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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089997
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】鋳ぐるみ方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 19/00 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
B22D19/00 A
B22D19/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069950
(22)【出願日】2022-04-21
(62)【分割の表示】P 2021031802の分割
【原出願日】2017-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 薫
(57)【要約】
【課題】加工コストの高騰を防止できるとともに鋳造欠陥の発生を抑制できる鋳ぐるみ方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金製のパイプからなる被鋳ぐるみ材1を鋳ぐるむ鋳ぐるみ方法において、被鋳ぐるみ材1のうち鋳ぐるまれる被鋳ぐるみ部2の一部にフラックス3を塗布して、塗布領域5と非塗布領域6を形成するフラックス塗布工程と、フラックス3が塗布された被鋳ぐるみ材1を鋳型10内に配置する鋳型設置工程と、鋳型10内にアルミニウム合金からなる溶湯を注ぎ被鋳ぐるみ材1を鋳ぐるむ鋳ぐるみ工程と、を備え、被鋳ぐるみ部2には、環状の凹溝8が形成されており、フラックス塗布工程では、凹溝8にフラックス3を塗布することを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金製のパイプからなる被鋳ぐるみ材を鋳ぐるむ鋳ぐるみ方法において、
前記被鋳ぐるみ材のうち鋳ぐるまれる被鋳ぐるみ部の一部にフラックスを塗布して、塗布領域と非塗布領域を形成するフラックス塗布工程と、
前記フラックスが塗布された前記被鋳ぐるみ材を鋳型内に配置する鋳型設置工程と、
前記鋳型内にアルミニウム合金からなる溶湯を注ぎ前記被鋳ぐるみ材を鋳ぐるむ鋳ぐるみ工程と、を備え、
前記被鋳ぐるみ部には、環状の凹溝が形成されており、
前記フラックス塗布工程では、前記凹溝に前記フラックスを塗布する
ことを特徴とする鋳ぐるみ方法。
【請求項2】
前記鋳型設置工程では、前記パイプの端部中空部に、金属製中子を挿入する
ことを特徴とする請求項1に記載の鋳ぐるみ方法。
【請求項3】
前記被鋳ぐるみ材は、3000系アルミニウム合金から構成され、
前記溶湯は、4000系アルミニウム合金から構成されており、
前記フラックスの融点は、550℃~620℃である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋳ぐるみ方法。
【請求項4】
前記被鋳ぐるみ材は、3000系アルミニウム合金から構成され、
前記溶湯は、4000系アルミニウム合金から構成されており、
前記フラックスは、フッ化アルミニウムカリウム系フラックスを主成分とする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の鋳ぐるみ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製のパイプを鋳ぐるむ鋳ぐるみ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金製のパイプ(被鋳ぐるみ材)をアルミニウム合金製の鋳物(鋳ぐるみ材)で鋳ぐるむ際には、被鋳ぐるみ材と鋳ぐるみ材の密着性を高めるために、被鋳ぐるみ材にフラックスを塗布している。従来は、被鋳ぐるみ材のうち、鋳ぐるまれる部分の全面にフラックスを塗布していた(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-285808号公報
【特許文献2】特開平6-304740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の鋳ぐるみ方法では、高価であるフラックスの塗布量が多く、製造コストが高騰する問題があった。また、アルミニウムの溶湯と接してフラックスが溶融する際にガスが発生するが、このガスの発生量が多くなるため、ガスが鋳ぐるみ材に取り残されて鋳造欠陥となる虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、加工コストの高騰を防止できるとともに鋳造欠陥の発生を抑制できる鋳ぐるみ方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、アルミニウム合金製のパイプからなる被鋳ぐるみ材を鋳ぐるむ鋳ぐるみ方法において、前記被鋳ぐるみ材のうち鋳ぐるまれる被鋳ぐるみ部の一部にフラックスを塗布して、塗布領域と非塗布領域を形成するフラックス塗布工程と、前記フラックスが塗布された前記被鋳ぐるみ材を鋳型内に配置する鋳型設置工程と、前記鋳型内にアルミニウム合金からなる溶湯を注ぎ前記被鋳ぐるみ材を鋳ぐるむ鋳ぐるみ工程と、を備え、前記被鋳ぐるみ部には、環状の凹溝が形成されており、前記フラックス塗布工程では、前記凹溝に前記フラックスを塗布することを特徴とする鋳ぐるみ方法である。
【0007】
本発明者は、フラックスを従来のように鋳ぐるまれる部分の全面に塗布しなくても必要な接合強度を得られることを見出し、本発明を案出するに至った。本発明に係る鋳ぐるみ方法によれば、フラックスを被鋳ぐるみ部の一部に塗布するので、従来よりもフラックスの塗布量が少なくて済む。したがって、加工コストの高騰を防止できる。さらに、フラックスが溶融する際に発生するガスの量も少なくて済むので、鋳造欠陥となる可能性を小さくできる。また、凹溝にフラックスが塗布されているので、フラックスが剥がれにくくなる。したがって、精度の高い鋳ぐるみを行うことができる。
【0008】
また、前記鋳ぐるみ方法においては、前記鋳型設置工程では、前記パイプの端部中空部に、金属製中子を挿入することが好ましい。このような鋳ぐるみ方法によれば、溶湯がパイプの端部からパイプ内部に浸入するのを防止することができる。
【0009】
さらに、前記鋳ぐるみ方法においては、前記被鋳ぐるみ材は、3000系アルミニウム合金から構成され、前記溶湯は、4000系アルミニウム合金から構成されており、前記フラックスの融点は、550℃~620℃であることが好ましい。このような鋳ぐるみ方法によれば、溶湯と接触したフラックスが溶融しやすくなる。
【0010】
また、前記鋳ぐるみ方法においては、前記被鋳ぐるみ材は、3000系アルミニウム合金から構成され、前記溶湯は、4000系アルミニウム合金から構成されており、前記フラックスは、フッ化アルミニウムカリウム系フラックスを主成分とすることが好ましい。このような鋳ぐるみ方法によれば、溶湯と接触したフラックスが溶融しやすくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鋳ぐるみ方法によれば、加工コストの高騰を防止できるとともに鋳造欠陥の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一実施形態に係る鋳ぐるみ方法で用いられるパイプの端部を示した斜視図である。
図2】第一実施形態に係る鋳ぐるみ方法で鋳型に被鋳ぐるみ材を設置した状態を示した断面図である。
図3】第二実施形態に係る鋳ぐるみ方法で用いられるパイプの端部を示した斜視図である。
図4】第二実施形態に係る鋳ぐるみ方法で鋳型に被鋳ぐるみ材を設置した状態を示した断面図である。
図5】第三実施形態に係る鋳ぐるみ方法で用いられるパイプの端部を示した斜視図である。
図6】第四実施形態に係る鋳ぐるみ方法で用いられるパイプの端部を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る鋳ぐるみ方法について、図1,2を参照して詳細に説明する。本発明は、アルミニウム合金製のパイプからなる被鋳ぐるみ材を、アルミニウム合金で鋳ぐるむ鋳ぐるみ方法である。かかる鋳ぐるみ方法は、フラックス塗布工程と、鋳型設置工程と、鋳ぐるみ工程とを備えている。
【0014】
フラックス塗布工程は、図1に示すように、被鋳ぐるみ材1の被鋳ぐるみ部2の一部にフラックス3を塗布する工程である。被鋳ぐるみ材1を構成するアルミニウム合金製のパイプは、3000系アルミニウム合金からなる。被鋳ぐるみ部2は、アルミニウム合金からなる鋳ぐるみ材に鋳ぐるまれる部位であり、パイプの端部に位置している。鋳ぐるみ材は、4000系アルミニウム合金から構成されている。
【0015】
フラックス3は、アルミニウム系の鋳ぐるみ材との接合用ろう材として機能するものである。フラックス3は、特にその種類が制限されるものではなく、被鋳ぐるみ材1や鋳ぐるみ材の材質に応じて、フッ化物系、塩化物系、フッ化物-塩化物の混合物等の中から適宜選択される。本実施形態では、被鋳ぐるみ材1が3000系アルミニウム合金であるので、フラックス3は、フッ化物系のものが用いられる。具体的には、フラックス3は、フッ化アルミニウム-カリウム系フラックスを主成分としている。フラックス3には、45.8重量%KF-54.2重量%AlFの共晶組成や、これに近い組成範囲を含み実質的に錯体化された錯体混合物,KAlF,KAlF,K3AlF,KSiAl,LiF,CaF等の錯体が使用される。特に、本実施形態のフラックス3は、KAlF+KAlF・5HOであることが好ましい。そして、フラックス3の融点は、550℃~620℃の範囲にある。
【0016】
なお、塩化物系フラックスとしては、具体的にはBaCl,NaCl,KCl,ZnCl等を主成分とするものが良く、代表的にはBaCl-NaCl-KClの三元共晶組成のフラックスがある。
【0017】
被鋳ぐるみ部2には、フランジ4が形成されている。フランジ4は、断面三角形を呈しており、パイプの外周面に沿って環状に形成されている。フランジ4は、パイプの軸方向に間隔をあけて二箇所に設けられている。フランジ4の数は、被鋳ぐるみ部2と鋳ぐるみ材との密着度の要求に応じて適宜決定される。
【0018】
フラックス塗布工程では、フランジ4の先端外周部にフラックス3を塗布する。図2にも示すように、フラックス3は、フランジ4の突出寸法の先端側半分の表裏両面に塗布する。このように、フランジ4の先端外周部にのみフラックス3を塗布することで、フランジ4の先端部分である塗布領域5と、その他の部分の非塗布領域6とが形成される。なお、フラックス3は、その成分によっても異なるが、被鋳ぐるみ材1の表面に2~350g/mの割合で塗布される。フラックス3は、たとえば、フラックス粉末をイソプロピレン等の溶剤に溶かしてスラリー状にしたものを使用することができる。この場合、スプレーやブラシでフランジ4の表面に塗布される。また、強固で且つ均一なフラックス層を形成する上では、フラックス3を粉体のままで塗布する静電塗装が好ましい。
【0019】
鋳型設置工程は、フラックス3が塗布された被鋳ぐるみ材1を鋳型10内に配置する工程である。鋳型10は、溶湯が注がれるキャビティ11を備えている。鋳型設置工程では、フランジ4が形成された被鋳ぐるみ部2がキャビティ11内に位置するように、鋳型10にパイプの胴部を設置する。さらに、パイプの先端に中子12を設置する。中子12には円柱状の突部13が形成されている。突部13の外径は、パイプの内径と同等である。この突部13をパイプの端部中空部に挿入する。
【0020】
鋳ぐるみ工程は、鋳型10のキャビティ11内に溶湯を注ぎ、被鋳ぐるみ材1を鋳ぐるみ材(溶湯)で鋳ぐるむ工程である。鋳ぐるみ工程で、溶湯をキャビティ11内に注ぐと、溶湯の熱によってフラックス3が溶融し、フランジ4の表面にある酸化被膜を溶かし込む。その結果、フランジ4は、活性度の高い表面状態になり、鋳ぐるみ材に対する濡れ性が改善される。したがって、フランジ4と鋳ぐるみ材との間に隙間のない鋳ぐるみが行われるので、フランジ4と鋳ぐるみ材の密着性および接合性を高めることができる。また、被鋳ぐるみ材と鋳ぐるみ材の接合性は、被鋳ぐるみ材1に熱容量の小さいフランジ4を形成したことによっても改善される。つまり、フランジ4は、注湯直後の溶湯の熱によって、軟化・溶融し、鋳ぐるみ材に融合し易くなる。以上のことによって、被鋳ぐるみ材1と鋳ぐるみ材の十分な接合強度を確保することができる。
【0021】
本実施形態に係る鋳ぐるみ方法によれば、十分な接合強度を得られる他に以下の作用効果を奏する。かかる鋳ぐるみ方法においては、フラックス3を被鋳ぐるみ部2の全体ではなく、一部に塗布しているので、従来よりもフラックスの塗布量が少なくて済む。したがって、加工コストの高騰を防止でき、経済的である。さらに、フラックス3が溶融する際に発生するガスの量も少なくて済むので、鋳造欠陥となる可能性を小さくできる。また、本実施形態では、フラックス3をフランジ4の外周先端部に塗布しているので、フランジ4を溶融させて接合性を高めている。したがって、パイプ本体は溶融せず変形しないので、パイプの板厚が薄くなることはない。
【0022】
また、本実施形態に係る鋳ぐるみ方法では、パイプの端部中空部に、金属製の中子12の突部13を挿入しているので、溶湯がパイプの端部からパイプ内部に浸入するのを防止することができる。
【0023】
さらに、被鋳ぐるみ材1は、3000系アルミニウム合金から構成されているので、アルミニウムの加工性および耐食性を維持しつつも、強度が高い。また鋳ぐるみ材は、4000系アルミニウム合金から構成されているので、熱膨張率が抑えられているとともに、耐摩耗性が高められている。また、融点が他のアルミ合金よりも低いので、鋳ぐるみ材に適している。フラックス3は、フッ化アルミニウムカリウム系フラックスを主成分としているとともに、融点が550℃~620℃であるので、鋳ぐるみ材と接触したフラックス3が溶融しやすくなる。
【0024】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る鋳ぐるみ方法について、図3,4を参照して詳細に説明する。第二実施形態に係る鋳ぐるみ方法では、図3に示すように、パイプからなる被鋳ぐるみ材1aにフランジは形成されておらず、パイプの外周面にフラックス3が塗布されている。第二実施形態に係る鋳ぐるみ方法も、第一実施形態と同様に、フラックス塗布工程と、鋳型設置工程と、鋳ぐるみ工程とを備えている。
【0025】
フラックス塗布工程では、フラックス3を、パイプの外周面に沿って環状に塗布する。フラックス3は、パイプの径や板厚、被鋳ぐるみ材1aと鋳ぐるみ材の接合強度の要求等に応じて、フラックス3の塗布箇所数や幅寸法が設定されている。本実施形態では、フラックス3を、パイプの軸方向に間隔をあけて二箇所に塗布する。このように、被鋳ぐるみ部2aの一部のみにフラックス3を塗布することで、フラックス3が塗布された塗布領域5aと、その他の部分の非塗布領域6aとが形成される。
【0026】
鋳型設置工程では、図4に示すように、フラックス3が塗布された被鋳ぐるみ部2aがキャビティ11内に位置するように、鋳型10にパイプの胴部を設置する。さらに、パイプの先端に中子12を設置する。中子12には円柱状の突部13が形成されている。突部13の外径は、パイプの内径と同等である。この突部13をパイプの端部中空部に挿入する。
【0027】
鋳ぐるみ工程で、溶湯をキャビティ11内に注ぐと、溶湯の高熱によってフラックス3が溶融し、パイプ先端の表面にある酸化被膜を溶かし込む。その結果、パイプの一部は、活性度の高い表面状態になり、鋳ぐるみ材に対する濡れ性が改善される。したがって、パイプと鋳ぐるみ材との間に隙間のない鋳ぐるみが行われるので、被鋳ぐるみ材1aと鋳ぐるみ材の密着性および接合性を高めることができる。以上のことによっても、第一実施形態と同様に、被鋳ぐるみ材1aと鋳ぐるみ材の十分な接合強度を確保することができる。
【0028】
また、第二実施形態においても、十分な接合強度を得られる他に、フラックスの塗布量が少なくて済む。したがって、加工コストの高騰を防止でき、経済的である。さらに、フラックス3が溶融する際に発生するガスの量も少なくて済むので、鋳造欠陥となる可能性を小さくできる。
【0029】
さらに、本実施形態に係る鋳ぐるみ方法では、溶湯がパイプの端部からパイプ内部に浸入するのを防止することができる。また、フラックス3は、フッ化アルミニウムカリウム系フラックスを主成分としているとともに、融点が550℃~620℃であるので、鋳ぐるみ材と接触したフラックス3が溶融しやすくなる。
【0030】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る鋳ぐるみ方法について、図5を参照して詳細に説明する。第三実施形態に係る鋳ぐるみ方法では、図5に示すように、パイプからなる被鋳ぐるみ材1bにフランジは形成されておらず、パイプの外周面にフラックス3が塗布されている。被鋳ぐるみ部2bの外周面には、地荒らし部7が形成されており、地荒らし部7にフラックス3が塗布されている。第三実施形態に係る鋳ぐるみ方法も、第一実施形態と同様に、フラックス塗布工程と、鋳型設置工程と、鋳ぐるみ工程とを備えている。
【0031】
フラックス塗布工程の前に、まず、パイプの外周面に地荒らし部7を形成する。地荒らし部7は、たとえば、サンドブラスト法やショットブラスト法等によって形成される。地荒らし部7は、パイプの外周面に沿って、フラックス3の塗布位置に環状に形成される。つまり、地荒らし部7は、パイプの軸方向に間隔をあけて二箇所に形成される。
【0032】
その後、フラックス塗布工程において、地荒らし部7の表面にフラックス3を塗布する。フラックス3の塗布量は第二実施形態と同等でよい。このように、被鋳ぐるみ部2bの一部のみにフラックス3を塗布することで、フラックス3が塗布された塗布領域5bと、その他の部分の非塗布領域6bとが形成される。
【0033】
鋳型設置工程と鋳ぐるみ工程は、第二実施形態と同様である。鋳ぐるみ工程で、溶湯をキャビティ内に注ぐと、溶湯の高熱によってフラックス3が溶融し、パイプ先端の表面にある酸化被膜を溶かし込む。その結果、パイプの一部は、活性度の高い表面状態になり、鋳ぐるみ材に対する濡れ性が改善される。したがって、パイプと鋳ぐるみ材との間に隙間のない鋳ぐるみが行われるので、被鋳ぐるみ材1bと鋳ぐるみ材の密着性および接合性を高めることができる。
【0034】
このような第三実施形態に係る鋳ぐるみ方法によれば、第二実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、第三実施形態では、フラックス3が地荒らし部7に密着しているので、フラックス3が塗布後にパイプの表面から剥がれにくい。これによって、フラックス3が必要部分に確実に塗布された状態で鋳ぐるみ工程を行うことができる。
【0035】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る鋳ぐるみ方法について、図6を参照して詳細に説明する。第四実施形態に係る鋳ぐるみ方法では、図6に示すように、パイプの外周面に凹溝8が形成されており、その凹溝8内にフラックス3が塗布されている。第四実施形態に係る鋳ぐるみ方法も、第一実施形態と同様に、フラックス塗布工程と、鋳型設置工程と、鋳ぐるみ工程とを備えている。
【0036】
フラックス塗布工程の前に、まず、パイプの外周面に凹溝8を形成する。凹溝8は、たとえば、切削加工にて形成される。なお、凹溝8の加工方法は、切削加工に限定されるものではなく、たとえばパイプの成形時に予め形成していてもよい。凹溝8は、パイプの外周面に沿って、フラックス3の塗布位置に環状に形成される。つまり、凹溝8は、パイプの軸方向に間隔をあけて二箇所に形成される。
【0037】
その後、フラックス塗布工程において、凹溝8の内側にフラックス3を塗布する。フラックス3の塗布量は第二実施形態と同等で、フラックス3の表面がパイプの外表面と面一になっている。つまり、フラックス3の塗布量が凹溝8の体積と同等である。このように、被鋳ぐるみ部2cの凹溝8の内部のみにフラックス3を塗布することで、フラックス3が塗布された塗布領域5cと、その他の部分の非塗布領域6cとが形成される。
【0038】
鋳型設置工程と鋳ぐるみ工程は、第二実施形態と同様である。鋳ぐるみ工程で、溶湯をキャビティ内に注ぐと、溶湯の高熱によってフラックス3が溶融し、パイプ先端の表面にある酸化被膜を溶かし込む。その結果、パイプの一部は、活性度の高い表面状態になり、鋳ぐるみ材に対する濡れ性が改善される。したがって、パイプと鋳ぐるみ材との間に隙間のない鋳ぐるみが行われるので、被鋳ぐるみ材1cと鋳ぐるみ材の密着性および接合性を高めることができる。
【0039】
このような第四実施形態に係る鋳ぐるみ方法によれば、第二実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、第四実施形態では、フラックス3が凹溝8の内部に塗布されているので、フラックス3が塗布後にパイプの表面から剥がれにくい。これによって、フラックス3が必要部分に確実に塗布された状態で鋳ぐるみ工程を行うことができる。
【0040】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、フラックス3がパイプの外周面に沿って環状に塗布されているが、これに限定されるものではない。たとえば、フラックスを周方向に沿って間欠状に塗布してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 被鋳ぐるみ材
2 被鋳ぐるみ部
3 フラックス
4 フランジ
5 塗布領域
6 非塗布領域
7 地荒らし部
8 凹溝
10 鋳型
11 キャビティ
12 中子
13 突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6