(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090102
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】がんの放射線療法と免疫療法の組合せのための生体材料
(51)【国際特許分類】
A61K 41/00 20200101AFI20220609BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220609BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220609BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220609BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220609BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220609BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220609BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220609BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220609BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20220609BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220609BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220609BHJP
A61K 49/04 20060101ALI20220609BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61K41/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/10
A61K9/14
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/46
A61K9/51
A61K39/395 N
A61K49/04
A61K39/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022071664
(22)【出願日】2022-04-25
(62)【分割の表示】P 2018507629の分割
【原出願日】2016-08-15
(31)【優先権主張番号】62/204,861
(32)【優先日】2015-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509248257
【氏名又は名称】ノースイースタン ユニヴァーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィルフレッド・ングワ
(72)【発明者】
【氏名】ラジヴ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ゲラシモス・マクリギオルゴス
(72)【発明者】
【氏名】シュリーニヴァス・シュリオハール
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・ドゥーガン
(57)【要約】
【課題】がんの放射線療法と免疫療法の組合せのための生体材料の提供。
【解決手段】がんの放射線療法及び免疫療法治療のための組成物及び方法が提供される。免疫アジュバントとコンジュゲートした金属ナノ粒子は、患者に移植され、徐々に放出されることが可能な生分解性ポリマーマトリックス内に分散される。移植片は、近接照射療法スペーサー及びアプリケーター、又は放射線療法基準マーカーとして構成されてもよく、又はその成分であってもよい。組成物は、より低い放射線量を可能にし、非照射部位を含むがんに対する免疫応答を増強させる、マージン無し放射線療法と組み合わせてよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2015年8月13日に出願
した「PrimingRadiotherapy and Immunotherapy Eluter」と題する米国仮出願第62/204,
861号の優先権を主張するものである。
【0002】
連邦支援の研究又は開発に関する記述
本発明は、国立衛生研究所の助成金番号K01CA172478-01からの財政的支援を受けて開発
された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
がんは世界中で主要な死因である。がん死亡の約90%は、がんが患者の体の他の部分に
広がることによる転移によって引き起こされ、効果的な治療を困難にしている。現在、放
射線療法は、単独で、又は手術若しくは化学療法のような他の治療アプローチと組み合わ
せてのいずれかで、がん患者の50%超の治療に使用されている。腫瘍細胞に損傷を与える
のに非常に有効であるが、放射線療法の特異性は、主に放射線ビームの幾何学的制限から
来ている。深部の解剖学的位置に位置する腫瘍を治療する場合、放射線からの健康な組織
及び器官の保存は特に困難でありうる。健康な組織に更なるリスクを加えることなく腫瘍
の損傷を強化するための戦略が緊急に必要とされている。
【0004】
現在の放射線療法の実施では、放射線療法治療を導くために、放射線療法用生体材料(
例えば、近接照射療法スペーサー及び放射線療法基準マーカー)を固形組織の腫瘍にルー
チンに移植する。基準は、腫瘍を局在化させ、放射線を標的とするために必須であるが、
直接の治療上の利益を提供しない。最近、基準及び近接照射療法スペーサーが、現在ルー
チン業務である最小侵襲性放射線療法手順の一部として薬物のin situ送達の機会を提供
することが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kumarら、Translational Cancer Research、2013年、2(4)、228~239頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、がんの放射線療法及び免疫学的療法の組合せにおいて使用するための組成物
及び方法を提供する。組成物は、放射線療法及び診断用途で現在使用されている移植され
た不活性材料に代わることができる「高性能な」生体材料を含む。
【0007】
本発明の一態様は、がんの放射線診断及び/又は療法に使用するための組成物である。
組成物は、免疫アジュバントとコンジュゲートした金属ナノ粒子を含む。ナノ粒子は、生
分解性ポリマーマトリックス内に分散される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、金、酸
化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、白金、若しくはガドリニウムを含む、又はからなる。一部
の実施形態では、ナノ粒子は、放射線不透過性である。一部の実施形態では、ナノ粒子は
、約2nmから約15nmのサイズを有する。一部の実施形態では、ナノ粒子は、球形、ロッド
、立方体、楕円体、コアシェル構造、又は不規則な形状の構造の形態である。
【0008】
一部の実施形態では、免疫アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G
M-CSF)、抗CD40抗体、プログラム死1(PD-1)受容体抗体、抗細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA
-4)抗体、グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)抗体、OX40抗体、T細胞免疫
グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM3)抗体、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)抗体、癌
胎児性抗原関連細胞接着分子(CEACAM)抗体、インターロイキン12(IL-12)、トール様受容
体(TLR)リガンド、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト、及びそれらの組
合せからなる群から選択される。
【0009】
一部の実施形態では、生分解性ポリマーマトリックスは、ポリラクチド、ポリグリコリ
ド、ポリラクチドコグリコリド、グリコール酸又は乳酸のポリエステルアミド、ポリ(N-
イソプロピルアクリルアミド)、ポリガラクチン、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポ
リアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、ポリアミ
ン、キトサン、シルク、及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む。
一実施形態では、組成物は患者に注入可能又は移植可能である。一部の実施形態では、ポ
リマー、ポリマーの混合物、及び/又はポリマーの架橋度は、患者における分解の所望の
時間経過及び組成物からの金属ナノ粒子の放出の対応する時間経過を提供するように選択
される。
【0010】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、1つ又は複数の標的化部分を含むことによって腫瘍
細胞に結合するように標的化される。標的化部分は、葉酸、単鎖可変フラグメント抗体を
含む抗体、上皮増殖因子受容体のリガンド、ヒトタンパク質トランスフェリン、RGDペプ
チド、腫瘍細胞に親和性を有する小分子、ヒアルロン酸、リボフラビン、PSMAアプタマー
、ガラクトース誘導体からなる群から選択されうる。
【0011】
一部の実施形態では、組成物は患者に注入可能又は移植可能である。ある特定の実施形
態では、本組成物は、近接照射療法スペーサー、放射線療法基準マーカー、バルーンアプ
リケーター、近接照射療法アプリケーター、トランスポンダー(例えば、BEACONトランス
ポンダー)、若しくはゲルとして構成される、又はその成分である。
【0012】
一部の実施形態では、組成物は抗腫瘍薬剤を更に含む。ある特定の実施形態では、抗腫
瘍薬剤は、ドセタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシ
ン、PI3K阻害剤、PARP阻害剤、及びPI3K/AKT/mTOR経路阻害剤を含む小分子シグナル経路
阻害剤、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0013】
本発明の別の態様は、がんを治療する方法である。方法は、上記の組成物又は組成物を
含むデバイスを、それを必要とする患者において、腫瘍又は腫瘍細胞を含む領域に注入又
は移植することを含む。一部の実施形態では、組成物は、近接照射療法スペーサー、放射
線療法基準マーカー、バルーンアプリケーター、近接照射療法アプリケーター、ビーコン
、若しくはゲルとして働くデバイスを形成する、又は内に含まれる。一部の実施形態では
、方法は患者に放射線療法を行うことを更に含む。一部の実施形態では、方法は、患者に
化学療法を施すことを更に含む。一部の実施形態では、近接照射療法が行われ、移植され
た近接照射療法スペーサーは上記の組成物を含む。一部の実施形態では、上記の組成物を
含む基準マーカーを移植することを含む、外部ビーム照射療法が行われる。一部の実施形
態では、金ナノ粒子を含む組成物は移植又は注入され、続いて、光電効果によって電子を
生じる放射線療法が行われ、電子は腫瘍細胞死滅効果を有するか、又は増強する。他の実
施形態では、組成物はチタンナノ粒子を含み、放射線療法はチェレンコフ放射を生じ、チ
ェレンコフ放射は腫瘍細胞死滅効果を有するか、又は増強する。一部の実施形態では、方
法は、ナノ粒子に結合していない免疫アジュバントの全身又は局所投与を含む方法と、放
射線療法とをと一緒にする方法よりも、腫瘍細胞の死滅においてより有効である。一部の
実施形態では、方法は、移植された又は注入された組成物による免疫系の活性化のために
、照射されていない腫瘍細胞が死滅するアブスコパル効果を生じる。一部の実施形態では
、マージン無し放射線療法の使用のために、又は本発明の組成物中に存在する免疫アジュ
バントによる免疫系の活性化のために、放射線量は、通常の放射線療法単独の場合に投与
される線量よりも少ない。一部の実施形態では、放射線療法治療計画又はセグメント化は
、マージン無しであるか、又は臨床標的体積、内部標的体積若しくは計画標的体積セグメ
ント化/輪郭形成を含むマージンの必要性を排除する。一部の実施形態では、腫瘍又は腫
瘍細胞に対する患者の免疫応答が増強される。一部の実施形態では、方法は、組成物の生
分解性ポリマーの分解を加速するために、注入又は移植後に患者に、注入又は移植された
組成物の近傍に、超音波のような音響放射を印加することを更に含む。一部の実施形態で
は、がんは、膵臓がん、肺がん、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、子宮頸
がん又は他の婦人科がんである。一部の実施形態では、がんは転移性がんである。
【0014】
本発明は以下に列挙する実施形態によって、更に要約することができる。
1.がんの放射線診断及び/又は療法に使用するための組成物であって、免疫アジュバント
とコンジュゲートした金属ナノ粒子を含み、金属ナノ粒子が生分解性ポリマーマトリック
ス内に分散されている、組成物。
2.ナノ粒子が、金、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、白金、若しくはガドリニウムを含む
、又はからなる、実施形態1に記載の組成物。
3.ナノ粒子が、放射線不透過性である、実施形態1又は実施形態2に記載の組成物。
4.ナノ粒子が、約2nmから約15nmのサイズを有する、実施形態1から3のいずれか一項に記
載の組成物。
5.免疫アジュバントが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、抗CD40抗体、
プログラム死1(PD-1)受容体抗体、抗細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)抗体、グルココル
チコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)抗体、OX40抗体、T細胞免疫グロブリン及びムチ
ンドメイン含有3(TIM3)抗体、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)抗体、癌胎児性抗原関連細胞
接着分子(CEACAM)抗体、インターロイキン12(IL-12)、トール様受容体(TLR)リガンド、イ
ンターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト、及びそれらの組合せからなる群から
選択される、実施形態1から4のいずれか一項に記載の組成物。
6.生分解性ポリマーマトリックスが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドコグ
リコリド、グリコール酸又は乳酸のポリエステルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリル
アミド)、ポリガラクチン、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリ
メタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、ポリアミン、キトサン、シルク
、及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む、実施形態1から5のいず
れか一項に記載の組成物。
7.患者に注入可能又は移植可能である、実施形態1から6のいずれか一項に記載の組成物。
8.近接照射療法スペーサー、放射線療法基準マーカー、バルーンアプリケーター、近接照
射療法アプリケーター、トランスポンダー、若しくはゲルとして構成される、又はその成
分である、実施形態7に記載の組成物。
9.組成物が、移植片として構成され、移植片のサイズが、長さ約3mmから約5mm、及び直径
約0.5mmから約1.5mmである、実施形態8に記載の組成物。
10.ナノ粒子が、球形、ロッド、立方体、楕円体、又はコアシェル構造の形態である、実
施形態1から9のいずれか一項に記載の組成物。
11.ナノ粒子が、葉酸、単鎖可変フラグメント抗体を含む抗体、上皮増殖因子受容体のリ
ガンド、トランスフェリン、RGDペプチド、腫瘍特異的小分子、ヒアルロン酸、リボフラ
ビン、PSMAアプタマー、ガラクトース誘導体、及びそれらの組合せからなる群から選択さ
れる標的化部分のような標的化部分に更にコンジュゲートする、実施形態1から10のいず
れか一項に記載の組成物。
12.ドセタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシン、PI3
K阻害剤、PARP阻害剤、及びPI3K/AKT/mTOR経路阻害剤を含む小分子シグナル経路阻害剤、
並びにそれらの組合せからなる群から選択される抗腫瘍薬剤のような抗腫瘍薬剤を更に含
む、実施形態1から11のいずれか一項に記載の組成物。
13.がんを治療する方法であって、実施形態1に記載の組成物又は前記組成物を含むデバイ
スを、それを必要とする患者において、腫瘍又は腫瘍細胞を含む領域に注入又は移植する
ことを含む方法。
14.組成物を含む近接照射療法スペーサー、放射線療法基準マーカー、バルーンアプリケ
ーター、近接照射療法アプリケーター、トランスポンダー、若しくはゲルが、注入又は移
植される、実施形態13に記載の方法。
15.患者に放射線療法を行うことを更に含む、実施形態13又は実施形態14に記載の方法。
16.近接照射療法が行われ、移植された近接照射療法スペーサーが前記組成物を含む、実
施形態15に記載の方法。
17.外部照射療法が行われ、移植された基準マーカーが前記組成物を含む、実施形態15に
記載の方法。
18.前記組成物が金ナノ粒子を含み、放射線療法が光電効果によって電子を生じる、実施
形態15から17のいずれか一項に記載の方法。
19.前記組成物が酸化チタンナノ粒子を含み、放射線療法がチェレンコフ放射を生じる、
実施形態15から18のいずれか一項に記載の方法。
20.非コンジュゲート型の前記免疫アジュバント及び放射線療法の投与を含む方法よりも
、腫瘍細胞の死滅においてより有効である、実施形態15から19のいずれか一項に記載の方
法。
21.アブスコパル効果を生じる、実施形態13から20のいずれか一項に記載の方法。
22.放射線量は、放射線療法単独の場合に投与される線量よりも少ない、実施形態15から2
1のいずれか一項に記載の方法。
23.放射線療法治療計画又はセグメント化が、マージン無しであるか、又は臨床標的体積
、内部標的体積若しくは計画標的体積セグメント化/輪郭形成を含むマージンの必要性を
排除する、実施形態15から22のいずれか一項に記載の方法。
24.前記腫瘍又は腫瘍細胞に対する患者の免疫応答が増強される、実施形態13から23のい
ずれか一項に記載の方法。
25.前記組成物の生分解性ポリマーの分解を加速又は活性化するために、注入又は移植後
に患者に電磁波又は音波を印加することを更に含む、実施形態13から24のいずれか一項に
記載の方法。
26.がんが、膵臓がん、肺がん、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、子宮頸
がん及び他の婦人科がんである、実施形態13から25のいずれか一項に記載の方法。
27.がんが転移性がんである、実施形態13から26のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】腫瘍内に本発明の組成物を配置することによる放射線療法を増強する過程の概略図を示す図である。組成物が免疫アジュバントとコンジュゲートした金属ナノ粒子をどのように放出し、それによりリンパ節に移動してCD8+T細胞を活性化して活性化状態にする抗原提示細胞を動員し、原発腫瘍及び転移部位の両方で腫瘍細胞を死滅させるかを示す。
【
図1B】腫瘍内に本発明の組成物を配置することによる放射線療法を増強する過程の概略図を示す図である。組成物から放出された金ナノ粒子の存在下での放射線療法が、金ナノ粒子から放出された光電子による腫瘍細胞の死滅をもたらしうることを示す。
【
図1C】腫瘍内に本発明の組成物を配置することによる放射線療法を増強する過程の概略図を示す図である。放射線療法が定期的に与えられる間の(ピーク)、免疫アジュバントの放出の例示的な時間経過(平滑な飽和曲線)を示す。
【
図1D-1E】このプロセスで使用される生体材料の概略図を示す図である。
図1Dは移植片を示し、
図1Eは免疫アジュバントとコンジュゲートしたナノ粒子を示す。
【
図2A】生分解性ポリマーマトリックス内に分散した、免疫アジュバントとコンジュゲートした金ナノ粒子を含有する腫瘍移植放射線療法スペーサーを受けた、腫瘍担持マウスのコンピュータ断層撮影(CT)画像を示す図である。スペーサーが放射線不透過性であり、移植後1日目に十分に定義されることを示す。
【
図2B】生分解性ポリマーマトリックス内に分散した、免疫アジュバントとコンジュゲートした金ナノ粒子を含有する腫瘍移植放射線療法スペーサーを受けた、腫瘍担持マウスのコンピュータ断層撮影(CT)画像を示す図である。移植後4日目のスペーサーを示す。スペーサーは小さくなり、放射線不透過性が低下した。
【
図2C】生分解性ポリマーマトリックス内に分散した、免疫アジュバントとコンジュゲートした金ナノ粒子を含有する腫瘍移植放射線療法スペーサーを受けた、腫瘍担持マウスのコンピュータ断層撮影(CT)画像を示す図である。移植後6日目のスペーサーを示す。ポリマーマトリックスからナノ粒子が徐々に放出されるため、そのサイズ及び放射線不透過性は更に低下した。
【
図2D】生分解性ポリマーマトリックス内に分散した、免疫アジュバントとコンジュゲートした金ナノ粒子を含有する腫瘍移植放射線療法スペーサーを受けた、腫瘍担持マウスのコンピュータ断層撮影(CT)画像を示す図である。8日後にスペーサーが完全に分解し消失したことを示す。
【
図3】腫瘍移植の19日後の、グラフに示されたように治療された4つのマウスの群の平均腫瘍増殖抑制結果を示す図である。腫瘍は、左及び右脇腹の両方に移植されたが、左脇腹の腫瘍のみが治療された。
【
図4】治療開始の18日後に完全な腫瘍退縮を示したマウスの割合を示す図である。4群のマウスは、腫瘍移植後12日間治療された。腫瘍は、左及び右脇腹の両方に移植されたが、左脇腹の腫瘍のみが治療された。
【
図5】金ナノ粒子単独(各群の左手バー)、抗CD40抗体とコンジュゲートした金ナノ粒子(各群の中央のバー)又は抗CD40抗体とコンジュゲートした金ナノ粒子プラス放射線療法(各群の右手バー)で示されるように、左脇腹腫瘍の治療後の未治療の右脇腹腫瘍における様々な免疫細胞の浸潤を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、がんの放射線療法及び免疫学的療法のための組成物及び方法を提供する。本
発明の重要な態様は、免疫アジュバント薬剤とコンジュゲートした金属ナノ粒子の使用で
ある。ナノ粒子は、患者の体内に移植された場合緩やかに分解する生分解性ポリマーマト
リックス内に分散され、ナノ粒子を放出する。
図1A。ナノ粒子の放出は、放射線療法スケ
ジュールと一致する時間枠内で生じるようにプログラム可能である(例えば
図1Cを参照)。
ナノ粒子は、いくつかの異なる方式で、放射線療法と併せてがん細胞への損傷を増加させ
ることができる。免疫アジュバントは、原発腫瘍から離れたがん細胞でさえ、がん細胞に
対する免疫応答を強化することができる(例えば、体の他の部分へ転移した又は広がった
腫瘍細胞)。放射線曝露により腫瘍細胞が死ぬと、免疫応答を更に刺激する抗原を放出す
る。更に、ナノ粒子自体が放射線と相互作用して、光電子(
図1B)及びチェレンコフ放射を
含む腫瘍毒性の物理的効果を生じさせることができ、直接又は腫瘍細胞に有毒であるフリ
ーラジカル若しくは活性酸素種の生成のいずれかによって腫瘍細胞を死滅させることがで
きる。更に、本発明の免疫アジュバントにコンジュゲートした腫瘍細胞の使用は、その効
果を高めることによって放射線療法の毒性を最小限に抑えることができ、より低い放射線
量を使用することを可能にする。
【0017】
本発明は、患者の腫瘍内、又は1つ若しくは複数の腫瘍若しくは腫瘍細胞を含有すると
思われる器官若しくは組織の領域内に配置するための生体材料を提供する。近接照射療法
スペーサーのような移植片の実施形態の説明は
図1Dに示される。移植片10は、生体適合性
及び生分解性ポリマー分子20の固体マトリックスに分散された複数の金属ナノ粒子30を含
有する。単一の金属ナノ粒子30の実施形態は、
図1Eに図式的に示される。金属ナノ粒子60
は、その表面で、抗原提示細胞(APC)の細胞表面受容体に対する抗体のような複数の免疫
アジュバント分子70と共有結合的にコンジュゲートする。
【0018】
本明細書において使用する場合、「金属ナノ粒子」は純粋状態の金属、金属酸化物、及
び金属塩を含有するナノ粒子を包含する。ナノ粒子は、単一金属又は2つ又はそれ以上の
金属、金属酸化物、又は金属塩の合金のいずれかを含有することができる。好ましくは、
金属は、X線を遮蔽するのに効果的な、高原子番号(すなわち、「高Z」金属)の金属元素で
ある。例えば、本発明で使用する金属ナノ粒子は、金、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、
白金、若しくはガドリニウム及びそれらの組合せを含む、又はからなる。好ましくは、ナ
ノ粒子は放射線不透過性であり、すなわちX線を遮蔽し、ナノ粒子を移植された患者のX線
画像に視覚化されうる。
【0019】
本明細書において使用する場合、「ナノ粒子」は、その最長寸法が約1nmから約999nmの
間の長さを有する粒子を表す。本発明で使用するナノ粒子は、好ましくは平均サイズが約
2nmから約15nmの範囲の非常に小型のナノ粒子である。様々な実施形態では、ナノ粒子は
、約1nmから約10nm、約5nmから約20nm、約10nmから約30nm、約15nmから約30nm、約20nmか
ら約40nm、約25nmから約50nm、約30nmから約60nm、約40nmから約80nm、約50nmから約100n
m、又は約10nmから約100nm、又は約20nmから約150nmの平均(例えば、直径、又は他の一次
元で最大の範囲)を有することができる。組成物において、金属ナノ粒子の画分は、上記
のサイズを有する場合がある。例えば、ナノ粒子の少なくとも50%、少なくとも60%、少な
くとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくと
も97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%は、上記のサイズを有する場合がある。金属
ナノ粒子は、本質的に球形であってよく、又はロッド、円筒、立方体、楕円体、コアシェ
ル構造のような他の形状であってよく、又は不規則な形状であってよい。
【0020】
ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、腫瘍標的化部分(「標的化部分」とも呼ばれる)
にコンジュゲートする。腫瘍標的化部分は、腫瘍標的化リガンド、ペプチド、タンパク質
、アプタマー、オリゴヌクレオチド、抗体、細胞接着分子、又は小分子でありうる。本明
細書において使用する場合、「小分子」は薬物又は代謝物のような有機分子を表し、分子
量は1000未満であり、腫瘍細胞の中又は表面でタンパク質又は核酸のような標的に結合す
る。例えば、腫瘍標的化リガンドは、葉酸、単鎖可変フラグメント抗体のような抗体、上
皮増殖因子受容体のリガンド、トランスフェリン、アルギニルグリシルアスパラギン酸(R
GD)ペプチド、リボフラビン、前立腺特異的膜抗原(PSMA)アプタマー、又はガラクトース
誘導体でありうる。標的化部分にコンジュゲートしたナノ粒子は、分解するマトリックス
材料から放出されるので、腫瘍細胞に結合することができ、したがってがん診断又は療法
目的に有用である。
【0021】
免疫アジュバント又は標的化部分のような他の分子は、様々な公知の方法及び化学的性
質のいずれかによって、金属ナノ粒子へ共有結合的又は非共有結合的にコンジュゲートす
ることができる。例えば、金ナノ粒子は、単純なリガンド交換プロセスを用いてヘテロ二
官能性ポリエチレングリコール(PEG)で予備官能化することができる。(Kumarら、Transla
tional CancerResearch、2013年、2(4)、228~239頁)。3つのヘテロ二官能性PEG、すな
わち、メトキシ-PEG-チオール(Mw:2,000Da)、アミン-PEG-チオール(Mw:3,400Da)、及びカ
ルボキシメチル-PEG-チオール(Mw:2,000Da)を、代わりに金ナノ粒子とインキュベートし
て-OCH3(メトキシ)基、-NH2(アミノ)基、及び-COOH(カルボキシル)基で予備官能化された
ナノ粒子を得ることができる。ナノ粒子表面上の遊離アミノ基は、例えば、フルオロフォ
アのスクシンイミジルエステル又は塩基性溶媒中の放射性標識を用いて、タンパク質又は
造影剤を共有結合的にコンジュゲートさせるために使用することができる。ナノ粒子表面
上のカルボキシル基は、カルボジイミドの化学的性質を用いて、免疫アジュバント抗体若
しくはペプチド、又は特定の腫瘍型に特異的な抗体若しくはペプチドのような標的化剤と
コンジュゲートすることができる。カルボキシル基は、安定なアミド結合を形成するため
に第一級アミン(例えば、抗体又はペプチド上)と容易に反応する、公知の水溶性架橋剤1-
エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを用いて活性化することができる
。
【0022】
任意の適した生体適合性及び生分解性ポリマーを、マトリックス材料として使用するこ
とができる。一部の実施形態では、マトリックス材料は、ラクチド、グリコリド、又はそ
れらの組合せのポリマー又はコポリマーである。他の実施形態では、マトリックス材料は
、ヒドロキシカルボン酸のポリエステルである。一部の実施形態では、マトリックス材料
は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドコグリコリド(PLGA)、グリコール酸又
は乳酸のポリエステルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリガラクチン、
ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル
アルコール、ポリエーテル、ポリアミン、キトサン、又はそれらの組合せである。
【0023】
本明細書において使用する場合、「免疫アジュバント」は所望の免疫応答を加速、延長
、又は増強するために作動する分子を表す。好ましい免疫アジュバントは、腫瘍に対する
免疫応答を加速、延長、又は増強するものであり、金属ナノ粒子に共有結合的にコンジュ
ゲートさせることができるものである。一部の実施形態では、免疫アジュバントは、免疫
刺激を助長する環境を促進する免疫応答の非特異的刺激物質である。一実施形態では、免
疫アジュバントは先天性免疫受容体を刺激する。他の実施形態では、免疫アジュバントは
、適応免疫応答を促す及び/又は維持する。一部の実施形態では、免疫アジュバントは抗
原提示を増加させる。一部の実施形態では、免疫アジュバントは、プロフェッショナル抗
原提示細胞による腫瘍抗原の取り込みを増強する。一部の実施形態では、免疫アジュバン
トは、抗原提示細胞の成熟及び/又は活性化を促す。一部の実施形態では、免疫アジュバ
ントは、腫瘍抗原に対する体液性抗体応答を刺激する。一部の実施形態では、免疫アジュ
バントは、抗原特異的CD8+T細胞の生成及び/又は活性化を促す。一部の実施形態では、免
疫アジュバントは、クローン性T細胞増殖を促す。一部の実施形態では、免疫アジュバン
トは、腫瘍細胞によって提示される抗原に対するTリンパ球及びナチュラルキラー(NK)細
胞の細胞毒性応答を刺激する。一部の実施形態では、免疫アジュバントはCD4+ヘルパーT
細胞応答を刺激する。一部の実施形態では、免疫アジュバントは、強力な及び持続するCD
8+T細胞及びNK細胞応答を誘導する。好ましい免疫アジュバントは、金属ナノ粒子にコン
ジュゲートすることができ、免疫系の細胞上又は細胞内の受容体に結合して活性化する分
子である。
【0024】
免疫アジュバントは、疾患を制御する応答を生成又は増強するために、がん療法の効力
を増強する任意の化合物でありうる。例えば、免疫アジュバントは、抗CTL4抗体、GITR抗
体、OX40抗体、抗PD1抗体、抗TIM3抗体、抗LAG3抗体、又は抗CEACAM抗体のような抗体で
ありうる。免疫アジュバントは、IL-12、IL-7、IL-15、IL-21、GM-CSF、又はIFN-ガンマ
のようなサイトカインでありうる。これは、トール様受容体(TLR)又はこれらの受容体を
活性化する他の分子のリガンド(アゴニスト)であってよく、インターフェロン遺伝子刺激
因子(STING)であってよい。或いは、免疫アジュバントは、TLR-2/4リガンド(例えば、カ
ルメット・ゲラン桿菌及びリポ多糖類)、TLR-3アゴニスト(例えば、ポリリボイノシン-ポ
リリボシチジル酸)、TLR-7/8リガンド(例えば、イミダゾキノリン)、TLR-9リガンド及びC
pGオリゴデオキシヌクレオチドのような細菌由来の物質でありうる。これは、ミョウバン
塩のような鉱物アジュバントでありうる。これは、Quil-A又はQS-21のような張力活性薬
剤でありうる。これは、α-ガラクトシルセラミドアナログでありうる。
【0025】
組成物は、好ましくは患者に注入可能又は移植可能である。移植片は、任意の適したサ
イズ及び形状でありうる。一部の実施形態では、組成物は、近接照射療法スペーサー、放
射線療法基準マーカー、バルーンアプリケーター、近接照射療法アプリケーター、トラン
スポンダー(例えば、BEACONトランスポンダー)、若しくは注入可能ゲルのようなゲルとし
て構成される、又はその成分である。ゲルは、限定されることなく、ポリエチレングリコ
ール(PEG)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリル
アミド)、ヒアルロン酸、及びそれらの組合せを含みうる。
【0026】
一部の実施形態では、移植片はロッド、円筒、棒状、立方体、長方形、球形、シェル、
又は楕円若しくは楕円体の形状でありうる。ロッド形、円筒形又は棒状の形状の移植片は
、近接照射療法スペーサー、基準マーカー、バルーンアプリケーター、近接照射療法アプ
リケーター又はトランスポンダーの寸法と類似の寸法でありうる。一部の実施形態では、
移植片は細長く、約2mmから約8mmの範囲の長さ、及び約0.5mmから約1.5mmの範囲の直径又
は最短幅を有することができる。一部の実施形態では、直径は約0.8mmである。一部の実
施形態では、移植片は細長く、最短寸法から最長寸法のアスペクト比が0.05から0.75の範
囲にある。一部の実施形態では、直径は、18G針のような近接照射療法針内に適合するサ
イズにすることができる。一部の実施形態では、移植片は本質的に球形であり、約4cmか
ら約6cmの直径を有する。一部の実施形態では、移植片は楕円体であり、約5cmから約7cm
の最大寸法、及び約5cmから約6cmの最短寸法を有する。一部の実施形態では、移植片は、
近接照射療法スペーサー、基準マーカー、バルーンアプリケーター、近接照射療法アプリ
ケーター、及び放射線療法技術で使用されるトランスポンダーの形状に対応する形状で形
成される。注入又は移植は、当技術分野で公知のルーチンな手順にしたがって行うことが
できる。一度配置されると、移植片又は注入された材料は、マトリックス材料が分解する
につれて、ナノ粒子を腫瘍内に徐々に放出しなければならない。移植は、既に放射線療法
又は近接照射療法を受けている患者に追加の不都合を招くことはない。
【0027】
一部の実施形態では、組成物は、ナノ粒子に加えてマトリックス材料内に分散された治
療剤を更に含み、それによりがんを治療するための更なる機構を提供し、更なる相乗効果
を提供する。治療剤は、例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、シス
プラチン、若しくはゲムシタビンのような抗がん薬、抗アンドロゲン化合物、小分子シグ
ナル経路阻害剤、又はそれらの組合せでありうる。抗アンドロゲン化合物は、例えば、エ
ンザルタミド、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、アビラテロンアセテート、シプ
ロテロンアセテート、メゲストロールアセテート、クロルマジノンアセテート、スピロノ
ラクトン、カンレノン、ドロスピレノン、ジエノゲスト、ノルゲスチメート、ケトコナゾ
ール、又はシメチジンを含むことができる。小分子シグナル経路阻害剤は、例えば、P13K
阻害剤、PARP阻害剤、又はP13K/AKT/mTOR経路阻害剤を含むことができる。治療剤はまた
、ナノ粒子、リポソーム、ポリマーソーム、又は他の担体から放出されることが可能であ
り、二重放出機構を提供する。
【0028】
本発明の別の態様は、がんを治療する方法である。方法は、本発明の組成物又は組成物
を含むデバイスを、それを必要とする患者において、腫瘍又は腫瘍細胞を含有する器官若
しくは組織の領域に注入又は移植することを含む。一部の実施形態では、近接照射療法ス
ペーサー、放射線療法基準マーカー、バルーンアプリケーター、近接照射療法アプリケー
ター、トランスポンダー、又は組成物を含む、若しくは組成物から形成されたゲルが、注
入又は移植される。一部の実施形態では、方法は患者に放射線療法を行うことを更に含む
。一部の実施形態では、近接照射療法が行われ、移植された近接照射療法スペーサーは本
発明の組成物を含む。一部の実施形態では、外部照射療法が行われ、移植された基準マー
カーは本組成物を含む。一部の実施形態では、組成物は金ナノ粒子を含み、放射線療法は
光電効果によって電子を生じる。患者を治療するために使用される放射線は、必要に応じ
て、光電効果を介して金又は他の金属から自由電子を生じるのに適したエネルギーレベル
を含むように調整される場合がある。他の実施形態では、本組成物はチタンナノ粒子を含
み、放射線療法はチェレンコフ放射を生じる。そのような放射線は、腫瘍細胞に有毒であ
る反応性の高いラジカルを生じることが知られている。一部の実施形態では、方法は、前
記免疫アジュバントの非コンジュゲート型又は非標的型及び放射線療法の投与を特徴とす
る方法よりも、腫瘍細胞の死滅においてより有効である。
【0029】
一部の実施形態では、放射線療法と一緒にナノ粒子コンジュゲート免疫アジュバントを
使用すると、照射腫瘍細胞から離れた腫瘍細胞が死滅する、アブスコパル効果のような相
乗効果が現れる。アブスコパル効果は、非照射腫瘍の腫瘍増殖抑制を促す場合があり、同
一対象内の照射腫瘍の腫瘍増殖抑制の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少
なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なく
とも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。アブスコパル効果は、組成物で治
療した対象における非照射腫瘍の腫瘍増殖抑制を促す場合もあり、放射線療法のみで治療
してきた対象の非照射腫瘍の腫瘍増殖抑制の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも2
0%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、
少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。アブスコパル効果は、本組
成物で治療した対象における非照射腫瘍の腫瘍増殖抑制を促す場合もあり、非コンジュゲ
ート免疫アジュバントのみで治療してきた対象の照射腫瘍の腫瘍増殖抑制の少なくとも5%
、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少
なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%であ
る。本発明は、第1の、照射腫瘍において本発明の組成物及び放射線療法で治療した対象
の、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少
なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少
なくとも95%でアブスコパル応答(すなわち、第2の、非照射腫瘍の腫瘍増殖抑制)を生じる
場合がある。
【0030】
方法の一部の実施形態では、腫瘍又は腫瘍細胞に対する患者の免疫応答が増強される。
一部の実施形態では、方法は患者の生存期間又は無病の生存期間を延ばす場合もある。特
定の理論に縛られることなく、放射線療法と免疫アジュバントの局所投与との組合せは、
腫瘍抗原に対する免疫記憶を増強することによって生存を延長させると考えられている。
一部の実施形態では、生存は、放射線療法と共に本発明の組成物で治療されていない対象
よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%
、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又
は少なくとも100%長く増加する。
【0031】
金属ナノ粒子は、局所腫瘍細胞に対する放射線療法の有効性を高め、前記腫瘍細胞に対
して放射線療法のより低い線量を有効にすることを可能にする。一部の実施形態では、放
射線量は、放射線療法単独の場合に投与されるよりも少ない。本発明は、本発明の組成物
の非存在下で、放射線療法による腫瘍サイズの同じ減少又は同じ腫瘍増殖抑制を達成する
ために他の方法で必要とされるであろう線量と比較して、放射線量を少なくとも10%、少
なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なく
とも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%減少させることを可能にする。
【0032】
一部の実施形態では、放射線療法治療計画又はセグメント化は、マージン無しであり、
すなわちそれは照射される腫瘍周辺のマージンの必要性を排除する。そのようなマージン
は、臨床標的体積、内部標的体積又は計画標的体積セグメント化/輪郭形成を通常含む。
現在、放射線療法は、器官のサイズや形状の個体差、又は患者が治療台に置かれるたびに
器官の位置が変化すること等から、標的体積に関する幾何学的な不確実性を考慮するため
に、このようなマージンを含める必要がある。マージン無し放射線療法は、腫瘍細胞を取
り囲む健康な組織に適用される放射線量を最小限に抑えるか又は排除することを可能にす
る。
【0033】
マトリックス材料からのナノ粒子の放出は、ある期間にわたってナノ粒子を放出するた
めにポリマー分解速度を変更することによってカスタマイズすることができる。例えば、
分解速度は、例えば、ポリマーマトリックス材料における架橋度、ポリマーマトリックス
材料の分子量、ナノ粒子のサイズ及び濃度、又はバインダー材料の配合若しくは濃度の1
つ又は複数を変化させることによって制御することができる。放出速度は、シリカ又はヒ
ドロキシアパタイト、カルシウム塩、若しくはリン酸塩等の骨材料のような不活性材料の
配合によっても制御することができる。一部の実施形態では、例えば、放出速度は、1ク
ールの放射線療法治療の持続期間を超えて継続するように選択することができる。一部の
実施形態では、放出持続期間は、1から5日、1から10日、1から20日、1から60日、又は1か
ら120日でありうる。一部の実施形態では、方法は、組成物の生分解性ポリマーの分解を
活性化及び/又は加速するために、注入又は移植後に患者に電磁波又は音波を印加するこ
とを更に含む。移植片はまた、ポリマーマトリックス材料の分解速度、及びナノ粒子サイ
ズ、形状、又は機能性を変えることによって、異なる患者又は治療スケジュールに合わせ
てカスタマイズすることができる。ナノ粒子は、それ自体、他のナノ粒子を含有すること
ができ、又は金属ナノ粒子を、二重放出プロファイルを提供するために、微小粒子又はカ
プセル剤の中に包埋することができる。
【0034】
固体組織の任意のがんは、本発明の組成物又は方法で治療することができる。一部の実
施形態では、がんは、膵臓がん、肺がん、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん
、子宮頸がん又は他の婦人科がんである。一部の実施形態では、がんは転移性がんである
。
【実施例0035】
(実施例1)
ナノ粒子組成物の移植及び放出
膵臓腫瘍を、C57BL/6マウスの左及び右脇腹に皮下増殖させた。マウスを、治療を受け
ない対照群、放射線療法のみを受ける群、免疫療法(抗CD40)のみを受ける群、並びに放射
線療法及び抗CD40と金属ナノ粒子とを含有する移植片の両方を受ける群、の4群に無作為
化した。
図2A~
図2Dは、本発明の組成物(抗CD40にコンジュゲートした金ナノ粒子)を含む
移植片を含有するマウスにおける腫瘍を示す。移植片は放射線不透過性であり、移植後1
日目に明らかに見ることができた(
図1A)。移植片は、金ナノ粒子を含むその内容物を徐々
に放出し、そのサイズ及び不透過度は、8日目まで減少し、それはもはや検出されなかっ
た(
図2D)。
【0036】
(実施例2)
放射線療法及び免疫アジュバント療法の相乗効果
実施例1のように腫瘍をマウスで増殖させ、腫瘍移植後19日目にマウスを治療した。各
マウスで左脇腹腫瘍又は右脇腹腫瘍のみを治療した。治療には、放射線療法(RT)単独、抗
CD40コンジュゲート金ナノ粒子単独、又は放射線療法と抗CD40コンジュゲート金ナノ粒子
との組合せのいずれかが含まれた。結果を
図3に示す。対照と比較して、最大腫瘍増殖抑
制は、放射線療法及び抗CD40ナノ粒子組成物の両方で治療したマウスにおいて観察された
。アブスコパル応答も観察された。治療の18日後に、本発明の組成物で治療したマウスの
未治療の右側腫瘍は、対照と比較して、63%の腫瘍増殖抑制を示した(
図3)。
【0037】
(実施例3)
非照射腫瘍に対するアブスコパル効果
実施例1のように腫瘍をマウスで増殖させ、腫瘍移植の11日後にマウスを治療した。左
脇腹腫瘍のみを治療した。治療モダリティーは実施例2と同一であった。放射線療法及び
抗CD40ナノ粒子組成物の両方によって治療された1つの腫瘍を有するマウスの50%超がアブ
スコパル応答を示し、すなわち、未治療右脇腹腫瘍において、完全な腫瘍退縮を示した(
図4)。その一方で、そのような退縮は、対照群又は放射線療法単独若しくは免疫療法単独
で治療した群のいずれのマウスでも観察されなかった。放射線療法を抗CD40ナノ粒子組成
物と組み合わせた場合、CD8+T細胞の増加も未治療(右脇腹)腫瘍で観察された(
図5)。大部
分の骨髄性細胞型、特に好中球及び骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)においても減少が観
察され、腫瘍内又は照射部位からの流入領域リンパ節のいずれかの樹状細胞集団において
、明らかな表現型変化は観察されなかった。
【0038】
本明細書において使用する場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」
とは、請求項の基本的及び新規な特性に実質的に影響を与えない材料又はステップを含む
ことを可能にする。本明細書での「含む(comprising)」という用語の、特に組成物の成分
の説明又はデバイスの要素の説明における記載は、「から本質的になる」又は「からなる
(consisting of)」と交換することができる。
【0039】
本発明は、特定の好ましい実施形態と関連して記載してきたが、当業者は、前述の明細
書を読んだ後に、本明細書に記載の組成物及び方法に様々な変更、均等物の置換、及び他
の変更を行うことができる。