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特開2022-90263アスコルビン酸及び環状アミノ酸を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090263
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】アスコルビン酸及び環状アミノ酸を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20220610BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220610BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/49
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020202536
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】島谷 満
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC532
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD332
4C083AD641
4C083AD642
4C083BB51
4C083CC03
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】高濃度のアスコルビン酸又はその塩を含むが、経時的に安定性である組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、
(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩;並びに
(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸
を含む化粧用組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩;並びに
(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸
を含む、化粧用組成物。
【請求項2】
前記(b)環状アミノ酸が、少なくとも1種の脂肪族環を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(b)環状アミノ酸が、プロリン及びプロリン誘導体から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(a)アスコルビン酸及びその塩の前記(b)環状アミノ酸に対する質量比が、1:100、好ましくは1.5:75、より好ましくは2:50である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、2.5~7のpHを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が単相溶液の形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
水を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記水の量が、前記組成物の総質量に対して、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更により好ましくは20質量%以上であり、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更により好ましくは50質量%以下、特に40質量%以下である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の親水性有機溶媒を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記親水性有機溶媒の量が、前記組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更により好ましくは20質量%以上、特に30質量%以上であり、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
追加の化粧上活性成分を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
粒状物質を、前記組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下の量で含む、又は粒状物質を一切含まない、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
界面活性剤を、前記組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下の量で含む、又は界面活性剤を一切含まない、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚等のケラチン物質のケア及び/又はコンディショニングのための非治療的美容方法であって、
前記ケラチン物質上に、
(a)前記組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩;並びに
(b)前記組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸
を含む組成物を適用する工程を含む、方法。
【請求項15】
(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩を含む安定性の水性組成物を得るための、(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩並びに少なくとも1種の環状アミノ酸を含む組成物、好ましくはそれらを含む化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸は、化粧品分野において重要な活性成分の一つである。アスコルビン酸は、水中における溶解性が限定されるため、高濃度のアスコルビン酸を含む水性組成物が要望される。これまで、幾つかの従来技術の文献が、高濃度のアスコルビン酸を含む組成物を得るための技術を報告してきた。
【0003】
例えば、JP-A-2018-138617は、(A)アスコルビン酸及びアスコルビン酸の塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分、(B)3-O-エチルアスコルビン酸、3-O-エチルアスコルビン酸の塩、及び水酸化レシチンからなる群から選択される少なくとも1つの成分、並びに(C)ポリエチレングリコールを含む外用剤組成物を開示している。
【0004】
また、WO 2019/131892は、(A)アスコルビン酸及びアスコルビン酸の塩からなる群から選択される少なくとも1種の物質、(B)3個の炭素原子を有するジオール、(C)低分子量ベタイン、有機酸の塩、無機酸の塩、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸の塩、3-O-エチルアスコルビン酸、及び3-O-エチルアスコルビン酸の塩からなる群から選択される少なくとも1種の物質、並びに(D)水を含み、30質量%未満のエトキシジグリコール含量を有する外用剤組成物を開示している。
【0005】
また、US-B-7,179,841は、5質量%~40質量%のL-アスコルビン酸、0.2質量%~5.0質量%の、p-クマル酸、フェルラ酸、カフェ酸、シナピン酸、これらの組合せ、並びにこれらのシス及びトランス異性体から選択されるケイ皮酸誘導体、10質量%~60質量%の、グリコールエーテル及びアルカンジオールを含む溶媒、並びに水を含む単相溶液組成物であって、約3.5以下のpHを有し、ケイ皮酸誘導体が0.5%超の量で存在し、1.5%~5.0%の量の界面活性剤を更に含む組成物を開示している。
【0006】
しかしながら、アスコルビン酸の結晶化の問題を起こさずに長時間の間、安定性でありながら、高濃度のアスコルビン酸を含む組成物を開発する必要が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】JP-A-2018-138617
【特許文献2】WO 2019/131892
【特許文献3】US-B-7,179,841
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高濃度のアスコルビン酸又はその塩を含むが、経時的に安定性である組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記の目的は、
(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩、及び
(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸
を含む組成物によって達成することができる。
【0010】
(b)環状アミノ酸は、少なくとも1つの脂肪族環を含んでもよい。
【0011】
(b)環状アミノ酸は、プロリン及びプロリン誘導体から選択することができる。
【0012】
(a)アスコルビン酸及びその塩の(b)環状アミノ酸に対する質量比は、1:100、好ましくは1.5:75、より好ましくは2:50とすることができる。
【0013】
本発明による組成物は、pHが2.5~7.5であってもよい。
【0014】
本発明による組成物は、単相溶液の形態であってもよい。
【0015】
本発明による組成物は、更に、水を含んでいてもよい。
【0016】
組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更により好ましくは20質量%以上であってもよく、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更により好ましくは50質量%以下、特に40質量%以下であってもよい。
【0017】
本発明による組成物は、少なくとも1種の親水性有機溶媒を更に含んでもよい。
【0018】
親水性有機溶媒の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更により好ましくは20質量%以上、特に30質量%以上であってもよく、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下であってもよい。
【0019】
本発明による組成物は、追加の化粧上活性成分を更に含むことができる。
【0020】
組成物は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下の量の粒状物質を含んでもよい、又は組成物は、粒状物質を一切含まなくてもよい。
【0021】
組成物は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下の量の界面活性剤を含んでもよい、又は組成物は、界面活性剤を一切含まなくてもよい。
【0022】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のケア及び/又はコンディショニングのための非治療的美容方法であって、
ケラチン物質上に、
(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩;並びに
(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸
を含む組成物を適用する工程を含む方法にも関する。
【0023】
本発明はまた、(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩を含む安定性の水性組成物を得るための、(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸の使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
鋭意検討の結果、本発明者らは、驚くべきことに、環状アミノ酸が、多量のアスコルビン酸及び/又はその塩を含む水性組成物の安定性を改善でき、したがって本発明を完了させることができることを発見した。
【0025】
したがって、本発明による組成物は、
(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩、並びに
(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸
を含む化粧用組成物である。
【0026】
以下に、本発明による組成物、方法、及び使用をより詳細に説明する。
【0027】
[組成物]
該組成物は、化粧用組成物、好ましくはケラチン物質のための化粧用組成物、より好ましくはケラチン物質のケア及び/又はコンディショニングのための化粧用組成物とすることができる。ケラチン物質は、本明細書において、ケラチンを主要構成要素として含有する材料を意味し、その例として、皮膚、頭皮、唇等が含まれる。
【0028】
本発明による組成物の形態は特に限定されない。一般に、本発明による組成物は、室温(25℃)及び大気圧(105Pa)で液体である。組成物は、溶液、水溶液、ローション、乳液、クリーム、ジェル、液状ジェル、ペースト、セラム、懸濁液、分散液、流体、乳状液、エマルション(O/W又はW/O型)等の様々な形態をとることができる。本発明による組成物は、水溶液、特に単相水溶液の形態であることが好ましい。用語「単相水溶液」は、本明細書では、均一な一水性相を有する溶液を意味する。
【0029】
本発明による組成物は、好ましくは、化粧用組成物として、特にリーブオンタイプの化粧用組成物として使用することができる。本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、例えば顔の皮膚上への塗布を意図したものでよい。本発明による組成物は、特に(a)高濃度のアスコルビン酸又はその塩により、ケラチン物質、特に皮膚に対して、特に老化防止、美白化、及び/又は皺取りの効力を有する。
【0030】
本発明による組成物は、透明又は半透明、好ましくは透明でありうる。
【0031】
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩並びに(b)少なくとも1種の環状アミノ酸を含む。組成物中の成分については、以下でより詳細に説明することにする。
【0032】
(アスコルビン酸)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のアスコルビン酸又はその塩を含む。単一のタイプのアスコルビン酸及びその塩を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのアスコルビン酸及びその塩を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
ビタミンCとしても知られるアスコルビン酸は、化粧上活性成分として知られる。アスコルビン酸は、コラーゲンの剛性を促進し、メラニンを低減する機能を有するため、ケラチン物質、特に皮膚に、老化防止、美白化、及び/又は皴取り成分として使用される。アスコルビン酸は、一般に、L-アスコルビン酸を意味する。
【0034】
アスコルビン酸の塩は、好ましくは、薬学的に許容される塩である。アスコルビン酸の塩としては、これらに限定されないが、有機塩基の塩(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩及びピリジン塩等の第3級アミンの塩、アルギニン等の塩基性アンモニウム塩)、無機塩基の塩(例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等)等が挙げられる。
【0035】
(a)アスコルビン酸及び/又はその塩は、本発明による組成物の総質量に対して15質量%以上の量で存在する。(a)アスコルビン酸及び/又はその塩は、組成物の総質量に対して、17.5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更により好ましくは22.5質量%以上、特に25質量%以上の量で存在し、60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に45質量%以下の量で存在することが好ましい。
【0036】
(環状アミノ酸)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の環状アミノ酸を含む。単一のタイプの環状アミノ酸を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの環状アミノ酸を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
用語「環状アミノ酸」は、本明細書では、少なくとも1つの環状構造を有するアミノ酸を意味する。環状アミノ酸の例としては、これらに限定されないが、プロリン、プロリン誘導体、例えばヒドロキシプロリン、特に4-ヒドロキシプロリン、及びメチルプロリン、特にN-メチルプロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態において、環状アミノ酸の環状構造は、少なくとも1つの脂肪族環を含む。本発明の別の好ましい実施形態において、環状アミノ酸の環状構造は、芳香環を含まない。したがって、好ましくは、環状アミノ酸の環状構造は、脂肪族環である。
【0039】
本発明の最も好ましい実施形態において、(b)環状アミノ酸は、プロリン及びプロリン誘導体、例えばヒドロキシプロリン及びメチルプロリン、並びにこれらの組合せから選択される。これらの化合物は、ケラチン物質に対してコンディショニング効果、例えば、老化防止の効力及び皴取りの効力を持つことが知られているため、本発明に非常に好ましい。
【0040】
(b)環状アミノ酸は、組成物の総質量に対して1質量%以上の量で存在する。(b)環状アミノ酸は、組成物の総質量に対して、2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更により好ましくは4質量%以上、特に5質量%以上の量で存在し、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に15質量%以下の量で存在することが好ましい。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態によれば、組成物中の(a)アスコルビン酸及びその塩の(b)環状アミノ酸に対する質量比は、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.75以上、特に2以上であってもよい。一般に、組成物中の(a)アスコルビン酸及びその塩の(b)環状アミノ酸に対する質量比は、100以下、好ましくは75以下、より好ましくは50以下である。
【0042】
(親水性有機溶媒)
本発明による組成物は、少なくとも1種の化粧料として許容される親水性有機溶媒を含んでもよい。用語「親水性」は、本明細書では、室温(25℃)及び大気圧(105Pa)下の水中で、少なくとも1g/L、好ましくは少なくとも10g/L、より好ましくは少なくとも100g/Lの溶解度を有する物質を意味する。化粧料として許容される親水性有機溶媒には、例えば、1~8個の炭素原子を有する実質的に直鎖状又は分枝状の低級モノアルコール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール及びイソブタノール;芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール;ポリオール又はポリオールエーテル、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、プロパンジオール、カプリリルグリコール、ソルビトール、エチレングリコールのモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、プロピレングリコールエーテル、例えばプロピレングリコールのモノメチルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールのモノエチルエーテル又はモノブチルエーテル;ポリエチレングリコール、例えばPEG-4、PEG-6及びPEG-8、並びにそれらの誘導体、並びにそれらの組合せを挙げることができる。
【0043】
本発明による組成物中の化粧料として許容される親水性有機溶媒の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更により好ましくは20質量%以上、特に30質量%以上であってもよく、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下であってもよい。
【0044】
本発明の特定の一実施形態において、組成物は、水より多い量の化粧料として許容される親水性有機溶媒を含む。
【0045】
(pH調整剤)
本発明による組成物のpHは、化粧料に通常使用される酸性化剤又は塩基性化剤等の少なくとも1種のpH調整剤を使用して、所望の値に調整することができる。
【0046】
本発明による組成物のpHは、25℃で、9.0以下、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下、更により好ましくは7.5以下、特に7.0以下であってもよく、2.5以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上であってもよい。
【0047】
酸性化剤の中では、例として、無機又は有機酸、例えば、塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸、例えば、酢酸、酒石酸、クエン酸、及び乳酸、並びにスルホン酸を挙げることができる。
【0048】
塩基性化剤の中では、例として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム;水酸化第4級アンモニウム及び水酸化グアニジン;メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸塩及び重炭酸塩、特にアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の、又はアンモニウムの、第1級アミン、第2級アミン若しくは第3級アミン;並びに下記の式の化合物を挙げることができる:
【0049】
【化1】
【0050】
(式中、
Wは、ヒドロキシル基又はC1~C6アルキル基で任意選択により置換されているC1~C6アルキレン残基であり、
Rx、Ry、Rz及びRtは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はC1~C6アルキル、C1~C6ヒドロキシアルキル若しくはC1~C6アミノアルキル基を表す)。1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、スペルミン、及びスペルミジンを特に挙げることができる。
【0051】
pH調整剤は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~3質量%の範囲の量で使用してもよい。
【0052】
(追加の活性成分)
本発明による組成物は、上記の成分(a)及び(b)以外の、少なくとも1種の追加の化粧上活性成分を含んでもよい。用語「活性成分」は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質に対して化粧上又は皮膚科上の任意の効果を及ぼす有機化合物を意味する。化粧品分野において周知の美容的活性成分を、任意選択の活性成分として使用することができる。好ましくは、追加の化粧品成分は、皮膚等のケラチン物質のケア又はコンディショニングのための活性成分である。例えば、活性成分は、皮膚等のケラチン物質のコンディションを改善するためのものである。
【0053】
追加の活性成分としては、これらに限定されないが、ビタミンの誘導体、例えばビタミンA(レチノール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB3(ナイアシン)等の誘導体、ムコ多糖及びその誘導体、例えばヒアルロン酸及びコンドロイチン並びにこれらの誘導体を挙げることができる。アスコルビン酸の誘導体として、例えば、Exsymol SAM社からPRO-AAとして市販されている5,6-ジ-O-ジメチルシリルアスコルベート;千寿製薬株式会社からSEPIVITAL EPCとして市販されているジ-α-トコフェリル-2-l-アスコルビルホスフェート;Roche社からStay-C 50として市販されているアスコルビルリン酸ナトリウム;株式会社林原から市販されているアスコルビルグルコシド;3-O-エチルアスコルビン酸等を挙げることができる。
【0054】
本発明による組成物中の追加の活性成分の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは1質量%以上であってもよく、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更により好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0055】
(水)
本発明による組成物は、好ましくは水を含む。
【0056】
本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更により好ましくは20質量%以上、であってもよく、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更により好ましくは50質量%以下、特に40質量%以下であってもよい。
【0057】
(補助剤)
本発明による組成物はまた、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性ポリマー、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性界面活性剤、油、疎水性有機溶媒、ガム、樹脂、増粘剤、分散剤(dispersant)、酸化防止剤、緩衝剤、有機又は無機フィラー、フェノキシエタノール等の保存料、補保存料、乳白剤、香料、中和剤、殺菌剤、UV遮蔽剤、エチレンジアミンジコハク酸三ナトリウム等のキレート剤、分散剤(dispersing agent)、染料及び/又は顔料、皮膚軟化剤又はコラーゲン保護剤、並びにこれらの混合物から選択される、化粧品分野において通常使用される任意の補助剤も含んでよい。
【0058】
補助剤は、本発明の組成物中に、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.1質量%~20質量%、より好ましくは0.5質量%~10質量%の範囲の量で存在してもよい。
【0059】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明による組成物は、単相水溶液の形態である。したがって、組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下の量の油を含む。本発明の別の好ましい実施形態において、組成物は油を一切含まない。
【0060】
本発明の別の好ましい実施形態において、組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下の量の、フィラー等の粒状物質を含む。本発明の別の好ましい実施形態において、組成物は粒状物質を一切含まない。
【0061】
本発明の別の好ましい実施形態において、組成物は、好ましくは、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、特に0.1質量%以下の量の界面活性剤を含む。本発明の別の好ましい実施形態において、組成物は界面活性剤を一切含まない。
【0062】
本発明による組成物は、上記の必須成分と任意選択の成分とを従来の方法で混合することによって調製することができる。(a)アスコルビン酸又はその塩が完全に溶解するのを確実にするために、溶解するまで、組成物を約40~80℃に加熱することが好ましい。任意選択の成分のうちの任意のものを混合し、成分が溶解するまで組成物を加熱する工程を更に含むことが可能である。
【0063】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、非治療的方法又はプロセス、好ましくは美容方法又はプロセス、より好ましくは皮膚、頭皮、唇等のケラチン物質、特に顔の皮膚のケア及び/又はコンディショニングのための美容方法又はプロセスであって、
ケラチン物質上に、
(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩;並びに
(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸
を含む組成物を適用する工程を含む方法又はプロセスにも関する。
【0064】
本発明はまた、(a)少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩を水中で安定性にするための、環状アミノ酸の使用にも関する。特に、本発明はまた、(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩を水中で安定性にするための、(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸の使用にも関する。
【0065】
本発明はまた、(a)組成物の総質量に対して15質量%以上の量の少なくとも1種のアスコルビン酸及びその塩を含む安定性の水性組成物を得るための、(b)組成物の総質量に対して1質量%以上の量の少なくとも1種の環状アミノ酸の使用にも関する。
【0066】
上記の本発明による組成物における組成物、(a)アスコルビン酸及びその塩、並びに(b)環状アミノ酸に関する説明と同じ説明を、本発明による方法、プロセス、及び使用のための組成物、アスコルビン酸及びその塩、並びに(b)環状アミノ酸に適用できる。本発明によるプロセス、方法及び使用に用いられる組成物は、本発明による組成物に関して上記に説明された任意選択の成分のいずれを含んでもよい。
【実施例0067】
本発明を、実施例によってより詳細に説明するが、これは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0068】
[組成物]
実施例及び比較例による均一な溶液組成物を、磁気攪拌子を用いて、Table 1(表1)~Table 4(表4)に列挙した成分を混合することによって調製した。アスコルビン酸を溶解するために、組成物を約60℃に加熱し、次いで室温(RT)まで冷却した。Table 1(表1)に示す成分の量についての数値はすべて、活性原料の「質量%」に基づく。すべての実施例によって得られた組成物は、透明だった。
【0069】
[評価]
実施例及び比較例による各組成物をガラス瓶に充填し、表に示すように、各ガラス瓶を、-5℃、4℃、又はRT(25℃)の温度条件下で、1、2、4又は8週間保持した。次いで、各ガラス瓶を目視観察し、以下の基準下で評価した。
【0070】
5:結晶は観察されなかった。
3:結晶が観察された。
1:結晶が、非常に明確に観察された。
【0071】
結果をTable 1(表1)からTable 4(表4)に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
Table 1(表1)~Table 4(表4)から見ることができるように、本発明の(a)アスコルビン酸と(b)環状アミノ酸の特定の組合せを含む実施例による組成物は、アスコルビン酸の結晶を一切生じることなく、長時間、優れた安定性を示した。一方、本発明の特定の組合せを含まない比較例による組成物は、劣る安定性を示し、アスコルビン酸の結晶を生じた。
【0077】
これに応じて、本発明による組成物は、高濃度のアスコルビン酸からもたらされるケラチン物質への美容効果を提供できるため、皮膚等のケラチン物質のケア及び/又はコンディショニングのための化粧用組成物として非常に好適である。
【外国語明細書】