(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090232
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ナビゲーション用アレイの締結構造
(51)【国際特許分類】
A61B 90/50 20160101AFI20220610BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20220610BHJP
【FI】
A61B90/50
A61B34/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202479
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝之
(57)【要約】
【課題】アレイの位置が使用中に変動しないナビゲーション用アレイの締結構造を提供する。
【解決手段】固定部18の下部には台座部13の半径Rよりも大きな上下寸法Hを有するスカート部23が形成されている。ドレープ15が被された台座部13に固定部18を載せるとドレープ15の中心孔12部分が締結手段26の下端の尖端部29により破られる。そのままスカート部23がドレープ15を下に押下げるため、ドレープ15の破れは台座部13の上面よりも大きくなり、台座部13の上面が露出される。そのため固定部18の下面は台座部13の上面に対して直接接触(メタルコンタクト)して安定するため、アレイ6の位置は使用中に変動することがない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術顕微鏡に手術顕微鏡とともにドレープにより覆われる金属製のブラケットを取付け、該ブラケットの先端に中心孔を有する円柱状の台座部を形成し、複数のマーカーを有するアレイに中心孔を有する円柱状で金属製の固定部を一体的に取付け、該固定部を台座部に載置した状態で固定部の中心孔から挿入した締結手段を台座部の中心孔に係合させて固定部を台座部に締結するナビゲーション用アレイの締結構造であって、
前記固定部の下部には台座部の半径よりも大きな上下寸法を有し且つ締結時に台座部の側面を覆う円筒状のスカート部が形成されていると共に、締結手段の下端にドレープを破る尖端部が形成されていることを特徴とするナビゲーション用アレイの締結構造。
【請求項2】
台座部の上面と固定部の下面にそれぞれ円周方向で係合して固定部の台座部に対する回転を規制する凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のナビゲーション用アレイの締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーション用アレイの締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
脳神経外科手術等においては手術顕微鏡が使用され、ドクターは手術顕微鏡により術部を拡大観察しながら手術を行う。手術顕微鏡は手術室に設置されたスタンド装置の支持アームの先端に支持され、手術顕微鏡の位置や向きを変更しながら、術部をあらゆる方向から拡大観察することができる。
【0003】
このような手術顕微鏡を用いた手術において、手術顕微鏡の観察点(フォーカス点)をモニターのMRI画像中に表示するためのナビゲーションシステムが用いられる。具体的には手術顕微鏡にナビゲーション用のアレイが取付けられる。アレイは複数のマーカーを有し、このマーカーは手術室内にフラッシュ照射された赤外線を反射する。そしてマーカーで反射された赤外線をカメラが検出することにより、手術顕微鏡の位置及び姿勢が認識され、手術顕微鏡の観察点をモニター上に表示することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
アレイはナビゲーションを行う時だけ手術顕微鏡に取付けられ、それ以外の場合は手術顕微鏡から取り外される。手術顕微鏡には先端が外側へ突出したブラケットが固定され、そのブラケットの先端には台座部が一体形成されている。
【0005】
一方、アレイには固定部が形成され、この固定部をブラケットの台座部の上に載せて締結手段により締結している。これによりアレイは手術顕微鏡と一体化する。
【0006】
また手術の際に手術顕微鏡はブラケットも含めて無菌状態にするため、透明な合成樹脂製のドレープにより全体が覆われる。そして殺菌処理されたアレイの固定部をドレープで覆われたブラケットの台座部に対して締結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような関連技術にあっては、ブラケットの台座部とアレイの固定部との間に合成樹脂製のドレープが一定の厚さで存在し、台座部と固定部の金属同士が直接接触しないため、アレイの締結は不安定な状態となり、取付け後のアレイの位置が使用中に僅かであるが変動して、カメラが手術顕微鏡の位置を正しく認識しないおそれがある。
【0009】
本発明はこのような関連技術に着目してなされたものであり、アレイの位置が使用中に変動しないナビゲーション用アレイの締結構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の技術的側面によれば、手術顕微鏡に手術顕微鏡とともにドレープにより覆われる金属製のブラケットを取付け、該ブラケットの先端に中心孔を有する円柱状の台座部を形成し、複数のマーカーを有するアレイに中心孔を有する円柱状で金属製の固定部を一体的に取付け、該固定部を台座部に載置した状態で固定部の中心孔から挿入した締結手段を台座部の中心孔に係合させて固定部を台座部に締結するナビゲーション用アレイの締結構造であって、前記固定部の下部には台座部の半径よりも大きな上下寸法を有し且つ締結時に台座部の側面を覆う円筒状のスカート部が形成されていると共に、締結手段の下端にドレープを破る尖端部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の技術的側面によれば、台座部の上面と固定部の下面にそれぞれ円周方向で係合して固定部の台座部に対する回転を規制する凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の技術的側面によれば、固定部の下部に台座部の半径よりも大きな上下寸法を有するスカート部が形成され、締結手段の下端には尖端部が形成されているため、ドレープが被された台座部に固定部を載せることで、ドレープの中心孔部分が尖端部により破られる。そしてそのままスカート部がドレープを下に押下げるため、ドレープの破れは更に広げられる。スカート部によるドレープの押下げ量はスカート部の上下寸法に相当し、それが台座部の半径よりも大きいため、ドレープの破れは台座部の上面よりも大きくなり、台座部の上面が露出される。そのため固定部の下面は台座部の上面に対して直接接触(メタルコンタクト)して安定するため、アレイの位置は使用中に変動することがない。
【0013】
本発明の第2の技術的側面によれば、台座部の上面と固定部の下面にそれぞれ互いに係合する凹凸部が形成されているため、取付け後にアレイが外力が受けてもアレイの位置が固定部の回転方向へ変動することはない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】支持アームの先端に支持された手術顕微鏡を示す斜視図。
【
図5】円周方向に沿って
図3中矢示SA-SA線で断面した台座部と固定部の凹凸部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図5は本発明の好適な実施形態を示す図である。前後左右の方向性は
図1に記載された通りである。
【0016】
手術室内にはスタンド装置が設置され、そのスタンド装置には横方向に延びる支持アーム1が設けられている。支持アーム1の先端には吊下アーム2が設けられ、吊下アーム2の下端に手術顕微鏡3が支持されている。手術顕微鏡3は、顕微鏡本体4と接眼部5とから構成されており、顕微鏡本体4部分が吊下アーム2に取付けられている。支持アーム1自体が前後左右及び上下に移動自在で、更に顕微鏡本体4は吊下アーム2の下端に対して前後左右に角度変更できるように取付けられている。従って手術顕微鏡3は位置と姿勢を自由に変更することができる。
【0017】
手術顕微鏡3の下方には図示せぬ患者の術部が位置しており、術部で反射された光束を顕微鏡本体4内に取り込み、その光束を顕微鏡本体4から接眼部5へ導き、ドクターは接眼部5から術部を立体的に観察することができる。
【0018】
顕微鏡本体4の左側面にはナビゲーション用のアレイ6がブラケット7を介して取付けられている。アレイ6はX型で各先端にボール状のマーカー8が取付けられている。マーカー8の表面には手術室内にフラッシュ照射された赤外線を反射する反射材がコーティングされている。
【0019】
手術室内にはモニター9とカメラ10が設置されており、モニター9とカメラ10はコントローラ11を介して接続されている。モニター9は事前に撮影された患者のMRI映像を表示する。カメラ10はアレイ6のマーカー8で反射された赤外線を検出する。
【0020】
カメラ10が検出したマーカー8の位置をコントローラ11に出力することにより、コントローラ11ではマーカー8が一体的に取付けられた手術顕微鏡3の空間上での位置及び姿勢を認識することができる。
【0021】
手術が始まると、手術顕微鏡3の位置情報がコントローラ11を介してモニター9に送られ、モニター9で表示されている患者のMRI映像中に手術顕微鏡3の観察点(フォーカス点)を表示させることができる。そのためドクターは手術顕微鏡3による観察点の周囲の状況をモニター9の映像から確認することができる。
【0022】
次にナビゲーション用アレイ6の手術顕微鏡3への締結構造について説明する。手術顕微鏡3に固定されているブラケット7は全体が金属製で先端には中心孔12を有する円柱状の台座部13が形成されている。この台座部13は半径Rよりも大きな高さHを有し、上面には円周方向にわたって断面三角形状の凹凸部14が形成されている。尚、この凹凸部14の外縁は後述するドレープ15が滑るための面取16が形成されている。中心孔12の内部の上側には第1雌ねじ部A1が形成されている。
【0023】
アレイ6の中心には角筒状のソケット17が形成されている。アレイ6はマーカー8以外の部分が全て金属で形成されている。台座部13の上部には全体が金属製の固定部18が締結されている。固定部18も中心孔19を有する円柱状で、その側面にはアレイ6のソケット17が挿入される角柱状のボス20が形成されている。中心孔19の上部は大径部21となっており、中央には第2雌ねじ部A2が形成されている。固定部18の下面には前記台座部13の凹凸部14と係合する凹凸部22が形成されている。
【0024】
固定部18の下部には台座部13の側面を覆う円筒状のスカート部23が形成されている。このスカート部23は台座部13に相応する内径を有し、台座部13の高さHと同じ上下寸法Hを有している。またこのスカート部23の下端24は面取りされた湾曲断面になっている。台座部13の下端周辺にはそれに対応する湾曲した凹部25が形成されている。
【0025】
固定部18の中心孔19には締結手段26が挿入されている。締結手段26の上部27は固定部18の大径部21に相当する形状で、その上部27にはハンドル28が形成されている。上部27の下方には台座部13の第1雌ねじ部A1に螺合する第1雄ねじ部B1と、固定部18の第2雌ねじ部A2に螺合する第2雄ねじ部B2が形成されている。そして締結手段26の下端には尖端部29が形成されている。
【0026】
締結手段26は固定部18の中心孔19に挿入されてその第2雄ねじ部A2を固定部18の第2雌ねじ部B2に螺合させ、固定部18と締結手段26とは分離されないようにされている。またアレイ6のソケット17も固定部18のボス20に挿入され、固定部18、締結手段26、アレイ6は一体物となっている。
【0027】
この一体物としてのアレイ6等はナビゲーションを使用しない場合には手術顕微鏡3(ブラケット7)から外されている。ドレープ15は支持アーム1、吊下アーム2、手術顕微鏡3、ブラケット7を覆っている。
【0028】
ナビゲーションを使用する場合は、まずドレープ15が被せられたブラケット7の台座部13に、アレイ6付きの固定部18を上から載せる。そうすると固定部18の中心孔19内に予め備えられている締結手段26の尖端部29が、台座部13を覆っているドレープ15の中心孔12部分に刺さるため、その部分が破れる。
【0029】
そのまま締結手段26を台座部13の中心孔12に内に挿入し、ハンドル28を手で回すと、締結手段26の第1雄ねじ部B1が台座部13の第1雌ねじ部A1に螺合し、締結手段26は回転しながら下方へ移動する。
【0030】
締結手段26の上部27は固定部18の大径部21に当接するため、締結手段26が下降すると、固定部18を下に押し下げる。そして固定部18が下方へ移動する過程において固定部18と一体のスカート部23が台座部13の側面に沿って下方へ移動しながら、ドレープ15を下に押下げるため、ドレープ15の破れは押し広げられる。台座部13の上面の凹凸部14の外縁には面取16が形成されているため、破られたドレープ15は凹凸部14の端部をスムーズに滑って下方へずれる。
【0031】
スカート部23によるドレープ15の押下げ量はスカート部23の上下寸法Hに相当し、それが台座部13の半径Rよりも大きいため、ドレープ15が押し下げられて拡大した破れは台座部13の上面よりも大きくなり、台座部13の上面の凹凸部14が露出される。また下側に下がったドレープ15はスカート部23の湾曲した下端24と、台座部13周囲の湾曲した凹部25との間で挟み込まれるためドレープ15がブラケット7から外れ落ちることはない。
【0032】
そして固定部18の下面の凹凸部22は台座部13の上面の凹凸部14に接触して係合し、固定部18の回転は防止された状態となる。そのため締結手段26を回転させても固定部18は台座部13に対して回転せず、締結手段26を回転させることにより固定部18は締結手段26の上部27により下に押されて台座部13と確実に締結される。
【0033】
台座部13の上面と固定部18の下面の凹凸部14、22同士は直接接触した状態(メタルコンタクト)となり、間にドレープ15が存在しないため、アレイ6の位置は安定し、使用中に位置が変動することはない。しかも凹凸部14、22同士の係合により、取付け後にアレイ6が外力を受けてもアレイ6の位置が固定部18の回転方向へ変動することはない。
【0034】
以上の実施形態では、スカート部23の上下寸法Hを台座部13の高さHと同一にしたが、スカート部23の上下寸法Hは台座部13の半径Rよりも大きければ良く、台座部13の高さがスカート部23の上下寸法Hより大きくても良い。
【符号の説明】
【0035】
3 手術顕微鏡
6 アレイ
7 ブラケット
8 マーカー
12 中心孔(台座部)
13 台座部
14 凹凸部(台座部)
15 ドレープ
18 固定部
19 中心孔(固定部)
22 凹凸部(固定部)
23 スカート部
26 締結手段
29 尖端部
R 台座部の半径
H スカート部の上下寸法