(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090188
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】トンネル支保工の連結システムと連結方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/18 20060101AFI20220610BHJP
E21D 11/40 20060101ALI20220610BHJP
E21D 11/04 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
E21D11/18
E21D11/40 A
E21D11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202415
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 正孝
(72)【発明者】
【氏名】丸山 修
(72)【発明者】
【氏名】若山 真則
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155CA01
2D155CA06
2D155FB01
2D155GC04
(57)【要約】
【課題】高価なワンタッチ式クイックジョイントを使用せず、高い安全性の下でトンネル支保工を形成することのできる、トンネル支保工の連結システムと連結方法を提供する。
【解決手段】トンネル支保工の連結システム80は、第二分割支保工200に磁気吸着し、通電切り換え自在な電磁石10と、電磁石10に連結される筒体30と、筒体30の内部において第一継手板105に向かう方向と離れる方向とにスライド自在に収容され、雄部材107の先端に取り付けられるナット209を保持する自動レンチ50と、電磁石10への通電の切り換えと自動レンチ50の作動を操作する操作手段60とを有し、貫通孔207に雄部材107の先端が挿通され、雄部材107の先端とナット209が当接した際に、操作手段60により作動された自動レンチ50によりナット209が雄部材107に締結されるようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製で円弧状の第一分割支保工と第二分割支保工のそれぞれの一端に第一継手板と第二継手板があり、該第二継手板には貫通孔が開設され、該第一継手板には、該貫通孔に挿通されて該第二継手板に係合される雄部材の基部が取り付けられ、該雄部材の先端が該第二継手板から突設している、該第一継手板と該第二継手板を連結することにより、トンネル支保工を形成する、トンネル支保工の連結システムであって、
前記トンネル支保工の連結システムは、
前記第二分割支保工に磁気吸着し、通電切り換え自在な電磁石と、
前記電磁石に連結される、筒体と、
前記筒体の内部において、前記第一継手板に向かう方向と該第一継手板から離れる方向とにスライド自在に収容され、前記雄部材の先端に取り付けられるナットを保持する自動レンチと、
前記電磁石への通電の切り換えと、前記自動レンチの作動を操作する、操作手段と、を有し、
前記貫通孔に前記雄部材の先端が挿通され、該雄部材の先端と前記ナットが当接した際に、前記操作手段により作動された前記自動レンチにより、該ナットが該雄部材に締結されるようになっていることを特徴とする、トンネル支保工の連結システム。
【請求項2】
前記筒体は、外側筒体と、該外側筒体の内部をスライドする内側筒体とを備え、
前記外側筒体には、前記内側筒体を前記第一継手板に向かう方向に付勢する付勢手段が装着されており、
前記内側筒体の内部に前記自動レンチが収容され、少なくとも該自動レンチに保持されている前記ナットは該内側筒体の外側に張り出しており、
前記雄部材の先端と前記ナットが当接して該ナットが前記第一継手板から離れる方向に押し込まれた際に、前記付勢手段により、前記内側筒体が前記第一継手板に向かう方向に付勢され、前記雄部材の先端と前記ナットの締結準備状態が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル支保工の連結システム。
【請求項3】
前記電磁石に収容ボックスが取り付けられており、
前記自動レンチは無線式の自動レンチであり、
前記収容ボックスには、前記電磁石への通電の切り換えと前記自動レンチの作動及び作動停止を実行する無線制御装置と、バッテリと、が収容されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトンネル支保工の連結システム。
【請求項4】
前記雄部材の先端に対して前記ナットが締結されたことを確認する、モニターをさらに備えていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトンネル支保工の連結システム。
【請求項5】
前記第一分割支保工と前記第二分割支保工は、いずれもH形鋼により形成され、
前記電磁石は、前記第二分割支保工の備える下フランジの下面に磁気吸着され、
前記電磁石から上方に延設する連結治具が、前記筒体を前記下フランジの上面から浮いた位置に保持し、
前記筒体の下方には、前記H形鋼のウエブ側から前記下フランジの端部側に向かって斜め下方に傾斜する案内片が設けられており、
前記電磁石への通電の切り換えで電磁石を消磁して磁気吸着を解除した際に、該電磁石の下方への落下に伴い、前記案内片が前記下フランジのエッジに案内されながら前記筒体が落下するようになっていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトンネル支保工の連結システム。
【請求項6】
鋼製で円弧状の第一分割支保工と第二分割支保工のそれぞれの一端に第一継手板と第二継手板があり、該第二継手板には貫通孔が開設され、該第一継手板には、該貫通孔に挿通されて該第二継手板に係合される雄部材の基部が取り付けられ、該雄部材の先端が該第二継手板から突設している、該第一継手板と該第二継手板を連結することにより、トンネル支保工を形成する、トンネル支保工の連結方法であって、
前記第二分割支保工に磁気吸着し、通電切り換え自在な電磁石と、
前記電磁石に連結される、筒体と、
前記筒体の内部において、前記第一継手板に向かう方向と該第一継手板から離れる方向とにスライド自在に収容され、前記雄部材の先端に取り付けられるナットを保持する自動レンチと、
前記電磁石への通電の切り換えと、前記自動レンチの作動を操作する、操作手段と、を少なくとも有する連結システムを用意するA工程と、
前記電磁石を前記第二分割支保工に磁気吸着させ、前記貫通孔に前記雄部材の先端を挿通して該雄部材の先端と前記ナットを当接させ、前記操作手段により前記自動レンチを作動させて該ナットを該雄部材に締結させるB工程と、
前記電磁石への通電の切り換えで電磁石を消磁して磁気吸着を解除し、該電磁石と前記自動レンチが収容される前記筒体を下方へ落下させるC工程と、を有することを特徴とする、トンネル支保工の連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル支保工の連結システムと連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば山岳トンネルにおける鋼製支保工の建て込みにおいては、ベースマシンに左右二本のエレクタが装備された支保工建て込み装置を用いて、それぞれのエレクタにて左右に分割されて円弧状をなす一対の分割支保工を把持して支保工を形成し、孔壁に沿って建て込まれた支保工に対してコンクリートを吹付けて支保工を孔壁に固定する方法により行われている。ベースマシンには、分割支保工を把持する一対のエレクタの他、コンクリートの吹付けを行う吹付け機、作業員が搭乗できるバスケットブームなど、様々な機器が装備されている。
【0003】
ここで、特許文献1には、トンネル支保工を建て込む際の手間を低減でき、トンネル工事の工期短縮を図ることのできるトンネル支保工が提案されている。具体的には、複数の支保部材を連結することにより形成されたトンネル支保工であり、支保部材の端部に継手板が設けられ、支保部材同士は継手板同士を突き合わせた状態で連結されており、一方の支保部材の継手板には突起が形成され、他方の支保部材の継手板には突起が挿入される穴が形成されている。
【0004】
一方、特許文献2には、トンネルの切羽における人手作業を回避し、安全性と作業性を向上させることのできるトンネルの構築方法が提案されている。具体的には、円弧状に分割された一対の鋼製支保工を把持可能な一対のハンドを有するエレクタ装置を搭載する重機を、トンネルの切羽に配置するエレクタ配置工程と、一対の鋼製支保工を一対のハンドの各々に把持しつつハンドを駆動することにより一対の鋼製支保工を天端部同士で相互に連結する支保工連結工程と、一対のハンドを駆動することにより天端部同士が連結されたアーチ状の鋼製支保工を所定の建て込み位置に配置する支保工建て込み工程とを有する。ここで、一対の鋼製支保工をそれぞれの天端部同士で相互に連結するための連結構造は、一対の鋼製支保工の天端部にそれぞれ設けられ、一対の鋼製支保工が連結される際に互いに当接される第1天端継手板及び第2天端継手板と、第1天端継手板に凹設された雌型連結部と、第2天端継手板に凸設された雄型連結部とを備え、雄型連結部は第2天端継手板から突出する棒状の雄型係止部材を有し、雌型連結部は第1天端継手板に貫通形成される開口孔と、開口孔と連通すると共に雄型係止部材を挿入可能な挿入口が開口形成される収納室を内部に有するケーシングとを含み、挿入口から収納室内へ挿入された雄型係止部材を係止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-131865号公報
【特許文献2】特開2018-178455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のトンネル支保工では、支保工建込み機に付属するバスケットに作業員が乗り、崩落の危険性がある切羽に接近した建込み位置で、ボール芯(例えば寄せポンチ)等を使って左右に分割されて支保工継手板のボルト孔を合わせ、ボルトを挿入し、ナットを手で締め、レンチ等で締め付けを行うことから、作業員が崩落の危険性がある切羽直下に立ち入る危険性が高く、また、バスケットに搭乗していることから、容易に避難することができないといった課題がある。
一方、特許文献2に記載のトンネルの構築方法では、高価なワンタッチ式クイックジョイントを用いて天端継手板同士を締結しているが、天端継手板は本来的には二組のボルト・ナットにより締結されるところ、クイックジョイントは芯ずれに対して余裕がないことから、実施工では一本のジョイントにて対応することになり、従って支保工のねじれ方向に対する抵抗力がないといった課題がある。
【0007】
本発明は、二つの分割支保工の継手板同士を連結することによってトンネル支保工を形成するに際し、高価なワンタッチ式クイックジョイントを使用せず、高い安全性の下でトンネル支保工を形成することのできる、トンネル支保工の連結システムと連結方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明によるトンネル支保工の連結システムの一態様は、
鋼製で円弧状の第一分割支保工と第二分割支保工のそれぞれの一端に第一継手板と第二継手板があり、該第二継手板には貫通孔が開設され、該第一継手板には、該貫通孔に挿通されて該第二継手板に係合される雄部材の基部が取り付けられ、該雄部材の先端が該第二継手板から突設している、該第一継手板と該第二継手板を連結することにより、トンネル支保工を形成する、トンネル支保工の連結システムであって、
前記トンネル支保工の連結システムは、
前記第二分割支保工に磁気吸着し、通電切り換え自在な電磁石と、
前記電磁石に連結される、筒体と、
前記筒体の内部において、前記第一継手板に向かう方向と該第一継手板から離れる方向とにスライド自在に収容され、前記雄部材の先端に取り付けられるナットを保持する自動レンチと、
前記電磁石への通電の切り換えと、前記自動レンチの作動を操作する、操作手段と、を有し、
前記貫通孔に前記雄部材の先端が挿通され、該雄部材の先端と前記ナットが当接した際に、前記操作手段により作動された前記自動レンチにより、該ナットが該雄部材に締結されるようになっていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、分割支保工に磁気吸着する電磁石と、電磁石に連結される筒体の内部にスライド自在に収容されてナットを保持する自動レンチとを有し、操作手段によって自動レンチの作動を操作するとともに電磁石への通電切り換えが実行されることにより、作業員は、二つの分割支保工の連結場所から離れた遠隔において、ナットを雄部材に締結することによるトンネル支保工の形成と、電磁石や自動レンチの分割支保工からの取り外しの双方を行うことができる。従って、高価なワンタッチ式クイックジョイントを使用せず、高い安全性の下でトンネル支保工を形成することが可能になる。
【0010】
例えば、弧長が同一もしくは略同一の第一分割支保工と第二分割支保工を適用し、双方の第一継手板と第二継手板の広幅面同士をトンネルの天端位置において当設させ、貫通孔に雄部材を挿通させ、第二継手板の背面側にて雄部材の先端がナット締めされることにより、トンネル支保工が形成される。
【0011】
また、本発明によるトンネル支保工の連結システムの他の態様において、前記筒体は、外側筒体と、該外側筒体の内部をスライドする内側筒体とを備え、
前記外側筒体には、前記内側筒体を前記第一継手板に向かう方向に付勢する付勢手段が装着されており、
前記内側筒体の内部に前記自動レンチが収容され、少なくとも該自動レンチに保持されている前記ナットは該内側筒体の外側に張り出しており、
前記雄部材の先端と前記ナットが当接して該ナットが前記第一継手板から離れる方向に押し込まれた際に、前記付勢手段により、前記内側筒体が前記第一継手板に向かう方向に付勢され、前記雄部材の先端と前記ナットの締結準備状態が形成されることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、外側筒体の内部をスライドする内側筒体に付勢手段が装着され、付勢手段にて自動レンチが第一継手板に向かう方向に付勢されていることにより、雄部材の先端とナットが当接してナットが第一継手板から離れる方向に押し込まれた際に、ナットを保持する自動レンチを収容する内側筒体が第一継手板に向かう方向に付勢されることから、雄部材の先端にナットを自動装着して双方の締結準備状態を形成することができる。
【0013】
また、本発明によるトンネル支保工の連結システムの他の態様は、前記電磁石に収容ボックスが取り付けられており、
前記自動レンチは無線式の自動レンチであり、
前記収容ボックスには、前記電磁石への通電の切り換えと前記自動レンチの作動及び作動停止を実行する無線制御装置と、バッテリと、が収容されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、電磁石への通電の切り換えと無線式の自動レンチの作動及び作動停止を実行する無線制御装置が収容された収容ボックスが電磁石に取り付けられていることにより、電磁石への継続的な通電と、遠隔での通電の切り換えによる第二分割支保工からの電磁石(及び自動レンチや収容ボックス)の自動取り外しを実現でき、さらには、遠隔での自動レンチの作動と停止を実現できる。
【0015】
また、本発明によるトンネル支保工の連結システムの他の態様は、前記雄部材の先端に対して前記ナットが締結されたことを確認する、モニターをさらに備えていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、雄部材の先端に対してナットが締結されたことを確認するモニターをさらに備えていることにより、遠隔にて雄部材の先端とナットの締結を確認した上で、電磁石や自動レンチ、収容ボックス等の取り外しを行うことができる。ここで、モニターには、ビデオカメラやCCDカメラ等、様々な撮像手段が適用でき、作業員は、モニターにて撮像された画像データを、自身の備えるユーザ端末の表示画面等に映し出し、雄部材の先端とナットの締結を確認することができる。また、モニターは、例えば収容ボックスに取り付けられた治具に装着されてもよいし、鋼製支保工建て込み用のベースマシンに装備されているバスケットブームに搭載されてもよい。
【0017】
また、本発明によるトンネル支保工の連結システムの他の態様において、前記第一分割支保工と前記第二分割支保工は、いずれもH形鋼により形成され、
前記電磁石は、前記第二分割支保工の備える下フランジの下面に磁気吸着され、
前記電磁石から上方に延設する連結治具が、前記筒体を前記下フランジの上面から浮いた位置に保持し、
前記筒体の下方には、前記H形鋼のウエブ側から前記下フランジの端部側に向かって斜め下方に傾斜する案内片が設けられており、
前記電磁石への通電の切り換えで電磁石を消磁して磁気吸着を解除した際に、該電磁石の下方への落下に伴い、前記案内片が前記下フランジのエッジに案内されながら前記筒体が落下するようになっていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、筒体の下方において、H形鋼のウエブ側から下フランジの端部側に向かって斜め下方に傾斜する案内片が設けられていることにより、電磁石への通電の切り換えで電磁石を消磁して磁気吸着を解除した際に、電磁石の下方への落下に伴い、案内片が下フランジのエッジに案内されながら筒体をスムーズに下方へ落下させることができる。尚、この落下に際して、落下位置には予めバスケットブームを位置決めし、バスケットブームにネットを張っておくことにより、電磁石や自動レンチ、収容ボックス等をネット上に落下させることができ、これらを破損させることなく回収することができる。
【0019】
また、本発明によるトンネル支保工の連結方法の一態様は、
鋼製で円弧状の第一分割支保工と第二分割支保工のそれぞれの一端に第一継手板と第二継手板があり、該第二継手板には貫通孔が開設され、該第一継手板には、該貫通孔に挿通されて該第二継手板に係合される雄部材の基部が取り付けられ、該雄部材の先端が該第二継手板から突設している、該第一継手板と該第二継手板を連結することにより、トンネル支保工を形成する、トンネル支保工の連結方法であって、
前記第二分割支保工に磁気吸着し、通電切り換え自在な電磁石と、
前記電磁石に連結される、筒体と、
前記筒体の内部において、前記第一継手板に向かう方向と該第一継手板から離れる方向とにスライド自在に収容され、前記雄部材の先端に取り付けられるナットを保持する自動レンチと、
前記電磁石への通電の切り換えと、前記自動レンチの作動を操作する、操作手段と、を少なくとも有する連結システムを用意するA工程と、
前記電磁石を前記第二分割支保工に磁気吸着させ、前記貫通孔に前記雄部材の先端を挿通して該雄部材の先端と前記ナットを当接させ、前記操作手段により前記自動レンチを作動させて該ナットを該雄部材に締結させるB工程と、
前記電磁石への通電の切り換えで電磁石を消磁して磁気吸着を解除し、該電磁石と前記自動レンチが収容される前記筒体を下方へ落下させるC工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、本発明の連結システムを用いることにより、作業員は、二つの分割支保工の連結場所から離れた遠隔において、ナットを雄部材に締結することによるトンネル支保工の形成と、電磁石や自動レンチの分割支保工からの取り外しの双方を行うことができる。従って、高価なワンタッチ式クイックジョイントを使用せず、高い安全性の下でトンネル支保工を形成することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のトンネル支保工の連結システムと連結方法によれば、二つの分割支保工の継手板同士を連結することによってトンネル支保工を形成するに際し、高価なワンタッチ式クイックジョイントを使用せず、高い安全性の下でトンネル支保工を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係るトンネル支保工の連結システムの一例を示すとともに、実施形態に係るトンネル支保工の連結方法の一例のA工程を説明する図である。
【
図2】
図1のII-II矢視図であって、第二分割支保工に電磁石が磁気吸着されている状態を示す図である。
【
図3】収容ボックスの内部構成の一例を示す図である。
【
図4】
図1に続いて、実施形態に係るトンネル支保工の連結方法の一例のB工程を説明する図である。
【
図5】モニターで雄部材の先端とナットが締結されていることを確認している状態を示す図である。
【
図6】
図4に続いて、実施形態に係るトンネル支保工の連結方法の一例のC工程を説明する図であって、(a)~(e)の順に、第二分割支保工から電磁石等が取り外され、下方へ落下する状態を示す図である。
【
図7】電磁石等の落下位置に用意されるネットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係るトンネル支保工の連結システムと連結方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0024】
[実施形態に係るトンネル支保工の連結システムと連結方法]
図1乃至
図7を参照して、実施形態に係るトンネル支保工の連結システムと連結方法の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係るトンネル支保工の連結システムの一例を示すとともに、実施形態に係るトンネル支保工の連結方法の一例のA工程を説明する図である。また、
図2は、
図1のII-II矢視図であって、第二分割支保工に電磁石が磁気吸着されている状態を示す図であり、
図3は、収容ボックスの内部構成の一例を示す図である。また、
図4は、
図1に続いて、実施形態に係るトンネル支保工の連結方法の一例のB工程を説明する図であり、
図5は、モニターで雄部材の先端とナットが締結されていることを確認している状態を示す図である。さらに、
図6は、
図4に続いて、実施形態に係るトンネル支保工の連結方法の一例のC工程を説明する図であって、(a)~(e)の順に、第二分割支保工から電磁石等が取り外され、下方へ落下する状態を示す図であり、
図7は、電磁石等の落下位置に用意されるネットを示す図である。
【0025】
図1は、トンネル支保工300(
図4参照)を形成する第二分割支保工200に取り外し自在に磁気吸着されている連結システム80を示している。連結システム80は、第二分割支保工200に磁気吸着し、通電切り換え自在な電磁石10と、電磁石10に連結される収容ボックス20及び筒体30と、筒体30の内部においてスライド自在に収容されている自動レンチ50と、電磁石10への通電の切り換えと自動レンチ50の作動を遠隔にて操作する操作手段60とを有する。トンネル支保工の連結方法においては、まず、A工程において、連結システム80を用意する。
【0026】
ここで、トンネル支保工300は、支保工の全円弧を二分割する円弧状のH形鋼101により形成される第一分割支保工100と、同様に全円弧を二分割する円弧状のH形鋼201により形成される第二分割支保工200とにより形成される。H形鋼101の一端には鋼製の第一継手板105が固定され、H形鋼201の一端には鋼製の第二継手板205が固定されている。第一継手板105と第二継手板205は、トンネル支保工300の頂部において相互に当接され、連結される。
【0027】
第二継手板205には貫通孔207が開設され、第一継手板105には、貫通孔207に挿通されて第二継手板205に係合される雄部材107(図示例はボルト)の基部108が固定されている。より詳細には、H形鋼201のウエブ202に基部固定治具109が固定され、基部固定治具109を介して雄部材107の基部108がH形鋼201に取り付けられている。
【0028】
雄部材107は第一継手板105の貫通孔110を貫通しており、
図1に示すように、不図示の支保工建て込み装置の備える二組のブームの先端にある把持機構が、第一分割支保工100と第二分割支保工200を把持し、相互にZ1方向に近接させることにより、雄部材107の先端が第二継手板205の貫通孔207へZ2方向に貫通される。
【0029】
第二分割支保工200のうち、
図1における雄部材107の先端に対応する位置にはナット209が位置決めされており、ナット209を保持する連結システム80が磁気吸着にて第二分割支保工200に仮に取り付けられている。尚、
図1は、貫通孔207に雄部材107の先端が差し込まれた際に、予め位置決めされていたソケット58に保持されているナット209が雄部材107の先端に当接し、後方に押し込まれている状態を示している。
【0030】
H形鋼201の下フランジ204の下面に磁気吸着される電磁石10は、永電磁ホルダもしくはハイブリッドホルダとも称され、通電の切り換えで励磁状態となることで下フランジ204に磁気吸着し、通電の切り換えで消磁状態となることで下フランジ204への磁気吸着が解除される。
【0031】
電磁石10の下面には、面材により形成され、側面視コの字状の吊り下げ治具15(
図2参照)の一片が固定されており、吊り下げ治具15の鉛直方向に延びる他片に収容ボックス20が固定されている。電磁石10の下面にはさらに、二つの側面視コの字状の連結治具18の一片が固定されており、連結治具18の他片が鉛直方向に延びて上フランジ203の近傍まで位置し、二つの連結治具18に対して筒体30が固定されている。
【0032】
図1及び
図2に示すように、電磁石10から上方に延設する連結治具18により、筒体30はH形鋼201の下フランジ204の上面から浮いた位置に保持される。
【0033】
図1に示すように、筒体30は、外側筒体31と、外側筒体31の内部をスライドする内側筒体32とを有する。ここで、内側筒体32は、第二継手板205に対して直交する水平方向もしくは略水平方向であるX1方向にスライドする。
【0034】
外側筒体31の後端には、コイルスプリング等の付勢手段40が装着されており、付勢手段40により、内側筒体32が第一継手板105に向かう方向であるX2方向に常時付勢されている。すなわち、内側筒体32は、外側筒体31に対してX1方向にスライド自在に収容されている。
【0035】
内側筒体32の内部には、インパクトレンチ等の自動レンチ50が収容され、自動レンチ50の回転軸51の先端にはユニバーサルジョイント55が装着され、ユニバーサルジョイント55にはソケット58が装着されている。そして、ソケット58にナット209が保持されている。自動レンチ50は無線式のレンチであり、以下で説明するように遠隔にてその作動と作動停止が操作されるようになっている。
【0036】
上記するように、貫通孔207に雄部材107の先端が差し込まれた際に、予め位置決めされていたソケット58に保持されているナット209は、雄部材107の先端に当接し、第一継手板105から離れる後方に押し込まれている。ナット209の押し込まれにより、自動レンチ50とこれを収容する内側筒体32も後方に押し込まれるが、内側筒体32は後方から付勢手段40にて前方の第一継手板105に向かうX2方向に付勢されていることから、X2方向へ押し戻す力が常時作用している。
図1に示す状態は、雄部材107の先端とナット209の締結準備状態である。
【0037】
図2に示すように、電磁石10と、収容ボックス20と、筒体30と、自動レンチ50とによるユニットが、H形鋼201のウエブ202の左右にそれぞれ設けられ、双方の電磁石10が下フランジ204の下面に磁気吸着している。
【0038】
また、
図2に示すように、筒体30の下方には、縦片36と、縦片36の下端から屈曲してウエブ202に向かって斜め上方に傾斜する(ウエブ202から外側に向かって斜め下方に傾斜する)案内片37とを備えた落下案内片35が取り付けられている。以下で説明するように、電磁石10への通電の切り換えで電磁石を消磁して磁気吸着を解除した際に、電磁石10の下方への落下に伴い、案内片37が下フランジ204のエッジに案内されることにより、筒体30がスムーズに落下するようになっている。
【0039】
図3に示すように、収容ボックス20には、電磁石10への通電の切り換えと、自動レンチ50の作動及び作動停止を実行する無線制御装置22と、バッテリ21とが収容されている。
【0040】
バッテリ21は、例えばリチウムイオンバッテリにより形成され、電磁石10への通電源であり、自動レンチ50の作動源である。
【0041】
無線制御装置22は、操作手段であるボタンボックス60(
図1参照)からの各種指令信号を受信する受信部、受信部にて受信した指令信号に基づき、電磁石10への通電の切り換えで励磁と消磁を実行し、さらに、自動レンチ50の作動と作動停止を実行する制御部とを有する。尚、図示を省略するが、無線制御装置22は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、NVRAM(Non-Volatile RAM)等をハードウェア構成として備えている。
【0042】
ボタンボックス60は、
図1に一例として示すように、電磁石10への通電の切り換えで電磁石を励磁する励磁ボタン61,電磁石10への通電の切り換えで電磁石を消磁する消磁ボタン62,自動レンチ50の回転作動を実行する回転ボタン63,自動レンチ50の回転作動を停止する停止ボタン64を備えている。
【0043】
作業員は遠隔にてボタンボックス60の各種ボタンを操作することにより、収容ボックス20の内部にある無線制御装置22を介して、電磁石10の通電切り換えや、自動レンチ50の作動とその停止を行うことができる。
【0044】
不図示の支保工建て込み装置は、第一分割支保工100と第二分割支保工200を把持する二組のブームの他に、作業員が搭乗するバスケットブームを備えており、
図5に示すように、バスケットには、雄部材107の先端に対してナット209が締結されたことを確認するためのモニター70が搭載されており、このモニター70も連結システム80の構成要素となる。
【0045】
ここで、モニター70には、ビデオカメラやCCDカメラ等、様々な撮像手段が適用できる。作業員は、モニター70にて撮像された画像データを、自身の備えるユーザ端末(図示せず)の表示画面等に映し出し、雄部材107の先端とナット209の締結を確認した上で、以下で説明するように、電磁石10や自動レンチ50、収容ボックス20等の第二分割支保工200からの取り外しを行うことができる。尚、モニター70は、例えば収容ボックス20に取り付けられた治具(図示せず)等に装着されてもよい。
【0046】
図1に示す、雄部材107の先端とナット209の締結準備状態において、ボタンボックス60の回転ボタン63を押すことにより、自動レンチ50が回転作動する。この回転作動により、ソケット58に保持されているナット209も同期して回転し、回転姿勢のナット209は回転途中で雄部材107の先端に螺合する。
【0047】
ナット209が雄部材107の先端に螺合することにより、ナット209は第一継手板105に向かう方向にスライドしようとするが、ナット209を含む自動レンチ50が収容される内側筒体32は、付勢手段40によって第一継手板105に向かうX2方向に常時付勢されていることから、雄部材107の先端へのナット209の螺合に応じて、ナット209を保持する自動レンチ50も第一継手板105に向かう方向にスライドする。このように、雄部材107の先端にナット209が螺合されることにより、
図4及び
図5に示すように、雄部材107の先端に対してナット209が締結されて第一継手板105と第二継手板205が連結され、トンネル支保工300が形成される(以上、トンネル支保工の連結方法におけるB工程)。
【0048】
次に、
図6及び
図7を参照して、電磁石10や収容ボックス20,自動レンチ50等を自動にて第二分割支保工200から取り外す方法について説明する。
【0049】
図6(a)は、トンネル支保工300が形成された際に、通電状態の電磁石10がH形鋼201の下フランジ204の下面に磁気吸着されている状態を示している。
【0050】
はじめに、図示例の左側の電磁石10の磁気吸着を解除する。例えば、
図3に示すボタンボックス60の消磁ボタン62を押下することにより、無線制御装置22から送信される消磁指令信号に基づいて電磁石10における通電の切り換えで電磁石を消磁する消磁される。この通電切り換えにより、電磁石10の磁気吸着が解除され、
図6(b)に示すように電磁石10は下方へY1方向に落下する。
【0051】
ここで、電磁石10の下面には、H形鋼201のウエブ202側から下フランジ204の端部側に向かって斜め下方に傾斜する案内片37が設けられており、従って、下方へ電磁石10が落下した際に、案内片37の途中位置が下フランジ204のエッジに当接する。
【0052】
図6(c)に示すように、下フランジ204のエッジに当接した案内片37は、当該エッジに案内されながら斜め下方のY2方向に滑り、案内片37とともに、電磁石10や収容ボックス20,自動レンチ50等がY2方向に移動していく。
【0053】
図6(d)に示すように、案内片37がさらにY3方向に滑ることにより、下フランジ204のエッジに案内片37の端部が到達する。そして、下フランジ204のエッジから案内片37が係脱することにより、
図6(e)に示すように、電磁石10や収容ボックス20,自動レンチ50等が下方のY4方向へ落下する。
【0054】
この電磁石10等の落下に際して、落下位置には、
図7に示すように、不図示の支保工建て込み装置の備えるバスケットブーム(ブーム91,バスケット90)のバスケット90が予め位置決めされており、バスケット90にネット95が張設されている。
【0055】
下方へ落下した電磁石10や収容ボックス20,自動レンチ50等は、破損することなく、ネット95にて回収される。
【0056】
図6において左側の電磁石10や収容ボックス20,自動レンチ50等が回収された後、同様の方法で右側の電磁石10の磁気吸着を解除し、右側の電磁石10等を下方へ落下させ、ネット95にて回収する(以上、トンネル支保工の連結方法におけるC工程)。
【0057】
図示するトンネル支保工の連結システム80と、この連結システム80を用いた連結方法によれば、二つの分割支保工100,200の継手板105,205同士を連結することによってトンネル支保工300を形成するに際し、高価なワンタッチ式クイックジョイントを使用しないことから、工費を節減できる。また、遠隔操作にて継手板105,205同士を連結できることから、高い安全性の下でトンネル支保工300を形成することができる。
【0058】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0059】
10:電磁石
15:吊り下げ治具
18:連結治具
20:収容ボックス
21:バッテリ
22:無線制御装置
30:筒体
31:外側筒体
32:内側筒体
35:落下案内片
36:縦片
37:案内片
40:付勢手段(コイルスプリング)
50:自動レンチ(インパクトレンチ)
51:回転軸
55:ユニバーサルジョイント
58:ソケット
60:操作手段(ボタンボックス)
61:励磁ボタン
62:消磁ボタン
63:回転ボタン
64:停止ボタン
70:モニター
80:トンネル支保工の連結システム(連結システム)
90:バスケット(作業台)
91:ブーム
95:ネット
100:第一分割支保工(分割支保工)
101:H形鋼
105:第一継手板(継手板)
107:雄部材(ボルト)
108:基部
109:基部固定治具
110:貫通孔
200:第二分割支保工(分割支保工)
201:H形鋼
202:ウエブ
203:上フランジ
204:下フランジ
205:第二継手板(継手板)
207:貫通孔
209:ナット
300:トンネル支保工