(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089964
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】小児及び若年成人のデングウイルスに対するワクチンの組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/12 20060101AFI20220609BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220609BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220609BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220609BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220609BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220609BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220609BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220609BHJP
C12N 15/40 20060101ALN20220609BHJP
【FI】
A61K39/12
A61K35/76
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/42
A61P31/14
A61P37/04
A61K9/08
C12N15/40 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069423
(22)【出願日】2022-04-20
(62)【分割の表示】P 2018553428の分割
【原出願日】2017-04-13
(31)【優先権主張番号】62/322,167
(32)【優先日】2016-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514313764
【氏名又は名称】タケダ ワクチン,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TAKEDA VACCINES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス、デレク
(72)【発明者】
【氏名】ボスレゴ、ジョン
(57)【要約】
【課題】2~17歳の小児又は若年成人、あるいは1~11歳の小児をデングウイルス感染症に対して治療するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】医薬組成物は、弱毒生デング-2ウイルス、デング-2/1キメラ、デング-2/3キメラ、及びデング-2/4キメラを含む四価ワクチン調合物を含む。上記医薬組成物は、第1の用量を0日目に、及び第2の用量を、第1の投与から90日以内又は3ヵ月後に皮下投与される。医薬組成物中の弱毒生デング-2ウイルスの濃度は、他のデングウイルス血清型のうちの2つ以上のlogプラーク形成単位(PFU)よりも少なくとも2分の1logPFU低いか、四価ワクチン調合物中のデング-2/3キメラの濃度は、弱毒生デング-2ウイルスよりもPFUで少なくとも2分の1log高い。
【選択図】
図13B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~17歳の小児又は若年成人、あるいは1~11歳の小児をデングウイルス感染症に対して治療する方法に使用するための、弱毒生デング-2ウイルス、デング-2/1キメラ、デング-2/3キメラ、及びデング-2/4キメラを含む、デングウイルスの4つ全ての血清型を含む四価ワクチン調合物を含む医薬組成物であって、前記方法は、
前記医薬組成物を、前記2~17歳の小児又は若年成人、あるいは前記1~11歳の小児に対して皮下投与することを含み、
前記医薬組成物の投与が、前記医薬組成物の第1の用量を0日目に投与すること、及びデングウイルスに対する同じ医薬組成物の第2の用量を、第1の投与から90日以内又は3か月後に投与することからなり、
前記医薬組成物が、前記2~17歳の小児又は若年成人、あるいは前記1~11歳の小児においてデングウイルスに対する免疫応答を誘導し、
前記医薬組成物中の弱毒生デング-2ウイルスの濃度は、他のデングウイルス血清型のうちの2つ以上のlogプラーク形成単位(PFU)よりも少なくとも2分の1logPFU低いか、
四価ワクチン調合物中のデング-2/3キメラの濃度は、弱毒生デング-2ウイルスよりもPFUで少なくとも2分の1log高い、医薬組成物。
【請求項2】
弱毒生デング-2ウイルスは、DENV-2 16681から誘導されたDEN-2 PDK-53変異体の形態にあり、NS1-53、5’NC-57、及びNS3-250における三重突然変異を有し、NS3タンパク質のアミノ酸250位にバリン残基を含み、
各キメラはウイルス骨格として前記DEN-2 PDK-53ゲノムと、前記DEN-2 PDK-53ゲノムのカプシド、プレ膜/膜又はエンベロープをコードする1つ以上の構造タンパク質遺伝子か、あるいはDEN-1、DEN-3又はDEN-4に由来する1つ又は複数の対応する構造タンパク質遺伝子で置換されているそれらの組合せとを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
デング-2/1キメラは、NS2Aタンパク質のアミノ酸116位がロイシン残基を有し、NS2Bタンパク質のアミノ酸92位がアスパラギン酸残基を有するようにさらに2つの突然変異を有し、
弱毒生デング-2ウイルスは、prMタンパク質のアミノ酸52位がグルタミン酸残基を有し、NS5タンパク質のアミノ酸412位がバリン残基を有するようにさらに2つの突然変異を有し、
デング-2/3キメラは、ウイルス骨格として前記DEN-2 PDK-53ゲノムを有し、かつ、野生型DEN-3 16562に由来する対応するprM-E遺伝子で置換された前記DEN-2 PDK-53ゲノムのprM-E遺伝子(nt-457~-2373)を有し、前記デング-2/3キメラは、前記野生型DEN-3 16562に由来する対応するprM-E遺伝子に、Eタンパク質のアミノ酸223位がセリン残基を含むようにさらに1つの突然変異を有し、
デング-2/4キメラは、NS2Aタンパク質のアミノ酸66位がグリシン残基を含み、NS2Aタンパク質のアミノ酸21位がバリン残基を含むようにさらに2つの突然変異を有し、デング-2/4キメラは、NS2Aタンパク質のアミノ酸99位に関して、アルギニン又はリジン残基を含む混合遺伝子型である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
デング-2/1キメラはウイルス骨格として前記DEN-2 PDK-53ゲノムを有し、かつ野生型DEN-1 16007に由来する対応するprM-E遺伝子で置換された前記DEN-2 PDK-53ゲノムのprM-E遺伝子(nt-457~-2379)を有し、
デング-2/3キメラはウイルス骨格として前記DEN-2 PDK-53ゲノムを有し、かつ野生型DEN-3 16562に由来する対応するprM-E遺伝子で置換された前記DEN-2 PDK-53ゲノムのprM-E遺伝子(nt-457~-2373)を有し、
デング-2/4キメラはウイルス骨格として前記DEN-2 PDK-53ゲノムを有し、かつ野生型DEN-4 1036に由来する対応するprM-E遺伝子で置換された前記DEN-2 PDK-53ゲノムのprM-E遺伝子(nt-457~-2379)を有する、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記デング-2/1キメラ:前記弱毒生デング-2ウイルス:前記デング-2/3キメラ:前記デング-2/4キメラの比が、4:4:5:5logプラーク形成単位(PFU)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記デング-2/1キメラ:前記弱毒生デング-2ウイルス:前記デング-2/3キメラ:前記デング-2/4キメラの比が、5:4:5:5logPFUである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
1.0×103から5×105PFUまでの濃度を有するデング-2/1キメラ、
1.0×103から5×105PFUまでの濃度を有する弱毒生デング-2ウイルス、
5.0×103から5×105PFUまでの濃度を有するデング-2/3キメラ、及び
1.0×104から5×106PFUまでの濃度を有するデング-2/4キメラの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
2.5×104PFUのデング-2/1キメラ、
6.3×103PFUの弱毒生デング-2ウイルス、
3.2×104PFUのデング-2/3キメラ、及び
4.0×105PFUのデング-2/4キメラを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
デングウイルスの分解を低減する安定化緩衝液を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記安定化緩衝液が、トレハロース及びアルブミン及び任意選択でポロキサマー407を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ポロキサマー407が、0.1から3.0%(w/v)までの濃度を有し、トレハロースが、5.0から50%(w/v)までの濃度を有し、アルブミンが、0.01から3.0%(w/v)までの濃度を有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記小児又は若年成人が、前記医薬組成物の投与前に、デングウイルスに対して血清陰性又は未感作である、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記小児又は若年成人が、前記医薬組成物の投与前に、デングウイルスに対して血清陽性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示された実施形態は、約1歳から約20歳までの小児又は若年成人に、4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘導するための組成物、方法、及び使用に関する。幾つかの実施形態は、これらに限定されないが、4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘導するためのワクチン組成物に、単独で又は組合せのいずれかで使用することができるキメラ及び非キメラフラビウイルスウイルス構築体を含んでいてもよい組成物に関する。ある実施形態では、組成物は、小児及び若年成人のデング感染から保護を向上させるために、デング-1(DEN-1)ウイルス、デング-2(DEN-2)ウイルス、デング-3(DEN-3)ウイルス、及び/又はデング-4(DEN-4)ウイルス等の、デングウイルスの1つよりも多くの血清型の構築体を、種々の濃度又は比で含んでいてもよい。他の実施形態は、単一の、二重の、又は他の投与レジメンを使用して、キメラデング構築体及び弱毒生デングウイルスを含んでいてもよいワクチン組成物を投与するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デング熱は、デングウイルスの感染により引き起こされる蚊媒介性疾患である。デングウイルス感染は、突然の高熱、頭痛、関節及び筋肉痛、悪心、嘔吐、並びに発疹を含む、衰弱性及び疼痛性の症状をもたらす場合がある。現在まで、デングウイルスは、4つの血清型:デング-4(DEN-4)と共に、デング-1(DEN-1)、デング-2(DEN-2)、又はデング-3(DEN-3)が特定されている。今後、他のサブタイプが発見される可能性もある(例えば、DEN-5)。また、デングウイルス血清型1~4は、デング出血熱(DHF)及びデングショック症候群(DSS)を引き起こす場合がある。最も重症の場合には、DHF及びDSSは、命にかかわる場合がある。デングウイルスは、毎年、5千万~1億例の衰弱性デング熱、500,000例のDHF/DSS、及び20,000例を超える死亡を引き起こしており、その大部分が小児である。現在まで、デング熱からの保護に有効なワクチン及びこの疾患の薬物治療は存在しない。蚊を防除する努力は、流行地域でのデング熱流行の予防、又はこの疾患の更なる地理的蔓延の予防の効果が得られていない。35億人がデングウイルス感染により脅かされていると推測される。加えて、デングウイルスは、アジア、中南米、及びカリブ海等の流行地域への旅行者の発熱の主要な原因である。加えて、DHF/DSSは、幾つかのアジア及びラテンアメリカ諸国における小児の重度疾患及び死の主要な原因である。
【0003】
4つのデングウイルス血清型は全て、世界の熱帯地方の至る所で流行しており、世界的中の熱帯地方において、ヒトに対する最も重要な蚊媒介性ウイルス脅威である。デングウイルスは、主にネッタイシマカ(Aedes aegypti)によりヒトに伝染する。1つのデングウイルス血清型による感染は、その血清型による再感染からの保護を生涯にわたってもたらすが、他の3つのデングウイルス血清型の1つによる二次感染を予防しない。実際、1つのデングウイルス血清型による以前の感染は、異なる血清型による二次感染時に、重度疾患(DHF/DSS)のリスク増加をもたらす。特に小児及び若年成人において有効なワクチンの開発は、この全地球的な疾患を予防及び管理するための重要な手法である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で開示された実施形態は、キメラデングウイルス構築体の組成物、方法、及び使用に関する。幾つかの実施形態では、組成物は、単独で又は弱毒生デングウイルスと組み合わせて、少なくとも1つの他のデングウイルス血清型に由来する構造遺伝子を有する弱毒デングウイルス骨格を有するキメラデングウイルス構築体を含んでいてもよい。他の実施形態は、少なくとも1つの更なるデングウイルス血清型に対する構造エレメントを含む1つ又は複数のキメラデングウイルスと組み合わせた、少なくとも1つの弱毒生ウイルスに関する。他の実施形態は、改変DEN-2骨格(例えば、P1(継代-1)の開始骨格としてのPDK-53、及びP2、P3...P8...P10等と表示されている、継代変異及び選択を使用した改変PDK-53)、及びDEN-1、DEN-2、DEN-3、又はDEN-4の1つ又は複数の構造成分を有するキメラデングウイルスの組成物を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、対象に導入すると対象に1つ又は複数のデングウイルスに対する免疫応答を引き起こす免疫原性組成物を生成することができる。したがって、本明細書で企図された構築体を生成及び継代することができ、継代の各々は、薬学的に許容されるワクチン組成物に有用であることが企図される弱毒デングウイルスを提供する。
【0005】
本明細書で開示された実施形態は、約1歳から約45歳までの小児又は若年成人において、4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘導するための組成物、方法、及び使用に関する。現行の製剤は、幼小児には有効ではなく、全年齢群のデング感染に対して有用なデングワクチンの必要性は満たされていない。これらの実施形態によると、本明細書で開示された組成物及び方法は、約1から20歳まで、約1から15歳まで、約1から11歳まで、又は約2から約9歳まで、又は約1から約5歳までの小児に有用である。
【0006】
ある実施形態では、ワクチンに有用なデングウイルス血清型のキメラデングウイルス構築体は、継代8(P8)弱毒生ウイルス、又は配列番号1、3、5、及び7により特定される核酸配列若しくは配列番号2、4、6、及び8により示されるポリペプチド配列を有するキメラウイルスを含んでいてもよい。本明細書では、本明細書に記載の弱毒生ウイルスのいずれかの継代のいずれかは、示されているデングウイルス血清型(例えば、血清型1~4)に対する免疫応答を誘導するための免疫原性組成物に使用することができることが企図される。これらの実施形態によると、P-8単離弱毒生ウイルスを含む免疫原性組成物を対象に投与し、選択した構築体に応じて、1つ又は複数のデングウイルス血清型に対する免疫原性応答を誘導することができる。加えて、弱毒生ウイルスは、これらキメラウイルスの1つ又は複数と組み合わせてもよい。これは、その後の各細胞継代(例えば、アフリカミドリザルベロ細胞生産、以下:ベロ細胞、又は他の適切な細胞株)で単離/生産される弱毒生ウイルスの各々が企図される。本明細書では、デングウイルスを生産することが可能な任意の細胞株(例えば、GMP準拠)が、ウイルス構築体のいずれかを製造規模で継代するのに有用であることが企図されるか、又は本明細書では、必要に応じてデングウイルスに対するワクチン又は免疫原性組成物におけるその後の使用が企図される。
【0007】
他の実施形態では、本明細書で企図された組成物は、ジカウイルス、西ナイルウイルス、日本脳炎、セントルイス脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、又は任意の他のフラビウイルスキメラ構築体及び/又は弱毒生ウイルス等の他のフラビウイルスに対する他の免疫原性組成物と組み合わせることができる。ある実施形態では、複数のフラビウイルスに対して単一の組成部物を使用してもよい。一部の実施形態では、本明細書で開示された組成物は、ワクチン組成物が、デングウイルス構築体及び弱毒生デングウイルスに限定される場合であっても、ジカウイルスに対する免疫応答を誘導することができる場合がある。
【0008】
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、DEN-1、DEN-2、DEN-3、及び/又はDEN-4の1つ又は複数に対するキメラデングウイルスを、単独で又は弱毒生デングウイルス組成物と組み合わせて含んでいてもよい。
【0009】
他の実施形態では、構築体は、対象に導入されると、ウイルスの弱毒化又は安全性に影響を及ぼさずに増殖又は生産を増加させる適応的突然変異をウイルスの構造又は非構造領域に有する構築体を含んでいてもよい。ある実施形態では、企図されたキメラデングウイルス構築体はいずれも、骨格として使用される特定の突然変異を有する弱毒生DEN-2ウイルスであって、他のデングウイルス血清型のprM(プレ膜)構造タンパク質及びE(エンベロープ)構造タンパク質の1つ又は複数の構造タンパク質を更に含んでいてもよい弱毒生DEN-2 PDKウイルスを含んでいてもよい。加えて、DEN-2骨格は、投与時に所定の組成物に対する対象の免疫応答を増強するために、更なる突然変異又は突然変異の復帰突然変異を含んでいてもよい(例えば、キメラデングウイルス2/1、2/3、又は2/4)。
【0010】
幾つかの実施形態では、構造タンパク質遺伝子は、免疫原性を向上させるために、1つ又は2つの復帰突然変異を有するDEN-2骨格にDEN-1、DEN-2、DEN-3、又はDEN-4のprM及びE遺伝子を含んでいてもよい。例えば、ある実施形態では、デング構築体は、DEN-2骨格が、安全であり、免疫応答の誘導に効果的であることが以前に実証されているDEN-2弱毒生ウイルスから野生型DEN-2への1つ又は複数の復帰突然変異(例えば、非コード領域(NCR)若しくは非構造領域(NS1等)に、又はP1若しくは他の以前の継代ウイルスに見出されない更なる突然変異)を有する、TDV-1-A、TDV-2-F、TDV-3-F、及びTDV-4-Fと称する構築体を含んでいてもよい(実施例セクションを参照)。本出願のDEN-2弱毒生ウイルスは、最初に使用されたDEN-2弱毒生ウイルスの改良版である。本明細書で開示された幾つかの実施形態のキメラ構築体は、第2のデングウイルス血清型の1つ又は複数の構造タンパク質を有する改変弱毒DEN-2 PDK-53骨格を含んでいてもよく、上記構造タンパク質は、キメラ構築体に対する免疫原性応答を増加させるための更なる突然変異を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、弱毒DEN-2 PDK-53が獲得したある突然変異は、ワクチン安全性及び弱毒化に影響を及ぼさずに、免疫原性の増加、増殖の増加、プラークサイズの増加をもたらすことができ、弱毒生ウイルスの増殖及び/又は複製に影響を及ぼすことができるP1構築体とは異なるキメラ構築体を生産するように、対照又は別のアミノ酸へと復帰していてもよい。
【0011】
他の実施形態では、弱毒生DEN-2ゲノムを使用して、デングウイルス血清型1(DEN-1)、デングウイルス血清型3(DEN-3)、及びデングウイルス血清型4(DEN-4)のキメラ構築体であって、DEN-2ウイルスゲノムの1つ又は複数の構造タンパク質遺伝子が、それぞれDEN-1、DEN-3、又はDEN-4の1つ又は複数の構造タンパク質遺伝子により置換されていてもよいキメラ構築体を生成することができる。幾つかの実施形態では、構造タンパク質は、第3のデングウイルスのC、prM、又はEタンパク質を含んでいてもよい。ある実施形態では、構造タンパク質遺伝子は、DEN-1、DEN-3、又はDEN-4のprM及びE遺伝子を含んでいてもよい。これらの実施形態によると、これらキメラウイルスは、親弱毒DEN-2の弱毒化表現型を保持しつつ、DEN-1、DEN-3、又はDEN-4の表面抗原を発現することができる。更に、小児及び若年成人のワクチンに有用な本明細書で開示されたキメラ構築体は、弱毒DEN-2ウイルスが骨格として使用されている、DEN-1、DEN-3、及びDEN-4の表面抗原を発現するDEN-4、DEN-2、DEN-1、及びDEN-3のキメラ構築体を含んでいてもよい。
【0012】
ある実施形態では、本発明の組成物は、本明細書で開示された単一のキメラデングウイルス構築体、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含んでいてもよい組成物を含んでいてもよい。他の実施形態では、本明細書で開示された組成物は、2つ以上、又は3つ以上のキメラデングウイルス構築体、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含んでいてもよい。これらの実施形態によると、本明細書で企図された1つ又は複数のデングウイルスキメラ構築体は、1つ又は複数の弱毒生デングウイルスと組み合わせることができる。ある実施形態では、弱毒生ウイルスは、NCR領域、NS1領域、又は他の領域における野生型アミノ酸への復帰突然変異により、本明細書で開示された製剤に有用な改良型弱毒生デングウイルス構築体の免疫応答が増加され、ウイルス増殖又は他の改良点が増加されている弱毒生DEN-2ウイルスであってもよい。
【0013】
ある実施形態では、共通のPDK-53ウイルス特異的遺伝子バックグラウンドが4つのTDV構築体ウイルスで共有されてもよい弱毒生デングウイルスは、DENV-2のヌクレオチド5’NCR-57-T、NS1-53-Asp、及びNS3-250-Valの突然変異又は置換を含んでいてもよい。cGMP準拠で製造されるTDVシードの、3つの弱毒化遺伝子座の遺伝子配列、並びにこれらワクチン候補の以前に確立されたin vitro及びin vivo弱毒化表現型が、注意深くモニターされている。本明細書では、マスターウイルスシード(MVS)並びにデングウイルスワクチン組成物の製造に有用なデングウイルスの他の関連継代を生成するための使用される戦略が開示される。これらMVSは、臨床材料の製造、及び最終的には商業的ワクチンの供給に使用することができる。
【0014】
ある実施形態では、免疫原性組成物は、小児及び若年成人に、少なくとも3つ又は4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘導することが可能な三価又は四価製剤を含んでいてもよい。例えば、免疫原性組成物は、4つのデングウイルス血清型の各々のプレマスターウイルスシード構築体、マスターウイルスシード(MVS)構築体、ワーキングウイルスシード(WVS)構築体、及びバルクウイルスシード(BVS)構築体を含んでいてもよい。他の実施形態では、免疫原性組成物は、配列番号9(プレマスター)、配列番号11(MVS)、配列番号13(WVS)、又は配列番号15(BVS)により表される、改変弱毒生デング-2ウイルス血清型をコードする核酸配列を有する1つ又は複数のポリヌクレオチド;改変弱毒生デング-2ウイルス血清型に由来する非構造タンパク質、及び配列番号1(プレマスター)、配列番号3(MVS)、配列番号5(WVS)、又は配列番号7(BVS)により表される、デング-1ウイルス血清型に由来する構造タンパク質をコードする核酸配列を有するデング-1/デング-2キメラポリヌクレオチド;改変弱毒生デング-2ウイルス血清型に由来する非構造タンパク質、及び配列番号17(プレマスター)、配列番号19(MVS)、配列番号21(WVS)、又は配列番号23(BVS)により表される、デング-3ウイルス血清型に由来する構造タンパク質をコードする核酸配列を有するデング-3/デング-2キメラポリヌクレオチド;並びに改変弱毒生デング-2ウイルス血清型に由来する非構造タンパク質、及び配列番号25(プレマスター)、配列番号27(MVS)、配列番号29(WVS)、又は配列番号31(BVS)により表される、デング-4ウイルス血清型に由来する構造タンパク質をコードする核酸配列を有するデング-4/デング-2キメラポリヌクレオチドを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、小児又は若年成人に、1つ、2つ、3つ、又は4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘発することが可能な免疫原性組成物が開示される。
【0015】
ある実施形態では、免疫原性組成物は、組成物中の改変弱毒生デング-2ウイルス血清型をコードするポリヌクレオチドの濃度比が、デングウイルスポリヌクレオチドの1つ又は複数のlogPFUよりも、少なくとも2分の1~1logプラーク形成単位(PFU)低い製剤を含んでいてもよい。他の実施形態では、免疫原性組成物は、組成物中の改変弱毒生デング-2ウイルス血清型をコードするポリヌクレオチドの濃度比が、ポリヌクレオチドの1つ又は複数のlogPFUよりも、少なくとも1及び2分の1logプラーク形成単位(PFU)低い、又は2若しくは3logプラーク形成単位(PFU)以上低い製剤を含んでいてもよい。
【0016】
ある実施形態では、単独の又は他のウイルスワクチンと組み合わされているデングに対する免疫原性組成物は、ポリペプチド及びポリヌクレオチドの混合物であってもよい。これらの実施形態によると、免疫原性組成物は、ポリヌクレオチドによりコードされる種々のポリペプチドを含むか又は含まずに、本明細書に記載のポリヌクレオチド又は他のフラビウイルスポリヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、ポリペプチドは、配列番号10(プレマスター)、配列番号12(MVS)、配列番号14(WVS)、又は配列番号16(BVS)により表される、改変弱毒生デング-2ウイルス血清型に対応するポリペプチド;配列番号2(プレマスター)、配列番号4(MVS)、配列番号6(WVS)、又は配列番号8(BVS)により表される、デング-1/デング-2キメラポリヌクレオチドに対応するポリペプチド;配列番号18(プレマスター)、配列番号20(MVS)、配列番号22(WVS)、又は配列番号24(BVS)により表される、デング-3/デング-2キメラポリヌクレオチドに対応するポリペプチド;及び配列番号26(プレマスター)、配列番号28(MVS)、配列番号30(WVS)、又は配列番号32(BVS)により表される、デング-4/デング-2キメラポリヌクレオチドに対応するポリペプチドを含んでいてもよい。
【0017】
ある実施形態では、本明細書で開示された免疫原性組成物は、デング-1/デング-2キメラの、改変弱毒生デング-2ウイルス血清型、デング-3/デング-2キメラ、デング-4/デング-2キメラに対する濃度比が4:4:5:5logプラーク形成単位(PFU)であることを含む、種々の濃度比のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを含んでいてもよい。他の実施形態では、デング-1/デング-2キメラの、改変弱毒生デング-2ウイルス血清型、デング-3/デング-2キメラ、デング-4/デング-2キメラに対する濃度比は、約5:4:5:5logPFUであってもよい。本明細書で企図されている他の比としては、デング-3又はデング-4キメラ及び/又はデング-1の少なくとも1つと比較して、弱毒生デング-2及び/又はデング-1キメラウイルスが低減されている組成が挙げられる。更に他の実施形態では、四価調合比は、約5:3:5:5、3:3:5:5、又はある例では、製剤中により低い弱毒生デング-2若しくは低減された提示又は弱毒生デング-2及びデング-1/デング-2キメラを両方とも有する任意の比であってもよい。
【0018】
他の実施形態では、本明細書で開示された組成物は、本明細書で開示された1つ又は複数の免疫原性組成物及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であってもよい。ある実施形態では、医薬組成物は、弱毒生デングウイルス並びに/又は1つ若しくは複数のデング血清型に対するポリヌクレオチド及びポリペプチドを両方とも有するデングキメラで構成されている免疫原性組成物を含んでいてもよい。
【0019】
他の実施形態は、小児及び若年成人のデングウイルス感染に対して有用な、少なくとも1つの本開示の免疫原性組成物と、少なくとも1つの容器を有するキットを含んでいてもよい。
【0020】
ある実施形態は、少なくとも1つ~4つ全てのデングウイルス血清型に対して、小児及び若年成人を免疫するための方法を含む。方法は、本明細書で開示された1つ又は複数の用量の医薬組成物を、対象に投与することを含んでいてもよい。これらの実施形態によると、こうした特徴を有する比は、対象に4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘導する弱毒生ウイルス及び/又はキメラを含んでいてもよい。
【0021】
ある実施形態では、方法は、ポリヌクレオチドに加えて、本明細書で開示されたポリヌクレオチドによりコードされる1つ又は複数のポリペプチドを含む免疫原性組成物を、小児又は若年成人に投与することを含んでいてもよい。方法は、配列番号10(プレマスター)、配列番号12(MVS)、配列番号14(WVS)、又は配列番号16(BVS)により表されるポリペプチド;配列番号2(プレマスター)、配列番号4(MVS)、配列番号6(WVS)、又は配列番号8(BVS)により表されるポリペプチド;配列番号18(プレマスター)、配列番号20(MVS)、配列番号22(WVS)、又は配列番号24(BVS)により表されるポリペプチド;及び配列番号26(プレマスター)、配列番号28(MVS)、配列番号30(WVS)、又は配列番号32(BVS)により表されるポリペプチドの1つ又は複数を含むポリペプチドを含んでいてもよい。ある実施形態では、方法は、本明細書で開示された免疫原性組成物により表される、4つの全てのデングウイルス血清型を有する免疫原性組成物を、約1歳から約20歳までの範囲の対象に投与し、4つ全てのデングウイルス血清型(四価製剤)に対する免疫応答を対象に誘発することを含んでいてもよい。他の実施形態では、方法は、本明細書で開示された免疫原性組成物を、約1歳から約45歳までの範囲の対象に投与することを含んでいてもよい。
【0022】
ある実施形態では、方法は、本開示の四価製剤の1つ又は複数の用量を、例えば、皮下、静脈内、皮内、経皮、経口、吸入、膣内、局所、鼻腔内、又は直腸を含む、任意の許容される手段により対象に投与することを含んでいてもよい。これらの実施形態によると、本明細書で開示された製剤は、単一用量で、2用量又はそれよりも多くの用量で、対象に投与することができる。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された免疫原性製剤は、互いに約90日以内に、互いに約60日以内に、互いに約30日以内に、及び互いに約30日未満以内に投与してもよい。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された免疫原性製剤は、0日目に、及び最初の投与から約3か月後に再び、小児又は若年成人に投与してもよい。
【0023】
ある実施形態では、本明細書で開示された四価製剤は、1つ又は複数の用量の四価組成物を受容した小児及び若年成人の少なくとも60%において、4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘発することができる。
【0024】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、ある実施形態を更に説明するために含まれている。幾つかの実施形態は、これら図面の1つ又は複数を、単独で又は提示されている特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することより、より良好に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】以前に生成された構築体及び野生型デングウイルスと比較した、本発明の例示的なキメラ構築体DEN-2/DEN-4を反映する例示的なチャートを表す図である。
【
図2】弱毒生DEN-2骨格(更なる突然変異を有する)及びデング-2構造成分(例えば、TDV-1 MVS)の代わりに用いられる構成成分としての第2のデングウイルス血清型を使用して種々の応答を比較した例示的なヒストグラムプロットを表す図である。このプロットは、TDV MVSのプラークサイズを示すものである。野生型デングウイルス及び以前に発表されている研究等級ワクチン候補ウイルスが、対照及び比較のために含まれていた。このプロットは、対照デングウイルスキメラ構築体と比較して、デングウイルス構築体の生産が向上したことを示している。
【
図3】TDV MVS(マスターウイルスシード、ここではDENVaxと表示されている)の温度感受性を示す例示的なヒストグラムプロットを表す図である。野生型デングウイルス及び以前に発表されている研究等級ワクチン候補ウイルスが、MVS等級との比較のために含まれていた。
【
図4】対照と比較した、C6/36細胞におけるTDV(DENVaxとしても知られている)MVSのウイルス増殖を表す例示的なヒストグラムプロットを表す図である。野生型デングウイルス及び以前に発表されている研究等級ワクチン候補ウイルスが、TDV MVS(ここではDENVaxと表示されている)との比較のために含まれていた。
【
図5】A~Cは、新生仔マウスにおける神経毒性の例示的なプロットを表す図である。10
4pfuのウイルスでic負荷したCDC-ICR(n=72)及びTaconic(登録商標)-ICR(n=32)新生仔マウスにおける、wtDENV-2 16681ウイルスの神経毒性が要約されている、幾つかの実験をプールした結果(A)。10
4pfu(B)又は10
3pfu(C)の用量を用いてTaconic(登録商標)-ICRマウスで試験した、TDV MVS(マスターウイルスシード、ここではDENVaxと表示されている)の神経毒性。1つの実験(n=16)又は2つのプールした実験(n=31又は32)での1群当たりの試験動物の数が示されている。
【
図6】TDV MVS、WVS、及びBVSのプラークサイズを示す例示的なヒストグラムを表す図である。pi9日目に測定したアガロースオーバーレイ下のベロ細胞又はLLC-MK
2細胞でのウイルスプラークの平均プラーク直径±SD(エラーバー)。野生型DENV及び以前に発表されている研究等級ワクチン候補ウイルスが、対照及び比較のために含まれていた。
【
図7】大規模製造後でもこのin vitro弱毒化マーカーが保持されている確認するための、2つのインキュベーション温度における、C6/36細胞でのTDV(ここではDENVaxと表示されている)MSV、WVS、及びBVSの増殖を示す例示的なヒストグラムプロットを表す図である。ある野生型デングウイルス及び以前に発表されている研究等級ワクチン候補ウイルスが、比較のために含まれていた。
【
図8】C6/36細胞でのTDV MVS(マスターウイルスシード、ここではDENVaxと表示されている)、WVS、及びBVSの増殖制限をプロットした例示的なヒストグラムを表す図である。pi7日目のC6/36細胞で複製されたウイルスの平均力価±SD(エラーバー)。ある野生型デングウイルス及び以前に発表されている研究等級ワクチン候補ウイルスが、比較のために含まれていた。
【
図9】A~Bは、新生仔ICRマウスでのTDV MVS(マスターウイルスシード、ここではDENVaxと表示されている)の神経毒性データの例示的なグラフを表す図である。(A)10
4PFUの用量でのウイルスのIC接種。(B)10
3PFUの用量でのウイルスのIC接種。
【
図10】新しい弱毒生デング-2ウイルスを、以前に生成された弱毒生デング-2ウイルスと比較した例示的なチャートを表す図である。
【
図11A】代表的なタンパク質ドメイン及び突然変異部位を含む、本開示の弱毒生デングウイルス及びデング-デングキメラ構築体(TDVと表示されている)の代表的なダイヤグラムである。
【
図11B】本開示の1つの実施形態による、1つの四価製剤の代表的な製剤である。
【
図12A】本開示の1つの実施形態による、臨床試験の一部として実施された対象への投薬レジメンの代表的なダイヤグラムである。
【
図12B】本開示の1つの実施形態による、臨床試験の一部として実施された対象への投薬レジメンの代表的なダイヤグラムである。
【
図13A】本開示の1つの実施形態による、血清陽性対象への四価製剤投与後に中和抗体が応答するマイクロ中和試験(MNT)の結果を示す代表な折れ線グラフである。
【
図13B】本開示の1つの実施形態による、デング未感作対象への四価製剤投与後に中和抗体が応答するマイクロ中和試験(MNT)の結果を示す代表な折れ線グラフである。
【
図14】本開示の1つの実施形態による、四価製剤投与後の種々の時点での、4つ全てのデング血清型に血清陽性である臨床試験対象のパーセントを示す代表的な棒グラフである。
【
図15】本開示の1つの実施形態による、四価製剤投与後の種々の時点での、4つ全てのデング血清型に血清陽性である臨床試験対象のパーセントを示す代表的な棒グラフである。
【
図16】本開示の1つの実施形態による、四価製剤投与後の種々の時点での、4つ全てのデング血清型の医薬組成物を受容する前は未感作であった血清陽性臨床試験対象のパーセントを示す代表的な棒グラフである。
【
図17】本開示の1つの実施形態による、4つ全てのデング血清型の医薬組成物を受容した後で複数の血清型に対して血清陽性であった臨床試験対象(小児及び成人)のパーセントを示す代表的な棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書で使用される場合、「1つの」は、1つ又は1つよりも多くの品目を意味する場合がある。
【0027】
本明細書で使用される場合、「対象」としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:ヒト等の哺乳動物(例えば、小児~成人)、又は飼育若しくは野生の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、他の家庭ペット(例えば、ハムスター、モルモット、マウス、ラット)、フェレット、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、プレーリードッグ、野生げっ歯動物、若しくは動物園動物。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルスキメラ」、「キメラウイルス」、「フラビウイルスキメラ」、及び「キメラフラビウイルス」は、デング-2ウイルスのヌクレオチド配列の部分、及びデング-2ウイルスに由来していないか又は異なるフラビウイルスに由来する更なるヌクレオチド配列を含む構築体を意味する場合がある。「デングキメラ」は、少なくとも2つの異なるデングウイルス血清型を含むが、異なるフラビウイルスを含んでいない。したがって、他のデングウイルス又はフラビウイルスの例としては、これらに限定されないが、以下のものを挙げることができる:デング-1ウイルス、デング-3ウイルス、デング-4ウイルス、ジカウイルス、西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、及びそれらの任意の組合せに由来する配列。
【0029】
本明細書で使用される場合、「核酸キメラ」は、デングウイルス(例えば、デング-2ウイルス)のヌクレオチド配列の部分を有する核酸、及びそのデングウイルスと由来が同じではない更なるヌクレオチド配列を含む本開示の構築体を意味する場合がある。これらの実施形態によると、本明細書で開示された任意のキメラデング又はフラビウイルスキメラを、核酸キメラの例として認識することができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「弱毒生ウイルス」は、ワクチン又は他の免疫原性組成物に有用な形質を得るために突然変異又は選択された野生型ウイルスを意味する場合があり、この場合、幾つかの形質としては、毒性の低減、安全性、効力、増殖の向上等を挙げることができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「デングウイルス製剤」若しくは「免疫原性組成物」若しくは「ワクチン製剤」又はそれらの医薬製剤は、対象に投与することができ、その対象に1つ又は複数のデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘発することができる、本明細書で開示されたポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの種々の組合せを含むことができる。
【0032】
詳細な説明
以下のセクションでは、種々の実施形態を詳述するために、種々の例示的な組成物及び方法が記載されている。当業者であれば、種々の実施形態の実施は、本明細書で概説されている特定の詳細の全て又は一部でさえ使用する必要はなく、むしろ濃度、時間、及び他の特定の詳細は、日常的な実験作業により変更することができることは明白であろう。幾つかの場合には、周知の方法又は成分は、本明細書には含まれていない。
【0033】
本開示の実施形態によると、当技術分野の技術内にある、従来の分子生物学、タンパク質化学、微生物学、及び組換えDNA技法を使用することができる。そのような技法は、文献に十分に説明されている。(例えば、Sambrook、Fritsch、及びManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第二版、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州;Animal Cell Culture,R.I.Freshney編、1986年を参照)。
【0034】
本明細書で開示された実施形態は、約1歳から約20歳までの小児又は若年成人等の対象に、1つ又は最大4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘導するための組成物、方法、及び使用に関する。他の実施形態は、対象に、1つ又は複数のデングウイルス血清型に対する免疫応答を個々に又は同時に誘導するための組成物、方法、及び使用に関する。これらの実施形態によると、弱毒デングウイルス及び核酸キメラを生成し、本明細書で開示されたワクチン組成物に使用することができる。幾つかの実施形態は、改変又は突然変異デング構築体又はキメラに関する。他の実施形態は、突然変異を導入して、デングウイルスの構造タンパク質のアミノ酸配列を改変し、突然変異がウイルスに対する免疫原性を増加させることに関する。
【0035】
4つ全ての血清型の弱毒生デングウイルスは、細胞培養で野生型ウイルスを継代することにより開発される。これらは、フラビウイルス及び特にデングウイルス感染症及び/又は疾患に対する免疫化の最も有望な弱毒生ワクチン候補の幾つかである。これらワクチン候補は、デング血清型、それらが継代された細胞株、及びそれらが継代された回数の組合せで命名されている。したがって、PDK細胞で13回継代されたデング血清1型野生型ウイルスは、DEN-1 PDK-13ウイルスと命名される。他のワクチン候補は、DEN-2 PDK-53、DEN-3 PGMK-30/FRhL-3(例えば、初代ミドリザル腎臓細胞で30回継代し、その後胎仔アカゲザル肺細胞及びDEN-4 PDK-48で3回継代する)である。これら4つの候補ワクチンウイルスは、それぞれ、野生型親DEN-1 16007、DEN-2 16681、DEN-3 16562、及びDEN-4 1036ウイルスの組織培養継代により導出された。
【0036】
DEN-2 PDK-53ウイルスワクチン候補(以下、PDK-53)は、温度感受性、小さなプラークサイズ、蚊C6136細胞培養での複製減少、完全な状態の蚊における複製減少、乳仔マウスに対する神経毒性の喪失、及びサルにおけるウイルス血症の発症減少を含む、弱毒化に関連する幾つかの測定可能な生物学的マーカーを有する。候補PDK-53ワクチンの臨床試験では、ヒトにおける安全性及び免疫原性が実証されている。更に、PDK-53ワクチンは、ヒトワクチンレシピエントに、デングウイルス特異的T細胞記憶応答を誘導する。本明細書の幾つかの実施形態には、小児及び若年成人にデングウイルスに対する免疫応答を誘導するための、本明細書で開示されたキメラ構築体に使用される改良型DEN-2 PDK-53が記載されている。
【0037】
デング-2ウイルス骨格及び別のデングウイルス血清型の少なくとも1つの構造タンパク質を有する免疫原性フラビウイルスキメラは、デングウイルスキメラを調製するために使用することができ、デングウイルスキメラを生成するための方法が記載されている。免疫原性デングウイルスキメラは、デングウイルス血清型DEN-1、DEN-2、DEN-3、及びDEN-4等を単独で又は組み合わせた、1つ又は複数の血清型による感染を最小限に抑えるか、阻害するか、又はそれに対して個体を免疫するための免疫原性組成物として、薬学的に許容される担体中に、単独で又は組合せで提供される。組合せの場合、免疫原性デングウイルスキメラを、多価ワクチン(例えば、二価、三価、及び四価)として使用して、フラビウイルスの1つよりも多くの種又は株による感染からの同時保護を付与することができる。ある実施形態では、デングウイルスキメラは、既知のデングウイルス血清型に対する二価、三価、又は四価ワクチンとして有用な免疫原性組成物中で組み合わせることができ、異なるフラビウイルスに由来する1つ又は複数のタンパク質をコードする核酸を包含することにより、他の病原性フラビウイルスに対する免除を付与することができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供された非病原性免疫原性デングウイルスキメラは、弱毒デング-2ウイルス(例えば、PDK-53)又はその等価物の非構造タンパク質遺伝子、及びそれに対する免疫原性が対象で誘導されることになるフラビウイルスの構造タンパク質遺伝子又はそれらの免疫原性部分の1つ又は複数を含む。例えば、幾つかの実施形態は、ウイルス骨格としての弱毒デング-2ウイルスPDK-53ゲノム、及び異なるフラビウイルス又は異なるデングウイルス血清型等から保護するための、DEN-1、DEN-3、DEN-4、又は他のフラビウイルスに由来する1つ又は複数の対応する構造タンパク質遺伝子で置換されている、PDK-53ゲノムのカプシド、プレ膜/膜、若しくはエンベロープ、又はそれらの組合せをコードする1つ又は複数の構造タンパク質遺伝子を有するキメラに関する。これらの実施形態によると、本明細書で開示された核酸キメラは、弱毒デング-2ウイルスの機能的特性を有していてもよく、非病原性であるが、他のフラビウイルスに加えて、DEN-1、DEN-3、又はDEN-4の構造遺伝子産物の抗原性エピトープを発現し、免疫原性である(例えば、対象において遺伝子産物に対する免疫応答を誘導する)。その後、これら構築体は、1回又は複数回から53回の継代を超えて継代され、1つ又は複数のデングウイルス血清型に対する免疫原性組成物を生成するのに有用な弱毒生ウイルス組成物が生産される(例えば、P1~P10)。
【0039】
別の実施形態では、核酸キメラは、これらに限定されないが、弱毒デング-2ウイルスに由来する非構造タンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列、及び単独で又は別のフラビウイルスと組み合わせてデング-4ウイルスに由来する構造タンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を有する核酸キメラであってもよい。他の実施形態では、弱毒デング-2ウイルスは、物理的特性の向上又は免疫原性の増加について選択された、1つ又は複数アミノ酸が野生型アミノ酸に復帰したワクチン株PDK-53であってもよい(実施例を参照)。こうした特定の復帰突然変異は、小児及び若年成人のデングウイルス感染に対するレジメンにおいて、弱毒生デング-2として又は本明細書に記載のキメラ構築体を使用するための望ましい形質を付与する。幾つかの実施形態は、第2のデングウイルスのC、prM、又はEタンパク質の1つ又は複数の構造タンパク質を含む。
【0040】
本明細書で開示された他の実施形態では、ヌクレオチド及びアミノ酸配列は、他の標的とされるデングウイルス血清型との干渉を低減するために、例えば、PDK-53デング-2ゲノムに置換、欠失、又は挿入を含んでいてもよい。こうした改変は、単独で又は本明細書で開示された改変例と組み合わせて、構造及び非構造タンパク質になすことができ、弱毒ウイルスを継代し、1つ又は複数のデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘導するための改良型組成物を得ることにより生成することができる。
【0041】
本明細書で開示されたある実施形態は、組換え技法を使用して、例えば、1つの血清型の置換配列を別の血清型骨格に挿入することにより、キメラフラビウイルスを製作するための方法を提供する。本明細書の他の実施形態は、確認された(例えば、安全で有効な)弱毒生キメラウイルスを更なる改良のために継代すること、及び望ましい形質を選択することに関する。ある実施形態では、本明細書で使用される弱毒生デング-2は、表3に示されている1つ又は複数の突然変異を含んでいてもよい。他の実施形態では、本出願のデング-デングキメラは、表3に示されている1つ又は複数の突然変異を含んでいてもよい。更に他の実施形態では、デング-デングキメラは、Den-2/Den-1、Den-2/Den-3、又はDen-2/Den-4について表3に示されている各キメラの突然変異を全て含んでいてもよい。表3の構築体により表される弱毒生ウイルスを含む医薬組成物が企図される。例えば、表3に示されているデング-デングキメラ及び弱毒生デング-2ウイルスが使用されている一価、二価、三価、又は四価組成物が、本明細書での使用に企図される。
【0042】
ある実施形態では、本明細書で企図された弱毒生DEN-2変異体は、単独で又はデング-デングキメラ又はデング-フラビウイルスキメラと組み合わせて投与することができる医薬組成物に製剤化することができる。ある実施形態では、二価、三価、又は四価組成物は、対象への単回適用又は複数回適用で投与することができる。
【0043】
フラビウイルスキメラ
デングウイルス1~4型(DEN-1~DEN-4)は、蚊媒介性フラビウイルス病原体である。フラビウイルスゲノムは、5’-非コード領域(5’-NC)、カプシドタンパク質(C)コード領域、プレ膜/膜タンパク質(prM)コード領域、エンベロープタンパク質(E)コード領域、非構造タンパク質(NS1-NS2A-NS2B-NS3-NS4A-NS4B-NS5)をコードする領域、及び3’非コード領域(3’NC)を含む。フラビウイルス構造タンパク質としては、C、prM、及びEが挙げられる。非構造タンパク質としてはNS1-NS5が挙げられる。構造及び非構造タンパク質は、単一のポリタンパク質として翻訳され、細胞プロテアーゼ及びウイルスプロテアーゼによりプロセシングされる。
【0044】
フラビウイルスキメラは、1つの型又は血清型のデングウイルス又はフラビウイルス科のウイルス種に由来する非構造タンパク質遺伝子を、異なる型又は血清型のデングウイルス又は他のフラビウイルスに由来するタンパク質遺伝子、例えば構造タンパク質遺伝子と融合させることにより形成される構築体であってもよい。他の実施形態では、フラビウイルスキメラ構築体は、1つの型又は血清型のデングウイルス又はフラビウイルス科のウイルス種に由来する非構造タンパク質遺伝子を、他のデングウイルス血清型又は他のフラビウイルスから選択されるポリペプチド又はタンパク質の合成を指図する更なるヌクレオチド配列と融合させることにより形成することができる。他の実施形態では、1つのフラビウイルスから別のものへの配列の置換が企図される。
【0045】
他の実施形態では、デングキメラは、弱毒生デングウイルスの非構造タンパク質遺伝子又はそれらの等価物、及びそれに対する免疫原性が付与されることになるデングウイルス又は他のフラビウイルスの構造タンパク質遺伝子又はそれらの抗原性部分の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0046】
デングキメラの構築に使用される他の好適なデングウイルスは、野生型病原性DEN-1 16007、DEN-2 16681、DEN-3 16562、及びDEN-4 1036、並びに弱毒ワクチン株DEN-1 PDK-13、DEN-2 PDK-53、DEN-3 PMK-30/FRhL-3、及びDEN-4 PDK-48であってもよい。DEN-1、DEN-2、DEN-3、及びDEN-4野生型/弱毒ウイルス対間の遺伝子差異は、ウイルスゲノムによりコードされるアミノ酸配列の変化を伴うことが企図される。
【0047】
幾つかの実施形態では、本明細書に有用なデング-2ウイルスは、DEN-2 PDK-53-V変異体であって、ゲノムヌクレオチド5270位がAからTに突然変異しており、ポリタンパク質のアミノ酸1725位又はNS3タンパク質のアミノ酸250位が、デング-2全長配列のバリン残基を含む変異体を含んでいてもよい。このヌクレオチド突然変異を有していない1つのDEN-2 PDK-53変異体DEN-2 PDK-53-Eは、この位置がPDK-53-Vと異なる。DEN-2 PDK-53-Eは、ヌクレオチド5270位にAを有し、ポリペプチド1725位、NS3タンパク質アミノ酸250位にグルタミン酸を有する。幾つかの実施形態では、改変PDK 53デング-2は、本明細書で企図されたワクチン組成物での使用により望ましい形質を得るために、これら位置の1つ又は複数の天然配列への復帰突然変異を含んでいてもよい。
【0048】
ある実施形態では、デング-デングキメラとしては、改変骨格、及び他のデングウイルス又は他のフラビウイルスから挿入された構造遺伝子(prM-E又はC-prM-E)を有するDEN-2ウイルス特異的感染性クローンを挙げることができる。幾つかの実施形態では、デング-2骨格変異体は、デング-2 16681株(P)、PDK-53-E(E)、又はPDK-53-V(V)から生成することができる。最後の文字は、親(P)株若しくはそのワクチン誘導体(V)に由来するC-prM-E構造遺伝子、又は親(P)若しくはそのワクチン誘導体(V1)に由来するprM-E構造遺伝子を示す。例えば、DEN-2/1-VPは、NS3-250にバリンを含む弱毒DEN-2 PDK-53V骨格、及び野生型DEN-1 16007に由来するC-prM-E遺伝子を含むキメラを指し;DEN-2/1-VVは、デング-1のワクチン株DEN-1 PDK-13を有するDEN-2 PDK-53V骨格を指し;DEN-2/1-VP1は、DEN-2 PDK-53V骨格、及び野生型DEN-1 16007に由来するprM-E遺伝子を指し;DEN-2/3-VP1は、DEN-2 PDK-53V骨格、及び野生型DEN-3 16562に由来するprM-E遺伝子を指し;DEN-2/4VP1は、DEN-2 PDK-53V骨格、及び野生型DEN-4 1036に由来するprM-E遺伝子を指す。本明細書で開示された他のキメラは、同様の命名法により示されている。
【0049】
幾つかの実施形態では、本明細書で開示されたデング-デングキメラは、PDK-53ゲノムのC、prM、及びEタンパク質をコードする構造タンパク質遺伝子が、単独で又はそれらの組み合わせで、デング-1、デング-3、又はデング-4ウイルス、及び任意選択で、異なるフラビウイルス(例えばジカ熱若しくは黄熱病又はそれらの組合せ)又は異なるデングウイルス株等の、それらから保護されることになる別のフラビウイルスに由来する対応する構造タンパク質遺伝子で置換されていてもよい弱毒デング-2ウイルスPDK-53ゲノムを骨格として含んでいてもよい。弱毒生デング-2 PDK-53ウイルス株は、ヌクレオチド5270位に混合遺伝子型を有する。ウイルス集団の少なからぬ部分(およそ29%)が、NS3-250-Val突然変異ではなく、野生型DEN-2 16681ウイルスに存在する非突然変異NS3-250-Gluをコードする。両遺伝子変異体は非病原性であるため、この突然変異は、非病原性キメラには必要ではない場合がある。
【0050】
ある実施形態では、NS1-53における単一突然変異、NS1-53及び5’NC-57における二重突然変異、NS1-53及びNS3-250における二重突然変異、並びにNS1-53、5’NC-57、及びNS3-250における三重突然変異は、DEN-2ウイルスの弱毒化をもたらす。したがって、これら遺伝子座にそのような非保存的アミノ酸置換又はヌクレオチド置換を含む任意のデング-2ウイルスのゲノムを、本明細書で開示された改変PDK-53ウイルスを導出すための塩基配列として使用することができる。所望の場合、5’非コード領域のステム/ループ構造のステムにおける別の突然変異は、更なる非病原性表現型安定性を提供することができる。この領域への突然変異導入は、ウイルス複製にとって重要な潜在的二次構造を破壊する。
【0051】
本明細書で開示された突然変異は、これらに限定されないが、目的の細胞株(例えば、ベロ細胞)で継代した後で更なる特徴を有するクローンを選択すること含む、当技術分野で公知の任意の方法により達成することができる。当業者であれば、本明細書に記載の及び当技術分野で周知の病原性スクリーニングアッセイを使用して、病原性骨格構造と非病原性骨格構造とを区別することができる。
【0052】
フラビウイルスキメラの構築
本明細書で開示されたフラビウイルスキメラは、それに対する免疫が望まれている1つのフラビウイルスの構造タンパク質遺伝子の1つ又は複数を、PDK-53デング-2ウイルスゲノム骨格へとスプライスすることにより、又は当技術分野で公知の他の方法により、組換え遺伝子改変を使用して対応するPDK-53遺伝子を除去し、それをデング-1、デング-3、又はデング-4ウイルス遺伝子又は当技術分野で公知の他の遺伝子に置換して、生成することができる。
【0053】
その代わりに、フラビウイルスタンパク質をコードする核酸分子は、配列表に提供されている配列を使用し、公知の核酸合成技法を使用して合成し、適切なベクターに挿入することができる。本明細書で開示された弱毒生ウイルスは、当業者に公知の組換え遺伝子改変技法を使用して生成することができる。
【0054】
他のフラビウイルス又はデングウイルス血清型の構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む好適なキメラウイルス又は核酸キメラは、非病原性を示す上述の弱毒化表現型マーカーについて、それらをスクリーニングすることにより、及び免疫原性についてそれらをスクリーニングすることにより、ワクチンとしての有用性を評価することができる。抗原性及び免疫原性は、フラビウイルス抗体又は免疫反応性血清とのin vitro又はin vivo反応性を使用し、当業者に公知の日常的なスクリーニング手順を使用して評価することができる。
【0055】
デングウイルスワクチン
ある実施形態では、キメラウイルス及び核酸キメラは、免疫原又はワクチンとして有用な弱毒生ウイルスを提供することができる。幾つかの実施形態は、デング-4ウイルスに対して高い免疫原性を示すが、危険な病原性又は致死性の効果をもたらさないキメラを含む。
【0056】
デングウイルスの1つの血清型に対してのみワクチン接種を受けた小児及び若年成人でのDHF/DSSの発症率を低減するために、四価ワクチンは、ウイルスの4つ全ての血清型に対する同時免疫を提供することが必要である。四価ワクチンは、本出願の弱毒生デング-2ウイルスを、多価ワクチンとしての投与に好適な医薬担体中で、本明細書に記載のデング-2/1、デング-2/3、及びデング-2/4キメラ、又は他のデングウイルス構築体と組み合わせることにより生成することができる。
【0057】
ある実施形態では、本開示のキメラウイルス又は核酸キメラは、野生型ウイルス又は弱毒生ウイルスいずれかの構造遺伝子を、弱毒DEN-2ウイルス骨格に含んでいてもよい。例えば、デング-2/デング-4キメラは、野生型DEN-4 1036ウイルスの構造タンパク質遺伝子を発現することができる。
【0058】
ある方法では、本明細書に記載のキメラに使用されるウイルスは、当技術分野で公知の技法を使用して増殖させることができる。その後、増殖中の培養物の生存能及び表現型特徴を評価するために、ウイルスプラーク滴定を実施し、プラークを計数してもよい。野生型ウイルスを継代して培養細胞株とし、弱毒候補開始材料を導出してもよい。
【0059】
ある実施形態では、キメラクローンは、当業者であれば入手可能な種々のデング血清型クローンから構築することができる。また、ウイルス特異的cDNA断片のクローニングを達成することができる。種々のプライマーを用いた逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により、デングウイルスRNAから構造タンパク質又は非構造タンパク質遺伝子を含むcDNA断片を増幅することができる。増幅した断片を、他の中間体クローンの切断部位にクローニングすることができる。その後、中間体キメラデングウイルスクローンを配列決定して、挿入したデングウイルス特異的cDNAの正確性を確認することができる。
【0060】
デング血清型ウイルスの構造タンパク質及び/又は非構造タンパク質遺伝子領域をベクターに挿入することにより構築される完全ゲノム長キメラプラスミドは、当業者に周知の組換え技法を使用して得ることができる。
【0061】
ヌクレオチド及びアミノ酸分析
DEN-2 16681ウイルスのNS1-53-Glyは、現在までに配列決定されている、ダニ媒介性ウイルスを含むほぼ全てのフラビウイルスで保存されているため、DEN-2 PDK-53ワクチンウイルスのNS1-53突然変異は、このウイルスの弱毒化現型にとって重要な意義を持つ。また、DEN-4ワクチンウイルスは、NS1タンパク質の253位にアミノ酸突然変異を含む場合がある。この遺伝子座は、DEN-4 PDK-48ワクチンウイルスではGlnからHisに突然変異しているが、デングウイルスの4つ全ての野生血清型ではGlnである。このGln残基は、フラビウイルス属内のデングウイルスに固有である。NS1タンパク質は、フラビウイルス感染細胞から分泌される糖タンパク質である。NS1タンパク質は、感染細胞の表面に存在し、NS1特異的抗体が、ウイルス感染個体の血清に存在する。NS1タンパク質で免疫された、又はNS1特異的抗体で受動免疫された動物の保護が報告されている。NS1タンパク質は、初期ウイルスRNA複製に寄与すると考えられる。
【0062】
ある実施形態では、DEN-1、-2、-3、及び-4弱毒株のNS2A、NS2B、NS4A、及びNS4Bタンパク質に生じた突然変異は、性質が保存的である。DEN-2及びDEN-4ワクチンウイルスのNS4A-75及びNS4A-95突然変異は、それぞれ、デングウイルスでは保存されているが、一般のフラビウイルスでは保存されていないアミノ酸部位で生じた。
【0063】
DEN-4、DEN-3、又はDEN-1ウイルスをコードする核酸配列(例えば、構造エレメント)を、プラスミド等のベクターに挿入し(例えば、デング-2骨格に)、生命体内で組換え的に発現させて、組換えデングウイルスペプチド及び/又はポリペプチド及び/又はウイルスを生産することができる。
【0064】
核酸検出法
本明細書に記載のワクチンウイルスの各々の診断に役立つ迅速遺伝子検査が、本開示により提供される。本開示のこの実施形態は、ウイルス血症を発症したワクチン接種ヒトの血清から単離したウイルスの分析を増強し、並びに候補ワクチンウイルスで免疫した非ヒト霊長類のウイルス血症の特徴付けを増強する。
【0065】
こうした配列は、下記に記載されているように、逆転写酵素/ポリメラーゼ連鎖反応(RT/PCR)を使用することにより、ウイルスゲノムRNAテンプレートから増幅されたcDNAアンプリコンの検出を報告する役目を果たす診断用TaqMan(登録商標)プローブ、並びにcDNAアンプリコンを増幅するように設計されている順方向及び逆方向アンプライマーを含んでいてもよい。ある場合では、アンプライマーの1つは、アンプライマーの3’-末端にワクチンウイルス特異的突然変異を含むように設計されており、標的部位でのプライマーの伸長、及びその結果としての増幅は、ウイルスRNAテンプレートがその特定の突然変異を含んでいる場合のみ生じることになるため、この試験は、効果的に、ワクチン株に対して更により特異的になる。
【0066】
自動化PCRに基づく核酸配列検出システム、又は核酸検出の他の公知の技術を使用することができる。TaqMan(登録商標)アッセイは、試料核酸テンプレートからのPCR生成アンプリコンのリアルタイム視覚化及び定量化の自動化が可能である高度に特異的で高感度のアッセイである。TaqMan(登録商標)は、特定の配列の存在又は非存在を決定することができる。このアッセイでは、順方向及び逆方向プライマーは、それぞれ標的突然変異部位の上流及び下流にアニーリングするように設計されている。アンプライマーのいずれかよりも約10℃高い融解温度を有するように設計されており、ワクチンウイルス特異的ヌクレオチド突然変異又はその相補体を含む特異的検出プローブ(検出しようとするRT/PCRアンプリコンの鎖に応じて)は、このアッセイの第3のプライマー成分である。
【0067】
ワクチンウイルスゲノムの1つの突然変異遺伝子座を特異的に検出するように設計されたプローブは、プローブの中間にワクチン特異的ヌクレオチドを含むことになる。このプローブは、ウイルスRNAテンプレートがワクチンウイルス特異的である場合、TaqMan(登録商標)アッセイで検出可能な蛍光をもたらすことになる。しかしながら、野生型DENウイルスに由来するゲノムRNAテンプレートは、単一ヌクレオチドミスマッチ(親ウイルスDENウイルスの場合)又は恐らくは1つよりも多くのミスマッチ(他の野生型DENウイルスに生じる場合があるため)のため、プローブハイブリダイゼーションの効率が減少することになり、著しい蛍光をもたらさないであろう。DNAポリメラーゼは、ミスマッチプローブを切断してリポーター色素を放出するよりも、RT/PCRアンプリコンテンプレートに由来するミスマッチプローブを置換する可能性がより高い(TaqMan(登録商標)対立遺伝子識別アッセイ(TaqMan(登録商標)Allelic Discrimination assay)、Applied Biosystems社)。
【0068】
診断用遺伝子検査の1つの戦略は、分子ビーコンを利用することである。また、分子ビーコン戦略では、アンプリコンをRT/PCR増幅するためのプライマーを使用し、プローブ末端にリポーター及びクエンチャー色素を含むプローブによりアンプリコン内の特異的配列が検出される。このアッセイでは、プローブは、ステム-ループ構造を形成する。分子ビーコンアッセイでは、TaqMan(登録商標)アッセイで使用されるものとは異なるクエンチャー及びリポーター色素が使用される。
【0069】
医薬組成物
本明細書の実施形態は、in vivoでの医薬品投与に好適な生物学的適合形態の組成物の対象への投与を提供する。「in vivo投与に好適な生物学的適合形態」とは、活性作用剤の治療効果があらゆる毒性効果を上回る投与しようとする活性作用剤(例えば、実施形態の医薬品)の形態を意味する。治療活性量の治療用組成物の投与は、所望の効果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量と定義される。例えば、治療活性量の化合物は、疾患状態、個体の年齢、性別、及び体重、並びに抗体が個体中で所望の応答を誘発する能力等の要因に応じて様々であってもよい。用量レジマ(regima)は、最適な治療効果を提供するように調整することができる。
【0070】
1つの実施形態では、化合物(例えば、実施形態の弱毒生ウイルス)は、好都合な様式、例えば、皮下、静脈内、経口投与により、吸入、皮内、経皮塗布、膣内塗布、局所塗布、鼻腔内、又は直腸内投与で投与することができる。投与経路に応じて、活性化合物は、保護緩衝液(例えば、アルブミン、及びトレハロース、ポロキサマー407/トレハロース/アルブミン(FTA))に含まれていてもよい。1つの実施形態では、組成物は、経口投与することができる。別の実施形態では、組成物は、静脈内投与することができる。1つの実施形態では、組成物は、吸入等、鼻腔内投与することができる。更に別の実施形態では、組成物は、無針システム(例えば、Pharmajet(商標))又は他の皮内投与システムを使用して、皮内投与することができる。
【0071】
ある実施形態では、組成物は、適切な担体又は希釈剤で、小児又は若年成人に投与することができる。ある実施形態では、弱毒生デングウイルスワクチンは、安定化製剤(例えば、アルブミン及びトレハロース;FTA、又は弱毒生ウイルスを安定させるための他の製剤)で、小児又は若年成人に投与してもよい。また、「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、生理食塩水及び水性緩衝溶液等の、希釈剤を含んでいてもよい。弱毒生ウイルス製剤は、その不活化を防止する物質と組み合わせるか、又はその不活化を防止する物質と共に化合物を同時投与することが必要な場合がある。ある実施形態では、弱毒生デングウイルスの1つ又は複数の製剤は、初回用量を小児又は若年成人に皮下又は皮内投与し、その後追加免疫してもよい。また、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物、並びに油中での分散液を調製することができる。通常の保管及び使用条件下では、こうした調製物は、微生物の増殖を防止するための保存剤、又は他の安定化製剤(例えば、FTA、又は弱毒生フラビウイルス又はそのキメラの安定化に有用な他の安定化製剤)を含んでいてもよい。
【0072】
注射使用に好適な医薬組成物は、当技術分野で公知の手段により投与することができる。例えば、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び無菌注射溶液又は分散液での即時調製用の無菌粉末を使用することができる。幾つかの実施形態では、組成物は、無菌であってもよく、注射を容易にするために流動性であってもよい。薬学的に許容される担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)及びそれらの好適な混合物を含む溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動度は、例えば、レシチン等のコーティングを使用することにより、分散液の場合は、必要とされる粒子サイズを維持することにより、及び界面活性剤を使用することにより維持することができる。微生物の防止は、種々の抗細菌剤若しくは抗真菌剤又は他の作用剤を添加することにより達成することができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、溶液は、製剤化すれば、投与製剤と適合する様式で、及び治療上有効量で投与することができる。これらの実施形態によると、製剤は、上記に記載の注射溶液のタイプ等の様々な剤形で容易に投与することができる。ある例では、弱毒生デングウイルス及び/又はキメラは、特定の比、例えば5:4:5:5、4:4:5:5、又は他の比(例えば、所与のデングウイルス血清型のPFU)を有し、三価又は四価製剤中のデング-3及び/又はデング-4構築体のpfuが、製剤中に存在するデング-1及び/又はデング-2よりも、少なくとも2分の1log高い製剤で送達してもよい。ある実施形態では、デング-3及びデング-4弱毒生又はキメラは、四価製剤中のデング-1及び/又はデング-2よりも、pfu濃度が、少なくとも1log高い。幾つかの実施形態では、DEN2/4キメラは、弱毒生デング-1及び/又は弱毒生デング-2等の他のデングウイルス血清型よりも高い濃度で存在していてもよい。
【0074】
また、ある実施形態では、単一の用量又は複数の用量のデング製剤を、約1歳~約20歳の小児又は若年成人に投与してもよい。幾つかの実施形態では、小児又は若年成人は、単一用量製剤で治療してもよい。他の実施形態では、小児又は若年成人は、少なくとも2用量の弱毒生デングウイルス製剤で治療してもよい。ある実施形態では、小児又は若年成人は、0日目にデング-デング製剤の組成物を投与し、最初の用量の約3か月以内に追加抗原用量を投与してもよい。ある実施形態では、小児及び若年成人は、デングウイルスに一切接触したことがない未感作対象(血清陰性)である。他の実施形態では、小児及び若年成人は、デングウイルス及び/又はデングウイルス感染に以前に曝されている場合がある(血清陽性)。これらの実施形態によると、血清陰性小児及び/又は血清陰性若年成人は、0日目に治療を受け、その後デングウイルスに対する免疫応答の増加をもたらすために、最初の投与から6か月以内、5か月以内、4か月以内、3か月以内、又はそれ未満に追加免疫を受ける。ある実施形態では、小児は、約2歳~約17歳の小児であってもよい。他の実施形態では、小児は、2歳~17歳である。
【0075】
別の実施形態では、経鼻溶液又はスプレー、エアゾール、又は吸入剤を使用して、弱毒生デングウイルス製剤を対象に送達してもよい。ある製剤は、賦形剤、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、及び炭酸マグネシウム等を含んでいてもよい。
【0076】
医薬組成物は、徐放性製剤又はコーティング等の、体内からの急速な除去から活性成分を保護する担体を用いて調製することができる。そのような担体としては、制御放出製剤を挙げることができ、例えば、これらに限定されないが、マイクロカプセル送達系、及びエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の生分解性生体適合性ポリマーが公知である。
【0077】
ある実施形態では、弱毒生デング-デングキメラ、弱毒生デングウイルス、又はフラビウイルスキメラの用量範囲は、最初に約102から約106PFUまでを投与し、その後任意選択で、必要に応じて30日以内又は最大12か月後に少なくとも第2の投与をすることであってもよい。ある実施形態では、対象は、本明細書で開示された一価、二価、三価、又は四価組成物であって、単一組成混合物であるか又は異なるデングウイルス血清型の所定の組成物を有する組成物の二重投与を受けてもよい。
【0078】
任意の特定の小児若しくは若年成人、又は任意の特定の年齢の小児の場合、個々の必要性に応じて、特定の用量レジメンを調整することができることは明白であろう。幾つかの実施形態では、用量レジメンは、20歳以下の小児、又は約18歳以下、若しくは約15歳以下、若しくは約12歳以下、若しくは約9歳以下、若しくは約6歳以下、若しくは約3歳以下、若しくは約1.5歳以下の小児等の若年対象に適切なように調整される。ある実施形態では、小児は、2歳~17歳であってもよい。他の実施形態では、小児は、4歳~16歳であってもよい。
【0079】
ある実施形態では、本明細書で開示された免疫原性組成物は、1つ又は複数の用量で小児又は若年成人に投与することができる。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された免疫原性組成物は、所定の期間内に、単一の用量で又は2つの用量又はそれより多くの用量で対象に投与することができ、所定の期間としては、これらに限定されないが、同じ又は異なる解剖学的位置に、約6か月以内、約120日以内、約90日以内、約80日以内、約70日以内、約60日以内、約50日以内、約40日以内、約30日以内、約20日以内、約10日以内、約5日以内、又はそれ未満以内、又は同日の数時間以内若しくは数分以内が挙げられ、或いは同時に投与してもよい。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された免疫原性製剤は、互いに約90日以内に、互いに約60日以内に、互いに約30日以内に、及び互いに約30日未満以内に投与してもよい。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された組成物は、対象に皮下又は皮内投与してもよい。2か所以上の解剖学的部位での投与は、2か所以上の解剖学的部位での同じ経路による投与、又は2か所の異なる解剖学的部位での2つの異なる経路による投与を含む、投与の任意の組合せを含んでいてもよい。これらの実施形態によると、2か所以上の解剖学的部位としては、身体の異なる四肢又は異なる領域を挙げることができる。ある実施形態では、2つの用量のワクチン組成物を、例えば、0日目に、全てのデング血清型からの保護(例えば、交差保護)をもたらすために、対象の同じ又は複数の解剖学的位置に連続して導入してもよい。ある実施形態では、本明細書で開示された免疫原性組成物は、これらに限定されないが、対象に投与される4つ全ての血清型(例えば、四価製剤)に対する免疫原性反応を誘導する単一の用量を含んでいてもよく、それにより、全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘導することが可能である。ある実施形態では、対象は、単一の用量で、4つ全てのデングウイルス血清型に対する適切な免疫応答を誘導することができる単一用量組成物を受容してもよい。他の実施形態では、免疫原性組成物は、他のフラビウイルス(例えば、ジカウイルス、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、又は他のウイルス)に対する他の免疫原性剤と組み合わせて、弱毒生デングウイルス血清型を含んでいてもよい。ある実施形態では、本明細書で開示されたデングウイルスに対するワクチンは、他の関連ウイルス感染、例えば、ジカウイルス感染を低減するために使用することができる。
【0080】
幾つかの実施形態では、本明細書で開示された医薬組成物は、デングウイルスに対する免疫原性組成物を、デングウイルスに対するそのような医薬組成物を受容した小児又は若年成人に、1つ又は複数のデングウイルス血清型に対するCD8+T細胞応答又は他の免疫原応答を増強する作用剤(例えば、デングウイルスの1つ又は複数の構造又は非構造成分)と組み合わせることにより、小児又は若年成人における目的製剤の免疫応答を増加させるために使用することができる。
【0081】
局所投与は、治療有効量のセリンプロテアーゼ阻害剤を含有するクリーム、ゲル、リンス等を局所塗布することにより達成される。経皮投与は、セリンプロテアーゼ阻害剤の皮膚透過及び血流への進入を可能にすることができるクリーム、リンス、ゲル等を塗布することにより達成される。加えて、浸透圧ポンプを投与に使用してもよい。必要な用量は、治療されている特定の状態、投与方法、及び体内からの分子のクリアランス速度に応じて様々であろう。
【0082】
他の実施形態は、これらに限定されないが、1つ又は複数の弱毒生ウイルスを、弱毒生ウイルス(例えば、フラビウイルス)の不活化を低減することが可能な組成物と組み合わせることを含む、弱毒生ウイルスの不活化を減少させるための方法に関する。不活化を減少させることができるか又は弱毒生ウイルスを安定化することができるこれら組成物としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:1つ又は複数のタンパク質作用剤;1つ又は複数のサッカリド又はポリオール作用剤;及び任意選択で1つ又は複数のEO-POブロックコポリマー。
【0083】
ある実施形態では、本明細書で企図された組成物は、部分的に又は完全に脱水又は水和されていてもよい。他の実施形態では、本明細書の医薬又は非医薬組成物での使用が企図される安定化タンパク質作用剤としては、これらに限定されないが、ラクトアルブミン、ヒト血清アルブミン、組換えヒト血清アルブミン(rHSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、他の血清アルブミン、又はアルブミン遺伝子ファミリーメンバーを挙げることができる。サッカリド又はポリオール作用剤としては、これらに限定されないが、モノサッカリド、ジサッカリド、糖アルコール、トレハロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、セリビオース(cellibiose)、ゲンチオビオース、ラミナリボース(laminaribose)、キシロビオース、マンノビオース、ラクトース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、エリトリトール、ラフィノース、アミルス(amylse)、シクロデキストリン、キトサン、又はセルロースを挙げることができる。ある実施形態では、界面活性剤としては、これらに限定されないが、アルキルポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー(EO-POブロックコポリマー)、ポリ(ビニルピロロイドン(pyrroloidone))、アルキルポリグルコシド(スクロースモノステアレート、ラウリルジグルコシド、又はソルビタンモノラウレレート(monolaureate)、オクチルグルコシド、及びデシルマルトシド等)、脂肪アルコール(セチルアルコール又はオレリル(olelyl)アルコール)、又はコカミド(コカミドMEA、コカミドDEA、及びコカミドTEA)等の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0084】
他の実施形態では、界面活性剤としては、これらに限定されないが、ポロキサマー407(例えば、プルロニック(登録商標)F127)、ポロキサマー407の代わりに又はそれに加えて、ポロキサマー335、338、若しくは238、又はF127(商標)と同様の特徴を有する他のEO-POブロックコポリマーを挙げることができる。
【0085】
幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は、これらに限定されないが、血清アルブミンである1つ又は複数のタンパク質作用剤;トレハロースである1つ又は複数のサッカリド作用剤;及びEO-POブロックコポリマー、ポロキサマー407、又はより具体的にはプルロニック(登録商標)F127等の1つ又は複数の界面活性ポリマー剤を含んでいてもよい。
【0086】
他の実施形態では、生ウイルスを安定化するための製剤は、1つ又は複数の生菌フラビウイルス、1つ又は複数の炭水化物作用剤、及び1つ又は複数のアミノ酸、又はそれらの塩、エステル、若しくはアミド誘導体を含んでいてもよい。他の実施形態では、本明細書で有用な製剤は、商業使用のために弱毒生フラビウイルスを安定化する。幾つかの実施形態では、組成物は、緩衝液を更に含んでいる。これらの実施形態によると、緩衝液は、これらに限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含んでいてもよい。これらの実施形態によると、緩衝液は、塩化ナトリウム(NaCl)、一ナトリウム及び/又は二ナトリウムリン酸塩(Na2HPO4)、塩化カリウム(KCl)、及びリン酸カリウム(KH2PO4)の少なくとも1つを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、組成物の緩衝液は、25mM~200mMの濃度の塩化ナトリウムを含んでいてもよい。他の実施形態では、本明細書で開示された組成物は、尿素及び/又はMSG他の好適な作用剤を含んでいてもよい。
【0087】
幾つかの実施形態では、デングウイルス等の弱毒生フラビウイルスは、これらに限定されないが、以下のものを含む製剤中で安定化することができる:0.1%から0.2%(w/v)までの濃度を有する組換えHSA;及び/又は約4.0%から約6.0%(w/v)までの濃度を有するスクロース;及び/又は約2%から4%(w/v)までの濃度を有するマンニトール;及び/又は約8.0mMから約22.0mMまでの濃度を有するアラニン;及び/又は約1.0mMから約5.0mMまでの濃度を有するメチオニン;及び/又は約8.0mMから12.0mMまでの濃度を有するMSG;及び/又は約0.1%から約0.3%(w/v)までの濃度を有する尿素。ある実施形態では、組成物は、組換えHSA、トレハロース、マンニトール、アラニン、メチオニン、MSG、及び尿素を含んでいてもよい。他の実施形態では、安定化組成物は、約0.1%から約0.2%(w/v)までの濃度のHSA、約4%から約6%(w/v)までのトレハロース濃度、約2%から約4%(w/v)までのマンニトール濃度を含んでいてもよく、アラニン濃度は、8mMから22mMまでであり、メチオニン濃度は、1mMから5mMまでであり、MSG濃度は、8mMから12mMまでであり、尿素濃度は、0.1%から0.3%(w/v)までである。弱毒生ウイルスを安定化するためのある製剤は、これらに限定されないが、組換えHSA、スクロース、アラニン、及び尿素を含んでいてもよい。これらの実施形態によると、HSA濃度は、約0.1%から約0.2%(w/v)までであってもよく、スクロース濃度は、約4%から約6%(w/v)までであってもよく、アラニン濃度は、約8.0mMから約22mMまでであってもよく、尿素濃度は、約0.1%から約0.3%(w/v)までであってもよい。他の安定化製剤は、組換えHSA、スクロース、メチオニン、及び尿素を含んでいてもよい。組換えHSA濃度は、約0.1%から0.2%(w/v)までであってもよく、スクロース濃度は、約4.0%から約6.0%(w/v)までであってもよく、メチオニン濃度は、約1.0mMから約5.0mMまでであってもよく、尿素濃度は、約0.1%から約0.3%(w/v)までであってもよい。他の実施形態では、安定化製剤は、組換えHSA、スクロース、アルギニン、及び尿素を含んでいてもよく、組換えHSA濃度は、0.1%から0.2%(w/v)までであってもよく、スクロース濃度は、4%から6%(w/v)までであってもよく、アルギニン濃度は、10mMから50mMまでであってもよく、尿素濃度は、0.1%から0.3%(w/v)までであってもよい。他の安定化製剤は、組換えHSA、トレハロース、アルギニン、及び尿素を含んでいてもよく、組換えHSA濃度は、約0.1%から0.2%(w/v)までであり、トレハロース濃度は、約4%から6%(w/v)まであり、アルギニン濃度は、約10mMから50mMまでであり、尿素濃度は、約0.1%から0.3%(w/v)まである。他の実施形態では、安定化組成物は、組換えHSA、トレハロース、MSG、及び尿素を含んでいてもよい。これらの実施形態によると、HSA濃度は、約0.1%から約0.2%(w/v)までであってもよく、トレハロース濃度は、約4.0%から約6.0%(w/v)までであってもよく、MSG濃度は、8mMから約12mMまでであり、尿素濃度は、0.1%から0.3%(w/v)までである。
【0088】
本明細書の幾つかの実施形態は、輸送のため又は他の理由のため部分的に又は完全に脱水された弱毒生ウイルス組成物に関する。これらの実施形態によると、組成物は、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上脱水されていてもよい。これらの実施形態によると、ウイルスワクチン組成物は、脱水されていてもよく、薬学的に許容される組成物を小児又は若年成人に投与する前に、任意の公知の安定化組成物に再水和することができる。
【0089】
ある実施形態では、対象は、ヒト、又は獣医学的な及び/若しくは飼育された動物、又は家畜、又は野生動物等の哺乳動物であってもよい。ある実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、20歳以下のヒト小児等の、若年対象の免疫に有効であってもよい。小児に使用されている現行のデングウイルスワクチン/免疫原性組成物(例えば、デング/黄熱病キメラ)に関する技術水準は、9歳以下の小児では効力及び/又は免疫原性が低いことが報告されているが、本明細書で開示された免疫原性組成物は、約1歳から約17歳まで、又は約1歳から約9歳若しくはそれよりも年長の小児において、有効な免疫応答を生成することができる。本明細書で開示された免疫原性組成物は、技術水準と比較して、優れた効力及び免疫原性を示す。
【0090】
1つの例示的な方法では、示されている4つ全てのデングウイルス血清型(例えば、四価製剤)を有する、本明細書で開示された免疫原性組成物であって、対象において4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘発することができる組成物を、対象に投与してもよい。ある実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、本明細書で開示された種々のデングウイルス血清型構築体又は弱毒生デングウイルスのポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの組合せを含んでいてもよい。他の実施形態では、免疫原性組成物は、配列番号9(プレマスター)、配列番号11(MVS)、配列番号13(WVS)、又は配列番号15(BVS)により表される、改変弱毒生デング-2ウイルス血清型をコードする核酸配列を有するポリヌクレオチド;配列番号1(プレマスター)、配列番号3(MVS)、配列番号5(WVS)、又は配列番号7(BVS)により表される、改変弱毒生デング-2ウイルス血清型に由来する非構造タンパク質及びデング-1ウイルス血清型に由来する構造タンパク質をコードする核酸配列を有するデング-1/デング-2キメラポリヌクレオチド;配列番号17(プレマスター)、配列番号19(MVS)、配列番号21(WVS)、又は配列番号23(BVS)により表される、改変弱毒生デング-2ウイルス血清型に由来する非構造タンパク質及びデング-3ウイルス血清型に由来する構造タンパク質をコードする核酸配列を有するデング-3/デング-2キメラポリヌクレオチド;及び配列番号25(プレマスター)、配列番号27(MVS)、配列番号29(WVS)、又は配列番号31(BVS)により表される、改変弱毒生デング-2ウイルス血清型に由来する非構造タンパク質及びデング-4ウイルス血清型に由来する構造タンパク質をコードする核酸配列を有するデング-4/デング-2キメラポリヌクレオチドを含んでいてもよい。これらポリヌクレオチドは、それらがコードする種々のポリペプチドを伴って又は伴わずに含まれていてもよい。ある実施形態では、本明細書で開示された免疫原性組成物は、配列番号10(プレマスター)、配列番号12(MVS)、配列番号14(WVS)、又は配列番号16(BVS)により表される、改変弱毒生デング-2ウイルス血清型に対応する1つ又は複数のポリペプチド;配列番号2(プレマスター)、配列番号4(MVS)、配列番号6(WVS)、又は配列番号8(BVS)により表される、デング-1/デング-2キメラポリヌクレオチドに対応する1つ又は複数のポリペプチド;配列番号18(プレマスター)、配列番号20(MVS)、配列番号22(WVS)、又は配列番号24(BVS)により表される、デング-3/デング-2キメラポリヌクレオチドに対応する1つ又は複数のポリペプチド;及び/又は配列番号26(プレマスター)、配列番号28(MVS)、配列番号30(WVS)、又は配列番号32(BVS)により表される、デング-4/デング-2キメラポリヌクレオチドに対応する1つ又は複数のポリペプチドを含んでいてもよい。
【0091】
本明細書で開示された種々のポリヌクレオチド及びポリペプチド(例えば、TDV-1、TDV-2、TDV-3、及びTDV-4)の濃度は、ほぼ同じであってもよく、又はあるデングウイルス血清型は、1つ又は複数の血清型の必要性又は流行に応じて、他のものよりも多くの量で免疫原性組成物中に存在していてもよい。これらの実施形態によると、種々の濃度又は比は、
図11A~
図11Bに示されているように、互いと比較したlogPFU濃度として表すことができる。例えば、TDV-1の、TDV-2、TDV-3、TDV-4に対する比に基づく濃度を、本明細書で開示された免疫原性組成物の種々の四価製剤に適用することができる。濃度としては、これらに限定されないが、以下のものを挙げることができる:3:3:3:3、4:4:4:4、5:5:5:5、5:1:5:5、3:2:3:3、4:2:4:4、5:3:5:5、4:3:4:4、5:4:5:5、4:4:5:5のlogPFU濃度、又は当業者であれば本開示に基づき容易に認識されると考えられるような、例えば、製剤中に存在する血清型の数、所定の応答、及び所望の効果に応じた、デングウイルス血清型のいずれかの任意の濃度比。
【0092】
ある実施形態では、4つ全てのデングウイルス血清型に対するよりバランスのとれた免疫応答を誘導し、ウイルス干渉を低減するために、弱毒生デング-2ウイルスの濃度は、免疫原性組成物中の他のデングウイルス血清型の1つ又は複数よりも、0.5、1、1.5、2、2.5、3、又は4logPFU低くてもよい。現行のデングウイルスワクチン/免疫原性組成物に関する技術水準は、デング-2ウイルスに対する効力及び/又は免疫原性がより低いことが報告されているが、本明細書で開示された免疫原性組成物は、たとえ弱毒生デング-2ウイルスが、他のデングウイルス血清型よりも、少なくとも1logPFU低くてもよい場合でも、60%よりも多くの、ある場合には約85%の対象に、デング-2を含む4つ全てのデングウイルス血清型に対する有効な免疫応答をもたらすことができる製剤を提供する(例えば、
図15~
図16を参照)。本開示の免疫原性組成物は、技術水準と比較して、20歳以下の対象に対して優れた効力及び免疫原性を示し、全ての年齢で、4つ全てのデングウイルス血清型に対するよりバランスのとれた免疫応答を提供する。ある実施形態では、1つ又は複数の用量の弱毒生ワクチンを投与した後、ある製剤の効力を経時的に分析するために、血清転換率を評価してもよい。
【0093】
ある実施形態では、デングウイルスに対する免疫原性組成物は、約1.0×103から約5×105PFUまでの濃度を有するデング-1/デング-2キメラ;約1.0×103から約5×105PFUまでの濃度を有する弱毒生デング-2;約5.0×103から約5×105PFUまでの濃度を有するデング-3/デング-2キメラ;及び/又は約1.0×104から約5×106PFUまでの濃度を有するデング-4/デング-2キメラの1つ又は複数を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、四価製剤は、三価又は四価製剤中のデング-1/デング-2キメラ及び弱毒生デング-2よりも、少なくとも2分の1~1log高い濃度のデング-3/デング-2キメラを含んでいてもよく、デング-4/デング-2は、三価又は四価製剤中のデング-1/デング-2キメラ及び弱毒生デング-2よりも、少なくとも2分の1~1log高い濃度であってもよい。ある実施形態では、本明細書で企図された二価、三価、又は四価製剤中のデング-3/デング-2及びデング-4/デング-2キメラの濃度は同じであってもよく、又はデング-4/デング-2キメラ濃度は、デング-3/デング-4よりも高くてもよい。幾つかの実施形態では、本明細書で開示された組成物及び方法により治療される対象は、例えば、対象の場所及び旅行計画に応じて、年2回、年1回、18か月に1回、又は類似レジメンで治療することができる。ある実施形態では、デングウイルスに対する免疫原性組成物は、約2.0×104PFUの濃度を有するデング-1/デング-2キメラ;約5.0×103PFUの濃度を有する弱毒生デング-2;約1×105PFUの濃度を有するデング-3/デング-2キメラ;及び/又は約3.0×105PFUの濃度を有するデング-4/デング-2キメラの1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0094】
ある実施形態では、本明細書で開示された組成物を受容する小児又は若年成人は、デング感染又は他のフラビウイルス感染に関連する任意の症状又は徴候の発症について、ある期間にわたって評価することができる。例えば、小児又は若年成人は、デング熱又はデング感染に関連する他の症状若しくは徴候の発症について評価することができる。
【0095】
治療方法
本開示の1つの実施形態では、方法は、本明細書で企図された弱毒生及び/又はキメラウイルス構築体の一価、二価、三価、又は四価製剤を使用した、デングウイルス血清型に対する免疫応答の誘導を提供する。
【0096】
本開示の実施形態は、以下の非限定的な例により更に説明されるが、それらは、本開示の範囲に限定を加えるものとは、いかなる点でも解釈されるべきではない。むしろ、本明細書を読んだ後、当業者であれば自明であり得る、種々の他の実施形態、改変、及びそれらの等価物を、本開示の趣旨又は添付の特許請求の範囲から逸脱せずになし得うることが明白に理解されるべきである。
【0097】
実施例
以下の実施例は、本明細書に示されているある実施形態を説明するために含まれている。当業者であれば、以下の実施例で開示された技法が、本明細書で開示された実施において良好に機能することが発見された技法であり、したがってその実施のための好ましい様式を構成するとみなすことができることを理解するはずである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示された特定の実施形態に数多くの変更をなすことができ、それでも依然として本明細書の趣旨及び範囲から逸脱せずに類似の又は同様の結果を得ることができることを認識するはずである。
【0098】
実施例1
幾つかの例示的な方法では、本明細書において「マスターウイルスシード(MVS)」と呼ばれるものを生成するために使用された組成物が開示される。そうした組成物は、DEN-1、DEN-2、DEN-3、及びDEN-4等の1つ又は複数の弱毒生デングウイルスから導出することができる。ある方法では、組成物は、これらに限定されないが、TDV-1、TDV-2、TDV-3、及びTDV-4と呼ばれる、本明細書で開示された特定の構築体を含む1つ又は複数の弱毒生デングウイルスから導出することができる(例えば、以前にはDENVaxと表示されている)。他の例示的な方法では、こうした組成物を生成及び特徴付けるために使用される戦略が提供される。更なる他の実施形態では、四価デングウイルス製剤、並びにそうした製剤の遺伝子及び表現型の特徴付けが提供される。こうした構築体を使用して、1歳から20歳までの小児又は若年成人を治療するために有用な免疫原性組成物を生成することができる。
【0099】
プレマスターTDVウイルスの生産及び分析
デングウイルス(例えば、TDV)の連続増幅及び精製等の、ある手順を実施して、プレマスターデングウイルスシードを生成した。まず、全長組換えTDV cDNAから転写されたウイルスRNAを、生産認定細胞(例えば、ベロ細胞)にトランスフェクションすることによりTDVウイルスを再導出して、P1(継代1)ウイルスシードを得た。その後、デング-1~デング-4の各々に由来する4つのP1ウイルスを増幅し、プラークを精製して、候補プレマスターワクチンP7シードを得た(表1を参照)。ある試験を実施して、デングウイルスの継代を分析した。例えば、全長ゲノム配列決定により、P2(継代2)シードウイルスの4つ全てが、それらの相同性前駆体である研究由来で研究等級の候補ワクチンウイルスと遺伝子的に同一であることが示された。元のプラーク表現型もP2ウイルスで保持されていた。デングウイルスの各血清型(例えば、TDV1~4)毎に、6つのプラーク精製ウイルス(P3 A~F)をP2シードから単離した。単離したプラークを、更に2回、直接プラーク精製した。各ウイルスの3回目のプラーク精製(P5)を、ベロ細胞で2回増幅して(P6 A~F及びP7 A~F)、潜在的プレマスターP7 TDVシード(表1)を生産した。
【0100】
【0101】
P7シードのゲノム配列及びプラーク表現型の分析等の、幾つかの試験を更に実施して、P7 TDVシードを特徴付け、P2シードと比較した(表2)。P7ウイルスのプラーク表現型は、概してP2シードと類似していた。幾つかの例示的な実験では、ウイルス力価をモニターした。ウイルス力価は、5つのウイルスを除き、P7シードのほとんどで、6.0log pfu/mlを超える値に達した。ベロ細胞で10回以上連続継代した後の60個よりも多くの候補ワクチンウイルスシードをゲノム配列決定したところ、DENV-2 PDK-53遺伝ベクターの3つの主要弱毒化決定因子のうちNS1-53及びNS3-250には復帰突然変異事象がないことが特定された。これは、候補ワクチンウイルスシードにおいて、これら2つの遺伝子座が非常に安定していることを示唆する。リアルタイムRT-PCRにより、5’NCR-57遺伝子座の復帰突然変異率を正確に測定するために、高感度ミスマッチ増幅アッセイ(TaqMAMA)を開発した。幾つかの研究では、P7シードの24個全ての5’NCR-57復帰突然変異率を、TaqMAMAで測定した。アッセイにおける各ウイルスの入力ウイルスRNAの濃度に応じて、TaqMAMAの検出限界は、0.01%~0.07%復帰突然変異の範囲であった。これは、コンセンサスゲノム配列分析により検出可能な10~30%復帰突然変異感度限界よりもはるかに高感度である。得られたデータによると、24個のP7ウイルスのうち15個が、最小限の又は検出不能な復帰突然変異を示し(<0.07%)、1つのウイルス(TDV-3D)が、ほとんど100%の復帰突然変異を示し、8つのウイルス(例えば、TDV-1、1つのTDV-2、2つのTDV-3、及び4つのTDV-4)が、0.08%から12.85%までの範囲の部分的復帰変異を示した(表2)。TaqMAMAでの測定により低レベルの5’NCR57復帰突然変異を示した24個のP7ウイルスのうちの16個について、全長ゲノム配列決定を実施した。配列決定したウイルスは全て、他の2つのTDV弱毒化決定因子(NS1-53、NS3-250)を維持し、全てが、元の遺伝子改変された組換えcDNAクローンには存在していなかった更なる突然変異を獲得した(表2)。1つの例示的な目標ワクチン組成物では、TDV-1-A、TDV-2-F、TDV-3-F、及びTDV-4-Fを、各血清型の目標プレマスターシードとして選択した。これは、それらの遺伝子型及びプラーク表現型が、元の設計されたワクチン組換え体と最も緊密に類似していたからである。TDV-1-A、TDV-2-F、及びTDV-4-Fは、2つの非同義突然変異を有し、TDV-3-Fは、1つの非同義突然変異を有していた。この証拠は、これら4つのプレマスターシードで観察されたこれら更なる突然変異が、安全性の懸念又はウイルスに対する免疫原性の変更を引き起こさないことを示唆する。これらプレマスターシードを更に増幅して、MVSを生成した(P8と表示されているマスターシード、表1)。
【0102】
本明細書で提供された例示的な方法を使用して、純粋な供給源としてのクローンcDNAプラスミドから、in-vitroで転写されたウイルスRNAを精製し、ワクチン認定ベロ細胞にトランスフェクトして、ワクチンウイルスを生成した。最適な純度及び遺伝子安定性を有するワクチンシードが確実に製造されるように、連続プラーク精製及び全長ゲノム配列分析を、製造手順に組み込んだ。TDVの各血清型毎に6つのクローンウイルスを、潜在的プレマスターシードとして調製した。TaqMAMA及び完全ゲノム配列決定を含むゲノム分析、並びにウイルスプラーク表現型の特徴付けによりプレマスターシードを選択して、各血清型(血清型1~4)のマスターウイルスシード生産に向かって前進した。選択したプレマスターシードは、5’NCR-57遺伝子座での復帰突然変異が検出不能であり(<0.01%又は<0.07%)、それらのゲノムに1つ又は2つのアミノ酸置換を有し、以前に観察された小プラーク表現型を保持していた。
【0103】
【0104】
実施例2
別の例示的な方法では、マスターウイルスシード、ワーキングウイルスシード、及びバルクウイルスシードの組成物、並びにそれらの遺伝子及び表現型の特徴付けが記載される。これら組成物は、臨床材料を製造するため、及び最終的には商業的ワクチンを供給するために提供される。ワクチンシードの組成物が、臨床試験材料を製造するための最適な安全性及び遺伝子安定性を確実に有するように、連続プラーク精製及び全長ゲノム配列分析を製造手順に組み込んだ。
【0105】
MVS、WVS、及びBVSの生産及び製造品質管理
幾つかの研究では、4つのTDVのMVSを、認定ベロ細胞でプレマスターP7シードを増幅することにより生産した。他の研究では、MVSを使用して、セルファクトリー(cell factory)で大量のWVSを製作した。更に、TDVのBVSストックをWVSから増幅し、ヒト臨床試験に使用した。製品出荷の品質管理は、MVS、WVS、及びBVSの全てを、同一性、感染力価、不稔性、マイコプラズマ、並びにin vitro及びin vivo外来性因子に関して試験することを含む、幾つかの例示的な方法で実施した。シードは全て、血清型特異的RT-PCRアッセイを使用したウイルス同定試験に合格し、その血清型に対応する陽性増幅を示し、異種性血清型には陰性を示した(データ非表示)。MVS、WVS、又はBVSストックでは、検出可能なマイコプラズマ又は外来性因子は検出されなかった。
【0106】
1つの例示的な方法では、示されている4つ全てのデングウイルス血清型(例えば、四価製剤)を有する、本明細書で開示された免疫原性組成物であって、小児又は若年成人において4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘発することができる組成物を、小児又は若年成人に投与してもよい。
【0107】
MVS、WVS、及びBVSの遺伝子分析
ある例示的な方法では、選択したプレMVS(P7)からMVSを生成した後、上記で選択した株を生産し、それぞれのウイルスRNAを再び配列決定した。全長ゲノム配列決定により、TDV-1のMVSは、そのプレマスターシードと同一であったが、WVS及びその後のBVSは、E-483及びNS4B-108に2つの更なる置換を獲得したことが明らかになった(表2及び表3を参照)。E-483でのAla置換は、MVSでは遺伝子型の一部であったが、BVSでは最も有力な遺伝子型になった。TDV-2及びTDV-3は、それらのそれぞれのプレマスターシードと同一であった(表2及び表3)。TDV-2 MVSは、そのプレマスターシードと同一であった。WVS及びBVSは、NS4A-36及びNS4B-111に2つの更なる突然変異を持していた。両突然変異は、WVSでは部分的であり、BVSでは主要な遺伝子型であった。TDV-3のMVSも、プレマスターシードと同一であった。しかしながら、WVS及びBVSは、NS4A-23に更なるアミノ酸置換を含んでいた。TDV-4 MVSは、MVSの生産中に、遺伝子座NS2A-99に更なるアミノ酸置換(LysからLys/Arg混合遺伝子型への)を獲得した(表3)。そのWVS及びBVSは、NS2A-99 Lys/Arg混合遺伝子型を保持し、BVSは、追加のNS4B-238 Ser/Phe混合遺伝子型を有していた。また、コンセンサス配列結果は、MVS、BV、並びにWVSが、5’NCR-57、NS1-53、及びNS3-250遺伝子座に3つの弱毒化遺伝的決定因子を保持することを確認した。TaqMAMAによる最小安定弱毒化遺伝子座の分析は、5’NCR-57復帰突然変異率が、MVSでは<0.7%~0.13%であり、WVSでは≦0.07%であり、BVSでは<0.07~0.21%であることを示した。5’NCR-57遺伝子座における3%復帰突然変異を、ワクチンロット受け入れの最大許容率とみなした(表3)。
【0108】
【0109】
全長ゲノム配列分析により、TDV-4 MVSには更なるアミノ酸突然変異が発生したが、他の3つのTDV MVSロットは、それらのプレマスターシードのコンセンサスゲノム配列を保持したことが明らかになった。P1シードからプレマスター(P7)シードまでは、1つ又は2つの非同義突然変異が、所与のシードに生じたに過ぎなかった。P1からMVS(P8)シードまでには、2~7つのヌクレオチド置換が、任意の所与のTDVシードで特定され、これら置換のうち2~3つがアミノ酸変化をもたらしたに過ぎなかった。MVSのサイレント突然変異はいずれも、ウイルス複製に影響を及ぼし得る5’又は3’NCR内ではなかった。保存的変化ではないのは、TDV-2のprM-52 Lys-Gluの変化、及びTDV-4のNS2A-66 Asp-Gly置換のみである。TDV-4のNS2A-66突然変異は、DENV-2 PDK-53の非構造骨格部分にある。NS2A-66遺伝子座は、DENV-2の種々の株では、通常はAspであるが、DENV-4の場合、通常はGlyである。TDV-4におけるAspからGlyへの変化は、ベロ細胞におけるTDV-4の適応性に関連すると考えられる。TDV-2 prM-52突然変異は、成熟ウイルス粒子から切断されるprMのC末端部分に存在する。幾つかの例示的な方法では、表現型特徴付けを実施して、MVSシードにおける突然変異がいずれもワクチンの弱毒化表現型を著しくは変更しなかったことを確認した。
【0110】
TDVウイルスは、製造プロセス中、高い遺伝子安定性を示した。5’NCR、NS1-53、及びNS3-250に位置する3つの画定されているDENV-2 PDK-53弱毒化遺伝子座は、プレマスター株からバルクワクチン調製物へのTDVの連続継代に際し、コンセンサスゲノム配列の安定を維持した。5’NCR-57遺伝子座の高高感度TaqMAMAは、デングウイルス血清型のMVS、WVS(P9/ワーキング)、及びBVS(ワクチンのバルクウイルスシード)における復帰突然変異が最小限であるか又は検出不能であることを示した。TDV BVS調製物(P10等価物)の5’NCR-57復帰突然変異率は、ベロ細胞での10連続継代後に研究等級ワクチン候補で発生した5’NCR-57復帰突然変異率よりも著しく低かった(4~74%復帰突然変異)。本明細書で提供されたTDVシードの大規模製造戦略は、候補ワクチンウイルスに弱毒化マーカーを保持する遺伝子的に安定したワクチンシードをもたらした。
【0111】
TDVウイルス構築体は全て、安定化緩衝液で保管することができる(例えば、FTA、ポロキサマー407 F127(商標)(0.01%~約3.0%w/v)、及び約5%~約50%(w/v)トレハロース)、及び約0.01%~約3.0%アルブミン(例えば、rHSA))。
【0112】
安全性及びin vivo免疫原性
この例では、例示的な組成物が、皮下注射後に安全であり、本質的に、免疫不活性であることが示される。マウスで試験するための4つの異なる例示的な組成物を、以下のように選択した(データ非表示)。
【0113】
製剤1:15%トレハロース、2%F-127、1%rHSA
製剤2:15%トレハロース、2%F-127、1%rHSA、1mM CaCl
2/0.5mM MgSO
4
製剤3:15%トレハロース、2%F-127、1%rHSA、0.5%キトサン
製剤4:22.5%トレハロース、3%F-127、1.5%rHSA
製剤5:PBS
TDV MVSのプラーク表現型
1つの例示的な方法では、TDV MVSのプラーク表現型を、野生型デングウイルス及びベロ細胞でのそれらの相同性研究等級キメラウイルスと比較した(
図2)。TDV-1、-2、及び-3のMVSは全て、それらの野生型相同体よりも著しく小さく、ベロ細胞でのそれらの相同性研究等級ウイルスと非常に類似した(差は0.4mm以内)プラークを生成した。また、TDV-4 MVSは、野生型DENV-4よりも著しく小さかったが、元の実験室由来D2/4-Vキメラよりもわずかに大きかった(差は0.9mm)。
【0114】
図2には、対照野生型ウイルス及び研究等級ワクチン候補ウイルスと対比させた、TDV MVSのプラークサイズを示す例示的なヒストグラムが示されている。pi9日目に測定したアガロースオーバーレイ下のベロ細胞でのウイルスプラークの平均プラーク直径(mm)±SD(エラーバー)。黒色バーにより表されている野生型DENウイルス、及び白色バーにより表されている以前に発表されている研究等級ワクチン候補ウイルスは、対照及び灰色バーにより表されているTDVマスターワクチンシードとの比較のために含まれていた。
【0115】
TDV MVSの温度感受性
別の例示的な方法では、TDV MVSの温度感受性をベロ細胞で試験し、それらの相同性野生型及び元の研究等級キメラワクチンウイルスと比較した。野生型(WT)DENV-3 16562は、温度感受性ではなかった。wtデングウイルス血清型1及びデングウイルス血清型-4は、39℃で中程度の温度感受性を示した(力価は、37℃よりも39℃で、およそ1.0log
10pfu/ml低かった。
図3)。WTデングウイルス血清型-2 16681は、試験したWTデングウイルスの中で最も温度感受性であり、39℃で100分の1の力価低下を示した。TDV-1、-2、及び-3は、それらの元の相同性研究等級キメラワクチンウイルスと同程度に温度感受性であった(
図2)。これらTDV株の場合、39℃における力価は、2.0~3.0log
10pfu/ml低下した。TDV-4も温度感受性であり、力価は5分の1低減を示した。しかしながら、元の研究等級D2/4-Vの力価は、約10分の1低減を示した。最終安定化TDV-4 MVSは、デングウイルスの熱安定性を増強することが以前に実証されていたポロキサマー407、F127(商標)(及びこれら製剤を安定化するための他の作用剤(FTA又は二価製剤、アルブミン、及びトレハロース))を含んでいた。TDV-4 MVSにおけるF127(商標)の存在が、ベロ培養アッセイにおいてウイルスが顕著な温度感受性をあまり示さないことに寄付した可能性があった。別の実験では、F127(商標)の非存在下で、MVS由来TDV-4株の温度感受性を更に評価した。この株からポロキサマー407、F127(商標)を除去するために、ウイルスRNAを、TDV-4バルクウイルス調製物から単離し、ベロ細胞にトランスフェクトした。このTDV-4ウイルスは、ポロキサマー407、F127(商標)の非存在下では、感染後3日目に、D2/4 V研究株(力価は、1.5log
10pfu/ml低減した)と同様に温度感受性であると思われた(
図3)。
【0116】
図3には、TDV MVSの温度感受性を示す例示的なヒストグラムが示されている。野生型デングウイルス及び以前に発表されている研究等級のワクチン候補ウイルスが、比較のために含まれていた。TDV-4 MVSは、このアッセイでは、ウイルスの温度感受性結果を曖昧にしてしまう可能性のある更なるポロキサマー407、F127(商標)を含んでいた。F127(商標)の非存在下での代用TDV-4を分析する別の実験も含まれていた。37℃又は39℃においてベロ細胞で複製されたウイルスの平均力価±SD(エラーバー)。
【0117】
蚊C6/36細胞でのTDV MVS複製
幾つかの例示的な方法では、in vitro弱毒化表現型が保持されること確認するために、TDV MVSをC6/36細胞で増殖した。これは、研究等級キメラワクチンウイルスが、こうした蚊細胞で骨格DENV-2 PDK53ウイルスの弱毒化表現型を保持したことが知られているためである。wtデングウイルスと比較して、TDV-1、TDV-2、及びTDV-4 MVSは、感染後(pi)6日目に、C6/36細胞で著しい増殖低減を示した(少なくとも3log
10pfu/ml低減)(
図4)。TDV-3 MSVも、wtDENV-3 16562と比較して、増殖低減を示したが、低減は、それほど顕著ではなかった(1~2 log
10 pfu/ml低減)。しかしながら、TDV-3シードロットのC6/36力価は、元の研究等級キメラD2/3-VワクチンウイルスのC6/36力価と類似していた(差は、1log
10pfu/ml)。
【0118】
図4には、wtデングウイルス(黒色バー)及び研究等級ワクチンウイルス(白色バー)と比較した、C6/36細胞でのTDV MVS(灰色バー)の増殖制限をプロットした例示的なヒストグラムが示されている。pi6日目での、C6/36細胞で複製されたウイルスの平均力価±SD(エラーバー)。
【0119】
蚊全体におけるウイルス感染率、播種率、及び伝染率
幾つかの例示的な方法では、TDVの感染率及び播種率を、それらの親wtデングウイルスと比較した。ある例示的な実験では、ネッタイシマカ(Ae.aegypti)で経口感染実験を実施した。感染性血液餌を逆滴定してウイルス力価を測定した。親デングウイルスと各血清型のTDVとで類似していた血液餌力価による実験(差は、1log10pfu/ml未満)のみを、比較のために表4に含めた。TDV-1、TDV-2、及び研究等級D2 PDK-53-VV45Rは、経口給餌では蚊に感染しなかった。これは、それらの親ウイルスDENV-1 16007(44%感染)及びDENV-2 16681(43.3%感染)と有意に異なる結果である(p<0.0001)。蚊は、TDV-1及び-2では感染しなかったため、これら2つのワクチンウイルスに対する播種の懸念はほとんどなかった。TDV-4は、経口給餌で幾つかの蚊を感染させたが(55匹中2匹)が、感染率は、その親野生型ウイルスDENV-4 1036(50匹中8匹)よりも有意に低かった(p<0.05)。TDV-3は、5.2±0.02log10pfu/mlの血液餌ウイルス力価による2つの実験では蚊を感染させなかった(表4)。6.0log10pfu/mlの血液餌ウイルス力価による別の実験では、30匹の蚊のうちの1匹の蚊のみが感染した(データ非表示)。しかしながら、野生型デングウイルス-3 16562も、5.2log10pfu/mlでは非常に低い感染率(8%)を示した。より高い6.2log10pfu/mlの血液餌力価による別の実験でも、この率は増加しなかった(3%、30匹の蚊のうち1匹が陽性、データ非表示)。野生型(WT)デングウイルス-3及びデングウイルス-4は、野生型デングウイルス-1及びデングウイルス-2よりも、有意に低い感染率を示したが、感染蚊での平均ウイルス力価は、類似していた(3.1~3.9log10pfu/蚊)。対照的に、2匹の感染蚊のTDV-4力価は、両方とも最小限であった(0.7log10pfu/蚊)。これは、野生型デングウイルス血清型-4 1036により感染蚊の力価の1,000分の1であった(3.9±1.5pfu/蚊)。
【0120】
感染したこれらの蚊については、ウイルスが脚部に存在したか否かを決定することにより、中腸からの播種を評価することができた。4つの親DENVは、36.3%~62.5%の範囲の播種率をもたらした。脚部の平均ウイルス力価(単位はlog10pfu)は、0.9±0.3~2.2±0.7であった(陰性試料は除く)。2匹のTDV-4感染蚊はいずれも、脚部へのウイルス播種をもたらさなかった(表4)。脚部では播種ウイルスが検出可能であったものの、経口感染蚊の唾液では、4つのwtデングウイルスはいずれも検出不能であった。これは、経口給餌条件では、これらDENVの伝染率を測定するのに十分な感度を示さない場合があることを示唆する。したがって、その後、他の例示的な方法では、直接IT接種による非常にストリンジェントな人為的蚊感染を実施した(表4)。TDV-4を除いて全てのウイルス(wt及びTDV)が、IT接種したネッタイシマカの100%感染を達成した。TDV-4接種物は、他の3つのウイルス接種物よりもわずかに低いウイルス力価を示したが、これは、接種した蚊の70%の感染に成功したに留まっている。IT接種により達成された高い体内感染率にも関わらず、4つ全てのTDVウイルスは、wtデングウイルスと比較して(43~87%、表4)、有意に低いか(p<0.005)又は検出不能な伝染率(0~10%)を示した。TDVウイルスは、経口給餌後に感染及び播種をほとんど又は全く示さなかった。非常にストリンジェントなIT結果により、ネッタイシマカにおけるこれらTDVウイルスの伝染能力が最小限であることが確認された。
【0121】
【0122】
ベクターコンピテンスは、弱毒生フラビウイルスワクチンウイルスの重要な安全性要素である。以前には、研究等級DENV-2 PDK-53-VV45Rウイルス及びwt復帰突然変異誘導体がネッタイシマカで試験され、NS1-53-Asp弱毒化突然変異が、蚊複製を損なう最も有力な決定因子であることが判明した。DENV-2 PDK-53ワクチンの他の2つの主要弱毒化遺伝子座、ヌクレオチド5’NCR-57-T及びNS3-250-Valも、蚊における複製に対してある程度の阻害効果を示し、したがって蚊ベクターコンピテンスの更なる重複した制限をもたらした。本明細書に記載の幾つかの例示的な方法を使用して、4つ全てのTDV株の、蚊経口及びIT感染並びに複製を試験した。TDV-1、-2、及び-3は、経口感染ではネッタイシマカ蚊を一切感染させなかった(表4)。TDV-4は、経口曝露した蚊のわずか3.6%しか感染させなかった。これは、wtDENV-4感染蚊よりも低い蚊体内複製平均力価を有するwtDENV-4よりも著しく低いレベルであった。驚くべきことに、TDV-4は、感染蚊の脚部で検出された。これは、TDV-4が経口感染後に蚊中腸から播種することができなかったことを示唆した。TDV-1、-2、及び-4の感染率は全て、それらの野生型相当物よりも有意に低かったが、TDV-3とWT DENV-3 16562との差は、両ウイルスの感染率が非常に低かったため有意ではなかった。同じタイ国Mae Sot県で採取されたネッタイシマカで評価したDENVの他の野生型株と比較して、TDVの遺伝子改変に使用した親野生型デングウイルス株は、経口感染による感染率及び播種率がより低いように見えた。黄熱病(YF)17Dワクチンに基づくChimeriVax-DENワクチンの遺伝子改変に使用されたwtDENV-1 PUO359、DENV-2 PUO218、DENV-3 PaH881/88、及びDENV-4 1288は、47~77%の範囲の感染率を示した。対照的に、YF 17Dワクチンは、ネッタイシマカを感染させることができなかった。ChimeriVax株は、こうした高度に感染性のwtDENVに由来するprM-Eを含んでいたが、それらのYF 17D複製性骨格の蚊弱毒化表現型を保持している。また、本明細書で提供された結果は、DENV-2 PDK-53骨格の蚊弱毒化が、TDV株で維持されたことを示した。加えて、本明細書に記載の組成物に含まれる構築体中に、より低い蚊感染性を有するwtデングウイルス株を使用することにより、更なる安全性特徴が提供される。
【0123】
1つの例示的な方法では、経口感染結果は、TDVの蚊感染性及び播種能力が最小限であったことを示す。加えて、より感受性でストリンジェントなIT感染実験を実施して、TDVがネッタイシマカにより伝染する能力を更に分析した。IT結果は、それらのwt相当物と比較して、4つ全てのTDVウイルスの蚊伝染能力が検出不能又は最小限であったことを示した。TDV伝染は、理論的には、(1)蚊中腸を感染させるのに十分なウイルス血症力価を有するベクターがワクチン被接種体に給餌される場合、(2)ウイルスが、中腸上皮で複製可能であり、その後中腸に播種することができる場合、及び(3)播種ウイルスが、唾液腺で複製することができ、伝染に十分なウイルスを唾液中に放出する場合にのみ生じ得る。蚊の感染に必要なヒトウイルス血症の閾値は十分には確立されていないが、ヒトウイルス血症は、天然wtDENV感染後に106~108蚊感染用量50(MID50)/mlであり得る。このMID50は、希釈したヒト血漿を用いた蚊の直接IT接種に基づいていた。非ヒト霊長類でのTDVの分析は、TDV免疫化後のウイルス血症力価が、非常に低く(2.4log10pfu/ml未満)、2~7日間継続していたことを示した。ウイルス血症レベルが低く、TDVの蚊感染能力、播種能力、及び伝染能力が低いことを考慮すると、これらワクチンウイルスが、自然界で蚊により伝染され、ウイルス血症を引き起こす可能性は低い。
【0124】
したがって、1つ、2つ、3つ、又は4つ全てのデングウイルス血清型に対する安全で有効なワクチンを生成するための組成物に、血清型(P1~P10)のいずれかの継代のいずれかを使用することができることが提案される。
【0125】
乳仔マウスでの神経毒性
元の研究等級ワクチンウイルスは、DVBD/CDCにて自家維持した新生仔ICRマウスでは、神経毒性が高度に弱毒化されていた。これらマウスは全て、10
4pfuの各ワクチンウイルスによるic(大脳内)負荷を生き残った。その一方で、wtデングウイルス血清型-2 16681ウイルスは、種々の実験において、これらCDC-ICRマウスに62.5%~100%の死亡率をもたらした。幾つかの実験では、Taconic Labs社から得た市販のICRマウス(Taconic(登録商標)-ICR)を使用して、新生仔マウスでの神経毒性を研究した。新生仔Taconic(登録商標)-ICRマウスは、以前のCDC-ICRマウスよりも、デングウイルス血清型-2感染に有意により感受性であったことが観察された。
図5Aには、CDC-ICRコロニー及び10
4pfuのウイルスでic負荷したTaconic(登録商標)-ICR新生仔マウスでのwtデングウイルス血清型-2 16681の神経毒性が要約されている。Taconic(登録商標)-ICRマウス(32匹のマウスで100%の死亡率、平均生存期間は8.3±0.5日)は、以前のCDC-ICRマウス(72匹のマウスで91%の致死率、平均生存期間は14.6±2.3日)よりも、icデングウイルス血清型-2 16681負荷により感受性であった。
【0126】
他の例示的な方法では、TDV MVSの神経毒性を評価するために、まず、Taconic(登録商標)-ICRマウスを、1つ(n=16)又は2つの(n=31~32)実験において、およそ10
4pfuの用量のwtデングウイルス血清型-2 16681、D2 PDK-53 VV45R、D2/3-V、又はTDV 1~4ウイルスでic(脳内)負荷した(
図5B)。この用量では、D2/3-V研究等級ウイルス、並びにTDV-1及びTDV-3 MVSは、十分に弱毒化された神経毒性表現型を示した(病気又は死亡が無い)。予想通り、wtデングウイルス血清型-2は、「致死性」であることが判明し、平均マウス生存期間(AST)は8.3±0.8日であった。これらデングウイルス血清型-2-感受性Taconic(登録商標)-ICRマウスでは、D2 PDK-53-VV45R研究等級ウイルスは、81.3%の死亡率をもたらした。TDV-2 MVS及びTDV-4 MVSは、Taconic(登録商標)-ICRでは一様に致死性であり、それぞれ9.8±1.7、10.2±1.4、及び11.3±0.4日のAST値を示した。
【0127】
幾つかの例示的な方法では、wtデングウイルス血清型-2 16681ウイルスの神経毒性を、10分の1の低用量にて、D2 PDK-53 VV45R、TDV-2 MVS、及びTDV-4 MVS、並びにD2/4-V研究等級ウイルスと比較した(10
3pfu、
図5C)。wtデングウイルス血清型-2は、このより低い負荷用量では、一様に致死性の神経毒性表現型を保持し、ASTは9.0±1.4日であった。他の4つのウイルスは中程度の神経毒性表現型を示し、神経毒性の程度は、血清型特異的であった。D2 PDK-53-VV45Rウイルス及びその同系統TDV-2 MVSは有意な弱毒化を示した(それぞれ、生存率が32.3%でASTが13.1±3.8日、及び生存率が31.2%でASTが10.5±3.4日)。TDV-4 MVS及び研究等級D2/4-Vウイルスは両方とも、神経毒性が高度に弱毒化された(それぞれ、生存率が81.3%でASTが18.8±5.8日、及び生存率100%)。こうした結果は、TDV-1及び-3のMVSは、神経毒性の完全な弱毒化を示したが、TDV-2及び-4 MVSロットは、それらの相同性研究等級ウイルスワクチン候補と緊密に類似する弱毒化表現型を保持していたことを示唆した。
【0128】
図5A~
図5Cには、wtデングウイルス血清型-2及び様々な弱毒デングウイルスを含む種々の組成物で試験した新生仔マウスでの神経毒性を示す例示的なグラフが示されている。10
4pfuのウイルスでic負荷したCDC-ICR(n=72)及びTaconic(登録商標)-ICR(n=32)新生仔マウスにおける、wtDENV-2 16681ウイルスの神経毒性が要約されている、多数の実験をプールした結果(A)。10
4pfu(B)又は10
3pfu(C)の用量を用いてTaconic(登録商標)-ICRマウスで試験した、TDV MVSの神経毒性。1つの実験(n=16)又は2つのプールした実験(n=31又は32)での1群当たりの試験動物の数が示されている。
【0129】
WVS及びBVSのプラーク表現型
MVS、wtデングウイルス、及びそれらの相同性実験室由来研究等級キメラを用いたある研究をベロ細胞で実施して、WVS及びBVSのプラーク表現型を比較した(
図6)。平均プラークサイズを、各ワクチンウイルスの10個のプラークから、しかしながら低減した数のwtDENV-1、-3、及び-4から算出したTDV-1、-2、及び-3のMVSウイルスは全て、それらのwt相同体よりも著しく小さく、ベロ細胞でのそれらの相同性研究等級ウイルスと非常に類似した(差は0.4mm以内)プラークを生成した。また、TDV-4 MVSは、wtDENV-4よりも著しく小さかったが、元の実験室由来D2/4-Vキメラよりもわずかに大きかった(0.9mm)。TDV-2を除いて、TDV-1、-3、及び-4のWVS及びBVSの全てが、それらのwt相同体から生成されたものよりも著しく小さなプラークサイズを保持した。TDV-2 WVS及びBVSは、ベロ細胞でのwtDENV-2ウイルスのプラークと類似したプラークを生成したが、LLC-MK
2細胞で試験すると、TDV-2で製造したシードは全て、wtDENV-2(1.4±0.4)よりも若干小さく、実験室由来D2 PDK-53-VV45R(1.0±0.3)と類似したプラークを生成した(
図6)。
【0130】
小プラーク表現型、温度感受性、蚊細胞での複製低減、蚊による感染/播種/伝染の低減、及び新生仔ICRでの神経毒性低減を含む、MVSストックの組成物のウイルス弱毒化の表現型マーカーの評価を査定した。結果は、TDVの全てが、元の研究等級ワクチンウイルスに類似した、予想通りの弱毒化表現型を保持していたことを示した。弱毒化の原因である突然変異が、MVS、WVS、及びBVの全てで保存されていることを考慮すると、弱毒化表現型は、ヒト臨床試験のために製造される物質で保持されると予想することができる。
【0131】
図6には、TDV MVS、WVS、及びBVSのプラークサイズを示す例示的なヒストグラムが示されている。pi9日目に測定したアガロースオーバーレイ下のベロ細胞又はLLC-MK
2細胞でのウイルスプラークの平均プラーク直径±SD(エラーバー)。野生型DENV及び以前に発表されている研究等級ワクチン候補ウイルスが、対照及び比較のために含まれていた。
【0132】
蚊C6/36細胞でのウイルス複製
以前の研究では、研究等級PDK-53に基づくキメラワクチンウイルスは、C6/36細胞では、骨格DENV-2 PDK53ウイルスの弱毒型表現型を保持したことが示された。幾つかの例示的な方法では、大規模製造後にこのin vitro弱毒化マーカーが保持されることを確認するために、TDV MSV、WVS、及びBVSを、C6/36細胞で増殖した。野生型デングウイルスと比較して、製造されたシードは、TDV-3を除いて、C6/36細胞でpi6日目に顕著な増殖低減(少なくとも3log
10PFU/ml低減)を示した(
図7)。TDV-3シードも、wtDENV-3 16562と比較して、増殖低減を示したが、低減は、それほど顕著ではなかった(1~2log
10pfu/ml低減)。しかしながら、TDV-3シードロットの力価は、元の研究等級キメラD2/3-Vワクチンウイルスと類似していた(差は、1log
10pfu/ml以内)。
【0133】
図8には、C6/36細胞でのTDV MVS、WVS、及びBVSの増殖制限をプロットした例示的なヒストグラムが示されている。pi7日目のC6/36細胞で複製されたウイルスの平均力価±SD(エラーバー)。wtデングウイルス及び以前に発表されている研究等級のワクチン候補ウイルスが、比較のために含まれていた。
【0134】
乳仔マウスでの神経毒性
更なる実験を実施して、新生仔ICRマウスでの神経毒性を分析した。10
4PFUの頭蓋内用量では、wtDENV-2 16681及びD2 PDK-53-VV45Rの生存率は、ICRマウスでは、それぞれ0%及び18.8%であったが(
図9A)、CDC ICRマウスでは、wtDENV-2 16681が約20%であり、D2 PDK-53-VV45Rが100%であった。この研究では、TDV-1及びTDV-3 MVSは、マウスでは10
4PFUの用量で弱毒化されたが(100%生存)、TDV-2及びTDV-4のMVSは、10
4PFUを超える用量では100%死亡率を引き起こした(
図5A)。しかしながら、10
3PFUの用量のウイルスで試験すると、TDV-2(31.3%生存)及びTDV-4(81.3%生存)は、野生型デングウイルス血清型-2 16681(0%生存)と比べて神経毒性の低減を示し、それらの生存率は、それぞれ研究等級ワクチン候補D2 PKD-53-VV45R(32.3%)及びD2/4-V(100%)に類似していた(
図9B)。この研究には、比較のための野生型DENV-1、-3、又は-4は含まれていなかったが、以前の研究では、野生型DENV-1 16007は、ic経路によるCDC-ICRマウスでは弱毒化されたが、野生型DENV-3 16562及びDENV-4 1036は両方とも、CDC-ICRマウスでは高度に病原性であった(0%生存)ことが示されていた。これら3つの野生型DENVは、より感受性のTaconic(登録商標)ICRマウスと類似した又はより高い病原性を示す可能性が高い。したがって、それらの相同性TDV MVSと比較するために、これら野生型デングウイルスを含めても、役に立つ情報はもたらされないと考えられた。この研究は、4つ全てのTDV MVS及び元の実験室由来候補ワクチンウイルスが、野生型cDENV-2 16681と比べて、同等のマウス弱毒化表現型を示すことを示した。
【0135】
図9A~
図9Bには、新生仔ICRマウスでのTDV MVSの神経毒性データの例示的なグラフが示されている。(A)10
4PFUの用量でのウイルスのIC接種。(B)10
3PFUの用量でのウイルスのIC接種
TDVのシードロットは全て、同一性、不稔性、及び望ましくない作用剤の不含有について試験した。全長ゲノム配列分析により、TDV-4 MVSには1つの追加のアミノ酸突然変異が発生したが、他の3つのTDV MVSは、それらのプレマスターシードのコンセンサスゲノム配列を保持したことが明らかになった。WVSロットでは、TDV-3は、追加のアミノ酸突然変異を獲得し、他の3つの血清型は、それらのプレマスターシードに比べて、2つの追加のアミノ酸置換を蓄積させた。4つ全てのBVSロットのゲノム配列は、それらのWVSロットと同一であった。全体的に、P2シードからプレマスター(P7)シードまででは、1つ又は2つの非サイレント突然変異が、所与のシードに生じたに過ぎなかった。プレマスターとBCS(P10)シードとの間には、1~2つのヌクレオチド置換が観察されたに過ぎず、それらは全て、単一のヌクレオチド変化を除いて、NS2A、4A、又は4Bで生じ、残基E-483に、保存されたグリシン及びアラニンをもたらした。P2からBVS(P10)シードまででは、合計で3~8つのヌクレオチド置換が、任意の所与のTDVシードで特定され、これら置換のうち2~4つがアミノ酸変化をもたらしたに過ぎなかった。MVSのサイレント突然変異はいずれも、ウイルス複製に影響を及ぼし得る5’-又は3’-NCR内ではなかった。こうした結果は、TDVウイルスが、製造中、遺伝子的に高度に安定していたことを示唆する。5’NCR、NS1-53、及びNS3-250に位置する3つの画定されているDENV-2 PDK-53弱毒化遺伝子座は、BVSストックを生成するためのTDVの連続継代に際し、コンセンサスゲノム配列の不変化を維持した。5’-NCR-57遺伝子座の高高感度TaqMAMAは、TDVのMVS、WVS、及びBVSでの復帰突然変異が最小限であるか又は検出不能であった。最も高い復帰突然変異率は0.21%であり、TDV-2 BVSで特定された。P10等価BVSの復帰突然変異率(<0.07%~0.21%)は、ベロ細胞の連続継代後に他のワクチン候補で発生した復帰突然変異率よりも有意に低かった(P10までに4~74%復帰突然変異)。これは、TDVシードを大規模製造するためのこの戦略が、候補ワクチンウイルスの遺伝子安定性及び弱毒化マーカーの保持を維持することに成功していることを示唆する。
【0136】
本明細書で開示されたMVSストックは、将来的にWVS及びBVSロットの製造に使用されることになるため、小プラーク表現型、温度感受性、蚊細胞での複製低減、蚊全体における感染/播種/伝染の低減、及び新生仔ICRマウスでの神経毒性低減を含む、ウイルス弱毒化表現型の完全な項目の評価を、全てのMVS又はそれらの等価代用ストックで実施した。WVS及びBVSストックの場合、それらの弱毒化を確認するために、プラークサイズ、蚊細胞での感染性も実施した。結果は、TDVの4つの血清型のMVSストック全てが、小さなプラーク、C6/36細胞での複製低減、及びマウス神経毒性の低減等の、元の実験室ワクチンウイルスと類似した、予想通りの弱毒化表現型を保持した(
図6、8、及び9)。TDV-4を除いて、TDVの他のMVSストックは全て、
図3及び7に示されるように、39℃でTSであった。
【0137】
WVS及びBVSストックの2つの弱毒化表現型、小さなプラーク及びC6/36細胞での複製制限を分析し、確認した。MVSとBVSとの間の遺伝子変化は非常にわずかしかないため、それらは、MVSとしての弱毒化表現型を保持することが予想された。本報告書に記載の実験に加えて、Ag129マウス及び非ヒト霊長類における、製造されたTDVの安全性及び免疫原性を試験した。
【0138】
本明細書では、cGMPに基づくTDV MVS、WVS、及びBVSストックの製造を実証するための例示的な方法が提供される。BVSストックを使用して、現在ヒト臨床試験で評価中の四価TDVを製剤化した。幾つかの例示的な方法では、製造されたMVSの遺伝子安定性及び安全性を最適化するための独特な製造戦略が提供された。TDVの主な弱毒化遺伝子座は、以前に十分に特徴付けられているため、非常に高感度であり定量化可能なSNPアッセイであるTaqMAMAを開発して、ゲノム配列及びTaqMAMAを統合し、MVSを製作するために最適なプレマスターシードを特定した。MVSの遺伝子及び表現型の特徴を十分に分析して、これらウイルスが、ワクチンの安全性用の望ましい弱毒化を保持していたことを確認した。これは、プレマスターからBVSストックを製造するまでの全ての過程にわたって、全ての主要弱毒化遺伝遺伝子座を効率的に分析することができる唯一の弱毒生ウイルスワクチンであり得る。本明細書で提供された結果は、戦略的に設計された弱毒化生ワクチンが、ワクチン安全性の点で有利であることを例証した。
【0139】
実施例3
別の例示的な方法では、構築体は、デング-2血清型の非構造タンパク質ドメイン及びデング-1(TDV-1)、デング-3(TDV-3)、又はデング-4(TDV-4)血清型のいずれか1つに由来する構造タンパク質をコードする1つ又は複数の構築体に加えて、弱毒生デング-2血清型(TDV-2)に基づく改変弱毒生デングウイルスを含んでいてもよい。加えて、本明細書で開示された免疫原性組成物中の個々の構築体は、互いと比較したlogPFUのPFUに基づく比又は濃度で製剤化することができる。例えば、免疫原性組成物は、
図11Bに示されているように、TDV-1が、約2×10
4PFUの濃度で存在し、TDV-2が、約5×10
4PFUの濃度で存在し、TDV-3が、約1×10
5PFUの濃度で存在し、TDV-4が、3×10
5PFUの濃度で存在するように製剤化することができる。また、免疫原性製剤中の異なるデング血清型構築体の相対濃度は、
図11Bに示されているように、TDV-1:TDV-2:TDV-3:TDV-4の比に対応する約4:4:5:5等の、PFUのlog数に基づく比として表すことができる。幾つかの実施形態では、比は、約5:4:5:5であってもよく、並びに1つ又は複数の弱毒生デングウイルス血清型が、他のデングウイルス血清型と比較してより高いか又はより低い他の所定の比であってもよい。1つの例では、TDV-2の相対濃度を、TDV-1、TDV-3、及びTDV-4と比較して低減してもよく、これは、4つ全てのデング血清型を対象に投与すると、より良好なバランスのとれた応答を示す免疫原性組成物をもたらすことができる。例えば、TDV-1、TDV-2、TDV-3、及びTDV-4は、4つ全てのデングウイルス血清型(弱毒生デング-2、並びにデングウイルス-1、-3、及び-4のキメラ)に対する中和抗体を含んでいてもよく、デング-2を骨格として使用することにより、デング非構造タンパク質に対する多機能性及び交差反応性CB8+T細胞応答を誘導することができる。
【0140】
本明細書で開示されたデング免疫原性組成物の効力及び耐容性を小児で試験するために(歴史的に、デングウイルスに対して効果的に免疫することが困難な集団であり、以前のワクチンは、この集団、特に9歳以下の小児ではうまく機能していない)、別の例示的な方法では、2パート形式の無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施した。パート1は、年齢降下様式で実施され、21~45歳(n=38)の対象、12~20歳(n=36)の対象、6~11歳(n=38)の対象、及び1.5~5歳(n=36)の対象に、4つ全ての構築体、TDV-1、TDV-2、TDV-3、及びTDV-4を含むデングワクチン組成物の用量を投与した(
図12A)。パートIIは、パートIの延長として、1.5~11歳の健康な小児対象(n=211)で実施した(
図12B)。0日目にワクチン用量を投与し、組織試料(例えば、血液試料)を、0日目に及び治験全体にわたって種々の時点で対象から採取して、ウイルス血症、免疫原性、及び全体的な安全性を試験した(
図12A~12B)。パートIの場合、無作為化用量のワクチン及びプラセボを、約2:1のワクチン対プラセボ比で投与した。パートIIの場合、無作為化用量のワクチン及びプラセボを、約3:1のワクチン対プラセボ比で投与した。免疫原性組成物には、TDV-1が、約2×10
4PFUの濃度で存在し、TDV-2が、約5×10
4PFU濃度で存在し、TDV-3が、約1×10
5PFUの濃度で存在し、TDV-4が、約3×10
5PFUの濃度で存在していた。
【0141】
別の方法では、本明細書で開示されたデングに対する免疫原性組成物の小児における耐容性を調査するために、有害事象(AE)の発生率を調査した(データ非表示)。注射部位での疼痛、そう痒、及び紅斑、並びに浮腫の発生率を、TDV投与及びプラセボ投与間で決定した(自己申告)。種々のAEを、TDV(n=249)又はプラセボ(n=111)の第1の投与後の14日以内に、及びTDV(n=249)又はプラセボ(n=111)の第2の投与後の14日以内に調査した。全体として、研究対象には重症のワクチン関連AEは報告されず、血液化学的又は血液学的特徴に著しい変化はなかった。これは、本開示のデングワクチン組成物が小児において十分に耐容性であったことを示す。(データ非表示)
別の例示的な方法では、小児における本開示の免疫原性組成物の効力を試験するために、マイクロ中和試験を使用して、TDVワクチン組成物を注射した後で対象により産生される中和抗体の存在を、注射後720日までの種々の時点で測定した。
図13A~13Bに示されているように、TDVワクチン投与は、対象の初期免疫状態に関わらず、720日目まで持続した中和抗体応答を誘発した(
図13Aに示されているベースラインで血清陽性;
図13Bに示されているベースラインでデング未感作)。Denv-1抗体レベルは、黒抜き菱形印の短い点線により表されており、Denv-2抗体レベルは、黒抜き四角印の実線により表されており、Denv-3抗体レベルは、黒抜き三角印の長い点線により表されており、Denv-4抗体レベルは、X印の点線により表されている。0日目及び90日目に対応する用量は、上向きの黒抜き矢印により示されている。
【0142】
別の例では、デング免疫原性組成物が、初期免疫状態に関わらず小児に四価応答を誘発することができるか否かを試験するために、研究対象の血液陽性を、TDVワクチン組成物を注射した後で注射後720日以内の種々の時点で測定した。
図14に示されているように、約60%よりも多くの研究対象が、試験した注射後時点の全てにおいて、全てのデング血清型に対して血清陽性であった。約80%よりも多くの対象が、試験した注射後時点の全てにおいて、デング血清型の3つ以上に対して血清陽性であった。また、ほぼ100%の対象が、試験した注射後時点の全てにおいて、デング血清型の2つ以上に対して血清陽性であった。0、28、90、及び120日目のデータは、臨床試験のパートI及びII(n=249)から得たが、180、360、及び720日目のデータは、臨床試験のパートI(n=90)から得た。血液陽性は、MNT
50力価≧10であるとした。
【0143】
別の例示的な方法では、試験を実施して、本明細書で開示されたデングに対する免疫原性組成物が、ベースラインで血清陰性であった(デング未感作)小児に、4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘発することができたか否かを決定した。
図15に示されているように、約40%よりも多くの研究対象が、試験した注射後時点の全てにおいて、全てのデング血清型に対して血清陽性であった。約60%よりも多くの対象が、試験した注射後時点の全てにおいて、デング血清型の3つ以上に対して血清陽性であった。また、ほぼ100%の対象が、試験した注射後時点の全てにおいて、デング血清型の2つ以上に対して血清陽性であった。0、28、90、及び120日目のデータは、臨床試験のパートI及びII(n=133)から得たが、180、360、及び720日目のデータは、臨床試験のパートI(n=40)から得た。血液陽性は、MNT
50力価≧10であるとした。なお、本明細書で開示された四価組成物は、投与後720日まで持続することができる、4つ全てのデングウイルス血清型に対する免疫応答を誘導することが可能である。
【0144】
実施例4
1つの方法では、参加者は、以下の通り登録された。1794人が、0月目及び3月目に2つの用量のTDV(n=200;群1);0月目に1つの用量(n=398;群2);0月目に1つの用量及び12か月目に追加免疫(n=998;群3);又はプラセボ(n=198;群4)のいずれかを皮下に受容した。TDVは、全てのDENV対して中和抗体を誘発させた。誘発は、1月目でピークに達し、6月目に依然としてベースラインを超えていた。群1~4の6月目のGMT(95%CI)は、それぞれ以下の通りであった:DENV-1では、489(321、746)、434(306、615)、532(384、738)、62(32、120);DENV-2では、1565(1145、2140)、1638(1286、2088)、1288(1031、1610)、86(44、169);DENV-3では、160(104、248)、151(106、214)、173(124、240)、40(23、71);及びDENV-4では、117(79、175)、110(80、149)、93(69、125)、24(15、38)。初期血清陰性参加者では、2つの用量のTDVは、1つの用量よりも高い、DENV-3及び-4に対する平均GMT及び血清転換率を誘発させ、6月目の四価血清転換率は、1つの用量のTDV後の67.6%に対して、85.0%であった。
【0145】
研究設計及び参加者
これらの研究は、パナマ、フィリピン、及びドミニカ共和国の3つの病院/クリニックで実施された多施設無作為二重盲検プラセボ対照試験であった。健康な2~17歳の参加者が登録され、適格性が評価され、その後1:2:5:1の比に無作為化され、0月目及び3月目に2つの用量(群1);0月目に1つの用量(群2);0月目に1つの用量及び12月目に追加免疫(群3);又はプラセボ(群4)のいずれでTDVを受容した。1:2:5:1の無作為化比は、第3相開発でこの用量レジメンを使用する可能性を支持するため、1用量スケジュールでの追加免疫を用いた又は用いないデータを提供するように選択した。2用量スケジュール(0月目-3月目)の安全性及び免疫原性は、TDVに関する以前の研究で確立されており、この群(群1)は、より大きな1つの1用量群(群2及び群3)と比較するために使用した。
【0146】
手順
TDVの血清型組成物は、凍結乾燥製剤中、それぞれ、2.5×104、6.3×103、3.2×104、及び4.0×105プラーク形成単位(PFU)のTDV-1、TDV-2、TDV-3、及びTDV-4であった。プラセボは、リン酸緩衝生理食塩水であった。投与時にTDVを注射用水に再構成し、0.5mLのTDV又はプラセボのいずれかを皮下注射した(例えば、三角筋部)。試料は、以前に安定化製剤で凍結乾燥されていた。
【0147】
中和抗体を測定するための血液試料を、研究治療投与前の0月目及び3月目並びに1月目及び6月目に、免疫原性サブセットの参加者から採取し、中央分析室で分析した。
1つのエンドポイントは、マイクロ中和試験[MNT50]を使用して、1月目、3月目、及び6月目での4つのDENV血清型の各々に対する中和抗体の幾何平均力価(GMT)により表される免疫原性であった。第2の免疫原性エンドポイントは、1月目、3月目、及び6月目での4つのDENV血清型の各々に対する血液陽性率であった(MNT50による血液陽性は、中和力価の逆数≧10と規定した)。免疫原性エンドポイントは、主要なプロトコール違反をしておらず、有効な投与前及び投与後の血液試料が入手可能であった免疫原性サブセットの参加者を全て含んでいたパープロトコルセット(PPS)について要約した。
【0148】
統計分析
この治験は、主として記述的であるように設計されており、正式な帰無仮説の検定に基づいていなかった。したがって、試料サイズは、正式な統計的検出力の計算に基づいて決定されていなかった。計画試料サイズは、参加者が1800人であれば(免疫原性サブセットは600人)、単一用量の投与後の免疫応答の持続性及び追加免疫用量の効果を評価するために合理的な人数の参加者が提供され、およそ20000人の参加者での第3相有効性治験を支持するための適切な安全性データベースを提供すると仮定した。
【0149】
ベースラインでの、並びに1月目、3月目、及び6月目での血液陽性率及びデング中和抗体のGMTを、4つのTDV血清型の各々について個々に、95%信頼区間(CI)と共に算出した。少なくとも二価、三価、及び四価の血液陽性を有する参加者のパーセントを、各研究来院時に群毎にまとめた。これらのデータは、ベースラインデング血清型状態によっても示された。血液陽性は、≧1のDENV血清型についてMNT50の逆数が≧10であることと規定した。安全性データは、記述的に要約し、非自発的AEは年齢で分けて記載した(<6歳及び≧6歳)。
【0150】
6月目には、1743人の参加者が、計画レジメンを受けていた。研究参加者の平均年齢は、7.3歳であった(データ非表示)。PPS(免疫原性サブセット)の人口統計データは、2~5歳の割合が、安全性セットよりもPPSでより少ないことを除いて、概して、安全性セットの人口統計データを反映していた。PPSにおいてベースラインにて任意のDENVに対して血清陽性であった参加者の割合は、研究群間で類似していた(全体で54.7%;範囲51.2~57.4%)。TDVは、ワクチン接種を受けた参加者に、4つ全てのデング血清型に対する中和抗体を誘発した。最も高いレベルのデング中和抗体は、DENV-2に対して観察され(
図2)、その次がDENV-1に対するものであり、より低いレベルが、DENV-3及びDENV-4に対して観察された。各血清型のGMTは1月目にピークに達し、6月目(180日目)でも依然としてベースラインを超えていた。群1~4の6月目のGMT(95%CI)は、それぞれ、DENV-1:489(321、746)、434(306、615)、532(384、738)、62(32、120);DENV-2:1565(1145、2140)、1638(1286、2088)、1288(1031、1610)、86(44、169);DENV-3:160(104、248)、151(106、214)、173(124、240)、40(23、71);及びDENV-4:117(79、175)、110(80、149)、93(69、125)、24(15、38)であった。ベースラインで血清反応陰であった参加者では、2用量スケジュールは、群2及び群3の参加者に投与された単一用量よりも、6月目でより高いDEN-3及びDEN-4GMT(群1)を誘発したが、CIは重複していた(データ非表示)。ベースラインで血清陽性であった参加者では、GMT応答は、全てのTDV群で類似していた(データ非表示)。
【0151】
TDVワクチン接種を受けた参加者での個々のDENVに対する血液陽性率は、1月目までに全ての研究群で87.3~100%に増加し、6月目でも各DENVで依然として高いままであった(85.0~100%;
図3、左パネル)。ベースラインで血清陰性であった参加者では、2用量スケジュールは、1用量スケジュール(DENV-3で85.7%及び85.3%並びにDENV-4では81.4%の及び69.3%、データ非表示)よりも、6月目でDENV-3(97.5%)及びDENV-4(87.5%)に対してより高い血液陽性率をもたらした。しかしながら、95%CIは重複していた。
【0152】
ベースラインでは、全体として参加者の44.7%が、DENVに対して四価血液陽性であった。1月目までに、80%よりも多くのTDVワクチン接種参加者が、各研究群で四価血液陽性を示し、96%以上が、少なくとも三価血液陽性を示した(データ非表示)。多価血液陽性率は、6月目で維持されていた。6か月率は、2用量TDV後でわずかにより高かった(データ非表示)。ベースライン血清陰性参加者では、6か月四価血液陽性率は、1用量を受容した参加者よりも(群2及び群3で、70%及び65.3%)、2用量を受容した参加者でより高かったが(群1で85%)、95%CIは重複していた。
【0153】
全体として、1402人の参加者が、1用量のTDVを受容し、194人が2用量を受容した。32人の参加者により報告された40例のSAE(つまり、安全性セットの1.8%)はいずれも、研究ワクチン又は手順と関連していなかった。3例のSAEが、研究離脱に至った(食品着色剤に対するアレルギー反応、免疫性血小板減少紫斑病、及び急性糸球体腎炎)。研究ワクチン及び手順と無関係な1例の死亡が、6か月分析カットオフ後に生じた(肺炎、肺結核症、及び敗血症性ショックによる)。2例の妊娠が、研究中断に至ったが、その後、参加者は正常に出産し、新生児は健康であった。
【0154】
TDVとプラセボとの間には、第1の用量と第2の用量を比べても、又はベースラインでの血清陽性と比べても、自発的AE率に大きな差はなく、ほとんどが、研究ワクチンと無関係であった(表3)。全体として、免疫原性サブセットの562人の参加者のうちの15人(2.7%)が、ワクチンと関連した自発的AEを報告した。非自発的AEは、参加者の186人のうち161人(86.6%)で軽度であった。ベースライン血清陽性参加者では、250人中5人(2.0%)及び45人中0人(0%)が、それぞれ第1及び第2のTDV注射後に、ワクチン接種関連自発的AEを報告した。それに対して、プラセボを受容した参加者では、47人中1人(2.1%)及び252人中2人(0.8%)であった。初期血清陽性参加者では、202人中4人(2.0%)及び42人中1人(2.4%)が、それぞれ第1及び第2のTDV注射後に、ワクチン接種関連自発的AEを報告した。それに対して、プラセボを受容した参加者では、43人中0人(0%)及び203人中2人(1.0%)であった。
【0155】
ワクチン接種後の血液陽性は、それがワクチン接種に対する測定可能な応答の証拠を提供するという点で、ワクチン性能の重要な尺度であり得る。無論、保護との相関性が存在しないと、どの程度の強度の応答が保護に必要であるかを定めることは可能ではない。しかしながら、体液性免疫及び細胞性免疫を生成し、以前にデングに曝露されていない個体であっても、個体の大多数に全てのデング血清型に対する測定可能な血清転換を示すワクチンは、大規模ワクチン有効性治験での評価に好適であり、小児及び若年成人のデングウイルスに対する有効なワクチンである可能性が高いことを示唆する。この治験のために選択された用量スケジュールは、初期血清陰性対象の大部分に多価応答を生成するはずである。
【0156】
この例示的な大規模研究では、第2相コホートは、2か所のデング流行地域(アジア及びラテンアメリカ)から集められた。第2相コホートは、TDVでワクチン接種を受けることになる現実世界の集団に近似している。1用量のTDVと3か月の間隔をあけて投与される2用量TDVとの比較を評価するため、この第1の研究では、誘導された体液性免疫原性は、最初の用量後の6か月間ロバストなままであり、初期血清陰性ワクチン被接種者ではほんのわずかに低減したが、第2の用量の投与は、こうした減少の緩和(例えば、DENV-4)及びワクチン接種に免疫学的に応答する対象割合の増加(例えば、DENV-3)を支援したことが示された。TDVをワクチン接種した1596人の参加者では、新しい安全性の懸念は、6か月間出現しなかった。TDVは、ワクチン接種時のデング血清型状態に関わらず、2歳からの小児及び若年成人で安全であり、良好に耐容性であることが確認された。
【0157】
フラビウイルスキメラの他のワクチンが、幾つかの地域で認可されたが、それらは、9歳未満の小児には承認されていない。こうしたフラビウイルスキメラは、DENV-1及び-2に対して35~50%の血清型特異的保護を誘導し、デング未感作レシピエントでの効力はより低かった。したがって、以前のデング曝露及び感染血清型に関わらず、全ての年齢のレシピエント、特に9歳未満のレシピエントで、4つ全てのDENV血清型に対して安全で有効であるワクチンに対する必要性が依然として存在する。TDVの有望な第2相結果は、ワクチン接種時のデング血液陽性に関わらず、幅広い年齢層にわたる(特に小児での)TDVの使用を支持するために設計された研究での、2用量スケジュールの第3相評価の開始を支持する。
【0158】
材料及び方法
ウイルス及び細胞
DENV-1 16007、DENV-2 16681、DENV-3 16562、及びDENV-4 1034は、野生型(wt)DENV対照としての役目を果たした。それらは、4つの組換えTDVワクチン候補の親遺伝子型ウイルスであった。D2/1-V、D2 PDK-53-VV45R、D2/3-V、及びD2/4-Vと表示されているTDV前駆研究等級ウイルスは、以前に調製及び特徴付けられていた。ワクチン生産用のマスター及びワーキングセルバンク製作のために使用したベロ(アフリカミドリザル腎臓)細胞は、ワクチン製造のために世界保健機構(WHO)により特徴付けられているアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)CCL81細胞株に由来した(WCB-ベロ細胞)。
【0159】
cDNAクローンに由来する組換え生TDVウイルスの導出
cGMP生産条件下で候補ワクチンウイルスを再導出するために、以前に遺伝子改変されたDENV感染性cDNAクローン、pD2-PDK-53-VV45R、pD2/1-V、pD2/4-V、及び完全ゲノム長ウイルスcDNAを含むin vitroライゲーションpD2/3-Vを使用して、新たなウイルスRNA転写物をin vitro転写により以前に記載されているように製作した。簡潔に述べると、XbaIで線形化したDENVゲノムcDNAを、プロテイナーゼKで処理し、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させてあらゆる残留タンパク質を除去し、その後転写の前に無RNaseのTris-EDTA緩衝液に懸濁した。製造業者の推奨プロトコールに従ってAmpliScribe T7高収率転写キット(Epicentre Technologies社)を使用し、in vitro転写を実施した。RNA A-cap類似体、m7G(5’)ppp(5’)A(New England BioLabs社)を、2時間の転写反応中に組み込んで、5’-末端A-capをRNA転写物に付加した。その後、試料をDNaseIで処理して、テンプレートcDNAを消化し、その後、低pHフェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈澱を行って、残留DNA及びタンパク質を除去した。無RNase水に懸濁した精製RNA転写物を、20μlアリコートに分配し、細胞をトランスフェクションする準備ができるまで、-80℃で保管した。RNA転写物の完全性及び濃度は、アガロースゲル電気泳動法により分析した。各20μlアリコートは、エレクトロポレーションにより0.4~1×107個の生産認定ベロ細胞のトランスフェクションを可能にするのに十分なゲノム長ウイルスRNAを含むと推定した。
【0160】
WCB-ベロ細胞への各RNA転写物のトランスフェクションは、Shantha Biotechnics社のcGMP施設で実施された。TDV RNA転写物を解凍し、400μlのベロ細胞懸濁液(1×107細胞/ml)と混合し、Gene Pulser Xcellトータルシステム(BioRad Laboratories社)によるエレクトロポレーション用の予め冷却しておいた無菌エレクトロポレーションキュベット(4mmギャップ)に移した。各試料を、250V/∞ Ohms/500μFで1回パルスし、室温で10~15分間インキュベートし、30mlの細胞増殖培地(10%FBSを有するMEM)を含有する75cm2フラスコに移し、36℃±1℃、5%CO2で6~11日間インキュベートした。培地を回収し、遠心分離により清澄化し、安定化させ、小アリコートにして-60℃未満で保管した。トランスフェクションで得られた候補ワクチンストック(継代レベル1はP1と命名した)のウイルス力価を、ベロ細胞でのプラーク滴定アッセイにより決定し、TDVシードの更なる増殖に使用した。
【0161】
TDVウイルスシードの製造
P1ウイルスシードを使用して、製造ロットの最適な遺伝子安定性及び安全性を保証するように設計された戦略により、TDVプレマスター、マスター、ワーキング、及びバルクウイルスシードロットを増殖した。この戦略は、3回の連続プラーク精製、並びに継続的なシード生産に最適なクローンウイルス集団を選択するための種々の継代レベルでのウイルス遺伝子分析を含んでいた(表1)。簡潔に述べると、トランスフェクト細胞から回収したP1シードを、0.001のMOIでベロ細胞に感染させることにより1回増幅して、P2シードを生成した。P2シードストックのアリコートを、プラーク形態及び完全ウイルスゲノム配列決定により評価した。遺伝子的に確認したP2ストックを、下記のプラーク滴定セクションに記載されているように、オーバーレイ培地を有するベロ細胞単層にプレーティングして、十分に単離されたプラークを生成した。ニュートラルレッドで視覚化した後、ワクチンウイルスの4つの血清型の各々から6つの個々のプラークを単離し(プラーククローンA~F)、0.5mlの培地に混合した(継代P3)。6つのプラーク懸濁液の各々を2回の更なるラウンドのプラーク精製にかけ、それぞれ、継代P4及びP5で2回及び3回プラーク精製したウイルスシードを得た。P5ウイルスを、2連続ベロ継代により増幅して、P7シードストックを生産した。
【0162】
スポット配列決定及び/又は以前に開示されたTaqman(登録商標)に基づくミスマッチ増幅突然変異アッセイ(TaqMAMA)並びにプラーク表現型分析を使用した、3つの主要TDV弱毒化遺伝子座の遺伝子分析を実施して、24個のP7シード全てをスクリーニングした。その後、適切な初期特徴を有するシードを、全長ゲノム配列決定により更に特徴付けた。こうした分析の結果、各TDV血清型の6つ(クローンA~F)P7シードのうちの1つを、DENV-2 PDK-53弱毒化突然変異の存在、最小限のゲノム配列変更、及び予想通りのプラーク表現型に基づいて選択して、プレマスターシードとした。各選択したプレマスターシードを、ベロ細胞の複数の175cm2フラスコ中、0.001のMOIでウイルスを1回継代することにより増殖して、マスターウイルスシード(MVS又はP8)とした。TDV-4 MVSを除き、マスターウイルスシードは、感染後(pi)8~10日で回収した。MVSストックを、感染後(pi)6~10日で回収し、遠心分離により清澄化し、スクロース/ホスフェート/グルタメート溶液(それぞれ、終濃度7.5%のスクロース、3.4mMのリン酸二水素カリウム、7.2mMのリン酸二カリウム、5.4mMのグルタミン酸一ナトリウム)及び0.95~1.90%のFBS(終濃度)を添加することにより安定化した。TDV-4 MVSは、その収率を最適化するために異なる方法で調製した。簡潔に述べると、複数の細胞フラスコを、DENVウイルス熱安定性を増強することが実証されている0.1%のF-127(商標)、ポロキサマー407(他のEO-POブロックコポリマーが評価されており、ここで代わりに使用してもよい。付与特許を参照)の存在下にて、0.001のMOIでTDV-4プレマスターシードに感染させた。感染培地をpi6~10日で回収し、17%のFBS(終濃度)で安定化し、プールし、凍結した。4つ全てのTDV MVSストックを、1mlのアリコートとして-60℃未満で保管した。
【0163】
TDVワーキングウイルスシード(WVS)は、0.001のMOIにてMVSをベロ細胞培養中で1回継代することにより調製した。この手順は、多層セルファクトリー(6360cm2)で培養したこと以外は、MVSの生産と同様であった。WVSストックを10μM及び0.45μMフィルターでろ過し、MVSに使用したものと同じ安定化剤で安定化し、30mlのPETGボトル又は2.0mlのクライオバイアルにアリコートし、-60℃未満で保管した。
【0164】
ある方法では、コンフルエントベロ細胞の複数のセルファクトリー(各々6360cm2)を、0.001のMOIを達成するように希釈した90mLのWVSで感染させることにより、バルクウイルスシード(BVS)を調製した。WVS接種物の希釈に使用した培地は、無血清の0.1%F-127(商標)を含んでいた。1.5時間の吸着後、細胞を、PBSで3回洗浄し、800mlの無血清DMEM培地を各セルファクトリーに添加し、ファクトリーを、5(±0.5)%CO2中36(±1)℃でインキュベートした。4日間のインキュベーション後、培地の小アリコートを、無菌試験のために収集した。ウイルスを、pi5日目~10日目に回収し、0.45um孔径フィルターによるろ過で直ちに清澄化し、1Lの各清澄化ウイルスプールを、500mlの3×FTA緩衝液(PBS中の終濃度が15%のトレハロース、1.0%のPluronic(登録商標)F-127(商標)ポロキサマー407、0.1%のヒトアルブミンUSP、pH7.4)を添加することにより安定化した。安定化ウイルスを、1LのPETGボトルに分配し、その後プールして品質管理試験を行うために、-60℃未満で凍結保管した。105PFU/mlを超えるウイルス力価及び許容可能な残留DNAレベルを有する全ての安定化ウイルス回収物を、32℃の水浴で急速解凍し、無菌的にプール及び混合した。各プールした1価BVSを、ラベル付きPETG容器に分配し、更なる使用まで-60未満で保管した。
【0165】
製造製品品質管理
MVS、WVS、及びBVSシードを、同一性、不稔性、及び検出可能な外来性因子に関して試験した。各ワクチンストックの同一性は、TDV血清型特異的プライマーを用いたRT-PCRにより確認した。増幅したcDNA断片は、4つのTDV血清型の各々の特定を可能にするE/NS1キメラ接合部位を含んでいた。各シードを、4つ全ての血清型特異的RT-PCR反応で試験して、ウイルス同一性、及び異種性TDV血清型の交差汚染がないことを確認した。無菌試験は、USP71(米国薬局方、セクション71)に従って実施した。マイコプラズマ試験を実施した。
【0166】
以下のin vitro及びin vivoウイルス汚染試験は全て、シードの製造中に収集した未清澄化で未安定化のTDV回収物を使用して実施した。回収した感染性培地を、まず、36±1℃で1時間、DENVウサギポリクローナル抗血清(Inviragen社)で中和して、DENVを不活化した。in vitro試験では、中和したシードを、25cm2フラスコ中で、3つの指標細胞株、MRC5、VERO、及びMA104に接種した。エコーウイルス(CPE対照)又はムンプスウイルス(赤血球吸着対照)を、それぞれ陽性CPE又は赤血球吸着対照として使用した。細胞は全て、合計14日間にわたってCPEを毎日モニターした。14日間の終わりに、培養上清を取り除き、10mLのモルモット赤血球細胞(RBC)溶液(3mLの0.5%モルモットRBCリン酸緩衝生理食塩水溶液を、細胞増殖培地で10mLにしたもの)と取り替えた。その後、フラスコを5±3℃で30分間インキュベートし、その後室温で30分間インキュベートした。単層をPBSで洗浄し、赤血球吸着を示すRBCのあらゆる星形凝集塊の存在を10×の拡大率で観察した。
【0167】
外因性因子のin vivo試験を、乳仔マウス、離乳後マウス、及びモルモットで実施した。乳仔マウスに、0.1ml又は0.01ml(各用量群10匹マウス)のDENV抗血清中和シード試料を腹腔内(ip)注射で接種した。同様に、10匹の離乳後マウスに、0.5ml又は0.03mlの試料を各々ip接種した。モルモット(5匹/群)には、各々5.0mLをip接種した。乳仔マウスは、接種後合計14日間にわたって、病的状態及び死亡を毎日観察した。離乳後マウスは、接種後合計28日間にわたって観察し、モルモットは、接種後合計42日間にわたって観察した。被試験物質は、接種動物の≧80%が観察期間全体にわたって健康を維持した場合、許容基準を満たした。
【0168】
また、汚染物質のin vivo実験を、有胚ニワトリ卵で実施した。全ての試料について、10個の有胚雌ニワトリ卵(9日齢)の尿膜腔液に、各々0.5mLのDENV抗血清中和試料を接種し、35℃で3日間インキュベートした。これら10個の卵から尿膜腔液を回収し、プールし、10個の新たな有胚卵の尿膜腔液(10~11日齢;0.5mL/卵)に継代し、更に3日間35℃でインキュベートした。同様に、各試料について、10個の有胚卵(6~7日齢)に、各々卵1個当たり0.5mL(TDV-2 1価BVS)又は卵1個当たり0.25mL(DV-1、TDV-3、及びTDV-4 BVS)を卵黄嚢への注射により接種し、9日間35℃でインキュベートした。これら10個の卵から卵黄嚢を回収し、プールし、10%懸濁液を、10個の新たな有胚卵(6~7日齢;0.5mL/卵)の卵黄嚢に継代し、更に9日間35℃でインキュベートした。尿膜腔液に接種した卵(初期及び継代接種物の両方)を、3日間インキュベーションした後、生存能について観察した。尿膜腔液の両プールは、4℃及び25℃で、ニワトリ、モルモット、及びヒトO型赤血球を使用して、赤血球凝集活性を試験した。卵黄嚢に接種した卵(初期及び継代接種物の両方)を、9日間インキュベーションした後、生存能について観察した。
【0169】
ウイルスプラーク試験及びイムノフォーカスアッセイ
ウイルス力価は、ベロ細胞を使用して、プラークアッセイ又はイムノフォーカスアッセイにより分析した。プラークアッセイは、以前に記載されているように、コンフルエントベロ細胞の6ウエルプレートにて二重アガロースオーバーレイで実施した。それらは、TDVシードのプラーク表現型を評価するためにも使用した。正確に比較するために、全てのウイルスのプラークサイズは、同じ実験で測定及び比較した。pi9日目にニュートラルレッドにより視覚化した後、各ウイルスについて最大10個の十分に単離されたプラークを測定して、平均プラークサイズを算出した。wtDENV-1、-3、及び-4の場合、より少数のプラークしか測定されなかった。それらはプラークサイズがより大きく、10個の十分に分離されたプラークの測定が可能ではないことが多かった。
【0170】
四価TDVは、4つ全てのDENV血清型を含むため、DENV血清型特異的なイムノフォーカスアッセイを開発して、四価製剤中の各TDV成分を定量化した。各々個々のTDV MVSのイムノフォーカスアッセイを、プラークアッセイと比較して、ウイルス滴定結果が2つのアッセイ間で同等であることを確認した。イムノフォーカスアッセイは、系列希釈したウイルスで感染させたコンフルエントベロ細胞の6ウエルプレートで実施した。細胞を、0.7%の高粘度カルボキシメチルセルロース(Sigma社)を含むバランス塩培地(balanced salt medium)(BSS/YE-LAH培地)でオーバーレイし、5%CO2を用いて37℃で7日間インキュベートした。オーバーレイを除去した後、細胞シートをPBSで3回洗浄し、冷却した80%アセトンで30分間-20℃にて固定し、PBSで1回洗浄し、PBS中に2.5%(w/v)の脱脂粉乳、0.5%のTriton(登録商標)X-100、0.05%のTween(登録商標)-20を含むブロッキング緩衝液で30分間37℃でブロッキングした。ブロッキングした細胞を、ブロッキング緩衝液で希釈したDENV血清型特異的MAb、1F1(DENV-1)、3H5(DENV-2)、8A-1(DENV-3)、又は1H10(DENV-4)と共に、37℃で1時間又は4℃で一晩インキュベートし、洗浄緩衝液(PBS中0.05%Tween(登録商標)-20)で3回洗浄し、アルカリホスファターゼ又は西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされた親和性純度のヤギ抗マウスIgG(Jackson Immuno Research Laboratories社)と共に37℃で45~60分間インキュベートした。プレートを3回洗浄してから、適切な基質、アルカリホスファターゼの場合は1-Step NBT/BCIP plus suppressor(Pierce社)又はHRPの場合はVector-VIPキット(Vector Lab社)を、発色のために添加した。フォーカスが完全に出現したら、水ですすぐことにより発色を停止させた。染色したイムノフォーカスを、直接視覚化し、ライトボックスで計数した。
【0171】
遺伝子配列
MVS及びWVSの全長ゲノムを配列決定した(以下を参照)。簡潔に述べると、ウイルスRNAを、QIAamp(登録商標)ウイルスRNAキット(Qiagen社)を使用することによりTDVシードから抽出し、ゲノム全体を網羅する重複cDNA断片を、Titan One Tube RT-PCRキット(Roche Applied Science社)を使用して増幅した。増幅したcDNA断片をゲルで精製してから、BigDye(登録商標)Terminator v3.1 cycle配列決定キット(Applied Biosystems社)を使用し、順方向及び逆方向プライマーを両方とも用いて配列決定した。配列反応物は、BigDye(登録商標)XTerminator精製キット(Applied Biosystems社)を使用して不純物を除去し、DVBD/CDCで3130xl遺伝子アナライザーにかけた(Applied Biosystems社)。Lasergene SeqManソフトウェア(DNAStar社)を、ゲノム分析及び比較に使用した。
【0172】
Taqman(登録商標)に基づくミスマッチ増幅突然変異アッセイ(TaqMAMA)
TaqMAMAは、弱毒化の5’NC-57遺伝子座における復帰突然変異レベルのより詳細な評価を可能にするために開発された高感度定量性一塩基多型アッセイであり、この研究のために更に最適化した。MVS及びWVSから抽出したウイルスRNAを、wt又はワクチン5’NC-57領域に特異的なプライマー/Taqman(登録商標)プローブの両セットを用いたTaqMAMAにより分析した。DENV-2 wt及びワクチン配列を検出するために使用した順方向プライマーは、それぞれD2-41-GC及びD2-40-TTであった。各順方向プライマーの3’末端ヌクレオチドは、各ウイルスの特異的5’NCR-57ヌクレオチドと一致していたが、各プライマーの3’末端ヌクレオチドに隣接するヌクレオチドは、ミスマッチ効果を増強するためにDENV-2ウイルスゲノム配列とは異なっていた。逆方向プライマーCD-207及びTaqman(登録商標)プローブCD-169Fは、wtセット及びワクチンセットの両方で同一であった。プライマー及びプローブの配列並びにサイクル条件は、以前に記載されていた。リアルタイムRT-PCRを、5μlのウイルスRNAテンプレート、0.4uMの各プライマー、及び0.2uMのプローブを含む25μl反応物中で、BioRad iScript RT-PCR(プローブ用)キットを使用して、iQ5又はCFX-95システム(BioRad社)を用いて実施した。各wt特異的及びワクチン特異的アッセイの三重複反応を、各試料で実施した。ゲノムコピー数を、各ウイルス遺伝子型毎に作成した標準曲線と対比させて決定した。標準RNAは、各遺伝子型に特異的なcDNAのnt1~2670を含むプラスミドに由来する転写物であった。加えて、全ての実験で交差反応性が最小限であることを保証するために、異種性遺伝子型プライマー/プローブセットを用いて各標準RNAを試験することにより、アッセイの特異性を確認した。結果は、復帰突然変異を示すウイルスゲノムのパーセントとして報告した。以前には、このアッセイの入力RNAレベルが、より高い交差反応性バックグラウンドにより制限されていたため、元の検出感度は、約0.1%の復帰突然変異であった(識別能力)。それ以降、このアッセイは、改良型のリアルタイムPCR装置及び反応キットを使用して更に最適化されており、交差反応性バックグラウンドは、非常に高いレベルのRNAテンプレート入力でも(7~8log10コピー)かなり減少した。この最適化は、0.01~0.07%復帰突然変異までと、著しい検出感度の向上をもたらした。
【0173】
蚊C6/36細胞でのウイルス複製及び哺乳動物ベロ細胞での温度感受性
4つのTDV MVSストック及びwtDENV-1、-2、-3、及び-4ウイルスの複製表現型を、C6/36蚊細胞(ヒトスジシマカ(Aedes albopictus))で評価した。6ウエルプレートで増殖したC6/36細胞を、0.001のMOIで各ウイルスに二重重複で感染させ、28℃の5%CO2インキュベーターにて、2%FBSを含む4ml/ウェルのDMEM培地でインキュベートした。各ウイルスの培養上清の小アリコートを、pi6日目に収集し、40%のFBSを含む等容積の培地と混合し、ウイルスプラーク滴定の準備ができるまで、-80℃で保管した。
【0174】
温度感受性は、pi5日目の6ウエルプレートでのベロ細胞のウイルス増殖を39℃と37℃とで比較することにより実施した。細胞を、37℃にて0.001のMOIで各ウイルスに四重重複で感染させた。ウイルス吸着後、感染培養を、一方(重複プレート)は37℃に設定し、他方は39℃に設定した2つの別々の5%CO2インキュベーター中にて、4ml/ウェルの2%FBS含有DMEM培地でインキュベートした。培養上清のアリコート(50μl)を、pi5日目に収集し、40%のFBSを含む等容積の培地と混合し、ウイルスプラーク滴定の準備ができるまで、-80℃で保管した。インキュベーター温度は、NISTトレーサブル工場較正温度計(-1~51℃;ERTCO社)で較正した。
【0175】
蚊感染、播種、及び伝染
研究に使用したネッタイシマカは、タイ国Mae Sot(16’N、33’E)付近の村に由来する2002年に樹立されたコロニーに由来していた。幼虫から羽化させた後、成体蚊を、16:8(明:暗)光周期で28℃にて、10%スクロース溶液を自由摂取させて維持した。5~11日齢の雌蚊を、感染性血液給餌又は胸腔内(IT)接種に使用した。新たに培養したTDV及びwtDENVのアリコートを、回収後直ちに使用して(凍結解凍サイクルを用いずに)、以下に示されているような経口感染用のウイルス血液餌を製作した。残りのウイルス上清をFBSで補完して、終濃度を20%にし、アリコートを、将来のウイルスプラーク滴定及びIT接種実験のために-80℃で保管した。こうした実験のために新たに調製したTDVシードを、プレマスターシードからベロ細胞で増幅し、TDV MVS等価物とみなした。
【0176】
感染性血液餌は、経口感染させた日に、新たなウイルスを、脱線維素(defribrinated)ニワトリ血液(Colorado Serum Company社)と1:1の比で混合することにより調製した。蚊を、一晩糖飢餓させた後、Hemotek膜給餌システム(Discovery Workshops社)を使用し、1時間にわたって、ウイルス:血液混合物を与えた。血液餌の50μlアリコートを、ウイルス用量の逆滴定のために-80℃で保持した。十分に吸血させた雌を、寒冷麻酔下で選別し、紙箱に入れて、10%スクロース溶液を自由摂取させた。紙箱は、16:8時間(明:暗)の光周期で28℃に設置した。14日後に、各ウイルス群の25~30匹の蚊を、トリエチルアミン(Flynap(登録商標)、Carolina Biological Supply Company社)に曝すことにより麻酔し、1本の後肢を切除し、10%FBS及び5%ペニシリン/ストレプトマイシン(それぞれ、100U/ml及び100μg/ml)を有する0.5mlのDMEMに入れた。麻酔した蚊の鼻に、2.5%FBS及び25%スクロース溶液を含有する毛細管を挿入することにより、唾液を収集した。少なくとも15分間、蚊に唾液を出させ、DMEMを含有する別々のチューブに、毛細管及び本体を入れた。蚊本体、脚部、及び唾液を、感染性ウイルスを滴定及びアッセイするまで、-80℃で保管した。IT接種では、蚊に寒冷麻酔をかけ、0.34μl接種物中のおよそ50pfuのウイルスを接種した。接種した蚊は、上記に記載のものと同じ条件で7日間保管した。その後、蚊に麻酔をかけ、それらの唾液及び本体を、上記に記載のように収集した。試料は、更なる処理まで-80℃で保管した。
【0177】
ウイルス滴定のための試料を処理するために、本体及び脚部試料を、ミキサーミルを使用して、銅コーティングBB(Crossman Corporation社、ニューヨーク州)と共に24サイクル/秒で4分間ホモジナイズし、その後3,000×gで3分間遠心分離することにより清澄化した。唾液試料を、3,000×gで3分間遠心分離して、毛細管から流体を排出させた。本体ホモジネート及び脚部ホモジネート並びに唾液試料の10倍希釈物を、プラークアッセイにより感染性ウイルスの存在に関して試験した。本体、脚部、及び唾液の結果は、それぞれ感染率、播種率、及び伝染率を決定するために使用した。
【0178】
マウス神経毒性
計画妊娠雌ICRマウス(Timed pregnant female ICR mice)を、Taconic Labs社から取得し、毎日数回モニターして、同腹仔のおよその誕生時期を決定した。所与の実験で、誕生のおよそ12~24時間後に、1ウイルス当たり2つの同腹群の8匹の仔(n=16)に、20μlの希釈液中103~104pfuのウイルスを、30ゲージ針を使用して頭蓋内(ic)接種により負荷した。負荷後、動物を、少なくとも32日間にわたって少なくとも1日3回モニターした。病気の最初の徴候(被毛粗剛、背中の湾曲、体重減少、異常運動、麻痺、又は傾眠)が見られたら、イソフルランガスで致死麻酔をかけてから頸椎脱臼させることにより動物を安楽死させた。感染後の安楽死日は、動物の「病気/病的状態までの時間」又は「生存期間」に相当した。動物実験は、DVBD/CDCのIACUC認可の動物プロトコールに従って実施した。
【0179】
マスターシードウイルスの導出
TDV-1マスターウイルスシード(MVS)
キメラウイルスゲノムのヌクレオチド配列及び翻訳されたタンパク質の推定アミノ酸配列が、本明細書で提供される。例えば、TDV-1ポリヌクレオチド配列としては、配列番号1、3、5、及び7により表されるものが挙げられ、TDV-1ポリペプチド配列としては、配列番号2、4、6、及び8により表されるものが挙げられる。prM-E遺伝子のほとんど(nt457~-2379、下線部)は、野生型(wt)DEN-1 16007ウイルス特異的であり、残りのゲノムは、DEN-2 PDK-53ウイルス特異的である。wtウイルス(D1 16007又はD2 16681)と異なる全ての遺伝子改変された置換、並びにMVSで検出された追加の突然変異(遺伝子改変されたcDNAクローンからの変化)には印が付けられている。
【0180】
ゲノム及びタンパク質に含まれていた置換:
D1(prM-E)とD2骨格との接合部位:
a. MluI(nt451~456):遺伝子改変されたサイレント突然変異、nt-453 AからG
b. NgoMIV(nt2380~2385):遺伝子改変された突然変異、nt-2381/2382 TGからCC(E-482 ValからAlaへの変化をもたらした)
D2 PDK-53ウイルス骨格(wtD2 16681からの変化):全て太字
a. 5’非コード領域(NCR)-57(nt-57 CからT):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
b. NS1-53 GlyからAsp(nt-2579 GからA):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
c. NS2A-181 LeuからPhe(nt-4018 CからT)
d. NS3-250 GluからVal(nt-5270 AからT):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
e. nt-5547(NS3遺伝子)TからCのサイレント突然変異
f. NS4A-75 GlyからAla(nt-6599 GからC)
*PDK-53のnt-8571 CからTのサイレント突然変異は、ワクチンウイルスでは遺伝子改変されていない。
【0181】
DEN-1 prM-E(wtD1 16007からの変化)
a. 天然XbaI部位を除去するために遺伝子改変されたnt-1575 TからCのサイレント突然変異
ワクチンシードに見出された更なる置換(元のクローンと0.03%nt異なる)
TDV-2マスターウイルスシード(MVS)
a. NS2A-116 IleからLeu(nt-3823 AからC、太字)
b. NS2B-92 GluからAsp(nt-4407 AからT、太字)
c. nt-7311 AからGのサイレント突然変異(太字)
キメラウイルスゲノムのヌクレオチド配列及び翻訳されたタンパク質の推定アミノ酸配列が、本明細書で提供される。例えば、TDV-2ポリヌクレオチド配列としては、配列番号9、11、13、及び15により表されるものが挙げられ、TDV-2ポリペプチド配列としては、配列番号10、12、14、及び16により表されるものが挙げられる。遺伝子改変されたウイルスは、D2 PDK-53ウイルスに基づく。野生型DEN-2 16681ウイルス(また、PDK-53の親ウイルス)と異なる全ての遺伝子改変された置換、並びにMVSで検出された追加の突然変異(遺伝子改変されたcDNAクローンからの変化)には印が付けられている。
【0182】
ゲノム及びタンパク質に含まれていた置換:
D2 PDK-53ウイルス骨格(wtD2 16681からの変化):全て太字
a. 5’非コード領域(NCR)-57(nt-57 CからT):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
b. prM-29 AspからVal(nt-524 AからT)
c. nt-2055 CからT(E遺伝子)サイレント突然変異
d. NS1-53 GlyからAsp(nt-2579 GからA):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
e. NS2A-181 LeuからPhe(nt-4018 CからT)
f. NS3-250 GluからVal(nt-5270 AからT):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
g. nt-5547(NS3遺伝子)TからCのサイレント突然変異
h. NS4A-75 GlyからAla(nt-6599 GからC)
*PDK-53のnt-8571 CからTのサイレント突然変異は、ワクチンウイルスでは遺伝子改変されていない。
【0183】
遺伝子改変されたクローンマーカー(サイレント突然変異):
a. nt-900 TからCのサイレント突然変異:感染性クローンマーカー
ワクチンシードに見出された更なる置換(元のクローンと0.02%nt異なる)
a. prM-52 LysからGlu(nt-592 AからG)、太字
b. NS5-412 IleからVal(nt-8803 AからG)、太字
TDV-3マスターウイルスシード(MVS)
キメラウイルスゲノムのヌクレオチド配列及び翻訳されたタンパク質の推定アミノ酸配列が、本明細書で提供される。例えば、TDV-3ポリヌクレオチド配列としては、配列番号17、19、21、及び23により表されるものが挙げられ、TDV-3ポリペプチド配列としては、配列番号18、20、22、及び24により表されるものが挙げられる。prM-E遺伝子のほとんど(nt-457~-2373、下線部)は、野生型(wt)DEN-3 16562ウイルス特異的であり、残りのヌクレオチド配列は、DEN-2 PDK-53ウイルス特異的である。DEN-3ウイルスのEタンパク質は、DEN-2のEタンパク質よりもアミノ酸が2つ少ない。したがって、NgoMIVから始まるnt位置は、元のDEN-2 PDK-53 nt位置よりも6つのntだけ少ない。wtウイルス(DEN-3 16562又はDEN-2 16681)と異なる全ての遺伝子改変された置換、並びに追加の突然変異(遺伝子改変されたcDNAクローンからの変化)には印が付けられている。
【0184】
ゲノム及びタンパク質に含まれていた置換:
接合部位:
a. MluI(nt451~456):遺伝子改変されたサイレント突然変異、nt-453 AからG
b. NgoMIV(nt2374~2379):遺伝子改変された突然変異、nt-2375/2376 TGからCC(E-480 ValからAlaへの変化をもたらした)
D2 PDK-53ウイルス骨格(wtD2 16681からの変化):太字
a. 5’非コード領域(NCR)-57(nt-57 CからT):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
b. NS1-53 GlyからAsp(nt-2573 GからA):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
c. NS2A-181 LeuからPhe(nt-4012 CからT)
d. NS3-250 GluからVal(nt-5264 AからT):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
e. nt-5541(NS3遺伝子)TからCのサイレント突然変異
f. NS4A-75 GlyからAla(nt-6593 GからC)
*PDK-53のnt-8565 CからTのサイレント突然変異は、ワクチンウイルスでは遺伝子改変されていない。
【0185】
DEN-3 prM-Eの遺伝子改変された突然変異(wtD3 16562からの変化)
a. 遺伝子改変されたnt-552 CからTへのサイレント突然変異:クローンマーカー
b. 培養で効率的に複製するための遺伝子改変されたE-345 HisからLeu(nt-1970 AからT)
ワクチンシードに見出された更なる置換(元のクローンと0.02%nt異なる)
a. E-223 ThrからSerへの突然変異(nt-1603 AからT、太字)
b. nt-7620 AからGのサイレント突然変異(太字)
TDV-4マスターウイルスシード(MVS)
キメラウイルスゲノムのヌクレオチド配列及び翻訳されたタンパク質の推定アミノ酸配列が、本明細書で提供される。例えば、TDV-4ポリヌクレオチド配列としては、配列番号25、27、29、及び31により表されるものが挙げられ、TDV-4ポリペプチド配列としては、配列番号26、28、30、及び32により表されるものが挙げられる。prM-E遺伝子のほとんど(nt-457~-2379、下線部)は、野生型(wt)DEN-4 1036ウイルス特異的であり、残りのヌクレオチド配列は、DEN-2 PDK-53ウイルス特異的である。wtウイルス(DEN-3 16562又はDEN-2 16681)と異なる全ての遺伝子改変された置換、並びに追加の突然変異(遺伝子改変されたcDNAクローンからの変化)には印が付けられている。
【0186】
ゲノム及びタンパク質に含まれていた置換:
接合部位:
a. MluI(nt451~456):遺伝子改変されたサイレント突然変異、nt-453 AからG
b. NgoMIV(nt2380~2385):遺伝子改変された突然変異、nt-2381/2382 TGからCC(E-480 ValからAlaへの変化をもたらした)
D2 PDK-53ウイルス骨格(wtD2 16681からの変化)
a. 5’非コード領域(NCR)-57(nt-57 CからT):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
b. NS1-53 GlyからAsp(nt-2579 GからA):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
c. NS2A-181 LeuからPhe(nt-4018 CからT、太字)
d. NS3-250 GluからVal(nt-5270 AからT):主要弱毒化遺伝子座(赤色)
e. nt-5547(NS3遺伝子)TからCのサイレント突然変異(太字)
f. NS4A-75 GlyからAla(nt-6599 GからC、太字)
*PDK-53のnt-8571 CからTのサイレント突然変異は、ワクチンウイルスでは遺伝子改変されていない。
【0187】
cDNAクローンの遺伝子改変された置換
a. 遺伝子改変されたC-100 ArgからSer(nt-396 AからC):培養でのウイルス複製を向上させることができる
b. 遺伝子改変されたnt-1401 AからGのサイレント突然変異
c. 遺伝子改変されたE-364 AlaからVal(nt-2027 CからT):培養でのウイルス複製を向上させることができる
d. 遺伝子改変されたE-447 MetからLeu(nt-2275 AからC):培養でのウイルス複製を向上させることができる
ワクチンシードに見出された更なる置換(元のクローンとは0.06%nt異なる)
a. nt-225(C遺伝子)AからGのサイレント突然変異(太字)
b. NS2A-66 AspからGly(nt-3674 AからG)突然変異(太字)
c. NS2A-99 LysからLys/Argミックス(nt-3773 AからA/Gミックス、太字)
d. nt-5591 CからT(NS3遺伝子)サイレント突然変異(太字)
e. NS4A-21 AlaからVal(nt-6437 CからT、太字)
f. nt-7026 TからC/Tミックスのサイレント突然変異(太字)
g. nt-9750 AからCのサイレント突然変異(太字)
本明細書で開示及び特許請求された組成物及び方法は全て、本開示に照らして、過度の実験作業を行わずに製作及び実施することができる。組成物及び方法は、好ましい実施形態の観点で記載されているが、当業者であれば、本明細書に記載の組成物及び方法に、並びに方法のステップ又はステップの順番に、本発明の概念、趣旨、及び範囲から逸脱せずに変異を適用することができることを理解するであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連するある作用剤を、本明細書に記載の作用剤の代わりに用いることができ、その場合でも同じ又は同様の結果が達成され得ることが理解されるであろう。当業者に明白なそのような類似の代用物及び改変は全て、添付の特許請求の範囲により規定されている本発明の趣旨、範囲、及び概念内にあるとみなされる。
【配列表】