(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090073
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】顔料分散液および艶調整方法
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20220609BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220609BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220609BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D201/00
C09D7/61
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071283
(22)【出願日】2022-04-25
(62)【分割の表示】P 2018029809の分割
【原出願日】2018-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 恵介
(72)【発明者】
【氏名】原田 賢治
(57)【要約】
【課題】本発明は、多品種の溶剤形コーティング材に共通して使用することができる艶調整用の顔料分散液を提供する。
【解決手段】本発明の顔料分散液は、溶剤(A)及び顔料(B)を含む顔料分散液であって、該顔料(B)は、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、ホワイトカーボン、珪藻土、珪灰石、珪質頁岩、バーミキュライト、パーライト、大谷石粉、活性白土、炭、活性炭、木粉、シラスバルーンから選ばれる1種以上であり、さらに、分散剤を含み、該分散剤は、分子中にアルキレンオキサイドを含む分散剤であって、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール付加物から選ばれる1種以上であり、該溶剤(A)100重量部に対し、該分散剤を0.1重量部以上20重量部以下含み、波長660nmにおける光透過率が10%以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤(A)及び顔料(B)を含む顔料分散液であって、
該顔料(B)は、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、ホワイトカーボン、珪藻土、珪灰石、珪質頁岩、バーミキュライト、パーライト、大谷石粉、活性白土、炭、活性炭、木粉、シラスバルーンから選ばれる1種以上であり、
さらに、分散剤を含み、該分散剤は、分子中にアルキレンオキサイドを含む分散剤であって、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール付加物から選ばれる1種以上であり、
該溶剤(A)100重量部に対し、該分散剤を0.1重量部以上20重量部以下含み、
波長660nmにおける光透過率が10%以上であることを特徴とする顔料分散液。
【請求項2】
前記溶剤(A)100重量部に対し、前記顔料(B)を1重量部以上40重量部以下含むことを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項3】
前記溶剤(A)中の脂肪族炭化水素の比率が30重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項4】
前記顔料(B)が、吸油量50ml/100g以上の顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項5】
溶剤を含むコーティング材に、請求項1から請求項4のいずれかに記載の顔料分散液を混合することを特徴とするコーティング材の艶調整方法。
【請求項6】
溶剤を含むコーティング材100重量部に対し、請求項1から請求項4のいずれかに記載の顔料分散液を1重量部以上50重量部以下混合することを特徴とするコーティング材の艶調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な顔料分散液に関する。本発明の顔料分散液は、艶調整用の顔料分散液として、多品種の溶剤形コーティング材に共通して使用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物、土木構築物等の躯体の保護、意匠性の付与および、美観性の向上のため塗装仕上げが行われており、優れた塗膜物性を有することから種々の溶剤形コーティング材が多く用いられている。
【0003】
このようなコーティング材においては、多種多様な条件に応じたコーティング材を提供する必要がある。例えば、同一品種のコーティング材であっても、艶有り、7分艶、5分艶、3分艶、艶消し等のそれぞれの艶に応じたものを用意し対応する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1には、艶消剤を含むコーティング材が記載されている。
しかし特許文献1では、所望の艶消度合に応じ、所定量の艶消剤を配合して艶を調整したコーティング材を用意しておく必要がある。
よって、コーティング材の品種が増えるに従い、艶調整品を含めたコーティング材の総数は相乗的に増大していき、コーティング材の製造工場や販売店等においては、保管や在庫管理等が煩雑となる問題が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、多品種の溶剤形コーティング材に対する艶調整において、共通して使用することが可能な顔料分散液を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、溶剤及び顔料を必須成分とし、光透過率が10%以上である顔料分散液が、多品種の溶剤形コーティング材に対し、色彩に悪影響を与えず艶調整に有効であること見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.溶剤(A)及び顔料(B)を含む顔料分散液であって、
該顔料(B)は、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、ホワイトカーボン、珪藻土、珪灰石、珪質頁岩、バーミキュライト、パーライト、大谷石粉、活性白土、炭、活性炭、木粉、シラスバルーンから選ばれる1種以上であり、
さらに、分散剤を含み、該分散剤は、分子中にアルキレンオキサイドを含む分散剤であって、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール付加物から選ばれる1種以上であり、
該溶剤(A)100重量部に対し、該分散剤を0.1重量部以上20重量部以下含み、
波長660nmにおける光透過率が10%以上であることを特徴とする顔料分散液。
2.前記溶剤(A)100重量部に対し、前記顔料(B)を1重量部以上40重量部以下含むことを特徴とする1.に記載の顔料分散液。
3.前記溶剤(A)中の脂肪族炭化水素の比率が30重量%以上であることを特徴とする1.に記載の顔料分散液。
4.前記顔料(B)が、吸油量50ml/100g以上の顔料を含むことを特徴とする1.に記載の顔料分散液。
5.溶剤を含むコーティング材に、1.から4.のいずれかに記載の顔料分散液を混合することを特徴とするコーティング材の艶調整方法。
6.溶剤を含むコーティング材100重量部に対し、1.から4.のいずれかに記載の顔料分散液を1重量部以上50重量部以下混合することを特徴とするコーティング材の艶調整方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の顔料分散液は、多品種の溶剤形コーティング材に対し、色彩や物性に悪影響を与えず艶調整に有効であり、多品種の溶剤形コーティング材に共通して使用することが可能である。本発明顔料分散液を使用することによって、工場、販売店等における保管スペースや在庫管理の問題を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の顔料分散液は、溶剤(A)及び顔料(B)を含むもので、顔料分散液の光透過率は、10%以上(好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上)であることを特徴とする。
光透過率が10%以上である顔料分散液は、溶剤(A)と顔料(B)の相性が良く、分散安定性に優れている。このような顔料分散液は、多品種の溶剤形コーティング材との適性が高く、コーティング材中においては貯蔵安定性に優れているとともに、塗膜の色彩に悪影響を与えず艶調整機能に優れている。
顔料分散液の光透過率が、10%未満である場合は、分散安定性、貯蔵安定性が不十分となり、多品種の溶剤形コーティング材で使用することが困難である。また、塗膜の色彩に悪影響を与えるおそれがある。
【0012】
光透過率は、分光光度計(島津製作所製「UV-3100」)により測定され、試料を入れた厚さ5mmのセルを通過する波長660nmの光について、セル通過前の強度(入射光強度)に対するセル通過後の強度(透過光強度)の比により表されるものである。
本発明では、溶剤(A)のみのものをブランク試料とし、溶剤(A)及び顔料(B)を含む顔料分散液試料とし、下式(1)で表される。
式(1)
光透過率(%)=(顔料分散液試料の透過光強度/顔料分散液試料の入射光強度)/(ブランク試料の透過光強度/ブランク試料の入射光強度)×100
【0013】
溶剤(A)と顔料(B)の混合比率は、特に限定されないが、溶剤(A)100重量部に対し、顔料(B)0.5重量部以上50重量部以下(より好ましくは1重量部以上40重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上35重量部以下)であることが好ましい。
このような混合比率では、顔料分散液の透明性に優れ、高い光透過率を示し、多品種の溶剤形コーティング材に適用可能であるとともに、優れた艶調整機能を発揮する。なお、7分艶、5分艶等に調整する場合は、顔料(B)の混合比率はより少なくてもよい。
【0014】
溶剤(A)は、特に限定されないが、芳香族炭化水素溶剤、脂肪族炭化水素溶剤等を用いることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を1種または2種以上使用することができる。
脂肪族炭化水素溶剤としては、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ペンタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、イソノナン、n-デカン、イソデカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等を1種または2種以上使用することができる。
また、脂肪族炭化水素溶剤を主成分とするものとして、例えば、テルピン油、ミネラルスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、イソパラフィン、石油エーテル、ソルベントナフサ、石油ナフサ等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上使用することができる。
【0015】
本発明では特に、全溶剤のうち30重量%以上(好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上)が脂肪族炭化水素溶剤である溶剤が好ましい。
さらに、脂肪族炭化水素溶剤と芳香族炭化水素溶剤とを混合したものが好ましく、その混合比率(重量比率)は、脂肪族炭化水素溶剤:芳香族炭化水素溶剤が90:10~30:70、さらに好ましくは85:15~40:60、より好ましくは80:20~50:50であるものを好適に使用することができる。このような混合比率である溶剤は、透明性、分散安定性、貯蔵安定性に優れた顔料分散液を得ることができ、塗膜の色彩や物性に悪影響を与えず、艶調整機能に優れた効果を発揮する。
さらに、トルエン、キシレンを含まず、引火点21℃以上の第2石油類に該当するものが、安全衛生上好ましい。
なお本発明において、「a~b」は「a以上b以下」と同義である。
【0016】
なお溶剤(A)としては、本発明の効果を損なわない程度に、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶剤、また、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶剤を含むこともできる。
【0017】
顔料(B)は、艶調整効果を有するもので、吸油量50ml/100g以上(より好ましくは100ml/100g以上、さらに好ましくは150ml/100g以上)である顔料を含むもので、吸油量50ml/100g以上の顔料として、例えば、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、ホワイトカーボン、珪藻土、珪灰石、珪質頁岩、バーミキュライト、パーライト、大谷石粉、活性白土、炭、活性炭、木粉、シラスバルーン等が挙げられる。本発明では特に、珪藻土、ホワイトカーボン等を用いることが好ましい。
なお吸油量は、JIS K 5101-13-1(精製あまに油法)に準じて測定した値である。
このような顔料(B)は、溶剤との相溶性(相性)が良く、艶調整効果が高いため、分散安定性に優れ、少量で艶調整が可能である。
【0018】
顔料(B)の平均粒子径は、特に限定されないが、1μm以上30μm以下(より好ましくは1.5μm以上20μm以下、さらに好ましくは2μm以上15μm以下)であることが好ましい。本発明では、顔料(B)の平均粒子径が大きくても、分散安定性に優れた顔料分散液を得ることができる。
【0019】
本発明の顔料分散液には、上述の成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種添加剤を配合することも可能である。このような添加剤としては、例えば、合成樹脂、分散剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、触媒、硬化促進剤、脱水剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0020】
合成樹脂は、コーティング材用の結合剤として作用するもので、このような合成樹脂を顔料分散液に配合することもできる。
合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
溶剤(A)と合成樹脂の混合比率は、特に限定されないが、溶剤(A)100重量部に対し、合成樹脂(固形分)0.1重量部以上10重量部以下(さらには0.5重量部以上8重量部以下)であることが好ましい。なお本発明では、合成樹脂を含まない態様も好適である。
【0021】
分散剤は、顔料分散液の分散安定性に寄与し、コーティング材中において貯蔵安定性に寄与する成分である。分散剤としては、本発明では、分子中にアルキレンオキサイドを含む化合物である。
分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンテングリコールから選ばれる1種以上、または、それらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンテンオキサイド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコール、ペンテングリコールから選ばれる1種以上を反応して得られる反応生成物等のポリアルキレングリコール、
または該ポリアルキレングリコールに、水酸基含有化合物、イソシアネート含有化合物、カルボキシル基含有化合物、リン酸基含有化合物、スルホン酸基含有化合物から選ばれる1種以上を付加させたポリアルキレングリコール付加物等を用いることができる。
【0022】
水酸基含有化合物としては、ポリアルキレングリコール以外の水酸基含有化合物として、例えば、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0023】
イソシアネート含有化合物としては、例えば、1,3-トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-ペンタメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ-ト、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;
m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、4,4´-ジフェニルジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルエ-テルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4´-ジイソシアネート、2,2´-ジフェニルプロパン-4,4´-ジイソシアネート、3,3´-ジメチルジフェニルメタン-4,4´-ジイソシネート、4,4´-ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3´-ジメトキシジフェニル-4,4´-ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
1,3-キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4-キシリレンジイソシアネ-ト(XDI)、ω,ω´-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(α,α-ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネート;
等、及びこれらのイソシアネート基含有化合物をアロハネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン)、3量化(イソシアヌレート)、アダクト化、カルボジイミド反応等によって誘導体化したもの、及びそれらの混合物、及びこれらのイソシアネート基を含有する化合物と上述した共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。
【0024】
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、フマル酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。またはこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0025】
リン酸基含有化合物としては、例えば、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、オキシ塩化リン、無水リン、五酸化二リン等が挙げられる。
【0026】
スルホン酸基含有化合物としては、例えば、ジノニルナフタレンジスルホン酸、メタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、1,3-プロパンジスルホン酸、1,4-ブタンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸等が挙げられる。
【0027】
本発明では分散剤として、特に炭素数3から5のアルキレンオキサイドを含むものが好ましく、溶剤(A)中において、顔料(B)を効率よく分散させることができる。また、顔料分散液中の溶剤と、コーティング材中の溶剤の種類が異なっていても、優れた貯蔵安定性を示し、色彩に悪影響を与えず優れた艶調整機能を発揮する。
【0028】
溶剤(A)と分散剤の混合比率は、溶剤(A)100重量部に対し、分散剤0.1重量部以上20重量部以下(さらには0.5重量部以上15重量部以下)である。
【0029】
本発明の顔料分散液の製造は、上述の溶剤(A)と顔料(B)、必要に応じその他添加剤を混合し、分散装置で分散させることによって調製することができる。分散装置としては、アトライター、ボールミル、サンドミル、ホモミキサー、ペイントシェーカー等の公知の装置を使用すればよい。
【0030】
顔料分散液の粘度は、特に限定されないが、0.5Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましい。なお、粘度は、温度23℃、相対湿度50%RHで、B型回転粘度計で測定した値である。
また、顔料分散液のチキソトロピーインデックス(TI値)は、特に限定されないが、3以上10以下であることが好ましい。なお、TI値は、温度23℃、相対湿度50%RHで、B型回転粘度計を用い、下記式(2)により求められる値である。
(式2) TI値=η1/η2
(但し、η1:2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)、η2:20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
このような粘性であることにより、多品種の溶剤形コーティング材に対して、優れた顔料混和性、貯蔵安定性を示すことができる。
【0031】
本発明の顔料分散液は、多品種の溶剤形コーティング材の艶調整に使用することができる。特に本発明では、全溶剤のうち30重量%以上が脂肪族炭化水素溶剤であるコーティング材が好ましく、1液型、2液型のいずれであってもよい。溶剤形コーティング材に含まれる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。
【0032】
顔料分散液の混合比率は、所望の艶の程度に応じて適宜設定すればよいが、混合対象となる溶剤形コーティング材(全量)に対し、好ましくは1重量部以上50重量部以下、さらに好ましくは2重量部以上40重量部以下で混合する。
【実施例0033】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、顔料分散液の製造においては、以下の成分を使用した。
【0034】
・溶剤A:キシレン/ミネラルスピリット混合溶液(脂肪族炭化水素の比率:88重量%、脂肪族炭化水素溶剤:芳香族炭化水素溶剤が88:12)
・溶剤B:キシレン/ミネラルスピリット混合溶液(脂肪族炭化水素の比率:70重量%、脂肪族炭化水素溶剤:芳香族炭化水素溶剤が70:30)
・溶剤C:キシレン/ミネラルスピリット混合溶液(脂肪族炭化水素の比率:45重量%、脂肪族炭化水素溶剤:芳香族炭化水素溶剤が45:55)
・溶剤D:キシレン/ミネラルスピリット混合溶液(脂肪族炭化水素の比率:35重量%、脂肪族炭化水素溶剤:芳香族炭化水素溶剤が35:65)
・溶剤E:キシレン・トルエン/ミネラルスピリット混合溶液(脂肪族炭化水素の比率:20重量%、脂肪族炭化水素溶剤:芳香族炭化水素溶剤が20:80)
・顔料A:ホワイトカーボン(吸油量210ml/100g、平均粒子径10μm)
・顔料B:珪灰石(吸油量56ml/100g、平均粒子径5μm)
・顔料C:炭酸カルシウム(吸油量25ml/100g、平均粒子径10μm)
・合成樹脂A:アクリル樹脂(固形分50重量%、溶剤:脂肪族炭化水素の比率70重量%の溶剤)
・合成樹脂B:ウレタン樹脂(固形分50重量%、溶剤:脂肪族炭化水素の比率90重量%の溶剤)
・分散剤A:(ポリエチレン/ポリプロピレン)グリコール
・分散剤B:1,3ーキシリレンジイソシアネートー(ポリエチレン/ポリプロピレン)グリコール付加物
・分散剤C:クエン酸ー(ポリエチレン/ポリプロピレン)グリコール付加物
・分散剤D:クエン酸ー(ポリエチレン)グリコール付加物
・溶剤形コーティング材A:1液弱溶剤形アクリル樹脂コーティング材(白色)(溶剤中の脂肪族炭化水素の比率:70重量%)
・溶剤形コーティング材B:1液弱溶剤形ウレタン樹脂コーティング材(白色)(溶剤中の脂肪族炭化水素の比率:90重量%)
・溶剤形コーティング材C:1液NAD形ウレタン樹脂コーティング材(白色)(溶剤中の脂肪族炭化水素の比率:60重量%)
・溶剤形コーティング材D:1液弱溶剤形アクリルシリコン樹脂コーティング材(白色)(溶剤中の脂肪族炭化水素の比率:40重量%)
【0035】
(実施例1)
上記成分を使用し、表1に示す配合比率で混合し、標準状態(温度25℃、相対湿度50%)で1時間ディゾルバー分散することにより顔料分散液1を得た。顔料分散液1について、以下の試験を行った。
【0036】
(分散安定性試験)
顔料分散液1を1000mlの容器に入れ密封し、標準状態で1日間貯蔵した後の容器内部の状態を目視にて確認した。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:異常なし
○:ほぼ異常なし
△:一部異常有り(一部沈殿物有り)
×:異常有り(沈降物発生、分離発生)
【0037】
(貯蔵安定性試験)
表2に示すように溶剤形コーティング材A90重量部に対し、顔料分散液1を10重量部混合し、コーティング材を作製した。
このコーティング材を1000mlの容器に入れ密封し、50℃の恒温器で7日間貯蔵した後、室温まで放冷して容器内部の状態を評価した(貯蔵安定性A)。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:異常なし
○:ほぼ異常なし
△:一部異常有り(一部沈殿物有り)
×:異常有り(沈降物発生、分離発生)
また、溶剤形コーティング材Aに替えて、溶剤形コーティング材B(貯蔵安定性B)、溶剤形コーティング材C(貯蔵安定性C)、溶剤形コーティング材D(貯蔵安定性D)についても同様の試験を行った。
【0038】
(艶消し性試験)
表3に示すように溶剤形コーティング材A90重量部に対し、顔料分散液1を10重量部混合し、コーティング材を作製した。
このコーティング材を、予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、塗付け量0.3kg/m 2でスプレー塗装した後、標準状態で14日間乾燥させたものを試験体とした。
また、顔料分散液1を用いない溶剤形コーティング材Aのみについても、予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、塗付け量0.3kg/m 2でスプレー塗装した後、標準状態で14日間乾燥させたものを比較試験体とした。
得られた試験体、比較試験体について、20度光沢度をそれぞれ10点測定し、その平均値の差を比較評価した(艶消し性A)。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:差が10以上
○:差が5以上10未満
△:差が3以上50未満
×:差が3未満
また、溶剤形コーティング材Aに替えて、溶剤形コーティング材B(艶消し性B)、溶剤形コーティング材C(艶消し性C)、溶剤形コーティング材D(艶消し性D)についても同様の試験を行った。
【0039】
(艶ムラ性試験)
艶消し性試験(艶消し性A)で得られた試験体の表面について、目視にて観察、評価を行った(艶ムラ性A)。評価は次のとおりである。結果は表2に示す。
◎:艶ムラが確認されなかった
○:ほとんど艶ムラが確認されなかった
△:一部艶ムラが確認された
×:艶ムラが確認された
また、溶剤形コーティング材Aに替えて、溶剤形コーティング材B(艶ムラ性B)、溶剤形コーティング材C(艶ムラ性C)、溶剤形コーティング材D(艶ムラ性D)についても同様の試験を行った。
【0040】
【0041】