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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090158
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】クラフト紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/04 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
D21H11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202366
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萩原 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AG08
4L055AG72
4L055AH09
4L055AH10
4L055AH16
4L055EA04
4L055EA05
4L055EA29
4L055EA34
4L055FA12
4L055FA13
4L055FA15
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】白色度に優れ、紙の強度及び印刷適性が良好なクラフト紙を提供する。
【解決手段】晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、硫酸アルミニウム及び(メタ)アクリルアミド系樹脂を含有し、前記晒クラフトパルプの構成が下記であるクラフト紙。
(パルプ構成)
パルプ1000質量部に対して、CSF濾水度600ml以上の針葉樹晒クラフトパルプが400質量部以上800質量部以下かつCSF濾水度400ml以上520ml以下の広葉樹晒クラフトパルプが200質量部以上600質量部以下。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、硫酸アルミニウム及び(メタ)アクリルアミド系樹脂を含有し、填料を実質的に含有せず、前記晒クラフトパルプの構成が下記であるクラフト紙。
(パルプ構成)
クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して、CSF濾水度が600ml以上の範囲である針葉樹晒クラフトパルプが400質量部以上800質量部以下かつCSF濾水度が400ml以上520ml以下の範囲である広葉樹晒クラフトパルプが200質量部以上600質量部以下である。
【請求項2】
前記(メタ)アクリルアミド系樹脂が、カチオン電荷密度1.2meq/g以上4.2meq/g以下である請求項1に記載のクラフト紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、晒クラフトパルプを含有するクラフト紙に関する。
【背景技術】
【0002】
クラフト紙は、クラフト法によって製造されたパルプを原料とした、強度に優れる紙である。クラフト紙は、例えば、包装材料、紙袋、封筒、段ボール材料及び粘着テープなどに使用される。
印刷適性が良好な、以下の(1)から(8)の条件を満たす晒クラフト紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。(1)原料パルプとして、広葉樹晒クラフトパルプを50~70質量%、針葉樹晒クラフトパルプを30~50質量%含む。(2)広葉樹晒クラフトパルプのフリーネスが300~450ml、針葉樹晒クラフトパルプのフリーネスが500~600mlである。(3)填料として炭酸カルシウム1.0%以上を添加し、灰分0.5~5.0%とする。(4)接着剤を主成分とする表面処理剤を片面当たり0.2~1.0g/m塗布する。(5)内添サイズ剤と表面サイズ剤を使用して、ステキヒトサイズ度30秒以上とする。(6)白色度75%以上。(7)吸油度40~80秒。(8)平滑度30~80秒。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-100623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なクラフト紙は、未晒クラフトパルプを原料に使用する。この場合、薬品を用いた晒工程(漂白工程)を経ていないために、紙色が茶色になって白色度に劣る。
晒クラフト紙は、薬品を用いた晒工程(漂白工程)を経た晒クラフトパルプを原料に使用する。この場合、未晒クラフトパルプを原料にしたクラフト紙よりも白色度に優れる。しかしながら、薬品を用いた晒工程を経るために、紙の強度が劣る。
特許文献1の晒クラフト紙は填料を含有する。填料は、インキ裏抜け性及び平滑性の点から印刷適性向上の効果を有するものの、破裂及び引裂きなどの紙の強度に対して負の効果になる。
【0005】
本発明の課題は、実質的に填料を含有せずに白色度に優れ、紙の強度及び印刷適性が良好なクラフト紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、下記のクラフト紙によって解決できる。
[1]晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、硫酸アルミニウム及び(メタ)アクリルアミド系樹脂を含有し、填料を実質的に含有せず、前記晒クラフトパルプの構成が下記であるクラフト紙。
(パルプ構成)
クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して、CSF濾水度が600ml以上の範囲である針葉樹晒クラフトパルプが400質量部以上800質量部以下かつCSF濾水度が400ml以上520ml以下の範囲である広葉樹晒クラフトパルプが200質量部以上600質量部以下である。
【0007】
[2]上記(メタ)アクリルアミド系樹脂が、カチオン電荷密度1.2meq/g以上4.2meq/g以下である上記[1]に記載のクラフト紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、実質的に填料を含有せずに白色度に優れ、紙の強度及び印刷適性が良好なクラフト紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
クラフト紙は、晒クラフトパルプ、サイズ剤、紙力剤、硫酸アルミニウム及び(メタ)アクリルアミド系樹脂を少なくとも含有する。
さらに、クラフト紙は、前記以外であって製紙分野で従来公知の添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、定着剤、歩留り剤、耐水化剤、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、及び防バイ剤を挙げることができる。
【0011】
クラフト紙は、晒クラフトパルプを水に分散したスラリーに、サイズ剤、紙力剤、硫酸アルミニウム及び(メタ)アクリルアミド系樹脂、並びに必要に応じてその他の添加剤を混合した紙料を、長網抄紙機、円網抄紙機及びツインワイヤー抄紙機など従来公知の抄紙機を用いて抄造し、得られた抄造紙に対して必要に応じて、澱粉類、ポリビニルアルコール、スチレンアクリル系樹脂若しくはオレフィンマレイン酸系樹脂などの表面サイズ剤を含むサイズプレス液でサイズプレス処理、及び/又はマシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー若しくはマルチニップカレンダーなどによりカレンダー処理して、得ることができる。
【0012】
サイズプレス処理は、製紙分野で従来公知のサイズプレス装置を用いて行う。サイズプレス装置の例としては、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー、フィルムプレスを、ロールメタリングサイズプレスとしてゲートロールコーターを挙げることができる。さらに、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、カレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
【0013】
クラフト紙は、実質的に填料を含有しない。「実質的に」とは、紙の強度を低下させる程の量で填料を含有しない意味を指す。紙の強度を低下させない程度の少量であれば、クラフト紙は、填料を含有して良い。いくつかの実施態様において、クラフト紙は、填料を含有しない。
【0014】
填料は、製紙分野で従来公知の白色無機顔料である。填料の例としては、カオリン、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウム及びアルミナなどを挙げることができる。
【0015】
填料の含有量は、灰分で見積もることができる。灰分は、クラフト紙が含有する填料と硫酸アルミニウムなどの無機塩類の金属成分との含有量に依存する。
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、ISO1762:2001「Paper, board and pulps-Determination of residue(ash) on ignition at 525 degrees C」に準拠して求められる灰分が2質量%以下である。少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、硫酸アルミニウムに依存する灰分が0.3質量%以上2質量%以下である。
【0016】
硫酸アルミニウムは、サイズ剤の紙中への定着に作用効果を有する。特に、サイズ剤が後記のロジン系サイズ剤の場合に有効である。硫酸アルミニウムのアルミニウムイオンはパルプの繊維と結合でき、結果、紙の強度を増すことができる。ただし、硫酸アルミニウムを含有すると紙が酸性化して劣化し易くなる。このために、硫酸アルミニウムの含有量が制限される。
【0017】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、蛍光増白剤を含有しない。蛍光増白剤を含有しないことで、クラフト紙は、食品包装材料に使用することができる。また、いくつかの実施態様において、クラフト紙は、青紫色系の着色剤を含有する。青紫色系着色剤を含有することによって、クラフト紙は、見かけの白色度及び不透明性が向上する。少なくとも一つの実施態様において、青紫色系着色剤は、CIE表色系Lモデルで表されるb値が0.5以上4.5以下の範囲となるように含有する。
【0018】
クラフトパルプは、クラフト法によって製造された化学パルプの一種である。晒クラフトパルプは、漂白工程により漂白されたクラフトパルプである。パルプの原料としては従来公知の木材又は非木材であって、例えば、針葉樹及び広葉樹の木材、麻、リンター、わら、竹、サトウキビ、ヨシ、果実、コウゾ、ミツマタ及びガンピなどの非木材を挙げることができる。晒クラフトパルプは、例えば、パルプの原料が針葉樹であれば針葉樹晒クラフトパルプと称し、パルプの原料が広葉樹であれば広葉樹晒クラフトパルプと称する。
【0019】
クラフト紙は、晒クラフトパルプ以外に未晒クラフトパルプ、機械パルプ及び脱墨古紙パルプなど従来公知のパルプを含有することができる。いくつかの実施態様において、クラフト紙中の晒クラフトパルプの含有量は、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して900質量部以上である。この理由は、クラフト紙の白色度及び印刷適性が良化するからである。
【0020】
クラフト紙は、晒クラフトパルプの構成が下記である。クラフト紙は、下記のパルプ構成を満足することで、紙の強度及び印刷適性を得ることができる。
【0021】
クラフト紙のパルプ構成は、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して、CSF濾水度が600ml以上の範囲である針葉樹晒クラフトパルプが400質量部以上800質量部以下かつCSF濾水度が400ml以上520ml以下の範囲である広葉樹晒クラフトパルプが200質量部以上600質量部以下である。
【0022】
パルプ構成では、CSF濾水度が600ml以上の範囲である針葉樹晒クラフトパルプの含有が400質量部未満又はCSF濾水度が400ml以上520ml以下の範囲である広葉樹晒クラフトパルプの含有が600質量部超であると、引裂きの点で紙の強度及びインキ裏抜け性の点で印刷適性が悪化する。
また、パルプ構成では、CSF濾水度が600ml以上の範囲である針葉樹晒クラフトパルプの含有が800質量部超又はCSF濾水度が400ml以上520ml以下の範囲である針葉樹晒クラフトパルプの含有が200質量部未満であると、破裂の点で紙の強度及び平滑性の点で印刷適性が悪化する。
【0023】
CSF濾水度は、ISO5267-2:2001「Pulps-Determination of drainability-Part2 : Canadian Standard Freeness method」に準拠して求められる値である。
CSF濾水度は、パルプの叩解によって調整できる。パルプの叩解を進めると、CSF濾水度の値は小さくなる。上記CSF濾水度が600ml以上の範囲である針葉樹晒クラフトパルプのCSF濾水度の上限は、未叩解パルプのCSF濾水度になる。一般的な未叩解パルプのCSF濾水度は、700mlから770mlの範囲である。
CSF濾水度の値が小さいと引裂きの点で紙の強度が悪化及びインキ裏抜け性の点で印刷適性が悪化し、CSF濾水度の値が大きいと破裂の点で紙の強度が悪化及び平滑性の点で印刷適性が悪化する。また、繊維長が比較的長い針葉樹晒クラフトパルプは紙の強度に及び繊維長が比較的短い広葉樹晒クラフトパルプは紙の平滑度に、それぞれ有利である。よって、クラフト紙において紙の強度及び印刷適性を得るためには、繊維長が異なる複数の濾水度を有する晒クラフトパルプの組み合わせが重要な技術になる。
【0024】
サイズ剤は、サイズ性を付与するために抄紙工程で使用される内部サイズ剤である。サイズ剤は、製紙分野で従来公知であって、特に限定されない。サイズ剤の例としては、酸性紙であればロジン系サイズ剤、中性紙であればアルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、脂肪酸系サイズ剤、及びカチオン性スチレンアクリル樹脂系サイズ剤などを挙げることができる。いくつかの実施態様において、サイズ剤は、ロジン系サイズ剤である。この理由は、クラフト紙を食品包装材料に使用する場合の安全性のためである。
クラフト紙中のサイズ剤は、製紙分野で従来公知の含有量であれば良い。サイズ剤の含有量は、例えば、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して1質量部以上20質量部以下である。
【0025】
紙力剤は、紙力増強剤とも呼ばれ、紙の強度を付与するために抄紙工程で使用される内添紙力剤である。紙力剤は、製紙分野で従来公知であって、特に限定されない。紙力剤の例としては、澱粉、並びにジアルデヒド澱粉、酸化澱粉及びカチオン化澱粉などの変性澱粉、グァーガム、ローカストビーンガム及びトラガントガムなどの植物性ガム類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース類、並びにポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂及びポリビニルアルコール系樹脂などの合成高分子などを挙げることができる。
いくつかの実施態様において、紙力剤は、澱粉、並びにジアルデヒド澱粉、酸化澱粉及びカチオン化澱粉などの変性澱粉である。この理由は、クラフト紙の印刷適性が良化する傾向を示すからである。少なくとも一つの実施態様において、紙力剤はカチオン化澱粉である。
クラフト紙中の紙力剤は、製紙分野で従来公知の含有量であれば良い。紙力剤の含有量は、例えば、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して5質量部以上30質量部以下である。
【0026】
(メタ)アクリルアミド系樹脂は、前記樹脂を構成する単量体として(メタ)アクリルアミドを含有する樹脂である。いくつかの実施態様において、(メタ)アクリルアミド系樹脂は、前記樹脂を構成する単量体に対して(メタ)アクリルアミドが50質量%以上の割合で含有する樹脂である。いくつかの実施態様において、(メタ)アクリルアミド系樹脂は、前記樹脂を構成する単量体に対して(メタ)アクリルアミドが75質量%以上の割合で含有する樹脂である。これらの理由は、クラフト紙の印刷適性が良化するからである。(メタ)アクリルアミド系樹脂は、単量体である(メタ)アクリルアミドから従来公知の乳化重合法で合成することができる。また、(メタ)アクリルアミド系樹脂は、BASF社、荒川化学工業社、三井化学社、三菱ケミカル社、田岡化学工業社、星光PMC社、ハイモ社、MTアクアポリマー社及び富士フイルム和光純薬社などが市販する。
【0027】
(メタ)アクリルアミド系樹脂は、(メタ)アクリルアミドと共重合できる単量体を(メタ)アクリルアミド系樹脂を構成する単量体として含有することができる。共重合できる単量体は、従来公知のものである。共重合できる単量体は、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド及びダイアセトンアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドを除く各種アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルベンジルジメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルベンジルジメチルアンモニウム塩化物、並びにアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸などのアクリルアミドアルカンスルホン酸及びこれらの中和塩など、さらに(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びこれらの中和塩、さらに(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、スチレン、並びに酢酸ビニルを挙げることができる。いくつかの実施態様において、共重合できる単量体は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。いくつかの実施態様において、共重合できる単量体は、(メタ)アクリルアミドを除く各種アクリルアミド誘導体から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。また、いくつかの実施態様において、共重合できる単量体は、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルベンジルジメチルアンモニウム塩化物及び(メタ)アクリロイルアミノプロピルベンジルジメチルアンモニウム塩化物から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。いくつかの実施態様において、共重合できる単量体は、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物及び/又は(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物である。これらの理由は、クラフト紙の印刷適性が良化するからである。
【0028】
少なくとも一つの実施態様において、(メタ)アクリルアミド系樹脂は、前記樹脂を構成する単量体に対して(メタ)アクリルアミドが75質量%以上90質量%以下の割合で含有し、かつ(メタ)アクリルアミドと共重合する単量体が(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物及び/又は(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物である。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチルなどを挙げることができる。
【0030】
いくつかの実施態様において、(メタ)アクリルアミド系樹脂は、イオン性がカチオン性である。いくつかの実施態様において、(メタ)アクリルアミド系樹脂は、カチオン電荷密度0.3meq/g以上8meq/g以下である。少なくとも一つの実施態様において、(メタ)アクリルアミド系樹脂は、カチオン電荷密度1.2meq/g以上4.2meq/g以下である。これらの理由は、クラフト紙の紙の強度及び印刷適性が良化するからである。ここで、(メタ)アクリルアミド系樹脂のカチオン電荷密度は、粒子表面電荷量測定装置(MUTEK社、Particle Charge Detector-PCD03)を用いてアニオン要求量を測定から、カチオン電荷密度を算出した値である。(メタ)アクリルアミド系樹脂のカチオン電荷密度は、カチオン性の単量体を含むことで調整できる。
【0031】
いくつかの実施態様において、クラフト紙中の(メタ)アクリルアミド系樹脂の含有量は、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して0.05質量部以上1質量部以下である。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す質量%及び質量部は、乾燥固形分あるいは実質成分の値を示す。表面サイズ剤の付与量は、乾燥固形分の値を示す。
【0033】
<晒クラフトパルプ>
過酸化水素法で漂白されてハンター白色度が83%である、叩解によって種々CSF濾水度を有する晒クラフトパルプを調製した。各晒クラフトパルプのCSF濾水度は、表1に記載した。
【0034】
<晒クラフト紙>
合計で1000質量部になる晒クラフトパルプを水に分散したスラリーに、ロジンサイズ剤(星光PMC社、CC-1404)を4質量部、紙力剤としてカチオン化澱粉(Grain Processing Corporation社、CHARGEMASTER R462)を15質量部、硫酸アルミニウムを10質量部及び樹脂を0.1質量部を混合して、紙料を得た。前記紙料を長網抄紙機を用いて抄造して、坪量70g/mの抄造紙を得た。前記抄造紙に対して、表面サイズ剤として酸化澱粉(王子コーンスターチ社、王子エースA)及びスチレンアクリル系樹脂(荒川化学工業社、ポリマロン(登録商標)1308S)を含むサイズプレス液でサイズプレス処理した。表面サイズ剤の付与量は、酸化澱粉が0.3g/m及びスチレンアクリル系樹脂が0.07g/mとした。灰分は1.5質量%であった。
【0035】
各晒クラフトパルプの質量部は、表1に記載する。
【0036】
表1において、樹脂には、タイプAとして星光PMC社の(メタ)アクリルアミド系樹脂FD7290(カチオン電荷密度0.3meq/g)を、タイプBとして三晶社の(メタ)アクリルアミド系樹脂フロックスターESC51(カチオン電荷密度1.2meq/g)を、タイプCとしてハイモ社の(メタ)アクリルアミド系樹脂ハイモロック(登録商標)ND300(カチオン電荷密度:2.1meq/g)を、タイプDとして田岡化学工業社の(メタ)アクリルアミド系樹脂スミレーズレジン(登録商標)SPI-203(50)H(カチオン電荷密度3meq/g)を、タイプEとしてNALCO社の(メタ)アクリルアミド系樹脂マーコート550(カチオン電荷密度4.2meq/g)を、タイプFとしてハイモ社の(メタ)アクリルアミド系樹脂ハイモロックFR740(カチオン電荷密度8meq/g)を、タイプGとしてハイモ社の(メタ)アクリルアミド系樹脂ハイモロックFA230(アニオン性)を用いた。さらに表1において、樹脂には、タイプHとして、星光PMC社のポリアミドエピクロロヒドリン樹脂WS4030(カチオン電荷密度0.7meq/g)を用いた。
【0037】
【表1】
【0038】
<(メタ)アクリルアミド系樹脂のカチオン電荷密度>
上記カチオン電荷密度は、MUTEK社、Particle Charge Detector-PCD03を使用して、1/1000規定度のポリビニルスルホン酸カリウム(PVSK)液で滴定して、流動電流がゼロになる点を終点として測定した値である。
【0039】
得たクラフト紙について、以下の項目について評価した。なお、実施例及び比較例ともに晒クラフトパルプを用いたクラフト紙は、未晒クラフトパルプを用いる一般のクラフト紙に比べて白色度が優れていた。
【0040】
<紙の強度>
クラフト紙の強度は、比引裂き強度及び比破裂強度を測定することによって評価した。比引裂き強度は、ISO1974:2012「Paper-Determination of tearing resistance (Elmendorf method)」に規定された方法で測定した。比引裂き強度は、抄紙の流れ方向(紙の縦方向)で行った。比破裂強度は、ISO2758:2014「Paper-Determination of bursting strength(MOD)」に規定された方法で測定した。紙の強度の評価は、下記の基準により行った。本発明において、クラフト紙は、評価A又は評価Bであれば紙の強度が良好であるものとする。
A:比引裂き強度が14mN・m/g以上
及び比破裂強度が4kPa・m/g以上。
B:比引裂き強度が10mN・m/g以上14mN・m/g未満
かつ比破裂強度が4kPa・m/g以上。
又は、
比引裂き強度が14mN・m/g以上
かつ比破裂強度が3.8kPa・m/g以上4kPa・m/g未満。
又は、
比引裂き強度が10mN・m/g以上14mN・m/g未満
かつ比破裂強度が3.8kPa・m/g以上4kPa・m/g未満。
C:比引裂き強度が10mN・m/g未満
及び/又は比破裂強度が3.8kPa・m/g未満。
【0041】
<印刷適性>
RI印刷適性試験機を用いてクラフト紙に、藍色、紅色及び黄色の重色ベタ印刷を行った。印刷後、一昼夜室温にて放置した。放置後、印刷面及び裏面を目視観察して平滑性に関連する色ムラ及び裏面からの色の視認程度(インキ裏抜け)を下記の基準で評価した。本発明において、クラフト紙は、評価A又は評価Bであれば印刷適性が良好であるものとする。
A:色ムラ及びインキ裏抜けが認められない。
B:上記Aより劣るものの、目立った色ムラ及びインキ裏抜けが認められない。
C:上記Bより劣るものの、実用可能である。
D:上記Cより劣り、実用不可能である。
【0042】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0043】
表1から、本発明の構成を満足する実施例1~18のクラフト紙は、晒クラフトパルプを用いることで白色度に優れ、紙の強度及び印刷適性が良好であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~10では、紙の強度及び/又は印刷適性を満足することができないと分かる。
主に、実施例11及び実施例13~18の間の対比から、(メタ)アクリルアミド系樹脂がカチオン電荷密度1.2meq/g以上4.2meq/g以下の範囲であると、紙の強度及び印刷適性が良化すると分かる。