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特開2022-90293ずれ止め用孔充填モルタル組成物及びずれ止め用孔充填モルタル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090293
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ずれ止め用孔充填モルタル組成物及びずれ止め用孔充填モルタル
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220610BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220610BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20220610BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20220610BHJP
   C04B 24/28 20060101ALI20220610BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20220610BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/26 G
C04B22/08 Z
C04B22/14 B
C04B24/28 A
C04B24/22 E
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202605
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤江 信哉
【テーマコード(参考)】
2D059
4G112
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059AA17
2D059GG55
4G112MB26
4G112PB25
4G112PB28
4G112PB33
(57)【要約】
【課題】十分な圧縮強度を有し、且つ、ヤング定数が低く、割裂引張強度が高いことで、ずれ止めに作用する応力を十分に低減できる、ずれ止め用孔充填モルタル組成物及びずれ止め用孔充填モルタルを提供すること。
【解決手段】結合材と細骨材を含む組成物であって、組成物において樹脂組成物を含み、組成物を硬化させた際の材齢28日の性質が、割裂引張強度で3N/mm以上であり、ヤング係数が29kN/mm以下である、ずれ止め用孔充填モルタル組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材と細骨材を含む組成物であって、
前記組成物において樹脂組成物を含み、
前記組成物を硬化させた際の材齢28日の性質が、割裂引張強度で3N/mm以上であり、ヤング係数が29kN/mm以下である、ずれ止め用孔充填モルタル組成物。
【請求項2】
前記細骨材の含有量が、前記結合材100質量部に対し、30~500質量部である、請求項1に記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物。
【請求項3】
粗骨材の含有量が、前記結合材100質量部に対し、110質量部以下である、請求項1又は2に記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物。
【請求項4】
前記結合材が、セメント、速硬性混和材、減水剤を含む、無機系結合材である、請求項1~3のいずれか一項に記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物。
【請求項5】
前記結合材が、熱硬化性樹脂組成物を含む有機系結合材である、請求項1~3のいずれか一項に記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物。
【請求項6】
請求項4に記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物と、水とを含み、
前記水の含有量が、前記結合材100質量部に対し、5~40質量部である、ずれ止め用孔充填モルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ずれ止め用孔充填モルタル組成物及びずれ止め用孔充填モルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼桁とプレキャストコンクリート床版とを鋼桁の上面に突設された頭付きスタッド等で一体化した鋼桁とプレキャスト床版との合成構造が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような合成構造では、コンクリート床版の浮き上がりを防止するためにスラブ止めの代わりとして配置したスタッドが、コンクリート床版と鋼桁との間のずれ止めとして挙動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-71274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上述した合成構造は、コンクリート床版と鋼桁との間の合成作用により設計上無視できない引張応力がコンクリートに発生するとともに、スタッド等のずれ止めにも大きな応力が作用する恐れがあり問題であった。
【0006】
ところで、このような鋼桁とプレキャスト床版との合成構造では、スタッドの本数が多いためプレキャスト床版には多数の箱抜き穴を設ける必要がある。プレキャスト床版の取替えの際、新設床版の耐久性向上のため、鋼桁とプレキャスト床版との隙間には高強度無収縮グラウト材が適用されている。プレキャスト床版のずれ止め設置用箱抜き部(頭付きスタッド用孔)には収縮低減タイプのコンクリートや無収縮モルタルが適用されている。ずれ止め設置用箱抜き部を充填する材料においては、床版上のアスファルトから受ける車両交通による移動輪荷重への高い耐久性が要求される。しかしながら、従来の材料はスタッド等のずれ止めに作用する上記のような応力への充填材の硬化特性については十分に検討されていなかった。
【0007】
したがって、本発明では、十分な圧縮強度を有し、且つ、ヤング定数が低く、割裂引張強度が高いことで、ずれ止めに作用する応力を十分に低減できる、ずれ止め用孔充填モルタル組成物及びずれ止め用孔充填モルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、発明者が鋭意検討した結果、材料として樹脂組成物を含み、割裂引張強度とヤング定数が特定の値を満たす材料であれば、ずれ止め用孔の充填に好適に用いることができることを見出した。
【0009】
本発明は、すなわち、以下のとおりである。
[1]結合材と細骨材を含む組成物であって、組成物において樹脂組成物を含み、組成物を硬化させた際の材齢28日の性質が、割裂引張強度で3N/mm以上であり、ヤング係数が29kN/mm以下である、ずれ止め用孔充填モルタル組成物。
[2]細骨材の含有量が、結合材100質量部に対し、30~500質量部である、[1]に記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物。
[3]粗骨材の含有量が、結合材100質量部に対し、110質量部以下である、[1]又は[2]に記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物。
[4]結合材が、セメント、速硬性混和材、減水剤を含む、無機系結合材である、[1]~[3]のいずれかに記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物。
[5]結合材が、熱硬化性樹脂組成物を含む有機系結合材である、[1]~[3]のいずれかに記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物。
[6][4]に記載のずれ止め用孔充填モルタル組成物と、水とを含み、水の含有量が、結合材100質量部に対し、5~40質量部である、ずれ止め用孔充填モルタル。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な圧縮強度を有し、且つ、ヤング定数が低く、割裂引張強度が高いことで、ずれ止めに作用する応力を十分に低減できる、ずれ止め用孔充填モルタル組成物及びずれ止め用孔充填モルタルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本明細書において、「ずれ止め用孔」とは、コンクリート等の床版と鋼桁等との合成構造を形成する際に、スタッドジベル等のずれ止めを設置するための孔を指す。
【0012】
本実施形態のずれ止め用孔充填モルタル組成物は、結合材と細骨材を含む組成物であって、組成物において樹脂組成物を含む。
【0013】
本実施形態に係る結合材は、硬化するものであれば特に限定はされず、無機系結合材、有機系結合材等が挙げられる。
【0014】
無機系結合材としては、例えば、セメントを主成分とするものである。セメント以外の添加物としては、速硬性混和材、減水剤、凝結遅延剤等が挙げられる。
【0015】
セメントは、種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント;高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカフュームを含む混合セメント;エコセメント等が挙げられる。セメントとしては、初期の強度発現性が更に増加するという観点から、早強ポルトランドセメントが好ましい。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0016】
速硬性混和材は、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなるものである。初期の強度発現性をより確保しやすいという観点から、速硬性混和材の含有量は、セメント100質量部に対し、10~65質量部であることが好ましく、15~60質量部であることがより好ましく、20~55質量部であることが更に好ましい。
【0017】
速硬性混和材におけるカルシウムアルミネート類と石膏類との質量比率([カルシウムアルミネート類の質量]:[石膏類の質量])は3:7~7:3であることが好ましく、4:6~6:4であることがより好ましい。速硬性混和材におけるカルシウムアルミネート類と石膏類との質量比率が上記範囲内であれば、十分な圧縮強度と割裂引張強度を両立しやすい。
【0018】
カルシウムアルミネート類としては、CaOをC、AlをA、NaOをN、及びFeをFとして表したとき、CA、CA、C12、CA、又はCA等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、CAF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したC・CaFやC11・CaF等と表示されるカルシウムフルオロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート、CNAやC等と表示されるカルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムリチウムアルミネート、アルミナセメント、並びにC・CaSO等と表示されるカルシウムサルホアルミネートを総称するものである。このカルシウムアルミネート類は、結晶質のもの、非結晶質のもの、非晶質及び結晶質が混在したもののいずれも使用可能である。カルシウムアルミネート類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。カルシウムアルミネート類の粉末度は、初期強度発現性をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で3000cm/g以上であることが好ましく、5000cm/g以上であることがより好ましい。また、カルシウムアルミネート類の粉末度は、ブレーン比表面積で8000cm/g以下であることが好ましい。
【0019】
石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられる。石膏類としては、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0020】
減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤、アクリル系減水剤が挙げられる。これらの中では、ナフタレンスルホン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0021】
減水剤の含有量は、セメント100質量部に対し、0.5~7.5質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましく、1.5~3質量部であることが最も好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際により良好な施工性が得られやすく、圧縮強度も向上しやすい。
【0022】
凝結遅延剤を含むことで、夏場等ポリマーセメントモルタルの練り上り温度が高くなる場合においても、可使時間を確保しやすい。凝結遅延剤としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はその塩;ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等の無機塩;糖類が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、クエン酸塩、酒石酸、酒石酸塩、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。凝結遅延剤は、粉体であってもよく、液状体(例えば、水溶液、エマルジョン、懸濁液の形態)であってもよい。凝結遅延剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0023】
凝結遅延剤の含有量は、セメント100質量部に対し、0.1~7.5質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましく、0.5~3.5質量部であることが最も好ましい。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を更に確保しやすく、初期強度発現性が低下しにくい。
【0024】
本実施形態に係る無機系結合材には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤(材)を配合してもよい。混和剤(材)としては,例えば、消泡剤、発泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、繊維、膨張材、促進材剤、強度増進材が挙げられる。
【0025】
有機系結合材としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は一種を単独で用いてもよく、または二種以上を併せて用いてもよい。強度発現性に優れやすく、コンクリート及び鋼材への付着性も得られやすいという観点から、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0026】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂の中でも、ヤング定数を低く抑えつつ、強度発現性及び割裂引張強度が高くなりやすいという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい
【0027】
有機系結合材は、硬化が更に促進されるという観点から硬化剤を含んでもよい。硬化剤は、熱硬化性樹脂に応じて適宜選択することができる。エポキシ樹脂用の硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤が挙げられる。硬化剤としては、硬化促進効果と可使時間の確保が両立しやすいという観点から、アミン系硬化剤が好ましく、アミド基を有するアミン系硬化剤がより好ましい。
硬化剤の含有量は、使用する有機結合材の樹脂組成物の種類、目的とする性能に合わせて適宜調整することができる。硬化剤の含有量は、硬化促進効果と可使時間の確保が両立しやすいという観点から、有機結合材の樹脂組成物100質量部に対し、10~60質量部であることが好ましく、20~55質量部であることがより好ましく、30~50質量部であることが更に好ましい。
【0028】
本実施形態のモルタル組成物は樹脂組成物を含む。樹脂組成物としては、無機系結合材を使用する際にはセメント用ポリマーが該当し、有機系結合材を使用する際には有機系結合材自体が樹脂組成物に該当する。
【0029】
セメント用ポリマーは、JIS A 6203:2015「セメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂」に規定されるポリマーが好ましい。このようなセメント用ポリマーとしては、ポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂等が挙げられる。ポリマーディスパージョンとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴム系;天然ゴム系;ゴムアスファルト系;エチレン酢酸ビニル系;アクリル酸エステル系;樹脂アスファルト系等が挙げられる。ポリマーディスパージョンは、中でも、合成ゴム系、エチレン酢酸ビニル系及びアクリル酸エステル系が好ましく、具体的には、合成ゴムラテックス、ポリアクリル酸エステル、エチレン酢酸ビニルがより好ましい。再乳化形粉末樹脂としては、スチレンブタジエンゴム等の合成ゴム系;アクリル酸エステル系;エチレン酢酸ビニル系;酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル;酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル等が挙げられる。セメント用ポリマーとしては、ポリマーディスパージョンを用いてもよく、再乳化形粉末樹脂を用いてもよく、ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂を併用してもよい。
【0030】
セメント用ポリマーの中でも、コンクリート及び鋼材との付着性がより向上するという観点から、スチレンブタジエンゴムのポリマーディスパージョン及び/又は再乳化粉末樹脂が好ましい。スチレンブタジエンゴムは、スチレン及びブタジエンを共重合した合成ゴムの一種であり、スチレン含有量や加硫量により品質を適宜調整することができる。セメント混和用としては、安定性や付着性を向上させるという観点から、結合スチレン量が50~70質量%のものが多く使用されている。セメント用ポリマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0031】
セメント用ポリマーの含有量は、結合材100質量部に対し、固形分換算で3~30質量部であることが好ましく、5~27質量部であることがより好ましく、7~25質量部であることが更に好ましい。セメント用ポリマーの含有量が上記範囲内であると、ヤング定数をより低く抑えつつ、コンクリート及び鋼材への付着性に一層優れたものとなる。
【0032】
細骨材は特に限定されず、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材、軽量骨材等が挙げられる。これらの細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0033】
細骨材の含有量は、結合材100質量部に対し、30~500質量部であることが好ましく、35~450質量部であることがより好ましく、40~400質量部であることが更に好ましい。細骨材の含有量が上記範囲内であると、十分な圧縮強度と割裂引張強度を両立しやすい。
【0034】
本実施形態のモルタル組成物は、粗骨材を含んでもよい。粗骨材は、珪石、石灰石、安山岩、砂岩、玄武岩等の砕石や砂利が挙げられる。粗骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。粗骨材の含有量は、結合材100質量部に対し、110質量部以下であることが好ましく、1~80質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることが更に好ましい。
【0035】
本実施形態のモルタル組成物を製造する方法は、特に限定されず、例えば、V型混合機等の重力式ミキサー、ヘンシェル式ミキサー、噴射型ミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー等のミキサーにより混合することで製造することができる。
【0036】
無機系結合材を用いたモルタル組成物は、水と混合してモルタルとして調製することができ、その水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、結合材100質量部に対し、5~40質量部であることが好ましく、8~38質量部であることがより好ましく、10~35質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、より流動性を確保しやすく、材料分離の発生、硬化体の収縮の増加及び初期強度発現性の低下を抑制しやすい。
【0037】
本実施形態のモルタルの調製は、通常のポリマーセメントモルタルと同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、ホバートミキサ、ハンドミキサ、傾胴ミキサー、強制2軸ミキサーを用いることができる。
【0038】
本実施形態のモルタル組成物及びモルタルは、硬化させた際の材齢28日における圧縮強度が、11N/mm以上であることが好ましく、13N/mm以上であることが好ましく、15N/mm以上であることがより好ましく、23N/mm以上であることが更に好ましい。圧縮強度の上限は特に限定されないが、80N/mm以下であってもよく、50N/mm以下であってもよい。圧縮強度が上記範囲内であれば、ずれ止めに作用する応力耐性が更に向上し、床版が劣化しにくい。
圧縮強度は、日本工業規格JIS A 1108:2006「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて、材齢28日における圧縮強度を測定する。この際、供試体の寸法は直径50mm、高さ100mmである。材齢28日の供試体は材齢日まで封緘で養生し、養生は常に20℃の恒温槽内で行う。
【0039】
本実施形態のモルタル組成物及びモルタルは、硬化させた際の材齢28日におけるヤング定数が、29kN/mm以下である。ヤング定数が上記範囲外であると、ずれ止めに作用する応力耐性が不足し、床版が劣化する恐れがある。ヤング定数としては、25kN/mm以下であることが好ましく、20kN/mm以下であることがより好ましい。ヤング定数の下限は特に限定されないが、0.1kN/mm以上であってもよく、0.5kN/mm以上であってもよい。
ヤング定数は、日本工業規格JIS A 1149:2010「コンクリートの静弾性係数試験方法」に準じて、材齢28日におけるヤング係数を測定する。供試体の寸法は直径50mm、高さ100mmである。材齢28日の供試体は材齢日まで封緘で養生し、養生は常に20℃の恒温槽内で行う。
【0040】
本実施形態のモルタル組成物及びモルタルは、硬化させた際の材齢28日における割裂引張強度が、3.0N/mm以上である。割裂引張強度が上記範囲外であると、ずれ止めに作用する応力耐性が不足し、床版が劣化する恐れがある。割裂引張強度としては、3.3N/mm以上であることが好ましく、3.5N/mm以上であることがより好ましく、4.0N/mm以上であることが更に好ましい。
割裂引張強度は、日本工業規格JIS A 1113:2018「コンクリートの割裂引張強度試験方法」に準じて、材齢28日における割裂引張強度を測定する。この際、供試体の寸法は直径50mm、高さ100mmである。材齢28日の供試体は材齢日まで封緘で養生し、養生は常に20℃の恒温槽内で行う。
【0041】
本実施形態のモルタル組成物及びモルタルは、硬化した際のヤング定数が低く、且つ圧縮強度及び割裂引張強度に優れるものであるため、垂直方向及び水平方向への応力への耐性に優れたものとなる。すなわち、本実施形態のモルタル組成物及びモルタルは、アスファルトや車両の荷重にも強く、車両の移動時にずれ止めから受ける負荷にも強いため、床版のずれ止め孔を充填する材料として好適に用いることができる。本実施形態のモルタル組成物及びモルタルの使用方法は適宜選択することができ、ずれ止め用孔に流し込む方法、充填後バイブレーター等で均した後にコテで仕上げる方法等が選択できる。
【実施例0042】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
[材料]
実施例で用いる材料は以下のとおりである。
セメント:早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント
速硬性混和材:カルシウムアルミネートと無水石膏との質量比率が6:4である速硬性混和材
細骨材:珪砂
軽量骨材:パーライト
粗骨材:豆砂利
セメント用ポリマー:SBR系エマルジョン
減水剤:ナフタレンスルホン酸系減水剤
凝結遅延剤:クエン酸
膨張材:生石灰系膨張材
増粘剤:水溶性セルロースエーテル
発泡剤:アルミニウム粉末
熱硬化性樹脂:ビスフェノール系エポキシ樹脂
硬化剤:アミン系硬化剤
強度増進材:シリカフューム
【0044】
[結合材]
結合材A(無収縮モルタル):セメント100質量部(普通ポルトランドセメントを38質量部、早強ポルトランドセメントを62質量部)に対し、膨張材を4質量部、減水剤を0.5質量部、発泡剤を0.001質量部配合したもの。
結合材B(軽量無収縮モルタル):セメント100質量部(普通ポルトランドセメントを65質量部、早強セメントを35質量部)に対し、膨張材を1.5質量部、減水剤を0.2質量部、増粘剤を0.1質量部、発泡剤を0.002質量部配合したもの。
結合材C(ポリマーセメントモルタルA、B、C、ポリマーセメントコンクリート):セメント(早強ポルトランドセメント)100質量部に対し、速硬性混和材を43質量部、減水剤を2.0質量部、凝結遅延剤を1.0質量部、配合したもの。
結合材C(ポリマーセメントモルタルD、E):セメント(早強ポルトランドセメント)100質量部に対し、膨張材を5質量部、強度増進材を10質量部、減水剤を1.2質量部、配合したもの。
結合材E(樹脂モルタル):熱硬化性樹脂100質量部に対し、硬化剤を40質量部配合したもの。
【0045】
[モルタルおよびコンクリート組成物の配合設計]
表1に示す割合となるように配合設計した。No.2、5、9、10に対しては、細骨材として珪砂以外に所定の単位容積質量になるよう軽量骨材を用いて調整した。
【0046】
[モルタルの作製]
20℃環境下において、10Lの円筒容器に配合設計したモルタル組成物の各材料を添加し、ハンドミキサで60秒混練してモルタルを約3L作製した。
【0047】
【表1】
【0048】
[評価方法]
各項目について以下の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
・圧縮強度
日本工業規格JIS A 1108:2006「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて、材齢28日における圧縮強度を測定した。供試体の寸法は直径50mm、高さ100mmとした。材齢28日の供試体は材齢日まで封緘で養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。
・ヤング係数
日本工業規格JIS A 1149:2010「コンクリートの静弾性係数試験方法」に準じて、材齢28日におけるヤング係数を測定した。供試体の寸法は直径50mm、高さ100mmとした。材齢28日の供試体は材齢日まで封緘で養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。
・コンクリートとの付着強度
30cm×30cm×6cmのコンクリート平板に作製したモルタル又はコンクリートを厚さ10mmで施工し、材齢28日における付着強度を測定した。モルタル又はコンクリートが硬化した後、40mm×40mmのサイズでモルタル又はコンクリート部分をカットして供試体を作製し、材齢日まで気中で養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。供試体は建研式引張試験機にて付着強度を測定した。
・鋼材との付着強度
300mm×300mm×6mmの鋼板に作製したモルタル又はコンクリートを厚さ10mmで施工し、材齢28日における付着強度を測定した。モルタル又はコンクリートが硬化した後、40mm×40mmのサイズでモルタル又はコンクリート部分をカットして供試体を作製し、材齢日まで気中で養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。供試体は建研式引張試験機にて付着強度を測定した。
・割裂引張強度
日本工業規格JIS A 1113:2018「コンクリートの割裂引張強度試験方法」に準じて、材齢28日における圧縮強度を測定した。供試体の寸法は直径50mm、高さ100mmとした。材齢28日の供試体は材齢日まで封緘で養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。
【0049】
【表2】