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特開2022-90219燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090219
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0662 20160101AFI20220610BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20220610BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220610BHJP
【FI】
H01M8/0662
B01D53/26
B01D53/26 100
H01M8/04 N
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202462
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
【テーマコード(参考)】
4D052
5H127
【Fターム(参考)】
4D052AA01
4D052BA04
4D052EA01
4D052GA01
4D052GB01
5H127AC02
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB10
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
(57)【要約】
【課題】燃料電池にドライ且つクリーンな空気を送気し得る圧縮空気圧回路構造を提供する。
【解決手段】燃料電池の空気取入口に接続される圧縮空気圧回路構造であって、エアコンプレッサと、該エアコンプレッサの後段に装備されるエアタンクと、該エアタンクの後段に装備される冷凍式エアドライヤと、該冷凍式エアドライヤの後段に装備されるエアフィルタと、該エアフィルタの後段に装備される中空糸膜式エアドライヤと、該中空糸膜式エアドライヤの後段に装備される減圧弁と、該減圧弁の後段に装備されるラストエアフィルタと、から成る手段を採る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の空気取入口に接続される圧縮空気圧回路構造であって、
エアコンプレッサと、該エアコンプレッサの後段に装備されるエアタンクと、該エアタンクの後段に装備される冷凍式エアドライヤと、該冷凍式エアドライヤの後段に装備されるエアフィルタと、該エアフィルタの後段に装備される中空糸膜式エアドライヤと、該中空糸膜式エアドライヤの後段に装備される減圧弁と、該減圧弁の後段に装備されるラストエアフィルタと、から成り、
エアコンプレッサにより生成された圧縮空気は、エアタンクに一次的に貯留された後に冷凍式エアドライヤにより一次乾燥され、その後エアフィルタにより圧縮空気中の異物が一次的に除去され、次いで中空糸膜式エアドライヤにより圧縮空気中に残存する水蒸気が取り除かれ、さらに減圧弁を介して所定圧力に減圧された後に中空糸膜式エアドライヤ乃至減圧弁にて発生した異物をラストエアフィルタにより取り除き、最終的に燃料電池の空気取入口へ送気されることを特徴とする燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造。
【請求項2】
前記冷凍式エアドライヤと前記中空糸膜式エアドライヤとの中間に、特性の異なるエアフィルタが複数装備されて成ることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造。
【請求項3】
前記中空糸膜式エアドライヤと前記減圧弁との中間に、流量調整弁及び流量計が装備されて成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関し、詳しくは、該燃料電池の空気取入口に接続される圧縮空気圧回路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素を酸素と電気化学的な反応をさせて発電を行うもので、その際に排出されるものは水であるため、クリーンエネルギーとして注目を集めている。かかる燃料電池に使用される酸素は、大気中の空気から取り入れる手法が一般的である。
【0003】
一方、大気中には、空気以外に多様な異物も存在する。大気中に存する異物としては、塵埃やスラッジ、微生物、窒素酸化物などが挙げられる。故に、燃料電池に使用する酸素を大気中の空気から取り入れた場合、これら異物も同時に取り入れることとなる。これら異物は、燃料電池に対し、動作不良や故障の原因となったり、清掃・メンテナンスの頻度増大を招いたり、といった悪影響を及ぼしかねない。
【0004】
また、燃料電池において、水素と酸素を反応させた際に発生する水は、主に気化した水蒸気の状態で排出される。この水蒸気は、外部へ排出される前に冷やされ、結露となって燃料電池内部のあらゆる箇所に付着したりする。かかる結露をはじめ燃料電池内部の余分な水は、空気や水素のガスを通り難くする原因となるだけでなく、金属でできたセパレーターなどを劣化させるおそれもある。故に、燃料電池にとって余分な水は大敵であって、燃料電池の内部を適度に湿りつつ結露するほど湿りすぎないといった、適度な加湿状態に保つことが重要となる。それを実現するためには、大気中から水蒸気をできる限り取り除いて乾燥状態とした上で、その乾燥空気を燃料電池に取り入れることが有効である。
【0005】
乾燥空気を得るためには、エアコンプレッサにより空気を圧縮することが有効である。なぜなら、空気の飽和水蒸気量は空気圧によって変動し、加圧状態で減少すると共に減圧(負圧)状態で増大するためである。もちろん、加圧しただけで乾燥空気が得られるわけではなく、加圧した圧縮空気をエアドライヤに介在させて含有水分を取り除くことが好適であり、その際に飽和水蒸気量の関係から、通常の空気よりも圧縮空気の方がより多くの水分を取り除くことができる。
【0006】
ところで、燃料電池は、取り込む空気の圧力に弱い。具体的には、取り込む空気を加圧された圧縮空気とした場合に、燃料電池は動作不良を起こし、最終的には動作停止となってしまう。かかる動作不良や動作停止は、空気圧が概ね0.8MPaより高い場合に引き起こされる。したがって、乾燥空気を得るべく空気を加圧状態とした場合に、そのまま燃料電池に取り込むことができない。
【0007】
従来における燃料電池の構成として、高温の圧縮空気を燃料電池のカソード側に供給する空気供給配管部の少なくとも一部と、燃料電池のアノード側の生成水を溜めるタンクとの間で加湿器を介して熱交換を行なうことで、燃料電池に供給される圧縮空気の冷却を行う「燃料電池システム」にかかる技術が提案され、公知となっている(特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1にかかる技術提案によれば、圧縮空気をそのまま使用して燃料電池に取り入れる構成を採用すると共に、圧縮空気を冷却のために加湿する構成を採用していることから、既述した問題の解消には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-147076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、燃料電池にドライ且つクリーンな空気を送気し得る圧縮空気圧回路構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、燃料電池の空気取入口に接続される圧縮空気圧回路構造であって、エアコンプレッサと、該エアコンプレッサの後段に装備されるエアタンクと、該エアタンクの後段に装備される冷凍式エアドライヤと、該冷凍式エアドライヤの後段に装備されるエアフィルタと、該エアフィルタの後段に装備される中空糸膜式エアドライヤと、該中空糸膜式エアドライヤの後段に装備される減圧弁と、該減圧弁の後段に装備されるラストエアフィルタと、から成る手段を採る。
【0012】
かかる手段を採用することで、エアコンプレッサにより生成された圧縮空気は、エアタンクに一次的に貯留された後に冷凍式エアドライヤにより一次乾燥され、その後エアフィルタによりオイルミストや塵埃、摩耗金属粉、窒素酸化物といった異物が一次的に除去され、次いで中空糸膜式エアドライヤにより圧縮空気中に残存する水蒸気が取り除かれ、さらに減圧弁を介して所定圧力に減圧された後に中空糸膜式エアドライヤ乃至減圧弁にて発生した異物をラストエアフィルタにより取り除き、最終的に燃料電池の空気取入口へドライ且つクリーンな空気が送気される。
【0013】
また、本発明は、前記冷凍式エアドライヤと前記中空糸膜式エアドライヤとの中間に、特性の異なるエアフィルタが複数装備されて成る手段を採用し得る。
【0014】
さらに、本発明は、前記中空糸膜式エアドライヤと前記減圧弁との中間に、流量調整弁及び流量計が装備されて成る手段を採用し得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造によれば、空気を圧縮することで飽和水蒸気量を減少させると共に、冷凍式エアドライヤと中空糸膜式エアドライヤの二つのエアドライヤが装備されることによって、圧縮空気中に含有される水分を二重に取り除くことが可能であって、ドライな空気を生成し得ると共に、エアフィルタとラストエアフィルタの二段階で異物を除去し得るフィルタが装備されることによって、当初から圧縮空気中に存する塵埃や窒素酸化物といった異物だけでなく、各機器を介することで通過途中に含有され得る塵埃や摩耗金属粉、オイルミストといった異物をも取り除くことが可能であって、クリーンな空気を生成し、最終的にドライでクリーンな空気を燃料電池へ送気することが可能である、といった従来にない優れた効果を奏する。
【0016】
また、本発明にかかる燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造によれば、燃料電池がドライでクリーンな空気による発電を行うことで、水素との反応効率が向上すると共に、発電寿命も延命され、さらには、装置全体の耐久性の向上にも資し、メンテナンス性にも優れる、といった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明にかかる燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造の実施形態を示す説明図である。
図2】大気圧下における飽和水蒸気量を示す表である。
図3】大気圧下と加圧下における露点温度の比較・換算表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明にかかる燃料電池20に接続される圧縮空気圧回路構造は、エアコンプレッサ1により生成された圧縮空気について、エアタンク3に一次的に貯留された後に冷凍式エアドライヤ4により一次乾燥され、その後エアフィルタ6によりオイルミストや塵埃、摩耗金属粉、窒素酸化物といった異物が一次的に除去され、次いで中空糸膜式エアドライヤ7により圧縮空気中に残存する水蒸気が取り除かれ、さらに減圧弁11を介して所定圧力に減圧された後に中空糸膜式エアドライヤ7乃至減圧弁11にて発生した異物をラストエアフィルタにより取り除き、最終的に燃料電池20の空気取入口21へドライ且つクリーンな空気が送気されることを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる燃料電池20に接続される圧縮空気圧回路構造の実施形態、すなわち、構成と動作とを、図面に基づいて説明する。
【0019】
なお、本発明にかかる燃料電池20に接続される圧縮空気圧回路構造は、以下に述べる実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる機器や該機器の構造などに関して適宜変更することができるものである。
【0020】
先ず、本発明にかかる燃料電池20の空気取入口21に接続される圧縮空気圧回路構造の構成について説明する。図1は、本発明にかかる燃料電池20に接続される圧縮空気圧回路構造の実施形態を示す説明図である。
本発明にかかる燃料電池20に接続される圧縮空気圧回路構造は、エアコンプレッサ(空気圧縮機)1と、エアタンク3と、冷凍式エアドライヤ4と、エアフィルタ6と、中空糸膜式エアドライヤ7と、減圧弁11と、ラストエアフィルタ12と、で構成されている。
【0021】
エアタンク3は、圧縮空気を送気するエア配管13を介してエアコンプレッサ1の後段に装備され、冷凍式エアドライヤ4は同様にエア配管13を介してエアタンク3の後段に装備され、エアフィルタ6は同様にエア配管13を介して冷凍式エアドライヤ4の後段に装備され、中空糸膜式エアドライヤ7は同様にエア配管13を介してエアフィルタ6の後段に装備され、減圧弁11は同様にエア配管13を介して中空糸膜式エアドライヤ7の後段に装備され、ラストエアフィルタ12は同様にエア配管13を介して減圧弁11の後段に装備されている。
【0022】
エアコンプレッサ(空気圧縮機)1は、空気吸入口2から吸入した空気を圧縮して所定気圧以上の圧縮空気を生成する装置である。該エアコンプレッサ1にはアースが備えられ、エアコンプレッサ1の筐体の基準電位を得る目的やノイズ保護の目的で、直接もしくは電源線などと共に束ねられ最終的に大地に接続される。エアコンプレッサ1は、圧縮空気を生成するための構造によって、往復式や回転式、遠心式、軸流式など種々の方式が存在する。また、前記種々の方式においては、潤滑油を使用する給油タイプと、潤滑油を使用しないオイルフリータイプとがそれぞれ存在している。本発明で使用するエアコンプレッサ1の方式については、特に限定はなく、いずれの方式・構造のものでも使用することが可能である。
【0023】
エアタンク3は、エアコンプレッサ1により生成された圧縮空気を一時的に貯留するためのものであって、エア配管13を介してエアコンプレッサ1の後段に装備される。かかるエアタンク3を備えることで、エアコンプレッサ1の始動時や停止時における流体(圧縮空気)の水撃作用(ウォーターハンマー現象)の抑制に資し、後段機器の負荷軽減に資する。
【0024】
該エアタンク3には、図示の様に、ドレントラップ5を備える態様が好適である。該ドレントラップ5は、圧縮空気が冷却され、該圧縮空気に水蒸気の状態で含有される水分が凝縮されることで、エアタンク3内に発生するドレン水Dを排出するために備えられる。ドレントラップ5をエアタンク3の下部に備えて確実にドレン水Dを排出することで、滞留するドレン水Dにおける菌やウイルスの増殖を防止して臭気の発生・増大を抑制することができる。ドレントラップ5は、電磁式、フロート式、ディスク式などが考えられる。本発明で使用するドレントラップ5の種別については、特に限定されるものではない。
【0025】
冷凍式エアドライヤ4は、圧縮空気を乾燥させ水分を取り除くための機器であって、エア配管13を介してエアタンク3の後段に装備される。エアドライヤは、水分の除去方式により冷凍式や中空糸膜式、吸着式などが存在するが、ここでは冷凍式エアドライヤ4が採用される。該冷凍式エアドライヤ4は、冷媒の蒸発潜熱を利用して、圧縮空気を冷却し、含有水分を凝縮して除去するための装置であって、一般に繁用されており、比較的安価に導入することができる。
【0026】
該冷凍式エアドライヤ4には、図示の様に、ドレントラップ5が備えられている。該ドレントラップ5は、圧縮空気が冷却され、該圧縮空気に水蒸気の状態で含有される水分が凝縮されることで、冷凍式エアドライヤ4内に発生するドレン水Dを排出するために備えられる。ドレントラップ5を冷凍式エアドライヤ4の下部に備えて確実にドレン水Dを排出することで、滞留するドレン水Dにおける菌やウイルスの増殖を防止して臭気の発生・増大を抑制することができる。ドレントラップ5は、電磁式、フロート式、ディスク式などが考えられる。本発明で使用するドレントラップ5の種別については、特に限定されるものではない。
【0027】
エアフィルタ6は、圧縮空気中の異物を除去するための機器であって、エア配管13を介して冷凍式エアドライヤ4の後段に装備される。エアコンプレッサ1は、大気を原料として圧縮空気を生成するものであって、そもそも大気中には種々異物が存在することから、そのまま生成された圧縮空気中にも、かかる異物が存在する。圧縮空気中に存する異物の具体例としては、大気中に元来存在するものとして、塵埃やスラッジ、微生物、窒素酸化物などが挙げられる。また、エアコンプレッサ1が給油式の場合には、生成された圧縮空気中にオイルミストの混入が想定し得る。さらに、エアコンプレッサ1の往復運動やエア配管13の内壁から発生する摩耗金属粉が、圧縮空気中に混入することも想定される。これら異物は、後段機器並びに燃料電池20に対し、動作不良や故障の原因となったり、清掃・メンテナンスの頻度増大を招いたり、といった悪影響を及ぼしかねない。そこで、エアフィルタ6を装備することで、圧縮空気中に存在する異物を取り除き、クリーンな状態で圧縮空気を送気するものである。
【0028】
該エアフィルタ6の具体的構造については、特に限定するものではなく、例えば樹脂製若しくは紙製で網状乃至中空糸膜状のエアフィルタ、活性炭や油吸着材を包んだエアフィルタなどが用いられる。尚、構造の相違によりエアフィルタ6の特性は異なり、除去可能な異物の種類も異なってくる。したがって、塵埃やスラッジ、摩耗金属粉、微生物、オイルミスト、窒素酸化物など多様な異物を可能な限り圧縮空気中から除去すべく、特性の異なるエアフィルタ6を複数装備する態様が好適である。図面では、二機のエアフィルタ6を装備した場合について示しており、例えば、塵埃やスラッジ、摩耗金属粉、微生物などの異物を有効に除去し得るサイクロン方式のエアフィルタ6を前段に備え、後段には活性炭や油吸着材を有してオイルミストや窒素酸化物などの異物を有効に除去し得るエアフィルタ6を装備する態様が考え得る。
【0029】
中空糸膜式エアドライヤ7は、圧縮空気を乾燥させ水分を取り除くための機器であって、エア配管13を介してエアフィルタ6の後段に装備される。圧縮空気中の水分は、第一に冷凍式エアドライヤ4によって取り除かれることとなるが、それによっても未だ圧縮空気中の水分はゼロではなく、該圧縮空気の圧力下における飽和水蒸気量と同等程度の水蒸気量を含有する。そこで、中空糸膜式エアドライヤ7を介在させることで、圧縮空気中の水蒸気が極限まで取り除かれることとなる。尚、中空糸膜式エアドライヤ7にて取り除かれたドレン水は、パージ孔8から外部へ排出される。
【0030】
減圧弁11は、圧縮空気を所定圧力に減圧するための機器であって、エア配管13を介して中空糸膜式エアドライヤ7の後段に装備される。燃料電池20は、送気される空気の圧力が概ね0.4MPaより高い場合に、動作不良を起こし、最終的には動作停止となってしまう。したがって、概ね0.3MPa以下にまで圧縮空気を減圧した状態で燃料電池20に送気することを要し、そのために減圧弁11を介して圧縮空気を所定圧力(0.3MPa以下)まで減圧する。
【0031】
ところで、中空糸膜式エアドライヤ7と減圧弁11との中間に、図示の様に、流量調整弁9及び流量計10を装備する態様を採用し得る。
流量調整弁9は、エア配管13を流れる圧縮空気の流量を一定に保つためのバルブであり、バルブに入ってくる前の流体圧力と、バルブから出た後の流体圧力の差を検知し、絞り具合を調整することで流量を一定に保つもので、エア配管13を介して中空糸膜式エアドライヤ7の後段に装備される。前段の中空糸膜式エアドライヤ7における中空糸膜は、経時的に目詰まりを起こす可能性があり、それにより圧縮空気の圧力損失を増大させ流量を減少させるおそれがある。そこで、中空糸膜式エアドライヤ7の後段に流量調整弁9を装備することで、該中空糸膜式エアドライヤ7の不具合に対して一定の流量を保つように仕向けることが可能となる。
【0032】
流量計10は、エア配管13を流れる圧縮空気の流量を計測するもので、エア配管13を介して流量調整弁9の後段に装備される。該流量計10を装備することにより、中空糸膜式エアドライヤ7の不具合を検知し、且つ、流量調整弁9の調整に資する。
【0033】
ラストエアフィルタ12は、圧縮空気中の異物を除去するための機器であって、減圧弁11の後段に装備される。圧縮空気中の異物は、前段に存するエアフィルタ6でも一次的に取り除かれるが、各種機器やエア配管13を通過する過程でも発生し、そのまま異物が運ばれて最終的に燃料電池20に送られることで、該燃料電池20の動作不良や故障の原因となり、さらには、清掃・メンテナンスの頻度増大を招く可能性が想定される。そこで、圧縮空気が燃料電池20に取り入れられる直前で、かかる異物が除去されることが有効であり、そのため燃料電池20の前段にラストエアフィルタ12が装備される。
【0034】
かかるラストフィルタ12の具体的構造については、前段に存するエアフィルタ6と同様、特に限定するものではなく、例えば樹脂製若しくは紙製で網状乃至中空糸膜状のエアフィルタ、活性炭や油吸着材を包んだエアフィルタなどが用いられる。尚、各種機器やエア配管13を通過する過程で発生する異物の主なものは、塵埃や摩耗金属粉、オイルミストであるため、これらを除去するのに特化した構造を有するエアフィルタ、例えばサイクロン方式のエアフィルタを採用するのが好適である。
【0035】
エア配管13は、圧縮空気を送気するための中空管であって、上記各構成要素間及び後述の燃料電池20との間を接続するものである。該エア配管13の素材について特に限定はないが、例えば銅や鉄などの主に金属素材より成る略剛性の配管や、ゴム、ポリエチレン、塩ビ製の樹脂管あるいは炭素繊維やガラス繊維から成る繊維管など略柔軟性の配管で構成される。
【0036】
上記各構成要素から成る圧縮空気圧回路は、最終的に燃料電池20の空気取入口21に接続される。燃料電池20は、酸素と水素ガスとを水Wに変化させる反応によって電力24を発生させるもので、ラストエアフィルタ12の後段に装備される。前記反応において使用される酸素は、大気中に含まれるものであって本発明では圧縮空気圧回路を介して生成された圧縮空気に含まれる酸素が用いられる。すなわち、燃料電池20の空気取入口21には、圧縮空気が送気される。また、燃料供給口23からは水素ガスが送られ、酸素と水素ガスの化学反応によって、水Wと電力24を発生させる。前記反応に供される酸素が除かれたその余が窒素リッチガスであり、排気取出口22を介して外部へ放出される。また、前記反応により発生した水Wは、排水口25を介して外部へ排水される。
【0037】
次いで、本発明にかかる燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造の動作態様について説明する。尚、説明の便宜上、中空糸膜式エアドライヤ7と減圧弁11との中間に、流量調整弁9及び流量計10が装備された場合について説明する。これらが装備されていない場合については、当該部分を省略して解するものとする。
【0038】
エアコンプレッサ1は、空気吸入口2から空気である大気を吸気し、所定圧(例えば0.7MPa)へと昇圧して圧縮させる。大気には、水蒸気が含まれており、例えば気温40℃、湿度80%と仮定すると、図2に示す様に飽和水蒸気量は51.1g/立方メートルであって、水蒸気量は40.88g/立方メートルとなる。また大気には、異物(塵埃やスラッジ、微生物、窒素酸化物など)も含まれている。エアコンプレッサ1で製造された圧縮空気は、この段階では圧縮熱を帯びた状態となっている。
【0039】
エアコンプレッサ1により生成された圧縮空気は、エア配管13を通過してエアタンク3に送られ、該エアタンク3にて一次的に貯留される。このとき、エア配管13やエアタンク3の外部周囲温度によって圧縮空気は冷却され、それにより凝縮水であるドレン水Dが発生することが想定される。エア配管13で発生したドレン水Dは、圧縮空気と共にエアタンク3に送られ、ドレントラップ5により外部へ排出される。
【0040】
エアタンク3に一次的に貯留された圧縮空気は、その後エア配管13を通過して冷凍式エアドライヤ4に送られ、該冷凍式エアドライヤ4にて冷却による含有水分(水蒸気)の凝縮・除去が行われることで一次乾燥がなされる。上記仮定によれば、圧縮空気の圧力は0.7MPa、水蒸気量は40.88g/立方メートルであり、この圧縮空気を例えば圧力下温度10℃まで冷却する。このとき、図3に示す様に大気圧における露点温度は-17℃となり、その場合の飽和水蒸気量は図2に示す様に1.37g/立方メートルである。よって、この冷凍式エアドライヤ4を出る迄に、40.88-1.37=39.51g/立方メートルのドレン水Dが発生し、圧縮空気から取り除かれることとなる。相対湿度で換算すると、1.37÷40.88≒0.034、すなわち当初の3.4%にまで含有水分が減少された乾燥した圧縮空気が、この時点で生成されることとなる。尚、冷凍式エアドライヤ4で発生したドレン水Dは、ドレントラップ5により外部へ排出される。
【0041】
冷凍式エアドライヤ4を出た圧縮空気は、エア配管13を通過してエアフィルタ6に送られ、該エアフィルタ6にて圧縮空気中の塵埃やスラッジ、摩耗金属粉、微生物、オイルミスト、窒素酸化物などといった異物が一次的に除去される。
【0042】
エアフィルタ6を出た圧縮空気は、エア配管13を通過して中空糸膜式エアドライヤ7に送られ、中空糸膜による残存水蒸気の除去が行われることで二次乾燥がなされる。上記仮定によれば、既述のとおり未だ1.37g/立方メートルの含有水分が圧縮空気中に存在し、その含有水分を中空糸膜によりできる限り除去する。除去可能な水分量は、中空糸膜の精度によって異なってくるが、一般にドレン水Dが全く発生しなくなる経済的な露点温度は大気圧下で-30℃とされており、当該温度での飽和水蒸気量は0.448g/立方メートルであって、概ねその程度まで残存する含有水分量を減少させることが可能である。すなわち、中空糸膜により概ね0.922g/立方メートル程度の水分除去が可能であって、それにより1.37-0.922=0.448g/立方メートルの水分が圧縮空気中に残存する最終的な水蒸気量となる。相対湿度で換算すると、0.448÷40.88≒0.011、すなわち当初の1.1%にまで含有水分が減少された超乾燥状態の圧縮空気が、この時点で生成されることとなる。尚、中空糸膜式エアドライヤ7で取り除かれたドレン水は、パージ孔8から外部へ排出される。
【0043】
中空糸膜式エアドライヤ7出た圧縮空気は、エア配管13を通過して流量調整弁9にて一定の流量を保持した状態で、さらにエア配管13及び流量計10を通過し、その後減圧弁11へ送られる。中空糸膜式エアドライヤ7と減圧弁11との中間に、流量調整弁9及び流量計10を介在させることで、中空糸膜式エアドライヤ7の不具合検知や、中空糸膜による圧縮空気の圧力損失の補正に資する。
【0044】
減圧弁11へ送られた圧縮空気は、該減圧弁11により所定圧力に減圧される。燃料電池20は、概ね0.4MPaより高い圧力の空気が取り込まれると、動作不良や動作停止の起因となるため、減圧弁11にて概ね0.3MPa以下にまで圧縮空気を減圧する。このとき、上記仮定によれば、圧縮空気中の含有水分量は僅か0.448g/立方メートル程度であるため、減圧してもドレン水Dが発生することはない。
【0045】
減圧弁11を出た圧縮空気は、エア配管13を通過してラストエアフィルタ12に送られ、該ラストエアフィルタ12にて圧縮空気中の塵埃や摩耗金属粉、オイルミストなどの異物が二次的に除去される。前段に存するエアフィルタ6で一次的に異物が取り除かれた後も、各種機器やエア配管13を圧縮空気が通過する過程で、塵埃や摩耗金属粉、オイルミストなどの異物発生が想定されることから、燃料電池20に送られる最終段階にて、これら異物を除去するものである。
【0046】
以上の動作態様から成る圧縮空気圧回路構造を経て、圧縮空気は最終的に燃料電池20へ送られることとなる。すなわち、ラストエアフィルタ12を出た圧縮空気は、エア配管13を通過して空気取入口21から燃料電池20へ取り込まれる。
燃料電池20では、取り込まれた圧縮空気中の酸素と燃料供給口23から取り込まれた水素ガスとを反応させ、電力24と水Wを発生させる。圧縮空気から反応に供される酸素が除かれたその余は、排気取出口22を介して外部へ放出され、また、反応により発生した水Wは、排水口25を介して外部へ排水される。
【0047】
以上のとおり、本発明にかかる燃料電池20に接続される圧縮空気圧回路構造によれば、空気を圧縮することで飽和水蒸気量を減少させると共に、冷凍式エアドライヤ4と中空糸膜式エアドライヤ7の二つのエアドライヤが装備されることによって、圧縮空気中に含有される水分を二重に取り除いて極めてドライな空気を生成し得るため、そのドライな空気によって燃料電池20を作動させることで、反応効率が向上すると共に、発電寿命の延命化並びに耐久性の向上を実現することができる。
【0048】
また、本発明にかかる燃料電池20に接続される圧縮空気圧回路構造によれば、エアフィルタ6とラストエアフィルタ12の異物を除去し得るフィルタが二段階で装備されることによって、当初から圧縮空気中に存する塵埃や窒素酸化物といった異物だけでなく、各機器を介することで通過途中に含有され得る塵埃や摩耗金属粉、オイルミストといった異物をも取り除いて極めてクリーンな空気を生成し得るため、そのクリーンな空気によって燃料電池20を作動させることで、反応効率が向上すると共に、発電寿命の延命化並びに耐久性の向上を実現でき、さらにメンテナンス性にも優れた効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、「発明の効果」記載の通り、燃料電池における反応効率の向上、発電寿命の延命化、耐久性の向上、メンテナンス性の向上といった、多くの優れた効果を奏するものである。したがって、本発明にかかる「燃料電池に接続される圧縮空気圧回路構造」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0050】
1 エアコンプレッサ(空気圧縮機)
2 空気吸入口
3 エアタンク
4 冷凍式エアドライヤ
5 ドレントラップ
6 エアフィルタ
7 中空糸膜式エアドライヤ
8 パージ孔
9 流量調整弁
10 流量計
11 減圧弁
12 ラストエアフィルタ
13 エア配管
20 燃料電池
21 空気取入口
22 排気取出口
23 燃料供給口
24 電力
25 排水口
D ドレン水
W 水
図1
図2
図3