(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090233
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】地盤改良セメント組成物用添加剤、地盤改良セメント組成物、地盤改良体及び地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20220610BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20220610BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20220610BHJP
C09K 17/22 20060101ALI20220610BHJP
C09K 17/44 20060101ALI20220610BHJP
C09K 17/48 20060101ALI20220610BHJP
E02D 3/12 20060101ALN20220610BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20220610BHJP
【FI】
C04B24/26 E
C04B24/26 B
C04B24/26 G
C04B28/02
C09K17/10 P
C09K17/22 P
C09K17/44 P
C09K17/48 P
E02D3/12 102
C09K103:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202482
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】河合 萌
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓馬
【テーマコード(参考)】
2D040
4G112
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040CA01
2D040CA10
2D040CB03
4G112MD01
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB32
4H026CA01
4H026CB08
4H026CC05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スラリーが流動性に優れる地盤改良材を提供する。
【解決手段】式(1);-(-CR
1(R
2)-CR
3(COOX
1)-)-
(式(1)中、R
1、R
3は、H、メチル基又はエチル基、R
2は、H又は-COOX
2、X
1、X
2は、H、一価、二価金属、アンモニウム基又は有機アミン基。)カルボン酸系単量体由来の構造単位(A)と、式(2);
(式(2)中、R
4、R
5及びR
6は、H、メチル基又はエチル基、R
7は、アルキレン基、R
8は、H又は炭化水素基、pは、0~2の数、mは、25~100の数。)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体由来の構造単位(B)とを有する共重合体を含む地盤改良セメント組成物用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】
(式(1)中、R
1、R
3は、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。R
2は、水素原子又は-COOX
2を表す。X
1、X
2は、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。-COOX
1と-COOX
2とは無水物を形成していてもよい。)で表されるカルボン酸系単量体由来の構造単位(A)と、下記一般式(2);
【化2】
(式(2)中、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。R
7Oは、同一又は異なって、炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。R
8は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。pは、0~2の数を表す。mは、R
7Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、25~100の数である。)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体由来の構造単位(B)とを有し、構造単位(A)と構造単位(B)とのモル比(構造単位(A)/構造単位(B))が50/50~95/5である共重合体を含むことを特徴とする地盤改良セメント組成物用添加剤。
【請求項2】
前記共重合体は重量平均分子量が8000~100000であることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良セメント組成物用添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地盤改良セメント組成物用添加剤とセメントとを含むことを特徴とする地盤改良セメント組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の地盤改良セメント組成物を用いて造成されることを特徴とする地盤改良体。
【請求項5】
地盤に形成された孔に請求項3に記載の地盤改良セメント組成物を注入する工程を含むことを特徴とする地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良セメント組成物用添加剤、地盤改良セメント組成物、地盤改良体及び地盤改良工法に関する。より詳しくは、地盤の支持力強化等を目的とする地盤改良に用いられる地盤改良セメント組成物用添加剤、地盤改良セメント組成物、地盤改良体及び地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良は、建造物の基礎部分の支持力強化や液状化対策等の目的で地盤の強度を高めるために地盤に人工的な改良を加えることである。近年、地震や大雨による被害が頻発していることから地盤改良の重要度が増してきており、政府も国土強靭化基本計画を策定して防災対策を推進している。
地盤改良には様々な方法があるが、中でも費用対効果の高さなどから、セメントを含む硬化剤を使用する方法が多く用いられており、セメント系固化材等の硬化材を改良したい現場の土と混合して改良体の造成等を行う固結工法や、セメントを含む組成物を地盤に注入する薬液注入工法等が幅広く利用されている。
地盤改良工法のうち、セメント系固化材を使用した固結工法には、浅層改良と深層改良(中層改良も含む)とがあり、そのうち約9割が深層改良である。深層改良では先端に撹拌翼を有するロッドを備えた施工機で地盤の深層まで削孔しつつ、形成された孔にセメント系固化材を含む改良材のスラリーを注入して孔内で現場の土壌と撹拌、混合し、地中に改良体を造成する機械撹拌工法が多く行われている。また近年は、先端に削孔器具を備えた管によって地盤の深層まで削孔した後、セメント系固化材を含む改良材のスラリーを管の先端から高圧噴射し、地中の土を切削すると同時に化学的に固化する高圧噴射撹拌式の地盤改良工法が増加傾向にある。
【0003】
従来の地盤改良に使用される組成物として、所定の構造の水溶性ビニル共重合体(ポリカルボン酸系重合体)と消泡剤とを含む分散剤組成物とセメントと水とを所定の割合で含有するソイルセメントスラリーが開示されている(特許文献1参照)。また、所定の比表面積、メジアン径の高炉スラグ粉末、所定の条件を満たす分級セメント、及びポリアクリル酸系分散剤をそれぞれ所定の割合で含む地盤注入用水硬性セメント組成物が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-1604号公報
【特許文献2】国際公開第2011/027890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地盤改良工法に用いられる地盤改良材のスラリーは、流動性に優れて孔内への注入が容易であることが求められている。ポリカルボン酸系重合体が添加されることがあるが、ポリカルボン酸系重合体はセメントの分散性が優れているが、粘性土が混入した際に流動性が低下することが課題であった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、地盤改良材のスラリーが流動性に優れる地盤改良材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、スラリーが流動性に優れる地盤改良材について検討したところ、所定の構造のカルボン酸系単量体由来の構造単位(A)と、所定の構造の不飽和ポリアルキレングリコール系単量体由来の構造単位(B)とを有する共重合体をセメント系固化材の添加剤として用いると、得られるセメント組成物がスラリーの流動性に優れることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、下記一般式(1);
【0009】
【化1】
(式(1)中、R
1、R
3は、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。R
2は、水素原子又は-COOX
2を表す。X
1、X
2は、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。-COOX
1と-COOX
2とは無水物を形成していてもよい。)で表されるカルボン酸系単量体由来の構造単位(A)と、下記一般式(2);
【0010】
【化2】
(式(2)中、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。R
7Oは、同一又は異なって、炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。R
8は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。pは、0~2の数を表す。mはR
7Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、25~100の数である。)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体由来の構造単位(B)とを有する共重合体を含むことを特徴とする地盤改良セメント組成物用添加剤である。
【0011】
上記共重合体は、構造単位(A)と構造単位(B)とのモル比(構造単位(A)/構造単位(B))が50/50~95/5であることが好ましい。
【0012】
上記共重合体は、重量平均分子量が8000~100000であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤とセメントとを含むことを特徴とする地盤改良セメント組成物でもある。
【0014】
本発明はまた、本発明の地盤改良セメント組成物を用いて造成されることを特徴とする地盤改良体でもある。
【0015】
本発明はまた、地盤に形成された孔に本発明の地盤改良セメント組成物を注入する工程を含むことを特徴とする地盤改良工法でもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤は、セメント組成物がスラリーの流動性に優れる分散剤であるため、地盤改良工法に地盤改良材として使用されるセメント組成物を調製するためのセメント分散剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0018】
本発明の地盤改良セメント組成物用分散剤は、下記一般式(1);
【0019】
【0020】
(式(1)中、R1、R3は、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。R2は、水素原子又は-COOX2を表す。X1、X2は、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。-COOX1と-COOX2とは無水物を形成していてもよい。)で表されるカルボン酸系単量体由来の構造単位(A)と、下記一般式(2);
【0021】
【0022】
(式(2)中、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。R7Oは、同一又は異なって、炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。R8は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。pは、0~2の数を表す。mは、R7Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、25~100の数である。)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体由来の構造単位(B)とを有する共重合体を含むことを特徴とする。
上記共重合体は、構造単位(A)、構造単位(B)をそれぞれ1種有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0023】
上記一般式(1)において、一価金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、二価金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
また、有機アミン基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン及びフェニルアミン等の第一級アミン由来の基;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン及びジフェニルアミン等の第二級アミン由来の基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン及びトリフェニルアミン等の第三級アミン由来の基;及びエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の基が挙げられる。これらの中でも、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基が好ましい。
【0024】
上記一般式(1)で表される構造単位(A)の原料となるカルボン酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体;及び、これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、不飽和ジカルボン酸系単量体の無水物が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体が好ましく、工業的な観点からは(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。
【0025】
上記一般式(2)において、R8は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。R8が炭化水素基である場合、炭素数1~18のものが好ましく、より好ましくは、炭素数1~12のものであり、更に好ましくは、炭素数1~8のものである。
炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、3-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基、2,3,5-トリメチルヘキシル基、4-エチル-5-メチルオクチル基及び2-エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o-,m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基等のアリール基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0026】
上記一般式(2)において、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表すmは、25~100の数である。アルキレンオキシド鎖が長いほうがセメント組成物スラリー中でのセメント粒子の凝集を抑制して分散性を高め、セメント組成物スラリーの粘度を下げる効果が得られるが、アルキレンオキシド鎖が長すぎると、セメント組成物スラリー中の粘性土がアルキレンオキシド鎖を捕捉するため、粘性土同士の架橋が進行してしまい、逆に粘度を上げる効果を発揮してしまう。上記一般式(2)におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数が25~100であると、粘性土の影響をあまり受けず、セメント粒子の凝集を抑制する効果が得られる。より粘性を下げるのに有用な、mの数は、好ましくは30~80であり、より好ましくは、35~70であり、更に好ましくは40~60である。
【0027】
上記一般式(2)で表される構造単位(B)の原料となる不飽和ポリアルキレングリコール系単量体としては、ポリエチレングリコールビニルエーテル、ポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル等の、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール等の炭素数2~10の不飽和アルコールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを25~100モル付加させた化合物及びこれらの末端に炭素数1~20の炭化水素基が結合した化合物等が挙げられる。式(2)中のR7Oで表されるオキシアルキレン基は、同一でも異なっていても良く、異なる場合はランダム付加でも、ブロック付加でも良いが、炭素数2~3のアルキレンオキサイドであることが好ましく、全てエチレンオキサイドであることがより好ましい。
不飽和ポリアルキレングリコール系単量体としては、本発明の効果を一層発現させる点で、好ましくは(メタ)アリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オールに炭素数2~3のアルキレンオキサイドを25~100モル付加させた化合物であり、より好ましくは(メタ)アリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキサイドを25~100モル付加させた化合物である。
【0028】
上記共重合体は、構造単位(A)と構造単位(B)とのモル比(構造単位(A)/構造単位(B))が50/50~95/5であることが好ましい。セメント組成物スラリーを流動性に優れたものとするためには、共重合体がスラリー中の固形分を分散させる効果を充分に発揮することが必要となる。そのためには、共重合体が酸基によってセメントに吸着する効果と、共重合体の側鎖のオキシアルキレン鎖の効果によってセメント粒子の凝集を抑制する効果とがバランスよく発揮されることが重要であり、共重合体における構造単位(A)と構造単位(B)とのモル比が上記のような範囲であると、これらの効果がよりバランスよく発揮されることになる。更に、アルキレンオキシド鎖の割合が高すぎるとセメント組成物スラリー中に含まれる粘性土がアルキレンオキシド鎖を捕捉するため、粘性土同士の架橋が進行してしまい、粘性が増大することを踏まえると、構造単位(A)/構造単位(B)は、より好ましくは、50/50~90/10であり、更に好ましくは、50/50~85/15である。
【0029】
上記共重合体は、上記構造単位(A)、構造単位(B)以外のその他の構造単位(C)を有していてもよい。
その他の構造単位(C)の原料となる単量体としては、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体と炭素数1~30のアルコールとのエステル類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~30のアルコールとのジエステル類やハーフエステル類;アミンに炭素数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和モノカルボン酸系単量体とのエステル類;上記アルコールやアミンに炭素数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記ジカルボン酸系単量体とのジエステル類やハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数2~18のグリコール若しくはこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのジエステル類やハーフエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2~18のグリコール若しくはこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;
【0030】
ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4-(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メチルスチレン等のビニル芳香族類;ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン-ビス-(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-メタクリレート)等のシロキサン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
上記共重合体における構造単位(A)、構造単位(B)以外のその他の構造単位(C)の含有割合は、共重合体全体の50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、40質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以下である。
【0032】
上記共重合体は、重量平均分子量が8000~100000であることが好ましい。共重合体がこのような重量平均分子量のものであると、セメント組成物スラリーの流動性に優れる効果と固形分が分離沈降しにくい効果とをよりバランス良く発揮することができる。共重合体の重量平均分子量は、より好ましくは、10000~80000であり、更に好ましくは、20000~60000であり、特に好ましくは、25000~50000である。
共重合体の重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0033】
上記共重合体は、構造単位(A)の原料となるカルボン酸系単量体と、構造単位(B)の原料となる不飽和ポリアルキレングリコール系単量体とを必須成分として含む単量体成分を重合することにより製造することができる。共重合体の製造は、特開2017-222553号公報や特開2019-81692号公報に記載の重合体の製造方法を参照して同様に行うことができる。
【0034】
本発明の地盤改良セメント組成物用分散剤は、上記共重合体を必須とするものであるが、上記共重合体を2種以上含んでいてもよく、上記共重合体と異なる共重合体を1種以上含んでいてもよい。
本発明の地盤改良セメント組成物用分散剤における上記共重合体の含有割合(2種以上の共重合体を含む場合は、その総含有割合)は、特に制限されないが、分散剤中の固形分(すなわち不揮発分)100質量%に対して、20~100質量%であることが好ましい。より好ましくは、50~100質量%であり、更に好ましくは、80~100質量%である。
【0035】
上述のとおり、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤をセメントに添加して用いることで、セメント組成物のスラリーを流動性に優れたものとすることができる。このような本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤とセメントとを含む地盤改良セメント組成物もまた、本発明の1つであり、その地盤改良セメント組成物を用いて造成される地盤改良体もまた、本発明の1つである。
【0036】
本発明の地盤改良セメント組成物は、組成物の固形分100質量%に対して、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤を0.01~10質量%含むことが好ましい。このような割合で含むことで、セメント組成物のスラリーを流動性により優れ、かつ、固形分の分離沈降がより充分に抑制されたものとすることができる。本発明の地盤改良セメント組成物用分散剤の含有量は、より好ましくは組成物の固形分100質量%に対して、0.02~5質量%であり、更に好ましくは、0.05~3質量%である。
【0037】
本発明の地盤改良セメント組成物が含むセメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。本発明の地盤改良セメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0038】
本発明の地盤改良セメント組成物におけるセメントの含有割合は、組成物の固形分100質量%に対して、20~100質量%であることが好ましい。このような割合でセメントを含む地盤改良セメント組成物を用いることで、該組成物を用いて得られる地盤改良体をより強度に優れたものとすることができる。セメントの含有割合は、より好ましくは、組成物の固形分100質量%に対して、40~100質量%であり、更に好ましくは、60~100質量%である。
【0039】
本発明の地盤改良セメント組成物は水を含むことが好ましい。その場合の水の含有割合は、組成物の固形分100質量%に対して、40~120質量%であることが好ましい。このような割合で水を含むことで、地盤改良セメント組成物のスラリーが流動性により優れ、かつ、固形分の分離沈降がより充分に抑制されたものとなる。水の含有量は、より好ましくは、組成物の固形分100質量%に対して、40~100質量%であり、更に好ましくは、40~80質量%である。
【0040】
本発明の地盤改良セメント組成物は、本発明の地盤改良セメント組成物用分散剤とセメントとを含む限り、その他の混和剤を更に含有していてもよい。
中でも、本発明の分散剤と消泡剤とを併用すると、消泡剤がセメント組成物スラリー中の気泡を消泡することでスラリー粘度を下げることができるため、本発明の地盤改良セメント組成物が、本発明の地盤改良セメント組成物用分散剤と消泡剤とを含むものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
消泡剤としては、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤等の種々の消泡剤の1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
本発明の地盤改良セメント組成物が消泡剤を含む場合、消泡剤の含有割合は、本発明の地盤改良セメント組成物用分散剤100質量%に対して、5~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、5~40質量%である。
【0042】
本発明の地盤改良セメント組成物は、消泡剤以外のその他の混和剤を含んでいてもよい。
消泡剤以外の混和剤としては、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤(減水剤)や、上記共重合体以外の、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)、分子中にリン酸基を有する各種リン酸系分散剤(減水剤)等の減水剤が挙げられる。
また、本発明の地盤改良セメント組成物は、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、AE剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等のセメント添加剤(材)の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
また、本発明の地盤改良セメント組成物は、流動性付与剤、例えば、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の1種又は2種以上を含んでいてもよい。金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、金属重炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩が挙げられる。
【0043】
本発明の地盤改良セメント組成物は、スラリー状態とした場合の流動性に優れるため、地盤改良のためのセメント組成物を地盤に形成された孔に注入して地盤改良体を造成する地盤改良工法に好適に用いることができる。
このような地盤改良工法、すなわち、地盤に形成された孔に本発明の地盤改良セメント組成物を注入する工程を含む地盤改良工法もまた、本発明の1つである。
【0044】
本発明の地盤改良工法において地盤に孔を形成する方法は特に制限されないが、効率的に孔を形成することができる点で地盤を削孔して孔を形成する方法が好ましい。
地盤を削孔して孔を形成する地盤改良工法としては、例えば、形成した孔に管を挿入し、管からスラリー化した地盤改良セメント組成物を地中に高圧噴射して地中の土を切削すると同時に化学的に固化する高圧噴射撹拌式の地盤改良工法や、孔中でセメント組成物と土と混合して地盤改良体を造成する機械撹拌工法、地中連続壁工法等が挙げられ、本発明の地盤改良セメント組成物は、これらいずれの工法にも好適に用いることができる。
したがって、上記地盤改良工法が、地盤を削孔して孔を形成する工程及び孔中で本発明の地盤改良セメント組成物を高圧噴射して地中の土を切削すると同時に化学的に固化する工程を含むことや、地盤を削孔して孔を形成する工程及び孔中で本発明の地盤改良セメント組成物と土とを混合する工程を含むことは、いずれも本発明の地盤改良工法の好適な実施形態である。上記機械撹拌工法の中でも、先端に撹拌翼を有するロッドを備えた施工機で地盤の深層まで削孔しつつ、形成された孔中で現場の土壌と撹拌、混合し、地中に改良体を造成する機械撹拌工法であることは本発明の地盤改良工法の特に好適な実施形態である。
【0045】
本発明の地盤改良工法は、上記工程以外の他の工程を含んでいてもよい。
また、本発明の地盤改良工法は、上記以外の他の工法であってもよい。他の工法としては、高圧噴射併用機械撹拌工法等がある。
【0046】
本発明の地盤改良体は、本発明の地盤改良セメント組成物と土壌とを含有する混合物を硬化させてなる地盤改良体である。また本発明の地盤改良体は、本発明の地盤改良工法で改良された地盤である。本発明の地盤改良体は、本発明の地盤改良セメント組成物及び地盤改良工法で述べた事項を適宜適用することができる。本発明の地盤改良体は、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤、土壌およびセメントを含有する。この地盤改良体は、土壌と、水と、セメントとを含有するスラリーを硬化させてなる地盤改良体であってよい。
【実施例0047】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0048】
<重量平均分子量測定条件>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empower2プロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgelG4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記標準物質のMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
標準物質試料液注入量:100μL(重合体濃度0.1質量%の溶離液溶液)
重合体試料液注入量:100μL(重合体濃度0.5質量%の溶離液溶液)
分子量は有効数字2桁で記録を行った。
【0049】
(共重合体の製造例)
共重合体1を以下の方法で合成した。表中の他の共重合体も同様にして合成した。
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水360.1g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル)518.2gを仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で74℃に昇温した後、アクリル酸29.9gを水28.4gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム1.9gを水61.5gに溶解させた開始剤水溶液を5時間10分かけて滴下した。その後20分間引き続き74℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH5.5まで中和して、重量平均分子量63,000の共重合体1を得た。
【0050】
【表1】
(単量体の略号)
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
IPN50:3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキシド付加体(平均付加モル数50モル)
PGM10:メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数10モル)モノメタクリレート
PGM25:メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数25モル)モノメタクリレート
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
【0051】
(特性評価)
上記製造例の方法で製造した共重合体1~5及び比較共重合体1,2について、以下の方法により、セメント組成物スラリーの粘度の評価を行った。
<セメント組成物スラリーの粘度測定>
PP容器(パックエース600mL、テラオカ社製;口径91mm、下径84mm、高さ127mm )にセメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント社製)133.3gと、セメントに対して0.3重量%の共重合体を含む水66.7gを加え、SUS製の羽根(傾斜なしの6枚パドル、パドル1枚の長さ20mm、高さ10mm)でスリーワンモーター(BL600、新東科学社製)を用いて300rpmで3分間攪拌してセメント組成物スラリーを調製した。その後、音叉振動式レオメータ(RV-10000A、エー・アンド・デイ製)で振動子の振幅を1.2mmから0.1mmまで変化させてセメント組成物スラリーの粘度を測定し、同一シアレート(シアレート=200s-1)での粘度を求めた。クレイ添加条件では、ベントナイト(クニゲルV1、クニミネ工業社製)2.0gを上記のセメント133.3gに追加で添加した後、攪拌して上記の測定を行った。
【0052】
【0053】
粘度比(クレイ添加/クレイ無添加)は、クレイ添加条件の粘度を、クレイ無添加条件の粘度で割った値であり、セメント組成物スラリーの粘度がクレイの有無による影響の受けやすさを表した数値である。この数値が高いほど、粘性土中に含まれるクレイの影響を受けて、実際の施工において、セメント組成物スラリーの流動性が低下するなど扱いにくくなる。表2から、比較地盤改良セメント組成物用添加剤を用いた場合に比べて本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤を用いた場合は粘度比が小さくなることが分かり、本発明のセメント組成物用添加剤を用いた場合はクレイ含有時のセメント組成物スラリーの流動性の低下が小さく、スラリーの流動性が優れていることが明らかである。