(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090291
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】気体噴射装置並びに気体噴射装置を備える気体混入装置及び海水供給システム
(51)【国際特許分類】
B01F 25/40 20220101AFI20220610BHJP
B01F 25/20 20220101ALI20220610BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20220610BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20220610BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20220610BHJP
B05B 1/04 20060101ALI20220610BHJP
A01K 63/02 20060101ALI20220610BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B01F5/06
B01F5/02 Z
B01F1/00 A
B01F3/04 A
B01F15/02 A
B05B1/04
A01K63/02 A
A01K63/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202601
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】300021002
【氏名又は名称】株式会社森機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】特許業務法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】森 光典
【テーマコード(参考)】
2B104
4F033
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CA01
2B104CA09
2B104EB01
2B104EB04
2B104EB05
4F033BA01
4F033CA05
4F033DA01
4F033EA01
4F033FA00
4F033NA01
4G035AA01
4G035AB06
4G035AC16
4G035AC26
4G035AE13
4G035AE17
4G037AA01
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】 大容量のポンプや複雑な機構を伴わず、したがって煩雑な保守及び点検を要することなく、高濃度の酸素が溶解した海水を生成させることができる気体噴射装置を提供する。
【解決手段】 気体噴射装置は、第1の面及び第2の面を有する気体噴射部と、第1の面と第2の面とが密着するように気体噴射部に力を加える押圧部材と、第1の面と第2の面との間に加圧気体を送る気体供給部とを備える。気体噴射部の第1の面及び第2の面の少なくとも一方は、弾性体で形成されている。気体噴射装置は、第1の面と第2の面との間に加圧気体を送り込むことによって、第1の面と第2の面との間に気体の流路が形成され、その気体の流路を通った加圧気体が第1の面及び第2の面の外周部分において流水中に噴射されるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡を水に混入させるために気体を流水中に噴射する気体噴射装置であって、
対向して配置された第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも一方が弾性体で形成された、気体噴射部と、
前記第1の面と前記第2の面とが密着するように前記気体噴射部に力を加える押圧部材と、
前記第1の面と前記第2の面との間に加圧気体を送る気体供給部と
を備え、
前記気体供給部を介して前記第1の面と前記第2の面との間に加圧気体を送り込むことによって、前記第1の面と前記第2の面との間に気体の流路が形成され、その気体の流路を通った加圧気体が前記第1の面及び前記第2の面の外周部分において両者の間から流水中に噴射される、
気体噴射装置。
【請求項2】
前記第1の面及び前記第2の面は円形である、請求項1に記載の気体噴射装置。
【請求項3】
前記第2の面は金属で形成されている、請求項1又は請求項2に記載の気体噴射装置。
【請求項4】
前記気体の流路は、前記第1の面と前記第2の面との間に送り込まれた加圧気体が弾性体で形成された前記第1の面を弾性変形させることによって形成される、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の気体噴射装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、前記第1の面にその反対の側から力を加えることによって前記第2の面に密着させるものである、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の気体噴射装置。
【請求項6】
前記気体噴射部は、前記第1の面の中央部を通る第1の貫通孔と、前記第2の面の中央部を通り前記第1の貫通孔より大径の第2の貫通孔とを有しており、
前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔に挿通される、前記第1の貫通孔の径に対応する径のシャフトと、
前記第2の面の前記第1の面とは反対の側から延びる前記シャフトを覆うように配置される、前記シャフトの外径より大きい内径の筒状部材と
をさらに備え、
前記シャフトと前記筒状部材との間の隙間及び前記シャフトと前記第2の貫通孔との間の隙間が、前記気体供給部として機能する、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の気体噴射装置。
【請求項7】
気体を流水に混入させるための気体混入装置であって、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の気体噴射装置と、
水を流すことができる内空間を有する配管と
を備え、
前記気体噴射装置は、少なくとも前記第1の面及び前記第2の面が前記内空間を流れる水の中に配置されるように前記配管に取り付けられた、
気体混入装置。
【請求項8】
高濃度の酸素が溶存した海水を1つ又は複数の水槽に供給するための海水供給システムであって、
海水の取水部と、
海水を取水するためのポンプと、
取水された海水が通る主配管と、
前記主配管の海水を1つ又は複数の水槽に分配するための分岐配管と、
前記主配管の途中に設けられた請求項7に記載の気体混入装置と、
前記気体混入装置に酸素を供給する酸素発生器と、
を備える海水供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を水に混入させるための気体混入技術に関し、より具体的には、流れる水中に薄く均一に気体を噴射させることによって微細な気泡を水中に混入させ、それにより水中の気体濃度を増大させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
活魚や活貝等の輸送及び蓄養においては、魚介類の生命を維持する目的で、酸素を海水に溶解して溶存酸素濃度を高めることが行われている。酸素を効率的に海水に溶解させる方法として、酸素の気泡を水に混入させる技術が用いられる。この技術においては、径の小さな多数の気泡を水に混入させることによって、気泡と水との接触面積を大きくする事が重要である。
【0003】
径の小さな多数の気泡を発生させて液体に混入させる技術として、(a)微細孔から気体を吐出させる方式(例えば、特許文献1)、(b)気液混合流体をスリットに通したり、配管内に配置された複数の邪魔板を通過させることによって、大きな気泡を小さな気泡にするせん断方式(例えば、特許文献2)、(c)動力ポンプを用いて気液混合流体を強制的に撹拌して微細な気泡にする方法(例えば、特許文献3)、(d)ベンチュリ管等を利用した気泡発生方法(例えば、特許文献4)が提案されている。これらの技術は、メンテナンスが煩雑であること、気泡サイズが大きく、気体が液体に溶解する効率が低いこと、気泡は小さくなるものの、液体中の気体濃度の増大には不向きであること、構造が複雑化する割には液体中の気体濃度の増大効果が低いことなどといった問題がある。
【0004】
特許文献5及び特許文献6には、略円盤形状の2つの物体の隙間から気液混合液体又は圧縮気体を噴射させることによって気泡を発生させる装置が提案されている。特許文献5に提案される装置は、外方に向かって広がる隙間に、加圧された気液混合液体の流れを形成することによって、気液混合液体内に気泡を発生させるものである。特許文献6に提案される装置は、回転コーンと底部の整流板との間の隙間から圧縮空気を水流内に送り込むことによって、水槽内に気泡を発生させるものである。
【0005】
特許文献5に提案される装置は、気体が溶解した気液混合液体が隙間を通る際の圧力低下を利用して気泡を生成させるものであるため、微細な気泡を発生させることはできるものの、気泡の発生及びそのサイズは、液体に溶解する気体の濃度を高めるには意味がない。特許文献6に提案される装置は、回転するコーンと固定された底部整流板との間の隙間から圧縮空気を噴出させるものであるが、回転するコーンの周縁部に設けられた複数のスリットで空気を分断して気泡を発生させるものである。したがって、コーンを回転させる動力を要し、構造も複雑になり、メンテナンスも煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3226479号公報
【特許文献2】特開2013-604号公報
【特許文献3】特開2009-34578号公報
【特許文献4】特開2000-236762号公報
【特許文献5】特開昭60-54725号公報
【特許文献6】特許第6600779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
漁業の現場では、海水を大型ポンプで揚水し、配管を介して複数の水槽に分配する海水供給システムが用いられている。こうした海水供給システムにおいて、複数の水槽のそれぞれに酸素を混入させる装置を設けることは不経済であり、管理も煩雑になるだけでなく、水槽ごとの溶存酸素濃度のばらつきも発生する。したがって、海水供給配管の根元の一ヶ所で酸素を効果的に海水に混入させ、複数の水槽に供給される全ての海水に均一に必要な量の酸素を高濃度で溶解させる方法が求められている。
【0008】
本発明は、配管を流れる海水に水圧がかかっており、さらに複数の出口バルブの開閉にともなって配管内の海水の圧力変動が発生する海水供給システムにおいて、大容量のポンプや複雑な機構を伴わず、したがって煩雑な保守点検を要することなく、微細な気泡を発生させ、配管を流れる海水全体に行き渡らせることによって高濃度の酸素が溶解した海水を生成させることができる、気体噴射装置及びそれを用いた海水供給システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一態様において、気泡を水に混入させるために気体を流水中に噴射する気体噴射装置を提供する。気体噴射装置は、対向して配置された第1の面及び第2の面を有する気体噴射部と、第1の面と第2の面とが密着するように気体噴射部に力を加える押圧部材と、第1の面と第2の面との間に加圧気体を送る気体供給部とを備える。気体噴射部の第1の面及び第2の面の少なくとも一方は、弾性体で形成されている。この気体噴射装置は、気体供給部を介して第1の面と第2の面との間に加圧気体を送り込むことによって、第1の面と第2の面との間に気体の流路が形成され、その気体の流路を通った加圧気体が第1の面及び第2の面の外周部分において両者の間から流水中に噴射されるように構成されている。
【0010】
一実施形態においては、第1の面及び第2の面が円形であることが好ましい。別の実施形態においては、第2の面が金属で形成されていることが好ましい。
【0011】
一実施形態においては、気体の流路は、第1の面と第2の面との間に送り込まれた加圧気体が弾性体で形成された第1の面を弾性変形させることによって、形成されるものである。押圧部材は、第1の面にその反対の側から力を加えることによって第2の面に密着させるように構成されることが好ましい。
【0012】
一実施形態においては、気体噴射部は、第1の面の中央部を通る第1の貫通孔と、第2の面の中央部を通り第1の貫通孔より大径の第2の貫通孔とを有しており、第1の貫通孔及び第2の貫通孔に挿通される、第1の貫通孔の径に対応する径のシャフトと、第2の面の第1の面とは反対の側から延びるシャフトを覆うように配置される、シャフトの外径より大きい内径の筒状部材とをさらに備えることが好ましい。この構成において、シャフトと筒状部材との間の隙間及びシャフトと第2の貫通孔との間の隙間が、気体供給部として機能する。
【0013】
本発明は、別の態様において、気体を流水に混入させるための気体混入装置を提供する。気体混入装置は、上記のいずれかの気体噴射装置と、水を流すことができる内空間を有する配管とを備え、気体噴射装置は、少なくとも第1の面及び第2の面が内空間を流れる水の中に配置されるように配管に取り付けられている。
【0014】
本発明は、さらに別の態様において、高濃度の酸素が溶存した海水を1つ又は複数の水槽に供給するための海水供給システムを提供する。海水供給システムは、海水の取水部と、海水を取水するためのポンプと、取水された海水が通る主配管と、主配管の海水を1つ又は複数の水槽に分配するための分岐配管とを備えており、主配管の途中には、上記の酸素混入装置が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大容量のポンプや複雑な機構を使用しないため、保守及び点検の手間を軽減することが可能な気体噴射装置及び気体混入装置を提供することができる。これらの装置を用いることによって、配管を流れる大量の海水中に、その水量に対して十分な量の微細気泡を発生させることができるため、魚介類の生命維持のために必要な量の酸素を海水に溶解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る気体噴射装置を備える海水供給システムの構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る気体噴射装置を備える気体混入装置の構成を、水流を横切る向きの断面で示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る気体噴射装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る気体噴射装置100を備える海水供給システム1の構成を概略的に示す図である。
図2は、気体噴射装置100を備える気体混入装置10の構成を、水流を横切る向きの断面で示す図である。
図3は、気体噴射装置100の構成を示す図である。気体噴射装置100は、海水を大型ポンプで揚水し、配管を通して複数の水槽に海水を分配する海水供給システム1において、気体混入装置10に組み込んで用いることができる。
【0018】
図1に示される海水供給システム1は、取水部2で取水された海水を、主配管3及び複数の分岐配管4を通して複数の水槽5に供給するものである。主配管3の途中には、海水を揚水するためのポンプ7が設けられている。複数の分岐配管4の各々には、複数の水槽5に供給される海水量をコントロールするための開閉バルブ6が設けられている。海水供給システム1においては、通常、配管内部の海水の圧力は0.1MPa~0.2MPa程度であり、さらに開閉バルブ6の作動によって圧力の変動が生じる。
【0019】
気体混入装置10は、主配管3の途中に設けられており、ポンプ7で揚水された海水に、酸素発生器8で発生させた加圧酸素Oを高効率で混入させることができる。気体混入装置10の気体噴射装置100からは、後述のように加圧酸素Oが海水中に噴射され、噴射された酸素Oは、主配管3の内部を流れる海水によって分断されながら微細な気泡となる。微細な気泡となって海水中に混入した酸素Oは、主配管3及び複数の分岐配管4を流れる間に海水に溶解する。海水供給システム1では、微細な気泡が一定速度で流されるため、主配管3及び分岐配管4の内部での再合泡が少なく、複数の水槽5に注がれる時も大きな気泡が発生しにくい。また、複数の水槽5に流れ出た海水中の微細気泡は、海水流とともに水槽5全体に広まるため、水槽5内の海水の酸素濃度は均一である。
【0020】
海水供給システム1の配管は、通常、直径80mm~150mmのものが用いられ、流水量は、毎分500リットル~毎分1000リットル程度である。このような海水供給システム1において、海水の酸素濃度を必要な濃度まで上昇させるためには、毎分10リットル~20リットルの酸素を微細気泡化して海水に噴出させる必要がある。
【0021】
気体混入装置10は、
図2に示されるように、気体噴射装置100と、主配管3の一部を構成する配管31とを備える。気体噴射装置100は、取付具11によって配管31に取り付けることができる。取付具11は、上取付具11aと下取付具11bとを配管31を挟むように配置し、ボルト及びナットなどの締結具12を用いて締め付けることによって、配管31に取り付けられる。取付具11をこのように構成することによって、様々な径の配管31に対応可能である。
【0022】
気体噴射装置100は、上取付具11aに設けられた挿入孔11cに挿通され、固定部13で上取付具11aに固定することができる。固定部13においては、例えば内部にめねじ(図示せず)が切られており、このめねじと、気体噴射装置100の外周に切られたおねじ(図示せず)又は外周に設けられたおねじ部(図示せず)とを螺合させることによって、気体噴射装置100を上取付具11aに固定することができる。
【0023】
上取付具11aに固定された気体噴射装置100は、配管31に設けられた挿入孔31aを通して配管31の内部に挿入される。配管31の内部には海水Wが流れており、気体噴射装置100の気体噴射部101が、流れる海水Wの中に配置される。気体噴射装置100の気体導入口109から導入された加圧酸素Oは、気体噴射装置100の内部を通って気体噴射部101から海水W中に噴射される。
【0024】
次に、気体噴射装置100の詳細を説明する。
気体噴射装置100は、
図3に示されるように、加圧酸素Oを海水中に噴射する気体噴射部101を有する。気体噴射部101は、円盤102及び円盤103を有し、2つの円盤102及び円盤103は、円盤102の上面102aと、円盤103の下面103aとが互いに対向するように配置される。円盤102は弾性体の円盤であり、ゴム製の円盤であることが好ましい。円盤103は、円盤102より高い硬度を有する円盤であり、金属製の円盤であることが好ましい。例えば、円盤102はウレタンゴム製の円盤を用い、円盤103はステンレス鋼の円盤を用いることがより好ましい。2つの円盤102及び円盤103は、後述される押上盤110からの力によって、互いに密着するようになっている。
【0025】
円盤102及び円盤103は、それぞれ単一の材料で作製されている必要はない。例えば、円盤102は、適宜選択された基材円盤の円盤103に対向する側に、ゴム円板を貼り合わせたものであってもよい。同様に、円盤103は、適宜選択された基材円盤の円盤102に対向する側に、金属円板を貼り合わせたものであってもよい。また、円盤102及び円盤103のいずれか一方が単一の材料で作製され、他方が基材円盤に必要な材質の円板を貼り合わせたものとすることもできる。また、円盤102及び円盤103は、いずれも弾性体であるが、一方の硬度が他方の硬度より相対的に大きくなるような材料で作製されてもよい。
【0026】
円盤102及び円盤103の直径は、特に限定されるものではなく、用いられる材料の種類、配管供給システムの配管のサイズ、加圧酸素Oの供給量などに応じて、上面102a及び下面103aに歪みが生じない範囲で、適宜選択することができる。円盤102及び円盤103の厚みは、特に限定されるものではないが、選択される直径に応じて、上面102a及び下面103aに歪みが発生しない程度の厚みを選択することが好ましい。例えば、直径が大きい円盤の場合には、薄すぎると上面102aや下面103aに歪みが生じる可能性があるため、直径を大きくする場合には、必要に応じて厚みも大きくすることが好ましい。一実施形態において、円盤102及び円盤103は、限定されるものではないが、直径10~20mm程度、厚さ3mm~10mm程度であることが好ましい。
【0027】
円盤102は、上面102aの中央部を通る貫通孔102bを有し、円盤103は、下面103aの中央部を通る貫通孔103bを有する。これらの貫通孔102b、103bには、シャフト105が通される。貫通孔102bの径は、貫通孔103bの径より小さく、シャフト105の外面105aとの間に隙間が生じない大きさである。貫通孔103bの径はシャフト105の径より大きく、両者の隙間107aに供給された加圧酸素Oが、円盤102の上面102aと円盤103の下面103aとの間に入り、上面102aを押し広げて隙間104を形成する。この隙間104は、加圧酸素Oの流路となる。なお、
図3では流路104は一定の間隔の隙間として描かれているが、後述されるように、上面102aと下面103aとの間に加圧酸素Oが供給されていない場合や加圧酸素Oの圧力が小さい場合には、上面102aと下面103aとが密着した状態になっており、流路104は形成されない。
【0028】
円盤102は、耐摩耗性・耐腐食性を有し、加圧酸素の圧力が作用していないときには平面を維持しており、加圧酸素の圧力が作用したときに加圧酸素で押し広げられて円盤103の下面103aに対向する部分に流路104が形成される材料で作製されたものが用いられる。円盤102の材料は、反発弾性に優れた物質であることが好ましく、ゴムを用いる場合の硬度は、限定されるものではないが50以上であることが好ましく、50~60であることがより好ましい。気体噴射装置100は、酸素以外の気体の混入にも用いることができるが、円盤102は、用いられる気体に対する腐食性、反応性などを考慮して選択されることが好ましい。円盤102の材料として、ウレタンゴム以外に、例えばシリコーンゴム、天然ゴムなどを適宜選択して用いることができる。同様に、円盤103は、耐摩耗性・耐腐食性を有し、加圧酸素の圧力が作用したときに円盤102の上面102aに加圧酸素Oの流路104を形成させることができる硬さの材料で作製されたものであればよい。円盤103の材料として、ステンレス鋼以外に、例えば耐腐食性に優れたチタンなどを用いることができる。ステンレス鋼については、気泡を混入させる液体の酸性度等に応じて、SUS304、SUS316などを適宜選択して使用することができる。ステンレス鋼の円盤103の下面103aは、例えばP400番程度のバフ研磨によって鏡面加工されることがより好ましい。
【0029】
円盤102及び円盤103は、本実施形態では円形の盤として構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば多角形盤であってもよい。また、円盤102及び円盤103が、基材と板状体とで形成される場合には、互いに対向する上面102a及び下面103aが平面状に形成されていれば、板状体の他の部分の形状、及び基材の形状は、特に限定されるものではない。加圧酸素の圧力は、上面102a及び下面103aの材料に応じて、密着した上面102aと下面103aとの間に加圧酸素Oの流路104が形成されるのに十分な圧力を、適宜設定すればよい。
【0030】
貫通孔102b及び貫通孔103bには、上述のように、シャフト105が挿通される。シャフト105は、円盤103の下面103aとは反対側の面から、その面に直交する方向に延びており、円盤103から延びたシャフト105の部分は、中空のパイプ106内に収納されている。シャフト105の外径及びパイプ106の内径は、シャフト105の外面105aとパイプ106の内面106aとの間に隙間107bが設けられるように設定されている。シャフト105及パイプ106の上端部には、気体導入部108が設けられており、その側方に設けられた気体導入口109と隙間107bとが連通している。気体導入口109から気体噴射装置100に供給された加圧酸素Oは、隙間107bと隙間107aとをこの順で通り、円盤102と円盤103との間に送り込まれる。このように、隙間107a及び隙間107bは、加圧酸素Oの供給部として機能する。
【0031】
円盤102の下方(円盤103が配置された側とは反対側)には、円盤102に対して円盤103の方向への力を加えるための押上盤110が設けられる。押上盤110は、好ましくは円盤102と同じ径の部材であり、中央部にはシャフト105が挿通する貫通孔110aが形成されている。貫通孔110aの内表面はめねじ加工を施して、シャフト105の対応する位置に設けられたねじ山と螺合するようになっていることが好ましい。押上盤110を締め込むことによって、円盤102に円盤103の方向への力を加えて、上面102aを下面103aに密着させることができる。上面102aと下面103aとが密着した状態で押上盤110を固定することができるように、押上盤110の下方にシャフト105と螺合するロックナット111を設けることがより好ましい。押上盤110及び必要に応じて設けられるロックナット111は、限定されるものではないが、円盤102の上面102aと円盤103の下面103aとの間から、例えば0.3MPa程度で加圧酸素が噴射されるように、締め込む力が調整される。
【0032】
次に、海水供給システム1において気体混入装置10(気体噴射装置100)による海水中への酸素混入方法を説明する。まず、
図1に示されるように構成された海水供給システム1において、ポンプ7を作動させて、取水部2から海水を揚水する。また、酸素発生器8と、主配管3の途中に設けられた気体混入装置10とを、例えば直径6mm程度のチューブで連結し、酸素発生器8を作動させる。
【0033】
酸素発生器8で発生された加圧酸素Oは、チューブを通って気体混入装置10に供給される。加圧酸素Oは、例えば、流量が毎分10リットル~毎分20リットル、圧力が0.3MPa~0.4MPaである。酸素発生器8から吐出される酸素の圧力が必要な圧力に満たない場合には、必要に応じてコンプレッサを用いて昇圧することが好ましい。
【0034】
気体混入装置10に供給された加圧酸素Oは、
図2及び
図3に示される気体噴射装置100の気体導入口109から気体噴射装置100の内部に導入される。加圧酸素Oは、気体導入口109から、シャフト105の外面105aとパイプ106の内面106aとの間に設けられた、加圧酸素Oの供給部として機能する隙間107bを通って、気体噴射部101に供給される。
【0035】
気体噴射部101に供給された加圧酸素Oは、さらに、円盤103の貫通孔103bの内面とシャフト105の外面105aとの間に設けられた、隙間107bとともに加圧酸素Oの供給部として機能する隙間107aを通って、上面102aと下面103aとの間に供給される。上面102aと下面103aとは、加圧酸素Oが供給されていない状態のときには密着しているが、加圧酸素Oが供給されたときには、弾性体(本実施形態においてはウレタンゴム)で作製された上面102aが加圧酸素Oの圧力で押し広げられて、上面102aと下面103aとの間に加圧酸素Oの流路104が形成される。この流路104は、非常に薄く、狭く、不規則で不安定であり、加圧酸素Oの圧力が低い場合又は加圧酸素Oの供給が停止された場合は塞がり、加圧すると新たに形成される。
【0036】
気体噴射部101から噴射された加圧酸素Oは、気体噴射部101の周囲を流れる質量の大きな海水によって分断され、微細な気泡となり、海水とともに主配管3の内部を流される。流された微細気泡は、分岐配管4を通って水槽5に流出する。
【0037】
一例として、気体噴射装置100に供給される加圧酸素の量を毎分10リットルとし、円盤102として硬度50、直径15mm、厚さ3mmのウレタンゴム、円盤103として直径15mm、厚さ3mm、ステンレス鋼を用いた場合には、加圧酸素の圧力が0.3MP、押上盤110の締め込み力が約17.5cN・mのときに、30μm~300μm程度のサイズの微細な気泡を発生させることができた。
【符号の説明】
【0038】
1 海水供給システム
2 取水部
3 主配管
4 分岐配管
5 水槽
6 開閉バルブ
7 ポンプ
8 酸素発生器
10 気体混入装置
11、11a、11b 取付具
11c 挿入孔
12 締結具
13 固定部
31 配管
31a 挿入孔
100 気体噴射装置
101 気体噴射部
102 ウレタンゴム円盤
102a 上面(第1の面)
102b 貫通孔
103 金属円盤
103a 下面(第2の面)
103b 貫通孔
104 隙間(気体の流路)
105 シャフト
105a シャフト外面
106 パイプ(筒状部材)
106a パイプ内面
107a、107b 隙間(気体供給部)
108 気体導入部
109 気体導入口
110 押上盤(押圧部材)
110a 貫通孔
111 ロックナット