(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090221
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】電子部品付き樹脂筐体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202467
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 忠壮
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 潤
(72)【発明者】
【氏名】川島 永嗣
(72)【発明者】
【氏名】瀧西 徳勲
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA03
4F206AA29
4F206AA33
4F206AA42
4F206AA45
4F206AD07
4F206AD08
4F206AH37
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】 電気製品を小型化・薄型化し、アッセンブリを容易にする。
【解決手段】 本発明の電子部品付き樹脂筐体10は、樹脂製の筐体20Cと、筐体20Cの内面20Caに沿って配置されているベースフィルム31と、ベースフィルム31の少なくとも筐体20C側とは反対側の面に形成されている回路パターン層32と、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に回路パターン層32と接続されて実装されている電子部品33とを有し、筐体20Cに一体化している電子部品実装フィルム30と、電子部品実装フィルム30の電子部品33およびその周囲を覆う衝撃吸収層40と、を備え、電子部品実装フィルム30の回路パターン層32が電子部品33の実装された部分の周囲で非屈曲である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の筐体と、
前記筐体の内面に沿って配置されているベースフィルムと、前記ベースフィルムの少なくとも前記筐体側とは反対側の面に形成されている回路パターン層と、前記ベースフィルムの前記筐体側とは反対側の面に前記回路パターン層と接続されて実装されている電子部品とを有し、前記筐体に一体化している電子部品実装フィルムと、
前記電子部品実装フィルムの前記電子部品およびその周囲を覆う衝撃吸収層と、を備え、
前記電子部品実装フィルムの前記回路パターン層が前記電子部品の実装された部分の周囲で非屈曲である、電子部品付き樹脂筐体。
【請求項2】
前記衝撃吸収層が、耐熱温度が80℃以上で且つクッション性を示す反発弾性率が15~70%という特性の材料からなる、請求項1の電子部品付き樹脂筐体。
【請求項3】
前記特性の材料が、軟質ポリウレタンフォーム、シリコーン樹脂、ウレタンゴムのいずれかである、請求項2の電子部品付き樹脂筐体。
【請求項4】
前記衝撃吸収層が、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリアミド系のいずれかのホットメルトからなる、請求項1の電子部品付き樹脂筐体。
【請求項5】
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの少なくとも一方の面に形成されている回路パターン層と、前記ベースフィルムに前記回路パターン層と接続されて実装されている電子部品とを有している電子部品実装フィルムを用意し、
前記電子部品実装フィルムの前記電子部品を実装した面が第1型に面し、かつ、前記電子部品が前記電子部品およびその周囲を覆う衝撃吸収層とともに前記第1型のポケットを満たすように、前記電子部品実装フィルムを前記第1型にセットし、
前記第1型と第2型とを型締めして、前記第1型および前記電子部品実装フィルムと前記第2型との間にキャビティを形成し、
前記キャビティに溶融樹脂を射出して筐体を成形するとともに、前記電子部品実装フィルムの前記回路パターン層が前記電子部品の実装された部分の周囲で非屈曲である状態で、前記筐体の内面に沿って前記電子部品実装フィルムを一体させる、電子部品付き樹脂筐体の製造方法。
【請求項6】
前記電子部品実装フィルムの前記電子部品およびその周囲を前記衝撃吸収層で覆った後に、前記電子部品および前記衝撃吸収層が前記第1型の前記ポケットを満たすように、前記電子部品実装フィルムを前記第1型にセットする、請求項5の電子部品付き樹脂筐体の製造方法。
【請求項7】
予め前記衝撃吸収層を前記第1型の前記ポケットに設けた後、前記電子部品および前記衝撃吸収層が前記第1型の前記ポケットを満たすように、前記電子部品実装フィルムを前記第1型にセットする、請求項5の電子部品付き樹脂筐体の製造方法。
【請求項8】
前記電子部品実装フィルムを前記第1型にセットすると同時に、前記電子部品および前記衝撃吸収層が前記第1型の前記ポケットを満たすように、前記衝撃吸収層を前記第1型の前記ポケットに設ける、請求項5の電子部品付き樹脂筐体の製造方法。
【請求項9】
前記衝撃吸収層が、耐熱温度が80℃以上で且つクッション性を示す反発弾性率が15~70%という特性の材料からなる、請求項5~8の電子部品付き樹脂筐体の製造方法。
【請求項10】
前記特性の材料が、軟質ポリウレタンフォーム、シリコーン樹脂、ウレタンゴムのいずれかである、請求項9の電子部品付き樹脂筐体の製造方法。
【請求項11】
前記衝撃吸収層が、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリアミド系のいずれかのホットメルトからなる、請求項5~8の電子部品付き樹脂筐体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気製品を小型化・薄型化し、アッセンブリを容易にする電子部品付き樹脂筐体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気製品は、その筐体の内部に各種の電子部品が基板に実装されて内蔵されている。例えば、
図9は、従来技術の筐体と電子部品の配置の一例を示す部分拡大断面図である。
図9に示す電気製品はスマートウオッチであり、電子部品としてスピーカー53が内蔵されている。樹脂製の筐体50の内部には、電子部品実装基板55が筐体50から離れて固定されている。電子部品実装基板55は、ガラスエポキシなどからなる基板51の筐体50側の面に銅箔などをパターニングした回路パターン層52が形成され、回路パターン層52にスピーカー53が電気的に接続されている。また。筐体50のスピーカー53と重なる部分には、スピーカー穴50が設けられている。さらに筐体50の内面50aには、スピーカー53を塵や埃から保護するメッシュ部材54が粘着剤56にて貼合されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、電気製品の小型化・薄型化のニーズは常にあり、電子部品を収容する収容空間をさらに小さくすることが望まれる。また、電気製品のアッセンブリ時に、電子部品実装基板を筐体の内部に固定するネジ止めなどの工程が煩雑である。さらに、製品の外部空間に直接作用する電子部品(例えば、上記したスピーカー)の場合には、その機能効果を高めるために、電子部品を出来るだけ筐体に近づけて筐体の外面との距離を減らすことも望まれる。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決し、電気製品を小型化・薄型化し、アッセンブリを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の電子部品付き樹脂筐体は、筐体と電子部品実装フィルムと衝撃吸収層とを備える。筐体は、樹脂製である。電子部品実装フィルムは、筐体の内面に沿って配置されているベースフィルムと、ベースフィルムの少なくとも筐体側とは反対側の面に形成されている回路パターン層と、ベースフィルムの筐体側とは反対側の面に回路パターン層と接続されて実装されている電子部品とを有し、筐体に一体化している。衝撃吸収層は、電子部品実装フィルムの電子部品およびその周囲を覆う。電子部品実装フィルムのベースフィルムが電子部品の実装された部分の周囲で非屈曲である。
このような構成を備える電子部品付き樹脂筐体は、筐体の内面に沿って電子部品実装フィルムが一体化している。これにより、筐体によって電子部品をしっかりと固定できるので、別途基板が不要となり、電子部品を収容する収容空間が小さくて済む。したがって、電気製品を小型化・薄型化できる。また、ネジ止めなどの煩雑な工程も不要となるので、アッセンブリも容易である。さらに、電子部品と筐体の外面との距離を減らして、電気製品の外部空間に電子部品が直接作用する機能効果を高めることができる。
【0006】
また、電子部品付き樹脂筐体は、電子部品がベースフィルムの筐体側とは反対側の面に回路パターン層と接続されて実装されており、かつ、電子部品実装フィルムのベースフィルムが電子部品の実装された部分の周囲で非屈曲である。すなわち、電子部品は、筐体内に埋まっていない。これにより、筐体の電子部品実装フィルムとの一体成形時に、電子部品が溶融樹脂の熱圧を側面方向から受けることがなく、電子部品の位置ずれや破損を防ぐことができる。また、電子部品実装フィルムのベースフィルムに設けられた回路パターン層が電子部品の側面に沿うことによる屈曲をしないので、回路パターン層の断線を抑制できる。また、電子部品が筐体内に埋まっていないので、電子部品のリペアも容易である。
【0007】
さらに、電子部品付き樹脂筐体は、衝撃吸収層が電子部品実装フィルムの電子部品およびその周囲を覆っている。これにより、筐体の電子部品実装フィルムとの一体成形時に、電子部品を収納する金型のポケットと電子部品との隙間を無くせるので、隙間に起因して電子部品実装フィルムのベースフィルムおよび回路パターン層が屈曲しない。すなわち回路パターン層の断線を抑制できる。
【0008】
本発明の電子部品付き樹脂筐体の製造方法は、電子部品実装フィルムを用意し、電子部品実装フィルムを第1型にセットし、第1型と第2型とを型締めしてキャビティを形成し、キャビティに溶融樹脂を射出して筐体を成形するとともに、筐体の内面に沿って電子部品実装フィルムを一体させる。電子部品実装フィルムは、ベースフィルムと、ベースフィルムの少なくとも一方の面に形成されている回路パターン層と、ベースフィルムに回路パターン層と接続されて実装されている電子部品とを有している。電子部品実装フィルムは、第1型へのセット時に、電子部品を実装した面が第1型に面している。第1型は、ポケットを有する。第1型のポケットは、電子部品実装フィルムのセット時に、電子部品が電子部品およびその周囲を覆う衝撃吸収層とともに満たす。キャビティは、第1型および電子部品実装フィルムと第2型との間に形成される。一体成形時、電子部品実装フィルムのベースフィルムが電子部品の実装された部分の周囲で非屈曲である。
このような構成を備える電子部品付き樹脂筐体の製造方法は、筐体の内面に沿って電子部品実装フィルムを一体化する。これにより、筐体によって電子部品をしっかりと固定できるので、別途基板が不要となり、電子部品を収容する収容空間が小さくて済む。したがって、電気製品を小型化・薄型化できる。また、ネジ止めなどの煩雑な工程も不要となるので、アッセンブリも容易である。さらに、電子部品と筐体の外面との距離を減らして、電気製品の外部空間に電子部品が直接作用する効果を高めることができる。
【0009】
また、電子部品付き樹脂筐体は、電子部品が第1型のポケットに収納された状態で一体成形が行なわれる。これにより、電子部品が溶融樹脂の熱圧を側面方向から受けることがなく、電子部品の位置ずれや破損を防ぐことができる。また、電子部品実装フィルムのベースフィルムに設けられた回路パターン層が電子部品の側面に沿うことによる屈曲をしないので、回路パターン層断線を抑制できる。また、電子部品が筐体内に埋まらないので、電子部品のリペアも容易である。
【0010】
さらに、電子部品付き樹脂筐体は、衝撃吸収層が電子部品実装フィルムの電子部品およびその周囲を覆っている。これにより、筐体の電子部品実装フィルムとの一体成形時に、電子部品を収納する金型のポケットと電子部品との隙間を無くせるので、隙間に起因して電子部品実装フィルムのベースフィルムおよび回路パターン層が屈曲しない。すなわち回路パターン層の断線を抑制できる。
なお、電子部品実装フィルムの電子部品およびその周囲を衝撃吸収層で覆った後に、電子部品実装フィルムを第1型にセットすることができる、また、予め衝撃吸収層を前記第1型の前記ポケットに設けた後に、電子部品実装フィルムを第1型にセットしてもよい。さらに、電子部品実装フィルムを第1型にセットすると同時に、衝撃吸収層を前第1型のポケットに設けてもよい。
【0011】
また、上記各構成において、衝撃吸収層は、耐熱温度が80℃以上で且つクッション性を示す反発弾性率が15~70%という特性の材料からなってもよい。この特性を持つ材料が、軟質ポリウレタンフォーム、シリコーン樹脂、ウレタンゴムのいずれかであってもよい。
また、上記各構成において、衝撃吸収層が、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリアミド系のいずれかのホットメルトからなってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子部品付き樹脂筐体は、電気製品を小型化・薄型化し、アッセンブリを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体が適用されるスマートウオッチの一例を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の分解斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の部分拡大断面図(
図1のA-A線断面)。
【
図4】電子部品実装フィルムを第1型にセットする前の状態の一例を示す部分拡大断面図。
【
図5】電子部品実装フィルムを第1型にセットした状態の一例を示す部分拡大断面図。
【
図6】溶融樹脂をキャビティへ射出している状態の一例を示す部分拡大断面図。
【
図7】電子部品実装フィルムを第1型にセットする前の状態の別の例を示す部分拡大断面図(第2実施形態)。
【
図8】電子部品実装フィルムを第1型にセットした状態の別の例を示す部分拡大断面図(第2実施形態)。
【
図9】従来技術に係る筐体と電子部品の配置の一例を示す部分拡大断面図。
【
図10】スピーカーを収納するポケットが無い場合を示す部分拡大断面図。
【
図11】衝撃吸収層を設けずにポケットに電子部品を収納した場合を示す部分拡大断面図。
【
図12】電子部品実装フィルムを第1型にセットする前の状態の別の例を示す部分拡大断面図(第3実施形態)。
【
図13】電子部品実装フィルムを第1型にセットした状態の別の例を示す部分拡大断面図(第3実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体およびその製造方法について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体が取り付けられているスマートウオッチの一例を示す斜視図である。
図1に示されているスマートウオッチ60は、大画面搭載で小型化・薄型化のニーズが常にあり、本発明の適用される電気製品に適したものである。なお、本実施形態ではスマートウオッチ60が本発明の適用される電気製品の一例であるが、本発明が適用される電気製品はスマートウオッチ60に限られるものではない。
スマートウオッチ60の本体は、表示パネル65の表示面とは反対側の面および側面を覆う形で配される筐体を備えている。
図1に示す例では、底面部を構成する筐体20Aと、C字状の枠を構成する筐体20Bと、筐体20Bの両端間に設けられて枠を構成しスピーカーを備えた電子部品付き樹脂筐体10の3つの筐体を組み合わせている。このうちスピーカーを備えた電子部品付き樹脂筐体10が、本発明の第1実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体である。
【0015】
(1)電子部品付き樹脂筐体10の概要
電子部品付き樹脂筐体10は、インサート成形によって成形されるものであって、
図2および
図3に示されているように、熱可塑性樹脂からなる筐体20Cと、電子部品実装フィルム30および衝撃吸収層40とが完全に一体化されたスマートウオッチ60の部品である。
【0016】
(2)筐体20C
筐体20Cは、細長い上面部20C1と細長い側面部20C2とを有する断面L字状の樹脂製成形品である。側面部20C2は、長手方向中央付付近に貫通したスピーカー穴20CHを有している。
【0017】
筐体20Cの材料としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂若しくはAS樹脂などの汎用の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。それ以外に、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、エンジニアリング樹脂(ポリスルホンフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート系樹脂など)、ポリアミド系樹脂、又はウレタン系、ポリエステル系若しくはスチレン系のエラストマーを成形体21の材料として使用することができる。また、天然ゴムや合成ゴムを成形体21の材料として用いることができる。筐体20Cには、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加することもできる。
また、筐体20Cは着色されていてもよいし、筐体20Cの外面が加飾層で被覆されていてもよい。また、その両方であってもよい。
【0018】
(3)電子部品実装フィルム30
図2および
図3には、電子部品実装フィルム30の構造が示されている。
電子部品実装フィルム30は、ベースフィルム31と、回路パターン層32と、スピーカー33(電子部品の例)と、メッシュ部材34とを備えている。
【0019】
(3-1)ベースフィルム31
ベースフィルム31は、筐体20Cの側面部20C2に沿って内面20Ca側に配置されている。
ベースフィルム31が配置される筐体20Cの側面部20C2にはスピーカー穴20CHが設けられているが、ベースフィルム31と筐体20Cのスピーカー穴20CHとの間にはメッシュ部材34が介在するため、ベースフィルム31はスピーカー穴20CHから露出しない。したがって、ベースフィルム31は透明・不透明を問わない。
ベースフィルム31の材料は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、スチレン樹脂若しくはABS樹脂からなる樹脂フィルム、アクリル樹脂とABS樹脂の多層フィルム、又はアクリル樹脂とポリカーボネート樹脂の多層フィルムから選択される。ベースフィルム31の厚さは、例えば15μm~400μmの範囲から選択される。このように撓みやすい厚みであるので、この状態で筐体20Cの内部に配置するだけでは位置が安定しない。電子部品実装フィルム30を筐体20Cと一体化することで電子部品33をしっかり固定できる。
【0020】
(3-2)回路パターン層32
回路パターン層32は、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に形成される。
回路パターン層32は、銅箔をエッチングして形成されるか、導電性インキを厚膜印刷で印刷して形成される。回路パターン層32の厚さは、例えば1μm~30μmである。導電性インキは、導電性フィラーとバインダーとを含んでいる。導電性フィラーとしては、例えば、導電性材料の粉末や非導電性粒子の表面に金属をメッキした導電性粉末が使用できる。導電性材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、カーボンおよびグラファイトが挙げられる。金属をメッキした導電性粉末としては、例えば、ウレタン粒子やシリカ粒子の表面に銅、ニッケルあるいは銀をメッキした導電性粉末が挙げられる。また、バインダーとしては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・マレイン酸共重合樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂にロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂および石油樹脂等の熱により粘着性を発現するタッキファイヤーを配合して使用することができる。このインキに用いられる溶剤は、例えば、厚膜印刷に適合するものである。厚膜印刷として、例えば、スクリーン印刷およびインクジェット印刷が挙げられる。バインダーには、熱可塑性樹脂以外にも、例えば、エポキシ系、ウレタン系あるいはアクリル系の熱硬化性樹脂や紫外線硬化型樹脂を用いることも可能である。回路パターン層32は、以上のような材料および厚みで構成されるので、屈曲することで断線が生じやすい。
【0021】
(3-3)スピーカー33
スピーカー33は、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に回路パターン層32と接続されて実装されている。
スピーカー33の音波発生方向は、筐体20C側である。そのため、ベースフィルム31には、背後のスピーカー33からの音波を透過しやすいように貫通穴31Hが設けられている。
スピーカー33は、モバイル機器などに搭載される小型で薄型のスピーカーを用いる。また、スピーカー33は、半田付け、導電性接着剤ペーストの塗布硬化または異方性導電性ペーストでの圧着にて実装される。
【0022】
(3-4)メッシュ部材34
メッシュ部材34は、ベースフィルム31の筐体20C側、すなわちスピーカー33が実装された面とは反対側の面に、少なくともベースフィルム31の貫通穴31Hを覆うように接着されているシートである。また、美観の点から筐体20Cのスピーカー穴を覆うように配置されている。
メッシュ部材34は、スピーカー穴2CHおよび貫通穴31Hを通じて、スマートウオッチ60のスピーカー33に埃や塵などが入り込んでしまうのを抑制する。
メッシュ部材34の材料は、ニッケル、銅、鉄、アルミニウム、チタンなどの金属およびその合金(例えば、モネル、鋼、黄銅、丹銅、リン青銅、ハステロイ(米ヘインズ社商標)、インコネル(スペシャルメタルズ社商標)、ニクロムなど)の他、アクリル樹脂、ナイロン(デュポン社商標)、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン(デュポン社登録商標)などの樹脂を用いることができる。また、メッシュ部材34は織物であってもよい。なお、メッシュ部材34の孔は、音波を不要に遮らなければ孔の形状、配列は問わない。例えば、複数の四角形などの多角形状や円形状の孔が配列されていてもよいし、複数のスリット状の孔であってもよい。さらに、防水のために、撥水加工がされていてもよい。
【0023】
(4)衝撃吸収層40
衝撃吸収層40は、電子部品実装フィルム30のスピーカー33およびその周囲を覆うように配置されている。
衝撃吸収層40は、後述する筐体20Cと電子部品実装フィルム30とを一体化する製造工程において、電子部品実装フィルム30の回路パターン層32が電子部品の実装された部分の周囲で非屈曲を維持できるように、自らが形状変化するものである。
衝撃吸収層40の材料は、例えば、1)優れた耐熱性とクッション性を有する材料、2)ホットメルト材料などを用いることができる。
【0024】
上記1)の優れた耐熱性とクッション性を有する材料は、耐熱温度が80℃以上で且つクッション性を示す反発弾性率が15~70%という特性を持つ材料である。材料の耐熱温度が80℃に満たないと、インサート成形中の金型温度に耐えられず、クッション性を失ってしまう。反発弾性率が70%を超えると、電子部品330をポケット110内に納めるように圧縮変形が出来ず、反発弾性率が15%に満たないとベースフィルム31が非屈曲となるように電子部品33を支えることが出来なくなる。なお、上記1)の材料は、そのへたり度合いを表す繰り返し圧縮残留ひずみが20%以下であるのが好ましい。
このような特性を持つ材料は、具体的には、軟質ポリウレタンフォームなどのプラスチック発泡体、シリコーン樹脂、ウレタンゴムなどのゴムおよび各種のエラストマーなどを用いることができる。エラストマーとしては、例えば、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマーエステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、アミド系エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、軟質ポリウレタンフォーム、シリコーン樹脂、ウレタンゴムがとくに好ましい。
がとくに好ましい。
【0025】
上記2)のホットメルト材料は、熱可塑性樹脂を主成分とした常温で固形材料であり、加熱により低融点で液化し、冷却により固化する材料である。本発明においては、筐体20Cを成形する際の溶融樹脂射出時の溶融樹脂の温度によって軟化し、冷却固化時の金型温度で再び固化する材料でもある。具体的には、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系のものを用いることができる。これらの中でもポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリアミド系のホットメルトがとくに好ましい。
【0026】
(5)電子部品付き樹脂筐体10の製造
電子部品付き樹脂筐体10の製造方法の一例について
図4~
図6を用いて説明する。
【0027】
まず、
図4に示すように、電子部品実装フィルム30は、スピーカー33およびその周囲を衝撃吸収層40で覆った状態で、筐体20Cを成形するための第1型100と第2型200(図示せず)との間に挿入される。このとき、電子部品実装フィルム30は、スピーカー33を実装した面が第1型100に面している。
【0028】
第1型100には、スピーカー33を収納するするポケット110が設けられている。これにより、スピーカー33を成形後に筐体20C内に埋まらせないようにすることができる。仮に第1型100にポケット110が設けられていない平滑面の場合、スピーカー33のベースフィルム31側とは反対側の面がその周囲と面一となるように成形される(
図10参照)。すなわち、スピーカー33が筐体20C内に埋まる。この場合、スピーカー33が溶融樹脂300の熱圧を側面方向から受け、スピーカー33の位置ずれや破損が生じるおそれがある。対策として、熱圧を避けるカバーを設けることも考えられるが、スピーカー33の機能を阻害してしまう。また、電子部品実装フィルム30のベースフィルム31および回路パターン層32がスピーカー33の厚みHの分だけ屈曲することになるため、回路パターン層32の断線するおそれが生じる。さらに、スピーカー33が筐体20C内に埋まると、スピーカー33のリペアも出来ない。
【0029】
第1型100のポケット110のサイズは、ポケット110に収納されるスピーカー33のサイズよりも大きめに形成される。ポケット110の寸法をスピーカー33と同一サイズにすると、スピーカー33をポケット110に嵌め込み難く、また成形後にスピーカー33をポケット110から取り出し難いからである。ポケット110の寸法をスピーカー33と同一サイズのまま強引に嵌め込んだり、強引に取り出したりすれば、スピーカー33が破損するおそれがある。さらに、電子部品付き樹脂筐体10におけるスピーカー33の実装には、水平方向および垂直方向で微小な実装誤差もあることもポケット110のサイズを大きめにする理由のひとつである。
【0030】
また、第1型100の電子部品実装フィルム30と対向する面には、複数の吸引孔120が設けられている。これにより、真空吸引を行なうことで、電子部品実装フィルム30を第1型100に吸着固定できる。
【0031】
一方、電子部品実装フィルム30は、
図4に示すように、第1型100と第2型200(図示せず)との間に挿入されたとき、スピーカー33およびその周囲が衝撃吸収層40で覆われている。
電子部品実装フィルム30に衝撃吸収層40を形成する方法としては、1)の優れた耐熱性とクッション性を有する材料からなる衝撃吸収層40の場合、ディスペンス法や、ブロック削り出しや成形したものを貼合する方法などが挙げられる。成形物の貼合の場合、成形物はシート状であってもよい。また、2)のホットメルト材料からなる衝撃吸収層40の場合、ポッティング法、シート状物を貼合する方法、低圧封止成形法(LPM:Low Pressure Molding)などが挙げられる。とくに、低コストで生産性に優れたLPMを用いるのが好ましい。
【0032】
その後、
図5に示すように、衝撃吸収層40が設けられた電子部品実装フィルム30は、第1型100にセットされる。このとき、スピーカー33が、衝撃吸収層40とともに第1型100のポケット110を満たすように、ポケット110内に収納される。すなわち、ポケット110内には隙間が無い状態である。
なお、
図5に示す例では、電子部品実装フィルム30に衝撃吸収層40で覆われていない部分が衝撃吸収層40の厚みによって第1型100から僅かに浮いているが、第1型100に密着していてもよい。いずれにしろ、衝撃吸収層40がクッション性を有する材料の場合は、第1型100の電子部品実装フィルム30と対向する面に設けられた複数の吸引孔120による真空吸引によって電子部品実装フィルム30を型締め前に吸着固定するので、電子部品実装フィルム30が第1型100から僅かに浮いたとしても衝撃吸収層40の圧縮とともに第1型100に密着することになる。また、衝撃吸収層40がホットメルト材料の場合も、電子部品実装フィルム30が第1型100から僅かに浮いたとしても後述する溶融樹脂300の射出時の衝撃吸収層40の軟化により、衝撃吸収層40の圧縮とともに第1型100に密着することになる。
【0033】
図6には、第1型100と第2型200が閉じた状態が示されている。
第1型100および電子部品実装フィルム30と第2型200との間にキャビティ250が形成されている。第2型200には、電子部品実装フィルム30のメッシュ部材34に対向して突出したピン210が設けられている。ピン210は、成形品20Cのスピーカー穴20CHを形成するためのものである。
第1型100のポケット110内にはクッション性のある衝撃吸収層40があるため、第2型のピン210の型締め位置で、ピン210の先端面に対して電子部品実装フィルム30のポケット110を覆う部分全体が平行な状態で接する。すなわち、電子部品実装フィルム30の回路パターン層32がスピーカー33の実装された部分の周囲で非屈曲の状態となる。
【0034】
仮に第1型100のポケット110にスピーカー33のみが収納されて衝撃吸収層40が存在しない場合、スピーカー33のベースフィルム31側とは反対側の面がポケット110の底面に接触するように成形される(
図11参照)。したがって、前述の実装誤差によってスピーカー33の実装高さH<ポケット110の深さDとなると(
図11参照)、電子部品実装フィルム30のベースフィルム31および回路パターン層32がスピーカー33の実装高さHとポケット110の深さDの差異の分だけ屈曲することになるため、回路パターン層32の断線するおそれが生じる。
本発明のように、第1型100のポケット110を満たすようにクッション性のある衝撃吸収層40があれば、電子部品実装フィルム30のベースフィルム31および回路パターン層32が
図11のように屈曲することがなく、上記非屈曲の状態を維持できる。
【0035】
回路パターン層32がスピーカー33の実装された部分の周囲で非屈曲の状態で、
図6に示されているように溶融樹脂300がキャビティ250に射出されて、筐体20Cが成形される。そして、溶融樹脂300が冷えて固まるときに、溶融樹脂300が固まって成形される筐体20Cと電子部品実装フィルム30とが完全に一体化する。溶融樹脂300の材料は、前述した筐体20Cの材料の通りであり、融点以上の温度で溶融した状態で射出される。
【0036】
次に、第1型100と第2型200の型開きが行なわれる。電子部品付き樹脂筐体10は、例えば、第2型200より突き出されるエジェクタピン(図示せず)によって第2型200から外され、進入した取り出しロボット(図示せず)に保持されて取り出される。
【0037】
(6)変形例
(6-1)変形例1
上記第1実施形態では、回路パターン層32は、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面のみに形成されている場合を図示して説明したが、回路パターン層32の形成の仕方はこれに限定されない。例えば、回路パターン層32は、ベースフィルム31の両面に形成されていてもよい。
なお、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に形成され、スピーカー33と電気的に接続される回路パターン層32が、スルーホールを介してベースフィルム31の筐体20C側の面まで引き回されていてもよい。このとき、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面においては、回路パターン層32は、最短の場合はスピーカー33を実装するためのランドだけで構成されていてもよい。
【0038】
(6-2)変形例2
上記第1実施形態では、電子部品実装フィルム30は、ベースフィルム31の筐体20C側の面が筐体20Cと直接一体化している場合を図示して説明したが、電子部品実装フィルム30と筐体20Cとの一体化はこれに限定されない。例えば、電子部品実装フィルム30と筐体20Cとの間に、接着層が介在していてもよい。
接着層5としては接着剤や接着フィルムを用いることができる。接着剤としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレンブチルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などを用いることができる。接着層などの形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することができる。また、接着層として、接着フィルムを電子部品実装フィルム30にラミネートして用いることもできる。接着フィルムは、たとえば未延伸ポリプロピレンフィルムを用い、ドライラミネート方式にて積層することができる。
【0039】
(6-3)変形例3
上記第1実施形態では、電子部品実装フィルム30は、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に形成されている回路パターン層32が露出している場合を図示して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ベースフィルム31の筐体20C側とは反対側の面に形成されている回路パターン層32が、少なくともスピーカー33を実装するために必要な領域を除いて、カバーフィルムで覆われていてもよい。なお、スピーカー33を実装するために必要は領域とは、スピーカー33およびその周辺でもよいし、スピーカー33との接続領域だけでもよい。また、スピーカー33を実装するために必要な領域以外にも、例えば、他の端子部も露出させることができる。
変形例3において、カバーフィルムは、回路パターン層32の一部を除いて回路パターン層32が外部に露出しないように接着剤により回路パターン層32を覆って貼着されている。カバーフィルムは、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルフィルムなどで形成されている。
また、回路パターン層32がベースフィルム31の両面に形成されていている場合には、筐体20C側の回路パターン層32が、カバーフィルムで覆われていてもよい。また、両面に形成されている回路パターン層32のいずれもが、カバーフィルムで覆われていてもよい。
なお、筐体20C側の回路パターン層32をカバーフィルムで覆う場合、筐体20Cとの一体化を強固にするために、変形例2で述べた接着層を設けるのが好ましい。
【0040】
(6-4)変形例4
上記第1実施形態では、筐体20Cと電子部品実装フィルム30とが完全に一体化された場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電子部品実装フィルム30のスピーカー33が筐体20Cのスピーカー穴20CHに対して正確な位置で固定されるのであれば、電子部品実装フィルム30の一部が筐体20Cと一体化していなくてもよい。
一例として、電子部品実装フィルム30の一部が、回路パターン層32を有して筐体20Cの内面20Caから離れて自由となっていてもよい。すなわち、電子部品実装フィルム30の一部を、FPC(Flexible printed circuits)として機能させることもできる。この場合、電子部品付き樹脂筐体10の製造時に、第1型100に電子部品実装フィルム30の筐体20Cから自由となる部分を収納させるようにする。
【0041】
(6-5)変形例5
上記第1実施形態では、電子部品付き樹脂筐体10に電子部品としてスピーカー33を実装する場合について説明したが、実装する電子部品はこれに限定されない。例えば、電子部品としてマイクを実装してもよい。この場合、筐体20Cのスピーカー穴20CHは、マイク穴となる。また、電子部品としてIRセンサやLEDを実装してもよいし、その他の電子部品を実装してもよい。
【0042】
(6-6)変形例6
上記第1実施形態では、電子部品付き樹脂筐体10に筐体20Cのスピーカー穴20CHやスピーカー穴20CHを覆うメッシュ部材34を設ける場合について説明したが、これらを有する構成に限定されない。スピーカー33やマイク以外の電子部品を実装する場合、音波を透過させるための経路は不要である。例えば、電子部品がIRセンサやLEDの場合、その表面を光透過可能な筐体20Cで完全に被覆してもよい。
(6-7)変形例7
上記第1実施形態では、電子部品付き樹脂筐体10が組み込まれた電気製品はスマートウオッチ60であったが、本発明が適用される電気製品はスマートウオッチ60に限られるものではない。例えば、スマートグラス、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン、ゲーム機、その他の各種家電製品や自動車内装品などであってもよい。したがって、筐体20Cの形状も第1実施形態の形状に限定されない。
【0043】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の製造方法について、
図7~
図8を用いて説明する。第2実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の製造方法が第1実施形態の電子部品付き樹脂筐体の製造方法と異なる点は、衝撃吸収層40が第1型100のポケット110に予め配置されている点である。
【0044】
第2実施形態において、電子部品実装フィルム30は、
図7に示すように、第1型100と第2型200(図示せず)との間に挿入されたとき、スピーカー33およびその周囲は衝撃吸収層40で覆われておらず、衝撃吸収層40は、予め第1型100のポケット110内に設けられている。
第1型100のポケット110内に衝撃吸収層40を形成する方法としては、1)の優れた耐熱性とクッション性を有する材料からなる衝撃吸収層40の場合、ブロック削り出しや成形したものに接着層を形成し、接着層形成面が露出するようにポケット110内に配置する方法などが挙げられる。接着層の形成された成形物の場合、成形物はシート状であってもよい。また、2)のホットメルト材料からなる衝撃吸収層40の場合、ポッティング法、シート状物をポケット110内に配置する方法、低圧封止成形法などが挙げられる。また、衝撃吸収層40のスピーカー33側には、スピーカー33の底面が合致するように凹部を設けてもよい。この場合、電子部品実装フィルム30のセットの際に、スピーカー33と衝撃吸収層40との間に隙間が生じにくい。
【0045】
その後、
図8に示すように、電子部品実装フィルム30は、衝撃吸収層40が設けられた第1型100にセットされる。このとき、第1実施形態と同様に、スピーカー33が、衝撃吸収層40とともに第1型100のポケット110を満たすように、ポケット110内に収納される。すなわち、ポケット110内には隙間が無い状態である。
なお、
図8に示す例では、電子部品実装フィルム30に衝撃吸収層40で覆われていない部分が衝撃吸収層40の厚みによって第1型100から僅かに浮いているが、第1型100に密着していてもよい。いずれにしろ、衝撃吸収層40がクッション性を有する材料の場合は、第1型100の電子部品実装フィルム30と対向する面に設けられた複数の吸引孔120による真空吸引によって電子部品実装フィルム30を型締め前に吸着固定するので、電子部品実装フィルム30が第1型100から僅かに浮いたとしても衝撃吸収層40の圧縮とともに第1型100に密着することになる。また、衝撃吸収層40がホットメルト材料の場合も、電子部品実装フィルム30が第1型100から僅かに浮いたとしても溶融樹脂300の射出時の衝撃吸収層40の軟化により、衝撃吸収層40の圧縮とともに第1型100に密着することになる。
【0046】
型締め後の製造工程は、第1実施形態で説明した電子部品付き樹脂筐体10の製造工程(
図6参照)と同様に構成することができる。
また、第1実施形態で説明した各変化例も、第2実施形態に適用できる。
【0047】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の製造方法について、
図12~
図13を用いて説明する。第3実施形態に係る電子部品付き樹脂筐体の製造方法が第1、第2実施形態の電子部品付き樹脂筐体の製造方法と異なる点は、電子部品実装フィルム30を第1型100にセットすると同時に、衝撃吸収層40を第1型100のポケット110に設ける点である。
【0048】
第3実施形態において、電子部品実装フィルム30は、
図12に示すように、第1型100と第2型200(図示せず)との間に挿入されたとき、スピーカー33およびその周囲は衝撃吸収層40で覆われていない。
一方、この段階では、第1型100のポケット110内にも衝撃吸収層40は設けられていない。
【0049】
その後、
図13に示すように、電子部品実装フィルム30が第1型100にセットされると同時に、衝撃吸収層40が第1型100のポケット110に設けられる。このとき、第1実施形態と同様に、スピーカー33が、衝撃吸収層40とともに第1型100のポケット110を満たすように、ポケット110内に収納される。すなわち、ポケット110内には隙間が無い状態である。
【0050】
第3実施形態において、第1型100のポケット110内に衝撃吸収層40を形成する方法としては、
図13に示すように、第1型100にポケット110に注入口130を設け、前述した1)の優れた耐熱性とクッション性を有する材料を注入口130から注入する方法などが挙げられる。
なお、
図13に示す例では、電子部品実装フィルム30に衝撃吸収層40で覆われていない部分が衝撃吸収層40を構成する材料の注入により第1型100から僅かに浮いているが、第1型100に密着していてもよい。いずれにしろ、衝撃吸収層40がクッション性を有する材料の場合は、第1型100の電子部品実装フィルム30と対向する面に設けられた複数の吸引孔120による真空吸引によって電子部品実装フィルム30を型締め前に吸着固定するので、電子部品実装フィルム30が第1型100から僅かに浮いたとしても衝撃吸収層40の圧縮とともに第1型100に密着することになる。また、衝撃吸収層40がホットメルト材料の場合も、電子部品実装フィルム30が第1型100から僅かに浮いたとしても溶融樹脂300の射出時の衝撃吸収層40の軟化により、衝撃吸収層40の圧縮とともに第1型100に密着することになる。
【0051】
型締め後の製造工程は、第1実施形態で説明した電子部品付き樹脂筐体10の製造工程(
図6参照)と同様に構成することができる。
また、第1実施形態で説明した各変化例も、第3実施形態に適用できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるもの
ではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書
かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 電子部品付き樹脂筐体
20A,20B,20C,50 筐体
20Ca,50a 内面
20CH,50H スピーカー穴
30 電子部品実装フィルム
31 ベースフィルム
31H 貫通穴
32,52 回路パターン層
33,53 スピーカー(電子部品の例)
34,54 メッシュ部材
40 衝撃吸収層
51 基板
55 電子部品実装基板
56 粘着剤
60 スマートウオッチ
65 表示パネル
100 第1型
110 ポケット
120 吸引孔
130 注入口
200 第2型
210 ピン
250 キャビティ
300 溶融樹脂