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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090163
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】動物用クールボード
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
A01K1/015 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202371
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】596166472
【氏名又は名称】木戸 平太郎
(72)【発明者】
【氏名】木戸 平太郎
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA07
2B101AA13
2B101AA20
2B101BB01
2B101EC04
2B101FB04
2B101GB01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、上面に動物(例えばペットや鶏)が横たわったときに冷たさを長く実感することができるとともに、動物が上面に横たわった状態にあるときに、その体温の上昇を継続的に抑えることができる動物用クールボードを提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明の動物用クールボードは、動物(例えばペットや鶏)が横たわることができる広さの水平な上面を有する本体部と、互いに平行に配置され、前記本体部を下方から支持する複数の放熱フインを有する放熱部とを備えており、前記本体部の下面は薄肉部から厚肉部へと繋がる傾斜面であり、前記放熱部の放熱フインは前記傾斜面から下方へ前記本体部の上面と平行な位置まで伸びる下辺を備えており、対向する放熱フインとその間にある傾斜した区画領域によって凹溝が形成されており、前記本体部と放熱部が熱伝導性の良い素材で一体に形成されていることを特徴とするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物が横たわることができる広さの水平な上面を有する本体部と、互いに平行に配置され、前記本体部を下方から支持する複数の放熱フインを有する放熱部とを備えており、
前記本体部の下面は薄肉部から厚肉部へと繋がる傾斜面であり、
前記放熱部の放熱フインは前記傾斜面から下方へ前記本体部の上面と平行な位置まで伸びる下辺を備えており、
対向する放熱フインとその間にある傾斜した区画領域によって凹溝が形成されており、前記本体部と放熱部が熱伝導性の良い素材で一体に形成されていることを特徴とする、動物用クールボード。
【請求項2】
前記放熱部の放熱フイン間の傾斜した区画領域に、この区画領域から本体部の上面まで延びる貫通孔が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の動物用クールボード。
【請求項3】
前記放熱部の放熱フインがその軸方向に延びる中空孔を備えていることを特徴とする、請求項1または2記載の動物用クールボード。
【請求項4】
前記本体部が放熱フインに直交する鉛直な分割面で2分割された半割れ体を連結したものであり、各半割れ体の前記厚肉部が前記分割面側に設けられるとともに前記薄肉部が反分割面側に設けられており、前記半割れ体の放熱フインの厚肉部側に設けられた切り欠きにより形成された空気連通路を介して外気が前記凹溝に導入されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の動物用クールボード。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の動物用クールボードの製造方法であって、前記本体部および放熱部を備えた鋳型を作成し、この鋳型に溶湯金属を流し込んで本体部と放熱部を一体的に鋳造することを特徴とする、動物用クールボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物(例えばペットや鶏)が上面に横たわったときに冷たさを長く実感することができるとともに、上面に横たわっている動物の体温上昇を継続的に抑えることができる動物用クールボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から動物用クールボードとしてペット用クールボードが知られている。このペット用クールボードは、冷却板本体の下面に複数の凸条を設けるとともに、冷却板本体の縁部の折り曲げ部に4つの脚部を設けて、凸条が床面に接触しないようにするとともに、脚部の間に外気と通ずる開口部が形成されたものがある。特許文献1
【0003】
前記ペット用クールボードは、床面に設置したとき、4隅に配置された脚部によって凸条が床面に接することがなく、冷却板本体の下面と床面との間に一つの連続した空間が形成され、かつ、前記空間は凸条の両端部側に設けられた横長の開口を介して外気と連通している。このため、前記連続した空間の空気がペットの体温により暖められたとき、暖められた空気が外気に放出されて、冷却版の下面に熱気が籠るのを回避できると記載されている。
【0004】
しかし、前記のペット用クールボードは、床面に設置したときに、冷却板本体および複数の凸条が水平状態となり、ペットの体温で暖められた空気が冷却板本体の下面および複数の凸条に沿って成層状態を形成し、その状態が保持されやすいので、冷却板の下面に熱気が籠るのを回避できない。特に、熱気が籠る状態は、ペットが横たわっている中央部においては顕著である。このため、上面に横たわっているペットの体温上昇を抑えることができないという問題がある。
【0005】
また、冷却板本体は薄肉に作られているので熱容量が小さく、ペットが上面に横たわったときに、その体温ですぐに暖められてしまい、ペットが冷たさを長く実感できないという問題がある。
【0006】
一方、鶏舎に設置されたケージを用いて鶏を飼育する場合、鶏舎の内部温度が30℃を超すと、鶏はその体温が過度に上昇しないように飲水量を増やすので、飼料摂取量の低下や産卵の低下、卵殻質の劣化が起こる。そこで、鶏舎の側壁に排気扇および加湿冷却板を取り付けて、鶏飼育ゲージに新鮮な外気を供給している。特に夏期高温時には、加湿冷却板に冷水を湿潤させて鶏舎全体を冷房している。特許文献2
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3121950
【特許文献2】実用新案登録第3021044
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ペットや鶏などの動物の健康のために長時間にわたり部屋全体または鶏舎全体を冷房することは効率が悪く、経済的な負担が大きいという問題がある。更に、ペットや鶏が上面に横たわったときに、ペットや鶏などの動物が冷たさを長く実感できる動物用クールボードが要望されていた。
【0009】
本発明は、動物が上面に横たわったときその体温で暖まりにくく、長く冷たさを実感することができ、更に、上面に横たわっているときに熱気が籠ることがなく、長時間にわたって動物の体温上昇を抑えることができる動物用クールボードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の動物用クールボードは、動物が横たわることができる広さの水平な上面を有する本体部と、互いに平行に配置され、前記本体部を下方から支持する複数の放熱フインを有する放熱部とを備えており、前記本体部の下面は薄肉部から厚肉部へと繋がる傾斜面であり、前記放熱部の放熱フインは前記傾斜面から下方へ前記本体部の上面と平行な位置まで伸びる下辺を備えており、対向する放熱フインとその間にある傾斜した区画領域によって凹溝が形成されており、前記本体部と放熱部が熱伝導性の良い素材で一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の動物用クールボードにおいて、前記放熱部の放熱フイン間の傾斜した区画領域に、この区画領域から本体部の上面まで延びる貫通孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の動物用クールボードにおいて、前記放熱部の放熱フインがその軸方向に延びる中空孔を備えていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1~3のいずれかに記載の動物用クールボードにおいて、
前記本体部および放熱部が放熱フインに直交する鉛直な分割面で2分割された半割れ体を連結したものであり、各半割れ体の前記厚肉部が前記分割面側に前記分割面に沿って設けられるとともに前記薄肉部が反分割面側に設けられており、前記半割れ体の放熱フインの厚肉部側に設けられた切り欠きにより空気連通路が形成されており、この空気連通路を介して外気を前記凹溝に導入することを特徴とするものである。
【0014】
請求項5記載の発明方法は、請求項1~4のいずれかに記載の動物用クールボードの製造方法であって、前記本体部および放熱部を備えた鋳型を作成し、この鋳型に金属溶湯を流し込んで本体部と放熱部を一体的に鋳造することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の動物用クールボードは、本体部に熱容量が大きな厚肉部を備えているから、クールボードの上面に動物が横たわったときに冷たさを長く実感することができる。さらに、前記本体部と放熱部が熱伝導性の良い素材で一体に形成されているから、肉厚部に蓄熱された熱が区画領域および放熱フインを介して凹溝内の空気に三方から速やかに移動し、しかも肉厚部の熱容量が大きいので凹溝内の空気に対する移動に速やかに行われる。そうして、肉厚部側の凹溝にある暖かい空気は、その浮力によって肉厚部から薄肉部に向かって傾斜面に沿って移動(縦断勾配効果)して、本体部下面に熱気が籠ることがない。移動した空気は本体部の薄肉部の端縁から大気中に排出される。
【0016】
更に、本発明のクールボードを床面に設置したときに、前記凹溝と床面とにより多数のトンネルが形成される。このトンネルは、その天井面が厚肉部から薄肉部に繋がる傾斜面(傾斜した区画領域)となっているから、トンネル内の暖かい空気は浮力により傾斜面(傾斜した区画領域)に沿って移動(縦断勾配効果)して、薄肉部側の開口から大気中に排出される。これと同時に厚肉部側の開口から外気(冷気)が吸引されて、トンネル内で継続的に熱交換が行われる。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載の動物用クールボードにおいて、前記放熱フイン間の傾斜面(区画領域)の途中に、傾斜面から本体部の上面まで延びる貫通孔が設けられている。この貫通孔の周囲は動物の体温で暖められているので、貫通孔内に上昇気流が発生して積極的に大気中に排出される(煙突効果)。また、凹溝内の暖められた空気は傾斜した区画領域に沿って移動(傾斜勾配効果)し、薄肉部側にある貫通孔に至り大気中に排出される。上記クールボードを床面に設置したときに形成されるトンネル内では、厚肉側の開口から凹溝内に低温の外気が流入し、貫通孔から排出されるので、熱気が対流することがなく、常にトンネル内で熱交換が継続的に行われる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の動物用クールボードにおいて、前記放熱フインが延在方向に延びる中空孔を備えていることを特徴とするものであるから、中空孔の傾斜した天井面を有するトンネルによって、凹溝とは別の空気通路が形成されて、熱交換による冷却作用が更に高まる。
【0019】
請求項4の発明は、大型犬ないし中型犬用を対象としたものであり、大形の本体部および放熱部を中央で2分割して半割れ体を互いに連結させる構造としたので、クールボードの持ち運びが容易となる。また、組み立て時には本体部の中央部に肉厚部が位置することになり、端部側に薄肉部が位置することになるから、横たわっている動物の直下に熱容量の大きな厚肉部があり、接触時の冷たさを長く維持することができる。更に、傾斜面の傾斜角度を大きくすることができるので、縦断勾配効果が大きくなる。前記放熱フインの厚肉部側に凹溝に連通する空気連通路を設けたので、各凹溝に外気を導入することができるとともに、空気連通路においても熱交換による冷却作用が発揮される。
【0020】
請求項5の発明は、前記本体部および放熱部が形成された鋳型に溶湯金属を流し込んで一体的に製造されたものであるから、厚肉部と薄肉部とを有する本体部および長手方向で高さや幅が異なる放熱フインを一体的に製造することができ、複雑な形状のクールボードを安価に製造することができる。また、本体部の傾斜面(傾斜した区画領域)に貫通孔を鋳造時に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施例のペット用クールボードを斜め上方から見た斜視図である。
図2】第1実施例のペット用クールボードを斜め下方から見た斜視図である。
図3図1の区画領域におけるA-A断面を斜め上方から見た縦断面図である。
図4】第1実施例の変形例を示す部分的な底面図である。
図5】第2実施例のペット用クールボードを示す斜視図である。
図6】2分割された半割れ体の連結構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
請求項1記載の動物用クールボードは、熱伝導率がよい素材、例えば金属で製造される。クールボードは、動物が横たわることができる広さの水平な上面を有する本体部を有している。この本体部の平面形状は矩形、円形または楕円形とすることができる。前記本体部の薄肉部から厚肉部へと繋がる傾斜面は、一端から他端に向かう片側傾斜でもよく、中央部付近から両端へとつながる両側傾斜でもよく、中心から四方に延びる四方傾斜でもよい。両側傾斜および四方傾斜を採用するときは、中央部の厚肉部側に外気を取り入れる空気連通路を設ける必要がある。傾斜面は平面でもよく、凹曲面でもよい。凹曲面とするときは肉厚部側の曲率半径を小さくするとともに薄肉部側の曲率半径を大きくして、厚肉部側での上昇気流が発生しやすいようにする。前記放熱フインの下辺は、すべての下辺が床面に接する必要がなく、一つおきに接する構造でもよい。凹溝の断面形状は、門形でもよいしアーチ形でもよい。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の動物用クールボードにおいて、区画領域から本体部の上面まで延びる貫通孔を有している。この貫通孔の断面形状は、矩形または円形とすることができる。貫通孔を本体部の中心側に設ければ、煙突効果が高めるが、動物の身体により閉鎖される可能性がある。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の動物用クールボードにおいて、前記放熱フインがその軸方向に延びる中空孔を有している。この中空孔の断面形状は、矩形、円形または三角形とすることができる。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項1~3のいずれかに記載の動物用クールボードにおいて、前記本体部および放熱部が放熱フインに直交する鉛直な分割面で2分割されて形成された半割れ体は、完全に同形同大である必要はなく、必要により適宜変更するのがよい。しかし、同形同大であれば、鋳型の製作費を低く抑えることができる。
【0026】
請求項5記載の発明方法は、請求項1~4のいずれかに記載の動物用クールボードの製造方法であって、鋳型に金属溶湯を流し込んで本体部と放熱部を一体的に鋳造するものであり、鋳型としては、金型や砂型を用いることができる。
【実施例0027】
図1から図3は、本発明の第1実施例を示したものである。本実施例のペット用クールボード1は、平面視長方形の本体部2と、軸直角方向の断面形状が逆台形の放熱フイン3が多数平行に配置された放熱部4を備えている。本部部の上面5はペットが横たわることができる広さの平坦な面を有しており、その裏面6は、一方の長辺側が厚肉部7とされており、他方の長辺側は薄肉部8(片側傾斜)とされている。したがって、本体部の裏面6は、全体としては厚肉部7から薄肉部8に向かう傾斜面9となっている。本体部2および放熱部の放熱フイン3には、アルミニウムのような熱移動が容易となる素材(熱伝導率の高い素材)で一体的に形成されている。したがって、肉厚部7は熱容量が大きく、接触時の冷たさ(ヒンヤリ感)を長く維持する。
【0028】
前記放熱部4の放熱フイン3は、両側面が上方に7度の開き角(抜き勾配)を有しており、本体部2の短辺と平行に一定の間隔を隔てて多数配列されている。放熱フイン3は本体部の傾斜面9から下方に垂下され、その下辺10が上面5と平行な位置まで延びている。放熱フイン3は薄肉部側の背丈が高くて、厚肉部側の背丈が低く、側面視で横長の細長い四角形をしている。クールボード1を床面に載置したときに、下辺10が床面に当接して本体部2を水平に支持する。なお、図1に一点鎖線で示すように、縦断面形状が逆三角形の中空孔19を放熱フイン3の軸方向に設けることができる。
【0029】
放熱部4の裏面側には、対向する放熱フイン3とその間にある傾斜した区画領域11(傾斜面9の一部である)により、門形の凹溝12が形成されている。放熱フイン3の形状から明らかなように、凹溝11は、薄肉部側においては縦方向に高く開口した薄肉側開口13と、厚肉部側において縦方向に低く開口した厚肉側開口14を有している。また、凹溝11の傾斜した区画領域11は、薄肉部側において幅が狭く、厚肉部側において幅が広くなっている(図4参照)。
【0030】
凹溝12の薄肉部側には、区画領域11から上面5に鉛直に延びる横断面矩形の貫通孔15が多数設けられている。貫通孔15は凹溝と連通している。貫通孔の周縁部が熱で暖められると、この熱が貫通孔内の空気に移動して暖め、浮力が発生して上昇気流を起こす(煙突効果)。
【0031】
図3図1の区画領域におけるA-A断面図である。クールボードの本体部2と放熱部4とはアルミニウム鋳造により一体に形成されている。薄肉部8と厚肉部7とからなる断面直角三角形の本体部2と、前述した薄肉部側の背丈が高く、かつ厚肉部側の背丈が低い、側面視で横長四角形の放熱フイン3とからなっている。本体部の裏面6の放熱フインがない領域は、対向する放熱フイン3の間にある傾斜した区画領域11となっている。
【0032】
図3を用いてクールボード1の冷却作用を説明する。ペットにより本体部の上面に加えられた熱は、上面に沿って外周へと移動するとともに、本体部2の裏面側にも移動することになる。裏面側に移動した熱は、厚肉部7の熱容量が大きく蓄熱されるので、持続的に冷却作用を発揮する。更に、本体部2の傾斜面9には多数の放熱フイン3が一体的に設けられているから、薄肉部および厚肉部を介して、裏面側に移動した熱が放熱フイン3に移動する。
【0033】
前述のように、本体部の厚肉部および薄肉部並びに放熱フインに移動した熱は、凹溝内の空気を暖めて浮力を発生させる。浮力を得た空気は、傾斜した区画領域11に沿って上昇(縦断勾配効果)して、本体部の薄肉部端縁から大気中に排出される。また、貫通孔15が設けられていれば、貫通孔からも速やかに大気中に排出される(煙突効果)。つまり、凹溝11の暖められた空気17は傾斜した区画領域に沿って凹溝内を上昇し、本体部の薄肉部端縁および貫通孔15により大気中に排出され、クールボード1を持続的に冷却する。傾斜面を凹曲面20とするときは、一点鎖線で示すように、肉厚部側の曲率半径を小さくするとともに薄肉部側の曲率半径を大きくして、厚肉部側で上昇気流が発生しやすいようにする。
【0034】
次に、クールボード1を床面に設置したときの冷却作用を説明する。クールボードの本体部は放熱フイン3によって支持され、本体部の傾斜面9は放熱フインによって床面から一定間隔を隔てられている。したがって、本体部の裏面側には、薄肉部側開口13と厚肉部側開口14とを有するトンネルが凹溝の数だけ形成される。トンネルは、その天井面が傾斜した区画領域11で形成されており、薄肉側開口13と厚肉側開口14を有しており、外気と連通している。この状態のクールボードにペットが横たわると、本体部2の中央部が最初に暖められる。凹溝内の暖められた空気は、その浮力により薄肉側に移動し、速やかに大気中に排出(前述の縦断勾配効果および煙突効果)されて、中央部の底面に滞留することがない。排出された空気を補うように、外気が厚肉側開口14を介して凹溝29に導入される。
【0035】
図4は第1実施例の変形例を示したものである。厚肉部7の放熱フインの背丈は低く、薄肉部8の放熱フインの背丈が高いので、傾斜した区画領域(傾斜面の一部である)11を底面側から見ると、厚肉部側の区画領域11の幅が広く、薄肉部側の区画領域の幅は狭くなっている。貫通孔15は、ペットがクールボードの上面5に横たわったときに、ペットの身体で貫通孔15が閉鎖されない位置に配置するのがよく、薄肉部側に貫通孔15を設けている。しかし、前述したように、厚肉部側の区画領域の幅は薄肉部側の区画領域の幅に比べて幅広であるから、厚肉部側の区画領域に設ける貫通孔15は、その断面形状を大きくすることができ、しかも厚肉部により煙道を長くすることができるので、より大きな冷却作用を発揮することができる。したがって、図4に示すように、本体部の中央部を除く位置に貫通孔15を配置することもできる。
【0036】
なお、上記実施例において、放熱フイン3を中実構造としたが、放熱フインに中空孔19を設けて更に放熱効果を高めることができる。この場合、放熱フインが肉厚部側の高さが低く、薄肉部側の高さが高いから、傾斜面9に沿った斜めの天井面を有する中空孔19となるので、凹溝の空気通路とは別のトンネル状の空気通路ができて、さらに縦段勾配効果による冷却効果を高めることができる。鋳造によりクールボードを製造する場合は、放熱フインに中子を配設しておけばよい。
【実施例0037】
図5および図6は本発明の第2実施例を示したものである。本実施例は中型犬ないし大型犬に使用するクールボードである。本実施例のペット用クールボード21は、矩形の本体部22および放熱フイン27をその中間位置で鉛直な分割面23に沿って左右に分割したものである。分割後の半割れ体24は、実施例1の構造と多くの点において共通しているので、以下の異なる点について説明する。
【0038】
各半割れ体24は、前記分割面側に厚肉部25が設けられ、反分割面側に薄肉部26が設けられている。前記放熱フイン27の分割面側の下隅部に切り欠き28が設けられており、この切り欠き部により分割面23に沿った空気連通路34が形成される。したがって、外気は、空気連通路34を介して本体部22の凹溝29に導入されることになる。切り欠き28の大きさは、外側に配置された放熱フイン27の切欠面積を大きくして、中心側の放熱フインの切欠面積を小さくして、各凹溝28に均等に外気が流れ込むようにする。30は凹溝29の傾斜した区画領域31から上面に延びる貫通孔である。
【0039】
各半割れ体の厚肉部側の裏面には、分割面に沿った離れた位置に2つのバカ孔32が設けられている。このバカ孔32は、2つの半割れ体24をその肉厚部同士を当接させた後、連結部材であるカスガイ33を打ち込んで連結するためのものである。本実施例のクールボード21は、片付けるときや搬送するときに、一方の半割れ体の厚肉部と他方の半割れ体の薄肉部が上下に位置するよう配置し、それぞれの放熱フイン27を互いの位置をずらして重ねることにより、梱包容積を小さくすることができる。使用時には、厚肉部同士を当接させてカスガイ33を打ち込んで一体化してやれば、大型犬や中型犬が横たわることができる広さの上面を確保することができる。なお、連結部材としては、蝶番を用いることができる。
【0040】
本実施例のクールボード21を床面に設置すると、各本体部22の傾斜面と放熱フイン27とにより形成された複数の凹溝29が分割面23から左右方向(反分割面方向)に形成され(両側傾斜)、床面により左右両側に多数のトンネルが形成される。ペットが横たわることにより暖められた本体部22の熱は、厚肉部側と薄肉部側に移動する。更に放熱フイン27にも移動し、移動した熱が左右の凹溝29内の空気に移動する。凹溝29内の空気は暖められて浮力を発生し、傾斜した区画領域を上昇して、薄肉部の端縁および貫通孔30から排出される(縦断勾配効果および煙突効果)。排出された空気を補うように、外気が空気連通路34を介して凹溝29に導入される。このような空気の流れが継続的に起こるので、冷却作用を持続することができる。また、第1実施例で示したように、放熱フインに中空孔を設けてやれば、更に冷却作用に優れたクールボードを得ることができる。
【0041】
ペット用クールボード1、21は、鋳型にアルミニウムを鋳込むことにより、本体部2および放熱部3を一体に鋳造することができる。全体としての熱容量が大きく、かつ、ペットの体温の上昇を抑える作用(冷却作用)が継続的に発生する。特に、第2実施例のクールボードは、中央部に2つの肉厚部7が設けられているから、ペットの身体の直下に位置する厚肉部の熱容量が大きく、ペットがクールボードの上面に横たわったときの冷たさを実感する時間を長く維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明の動物用クールボードは、厚肉部および薄肉部と有する本体部とその裏面に配置された多数の放熱フインを有する放熱部を有しており、両者に移動した熱は、本体部および放熱部の放熱フインで形成された凹溝内の空気を三方から暖める。暖められた空気は傾斜勾配効果により薄肉部側に移動して、その端縁から排出される。更に、凹溝に貫通孔を設けてやれば、貫通孔の煙突効果と相まって更に効率よく、凹溝内の暖められた空気を大気中に排出することができる。排出された空気は冷たい外気により補充されるので、熱交換が円滑に行われる。したがって、動物が横たわったときの冷たさを実感する時間を長く維持することができ、暖められた空気が本体部の下面に滞留することがなく、高い冷却作用を継続的に発揮する動物用クールボードを提供することができる。特に、室内で飼育する愛玩動物(ペット)や鶏飼育ゲージの鶏の体温上昇を抑える動物用クールボードを提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1、21 ペット用クールボード
2、22 本体部
3、27 放熱フイン
4 放熱部
5 上面
7、25 厚肉部
8、26 薄肉部
9 傾斜面
10 下辺
11、31 傾斜した区画領域
12、29 凹溝
13 薄肉側の開口
14 厚肉側の開口
15、30 貫通孔
19 中空孔
23 分割面
24 半割れ体
28 切り欠き
34 空気連通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6