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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090226
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】運転者適性評価システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20220610BHJP
   G09B 9/04 20060101ALI20220610BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G09B9/04 A
G09B19/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202473
(22)【出願日】2020-12-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業、「自動車免許自主返納支援のための高齢ドライバーの耐心性運動制御能力の可視化」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】520481002
【氏名又は名称】公立大学法人公立小松大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】梶原 祐輔
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA21
5H181BB20
5H181CC04
5H181FF32
5H181MB12
(57)【要約】
【課題】車両運転者の対応力を判断する運転者適性評価システムの提供を目的とする。
【解決手段】車両を運転する運転者としての適性を評価するための運転者適性評価システムであって、所定の条件で運転者の左足の動きデータを取得する動きデータ取得手段と、前記動きデータに基づいて前記運転者の対応力を判断する判断手段を備えることを特徴とする運転者適性評価システム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する運転者としての適性を評価するための運転者適性評価システムであって、
所定の条件で運転者の左足の動きデータを取得する動きデータ取得手段と、
前記動きデータに基づいて前記運転者の対応力を判断する判断手段を備えることを特徴とする運転者適性評価システム。
【請求項2】
前記所定の条件が運転者に心理的負荷を付与する条件であることを特徴とする請求項1に記載の運転者適性評価システム。
【請求項3】
前記動きデータが前記所定の条件で所定のコースを運転する運転者の左足首の動きデータであることを特徴とする請求項2に記載の運転者適性評価システム。
【請求項4】
前記動きデータが前記所定の条件で運転発進準備する運転者の左足首の動きデータであることを特徴とする請求項2に記載の運転者適性評価システム。
【請求項5】
前記動きデータには前記左足首の角速度および傾斜角が含まれることを特徴とする請求項3又は4に記載の運転者適性評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転者としての適性評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢ドライバーによる交通事故が多発している。
瞬時に適切な判断、運転操作等ができなくなった高齢ドライバーは、予期せぬ事態に直面した際にパニックになりやすく、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えたり、信号や標識等を見落してしまうなど、様々な理由により事故を発生しやすい。
しかしながら、高齢ドライバーであっても運転者としての適性に問題がない場合もあり、年齢を境にして全ての高齢ドライバーから自動車免許を停止、取消等することは現実的ではない。
【0003】
現在、自動車免許の自主返納を促す取り組みとして、高齢ドライバーの認知機能や運転能力を判断することが試みられている。
例えば特許文献1に、高齢ドライバーと若年ドライバーとの間で有意差が認められる操舵円滑度指標を予め設定したしきい値と比較し、円滑度の低いドライバーに対して警告を発することで運転技術の低下を自覚させる高齢ドライバサポートシステムを開示する。
同公報に開示する技術は、ドライバーが曲がり角を滑らかに曲がることが可能であるか否か、その運転能力を判断するものである。
ところで、実際に車両を運転していると予期せぬ事態は突発的に起こり得る。
例えば、道を間違えてしまった場合や時間的に急がざる終えなくなった場合などは、運転者に心理的な焦りを感じさせやすい。
そのため、認知機能や運転能力以外に、予期せぬ事態に直面した際の対応力を判断することで、運転者としての適性をより精度高く評価できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-250406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両運転者の対応力を判断する運転者適性評価システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転者適正評価システムは、車両を運転する運転者としての適性を評価するための運転者適性評価システムであって、所定の条件で運転者の左足の動きデータを取得する動きデータ取得手段と、前記動きデータに基づいて前記運転者の対応力を判断する判断手段を備えることを特徴とする。
ここで対応力とは、予期せぬ事態に直面した際の運転に対する対応力のことをいい、例えば、焦りなどの心理的負荷を掛けられた状態での運転者の対処力をいう。
そのため、本発明において前記所定の条件は運転者に心理的負荷を付与する条件であることが好ましく、例えば、時間制限を設けて運転させるなどが同条件に該当する。
一般的な車両の運転において、運転者はブレーキおよびアクセルの両ペダルを操作するのに右足を使用し、操作をしない左足をフロアに置いて運転姿勢を安定させている。
例えば、左足がフロアに対して鉛直方向に位置する場合には、走行中の車両に掛かる遠心力に対して抗うことが難しく、運転姿勢がぶれやすい。
高齢ドライバーは筋力が低下し、股関節の可動域が狭小化しやすいため、このような運転姿勢のぶれは大きくなることが予想される。
また、焦り等を感じる状態において、対応力のないドライバーは過度な緊張により左足の筋肉が硬直し、可動域が狭小化しやすく、左足の位置もぶれやすい。
運転姿勢や左足のぶれは、右足でのブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違えなど、操作不適交通事故を誘発する恐れがある。
本発明は運転者の左足の動きから対応力を判断することで、特に高齢ドライバーに対して運転者としての適性を評価することが可能となる。
【0007】
本発明において、前記動きデータが前記所定の条件で所定のコースを運転する運転者の左足首の動きデータであってもよく、前記動きデータが前記所定の条件で運転発進準備する運転者の左足首の動きデータであってもよい。
また、前記動きデータには前記左足首の角速度および傾斜角が含まれることが好ましい。
所定のコースとは、例えばドライビングシミュレータ上のコースであってもよい。
また、運転発進準備とは、例えば運転者がシートベルトを締めてから右足でブレーキペダルを踏む一連の動作をいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る運転者適性評価システムは、運転者が焦り等を感じる所定の条件でその左足の動きをデータ取得し、この動きデータに基づいて運転者の対応力を判断することで、運転者としての適性を評価する。
これにより、特に高齢ドライバーに対して、予期せぬ事態に直面した際に運転の対処ができなくなったことを認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る運転者適性評価システムの構成を表すブロック図を示す。
図2】本発明に係る技術思想を説明するための模式図を示す。
図3】動きデータを取得する一例を表わす模式図を示す。
図4】検証方法1におけるX軸の角速度の平均値とY軸の傾斜角の平均値についてのプロット図を示す。
図5】検証方法2におけるX軸の角速度の平均値とY軸の傾斜角の平均値についてのプロット図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る運転者適正評価システムについて、以下、図に基づいて説明する。
図1に、運転者適性評価システムの構成を表すブロック図を示し、図2に、本発明に係る技術思想を説明するための模式図を示す。
図2に示すように運転者は、一般的な車両1内においてハンドル2を両手で保持し、アクセルペダル又はブレーキペダル3を状況に合わせて踏めるように右足を配置し、左足はフロア4に置いて運転姿勢を安定させる。
本発明においては運転者の左足、特に左足首の動きデータを取得することで運転者の対応力を判断し、運転者としての適性を評価する。
【0011】
図1に示すように運転者適性評価システム10は、動きデータ取得手段11と判断手段12を備える。
動きデータ取得手段11は、所定の条件で運転者(測定対象者)の左足の動きを測定し、その動きデータを取得する。
例えば、図3(a)に示すように、測定対象者がドライビングシミュレータ上のハンドル2を両手で保持し、右足をアクセルペダル又はブレーキペダル3を状況に合わせて踏めるように配置すると、左足は運転姿勢を安定させるために床5(車両1でいうフロア4)を踏み締めることになる。
本明細書においては図3(b)に示すように、測定対象者の左足首を基準として腰側をX軸方向とし、床5と平行となる水平方向をY軸方向とし、X軸およびY軸のそれぞれに直交する方向をZ軸方向とする。
左足首の動きとして、X軸、Y軸及びZ軸方向の加速度、角速度及び傾斜角を測定し、その動きデータを取得する。
動きデータには、少なくともX軸の角速度とY軸の傾斜角が含まれることが好ましい。
角速度や傾斜角等はセンサで検出することができるが、動きデータ取得手段11としては上記動きデータを取得できれば特に方法、装置等に制限はなく、例えば、慣性計測装置(inertial measurement unit、IMU)を用いることができる。
所定の条件としては、測定対象者に心理的負荷を付与する条件であることが好ましく、例えば、時間制限を設けて運転させるなどが同条件に該当する。
具体的には、測定対象者に時間制限を設けて所定のドライビングシミュレータ上のコースを走破させる、あるいは測定対象者に時間制限を設けて運転発進準備をさせてもよい。
時間制限を設けることにより、測定対象者に対して焦りを誘発させることができる。
なお、ドライビングシミュレータ上のコースを測定対象者が運転する場合には、コースはディスプレイ6等に映ることになる。
一方、判断手段12は、動きデータ取得手段11により取得した動きデータに基づいて運転者の対応力を判断する。
判断手段12としては機械学習にて判断することが好ましい。
例えば、機械学習にRandomForestを用いて、対応力の有無を目的変数としてもよい。
機械学習は、ドライビングシミュレータのディスプレイ6に備わっていてもよく、別のコンピュータ、携帯端末等に備わっていてもよい。
【0012】
本発明に係る運転者適性評価システムの精度について、以下のように検証した。
【0013】
[検証方法1]
検証方法1は、所定のドライビングシミュレータ上のコースを運転する測定対象者の左足首の動きデータを取得した。
測定対象者は、若年者6名(平均年齢20.3±0.5歳)、認知機能検査において認知機能に問題がない高齢者5名(平均年齢76.0±3.9歳)である。
検証例1は、測定対象者に対して10分以内にドライビングシミュレータ(日立ケーイーシステムズ製、ACM300)上の検証コースを完走するように指示を出し、測定対象者の左足首の動きをIMU(ATR-Promotions製、TSND151)を用いて測定した。
比較例1は、検証例1と同じ測定対象者に時間制限を設けないで検証例1と同じコースを完走してもらい、運転中の測定対象者の左足首の動きを測定した。
なお、測定対象者には検証前にドライビングシミュレータのテストコースを走行してもらい、ドライビングシミュレータの運転操作に慣れてもらった(慣れたか否かは自己申告により判断した)。
また、検証コースにはアクシデントを起こしやすい場面を15場面設定し、完走後に測定対象者から15場面に遭遇した際の焦り度を7段階評価で回答してもらった。
【0014】
まず、検証コースにおけるアクシデント(ドライビングシミュレータ上の事故)件数について、比較例1におけるアクシデント件数の平均は1.9±1.0件であった。
ここで、「対応力のあるドライバー」を「時間制限を設けた場合の運転が時間制限を設けない場合の運転と同様であるドライバー」とし、検証例1におけるアクシデント件数が2件以下の場合を「対応力のあるドライバー」、それ以外を「対応力のないドライバー」とした。
検証例1の結果から、対応力があるドライバーは4名(若年者2名、高齢者2名)、対応力がないドライバーは7名(若年者4名、高齢者3名)であり、それぞれのアクシデント件数は1.3±0.8件、5.3±1.5件であった。
検証例1のアクシデント件数に対し、帰無仮説を立てBrunner-Munzel検定(棄却域1%)を行なったところ、統計量は-72.8、有意確率(p値)は0.00で、対応力のあるドライバーと対応力のないドライバーのアクシデント件数には有意な差があった。
一方、比較例1のアクシデント件数に対しては、対応力のあるドライバー4名(アクシデント件数1.7±1.2件)と対応力のないドライバー7名(アクシデント件数2.1±0.8件)のアクシデント件数には有意な差があるとはいえなかった(統計量-1.1、p値0.3)。
次に、測定対象者の主観的な焦り度を、検証例1(サンプルサイズ112、焦り度4.2±1.9)と比較例1(サンプルサイズ133、焦り度3.4±2.1)で帰無仮説を立てBrunner-Munzel検定(棄却域1%)を行なったところ、検証例1と比較例1の焦り度に有意な差があった(統計量-3.2、p値0.00)。
このことから、検証例1が比較例1と比較してアクシデント件数が増加した理由として、焦りによる影響があることが明らかとなった。
なお、検証例1における対応力のあるドライバー(サンプルサイズ50、焦り度4.1±1.8)と対応力のないドライバー(サンプルサイズ62、焦り度4.3±2.0)の焦り度に対して、帰無仮説を立てBrunner-Munzel検定(棄却域1%)を行なったところ、両者に有意な差があるとはいえなかった(統計量-0.52、p値0.60)。
これにより、検証例1においてアクシデント件数が2件以下の場合を「対応力のあるドライバー」とし、それ以外を「対応力のないドライバー」と区別したことは妥当であったといえる。
【0015】
次に、検証例1及び/又は比較例1において焦り度5以上であった測定対象者を選択し、IMUにより得られた運転中の測定対象者の左足首の動きデータのうち、X軸の角速度の平均値とY軸の傾斜角の平均値について、図4に示すようにプロットした。
上記測定対象者を若年者と高齢者に区別し、「対応力のあるドライバー」である若年者を○、高齢者を●、「対応力のないドライバー」である若年者を△、高齢者を×とした。
測定対象者のうち高齢者は、図4に示すように対応力のある高齢ドライバーが右上側に、対応力のない高齢ドライバーが左下側にプロットされる結果となった。
結果から、対応力のない高齢ドライバーは対応力のある高齢ドライバーに比べ、左足首のY軸の傾斜角が地面に対して鉛直方向(Y軸の傾斜角の平均値が約-60~-130)であった。
また、対応力のない高齢ドライバーはX軸の角速度が低く(X軸の角速度の平均値が約10~40)、対応力のある高齢ドライバーはX軸の角速度が高かった(X軸の角速度の平均値が約41以上)。
運転者は、右足でアクセルペダルからブレーキペダルを踏む場合に、ブレーキペダルがアクセルペダルの左横にあるために右足を左斜めに突き出すことになるが、このときリラックスしている状態の運転者であれば左足は自然と外向きに開く。
そのため、対応力のあるドライバーの左足ではX軸の正方向(測定対象者の腰側)への角速度が生じていた。
一方、対応力のない高齢ドライバーは緊張等により筋肉が強張り、可動域が狭小化するために、左足の角速度が対応力のある高齢ドライバーに比べて低くなったと考えられる。
【0016】
最後に、上記焦り度5以上であった高齢ドライバーのX軸の角速度の平均値とY軸の傾斜角の平均値に基づいて、機械学習にて対応力のある高齢ドライバーと対応力のない高齢ドライバーを分類した。
機械学習にはRandomForestを用いた。
目的変数は、対応力の有無であり、説明変数は、左足首のY軸の傾斜角の平均値とX軸の角速度の平均値である。
判断には1人をテストデータ、そのほかをトレーニングデータとするLOSO-CV(Leave One Subject.Out Cross-Validation)を用いた。
判断値には正解率を用い、正解率は以下で計算された。
「正解率=各ラベルと分類結果が一致した数÷各ラベルの数」
分類結果を表1に示す。
【表1】
上記結果から、焦り度5以上であった高齢ドライバーの運転中の左足首の動きデータのうち、X軸の角速度の平均値とY軸の傾斜角の平均値に基づいた機械学習にて、約91%の精度で高齢者の対応力の有無を判断できることが明らかとなった。
【0017】
[検証方法2]
検証方法2は、運転発進準備する測定対象者の左足首の動きデータを取得した。
測定対象者は、検証方法1と同一人(若年者6名、認知機能検査において認知機能に問題がない高齢者5名)であり、運転発進準備は、ドライビングシミュレータ(日立ケーイーシステムズ製、ACM300)を用いて、測定対象者がシートベルトを締めてブレーキペダルを踏むまでを1回とした。
検証例2は、測定対象者に対して3秒以内に運転発進準備を完了するように指示を出し、測定対象者の左足首の動きをIMU(ATR-Promotions製、TSND151)を用いて測定した。
なお、測定対象者には検証前に運転発進準備に慣れるまで練習してもらい(慣れたか否かは自己申告により判断した)、比較例2として時間制限を設けないで運転発進準備する測定対象者の左足首の動きも測定した。
運転発進準備は検証例2、比較例2ともに各10回実施し、運転発進準備完了後に測定対象者から焦り度を7段階評価で回答してもらった。
【0018】
測定対象者の主観的な焦り度を、検証例2(サンプルサイズ110、焦り度3.9±2.0)と比較例2(サンプルサイズ96、焦り度2.6±1.8)で帰無仮説を立てBrunner-Munzel検定(棄却域1%)を行なったところ、検証例2と比較例2の焦り度に有意な差があった(統計量-5.2、p値0.00)。
このことから、時間制限を設けて運転発進準備する測定対象者は焦りを感じていたことが分かる。
【0019】
次に、検証例2で得られた運転発進準備中の測定対象者の左足首の動きデータのうち、X軸の角速度の平均値とY軸の傾斜角の平均値について、図5に示すようにプロットした。
図5は、検証例1における「対応力のあるドライバー」と「対応力のないドライバー」をさらに若年者と高齢者に区別し、「対応力のあるドライバー」である若年者を○、高齢者を●、「対応力のないドライバー」である若年者を△、高齢者を×としてプロットしてある。
図5から、対応力のない高齢ドライバーは対応力のある高齢ドライバーに比べ、左足首のY軸の傾斜角が地面に対して鉛直方向(Y軸の傾斜角の平均値が約-70~-100)であった。
X軸の角速度については、対応力のある高齢ドライバーと対応力のない高齢ドライバーで帰無仮説を立てBrunner-Munzel検定(棄却域1%)を行なったところ、両者に有意な差があるとはいえなかったが、これは、検証例1に比べて検証例2の焦り度の強度が小さく、筋肉の強張りが生じるほどの緊張感を与えられなかった可能性がある。
【0020】
最後に、時間制限を設けて運転発進準備する高齢ドライバーのX軸の角速度の平均値とY軸の傾斜角の平均値に基づいて、機械学習にて対応力のある高齢ドライバーと対応力のない高齢ドライバーを分類した。
機械学習にはRandomForestを用いた。
目的変数は、対応力の有無であり、説明変数は、左足首のY軸の傾斜角の平均値とX軸の角速度の平均値である。
判断には1人をテストデータ、そのほかをトレーニングデータとするLOSO-CV(Leave One Subject.Out Cross-Validation)を用いた。
判断値には正解率を用い、正解率は以下で計算された。
「正解率=各ラベルと分類結果が一致した数÷各ラベルの数」
分類結果を表2に示す。
【表2】
上記結果から、時間制限を設けて運転発進準備する高齢ドライバーの左足首の動きデータのうち、X軸の角速度の平均値とY軸の傾斜角の平均値に基づいた機械学習にて、約85%の精度で高齢者の対応力(運転対応力)の有無を判断できることが明らかとなった。
【0021】
本実施例では右足でアクセル、ブレーキの両ペダルを操作する場合の左足の動きに着目したが、左足でアクセル、ブレーキを操作する車両は逆に右足の動きデータを用いることができる。
また、本実施例は左足首のX軸の角速度とY軸の傾斜角を説明変数としたが、X軸の角速度やY軸の傾斜角に相関あることが確認されている指標、例えば、Y軸の加速度、Z軸の加速度、Z軸の角速度、X軸の傾斜角、Z軸の傾斜角等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0022】
10 運転者適性評価システム
11 動きデータ取得手段
12 判断手段
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-02-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する運転者としての適性を評価するための運転者適性評価システムであって、
所定の条件で運転者のペダルを操作しない左足の動きデータを取得する動きデータ取得手段と、
前記動きデータに基づいて前記運転者の対応力を判断する判断手段を備えることを特徴とする運転者適性評価システム。
【請求項2】
前記所定の条件が運転者に心理的負荷を付与する条件であることを特徴とする請求項1に記載の運転者適性評価システム。
【請求項3】
前記動きデータが前記所定の条件で所定のコースを運転する運転者の左足首の動きデータであることを特徴とする請求項2に記載の運転者適性評価システム。
【請求項4】
前記動きデータが前記所定の条件で運転発進準備する運転者の左足首の動きデータであることを特徴とする請求項2に記載の運転者適性評価システム。
【請求項5】
前記動きデータには前記左足首の角速度および傾斜角が含まれることを特徴とする請求項3又は4に記載の運転者適性評価システム。