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特開2022-90070癌モニタリングの方法、算出方法、評価装置、算出装置、評価プログラム、算出プログラム、および評価システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090070
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】癌モニタリングの方法、算出方法、評価装置、算出装置、評価プログラム、算出プログラム、および評価システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071128
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2018554270の分割
【原出願日】2017-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2016234546
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】菊池 信矢
(72)【発明者】
【氏名】今泉 明
(72)【発明者】
【氏名】池田 温子
(72)【発明者】
【氏名】穴山 貴嗣
(72)【発明者】
【氏名】東山 聖彦
(72)【発明者】
【氏名】岡見 次郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 富雄
(72)【発明者】
【氏名】今村 文生
(57)【要約】
【課題】癌の再発可能性を知る上で参考となり得る信頼性の高い情報を提供することができる評価方法などを提供することを課題とする。
【解決手段】本実施形態では、癌が発見されたことのある評価対象の血液中のGlu、Ser、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、Trp、His、OrnおよびProのうちの少なくとも1つまたはGlu、Arg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Trp、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyのうちの少なくとも2つの濃度値を用いて、評価対象について癌の再発可能性を評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌が発見されたことのある評価対象の血液中のTrp、Glu、Ser、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、His、OrnおよびProのうちの少なくとも1つまたはTrp、Glu、Arg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyのうちの少なくとも2つの濃度値、または、前記濃度値が代入される変数を含む式および前記濃度値を用いて算出された前記式の値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価ステップを含むこと、
を特徴とする評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌モニタリングの方法、算出方法、評価装置、算出装置、評価プログラム、算出プログラム、評価システム、及び端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術療法は、がん病巣を除去してしまう治療法であり、白血病などを除く固形がん治療として第一に選択すべき治療法といわれている。がんは、それを完全に切除できれば治るため、手術療法は、治療法としては最も直接的な方法である。
【0003】
例えば早期の胃がんで転移がない場合は、手術療法でほぼ100%がんを治すことができる。しかし、手術は、早期がんばかりではなく、ある程度進行したがんにも行われる。通常のがん手術では、もともとのがん巣(原発巣)を切除するだけでなく、転移を想定して周辺のリンパ節も切除する。リンパ節に転移がある場合は、リンパ節を取り残せば、その取り残しが目に見えるか否かに係わらず、がんが再発するため、転移の虞の有る範囲よりやや広めにリンパ節を切除する。このように、手術療法では、がんが原発部位に留まっているか、転移があっても比較的少数のリンパ節に留まっている場合に、がんを完全に治すことができる。しかし、実際には、微細ながん細胞が手術後に残ってしまうことがあるため、手術の後に再発がみられる。
【0004】
再発を早期に発見し治療することで予後を改善することを目的に、術後フォローアップ(またはサーベイランス)が行われている。術後フォローアップでは、問診及び診察、腫瘍マーカーなどの血液検査、並びに画像検査が組み合わせで行われている。これらの検査は、がんの再発の有無を確認するために術後に継続的に受ける必要があり、このことは患者にとって負担になる。もし、手術療法による再発のリスクを術前および術後一定期間に判別、予測または評価することができれば、検査負担を軽減できるといったメリットがある。また、前記判別、予測または評価の結果は、患者が治療法を選択する際の判断材料にもなり得る。さらに、前記判別、予測または評価の結果は、患者に対する治療計画の策定、癌に対する治療成績の向上、及び転移癌による再発の防止と予後の管理のために大いに役立つことが期待できる。
【0005】
一方、血液中アミノ酸の濃度が、癌に対する手術療法により変化することが知られている。例えば、乳癌患者では外科的手術により血中のセリンとグルタミン酸の濃度が正常化することが報告されている(非特許文献1)。また、食道癌患者及び肺癌患者では、胸部手術直後にグルタミン、トリプトファン、アラニン、グリシン及びアルギニンの血中濃度が低下したとの報告がある(非特許文献2)。更に、胃癌患者及び乳癌患者では、手術後にアラニン及びアスパラギン酸が増加することが報告されている(非特許文献3)。
【0006】
また、先行特許として、アミノ酸濃度と生体状態とを関連付ける方法に関する特許文献1、2、3が公開されている。また、アミノ酸濃度を用いて肺癌の状態を評価する方法に関する特許文献4、アミノ酸濃度を用いて乳癌の状態を評価する方法に関する特許文献5、アミノ酸濃度を用いて大腸癌の状態を評価する方法に関する特許文献6、アミノ酸濃度を用いて癌の状態を評価する方法に関する特許文献7、アミノ酸濃度を用いて胃癌の状態を評価する方法に関する特許文献8、アミノ酸濃度を用いて癌種を評価する方法に関する特許文献9、アミノ酸濃度を用いて女性生殖器癌の状態を評価する特許文献10、アミノ酸濃度を用いて前立腺癌を含む前立腺疾患の状態を評価する特許文献11、およびアミノ酸濃度を用いて膵臓癌の状態を評価する方法に関する特許文献12、アミノ酸濃度を用いて膵臓癌リスク疾患の状態を評価する方法に関する特許文献13、およびアミノ酸濃度を用いて癌免疫療法の治療効果を評価する方法に関する特許文献14が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/052191号
【特許文献2】国際公開第2006/098192号
【特許文献3】国際公開第2009/054351号
【特許文献4】国際公開第2008/016111号
【特許文献5】国際公開第2008/075662号
【特許文献6】国際公開第2008/075663号
【特許文献7】国際公開第2008/075664号
【特許文献8】国際公開第2009/099005号
【特許文献9】国際公開第2009/110517号
【特許文献10】国際公開第2009/154296号
【特許文献11】国際公開第2009/154297号
【特許文献12】国際公開第2014/084290号
【特許文献13】特開2014-106114号公報
【特許文献14】国際公開第2013/168550号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cancer Invest. 2004;22(2):203-10.
【非特許文献2】Cancer. 1988;62(2):355-60.
【非特許文献3】J Transl Med. 2015;13:35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1、2、3はいずれも外科的手術後の短期間の報告であり、癌手術療法後の再発に関連した血中アミノ酸濃度変化の報告はない。また、特許文献1-14に開示されている指標式群を癌の再発可能性を評価することに用いるには、評価の対象が異なってしまう。
【0010】
つまり、癌の再発可能性を予測、判別又は評価する、血液中アミノ酸を用いたバイオマーカーはない。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、血中アミノ酸濃度を利用して、癌の再発可能性を知る上で参考となり得る信頼性の高い情報を提供する評価方法、評価装置、評価プログラム、評価システムおよび端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討した結果、血液中のアミノ酸で癌の再発可能性を精度よく評価することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる評価方法は、癌が発見されたことのある評価対象の血液中の12種類のアミノ酸(Glu、Ser、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、Trp、His、OrnおよびPro)のうちの少なくとも1つまたは21種類のアミノ酸(Glu、Arg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Trp、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGly)のうちの少なくとも2つの濃度値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価ステップを含むこと、を特徴とする。
【0014】
ここで、本明細書では各種アミノ酸を主に略称で表記するが、それらの正式名称は以下の通りである。
(略称) (正式名称)
Ala Alanine
Arg Arginine
Asn Asparagine
a-ABA α-Aminobutyric acid
Cit Citrulline
Gln Glutamine
Glu Glutamic acid
Gly Glycine
His Histidine
Ile Isoleucine
Leu Leucine
Lys Lysine
Met Methionine
Orn Ornithine
Phe Phenylalanine
Pro Proline
Ser Serine
Thr Threonine
Trp Tryptophan
Tyr Tyrosine
Val Valine
【0015】
また、本発明にかかる評価方法は、前記評価方法において、前記評価ステップでは、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値が代入される変数を含む式をさらに用いて、前記式の値を算出することで、前記評価対象について癌の再発可能性を評価すること、を特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる評価装置は、制御部を備えた評価装置であって、前記制御部は、癌が発見されたことのある評価対象の血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価手段を備えたこと、を特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる評価方法は、制御部を備えた情報処理装置において実行される評価方法であって、前記制御部において実行される、癌が発見されたことのある評価対象の血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価ステップを含むこと、を特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる評価プログラムは、制御部を備えた情報処理装置において実行させるための評価プログラムであって、前記制御部において実行させるための、癌が発見されたことのある評価対象の血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価ステップを含むこと、を特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる記録媒体は、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、情報処理装置に前記評価方法を実行させるためのプログラム化された命令を含むこと、を特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる評価システムは、制御部を備えた評価装置と、制御部を備え、癌が発見されたことのある評価対象の血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値に関する濃度データを提供する端末装置とを、ネットワークを介して通信可能に接続して構成された評価システムであって、前記端末装置の前記制御部は、前記濃度データを前記評価装置へ送信する濃度データ送信手段と、前記評価装置から送信された、癌の再発可能性に関する評価結果を受信する結果受信手段と、を備え、前記評価装置の前記制御部は、前記端末装置から送信された前記濃度データを受信する濃度データ受信手段と、前記濃度データ受信手段で受信した前記濃度データに含まれている、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの前記濃度値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価手段と、前記評価手段で得られた前記評価結果を前記端末装置へ送信する結果送信手段と、を備えたこと、を特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかる端末装置は、制御部を備えた端末装置であって、前記制御部は、癌の再発可能性に関する評価結果を取得する結果取得手段を備え、前記評価結果は、癌が発見されたことのある評価対象の血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価した結果であること、を特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかる端末装置は、前記端末装置において、癌の再発可能性を評価する評価装置とネットワークを介して通信可能に接続して構成されており、前記制御部は、前記評価対象の血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値に関する濃度データを前記評価装置へ送信する濃度データ送信手段をさらに備え、前記結果取得手段は、前記評価装置から送信された前記評価結果を受信すること、を特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかる評価装置は、癌が発見されたことのある評価対象の血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値に関する濃度データを提供する端末装置とネットワークを介して通信可能に接続された、制御部を備えた評価装置であって、前記制御部は、前記端末装置から送信された前記濃度データを受信する濃度データ受信手段と、前記濃度データ受信手段で受信した前記濃度データに含まれている、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの前記濃度値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価手段と、前記評価手段で得られた評価結果を前記端末装置へ送信する結果送信手段と、を備えたこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、血中アミノ酸濃度を利用して、癌の再発可能性を知る上で参考となり得る信頼性の高い情報を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、第1実施形態の基本原理を示す原理構成図である。
図2図2は、第2実施形態の基本原理を示す原理構成図である。
図3図3は、本システムの全体構成の一例を示す図である。
図4図4は、本システムの全体構成の他の一例を示す図である。
図5図5は、本システムの評価装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、濃度データファイル106aに格納される情報の一例を示す図である。
図7図7は、指標状態情報ファイル106bに格納される情報の一例を示す図である。
図8図8は、指定指標状態情報ファイル106cに格納される情報の一例を示す図である。
図9図9は、式ファイル106d1に格納される情報の一例を示す図である。
図10図10は、評価結果ファイル106eに格納される情報の一例を示す図である。
図11図11は、評価部102dの構成を示すブロック図である。
図12図12は、本システムのクライアント装置200の構成の一例を示すブロック図である。
図13図13は、本システムのデータベース装置400の構成の一例を示すブロック図である。
図14図14は、無再発例の21種のアミノ酸濃度データを示す図である。
図15図15は、再発例の21種のアミノ酸濃度データを示す図である。
図16図16は、無再発例についての「術前の各アミノ酸を100%としたときの術後の各アミノ酸の分布」を示すレーダーチャートを示す図である。
図17図17は、再発例についての「術前の各アミノ酸を100%としたときの術後の各アミノ酸の分布」を示すレーダーチャートを示す図である。
図18図18は、ロジスティック回帰分析の結果を示す図である。
図19図19は、2変数の組み合わせおよび各組み合わせに対するROC_AUCを示す図である。
図20図20は、3変数の組み合わせおよび各組み合わせに対するROC_AUCを示す図である。
図21図21は、4変数の組み合わせおよび各組み合わせに対するROC_AUCを示す図である。
図22図22は、2変数の組み合わせおよび各組み合わせに対するROC_AUCを示す図である。
図23図23は、3変数の組み合わせおよび各組み合わせに対するROC_AUCを示す図である。
図24図24は、4変数の組み合わせおよび各組み合わせに対するROC_AUCを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる評価方法の実施形態(第1実施形態)、ならびに本発明にかかる評価装置、評価方法、評価プログラム、記録媒体、評価システム及び端末装置の実施形態(第2実施形態)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施形態により限定されるものではない。
【0027】
[第1実施形態]
[1-1.第1実施形態の概要]
ここでは、第1実施形態の概要について図1を参照して説明する。図1は第1実施形態の基本原理を示す原理構成図である。
【0028】
まず、癌が発見されたことのある評価対象(例えば動物やヒトなどの個体)の血液(例えば血漿、血清などを含む)中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値に関する濃度データを取得する(ステップS11)。
【0029】
ここで、「癌が発見された」には、例えば、癌であるとの確定診断がされた、などが含まれる。また、ステップS11では、例えば、癌が発見されたことのある評価対象から当該発見された癌の治療(例えば手術療法、化学療法、放射線療法又は癌免疫療法などによる治療)が開始される前に採取された血液に由来する濃度データ(治療開始前の濃度データ)および当該治療が開始された後に採取された血液に由来する濃度データ(治療開始後の濃度データ)のいずれか一方又は両方を取得してもよい。なお、「治療が開始される前」には、例えば、一定期間に亘る広義の治療における初回の狭義の治療が行われる前、などが含まれる。また、「治療が開始された後」には、例えば、一定期間に亘る広義の治療における初回の狭義の治療が行われた後で且つ最終回の狭義の治療が行われる前(例えば、一般的に言われる「治療中」など)、または、一定期間に亘る広義の治療における最終回の狭義の治療が行われた後(例えば、一般的に言われる「治療後」など)、などが含まれる。
【0030】
また、ステップS11では、例えば、濃度値測定を行う企業等が測定した濃度データを取得してもよい。また、評価対象から採取した血液から、例えば以下の(A)、(B)、または(C)などの測定方法により濃度値を測定することで濃度データを取得してもよい。ここで、濃度値の単位は、例えばモル濃度、重量濃度又は酵素活性であってもよく、これらの濃度に任意の定数を加減乗除することで得られるものでもよい。
(A)採取した血液サンプルを遠心することにより血液から血漿を分離する。全ての血漿サンプルは、濃度値の測定時まで-80℃で凍結保存する。濃度値測定時には、アセトニトリルを添加し除蛋白処理を行った後、標識試薬(3-アミノピリジル-N-ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート)を用いてプレカラム誘導体化を行い、そして、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)により濃度値を分析する(国際公開第2003/069328号、国際公開第2005/116629号を参照)。
(B)採取した血液サンプルを遠心することにより血液から血漿を分離する。全ての血漿サンプルは、濃度値の測定時まで-80℃で凍結保存する。濃度値測定時には、スルホサリチル酸を添加し除蛋白処理を行った後、ニンヒドリン試薬を用いたポストカラム誘導体化法を原理としたアミノ酸分析計により濃度値を分析する。
(C)採取した血液サンプルを、膜やMEMS技術または遠心分離の原理を用いて血球分離を行い、血液から血漿または血清を分離する。血漿または血清取得後すぐに濃度値の測定を行わない血漿または血清サンプルは、濃度値の測定時まで-80℃で凍結保存する。濃度値測定時には、酵素やアプタマーなど、標的とするアミノ酸と反応または結合する分子等を用い、基質認識によって増減する物質や分光学的値を定量等することにより濃度値を分析する。
【0031】
つぎに、ステップS11で取得した濃度データに含まれている濃度値を用いて、評価対象について癌の再発可能性を評価する(ステップS12)。なお、ステップS12を実行する前に、ステップS11で取得した濃度データから欠損値や外れ値などのデータを除去してもよい。また、「再発」には、例えば、局所再発、領域再発、及び遠隔再発(転移)、などが含まれる。また、「癌の再発可能性を評価する」には、例えば、癌が再発する可能性の程度を評価すること、などが含まれる。また、ステップS12において治療開始前の濃度データと治療開始後の濃度データの両方が用いられる場合には、例えば、治療開始前の濃度値と治療開始後の濃度値との比又は差分を算出し、算出した比または差分の値を用いて評価を行ってもよい。
【0032】
以上、第1実施形態では、ステップS11では評価対象の濃度データを取得し、ステップS12では、ステップS11で取得した評価対象の濃度データに含まれている濃度値を用いて、評価対象について癌の再発可能性を評価する(要するに、癌の再発可能性を評価するための情報または癌の再発可能性を知る上で参考となり得る信頼性の高い情報を取得する)。これにより、血中アミノ酸濃度を利用して癌の再発可能性を精度よく評価することができる(要するに、癌の再発可能性を評価するための情報または癌の再発可能性を知る上で参考となり得る信頼性の高い情報を提供することができる)。特に、ステップS12において治療開始前の濃度データのみを用いた場合には、本実施形態で得られた評価結果は、治療法を決定する際の参考情報として活用することができる。また、ステップS12において治療開始後又は治療後の濃度データを用いた場合には、本実施形態で得られた評価結果を、再発のモニタリングに活用することができたり、更なる治療法を決定する際の参考情報として活用することができたり、術後フォローアップの期間および手段を選択する際の参考情報として活用することができたりする。
【0033】
また、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)が評価対象における癌の再発可能性を反映したもの又は評価対象における癌の再発可能性の指標となるものであると決定してもよく、さらに、当該濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)を例えば以下に挙げた手法などで変換し、変換後の値が評価対象における癌の再発可能性を反映したもの又は評価対象における癌の再発可能性の指標となるものであると決定してもよい。換言すると、濃度値又は変換後の値そのものを、評価対象における癌の再発可能性に関する評価結果として扱ってもよい。
濃度値の取り得る範囲が所定範囲(例えば0.0から1.0までの範囲、0.0から10.0までの範囲、0.0から100.0までの範囲、又は-10.0から10.0までの範囲、など)に収まるようにするためなどに、例えば、濃度値に対して任意の値を加減乗除したり、濃度値を所定の変換手法(例えば、指数変換、対数変換、角変換、平方根変換、プロビット変換、逆数変換、Box-Cox変換、又はべき乗変換など)で変換したり、また、濃度値に対してこれらの計算を組み合わせて行ったりすることで、濃度値を変換してもよい。例えば、濃度値を指数としネイピア数を底とする指数関数の値(具体的には、癌が再発する確率pを定義したときの自然対数ln(p/(1-p))が濃度値と等しいとした場合におけるp/(1-p)の値)をさらに算出してもよく、また、算出した指数関数の値を1と当該値との和で割った値(具体的には、確率pの値)をさらに算出してもよい。
また、特定の条件のときの変換後の値が特定の値となるように、濃度値を変換してもよい。例えば、特異度が80%のときの変換後の値が5.0となり且つ特異度が95%のときの変換後の値が8.0となるように濃度値を変換してもよい。
また、各アミノ酸ごとに、濃度分布を正規分布化した後、平均50、標準偏差10となるように偏差値化してもよい。
なお、これらの変換は、男女別や年齢別に行ってもよい。
なお、本明細書における濃度値は、濃度値そのものであってもよく、濃度値を変換した後の値であってもよい。
【0034】
また、モニタ等の表示装置又は紙等の物理媒体に視認可能に示される所定の物差し上における所定の目印の位置に関する位置情報を、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)又は当該濃度値を変換した場合にはその変換後の値を用いて生成し、生成した位置情報が評価対象における癌の再発可能性を反映したもの又は評価対象における癌の再発可能性の指標となるものであると決定してもよい。なお、所定の物差しとは、癌の再発可能性を評価するためのものであり、例えば、目盛りが示された物差しであって、「濃度値又は変換後の値の取り得る範囲、又は、当該範囲の一部分」における上限値と下限値に対応する目盛りが少なくとも示されたもの、などである。また、所定の目印とは、濃度値又は変換後の値に対応するものであり、例えば、丸印又は星印などである。
【0035】
また、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)が、所定値(平均値±1SD、2SD、3SD、N分位点、Nパーセンタイル又は臨床的意義の認められたカットオフ値など)より低い若しくは所定値以下の場合又は所定値以上若しくは所定値より高い場合に、評価対象における癌の再発可能性を評価してもよい。その際、濃度値そのものではなく、濃度偏差値(各代謝物および各アミノ酸ごとに、男女別に濃度分布を正規分布化した後、平均50、標準偏差10となるように偏差値化した値)を用いてもよい。例えば、濃度偏差値が平均値-2SD未満の場合(濃度偏差値<30の場合)又は濃度偏差値が平均値+2SDより高い場合(濃度偏差値>70の場合)に、評価対象における癌の再発可能性を評価してもよい。
【0036】
また、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)および当該濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)が代入される変数を含む式を用いて式の値を算出することで、評価対象における癌の再発可能性を評価してもよい。
【0037】
また、算出した式の値が評価対象における癌の再発可能性を反映したもの又は評価対象における癌の再発可能性の指標となるものであると決定してもよく、さらに、式の値を例えば以下に挙げた手法などで変換し、変換後の値が評価対象における癌の再発可能性を反映したもの又は評価対象における癌の再発可能性の指標となるものであると決定してもよい。換言すると、式の値又は変換後の値そのものを、評価対象における癌の再発可能性に関する評価結果として扱ってもよい。
式の値の取り得る範囲が所定範囲(例えば0.0から1.0までの範囲、0.0から10.0までの範囲、0.0から100.0までの範囲、又は-10.0から10.0までの範囲、など)に収まるようにするためなどに、例えば、式の値に対して任意の値を加減乗除したり、式の値を所定の変換手法(例えば、指数変換、対数変換、角変換、平方根変換、プロビット変換、逆数変換、Box-Cox変換、又はべき乗変換など)で変換したり、また、式の値に対してこれらの計算を組み合わせて行ったりすることで、式の値を変換してもよい。例えば、式の値を指数としネイピア数を底とする指数関数の値(具体的には、癌が再発する確率pを定義したときの自然対数ln(p/(1-p))が式の値と等しいとした場合におけるp/(1-p)の値)をさらに算出してもよく、また、算出した指数関数の値を1と当該値との和で割った値(具体的には、確率pの値)をさらに算出してもよい。
また、特定の条件のときの変換後の値が特定の値となるように、式の値を変換してもよい。例えば、特異度が80%のときの変換後の値が5.0となり且つ特異度が95%のときの変換後の値が8.0となるように式の値を変換してもよい。
また、式の値を、平均50、標準偏差10となるように偏差値化してもよい。
なお、これらの変換は、男女別や年齢別に行ってもよい。
なお、本明細書における式の値は、式の値そのものであってもよく、式の値を変換した後の値であってもよい。
【0038】
また、モニタ等の表示装置又は紙等の物理媒体に視認可能に示される所定の物差し上における所定の目印の位置に関する位置情報を、式の値又は当該式の値を変換した場合にはその変換後の値を用いて生成し、生成した位置情報が評価対象における癌の再発可能性を反映したもの又は評価対象における癌の再発可能性の指標となるものであると決定してもよい。なお、所定の物差しとは、癌の再発可能性を評価するためのものであり、例えば、目盛りが示された物差しであって、「式の値又は変換後の値の取り得る範囲、又は、当該範囲の一部分」における上限値と下限値に対応する目盛りが少なくとも示されたもの、などである。また、所定の目印とは、式の値又は変換後の値に対応するものであり、例えば、丸印又は星印などである。
【0039】
また、評価対象において癌が再発する可能性の程度を定性的に評価してもよい。具体的には、「前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)および予め設定された1つまたは複数の閾値」または「前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)、当該濃度値(上述した比又は差分でもよい)が代入される変数を含む式、および予め設定された1つまたは複数の閾値」を用いて、評価対象を、癌が再発する可能性の程度を少なくとも考慮して定義された複数の区分のうちのどれか1つに分類してもよい。なお、複数の区分には、癌が再発する可能性の程度が高い対象(例えば、癌が再発すると見做す対象)を属させるための区分、癌が再発する可能性の程度が低い対象(例えば、癌が再発しないと見做す対象)を属させるための区分、および癌が再発する可能性の程度が中程度である対象を属させるための区分が含まれていてもよい。また、複数の区分には、癌が再発する可能性の程度が高い対象を属させるための区分、および、癌が再発する可能性の程度が低い対象を属させるための区分が含まれていてもよい。また、濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)又は式の値を所定の手法で変換し、変換後の値を用いて評価対象を複数の区分のうちのどれか1つに分類してもよい。
【0040】
また、評価の際に用いる式について、その形式は特に問わないが、例えば、以下に示す形式のものでもよい。
・最小二乗法に基づく重回帰式、線形判別式、主成分分析、正準判別分析などの線形モデル
・最尤法に基づくロジスティック回帰、Cox回帰などの一般化線形モデル
・一般化線形モデルに加えて個体間差、施設間差などの変量効果を考慮した一般化線形混合モデル
・K-means法、階層的クラスタ解析などクラスタ解析で作成された式
・MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ法)、ベイジアンネットワーク、階層ベイズ法などベイズ統計に基づき作成された式
・サポートベクターマシンや決定木などクラス分類により作成された式
・分数式など上記のカテゴリに属さない手法により作成された式
・異なる形式の式の和で示されるような式
【0041】
また、評価の際に用いる式を、例えば、本出願人による国際出願である国際公開第2004/052191号に記載の方法又は本出願人による国際出願である国際公開第2006/098192号に記載の方法で作成してもよい。なお、これらの方法で得られた式であれば、入力データとしての濃度データにおけるアミノ酸の濃度値の単位に因らず、当該式を癌の再発可能性の評価に好適に用いることができる。
【0042】
ここで、重回帰式、多重ロジスティック回帰式、正準判別関数などにおいては各変数に係数及び定数項が付加されるが、この係数及び定数項は、好ましくは実数であれば構わず、より好ましくは、データから前記各種分類を行うために得られた係数及び定数項の99%信頼区間の範囲に属する値であれば構わず、さらに好ましくは、データから前記各種分類を行うために得られた係数及び定数項の95%信頼区間の範囲に属する値であれば構わない。また、各係数の値及びその信頼区間はそれを実数倍したものでもよく、定数項の値及びその信頼区間はそれに任意の実定数を加減乗除したものでもよい。ロジスティック回帰式、線形判別式、重回帰式などを評価の際に用いる場合、線形変換(定数の加算、定数倍)及び単調増加(減少)の変換(例えばlogit変換など)は評価性能を変えるものではなく変換前と同等であるので、これらの変換が行われた後のものを評価の際に用いてもよい。
【0043】
また、分数式とは、当該分数式の分子が変数A,B,C,・・・の和で表わされ及び/又は当該分数式の分母が変数a,b,c,・・・の和で表わされるものである。また、分数式には、このような構成の分数式α,β,γ,・・・の和(例えばα+βのようなもの)も含まれる。また、分数式には、分割された分数式も含まれる。なお、分子や分母に用いられる変数にはそれぞれ適当な係数がついても構わない。また、分子や分母に用いられる変数は重複しても構わない。また、各分数式に適当な係数がついても構わない。また、各変数の係数の値や定数項の値は、実数であれば構わない。また、ある分数式と、当該分数式において分子の変数と分母の変数が入れ替えられたものとでは、目的変数との相関の正負の符号が概して逆転するものの、それらの相関性は保たれるが故に、評価性能も同等と見做せるので、分数式には、分子の変数と分母の変数が入れ替えられたものも含まれる。
【0044】
そして、癌の再発可能性を評価する際、アミノ酸以外の生体情報(例えば、アミノ酸以外の他の血中代謝物(アミノ酸代謝物・糖類・脂質等)、タンパク質、ペプチド、ミネラル若しくはホルモン等の濃度、腫瘍マーカーの値、アルブミン、総蛋白、トリグリセリド、HbA1c、LDLコレステロール、HDLコレステロール、アミラーゼ、総ビリルビン若しくは尿酸等の血液検査値、血中サイトカイン、免疫担当細胞数、免疫担当細胞内サイトカイン若しくは遅延型過分反応(DTH)等の免疫関連検査値、超音波エコー、上部・下部内視鏡、X線、CT若しくはMRI等の画像情報、又は、年齢、身長、体重、BMI、血圧、性別、喫煙情報、食事情報、飲酒情報、運動情報、ストレス情報、睡眠情報、家族の既往歴情報若しくは疾患歴情報(糖尿病、膵炎等)等の生体指標、など)をさらに用いてもよい。また、評価の際に用いる式(例えば多変量判別式など)における変数として、アミノ酸以外の生体情報(例えば、アミノ酸以外の他の血中代謝物(アミノ酸代謝物・糖類・脂質等)、タンパク質、ペプチド、ミネラル若しくはホルモン等の濃度、腫瘍マーカーの値、アルブミン、総蛋白、トリグリセリド、HbA1c、LDLコレステロール、HDLコレステロール、アミラーゼ、総ビリルビン若しくは尿酸等の血液検査値、血中サイトカイン、免疫担当細胞数、免疫担当細胞内サイトカイン若しくは遅延型過分反応(DTH)等の免疫関連検査値、超音波エコー、上部・下部内視鏡、X線、CT若しくはMRI等の画像情報、又は、年齢、身長、体重、BMI、血圧、性別、喫煙情報、食事情報、飲酒情報、運動情報、ストレス情報、睡眠情報、家族の既往歴情報若しくは疾患歴情報(糖尿病、膵炎等)等の生体指標など)がさらに含まれていてもよい。
【0045】
[第2実施形態]
[2-1.第2実施形態の概要]
ここでは、第2実施形態の概要について図2を参照して説明する。図2は第2実施形態の基本原理を示す原理構成図である。なお、本第2実施形態の説明では、上述した第1実施形態と重複する説明を省略する場合がある。特に、ここでは、癌の再発可能性を評価する際に、式の値又はその変換後の値を用いるケースを一例として記載しているが、例えば、濃度値、濃度値の比若しくは濃度値の差分又はこれらの変換後の値(例えば濃度偏差値など)を用いてもよい。
【0046】
制御部は、癌が発見されたことのある評価対象(例えば動物やヒトなどの個体)の血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値に関する予め取得した濃度データに含まれている当該濃度値、および、当該濃度値が代入される変数を含む予め記憶部に記憶された式を用いて、式の値を算出することで、評価対象について癌の再発可能性を評価する(ステップS21)。なお、ステップS21において治療開始前の濃度データと治療開始後の濃度データの両方が用いられる場合には、制御部は、例えば、治療開始前の濃度値と治療開始後の濃度値との比又は差分を算出し、算出した比又は差分の値を変数に代入して式の値を算出することで、評価対象について癌の再発可能性を評価してもよい。
【0047】
なお、ステップS21で用いられる式は、以下に説明する式作成処理(工程1~工程4)に基づいて作成されたものでもよい。ここで、式作成処理の概要について説明する。なお、ここで説明する処理はあくまでも一例であり、式の作成方法はこれに限定されない。
【0048】
まず、制御部は、予め記憶部に記憶された指標状態情報(欠損値や外れ値などを持つデータが事前に除去されているものでもよい)から所定の式作成手法に基づいて、候補式(例えば、y=a1x1+a2x2+・・・+anxn、y:指標データ、xi:濃度データ、ai:定数、i=1,2,・・・,n)を作成する(工程1)。なお、指標状態情報は、濃度データ(例えばアミノ酸濃度の術前のデータ、アミノ酸濃度の術後のデータ、又はアミノ酸濃度の術前と術後での変化量に関するデータなど)と、癌の再発に関する指標データ(例えば再発の有無に関する2値データなど)と、を含むものである。
【0049】
なお、工程1において、指標状態情報から、複数の異なる式作成手法(主成分分析や判別分析、サポートベクターマシン、重回帰分析、Cox回帰分析、ロジスティック回帰分析、k-means法、クラスター解析、決定木などの多変量解析に関するものを含む。)を併用して複数の候補式を作成してもよい。具体的には、多数の再発群および無再発群から術前及び/又は術後に得た血液を分析して得た濃度データおよび指標データから構成される多変量データである指標状態情報に対して、複数の異なるアルゴリズムを利用して複数群の候補式を同時並行的に作成してもよい。例えば、異なるアルゴリズムを利用して判別分析およびロジスティック回帰分析を同時に行い、2つの異なる候補式を作成してもよい。また、主成分分析を行って作成した候補式を利用して指標状態情報を変換し、変換した指標状態情報に対して判別分析を行うことで候補式を作成してもよい。これにより、最終的に、評価に最適な式を作成することができる。
【0050】
ここで、主成分分析を用いて作成した候補式は、全ての濃度データの分散を最大にするような各変数を含む一次式である。また、判別分析を用いて作成した候補式は、各群内の分散の和の全ての濃度データの分散に対する比を最小にするような各変数を含む高次式(指数や対数を含む)である。また、サポートベクターマシンを用いて作成した候補式は、群間の境界を最大にするような各変数を含む高次式(カーネル関数を含む)である。また、重回帰分析を用いて作成した候補式は、全ての濃度データからの距離の和を最小にするような各変数を含む高次式である。また、Cox回帰分析を用いて作成した候補式は、対数ハザード比を含む線形モデルで、そのモデルの尤度を最大とするような各変数とその係数を含む1次式であるである。また、ロジスティック回帰分析を用いて作成した候補式は、確率の対数オッズを表す線形モデルであり、その確率の尤度を最大にするような各変数を含む一次式である。また、k-means法とは、各濃度データのk個近傍を探索し、近傍点の属する群の中で一番多いものをそのデータの所属群と定義し、入力された濃度データの属する群と定義された群とが最も合致するような変数を選択する手法である。また、クラスター解析とは、全ての濃度データの中で最も近い距離にある点同士をクラスタリング(群化)する手法である。また、決定木とは、変数に序列をつけて、序列が上位である変数の取りうるパターンから濃度データの群を予測する手法である。
【0051】
式作成処理の説明に戻り、制御部は、工程1で作成した候補式を、所定の検証手法に基づいて検証(相互検証)する(工程2)。候補式の検証は、工程1で作成した各候補式に対して行う。なお、工程2において、ブートストラップ法やホールドアウト法、N-フォールド法、リーブワンアウト法などのうち少なくとも1つに基づいて、候補式の判別率や感度、特異度、情報量基準、ROC_AUC(受信者特性曲線の曲線下面積)などのうち少なくとも1つに関して検証してもよい。これにより、指標状態情報や評価条件を考慮した予測性または頑健性の高い候補式を作成することができる。
【0052】
ここで、判別率とは、本実施形態にかかる評価手法で、真の状態が陰性である評価対象(例えば無再発の評価対象など)を正しく陰性と評価し、真の状態が陽性である評価対象(例えば再発の評価対象など)を正しく陽性と評価している割合である。また、感度とは、本実施形態にかかる評価手法で、真の状態が陽性である評価対象を正しく陽性と評価している割合である。また、特異度とは、本実施形態にかかる評価手法で、真の状態が陰性である評価対象を正しく陰性と評価している割合である。また、赤池情報量規準とは、回帰分析などの場合に、観測データが統計モデルにどの程度一致するかを表す基準であり、「-2×(統計モデルの最大対数尤度)+2×(統計モデルの自由パラメータ数)」で定義される値が最小となるモデルを最もよいと判断する。また、ROC_AUCは、2次元座標上に(x,y)=(1-特異度,感度)をプロットして作成される曲線である受信者特性曲線(ROC)の曲線下面積として定義され、ROC_AUCの値は完全な判別では1となり、この値が1に近いほど判別性が高いことを示す。また、予測性とは、候補式の検証を繰り返すことで得られた判別率や感度、特異性を平均したものである。また、頑健性とは、候補式の検証を繰り返すことで得られた判別率や感度、特異性の分散である。
【0053】
式作成処理の説明に戻り、制御部は、所定の変数選択手法に基づいて候補式の変数を選択することで、候補式を作成する際に用いる指標状態情報に含まれる濃度データの組み合わせを選択する(工程3)。なお、工程3において、変数の選択は、工程1で作成した各候補式に対して行ってもよい。これにより、候補式の変数を適切に選択することができる。そして、工程3で選択した濃度データを含む指標状態情報を用いて再び工程1を実行する。また、工程3において、工程2での検証結果からステップワイズ法、ベストパス法、近傍探索法、遺伝的アルゴリズムのうち少なくとも1つに基づいて候補式の変数を選択してもよい。なお、ベストパス法とは、候補式に含まれる変数を1つずつ順次減らしていき、候補式が与える評価指標を最適化することで変数を選択する方法である。
【0054】
式作成処理の説明に戻り、制御部は、上述した工程1、工程2および工程3を繰り返し実行し、これにより蓄積した検証結果に基づいて、複数の候補式の中から評価の際に用いる候補式を選出することで、評価の際に用いる式を作成する(工程4)。なお、候補式の選出には、例えば、同じ式作成手法で作成した候補式の中から最適なものを選出する場合と、すべての候補式の中から最適なものを選出する場合とがある。
【0055】
以上、説明したように、式作成処理では、指標状態情報に基づいて、候補式の作成、候補式の検証および候補式の変数の選択に関する処理を一連の流れで体系化(システム化)して実行することにより、癌の再発可能性の評価に最適な式を作成することができる。換言すると、式作成処理では、上記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つの濃度を多変量の統計解析に用い、最適でロバストな変数の組を選択するために変数選択法とクロスバリデーションとを組み合わせて、評価性能の高い式を抽出する。
【0056】
[2-2.第2実施形態の構成]
ここでは、第2実施形態にかかる評価システム(以下では本システムと記す場合がある。)の構成について、図3から図14を参照して説明する。なお、本システムはあくまでも一例であり、本発明はこれに限定されない。特に、ここでは、癌の再発可能性を評価する際に、式の値又はその変換後の値を用いるケースを一例として記載しているが、例えば、濃度値、濃度値の比若しくは濃度値の差分又はこれらの変換後の値(例えば濃度偏差値など)を用いてもよい。
【0057】
まず、本システムの全体構成について図3および図4を参照して説明する。図3は本システムの全体構成の一例を示す図である。また、図4は本システムの全体構成の他の一例を示す図である。本システムは、図3に示すように、評価対象である個体について癌の再発可能性を評価する評価装置100と、血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値に関する個体の濃度データを提供するクライアント装置200(本発明の端末装置に相当)とを、ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されている。なお、本システムにおいて、評価に用いられるデータの提供元となるクライアント装置200と評価結果の提供先となるクライアント装置200は別々のものであってもよい。本システムは、図4に示すように、評価装置100やクライアント装置200の他に、評価の際に用いる式を作成する際に用いる指標状態情報や評価の際に用いる式などを格納したデータベース装置400を、ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されてもよい。
【0058】
つぎに、本システムの評価装置100の構成について図5から図11を参照して説明する。図5は、本システムの評価装置100の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0059】
評価装置100は、当該評価装置を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)等の制御部102と、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して当該評価装置をネットワーク300に通信可能に接続する通信インターフェース部104と、各種のデータベースやテーブルやファイルなどを格納する記憶部106と、入力装置112や出力装置114に接続する入出力インターフェース部108と、で構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。ここで、評価装置100は、各種の分析装置(例えばアミノ酸分析装置等)と同一筐体で構成されてもよい。例えば、血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値を算出(測定)し、算出した値を出力(印刷やモニタ表示など)する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を備えた小型分析装置において、後述する評価部102dをさらに備え、当該評価部102dで得られた結果を前記構成を用いて出力すること、を特徴とするものでもよい。
【0060】
通信インターフェース部104は、評価装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部104は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。
【0061】
入出力インターフェース部108は、入力装置112や出力装置114に接続する。ここで、出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる(なお、以下では、出力装置114をモニタ114として記載する場合がある。)。入力装置112には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
【0062】
記憶部106は、ストレージ手段であり、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置や、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等を用いることができる。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPUに命令を与え各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。記憶部106は、図示の如く、濃度データファイル106aと、指標状態情報ファイル106bと、指定指標状態情報ファイル106cと、式関連情報データベース106dと、評価結果ファイル106eと、を格納する。
【0063】
濃度データファイル106aは、血液中の前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値に関する濃度データ(例えば治療開始前の濃度データおよび治療開始後の濃度データのいずれか一方又は両方)を格納する。図6は、濃度データファイル106aに格納される情報の一例を示す図である。濃度データファイル106aに格納される情報は、図6に示すように、評価対象である個体(サンプル)を一意に識別するための個体番号と、濃度データとを相互に関連付けて構成されている。ここで、図6では、濃度データを数値、すなわち連続尺度として扱っているが、濃度データは名義尺度や順序尺度でもよい。なお、名義尺度や順序尺度の場合は、それぞれの状態に対して任意の数値を与えることで解析してもよい。また、濃度データに、アミノ酸以外の上述した生体情報に関する値を組み合わせてもよい。
【0064】
図5に戻り、指標状態情報ファイル106bは、式を作成する際に用いる指標状態情報を格納する。図7は、指標状態情報ファイル106bに格納される情報の一例を示す図である。指標状態情報ファイル106bに格納される情報は、図7に示すように、個体番号と、癌の再発に関する指標データと、濃度データと、を相互に関連付けて構成されている。ここで、図7では、指標データおよび濃度データを数値(すなわち連続尺度)として扱っているが、指標データおよび濃度データは名義尺度や順序尺度でもよい。なお、名義尺度や順序尺度の場合は、それぞれの状態に対して任意の数値を与えることで解析してもよい。
【0065】
図5に戻り、指定指標状態情報ファイル106cは、後述する指定部102bで指定した指標状態情報を格納する。図8は、指定指標状態情報ファイル106cに格納される情報の一例を示す図である。指定指標状態情報ファイル106cに格納される情報は、図8に示すように、個体番号と、指定した指標データと、指定した濃度データと、を相互に関連付けて構成されている。
【0066】
図5に戻り、式関連情報データベース106dは、後述する式作成部102cで作成した式を格納する式ファイル106d1で構成される。式ファイル106d1は、評価の際に用いる式を格納する。図9は、式ファイル106d1に格納される情報の一例を示す図である。式ファイル106d1に格納される情報は、図9に示すように、ランクと、式(図9では、Fp(Phe,・・・)やFp(Gly,Leu,Phe)、Fk(Gly,Leu,Phe,・・・)など)と、各式作成手法に対応する閾値と、各式の検証結果(例えば各式の値)と、を相互に関連付けて構成されている。
【0067】
図5に戻り、評価結果ファイル106eは、後述する評価部102dで得られた評価結果を格納する。図10は、評価結果ファイル106dに格納される情報の一例を示す図である。評価結果ファイル106dに格納される情報は、評価対象である個体(サンプル)を一意に識別するための個体番号と、予め取得した個体の濃度データと、癌の再発可能性に関する評価結果(例えば、後述する算出部102d1で算出した式の値、後述する変換部102d2で式の値を変換した後の値、後述する生成部102d3で生成した位置情報、又は、後述する分類部102d4で得られた分類結果、など)と、を相互に関連付けて構成されている。
【0068】
図5に戻り、制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部102は、図示の如く、大別して、受信部102aと指定部102bと式作成部102dと評価部102dと結果出力部102eと送信部102fとを備えている。制御部102は、データベース装置400から送信された指標状態情報やクライアント装置200から送信された濃度データに対して、欠損値のあるデータの除去・外れ値の多いデータの除去・欠損値のあるデータの多い変数の除去などのデータ処理も行う。
【0069】
受信部102aは、クライアント装置200やデータベース装置400から送信された情報(具体的には、濃度データや指標状態情報、式など)を、ネットワーク300などを介して受信してもよい。なお、受信部102aは、評価結果の送信先のクライアント装置200とは異なるクライアント装置200から送信された評価に用いられるデータを受信してもよい。指定部102bは、式を作成する際に対象とする指標データおよび濃度データを指定する。
【0070】
式作成部102cは、受信部102aで受信した指標状態情報や指定部102bで指定した指標状態情報に基づいて式を作成する。なお、式が予め記憶部106の所定の記憶領域に格納されている場合には、式作成部102cは、記憶部106から所望の式を選択することで、式を作成してもよい。また、式作成部102cは、式を予め格納した他のコンピュータ装置(例えばデータベース装置400)から所望の式を選択しダウンロードすることで、式を作成してもよい。
【0071】
評価部102dは、事前に得られた式(例えば式作成部102cで作成した式又は受信部102aで受信した式など)及び受信部102aで受信した個体の濃度データに含まれる濃度値を用いて式の値を算出することで、個体について癌の再発可能性を評価する。なお、評価部102dは、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値、濃度値の比若しくは濃度値の差分又はこれらの変換後の値(例えば濃度偏差値)を用いて、個体について癌の再発可能性を評価してもよい。
【0072】
ここで、評価部102dの構成について図11を参照して説明する。図11は、評価部102dの構成を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。評価部102dは、算出部102d1と、変換部102d2と、生成部102d3と、分類部102d4と、をさらに備えている。
【0073】
算出部102d1は、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つまたは前記21種類のアミノ酸のうちの少なくとも2つの濃度値(上述した比又は差分の値でもよい)及び当該濃度値が代入される変数を少なくとも含む式を用いて、式の値を算出する。なお、評価部102dは、算出部102d1で算出した式の値を評価結果として評価結果ファイル106eの所定の記憶領域に格納してもよい。
【0074】
変換部102d2は、算出部102d1で算出した式の値を例えば上述した変換手法などで変換する。なお、評価部102dは、変換部102d2で変換した後の値を評価結果として評価結果ファイル106eの所定の記憶領域に格納してもよい。また、変換部102d2は、濃度データに含まれている濃度値又は当該濃度値の比若しくは差分を、例えば上述した変換手法などで変換してもよい。
【0075】
生成部102d3は、モニタ等の表示装置又は紙等の物理媒体に視認可能に示される所定の物差し上における所定の目印の位置に関する位置情報を、算出部102d1で算出した式の値又は変換部102d2で変換した後の値(濃度値、濃度値の比若しくは濃度値の差分又はこれらの変換後の値でもよい)を用いて生成する。なお、評価部102dは、生成部102d3で生成した位置情報を評価結果として評価結果ファイル106eの所定の記憶領域に格納してもよい。
【0076】
分類部102d4は、算出部102d1で算出した式の値又は変換部102d2で変換した後の値(濃度値、濃度値の比若しくは濃度値の差分又はこれらの変換後の値でもよい)を用いて、個体を、癌が再発する可能性の程度を少なくとも考慮して定義された複数の区分のうちのどれか1つに分類する。
【0077】
結果出力部102eは、制御部102の各処理部での処理結果(評価部102dで得られた評価結果を含む)等を出力装置114に出力する。
【0078】
送信部102fは、個体の濃度データの送信元のクライアント装置200に対して評価結果を送信したり、データベース装置400に対して、評価装置100で作成した式や評価結果を送信したりする。なお、送信部102fは、評価に用いられるデータの送信元のクライアント装置200とは異なるクライアント装置200に対して評価結果を送信してもよい。
【0079】
つぎに、本システムのクライアント装置200の構成について図12を参照して説明する。図12は、本システムのクライアント装置200の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0080】
クライアント装置200は、制御部210とROM220とHD(Hard Disk)230とRAM240と入力装置250と出力装置260と入出力IF270と通信IF280とで構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。クライアント装置200は、プリンタ・モニタ・イメージスキャナ等の周辺装置を必要に応じて接続した情報処理装置(例えば、既知のパーソナルコンピュータ・ワークステーション・家庭用ゲーム装置・インターネットTV・PHS(Personal Handyphone System)端末・携帯端末・移動体通信端末・PDA(Personal Digital Assistant)等の情報処理端末など)を基にしたものであってもよい。
【0081】
入力装置250はキーボードやマウスやマイク等である。なお、後述するモニタ261もマウスと協働してポインティングデバイス機能を実現する。出力装置260は、通信IF280を介して受信した情報を出力する出力手段であり、モニタ(家庭用テレビを含む)261およびプリンタ262を含む。この他、出力装置260にスピーカ等を設けてもよい。入出力IF270は入力装置250や出力装置260に接続する。
【0082】
通信IF280は、クライアント装置200とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)とを通信可能に接続する。換言すると、クライアント装置200は、モデムやTA(Terminal Adapter)やルータなどの通信装置および電話回線を介して、または専用線を介してネットワーク300に接続される。これにより、クライアント装置200は、所定の通信規約に従って評価装置100にアクセスすることができる。
【0083】
制御部210は、受信部211および送信部212を備えている。受信部211は、通信IF280を介して、評価装置100から送信された評価結果などの各種情報を受信する。送信部212は、通信IF280を介して、個体の濃度データなどの各種情報を評価装置100へ送信する。
【0084】
制御部210は、当該制御部で行う処理の全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈して実行するプログラムで実現してもよい。ROM220またはHD230には、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。当該コンピュータプログラムは、RAM240にロードされることで実行され、CPUと協働して制御部210を構成する。また、当該コンピュータプログラムは、クライアント装置200と任意のネットワークを介して接続されるアプリケーションプログラムサーバに記録されてもよく、クライアント装置200は、必要に応じてその全部または一部をダウンロードしてもよい。また、制御部210で行う処理の全部または任意の一部を、ワイヤードロジック等によるハードウェアで実現してもよい。
【0085】
ここで、制御部210は、評価装置100に備えられている評価部102dが有する機能と同様の機能を有する評価部210a(算出部210a1、変換部210a2、生成部210a3、及び分類部210a4を含む)を備えていてもよい。そして、制御部210に評価部210aが備えられている場合には、評価部210aは、評価装置100から送信された評価結果に含まれている情報に応じて、変換部210a2で式の値(濃度値、濃度値の比又は濃度値の差分でもよい)を変換したり、生成部210a3で式の値又は変換後の値(濃度値、濃度値の比若しくは濃度値の差分又はこれらの変換後の値でもよい)に対応する位置情報を生成したり、分類部210a4で式の値又は変換後の値(濃度値、濃度値の比若しくは濃度値の差分又はこれらの変換後の値でもよい)を用いて個体を複数の区分のうちのどれか1つに分類したりしてもよい。
【0086】
つぎに、本システムのネットワーク300について図3図4を参照して説明する。ネットワーク300は、評価装置100とクライアント装置200とデータベース装置400とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやイントラネットやLAN(Local Area Network)(有線/無線の双方を含む)等である。なお、ネットワーク300は、VAN(Value-Added Network)や、パソコン通信網や、公衆電話網(アナログ/デジタルの双方を含む)や、専用回線網(アナログ/デジタルの双方を含む)や、CATV(Community Antenna TeleVision)網や、携帯回線交換網または携帯パケット交換網(IMT(International Mobile Telecommunication)2000方式、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式またはPDC(Personal Digital Cellular)/PDC-P方式等を含む)や、無線呼出網や、Bluetooth(登録商標)等の局所無線網や、PHS網や、衛星通信網(CS(Communication Satellite)、BS(Broadcasting Satellite)またはISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)等を含む)等でもよい。
【0087】
つぎに、本システムのデータベース装置400の構成について図13を参照して説明する。図13は、本システムのデータベース装置400の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0088】
データベース装置400は、評価装置100または当該データベース装置で式を作成する際に用いる指標状態情報や、評価装置100で作成した式、評価装置100での評価結果などを格納する機能を有する。図13に示すように、データベース装置400は、当該データベース装置を統括的に制御するCPU等の制御部402と、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回路を介して当該データベース装置をネットワーク300に通信可能に接続する通信インターフェース部404と、各種のデータベースやテーブルやファイル(例えばWebページ用ファイル)などを格納する記憶部406と、入力装置412や出力装置414に接続する入出力インターフェース部408と、で構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0089】
記憶部406は、ストレージ手段であり、例えば、RAM・ROM等のメモリ装置や、ハードディスクのような固定ディスク装置や、フレキシブルディスクや、光ディスク等を用いることができる。記憶部406には、各種処理に用いる各種プログラム等を格納する。通信インターフェース部404は、データベース装置400とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部404は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。入出力インターフェース部408は、入力装置412や出力装置414に接続する。ここで、出力装置414には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。また、入力装置412には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
【0090】
制御部402は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部402は、図示の如く、大別して、送信部402aと受信部402bを備えている。送信部402aは、指標状態情報や式などの各種情報を、評価装置100へ送信する。受信部402bは、評価装置100から送信された、式や評価結果などの各種情報を受信する。
【0091】
なお、本説明では、評価装置100が、濃度データの受信から、式の値の算出、個体の区分への分類、そして評価結果の送信までを実行し、クライアント装置200が評価結果の受信を実行するケースを例として挙げたが、クライアント装置200に評価部210aが備えられている場合は、評価装置100は式の値の算出を実行すれば十分であり、例えば式の値の変換、位置情報の生成、及び、個体の区分への分類などは、評価装置100とクライアント装置200とで適宜分担して実行してもよい。
例えば、クライアント装置200は、評価装置100から式の値を受信した場合には、評価部210aは、変換部210a2で式の値を変換したり、生成部210a3で式の値又は変換後の値に対応する位置情報を生成したり、分類部210a4で式の値又は変換後の値を用いて個体を複数の区分のうちのどれか1つに分類したりしてもよい。
また、クライアント装置200は、評価装置100から変換後の値を受信した場合には、評価部210aは、生成部210a3で変換後の値に対応する位置情報を生成したり、分類部210a4で変換後の値を用いて個体を複数の区分のうちのどれか1つに分類したりしてもよい。
また、クライアント装置200は、評価装置100から式の値又は変換後の値と位置情報とを受信した場合には、評価部210aは、分類部210a4で式の値又は変換後の値を用いて個体を複数の区分のうちのどれか1つに分類してもよい。
【0092】
[2-3.他の実施形態]
本発明にかかる評価装置、評価方法、評価プログラム、評価システム、および端末装置は、上述した第2実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0093】
また、第2実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0094】
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0095】
また、評価装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0096】
例えば、評価装置100が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、情報処理装置に本発明にかかる評価方法を実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて評価装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部106などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0097】
また、このコンピュータプログラムは評価装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0098】
また、本発明にかかる評価プログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)(登録商標)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0099】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0100】
記憶部106に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0101】
また、評価装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、評価装置100は、当該情報処理装置に本発明の評価方法を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0102】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【実施例0103】
外科手術療法を行った肺がん患者72例の術前および術後の血液サンプルのアミノ酸濃度測定を、上述した実施形態で説明した(A)の測定方法で行った。72例のうち再発例は14例であった。
【0104】
Glu、Arg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Trp、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyの21種のアミノ酸についての無再発例の濃度データを図14に示す。図14において、横軸は各アミノ酸濃度の術前値(pre)および術後値(post)を表し、縦軸は各アミノ酸濃度の平均値を表す。Student’s t-testの結果、術前に比べて術後では、Glu、Ser、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、LeuおよびTrpが有意に低下していた(*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001)。
【0105】
一方、前記21種のアミノ酸についての再発例の濃度データを図15に示す。図15において、横軸は各アミノ酸濃度の術前値(pre)および術後値(post)を表し、縦軸は各アミノ酸濃度の平均値を表す。Student’s t-testの結果、術前に比べて術後で有意に変化しているアミノ酸はなかった。
【0106】
無再発例についての「術前の各アミノ酸を100%としたときの術後の各アミノ酸の分布」を示すレーダーチャートを、図16に示す。再発例についての「術前の各アミノ酸を100%としたときの術後の各アミノ酸の分布」を示すレーダーチャートを、図17に示す。無再発例でのアミノ酸プロファイルの変化と再発例でのアミノ酸プロファイルの変化は異なっていた。よって、再発が起こり得る場合に特有の血漿中アミノ酸プロファイルが変化することが明らかとなった。
【0107】
以上のことから、無再発例の術前後でのみ有意差があったGlu、Ser、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、LeuおよびTrpは癌の再発可能性の判別能を持つことが判明した。
【実施例0108】
実施例1と同じ血漿中アミノ酸濃度データを用いて、目的変数を再発有無(2値変数)とするロジスティック回帰分析を行った(図18)。なお、ロジスティック回帰分析は、術前値(pre)を説明変数とする場合、術後値(post)を説明変数とする場合、および、術後値から術前値を引いた値(post-pre)を説明変数とする場合のそれぞれに対し行った。
【0109】
preを説明変数とする場合では、His、MetおよびTrpが有意に変化し、postを説明変数とする場合では、His、a-ABAおよびOrnが有意に変化し、post-preを説明変数とする場合では、ProおよびTrpが有意に変化していた(p<0.05、Wald’s Test)。これにより、アミノ酸変数His、Met、Trp、a-ABA、OrnおよびProが、癌の再発可能性の判別能を持つことが判明した。
【実施例0110】
実施例1と同じ血漿中アミノ酸濃度データの術前値(pre)を用いて、癌の再発可能性評価に有効な、血漿中アミノ酸濃度を変数として含む癌の再発可能性を判別するための多変量判別式(多変量関数)を求めた。
【0111】
国際公開第2004/052191号に記載の方法を用いて、ロジスティック回帰式に含める変数の組み合わせを探索し、癌の再発可能性の判別性能を最大化するロジスティック回帰式の探索を鋭意実施した。
【0112】
前記探索において、説明変数は術前値(pre)とし、目的変数は再発有無(2値変数)とした。変数総当たりにより得られる2~4変数の組み合わせをROC_AUCで評価し、ROC_AUCが0.7より大きい2~4変数の組み合わせを抽出した。
【0113】
ROC_AUCが0.7より大きい2変数の組み合わせの一覧を図19に示す。具体的なアミノ酸の組み合わせは、(Arg,Trp)、(Orn,Trp)、(Cit,Trp)、(His,Cit)、(His,Orn)、(His,Arg)、(Val,Orn)、(Tyr,Trp)、(Gln,His)、(Met,Orn)、(Ala,Orn)、(Asn,His)、(Cit,Met)、(Orn,Lys)、(His,Thr)、(Glu,Trp)、(His,Trp)、(Thr,Trp)、(Orn,Phe)、(Orn,Leu)、(Phe,Trp)、(Gln,Met)、(Orn,Ile)、(Cit,Val)、(Glu,His)、(Asn,Trp)、(Ser,Orn)、(Val,Ile)、(Ile,Trp)、(Leu,Trp)、(Ala,Trp)、(a_ABA,Trp)、(Asn,Orn)、(Val,Trp)、(Lys,Trp)、(Pro,Trp)、(Ser,Trp)、(His,Ile)、(a_ABA,Orn)、(Cit,Phe)、(Arg,Met)および(Tyr,Orn)であった。
【0114】
また、ROC_AUCが0.7より大きい3変数の組み合わせは515通りあった。2変数の組み合わせにおけるROC_AUCの最大値よりROC_AUCが大きい3変数の組み合わせの一覧を図20に示す。具体的なアミノ酸の組み合わせは、(Arg,Orn,Trp)、(Glu,Met,Orn)、(Cit,Orn,Trp)、(Orn,Lys,Trp)、(His,Cit,Orn)、(Cit,Arg,Trp)、(Glu,Orn,Trp)、(Arg,Lys,Trp)、(His,Arg,Trp)、(Cit,Val,Orn)、(Orn,Leu,Trp)、(His,Cit,Trp)、(Arg,Tyr,Trp)、(Gln,His,Cit)、(Val,Orn,Trp)、(Ser,Cit,Trp)、(Met,Orn,Trp)、(Arg,Met,Trp)、(Arg,Met,Orn)、(Glu,Arg,Trp)、(Asn,Arg,Trp)、(Arg,Pro,Trp)、(Pro,Orn,Trp)、(His,Arg,Orn)、(a_ABA,Orn,Trp)、(Ser,Arg,Trp)、(Ala,Orn,Trp)、(Gln,His,Arg)、(Thr,Arg,Trp)、(Arg,Leu,Trp)、(Orn,Phe,Trp)、(Ser,Orn,Trp)、(Asn,Orn,Trp)、(Gly,Arg,Trp)、(Gly,Orn,Trp)、(Thr,Orn,Trp)、(Cit,Lys,Trp)、(Arg,a_ABA,Trp)、(Tyr,Orn,Trp)および(Orn,Ile,Trp)であった。
【0115】
さらに、ROC_AUCが0.7より大きい4変数の組み合わせは3,369通りあった。3変数の組み合わせにおけるROC_AUCの最大値よりROC_AUCが大きい4変数の組み合わせの一覧を図21に示す。具体的なアミノ酸の組み合わせは、(Arg,Orn,Lys,Trp)、(Arg,Met,Orn,Trp)、(Ser,Arg,Orn,Trp)、(Arg,a_ABA,Orn,Trp)、(His,Arg,Orn,Trp)、(Arg,Val,Orn,Trp)、(Arg,Orn,Ile,Trp)、(Glu,Arg,Met,Orn)、(Gly,Arg,Orn,Trp)、(Cit,Orn,Leu,Trp)、(Thr,Arg,Orn,Trp)、(Arg,Orn,Phe,Trp)、(Arg,Tyr,Orn,Trp)および(Ala,Arg,Orn,Trp)であった。
【0116】
以上より、図19-21に示したアミノ酸の組み合わせが、アミノ酸変数として、癌の再発可能性の判別能を持つことが判明した。
【実施例0117】
実施例1と同じ血漿中アミノ酸濃度データに基づいて、術後値から術前値を引いた値(post-pre)を計算し、当該差分に関する変化量データを得た。得られた変化量データを用いて、癌の再発可能性評価に有効な、血漿中アミノ酸濃度を変数として含む癌の再発可能性を判別するための多変量判別式(多変量関数)を求めた。
【0118】
国際公開第2004/052191号に記載の方法を用いて、ロジスティック回帰式に含める変数の組み合わせを探索し、癌の再発可能性の判別性能を最大化するロジスティック回帰式の探索を鋭意実施した。
【0119】
前記探索において、説明変数は術後値から術前値を引いた値(post-pre)とし、目的変数は再発有無(2値変数)とした。変数総当たりにより得られる2~4変数の組み合わせをROC_AUCで評価し、ROC_AUCが0.7より大きい2~4変数の組み合わせを抽出した。
【0120】
ROC_AUCが0.7より大きい2変数の組み合わせの一覧を図22に示す。具体的なアミノ酸の組み合わせは、(Ala,Trp)、(Pro,Trp)、(Cit,Trp)、(Glu,Leu)、(Arg,Trp)、(Phe,Trp)、(Glu,Trp)、(Cit,Val)、(Glu,Pro)、(Orn,Trp)、(Glu,Val)、(Lys,Trp)、(Glu,Ala)、(Tyr,Trp)、(His,Trp)、(Asn,Trp)および(Leu,Trp)であった。
【0121】
また、ROC_AUCが0.7より大きい3変数の組み合わせは241通りあった。2変数の組み合わせにおけるROC_AUCの最大値よりROC_AUCが大きい3変数の組み合わせの一覧を図23に示す。具体的なアミノ酸の組み合わせは、(Pro,Tyr,Trp)、(Glu,Pro,Leu)、(Tyr,Phe,Trp)、(Arg,Pro,Lys)、(Arg,Pro,Trp)、(Ala,Ile,Leu)、(Ala,Arg,Trp)、(Arg,Lys,Trp)、(Pro,Tyr,Phe)、(Glu,Ile,Leu)、(Thr,Pro,Lys)、(Glu,Pro,Lys)、(Thr,Pro,Tyr)、(Ala,Tyr,Trp)、(Cit,a_ABA,Leu)、(Cit,Phe,Trp)、(Arg,Pro,Phe)、(Glu,Ala,Leu)、(Glu,Cit,Leu)、(Glu,Arg,Leu)、(Arg,Pro,Leu)、(His,Ala,Trp)および(Arg,Phe,Trp)であった。
【0122】
さらに、ROC_AUCが0.7より大きい4変数の組み合わせは2012通りあった。3変数の組み合わせにおけるROC_AUCの最大値よりROC_AUCが大きい4変数の組み合わせの一覧を図24に示す。具体的なアミノ酸の組み合わせは、(Glu,Ala,Ile,Leu)、(Thr,Pro,Tyr,Met)、(Pro,Tyr,Phe,Trp)、(Thr,Pro,Tyr,Trp)、(Thr,Pro,Tyr,Lys)、(Arg,Pro,Tyr,Phe)、(Arg,Pro,Tyr,Trp)、(Arg,Pro,Ile,Leu)、(Arg,Pro,Lys,Trp)、(Glu,Thr,Pro,Lys)、(Arg,Pro,Tyr,Leu)、(Thr,Pro,Tyr,Phe)、(Cit,Tyr,Phe,Trp)、(Ala,Tyr,Phe,Trp)、(Arg,Pro,Lys,Ile)、(Pro,Tyr,Leu,Trp)、(Glu,Tyr,Phe,Trp)、(Thr,Arg,Pro,Lys)、(Gly,Pro,Tyr,Trp)、(Gln,Pro,Tyr,Trp)、(His,Pro,Tyr,Trp)、(Thr,Pro,Tyr,Leu)、(Cit,Pro,a_ABA,Leu)、(Glu,Pro,Ile,Leu)、(Pro,a_ABA,Tyr,Phe)、(a_ABA,Tyr,Leu,Trp)、(Ser,Pro,Tyr,Trp)、(Asn,Thr,Pro,Tyr)、(His,Tyr,Val,Trp)、(Glu,Thr,Ala,Lys)、(Gly,Thr,Pro,Tyr)、(Glu,a_ABA,Ile,Leu)、(a_ABA,Tyr,Phe,Trp)、(Glu,Thr,Ala,Leu)、(Ala,Arg,Phe,Trp)、(Glu,Pro,Tyr,Phe)、(Ala,a_ABA,Ile,Leu)、(Pro,a_ABA,Tyr,Trp)、(Pro,Tyr,Val,Trp)、(Glu,Pro,Val,Leu)、(Glu,Pro,Orn,Leu)、(Ala,Arg,Tyr,Trp)、(Ala,Ile,Leu,Trp)、(Cit,a_ABA,Ile,Leu)、(Glu,Pro,Tyr,Trp)、(Cit,Pro,Tyr,Phe)、(Arg,Pro,Tyr,Lys)、(Pro,Tyr,Ile,Trp)、(Arg,Pro,Lys,Phe)、(Ala,Arg,Lys,Trp)、(Glu,Cit,Phe,Trp)、(Ala,Arg,a_ABA,Leu)、(Pro,a_ABA,Ile,Leu)、(Pro,Tyr,Ile,Leu)、(Thr,Cit,Pro,Lys)、(Glu,Cit,Pro,Leu)、(Arg,Tyr,Phe,Trp)、(Glu,His,Pro,Leu)および(Arg,Pro,Leu,Trp)であった。
【0123】
以上より、図22-24に示したアミノ酸の組み合わせが、アミノ酸変数として、癌の再発可能性の判別能を持つことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上のように、本発明は、産業上の多くの分野、特に医薬品や食品、医療などの分野で広く実施することができ、特に、癌の再発評価を行うバイオインフォマティクス分野において極めて有用である。
【符号の説明】
【0125】
100 評価装置
102 制御部
102a 受信部
102b 指定部
102c 式作成部
102d 評価部
102d1 算出部
102d2 変換部
102d3 生成部
102d4 分類部
102e 結果出力部
102f 送信部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 濃度データファイル
106b 指標状態情報ファイル
106c 指定指標状態情報ファイル
106d 式関連情報データベース
106d1 式ファイル
106e 評価結果ファイル
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 クライアント装置(端末装置(情報通信端末装置))
300 ネットワーク
400 データベース装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【手続補正書】
【提出日】2022-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌が発見されたことのある評価対象の血液中のSer、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、His、OrnおよびProのうちの少なくとも1つまたはArg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyのうちの少なくとも2つの濃度値、および、前記濃度値が代入される変数を含むロジスティック回帰式を用いて算出された前記式の値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価するための情報を取得する取得ステップを含むこと、
を特徴とする取得方法。
【請求項2】
前記癌は肺癌であること、
を特徴とする請求項1に記載の取得方法。
【請求項3】
前記取得ステップは、制御部を備えた情報処理装置の前記制御部において実行されること、
を特徴とする請求項1または2に記載の取得方法。
【請求項4】
癌が発見されたことのある評価対象の血液中のSer、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、His、OrnおよびProのうちの少なくとも1つまたはArg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyのうちの少なくとも2つの濃度値、および、前記濃度値が代入される変数を含む癌の再発可能性を評価するためのロジスティック回帰式を用いて、前記式の値を算出する算出ステップを含むこと、
を特徴とする算出方法。
【請求項5】
前記算出ステップは、制御部を備えた情報処理装置の前記制御部において実行されること、
を特徴とする請求項4に記載の算出方法。
【請求項6】
制御部を備えた評価装置であって、
前記制御部は、
癌が発見されたことのある評価対象の血液中のSer、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、His、OrnおよびProのうちの少なくとも1つまたはArg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyのうちの少なくとも2つの濃度値、および、前記濃度値が代入される変数を含むロジスティック回帰式を用いて算出された前記式の値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価手段
を備えたこと、
を特徴とする評価装置。
【請求項7】
前記式の値を提供する端末装置とネットワークを介して通信可能に接続され、
前記制御部は、
前記端末装置から送信された前記式の値を受信するデータ受信手段と、
前記評価手段で得られた評価結果を前記端末装置へ送信する結果送信手段と、
をさらに備え、
前記評価手段は、前記データ受信手段で受信した前記式の値を用いること、
を特徴とする請求項6に記載の評価装置。
【請求項8】
制御部を備えた算出装置であって、
前記制御部は、
癌が発見されたことのある評価対象の血液中のSer、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、His、OrnおよびProのうちの少なくとも1つまたはArg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyのうちの少なくとも2つの濃度値、および、前記濃度値が代入される変数を含む癌の再発可能性を評価するためのロジスティック回帰式を用いて、前記式の値を算出する算出手段
を備えたこと、
を特徴とする算出装置。
【請求項9】
制御部を備えた情報処理装置において実行させるための評価プログラムであって、
前記制御部において実行させるための、
癌が発見されたことのある評価対象の血液中のSer、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、His、OrnおよびProのうちの少なくとも1つまたはArg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyのうちの少なくとも2つの濃度値、および、前記濃度値が代入される変数を含むロジスティック回帰式を用いて算出された前記式の値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価ステップ
を含むこと、
を特徴とする評価プログラム。
【請求項10】
制御部を備えた情報処理装置において実行させるための算出プログラムであって、
前記制御部において実行させるための、
癌が発見されたことのある評価対象の血液中のSer、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、His、OrnおよびProのうちの少なくとも1つまたはArg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyのうちの少なくとも2つの濃度値、および、前記濃度値が代入される変数を含む癌の再発可能性を評価するためのロジスティック回帰式を用いて、前記式の値を算出する算出ステップ
を含むこと、
を特徴とする算出プログラム。
【請求項11】
制御部を備えた評価装置と、制御部を備えた端末装置とを、ネットワークを介して通信可能に接続して構成された評価システムであって、
前記端末装置の前記制御部は、
癌が発見されたことのある評価対象の血液中のSer、a-ABA、Val、Met、Lys、Ile、Leu、His、OrnおよびProのうちの少なくとも1つまたはArg、Orn、Cit、His、Val、Phe、Tyr、Met、Pro、Asn、Leu、Lys、Thr、Ile、Gln、Ala、Ser、a-ABAおよびGlyのうちの少なくとも2つの濃度値、および、前記濃度値が代入される変数を含むロジスティック回帰式を用いて算出された前記式の値を前記評価装置へ送信するデータ送信手段と、
前記評価装置から送信された、癌の再発可能性に関する評価結果を受信する結果受信手段と、
を備え、
前記評価装置の前記制御部は、
前記端末装置から送信された前記式の値を受信するデータ受信手段と、
前記データ受信手段で受信した前記式の値を用いて、前記評価対象について癌の再発可能性を評価する評価手段と、
前記評価手段で得られた前記評価結果を前記端末装置へ送信する結果送信手段と、
を備えたこと、
を特徴とする評価システム。