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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090149
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20220610BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220610BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20220610BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220610BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20220610BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20220610BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220610BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6566
H01M10/6556
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202349
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕司
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】バッテリの冷却時におけるバッテリの温度の偏りを抑制できるバッテリ冷却装置の提供にある。
【解決手段】冷媒流路に沿って設置される第1バッテリ12および第2バッテリ13を第1バッテリ12から第2バッテリ13へ流れる冷媒により冷却するバッテリ冷却装置15において、第1バッテリ12の温度を検出する第1温度センサ17と、第2バッテリ13の温度を検出する第2温度センサ19と、冷媒の流れの向きを変更する冷媒流変更機構と、冷媒流変更機構を制御するコントローラ14と、第1バッテリ12および第2バッテリ13の飽和温度を推定する飽和温度推定部と、を備え、第1バッテリ12が第2バッテリ13よりも温度が高く、第1バッテリ12が第2バッテリ13よりも飽和温度が高いとき、コントローラ14は、冷媒流路における冷媒が第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向かって流れるように、冷媒流変更機構を制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる冷媒流路を備え、
前記冷媒流路に沿って設置される第1バッテリおよび第2バッテリを前記第1バッテリから前記第2バッテリへ向けて流れる冷媒により冷却するバッテリ冷却装置において、
前記第1バッテリの温度を検出する第1温度センサと、
前記第2バッテリの温度を検出する第2温度センサと、
前記冷媒流路を流れる冷媒の流れの向きを変更する冷媒流変更機構と、
前記冷媒流変更機構を制御するコントローラと、
前記第1バッテリおよび前記第2バッテリの飽和温度を推定する飽和温度推定部と、を備え、
前記第2温度センサにより検出される前記第2バッテリの温度が前記第1バッテリの温度より高く、前記飽和温度推定部により推定される前記第2バッテリの飽和温度が前記第2バッテリの飽和温度よりも高いとき、前記コントローラは、前記冷媒流路における冷媒が前記第2バッテリから前記第1バッテリへ向かって流れるように、前記冷媒流変更機構を制御することを特徴とするバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記冷媒流変更機構は、前記冷媒流路において冷媒を前記第1バッテリから前記第2バッテリへ向かう方向へ供給する流体機械であり、
前記流体機械は、前記冷媒流路における冷媒の流れの向きを前記第2バッテリから前記第1バッテリへ向かう方向へ変更可能であることを特徴とする請求項1記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記冷媒流変更機構は、
前記冷媒流路に設けられ、前記冷媒流路における前記第1バッテリから前記第2バッテリへ向かう冷媒の流れの向きを、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ向かう方向へ変更可能とする可動板と、
前記コントローラにより制御され、前記可動板を駆動する可動板駆動源と、を有することを特徴とする請求項1記載のバッテリ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ冷却装置に関する従来技術として、例えば、特許文献1に開示された発熱体収容装置が知られている。特許文献1に開示された発熱体収容装置は、第1仕切り板、第2仕切り板、発熱モジュール、排気ファンおよび排気ガイド部材を備える。発熱モジュールは第1仕切り板と第2仕切り板との間に高さ方向に所定間隔で配置されており、発熱モジュールの一端から第1側面までの給気流路と発熱モジュールの他端から第2側面までの排気流路とを設けるように固定されている。
【0003】
発熱体収容装置によれば、給気口側の鉛直方向流路の上流側および下流側は、殆ど給気と同じ温度であるため各モジュールケース間では、水平方向流路へ流入する空気に温度差が殆どなくなる。つまり、筐体の下部の給気口と上部の排気口との間の温度ばらつきを小さくできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-37019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発熱体収容装置では、水平方向流路を通る空気が発熱モジュールの底面を冷却するので、発熱モジュールにおいて水平方向流路の上流側よりも下流側では温度が高くなるという問題がある。また、給気口側の鉛直方向流路の上流側および下流側は、殆ど給気と同じ温度であるとするものの、最上部の発熱モジュールが最下部のモジュールよりも温度が高くなり易く、発熱モジュールによって温度の偏りが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、バッテリの冷却時におけるバッテリの温度の偏りを抑制できるバッテリ冷却装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、冷媒が流れる冷媒流路を備え、前記冷媒流路に沿って設置される第1バッテリおよび第2バッテリを前記第1バッテリから前記第2バッテリへ向けて流れる冷媒により冷却するバッテリ冷却装置において、前記第1バッテリの温度を検出する第1温度センサと、前記第2バッテリの温度を検出する第2温度センサと、前記冷媒流路を流れる冷媒の流れの向きを変更する冷媒流変更機構と、前記冷媒流変更機構を制御するコントローラと、前記第1バッテリおよび前記第2バッテリの飽和温度を推定する飽和温度推定部と、を備え、前記第2温度センサにより検出される前記第2バッテリの温度が前記第1バッテリの温度より高く、前記飽和温度推定部により推定される前記第2バッテリの飽和温度が前記第1バッテリの飽和温度よりも高いとき、前記コントローラは、前記冷媒流路における冷媒が前記第2バッテリから前記第1バッテリへ向かって流れるように、前記冷媒流変更機構を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明では、冷媒流路を流れる冷媒は第1バッテリを冷却した後に第2バッテリを冷却する。第1温度センサは第1バッテリの温度を検出し、第2温度センサは第2バッテリの温度を検出する。コントローラは、第1バッテリの温度が第2バッテリの温度より高く、飽和温度推定部により推定される第1バッテリの飽和温度が第2バッテリの飽和温度よりも高いとき、冷媒流路における冷媒が第2バッテリから第1バッテリへ向かって流れるように、冷媒流変更機構を制御する。その結果、冷媒が第2バッテリから第1バッテリへ向かって流れることにより、第1バッテリと第2バッテリとの間の温度の偏りが抑制される。なお、飽和温度とは第1バッテリ又は第2バッテリが放電(又は充電)による温度上昇後に一定となる温度を指す。
【0009】
また、上記のバッテリ冷却装置において、前記冷媒流変更機構は、前記冷媒流路において冷媒を前記第1バッテリから前記第2バッテリへ向かう方向へ供給する流体機械であり、前記流体機械は、前記冷媒流路における冷媒の流れの向きを前記第2バッテリから前記第1バッテリへ向かう方向へ変更可能である構成としてもよい。
この場合、流体機械によって冷媒流路における冷媒の流れの方向を変更できるので、冷媒の流れの方向を変更するための手段を別に設ける必要がなく、また、コントローラは流体機械を制御するだけでよく、バッテリ冷却装置の構成や制御を簡素化することができる。
【0010】
また、上記のバッテリ冷却装置において、前記冷媒流変更機構は、前記冷媒流路に設けられ、前記冷媒流路における前記第1バッテリから前記第2バッテリへ向かう冷媒の流れの向きを、前記第2バッテリから前記第1バッテリへ向かう方向へ変更可能とする可動板と、前記コントローラにより制御され、前記可動板を駆動する可動板駆動源と、を有する構成としてもよい。
この場合、可動板が冷媒流路における第1バッテリから第2バッテリへ向かう冷媒の流れの向きを、第2バッテリから第1バッテリへ向かう方向へ変更する。したがって、冷媒を供給する手段を制御する必要が無く、冷媒の流量が変動し難くなり安定した冷媒の供給が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッテリの冷却時におけるバッテリの温度の偏りを抑制できるバッテリ冷却装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るバッテリ冷却装置の概要を示す縦断面図である。
図2】第1バッテリおよび第2バッテリの充放電時における温度変化を示すグラフ図である。
図3】(a)はバッテリ冷却装置における冷媒の流れが第1開口部から第2開口部へ向かう状態を示す説明図であり、(b)はバッテリ冷却装置における冷媒の流れが第2開口部から第1開口部へ向かう状態を示す説明図である。
図4】第2の実施形態に係るバッテリ冷却装置の概要を示す縦断面図である。
図5】(a)はバッテリ冷却装置における冷媒の流れが第1開口部から第2開口部へ向かう状態を示す説明図であり、(b)はバッテリ冷却装置における冷媒の流れが第2開口部から第1開口部へ向かう状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るバッテリ冷却装置について図面を参照して説明する。本実施形態では、産業車両としてのフォークリフトに搭載される車載用バッテリを冷却する車作用バッテリ冷却装置に適用した例を説明する。
【0014】
図1に示すように、車載用バッテリパック10は、ケース11と、第1バッテリ12と、第2バッテリ13と、コントローラ14と、バッテリ冷却装置15と、を備えている。ケース11は、第1バッテリ12および第2バッテリ13を収容する。ケース11の詳細については後述する。
【0015】
第1バッテリ12は複数のバッテリセル16を有するバッテリモジュールであり、バッテリセル16は充放電可能な二次電池である。第1バッテリ12には、各バッテリセル16を監視する監視ECU(図示せず)と、第1バッテリ12の温度を検出する第1温度センサ17と、を有している。第1バッテリ12はケース11内において下部に設置されている。なお、図示はされないが、各バッテリセル16に温度センサは設けられており、後述する第1開口部33に最も近いバッテリセル16の温度センサを第1温度センサ17としている。
【0016】
第2バッテリ13は複数のバッテリセル18を有するバッテリモジュールであり、バッテリセル18は充放電可能な二次電池である。第2バッテリ13には、各バッテリセル18を監視する監視ECU(図示せず)と、第2バッテリ13の温度を検出する第2温度センサ19と、を有している。第2バッテリ13は第1バッテリ12と同一の構成である。第2バッテリ13は第1バッテリ12の上方に設置されている。なお、図示はされないが、各バッテリセル18に温度センサは設けられており、後述する第2開口部34に最も近いバッテリセル18の温度センサを第2温度センサ19としている。
【0017】
第1バッテリ12および第2バッテリ13は、走行用の電動モータ(図示せず)を駆動する駆動回路(図示せず)と接続されている。また、第1バッテリ12および第2バッテリ13は、充電時には充電器(図示せず)を介して外部電源(図示せず)と接続可能である。コントローラ14は、第1バッテリ12および第2バッテリ13を制御する。
【0018】
バッテリ冷却装置15は、冷却空気流路20と、送風機21と、第1温度センサ17と、第2温度センサ19と、コントローラ14と、備える。冷却空気流路20は、冷媒流路に相当し、ケース11内を冷媒としての空気が流れるように形成されている。
【0019】
ここで、ケース11を詳細に説明すると、図1に示すように、ケース11は底壁22と、底壁22と平行な天井壁23と、底壁22および天井壁23と直角な側壁24、25、26と、備えているほか、側壁26と対向する側壁(図示)を備えている。ケース11内には、ケース11の内部空間を上下に仕切る隔壁27が備えられるほか、第1バッテリ12を収容する空間を形成するとともに冷却空気流路20を区画する区画壁28が備えられている。隔壁27上に第2バッテリ13が載置されている。
【0020】
区画壁28は、下壁部29と、上壁部30と、側壁部31と、斜壁部32と、備えている。下壁部29は底壁22に平行な壁部であり、下壁部29上に第1バッテリ12が載置されている。下壁部29は側壁25と接続されている。上壁部30は、下壁部29および第1バッテリ12の上方に位置し、隔壁27と平行な壁部である。側壁部31は、下壁部29および上壁部30の側壁24側の端部を接続する壁部であり、側壁24と平行である。斜壁部32は上壁部30の側壁25側の端部から側壁25側へ向けて下方へ傾斜する壁部であり、側壁25と接続されている。したがって、第1バッテリ12は区画壁28内に収容されている。
【0021】
ケース11内には、底壁22、側壁24、25、26、隔壁27、区画壁28および側壁26と対向する図示されない側壁によって冷却空気流路20が形成されている。側壁25には、第1開口部33および第2開口部34が形成されている。第1開口部33は側壁25の下部に位置し、第2開口部34は第1開口部33の上方に位置する。冷却空気流路20は、第1開口部33および第2開口部34を有しており、空気は第1開口部33から第2開口部34へ流れることが可能であり、第2開口部34から第1開口部33へ流れることも可能である。本実施形態における冷却用の空気は外気である。
【0022】
本実施形態では、冷却空気流路20は、第1流路部35と、接続流路部36および第2流路部37を有している。第1流路部35は、第1開口部33から接続流路部36に至る空間であり、区画壁28を介して第1バッテリ12の冷却を可能とする空間である。接続流路部36は第1流路部35と第2流路部37とを接続する空間である。第2流路部37は、接続流路部36と第2開口部34との間の空間であり、隔壁27を介して第2バッテリ13の冷却を可能とする空間である。
【0023】
本実施形態では、第2開口部34に送風機21が設けられている。送風機21はファン38と、ファン38の回転を正逆可能とするファン用電動モータ39と、を有している。ファン用電動モータ39は、コントローラ14により制御される。ファン用電動モータ39が正回転されるとき、冷却用の空気はバッテリ冷却装置15の外部から第1開口部33を通じて冷却空気流路20に吸引され、冷却空気流路20を通って第2開口部34から排出される。ファン用電動モータ39が逆回転されるとき、冷却用の空気はバッテリ冷却装置15の外部から第2開口部34を通じて冷却空気流路20に吸引され、冷却空気流路20を通って第1開口部33から排出される。
【0024】
送風機21は冷却空気流路20において空気を第1開口部33から第2開口部34へ向かう方向へ供給する流体機械に相当する。また、送風機21は、冷却空気流路20における冷却空気の流れの向きを第2開口部34から第1開口部33へ向かう方向へ変更可能とする冷媒流変更機構に相当する。ファン用電動モータ39は、可動板駆動源に相当する。
【0025】
コントローラ14は、送風機21のファン用電動モータ39を制御することから、冷媒流変更機構を制御するコントローラに相当する。また、コントローラ14は、第1バッテリ12および第2バッテリ13の温度変化に基づいて第1バッテリ12の飽和温度Tasおよび第2バッテリ13の飽和温度Tbsを推定する機能を有している。したがって、コントローラ14は、第1バッテリ12の飽和温度Tasおよび第2バッテリ13の飽和温度Tbsを推定する飽和温度推定部に相当する。飽和温度は、放電(又は充電)時の温度上昇後に一定となるバッテリの温度である。飽和温度Ts(Tas、Tbs)の推定は、次に示す式(1)によって求めることが可能である。式(1)における△Tは温度上昇時における特定の期間tにおける温度変化である。
【0026】
【数1】
【0027】
図2は、第1バッテリ12および第2バッテリ13の時間と温度との関係を示すグラフである。図2におけるグラフG1は、第1バッテリ12の温度変化を示すグラフであり、グラフG2は、第2バッテリ13の温度変化を示すグラフである。図2では、例えば、第1バッテリ12の時間t1、t2の期間における温度上昇△Ta1(Ta2-Ta1)とし、第1バッテリ12の時間t2、t3の期間における温度上昇△Ta2(Ta3-Ta2)とすると、式(1)および温度上昇△Ta1により第1バッテリ12の飽和温度Tas1が求められ、第1バッテリ12の飽和温度Tasを推定できる。さらに、式(1)および温度上昇△Ta2を用いて第1バッテリ12の飽和温度Tas2を求めることで、第1バッテリ12の飽和温度の推定精度が向上する。つまり、複数の期間の温度上昇△Tを用いて飽和温度Tasを求めることにより、飽和温度Tasの推定精度は高められる。
【0028】
また、第2バッテリ13の時間t1、t2の期間における温度上昇△Tb1(Tb2-Tb1)とし、第2バッテリ13の時間t2、t3の期間における温度上昇△Tb2(Tb3-Tb2)とすると、式(1)および温度上昇△Tb1により第2バッテリ13の飽和温度Tbs1が求められ、第2バッテリ13の飽和温度Tbsを推定できる。さらに、式(1)および温度上昇△Tb2を用いて第2バッテリ13の飽和温度Tbs2を求めることで、第2バッテリ13の飽和温度Tbsの推定精度が向上する。第1バッテリ12の飽和温度Tasおよび第2バッテリ13の飽和温度Tbsをそれぞれ推定することは、第1バッテリ12および第2バッテリ13の温度上昇の原因が、放電以外であるか否かを確認するためである。推定された飽和温度Tsが明らかにバッテリの飽和温度とは相違する場合には、放電(又は充電)以外の原因によって温度上昇が生じていることを把握できる。
【0029】
本実施形態では、コントローラ14は、一定の条件が満たされたとき、冷却空気流路20の空気の流れが第2開口部34から第1開口部33に向けて流れるように送風機21を制御する。一定の条件は、具体的には、第2バッテリ13の温度Tbが第1バッテリ12の温度Taより高く、第2バッテリ13の飽和温度Tbsが第1バッテリ12の飽和温度Tasよりも高いときである。冷却空気流路20において、第1開口部33から第2開口部34へ空気が流れると、第1バッテリ12および第2バッテリ13は冷却空気流路20を通る空気によって冷却されるものの、第1バッテリ12と比べると第2バッテリ13は冷却され難い。これは、上流側となる第1流路部35における第1バッテリ12の冷却が下流側となる第2流路部37における第2バッテリ13の冷却よりも先となり、第1バッテリ12の冷却によって暖められた空気が第2バッテリ13を冷却するためである。
【0030】
そこで、本実施形態では、第1バッテリ12の温度Taが第2バッテリ13の温度Tbより高く、飽和温度Tasが飽和温度Tbsよりも高いとき、コントローラ14が送風機21を制御して、空気が第2開口部34から第1開口部33に向けて流れるようにする。これにより、上流側となる第2バッテリ13が下流側となる第1バッテリ12よりも先に冷却される。
【0031】
次に、本実施形態に係るバッテリ冷却装置15による第1バッテリ12および第2バッテリ13の冷却について説明する。フォークリフトが走行するとき、走行用の電動モータは駆動回路によって電力の供給を受けて駆動される。第1バッテリ12および第2バッテリ13は走行用の電動モータへ電力供給のため放電し、放電に伴い発熱する。コントローラ14は、第1バッテリ12および第2バッテリ13の放電中に冷却空気流路20に冷却用の空気が流れるように送風機21を制御する。
【0032】
図3(a)に示すように、送風機21のファン38は、ファン用電動モータ39の正回転により回転し、空気は放電開始から第1開口部33から第2開口部34へ向けて流れる。図3(a)では白抜矢印により空気の流れを示す。
【0033】
外部の空気は第1開口部33から冷却空気流路20に吸引され、吸引された空気は第1流路部35を通過するとき第1バッテリ12と熱交換を行う。第1バッテリ12に生じる熱は下壁部29に伝達され、下壁部29の熱は第1流路部35を通過する空気と熱交換される。つまり、第1バッテリ12と第1流路部35を通過する空気との熱交換は下壁部29を介して行われる。熱交換により第1バッテリ12は冷却される。第1バッテリ12において第1流路部35の空気の流れ方向からみて上流側のバッテリセル16は下流側のバッテリセル16と比較して温度が低く、上流から下流へ向かうにつれてバッテリセル16の温度が高くなる。また、第1バッテリ12と熱交換をした空気は、熱交換前の空気と比べると温度が高くなっている。
【0034】
第1バッテリ12と熱交換をした空気は、接続流路部36を経て、第2流路部37を通過する。このとき、第2流路部37を通過する空気は、第2バッテリ13と熱交換を行う。第2バッテリ13に生じる熱は隔壁27に伝達され、隔壁27の熱は第2流路部37を通過する空気と熱交換される。つまり、第2バッテリ13と第2流路部37を通過する空気との熱交換は下壁部29を介して行われる。熱交換により第2バッテリ13は冷却される。第2バッテリ13において第2流路部37の空気の流れ方向からみて上流側のバッテリセル18は下流側のバッテリセル18と比較して温度が低く、上流から下流へ向かうにつれてバッテリセル16の温度が高くなる。
【0035】
第2流路部37を通過する空気は、既に第1バッテリ12との熱交換を終えた空気であるため、第2バッテリ13の冷却は第1バッテリ12の冷却と比較すると小さい。第2バッテリ13と熱交換した空気は、第2開口部34から外部へ排出される。
【0036】
第1開口部33から第2開口部34へ向かう空気の流れが継続されると、第1開口部33から第2開口部34へ向う空気の流れの中では下流側となる第2流路部37の第2バッテリ13は、上流側となる第1バッテリ12よりも温度が高くなる。放電時における第1バッテリ12の温度は、第1温度センサ17により検出され、第2バッテリ13の温度は、第2温度センサ19により検出され、検出された第1バッテリ12の温度および第2バッテリ13の温度はコントローラ14へ伝達される。コントローラ14は、放電時における温度上昇中の第1バッテリ12の飽和温度Tasおよび第2バッテリ13の飽和温度Tbsを推定する。温度上昇時における複数の期間の温度上昇△Tを用いて飽和温度Tsを求めることにより、飽和温度Ts(Tas、Tbs)の推定精度がより高められる。
【0037】
コントローラ14は、第1バッテリ12の温度よりも第2バッテリ13の温度が高く、第2バッテリ13の飽和温度Tbsが第1バッテリ12の飽和温度Tasよりも高いとき、冷却空気流路20における空気が第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向かって流れるように、送風機21を制御する。送風機21のファン用電動モータ39が逆回転することによりファン38を逆回転させる。
【0038】
図3(b)に示すように、空気が第2開口部34から導入され、冷却空気流路20における空気が第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向かって流れ、第1開口部33から排出される。図3(b)では白抜矢印により空気の流れを示す。
【0039】
外部の空気は第2開口部34から冷却空気流路20に吸引され、吸引された空気は第2流路部37を通過するとき第2バッテリ13と熱交換を行う。第2バッテリ13に生じる熱は隔壁27に伝達され、隔壁27の熱は第2流路部37を通過する空気と熱交換される。つまり、第2バッテリ13と第2流路部37を通過する空気との熱交換は隔壁27を介して行われる。熱交換により第2バッテリ13は冷却される。第2バッテリ13において第2流路部37の空気の流れ方向からみて上流側のバッテリセル18は下流側のバッテリセル18と比較して温度が低く、上流から下流へ向かうにつれてバッテリセル18の温度が高くなる。また、第2バッテリ13と熱交換をした空気は、熱交換前の空気と比べると温度が高くなっている。
【0040】
空気が第1バッテリ12から第2バッテリ13へ流れていた状態では、下流へ向かうにつれて第2バッテリ13のバッテリセル18の温度が高いという温度勾配が生じていた。しかしながら、第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向けて空気が流れることで、第2バッテリ13において生じていた温度勾配が解消されるように第2バッテリ13が冷却される。
【0041】
第2バッテリ13と熱交換をした空気は、接続流路部36を経て、第1流路部35を通過する。このとき、第1流路部35を通過する空気は、第1バッテリ12と熱交換を行う。第1バッテリ12に生じる熱は下壁部29に伝達され、下壁部29の熱は第1流路部35を通過する空気と熱交換される。つまり、第1バッテリ12と第1流路部35を通過する空気との熱交換は下壁部29を介して行われる。熱交換により第1バッテリ12は冷却される。第1バッテリ12において第1流路部35の空気の流れ方向からみて上流側のバッテリセル18は下流側のバッテリセル18と比較して温度が低く、上流から下流へ向かうにつれてバッテリセル16の温度が高くなる。
【0042】
空気が第1バッテリ12から第2バッテリ13へ流れていた状態では、下流へ向かうにつれて第1バッテリ12のバッテリセル18の温度が高いという温度勾配が生じていた。しかしながら、第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向けて空気が流れることで、第1バッテリ12に生じていた温度勾配が解消されるように第1バッテリ12が冷却される。因みに、第1バッテリ12から第2バッテリ13へ向かう空気の流れが変わらずに継続されると、第1バッテリ12において空気の流れの下流側のバッテリセル18の温度は、上流側のバッテリセル18の温度と比較して高くなる。
【0043】
また、空気が第1バッテリ12から第2バッテリ13へ流れていた状態では、第1バッテリ12が第2バッテリ13と比較してよく冷却され、第1バッテリ12と第2バッテリ13とは温度の偏りが生じていた。しかしながら、第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向けて空気が流れることで、第2バッテリ13が第1バッテリ12と比較してよく冷却され、第1バッテリ12と第2バッテリ13とは温度の偏りが解消されるように冷却される。第1バッテリ12と熱交換した空気は、第1開口部33から外部へ排出される。
【0044】
第1バッテリ12および第2バッテリ13の放電時における冷却について説明したが、第1バッテリ12および第2バッテリ13の充電時にも、放電時と同様に第1バッテリ12および第2バッテリ13は冷却される。因みに、第2バッテリ13の温度Tbが第1バッテリ12の温度Taより高く、第2バッテリ13の飽和温度Tbsが第1バッテリ12の飽和温度Tasよりも低い場合が考えられる。この場合、第1バッテリ12が別の原因で温度上昇している可能性がある。したがって、冷却空気流路20における空気が第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向かって流れるように送風機21を制御すると、第1バッテリ12の温度が熱的に厳しくなる温度まで上昇するおそれがあるので、コントローラ14は送風機21による空気の流れを変更しない。
【0045】
本実施形態のバッテリ冷却装置15は以下の効果を奏する。
(1)冷却空気流路20を流れる空気は第1バッテリ12を冷却した後に第2バッテリ13を冷却する。第1温度センサ17は第1バッテリ12の温度を検出し、第2温度センサ19は第2バッテリ13の温度を検出する。コントローラ14は、第2バッテリ13の温度Tbが第1バッテリ12の温度Taより高く、第2バッテリ13の飽和温度Tbsが第1バッテリ12の飽和温度Tasよりも高いとき、冷却空気流路20における空気が第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向かって流れるように、送風機21を制御する。その結果、冷却のための空気が第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向かって流れることにより、第2バッテリ13が第1バッテリ12よりもよく冷却され、第1バッテリ12と第2バッテリ13との間の温度の偏りを抑制することができる。
【0046】
(2)送風機21は、冷却空気流路20において空気を第1バッテリ12から第2バッテリ13へ向かう方向へ供給する流体機械であり、送風機21は、冷却空気流路20における空気の流れの向きを第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向かう方向へ変更可能である。このため、送風機21によって冷却空気流路20における空気の流れの方向を変更でき、空気の流れの方向を変更するための手段を別に設ける必要がない。また、コントローラ14は送風機21を制御するだけでよく、バッテリ冷却装置15の構成や制御を簡素化することができる。
【0047】
(3)第1バッテリ12の飽和温度Tasおよび第2バッテリ13の飽和温度Tbsを推定することで第1バッテリ12および第2バッテリ13の温度上昇の原因が、充放電以外であるか否かを確認することが可能となる。式(1)に基づいて推定された飽和温度Tsがバッテリとしての飽和温度と明らかに相違する場合には、第1バッテリ12および第2バッテリ13の温度上昇は充放電以外の原因であることが判別できる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るバッテリ冷却装置について説明する。本実施形態では冷媒流変更機構が送風機ではない点で第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成は、第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0049】
図4に示すように、車載用バッテリパック40が備えるバッテリ冷却装置41は、区画壁42を備えている。区画壁42は、下壁部29、上壁部30、側壁部31および側壁部43を備えている。側壁部43は側壁部31と平行な壁部である。側壁部31と送風機21との間には空間部44が形成されている。送風機21と第1開口部33との間には第1可動板45が設けられている。送風機21と第2開口部34との間には、第2可動板46が設けられている。本実施形態の送風機21は、第1の実施形態と同じ構成であるが、空気の流れを一方向のみとするように作動する。
【0050】
第1可動板45は、第1開口部33と第1流路部35との連通と遮断を切り換えることが可能である。第1可動板45の基端部には第1可動板用モータ47が設けられており、第1可動板45は第1可動板用モータ47の駆動により基端部を中心に回動可能である。第1可動板用モータ47はステッピングモータである。
【0051】
第1可動板45の基端部から先端部までの長さは、送風機21と側壁部43との間の距離よりも長い。第1可動板45が第1開口部33と第1流路部35とを連通する状態では、第1可動板45の先端部は下壁部29に当接する。第1可動板45が第1開口部33と第1流路部35とを遮断する状態では、第1可動板45の先端部は、底壁22に当接する。
【0052】
次に第2可動板46について説明すると、第2可動板46は、第2開口部34と第2流路部37との連通と遮断を切り換えることが可能である。第2可動板46の基端部には第2可動板用モータ48が設けられており、第2可動板46は第2可動板用モータ48の駆動により基端部を中心に回動可能である。第2可動板用モータ48はステッピングモータである。
【0053】
第2可動板46の基端部から先端部までの長さは、送風機21と側壁部43との間の距離よりも長い。第2可動板46が第2開口部34と第2流路部37とを連通する状態では、第2可動板46の先端部は上壁部30に当接する。第2可動板46が第2開口部34と第2流路部37とを遮断する状態では、第2可動板46の先端部は、隔壁27に当接する。
【0054】
本実施形態では、まず、図5(a)に示すように、第1可動板45が第1開口部33と第1流路部35とを連通し、第2可動板46が第2開口部34と遮断され、送風機21が作動する。このとき、空気は、第1開口部33から導入され、第1流路部35、第2流路部37を通って送風機21を通じて排出される。つまり、空気が第1バッテリ12から第2バッテリ13へ流れるため、第1バッテリ12が第2バッテリ13と比較してよく冷却され、第1バッテリ12と第2バッテリ13とは温度の偏りが生じる。
【0055】
コントローラ14は、第1バッテリ12の温度よりも第2バッテリ13の温度が高く、第1バッテリ12の飽和温度Tasが前記第2バッテリ13の飽和温度Tbsよりも高いとき、第1可動板45および第2可動板46を回動させる。具体的には、図5(b)に示すように、第1可動板45が第1開口部33と第1流路部35との連通を遮断するように回動される。第2可動板46は第2開口部34と第2流路部37とが連通するように回動される。このため、第2バッテリ13から第1バッテリ12へ向けて空気が流れることで、第2バッテリ13が第1バッテリ12と比較してよく冷却され、第1バッテリ12と第2バッテリ13とは温度の偏りが解消されるように冷却される。
【0056】
本実施形態のバッテリ冷却装置41は、第1の実施形態の効果と同様に、第1バッテリ12と第2バッテリ13との間の温度差を抑制することができる。また、送風機21を制御することなく、冷却空気流路20における空気の流れの方向を切り換えることができる。したがって、空気を供給する手段を制御する必要が無く、空気の流量が変動し難くなり安定した冷媒の供給が可能となる。
【0057】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0058】
○ 上記の実施形態では、第1バッテリと第2バッテリが上下となるように配置されたが、第1バッテリと第2バッテリの配置関係は上下に限定されない。第1バッテリと第2バッテリの配置関係は、例えば、前後や左右になるように配置されてもよい。
○ 上記の実施形態では、第1バッテリおよび第2バッテリの飽和温度を2回の上昇温度から推定するとしたが、これに限らない。例えば、第1バッテリおよび第2バッテリの飽和温度は、3回以上の上昇温度から推定してもよい。
○ 上記の実施形態では、第1バッテリおよび第2バッテリを冷却する冷媒として空気を用いる例を説明したが、冷媒は空気に限定されない。冷媒は、空気以外の気体を用いてもよく、また、気体に限らず冷却水や冷却オイルのように液体であってもよい。
○ 上記の実施形態では、冷媒通路としての空気冷却通路は屈曲する構成としたが、冷媒流路は、例えば、直線的な流路であってもよく、冷媒流路の形状は自由である。
○ 上記の実施形態では、冷媒流変更機構を制御するコントローラが第1バッテリおよび第2バッテリの飽和温度を推定する飽和温度推定部としての機能を兼ね備えたが、コントローラと飽和温度推定部を別に設けるようにしてもよい。
○ 第1の実施形態では、冷媒流変更機構としてファンを備えた送風機(流体機械)とし、ファンの正回転と逆回転の切り換えにより空気(冷媒)の流れを変更するとしたが、これに限らない。例えば、迎え角を可変とするファンの羽根とし、ファンの羽根の迎え角を変更することで空気(冷媒)の流れを変更してもよい。
○ 第2の実施形態では、冷媒流変更機構として回動可能な可動板を用いたが、可動板の作動は回動に限定されない。回動板は、例えば、スライドすることにより空気(冷媒)の流れを切り換えるようにしてもよい。
○ 第2の実施形態では、可動板を駆動する可動板駆動源としてステッピングモータを用いたがこれに限らない。可動板駆動源は、例えば、エアシリンダやソレノイドを用いてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10、40 車載用バッテリパック
11 ケース
12 第1バッテリ
13 第2バッテリ
14 コントローラ
15 バッテリ冷却装置
17 第1温度センサ
19 第2温度センサ
20 冷却空気流路
21 送風機
27 隔壁
28、42 区画壁
33 第1開口部
34 第2開口部
35 第1流路部
36 接続流路部
37 第2流路部
38 ファン
40 車載用バッテリパック
41 バッテリ冷却装置
45 第1可動板
46 第2可動板
Ta、Tb バッテリの温度
Ts(Tas、Tbs) 飽和温度
△T(△Ta1、△Ta2、△Tb1、△Tb2) 温度上昇
t1、t2、t3 時間
図1
図2
図3
図4
図5