評価することであった。対照グループ(グループ1)と比較して、MK-801グループ(グループ2)は、超運動活動を示した。MK-801グループ(グループ2)と比較すると、Wufeng Chicheng Biotech(CCBiotech TA;グループ4)と濃縮法10(濃縮#10;グループ5)のグループのタンニン酸はどちらも有意に低い運動活動を示したが、タンニン酸メルクミリポア(メルクTA;グループ3)からではなかった。さらに、
図24に示すように、濃縮#10(グループ5)は、CCBiotech TA(グループ4)よりも低い歩行活動を示した。
【0233】
濃縮#10タンニン酸がMK-801処理マウスのプレパルス阻害に及ぼす影響
プレパルス阻害は、SR-LAB驚異的な装置(San Diego Instruments、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用した感覚運動ゲーティング機能の指標として使用された。65dBのバックグラウンドノイズの下では、各セッションは5分の蓄積期間と、それに続く4つのブロックでの64回の試行で構成された。パルスのみ(PA)の試行は、40ms、120dBのホワイトノイズバーストであった。プレパルス(pp)+パルスの試行では、71ms(pp6)、75dB(pp10)、及び83dB(pp18)の20msホワイトノイズプレパルス刺激が、40ms 120 dBパルスの100ms前に提示された。非刺激(NS)試験では、バックグラウンドノイズのみが表示された。最初のブロックと最後のブロックは、それぞれ6つのPAトライアルで構成されていた。中央の2つのブロックは、PA、pp+パルス、及びNSトライアルで構成された。これらの試験は疑似ランダムに提示され、平均15秒の部族間間隔で区切られていた(10~20秒の間で変化する)。プレパルス阻害のパーセンテージは、次の式で評価された。%PPI=100×[(PAスコア)-(pp-Pスコア)]/(PAスコア)。PAスコアは中央ブロックのPA値の平均であった。
【0234】
対照群と比較して、MK-801(0.3mg/kg)は、すべてのプレパルス強度でロバストなプレパルス阻害障害を誘発した。71dBのプレパルス強度で、タンニン酸(50及び200mg/kg)は、MK-801によって誘発されるプレパルス阻害の障害を救済/保護しなかった。75dB及び83dBのプレパルス強度の観点から、MK-801グループと比較して、タンニン酸(50mg/kg)及びタンニン酸(200mg/kg)グループはMK-801誘発性のプレパルス阻害欠損に対して有意な救出/保護効果を示した。50mg/kg及び200mg/kgの濃縮#10タンニン酸で処理したマウスから得られた結果は、
図25に示すように類似していた。これは、50mg/kgの比較的低用量での濃縮#10タンニン酸の天井効果を示す。
【0235】
実施例10.様々な供給源からのタンニン酸の急性毒性研究
この実施例の目的は、副作用を評価し、7日間の観察期間後、Sigma(Sigmaタンニン酸)から購入したタンニン酸と濃縮法10(濃縮#10)から購入したタンニン酸の最大耐量(MTD)を、強制経口投与(p.o.)後に決定することであった。
【0236】
方法及び材料
動物及び飼育条件C57BL/6J雄マウスは、グループ飼育(ケージあたり3~5匹のマウス)で、動物室のポリスルホン換気ケージ(代替設計、AR、米国)で自由に利用できる食物と水を使用した。コロニーは、22±2℃の温度で12/12時間の明/暗サイクルで維持され、すべての行動研究は暗サイクル中に実行される。この研究で使用されたすべての動物は成体マウス(少なくとも2.5ヶ月齢)であった。
【0237】
タンニン酸は、Sigma(Sigmaタンニン酸)から購入したか、濃縮法10(濃縮#10)から作成した。Sigmaタンニン酸の場合、成体マウスは4つのグループにランダムに割り当てられた:(1)対照、(2)タンニン酸(500mg/kg)、(3)タンニン酸(750mg/kg)、及び(4)タンニン酸(1000mg/kg)。それぞれ、ベヒクル対照(ddH2O)、タンニン酸500mg/kg、タンニン酸750mg/kg、タンニン酸1000mg/kgで処理された。濃縮#10タンニン酸の場合、成体マウスは5つのグループにランダムに割り当てられた:(1)対照、(2)タンニン酸(200mg/kg)、(3)タンニン酸(500mg/kg)、(4)タンニン酸(1000mg/kg)、(5)タンニン酸(2000mg/kg)。それぞれ、ベヒクル対照(ddH2O)、タンニン酸200mg/kg、タンニン酸500mg/kgで、1000mg/kgのタンニン酸及び2000mg/kgのタンニン酸で処理された。すべてのマウスに、ベヒクル対照又はタンニン酸を強制経口投与(p.o.)で投与した。動物は、死亡率、罹患率、呼吸、分泌物、糞便、及び水と食物摂取の能力の兆候について、研究期間中、1日2回(午前と午後)又は必要に応じて頻繁に観察される。各マウスの体重は、身体の発達と代謝の指標として機能し、研究全体を通じて毎日記録された。
【0238】
結果
Sigmaタンニン酸試験では、すべてのマウスに1000mg/kgのSigmaタンニン酸が投与され、投与後35分で不活動、胸骨横臥、呼吸数の変化が見られ、2日目には瀕死状態になった。試験中、症状は元に戻らなかった。3分の1のマウスは500mg/kg又は750mg/kgを投与され、投与後35分間で胸骨横臥を示した。研究中、全マウスに500mg/kg又は750mg/kgが生存した。Sigmaタンニン酸の最大耐量は750mg/kgであった。濃縮#10タンニン酸研究では、2000mg/kgのタンニン酸を投与されたすべてのマウスが、活動の低下、反り返り、投与直後の激しい呼吸を示し、10分で回復した。悪影響は観察されず、肉眼的剖検ではすべてのグループで有意な所見は得られなかった。濃縮#10タンニン酸の最大耐量は少なくとも2000mg/kgであった。結論として、濃縮#10タンニン酸はSigmaタンニン酸よりもはるかに高い最大耐量を示し、CNS及び肥満障害の治療として使用する方が安全である。
【0239】
他の実施形態
本明細書に開示されているすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。この明細書に開示されている各機能は、同じ、同等の、又は同様の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示された各特徴は、同等又は類似の特徴の一般的な一連の例にすぎない。
【0240】
上記の説明から、当業者は本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神及び範囲から逸脱することなく、本開示に様々な変更及び修正を加えて、様々な使用法及び条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内である。
【0241】
同等物
本明細書ではいくつかの発明の実施形態を説明及び図示してきたが、当業者は、機能を実行し、及び/又は結果及び/又は説明した1つ又は複数の利点を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定する。本明細書では、そのような変形及び/又は修正のそれぞれは、本明細書で説明される本発明の実施形態の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメーター、寸法、材料、及び構成が例示であることを意味し、本発明の教示が使用される、実際のパラメーター、寸法、材料、及び/又は構成が特定の用途又は複数のアプリケーションに依存することを容易に理解する。当業者は、本明細書に記載される特定の発明の実施形態に対する多くの同等物を認識し、又は通常の実験のみを使用して確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に説明及び請求された以外の方法で実施できることを理解されたい。本開示の発明性のある実施形態は、本明細書に記載されている個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。さらに、2つ以上のそのような機能、システム、記事、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、そのような機能、システム、記事、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲にある。
【0242】
本明細書で定義及び使用されるすべての定義は、辞書定義、参照により組み込まれる文書内の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を制御すると理解されるべきである。
【0243】
本明細書に開示されているすべての参考文献、特許、及び特許出願は、それぞれが引用されている主題に関して参照により組み込まれており、場合によっては文書全体を網羅する場合がある。
【0244】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0245】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素の「どちらか又は両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味すると理解されたい。「及び/又は」でリストされた複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ又は複数」として解釈する必要がある。「及び/又は」節によって具体的に識別された要素以外の他の要素が、具体的に識別された要素に関連するかどうかに関係なく、任意に存在する場合がある。したがって、非限定的な例として、「含む」などのオープンエンドの言語と組み合わせて使用される場合、「A及び/又はB」への言及は、一実施形態では、Aのみ(任意にB);別の実施形態では、Bのみに(任意にA以外の要素を含む)を指し得る。さらに別の実施形態では、A及びBの両方に(任意に他の要素を含む)等である。
【0246】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「又は」は、上記で定義された「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「又は」又は「及び/又は」は包括的であると解釈される必要があり、すなわち、要素の数又はリストの少なくとも1つを含むが、複数を含むものであり、場合により、リストされていない追加のアイテムを含む。「1つのみ」又は「1つだけ」などの明確に反対の用語が示されている場合、又は特許請求の範囲で使用されている場合、「からなる」は、要素の数又はリストの1つだけ含めることを指す。一般に、本明細書で使用される「又は」という用語は、排他性の用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが、両方でない」)を示すものとして解釈されるだけであり、例えば、「いずれか」、「その1つの」、「そのただ1つの」、又は「正確にその1つの」が挙げられる。特許請求の範囲で使用される場合、「から本質的になる」とは、特許法の分野において使用される通常の意味を有するものである。
【0247】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、1つ又は複数の要素のリストに関連する語句「少なくとも1つ」は、要素のリストにおける任意の1つ又は複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に列挙されているすべての要素の少なくとも1つを含むとは限らず、要素のリストにおける要素の組み合わせを除外するものではない。また、この定義により、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素のリスト内で具体的に識別された要素以外の要素が、具体的に識別された要素に関連するかどうかに関係なく、任意で存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は、同等に、「A又はBの少なくとも1つ」又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意に複数のAを含み、Bが存在しない(任意にB以外の要素を含む);別の実施形態では、少なくとも1つの、任意で複数のBを含み、Aは存在しない(任意でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に複数を含むA、及び少なくとも1つ、任意に複数を含むB(及び任意に他の要素を含む)等である。
【0248】
反対に明確に示されていない限り、複数の工程又は行為を含む本明細書で請求される方法では、方法の工程又は行為の順序は、必ずしも、方法の工程又は行為が列挙されている順序に限定されないことも理解されたい。
工程(iii)が、(a)第1のタンニン酸抽出物を金属炭酸塩と20~60℃で接触させて、混合物を形成すること、(b)混合物を酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はそれらの組み合わせを用いて20~50℃で抽出して、有機溶液を生成し、ならびに(c)有機溶液を木炭及び金属硫酸塩とともに20~60℃で同時に又は順次インキュベートすることによって行われる、請求項1に記載の方法。
工程(ii)が、(a)組成物の第1のバッチを第1の溶媒とともにインキュベートすること、(b)組成物の第2のバッチを(a)で形成された混合物とともにインキュベートすること;ならびに(c)組成物の第3のバッチを(b)で形成された混合物とともにインキュベートして、第1のタンニン酸抽出物を生成することによって行われる、請求項1に記載の方法。
除去工程が、(a)第1のタンニン酸組成物又は第2のタンニン酸組成物を極性溶媒と混合して、こうして形成された有機層を回収することを含むプロセスによって行われる、請求項4に記載の方法。
極性溶媒が、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、1,4-ジオキサン、又はテトラヒドロフランである、請求項5に記載の方法。
除去工程のプロセスが、(b)有機層をアルキル溶媒、塩素化溶媒、又はそれらの混合物と10~70℃で接触させること、ならびにこうして形成された底部の油性層を回収することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
(a)第2のタンニン酸組成物をアルキル溶媒、塩素化溶媒、又はそれらの組み合わせと混合すること、及び(b)このように形成された混合物を撹拌して溶媒残留物を10~70℃で除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
工程(i)のタンニン酸を含有する組成物が、植物の没食子から得られる没食子粉末又は没食子チップであり、ここで、植物が、Rhus chinensis、Rhus javanica、Rhus semialata、Rhus coriaria、Rhus potaninii、Rhus punjabensis var.sinica(Diels)Rehder & E.H.Wilson、Camellia sinensis、Berry、Bixa orellana、Vitis vinifera、Punica granatum、Quercus infectoria、Quercus cerris、Acacia mearnsii、Pseudotsuga menziesii、Caesalpinia spinosa、Fagus hayata Palib.ex Hayata、及びMachilus thunbergii Sieb.&Zuccからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
工程(iii)における金属炭酸塩が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウムであり、工程(iii)における金属硫酸塩が、硫酸カルシウム又は硫酸マグネシウムである、請求項1に記載の方法。
工程(ii)の第1の溶媒が、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ヘプタン、ヘキサン、水、又はそれらの組み合わせを含み、工程(v)における第2の溶媒が、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロパノール、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
工程(iv)で生成されたタンニン酸組成物を、このように形成された混合物を含む酢酸エチル、酢酸メチル、及び/又はメチルエチルケトン中に、所望により室温で1~2時間配置し、インキュベーション工程後に有機層を回収することをさらに含む、請求項16又は17に記載の方法。
濃縮されたタンニン酸混合物を、所望によりセライトのベッドを通して濾過し、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、エタノール、又はそれらの組み合わせをからなる群から選択される溶媒で洗浄し、ならびにこうして形成された溶液を濃縮してタンニン酸組成物を生成することをさらに含む、請求項20に記載の方法。