(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089898
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】可撓部材
(51)【国際特許分類】
F16F 1/32 20060101AFI20220609BHJP
B25J 18/06 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
F16F1/32
B25J18/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064044
(22)【出願日】2022-04-07
(62)【分割の表示】P 2019075949の分割
【原出願日】2019-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】黒川 真平
(72)【発明者】
【氏名】川井 洋介
(57)【要約】
【課題】小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れたものとすることが可能な可撓部材を提供する。
【解決手段】閉環状の複数のウェーブワッシャー23が軸方向に積層されると共に隣接間を複数の接合部21によって接合され、ウェーブワッシャー23の弾性変形により軸方向に対して屈曲可能な本体部19を備え、複数の接合部21は、それぞれ一対の線状の溶接部25a,25bを備え、一方の溶接部25aがウェーブワッシャー23の中心から径方向に延びる第1線L1に対して交差する方向に延びる第2線L2上に形成され、他方の溶接部25bが第2線L2に対して交差する方向に延びる第3線L3上に形成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉環状の複数のウェーブワッシャーが軸方向に積層されると共に隣接間を複数の接合部によって接合され前記ウェーブワッシャーの弾性変形により前記軸方向に対して屈曲可能な本体部を備え、
前記複数の接合部は、それぞれ一対の線状の溶接部を備え、
前記一対の溶接部は、一方の溶接部が前記ウェーブワッシャーの中心から放射方向に延びる第1線に対して交差する方向に延びる第2線上に形成され、他方の溶接部が前記第2線に対して交差する方向に延びる第3線上に形成された、
可撓部材。
【請求項2】
請求項1の可撓部材であって、
前記一対の溶接部は、それぞれ連続した線状に形成された、
可撓部材。
【請求項3】
請求項2の可撓部材であって、
前記一対の溶接部は、前記ウェーブワッシャーの内周側で相互に重なるV字状である、
可撓部材。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項の可撓部材であって、
前記複数のウェーブワッシャーは、それぞれ周方向に複数の山部及び該山部間の谷部を備え、隣接するウェーブワッシャーの山部と谷部とが当接し該山部と谷部との当接部分がそれぞれ前記接合部により接合された、
可撓部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット等の関節機能部に供される可撓部材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種分野のロボット、マニピュレーター、或はアクチュエータ等には、可撓部材を用いることで屈曲動作を可能にした関節機能部を有するものがある。このような関節機能部に用いられる可撓部材としては、特許文献1にコイルスプリングが開示されている。
【0003】
コイルスプリングは、関節機能部の屈曲動作に対して高い自由度を確保できるものの、耐荷重及び屈曲性を確保する必要性から小型化に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性を確保することに限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、閉環状の複数のウェーブワッシャーが軸方向に積層されると共に隣接間を複数の接合部によって接合され前記ウェーブワッシャーの弾性変形により前記軸方向に対して屈曲可能な本体部を備え、前記複数の接合部は、それぞれ一対の線状の溶接部を有し、前記一対の溶接部は、一方の溶接部が前記ウェーブワッシャーの中心から放射方向に延びる第1線に対して交差する方向に延びる第2線上に形成され、他方の溶接部が前記第2線に対して交差する方向に延びる第3線上に形成された可撓部材を最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、複数のウェーブワッシャーの変形により屈曲できるようにしたため、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れた可撓部材を得ることが可能となる。
【0008】
しかも、本発明では、接合部周辺に作用する応力の偏りを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】可撓部材を用いたマニピュレーターを示す斜視図である(実施例1)。
【
図2】
図1のマニピュレーターを示す正面図である(実施例1)。
【
図3】
図1のマニピュレーターの断面図である(実施例1)。
【
図4】
図1のマニピュレーターの一部を省略し、関節機能部を主に示す斜視図である(実施例1)。
【
図5】
図4の関節機能部を主に示す側面図である(実施例1)。
【
図7】
図4のVII-VII線における、関節機能部の可撓部材を示す断面図であり、(A)が平常時、(B)が屈曲時を示す(実施例1)。
【
図8】接合部を有するウェーブワッシャーを示す斜視図である(実施例1)。
【
図9】
図8の接合部を拡大して示す平面図である(実施例1)。
【
図10】接合部の溶接部の溶接スポットを概念的に示す平面図である(実施例1)。
【
図11】比較例に係り、接合部を有するウェーブワッシャーを示す斜視図である(実施例1)。
【
図12】
図11の比較例に係るウェーブワッシャーの応力分布を示し、
図12(A)はウェーブワッシャー全体の斜視図、
図12(B)は
図12(A)のXII部の拡大図である(実施例1)。
【
図13】
図8のウェーブワッシャーの応力分布を示し、
図13(A)はウェーブワッシャー全体の斜視図、
図13(B)は
図13(A)のXIII部の拡大図である(実施例1)。
【
図14】変形例に係る接合部を示す平面図である(実施例1)。
【
図15】他の変形例に係る接合部を示す平面図である(実施例1)。
【
図16】他の変形例に係る接合部を示す平面図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れた可撓部材を得ることを可能にするという目的を、耐久性を向上しつつ実現した。
【0011】
すなわち、可撓部材は、閉環状の複数のウェーブワッシャーが軸方向に積層されると共に隣接間を複数の接合部によって接合され、ウェーブワッシャーの弾性変形により軸方向に対して屈曲可能な本体部を備え、複数の接合部は、それぞれ一対の線状の溶接部を備え、一対の溶接部は、一方の溶接部がウェーブワッシャーの中心から放射方向に延びる第1線に対して交差する方向に延びる第2線上に形成され、他方の溶接部が第2線に対して交差する方向に延びる第3線上に形成される。
【0012】
一対の溶接部は、それぞれ連続した線状に形成された構成としてもよい。
【0013】
一対の溶接部は、ウェーブワッシャーの内周側で相互に重なるV字状としてもよい。
【0014】
複数のウェーブワッシャーは、それぞれ周方向に複数の山部及びこれら山部間の谷部を備え、隣接するウェーブワッシャーの山部と谷部とが当接し、山部と谷部との当接部分がそれぞれ接合部により接合された構成としてもよい。
【実施例0015】
[マニピュレーターの構造]
図1は、本発明の実施例1に係る可撓部材を用いたマニピュレーターを示す斜視図、
図2は、同正面図、
図3は、同断面図である。
【0016】
本実施例は、可撓部材1を用いた関節機能部3を有するロボット、マニピュレーター、或はアクチュエータの一例として、医療用のマニピュレーター5について説明する。
【0017】
マニピュレーター5は、手術ロボットのロボットアーム先端を構成し、医師等によって操作されるものである。なお、マニピュレーター5は、手術ロボットに取り付けずに医師等によって直接操作される手動マニピュレーターであってもよい。また、可撓部材1を適用可能なロボット、マニピュレーター、或はアクチュエータは、マニピュレーター5に限られず、産業用ロボット等の他の分野のものであってもよい。
【0018】
マニピュレーター5は、シャフト部7と、関節機能部3と、エンドエフェクタ9とを備えている。
【0019】
シャフト部7は、中空筒状、例えば円筒状に形成されている。シャフト部7内には、関節機能部3を駆動するための駆動ワイヤ11やエンドエフェクタ9を駆動するためのプッシュプルケーブル13が通っている。シャフト部7の先端には、関節機能部3を介してエンドエフェクタ9が設けられている。
【0020】
関節機能部3は、駆動ワイヤ11の操作に応じ、軸方向に対して屈曲動作を行う。軸方向とは、後述する可撓部材1の軸心に沿った方向を意味し、軸心に対して厳密に平行な方向である必要はなく、軸心に対して若干傾斜した方向も含む。関節機能部3の詳細は後述する。
【0021】
エンドエフェクタ9は、関節機能部3の可動部17に対して取り付けられ、目的に応じた動作を行う機器である。本実施例のエンドエフェクタ9は、鉗子であり、一対の把持部9a,9bを備えている。このエンドエフェクタ9は、関節機能部3の屈曲動作に応じて所望の方向へ指向可能であり、且つ一対の把持部9a,9bがプッシュプルケーブル13の操作に応じて開閉可能になっている。
【0022】
なお、エンドエフェクタ9は、鉗子に限られず、例えば鋏、把持レトラクタ、針ドライバ、カメラ等とすることも可能である。
【0023】
[関節機能部の構造]
図4は、
図1のマニピュレーター5の一部を省略し、関節機能部3を主に示す斜視図、
図5は、同側面図、
図6は、
図5のVI部の拡大図、
図7は、
図4のVII-VII線における、関節機能部3の可撓部材1を示す断面図であり、
図7(A)が平常時、
図7(B)が屈曲時を示す。
【0024】
図1~
図7のように、関節機能部3は、基部15と、可動部17と、可撓部材1とを備えている。
【0025】
基部15は、金属等によって円柱状に形成され、シャフト部7の先端に取り付けられている。基部15の軸心部には、プッシュプルケーブル13が軸方向で挿通し、その周囲には、駆動ワイヤ11が軸方向で挿通している。
【0026】
可動部17は、金属等によって円柱状に形成され、エンドエフェクタ9に取り付けられている。可動部17の軸心部は、プッシュプルケーブル13を挿通し、プッシュプルケーブル13の先端は、エンドエフェクタ9に結合されている。
【0027】
この可動部17は、可撓部材1を介して基部15に支持され、駆動ワイヤ11の先端部が固定されている。このため、可動部17は、駆動ワイヤ11の操作により基部15に対して変位し、エンドエフェクタ9を所望の方向に指向させることを可能とする。
【0028】
可撓部材1は、関節機能部3の屈曲動作を可能とするものであり、基部15と可動部17との間に介設されている。可撓部材1は、基部15に対する可動部17の変位に応じて屈曲する。可撓部材1には、駆動ワイヤ11及びプッシュプルケーブル13が軸方向で通されている。
【0029】
かかる可撓部材1は、本体部19の両端部がそれぞれ基部15及び可動部17に固定されている。なお、この固定は、後述する接合部21や他の固着手段によって行うことが可能である。
【0030】
本体部19は、複数のウェーブワッシャー23を軸方向で積層すると共に軸方向で隣接するウェーブワッシャー23の相互間を接合することによって形成されている。この本体部19は、ウェーブワッシャー23の弾性変形により屈曲可能となっている。
【0031】
各ウェーブワッシャー23は、金属等によって閉環状に形成された板材である。本実施例のウェーブワッシャー23は、ステンレスからなる円環状の板材であり、内外周23e,23f間の径方向の幅及び板厚が一定となっている。
【0032】
各ウェーブワッシャー23は、周方向に複数の山部23aを有し、隣接する山部23a間に谷部23bを有する。本実施例のウェーブワッシャー23は、径方向に対向する二つの山部23aを有し、山部23a間に径方向に対向する二つの谷部23bを有する。従って、本実施例では、山部23aと谷部23bとが周方向において90度毎に交互に設けられている。
【0033】
山部23a及び谷部23bは、ウェーブワッシャー23の内周23eから外周23fにわたる領域が軸方向で逆向きの円弧状に湾曲して形成されている。軸方向で隣接するウェーブワッシャー23間では、一方のウェーブワッシャー23の山部23aが他方のウェーブワッシャーの谷部23bに当接している。これら山部23a及び谷部23bの伸縮により、各ウェーブワッシャー23は、軸方向での弾性的な伸縮による変形が可能となっている。
【0034】
相互に当接する山部23a及び谷部23bは、両者の当接部分が接合部21によって接合されている。これにより、可撓部材1の本体部19は、積層状態が保持されている。接合部21の詳細は、後述する。
【0035】
各ウェーブワッシャー23において、山部23aと谷部23bとの間は、傾斜部23cによって連続している。傾斜部23cは、周方向に傾斜し、且つ内周23eと外周23fとの間で僅かにねじれた形状となっている。
【0036】
傾斜部23cには、駆動ワイヤ11を通す通し部としての挿通孔23dが設けられている。挿通孔23dは、本体部19の周方向に複数設けられている。本実施例では、駆動ワイヤ11が周方向に90度毎に4本設けられていることから、これに応じて挿通孔23dも周方向に90度毎に4つ設けられている。
【0037】
軸方向に隣接するウェーブワッシャー23の傾斜部23c間では、挿通孔23dが軸方向に連通し、これら連通する挿通孔23dにより駆動ワイヤ11を挿通する。この挿通により、可撓部材1は、駆動ワイヤ11を通し部として軸方向に通すと共に所定位置に保持するガイドとして機能する。
【0038】
挿通孔23dの形状は、ほぼ円形であり、駆動ワイヤ11の径よりも大きくなっている。この径の差は、傾斜部23cの傾斜及び変位を許容する。なお、挿通孔23dの形状は、円形に限られるものではなく、矩形等の他の形状としても良い。
【0039】
なお、ウェーブワッシャー23の形状や材質等は、可撓部材1に要求される特性等に応じて適宜変更することが可能である。山部23a及び谷部23bの数や曲率半径、傾斜部23cの傾斜角度等も、可撓部材1に要求される特性等に応じて適宜変更することが可能である。
【0040】
[接合部]
図8は、接合部21を有するウェーブワッシャーを示す斜視図、
図9は、
図8の接合部21を拡大して示す平面図、
図10は、接合部21の溶接部25a,25bの溶接スポット27を概念的に示す平面図である。
【0041】
接合部21は、ウェーブワッシャー23の周方向で等間隔で配置されている。本実施例では、90度毎に接合部21が配置されている。
【0042】
各接合部21は、一対の線状の溶接部25a,25bからなっている。これら一対の溶接部25a,25bは、ウェーブワッシャー23の内周23e側から外周23f側に向かって漸次周方向に離間している。これにより、接合部21は、可撓部材1の本体部19が屈曲する際に、ウェーブワッシャー23の内周23e及び外周23f間の変形量に差が生じることを抑制する。
【0043】
本実施例において、一対の溶接部25a,25bは、それぞれ連続した直線状に形成され、ウェーブワッシャー23の内周23e側で相互に重なるV字状となっている。
【0044】
具体的には、溶接部25a,25bは、スポット溶接によって形成され、隣接する溶接スポット27が平面視において相互に重なるか或いは接触することによって連続した線状となっている。本実施例では、隣接する溶接スポット27が重なっている。
【0045】
これら一対の溶接部25a,25bは、一方の溶接部25aがウェーブワッシャー23の中心から放射方向である径方向に延びる第1線L1に対して交差する方向に延びる第2線L2上に形成され、他方の溶接部25bが第2線L2に対して交差する方向に延びる第3線L3上に形成されている。
【0046】
本実施例では、第2線L2及び第3線L3が第1線L1を中心に対称であり、第2線L2及び第3線L3の角度θが約35度となっている。溶接部25a,25bは、それぞれ溶接スポット27の中心が第2線L2及び第3線L3上に位置するように直線状に形成され、開き角度が第2線L2及び第3線L3とでなす角度θと一致する約35度となっている。
【0047】
なお、溶接部25a,25bの形状は、後述する変形例等のように、ウェーブワッシャー23の内外周23e,23fの変形量の差に応じて適宜設定することが可能である。
【0048】
[関節機能部の屈曲動作]
関節機能部3では、医師がマニピュレーター5を操作する際、何れか一つの駆動ワイヤ11を引くことにより可撓部材1が屈曲する。この関節機能部3は、いくつかの駆動ワイヤ11を組み合わせて引くことにより、360度全方位に屈曲することが可能となる。
【0049】
少なくとも何れか一つの駆動ワイヤ11を引いて屈曲する際、可撓部材1は、
図7(B)のように、中立軸に対する屈曲内側部分で山部23a及び谷部23bが圧縮されると共に屈曲外側部分で山部23a及び谷部23bが伸張される。
【0050】
このように変形することで、操作された駆動ワイヤ11を挿通している傾斜部23c相互間が近接し、可撓部材1が全体として屈曲することになる。これにより、屈曲角度と荷重との荷重特性の線形性が高い屈曲動作を実現する。
【0051】
かかる屈曲時には、可撓部材1の各ウェーブワッシャー23の内外周23e,23fの変形量に差が生じることを接合部21によって抑制される。
【0052】
具体的には、接合部21の一対の溶接部25a,25bが内周23e側から外周23f側に向かって漸次周方向に離間していることにより、ウェーブワッシャー23の外周23fは、溶接部25a,25b間に対応する部分で変形が抑制される。
【0053】
一方で、ウェーブワッシャー23の内周23eは、溶接部25a,25b間が近接し、本実施例では重なっていることにより、外周23fのような変形の抑制はない。
【0054】
従って、各ウェーブワッシャー23では、内外周23e,23fの変形量が調整され、ウェーブワッシャー23の内外周23e,23fの変形量に差が生じることを抑制される。
【0055】
これにより、接合部21周辺に作用する応力の偏りを抑制されて最大応力が低減され、可撓部材1の耐久性を向上される。
【0056】
[応力分布]
図11は、比較例に係り、接合部21Aを有するウェーブワッシャー23Aを示す斜視図である。
図12は、比較例に係るウェーブワッシャー23Aの応力分布を示し、
図12(A)はウェーブワッシャー23A全体の斜視図、
図12(B)は
図12(A)のXII部の拡大図である。
図13は、実施例1に係るウェーブワッシャー23の応力分布を示し、
図13(A)はウェーブワッシャー23全体の斜視図、
図13(B)は
図13(A)のXIII部の拡大図である。
【0057】
比較例の可撓部材(図示せず)に用いられるウェーブワッシャー23Aと実施例1の可撓部材1に用いられるウェーブワッシャー23とで屈曲時の応力分布を比較した。
【0058】
比較例の可撓部材は、ウェーブワッシャー23Aを実施例1と同様に積層して隣接間を接合したものであり、接合部21Aの形状以外は実施例1と同一に構成されている。接合部21Aは、それぞれウェーブワッシャー23Aの径方向に沿って形成された単一の溶接部25Aからなっている。
【0059】
かかる比較例のウェーブワッシャー23Aでは、屈曲時に内外周23Ae,23Afの変形量に差が生じており、その結果、接合部21Aに沿った領域において内周23Ae側に局所的に応力が高い部分が存在していることが分かる。このときの最大応力は、1186MPaであった。なお、
図12では、色が濃いほど応力が高いことを示す(
図13も同じ。)。
【0060】
これに対し、実施例1のウェーブワッシャー23では、屈曲時に内外周23e,23fの変形量の差が抑制されていることにより、接合部21に沿った領域において内周23e側から外周23f側にわたって応力の均一化が図られていることが分かる。このときの最大応力は、997MPaであり、約16%の減少が見られた。
【0061】
また、実施例1では、溶接部25a,25b間の開き角度を30度、35度、40度と変更した場合、それぞれ最大応力が1061MPa、997MPa、1184MPaとなった。
【0062】
従って、本実施例では、溶接部25a,25bの開き角度を、30度~40度、特に35度に設定するのが好ましいことが分かる。
【0063】
なお、溶接部25a,25bの好ましい開き角度は、ウェーブワッシャー23の幅や形状などによって異なる。
【0064】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例の可撓部材1は、閉環状の複数のウェーブワッシャー23が軸方向に積層されると共に隣接間を複数の接合部21によって接合され、ウェーブワッシャー23の弾性変形により軸方向に対して屈曲可能な本体部19を備え、複数の接合部21は、それぞれウェーブワッシャー23の内周23eから外周23fに向かって漸次周方向に離間する一対の線状の溶接部25a,25bからなる。
【0065】
従って、本実施例では、屈曲角度と荷重との荷重特性の線形性を高くすることができ、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れた可撓部材を得ることが可能となる。
【0066】
しかも、本実施例では、一対の溶接部25a,25bによりウェーブワッシャー23が変形する際の内外周23e,23fの変形量に差が生じることを抑制し、接合部21周辺に作用する応力の偏りを抑制して最大応力が低減され、可撓部材1の耐久性を向上することができる。
【0067】
一対の溶接部25a,25bは、一方の溶接部25aがウェーブワッシャー23の中心から径方向に延びる第1線L1に対して交差する方向に延びる第2線L2上に形成され、他方の溶接部25bが第2線L2に対して交差する方向に延びる第3線L3上に形成されている。
【0068】
このため、本実施例では、接合部21周辺に作用する応力の偏りを確実に抑制することができる。
【0069】
また、一対の溶接部25a,25bは、それぞれ連続した線状に形成されたため、溶接部25a,25bに沿って応力を均一化することができる。
【0070】
また、一対の溶接部25a,25bは、ウェーブワッシャー23の内周23e側で相互に重なるV字状であるため、ウェーブワッシャー23の内周23eで不用意に変形量が抑制されることがない。このため、一対の溶接部25a,25bは、ウェーブワッシャー23の外周23fの変形量の調整を少なくすることができる。
【0071】
また、本実施例では、本体部19の山部23a及び谷部23bの伸縮により、屈曲動作を確実に行わせることができる。
【0072】
さらに、本実施例では、当接する山部23a及び谷部23b間が接合されていることにより、ねじり剛性において優れた可撓部材1を得ることができる。
【0073】
また、本実施例では、複数のウェーブワッシャー23が駆動ワイヤ11を挿通する挿通孔23dを有するので、本体部19を駆動ワイヤ11のガイドとして利用することができ、駆動ワイヤ11を適切な位置に保持し、より安定且つ正確な屈曲動作を行わせることができる。
【0074】
[変形例]
接合部21の形状の変形例を
図14~
図16に示す。
【0075】
図14の変形例では、溶接部25a,25bを内周23e側で重ねず周方向に離間させている。
【0076】
図15の変形例では、第3線L3が第1線L1と重なっており、それに伴って他方の溶接部25bが径方向に沿ったものとなっている。
【0077】
図16の変形例は、溶接部25a,25bが曲線状に形成されたものである。
【0078】
その他、接合部21の形状は、上記のように、ウェーブワッシャー23の内外周23e,23fの変形量の差に応じて適宜設定することが可能である。例えば、溶接部25a,25bは、隣接する溶接スポット27を離間させることで破線状としてもよい。また、溶接部25a,25bの開き角度や長さも変更可能である。さらに、溶接部25a,25bの何れか一方のみの形状を変更することも可能である。また、実施例1の接合部21は、平面視においてウェーブワッシャー23の内周23e及び外周23fに対して隙間を有しているが、内周23eから外周23fにまで至る形状とすることも可能である。