(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090307
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】スクリーン印刷版及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/24 20060101AFI20220610BHJP
B41C 1/14 20060101ALI20220610BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20220610BHJP
C25D 1/10 20060101ALI20220610BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20220610BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B41N1/24
B41C1/14
B41M1/12
C25D1/10 311
H05K3/12 610P
H01G4/30 517
H01G4/30 311D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202634
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100158665
【弁理士】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】石原 章次
【テーマコード(参考)】
2H084
2H113
2H114
5E001
5E082
5E343
【Fターム(参考)】
2H084AA26
2H084AA32
2H084BB02
2H084BB08
2H084BB13
2H084CC10
2H084CF07
2H113AA01
2H113AA02
2H113AA06
2H113BA10
2H113BB07
2H113BB09
2H113BB22
2H113BB32
2H113BC12
2H113CA17
2H113DA04
2H113DA68
2H113EA06
2H113EA07
2H113EA15
2H114AB04
2H114AB08
2H114AB11
2H114AB12
2H114AB13
2H114AB17
2H114DA03
2H114DA04
2H114DA76
2H114EA02
2H114EA04
2H114EA08
2H114EA10
2H114FA13
2H114GA02
2H114GA11
5E001AH01
5E001AJ01
5E082EE35
5E343AA02
5E343BB21
5E343BB72
5E343DD02
5E343FF02
5E343FF14
5E343GG06
(57)【要約】
【課題】目標印刷厚さが小さくなった場合でも実印刷厚さにバラツキを生じ難いスクリーン印刷版及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属メッシュ部と、印刷パターン用開口部を有する金属マスク部とを一体に備え、前記金属メッシュ部は、前記開口部の一端側に位置しており、前記開口部は、前記金属メッシュ部の目開きを小さくされた領域を有するスクリーン印刷版とする。また、該スクリーン印刷版は、金属基板の外表面に印刷パターン用開口部に対応する絶縁体凸部が形成された母型を用いて製造する方法を用い、該母型に形成する絶縁体凸部の厚さを部分的に厚くすることで製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属メッシュ部と、印刷パターン用開口部を有する金属マスク部とを一体に備え、
前記金属メッシュ部は、前記開口部の一端側に位置しており、
前記開口部は、前記金属メッシュ部の目開きを小さくされた領域を有することを特徴とするスクリーン印刷版。
【請求項2】
前記目開きを小さくされた領域における金属メッシュ部の目開きが、印刷ペーストの入り口側よりも出口側のほうが小さくされていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷版。
【請求項3】
前記開口部の金属メッシュ部は、表面にめっきが施された金属メッシュを備えており、前記目開きを小さくされた領域における印刷ペーストの出口側の金属メッシュ部の断面において、金属メッシュの表面に形成されためっきの厚みが、スクリーン面に垂直な方向よりもスクリーン面に平行な方向のほうが大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリーン印刷版。
【請求項4】
前記金属メッシュ部は、金属メッシュと該金属メッシュの表面に設けられためっき金属とから構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版。
【請求項5】
前記金属メッシュの印刷ペーストの入口側において、スクリーン面に垂直な方向のめっきの厚さが、前記目開きを小さくされた領域とそれ以外の領域とで同じである、請求項4に記載のスクリーン印刷版。
【請求項6】
前記金属メッシュ部の金属メッシュが、カレンダー加工された金属メッシュである、請求項1~5のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版。
【請求項7】
前記金属マスク部は金属プレートによって構成されており、前記金属プレートは、金属メッシュの表面に設けられためっき金属によって前記金属メッシュ部に接合されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版。
【請求項8】
前記金属マスク部は電鋳金属によって構成されており、前記電鋳金属は、前記金属メッシュの表面に設けられためっき金属と連続したものである、請求項1~6のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版。
【請求項9】
前記金属メッシュ部の表面に設けられためっき金属の厚さにより、前記開口部の前記金属メッシュ部の目開きが調整されてなることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版。
【請求項10】
前記目開きを小さくされた領域は、前記金属マスク部との境界から100μm以下の開口部外周領域である、請求項1~9のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版。
【請求項11】
前記金属マスク部の厚さは、0.5~4μmの範囲内にある、請求項1~10のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版。
【請求項12】
金属基板の外表面に印刷パターン用開口部に対応する絶縁体凸部が形成された母型を作成する工程、
前記母型の前記絶縁体凸部が形成されていない外表面領域に電鋳めっきを施す工程、
形成された電鋳金属の表面に金属メッシュを密着させた状態で、接合めっきを施して、電鋳金属と金属メッシュの一体化物を作製する工程、
前記絶縁体凸部を前記母型の表面に残存させたまま前記一体化物を前記母型から剥離する工程、
を備え、
前記母型に形成する前記絶縁体凸部の厚さを部分的に厚くすることで印刷ペーストの出口側における前記接合めっきの成長の方向を変え、前記印刷パターン用開口部における前記金属メッシュ部の目開きを部分的に小さくすることを特徴とするスクリーン印刷版の製造方法。
【請求項13】
前記母型に形成する前記絶縁体凸部に厚さ方向の段差を設けることを特徴とする請求項12に記載のスクリーン印刷版の製造方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版を用いて印刷する工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記電子部品が、積層セラミックコンデンサ又は積層セラミックインダクタである請求項14に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタ等の電子部品における導体層の作製工程には、スクリーン印刷法による導体ペースト印刷が多用されている。しかしながら、小型化が進む電子部品にあっては外形および厚さが小さい導体層が要求されているため、従来の、メッシュに乳剤で印刷パターンに対応した開口部を有するマスクを形成した乳剤スクリーン印刷版(特許文献1等)では、この要求を精度面で満足することが難しくなってきている。そのため、最近では、乳剤スクリーン印刷版の代わりに、金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版(「サスペンドメタルマスク」又は「メッシュ一体型メタルマスク」と称されることもある)が導体層の作製工程で使用されている。
【0003】
金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版は、金属メッシュ部と、所望の印刷パターンにパターニングされた多数の開口部を有する金属マスク部とを密着させた状態で、金属メッシュ部側からニッケルめっきやニッケル合金めっきを行うことで、金属メッシュ部と金属マスク部を一体化(めっき接合)したものであり、乳剤スクリーン印刷版に比べて、耐薬品性、耐摩耗性に優れるばかりでなく、スキージ印圧による寸法安定性に優れているため、比較的精度の高いシャープな印刷を期待することができることから、各種電子部品における印刷配線等に好適に使用されている。
【0004】
こうした金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版の製造方法についても種々の検討がなされており(特許文献2~4等)、特許文献4には、簡易な方法で製造できる方法として、(1)金属基板の外表面に印刷パターン用開口部に対応する絶縁体凸部が形成された母型を作成する工程、(2)前記母型の前記絶縁体凸部が形成されていない外面領域に電鋳めっきを施す工程、(3)形成された電鋳金属の表面に金属メッシュを密着させた状態で、接合めっきを施して、一体化物を作製する工程、(4)前記絶縁体凸部を前記母型の表面に残存させたまま前記一体化物を前記母型から剥離する工程、を備えた方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-335045号公報
【特許文献2】国際公開第2014/098118号
【特許文献3】特開2010-042567号公報
【特許文献4】特開2019-161806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記要求に伴って目標印刷厚さが小さくなると、とりわけ目標印刷厚さが1μm以下になると、金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えた前掲のスクリーン印刷版を用いても、導体ペーストの実印刷厚さにバラツキ、とりわけ印刷ペーストの中央部分の実印刷厚さが他の部分に比べて小さくなるバラツキ(所謂サドル現象)が生じ易くなる。実印刷厚さにバラツキが生じると、このバラツキが作製後の導体層に残存して、電子部品の品質低下を招来する懸念がある。
【0007】
本発明は、前述の問題点を鑑みてなされたものであり、目標印刷厚さが小さくなった場合でも実印刷厚さにバラツキを生じ難いスクリーン印刷版及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述の目的を達成するために検討を行った結果、金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版において、前記金属マスク部に設けられた印刷パターン用開口部の前記金属メッシュ部の目開きを部分的に小さくすることにより前述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、前記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
[1]金属メッシュ部と、印刷パターン用開口部を有する金属マスク部とを一体に備え、
前記金属メッシュ部は、前記開口部の一端側に位置しており、
前記開口部は、前記金属メッシュ部の目開きを小さくされた領域を有することを特徴とするスクリーン印刷版。
[2]前記目開きを小さくされた領域における金属メッシュ部の目開きが、印刷ペーストの入口側よりも出口側のほうが小さくされていることを特徴とする[1]に記載のスクリーン印刷版。
[3]前記開口部の金属メッシュ部は、表面にめっきが施された金属メッシュを備えており、前記目開きを小さくされた領域における印刷ペーストの出口側の金属メッシュ部の断面において、金属メッシュの表面に形成されためっきの厚みが、スクリーン面に垂直な方向よりもスクリーン面に平行な方向のほうが大きいことを特徴とする[1]又は[2]に記載のスクリーン印刷版。
[4]前記金属メッシュ部は、金属メッシュと該金属メッシュの表面に設けられためっき金属とから構成されている、[1]~[3]のいずれかに記載のスクリーン印刷版。
[5]前記金属メッシュの印刷ペーストの入口側において、スクリーン面に垂直な方向のめっきの厚さが、前記目開きを小さくされた領域とそれ以外の領域とで同じである、[4]に記載のスクリーン印刷版。
[6]前記金属メッシュ部の金属メッシュが、カレンダー加工された金属メッシュである、[1]~[5]のいずれかに記載のスクリーン印刷版。
[7]前記金属マスク部は金属プレートによって構成されており、前記金属プレートは、金属メッシュの表面に設けられためっき金属によって前記金属メッシュ部に接合されている、[1]~[6]のいずれかに記載のスクリーン印刷版。
[8]前記金属マスク部は電鋳金属によって構成されており、前記電鋳金属は、前記金属メッシュの表面に設けられためっき金属と連続したものである、[1]~[6]のいずれかに記載のスクリーン印刷版。
[9]前記金属メッシュ部の表面に設けられためっき金属の厚さにより、前記開口部の前記金属メッシュ部の目開きが調整されてなることを特徴とする[1]~[8]のいずれかに記載のスクリーン印刷版。
[10]前記目開きを小さくされた領域は、前記金属マスク部との境界から100μm以下の開口部外周領域である、[1]~[9]のいずれかに記載のスクリーン印刷版。
[11]前記金属マスク部の厚さは、0.5~4μmの範囲内にある、[1]~[10]のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版。
[12]金属基板の外表面に印刷パターン用開口部に対応する絶縁体凸部が形成された母型を作成する工程、
前記母型の前記絶縁体凸部が形成されていない外表面領域に電鋳めっきを施す工程、
形成された電鋳金属の表面に金属メッシュを密着させた状態で、接合めっきを施して、電鋳金属と金属メッシュの一体化物を作製する工程、
前記絶縁体凸部を前記母型の表面に残存させたまま前記一体化物を前記母型から剥離する工程、
を備え、
前記母型に形成する前記絶縁体凸部の厚さを部分的に厚くすることで前記接合めっきの成長の方向を変え、前記印刷パターン用開口部における前記金属メッシュ部の目開きを部分的に小さくすることを特徴とするスクリーン印刷版の製造方法。
[13]前記母型に形成する前記絶縁体凸部に厚さ方向の段差を設けることを特徴とする[12]に記載のスクリーン印刷版の製造方法。
[14][1]~[11]のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版を用いて印刷する工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
[15]前記電子部品が、積層セラミックコンデンサ又は積層セラミックインダクタである[14]に記載の電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版によれば、目標印刷厚さが小さくなった場合でも実印刷厚さにバラツキを生じ難い。また、本発明に係る金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版の製造方法によれば、実印刷厚さやそれを変化させる位置を容易に調整することができ、さらには、同一の母型を繰り返し使用することで、実印刷厚さにバラツキを生じ難いスクリーン印刷版を再現よく作製することができる。さらに、本発明のスクリーン印刷版の製造方法によれば、印刷パターン開口部に部分的に金属メッシュ部の目開きを小さくされた領域を形成しても、印刷ペーストの供給側の金属メッシュ部のスクリーン面の高さをほぼ面一に形成することができ、印刷時の印刷スキージの摺動を円滑に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の、金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版の一実施形態の部分断面を模式的に示す図
【
図2】めっきの成長方向をスクリーン面に平行な方向に変化させることにより、金属メッシュ部の目開を小さくした領域を形成できることを説明する図
【
図3(A)】従来の金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版の製造方法における母型の製造工程を説明する部分断面図
【
図3(B)】前記
図3(A)に図示した母型を用いて、スクリーン印刷版を製造する工程を説明する部分断面図
【
図4(A)】本発明のスクリーン印刷版の製造方法の第1の実施形態における、母型の第1の製造工程を説明する部分断面図
【
図4(B)】前記
図4(A)に図示した工程に続く、母型の第2の製造工程を説明する部分断面図
【
図4(C)】前記
図4(B)に図示した母型を用いて、スクリーン印刷版を製造する工程を説明する部分断面図
【
図5(A)】本発明のスクリーン印刷版の製造方法の第2の実施形態における、母型の第1の製造工程を説明する部分断面図
【
図5(B)】前記
図5(A)に図示した工程に続く、母型の第2の製造工程を説明する部分断面図
【
図5(C)】前記
図5(B)に図示した母型を用いて、スクリーン印刷版を製造する工程を説明する部分断面図
【
図6(A)】本発明のスクリーン印刷版の製造方法の第3の実施形態における、母型の製造工程を説明する部分断面図
【
図6(B)】前記
図5(A)に図示した母型を用いて、スクリーン印刷版を製造する工程を説明する部分断面図
【
図7】実施例で作製したスクリーン印刷版の開口部の金属メッシュの状態を、印刷ペーストの出口側から撮影した平面写真
【
図8】実施例で作製したスクリーン印刷版の開口部の金属メッシュの断面状態を撮影した写真
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を示す図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明するが、本発明の範囲を逸脱することなく、実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。また、本明細書において、数値範囲を「~」を用いて表す場合は、特記した場合を除き、「~」の両端の数値を含む。
【0013】
[メッシュ・メタル一体型スクリーン印刷版]
本発明のスクリーン印刷版は、金属メッシュ部と、印刷パターン用開口部を有する金属マスク部とを一体に備え、前記金属メッシュ部は前記開口部の一端側に位置しており、前記開口部は、前記金属メッシュ部の目開きを小さくされた領域を有することを特徴とし、この目開きを小さくされた領域においては、金属メッシュ部の目開きが、印刷ペーストの入口側よりも出口側のほうが小さくされていることが好ましい。目開きを小さくされた領域において、印刷ペーストの転写圧力を高くすることができ、印刷カスレを防止できるためである。
【0014】
本発明のスクリーン印刷版は、目開きを小さくされた領域においては、目開きを小さくされていない他の領域に比べて印刷ペーストの塗布量を少なくすることができるため、目開きを小さくされた領域の位置、範囲、及び金属メッシュ部の目開き等を調整することで、印刷ペーストの塗布量を制御して、印刷厚さのバラツキを防止することができる。特に、目開きを小さくされた領域を、開口部の外周領域に設けた場合には、いわゆるサドル現象を低減することができる。
【0015】
図1は、本発明のスクリーン印刷版における一つの実施形態の部分断面を模式的に示す図であって、本実施形態では、目開きを小さくされた領域が開口部の外周領域に設けられている。
目開きを小さくされた領域を開口部の外周領域に設ける場合、その範囲は、印刷厚さ、印刷パターンの大きさ・形状等により適宜決められるが、印刷厚さが1μm以下の場合、金属マスク部との境界から100μm以下が好ましく、60μm以下がさらに好ましい。
以下、本発明のスクリーン印刷版を構成する各部材について順に記載する。
【0016】
<金属メッシュ部>
金属メッシュ部は、ステンレスやタングステン等の金属線を格子状に編み込んだ金属メッシュで構成されており、多数の孔を有している。金属メッシュの厚さは、好ましくは13~30μmであり、オープニングは、好ましくは20~45μmである。
【0017】
金属メッシュはカレンダー加工が施されたものであってもよい。このカレンダー加工は、製織後のスクリーンメッシュを圧延機に通す「カレンダー加工」により、スクリーンメッシュの交点部分を潰して、経糸と緯糸の山の高さが略等しくなるようにする工法である。カレンダー加工を施すことにより、メッシュの交差部分が凸状に厚くなっているために発生する、印刷膜厚が他の部分より薄くなるという、所謂「メッシュ痕」を防止する効果があるが、例えば、金属メッシュの厚さが薄い場合等は必ずしも必要なものではない。
【0018】
<金属マスク部>
本実施形態における金属マスク部は、金属製であれば、その材質は、特に限定されず、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム及びタングステン等の各種金属単体、及びステンレス鋼、クロム-モリブデン鋼、ニッケル-銅、ニッケル-タングステン、ニッケル-クロム、アルミニウム合金、銅合金及び鉄合金等の各種合金が用いられるが、薄型化、微細化、複雑化等に適したメタルマスクを得るためには電鋳法が用いられため、該電鋳法に用いられる金属であるニッケル、又はニッケル-コバルト、ニッケル-モリブデン、ニッケル-鉄、ニッケル-タングステンなどのニッケル合金が好ましく用いられる。
【0019】
金属マスク部の厚さは、薄くなるほど印刷時のインク又はペースト供給量を抑えて薄い印刷パターンを形成できる一方で、寸法安定性が低下する傾向がある。逆に、金属マスク部が厚くなるほど寸法安定性は向上するが、インク又はペースト供給量が増加し、薄い印刷パターンの形成が困難となる虞がある。このため、金属マスク部の厚さは、形成しようとする印刷パターンの面積及び厚さ、並びにメタルマスクに要求される寸法安定性を考慮して決定される。
特に、印刷厚さが1μm以下である場合、金属マスク部の厚さとしては、0.5~4μm、好ましくは0.5μm~2.5μm、さらに好ましくは0.5~1.5μmとする。
【0020】
本実施形態に係る金属マスク部は、インク又はペーストを供給するための印刷用パターン開口部を有する。
該開口部は、エッチング法や、ドリル、パンチなどの機械加工、レーザ光による穴あけ、あるいは電鋳法等々の方法により形成されるが、好ましくは、後述する電鋳法が用いられる。
形成される開口部の形状、大きさ、数及び位置は特に限定されない。例えば、開口部の形状を丸、楕円、多角形、星、スリット又は不定形等に設定できる。
【0021】
<めっき接合>
本発明のスクリーン印刷版の好ましい実施形態においては、金属メッシュ部の金属メッシュの表面に施されるめっきによって、金属マスク部と金属メッシュ部がめっき接合されて一体化されていることが好ましい。
具体的には、金属マスク部が金属プレートによって構成されている場合は、該金属プレートが前記の金属メッシュの表面に設けられためっき金属によって前記金属メッシュ部に接合され、また、前記金属マスク部が電鋳金属によって構成されている場合は、該電鋳金属は前記の金属メッシュの表面に設けられためっき金属と連続しためっきとなっている。
【0022】
金属メッシュ部と金属マスク部とがめっき接合により一体化されたスクリーン印刷版の好ましい実施形態においては、開口部の金属メッシュ部は、表面にめっきが施された金属メッシュを備えており、このめっきの成長方向を部分的にスクリーン面に平行な方向に変化させることにより、金属メッシュ部の目開を小さくした領域を形成することができる。
【0023】
図2は、めっきの成長方向をスクリーン面に平行な方向に変化させることにより、金属メッシュ部の目開を小さくした領域を形成できることを説明する図であって、カレンダー加工された金属メッシュにめっきが施された状態を模式的に示す断面図である。
該図において、左の図は、前記
図1における領域Bにおける金属メッシュの断面図であり、めっきの成長方向を変化させずに、金属メッシュの表面に均一に成長させた状態を示しており、金属メッシュは、その表面に設けられためっき金属の厚さに応じた目開きを有している。このような金属メッシュが存在する領域では、印刷ペーストが金属メッシュの下に廻り込みやすい。
一方、右の図は、印刷ペーストの出口側において、めっきの成長方向をスクリーン面に平行な方向(横方向)に変化させた状態を示している。
該図に示すとおり、印刷ペーストの出口側の金属メッシュ部の断面において、金属メッシュの表面に形成されためっきの厚みが、スクリーン面に垂直な方向よりもスクリーン面に平行な方向のほうが大きくなっている。また、金属メッシュの断面においては、金属メッシュの表面に形成されためっきのスクリーン面に平行な方向厚みは、印刷ペーストの入り口側よりも出口側のほうが大きくなって、金属メッシュの目開きが印刷ペーストの入り口側よりも出口側のほうが小さくなっている。さらに印刷ペーストの出口側の金属メッシュ部の断面において、金属メッシュの表面に形成されためっきのスクリーン面に垂直な方向の厚みは、印刷ペーストの出口側より印刷ペーストの入口側のほうが大きくなっている。
このような金属メッシュが存在する領域では、目開きが小さくなり、印刷ペーストが金属メッシュの下に廻り込みにくく、塗布量は小さくなる。
【0024】
[メッシュ・メタル一体型スクリーン印刷版の製造方法]
最初に、従来の(前掲の特許文献4参照)スクリーン印刷版の製造方法(以下、「従来法」という)について記載する。
図3(A)及び(B)は、従来法の一例を模式的に示す部分断面図であり、
図3(A)は、金属メッシュ部と金属マスク部を一体に備えたスクリーン印刷版の製造方法における母型の製造工程を、
図3(B)は、
図3(A)に図示した工程で製造された母型を用いてスクリーン印刷版を製造する工程を、それぞれ説明するものである。
【0025】
従来法では、
図3(A)に示すとおり、金属(SUS)基板の外表面にフォトレジストシートを貼り付けるか、あるいはフォトレジスト剤を塗工した後、フォトリソグラフィ法によって不必要部分を除去して、絶縁体凸部に対応した凹部を有するレジストパターンを形成する。続いて、真空蒸着やイオンプレーティングやスパッタリング等の物理気相成長法(PVD法)、あるいはプラズマCVDや熱CVDや光CVD等の化学気相成長法(CVD法)によって、レジストパターンの凹部内に絶縁性薄膜(DLC等)を所望の厚さまで堆積させる。続いて、レジストパターンを金属基板の外面から剥離して取り除き、絶縁体凸部(絶縁性薄膜)のみを金属基板の外面に残存させ、開口部に対応する絶縁体凸部(絶縁性薄膜)が形成された母型を作成する。
【0026】
次いで、
図3(B)に示すとおり、電鋳めっき(ニッケル)により、前記母型の金属基板の絶縁体凸部(絶縁性薄膜)が存しない外面領域に、絶縁体凸部の厚さより厚くなるように電鋳金属を形成する。ついで、電鋳金属が形成された母型の外面に金属メッシュ部を密着させた状態で接合めっき(ニッケル)を施して一体化させる。
この接合めっきにおいては、
図3(B)に図示するように、絶縁体凸部と金属メッシュの間には間隙があるため、めっきの成長方向は変化することなく、金属メッシュの表面に均一にめっきが成長し(
図2の左の図参照)、金属メッシュの表面に設けられためっき金属(ニッケル)の厚さに応じた目開きを有する開口部となる。
その後、得られた一体化物の電鋳金属を絶縁体凸部の外面から剥離するとともに、電鋳金属を金属基板の絶縁体凸部が存しない外面領域から抜き出して、一体化物を母型から離型する。
【0027】
上記工程に用いる母型及び絶縁体凸部について説明する。
<母型>
母型を作製するときに用いる金属基板には、外形が矩形状を成すものを用意し、その外面に研磨処理と洗浄処理を施す。研磨処理には電解研磨やバフ研磨を好ましく使用でき、洗浄処理にはアルカリ脱脂洗浄や電解洗浄を好ましく使用できる。
金属基板は母型の主体となるものであり、変形しない剛性を有していれば、その材質は前記のSUS等のステンレス等に限られずに用いることができ、その厚さにも特段の制限はない。
【0028】
<絶縁体凸部>
絶縁体凸部に用いる絶縁体材料は、前記のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)の他に、酸化アルミニウムや二酸化ケイ素や窒化アルミニウム等の絶縁性セラミック材料や、シリコンカーバイトや、フォトレジスト等の絶縁性を有する材料が使用できる。
【0029】
本発明のメッシュ・メタル一体型スクリーン印刷版の製造方法は、前記の従来法において、母型に形成された絶縁体凸部の厚さを部分的に厚くすることで、印刷ペーストの出口側において接合めっきの成長の方向を部分的にスクリーン面に平行な方向に変化させて(めっきを横方向に成長させて)、印刷パターン用開口部における金属メッシュ部の目開きを部分的に小さくすることを特徴としている。
そして、本発明の製造方法によれば、金属メッシュの印刷ペーストの入口側において、部分的に目開きを小さくされた領域とそれ以外の領域とで、スクリーン面に垂直な方向のめっきの厚さを同じにでき、その結果、金属メッシュ部のスクリーン面の高さをほぼ面一にすることができる。したがって、本発明の製造方法で得られたスクリーン印刷版においては、印刷時の印刷スキージの摺動を円滑に動作させることができる。
以下、本発明のスクリーン印刷版の製造法の、好ましい実施形態について記載するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0030】
(第1の実施形態)
本実施形態では、絶縁体凸部を構成する絶縁体(DLC等)の成膜を2回行うことで絶縁体凸部の厚さを部分的に厚くしている。
図4(A)~(C)は、本実施形態に係るメタルマスクの製造方法の一例の製造工程を説明する部分断面図であり、
図4(A)は、母型の第1の製造工程(第1の成膜)を、
図4(B)は、前記
図4(A)に図示した工程に続く、母型の第2の製造工程(第2の成膜)を、
図4(C)は、得られた母型を用いて、スクリーン印刷版を製造する工程を、それぞれ説明するものである。
【0031】
本実施形態では、
図4(A)に示すように、従来法の
図3(A)に示した工程と同様にして、印刷パターン用開口部に対応する絶縁体凸部(第1の絶縁性薄膜)が成膜された母型を作成する(第1の成膜)。
次いで、
図4(B)に示すとおり、母型に形成された絶縁体凸部(第1の絶縁性薄膜)上に、ドライフィルム等のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ法によって、部分的(図では、絶縁体凸部の外周部)に、さらに同じ絶縁体からなる凸部(第2の絶縁性薄膜)を成膜して、絶縁性凸部の厚さを部分的に厚くする(第2の成膜)。
図4(A)、(B)から明らかように、これらの工程により、金属基板上に外周部の厚さが厚くなった絶縁体凸部(絶縁性薄膜)が形成された母型を得ることが可能となる。
【0032】
その後、
図4(C)に示すとおり、電鋳めっき(ニッケル)により、前記母型の金属基板の絶縁体凸部(絶縁性薄膜)が存しない外面領域に、絶縁体凸部の厚さを厚くされた部分(外周部)の厚さと同じ厚さとなるように電鋳金属を形成する。ついで、電鋳金属が形成された母型の外面に金属メッシュ部を密着させた状態で接合めっき(ニッケル)を施して一体化させる。その後、得られた一体化物の電鋳金属を絶縁体凸部の外面から剥離するとともに、電鋳金属を金属基板の絶縁体凸部が存しない外面領域から抜き出して、一体化物を母型から離型する。
【0033】
第1の実施形態においては、
図4(C)に示すとおり、第2の絶縁性薄膜の成膜によって絶縁体凸部の厚さを厚くした外周部では、絶縁体凸部と金属メッシュの間には間隙がないため、めっきの成長方向がスクリーン面に平行な方向(横方向)に変化して(
図2の右の図参照)、マスク開口部のメッシュの目開きが小さくなっている。その結果、外周部の開口部におけるペーストの透過量を、外周部以外の領域(第2の絶縁性薄膜が成膜されていない領域)における開口部に対して、抑えることができる(サドル低減効果)。
【0034】
(第2の実施形態)
本実施形態では、得られるスクリーン印刷版の構造は前掲の第1の実施形態の場合と同様であるが、母型の材料となる金属(SUS)基板の一部分をあらかじめエッチング法で薄くしておくことで絶縁体凸部の厚さ(高さ)を部分的に変えている。
図5(A)~(C)は、本実施形態に係るスクリーン印刷版の製造方法の一例の製造工程を説明する部分断面図であり、
図5(A)は、本実施形態における、母型の第1の製造工程を、
図5(B)は、前記
図5(A)に図示した工程に続く、母型の第2の製造工程を、
図5(C)は、得られた母型を用いて、スクリーン印刷版を製造する工程を、それぞれ説明するものである。
【0035】
本実施形態では、
図5(A)に示すとおり、金属(SUS)基板の外表面にフォトレジストシートを貼り付けるか、あるいはフォトレジスト剤を塗工した後、フォトリソグラフィ法によって不必要部分を排除してレジストパターンを形成する。続いて、得られたレジストパターンをエッチングレジストとして、エッチング液を用いて金属基板をエッチングした後、レジストを剥離することにより、金属基板の外表面に部分的(図では、絶縁体凸部(印刷パターン用開口部)の中央部)に凹部を形成する。
【0036】
次いで、
図5(B)に示すとおり、前記凹部が形成された金属基板の外表面に、ドライフィルム等のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ法によって、絶縁体凸部(印刷パターン用開口部)に対応した凹部を有するレジストパターンを形成した後、真空蒸着やイオンプレーティングやスパッタリング等の物理気相成長法(PVD法)、あるいはプラズマCVDや熱CVDや光CVD等の化学気相成長法(CVD法)によって、レジストパターンの凹部内に絶縁性薄膜(DLC等)を所望の厚さまで堆積させる。続いて、レジストパターンを金属基板の外面から剥離して取り除き、絶縁体凸部(絶縁性薄膜)のみを金属基板の外面に残存させて、開口部に対応する絶縁体凸部(絶縁性薄膜)が形成された母型を作成する。
図5(A)、(B)から明らかように、これらの工程により、金属基板上に外周部の厚さが厚く(高く)なった絶縁体凸部(絶縁性薄膜)が形成された母型を得ることが可能となる。
【0037】
その後、
図5(C)に示すとおり、電鋳めっき(ニッケル)により、前記母型の金属基板の絶縁体凸部(絶縁性薄膜)が存在しない外面領域に、絶縁体凸部の外周部の厚さと同じ厚さとなるように電鋳金属を形成する。ついで、電鋳金属が形成された母型の外面に金属メッシュ部を密着させた状態で接合めっき(ニッケル)を施して一体化させる。その後、得られた一体化物の電鋳金属を絶縁体凸部の外面から剥離するとともに、電鋳金属を金属基板の絶縁体凸部が存しない外面領域から抜き出して、一体化物を母型から離型する。
【0038】
第2の実施形態においても、
図5(C)に示すとおり、絶縁体凸部の外周部では、絶縁体凸部と金属メッシュの間に間隙がないため、めっきの成長方向がスクリーン面に平行な方向(横方向)に変化して(
図2の右の図参照)、マスク開口部のメッシュの目開きが小さくなっている。その結果、外周部の開口部におけるペーストの透過量を、外周部以外の領域における開口部に対して、抑えることができる(サドル低減効果)。
【0039】
第2の実施形態では、高価なDLCの成膜が1回で済むという利点がある。また第1の実施形態においては、1回目の露光と1回目の露光で位置ずれが生じるとその分絶縁体凸部の幅が大きくなってしまい、結果としてマスクの開口寸法精度の悪化を招くことになるが、それに対し、第2の実施形態例では1回目の露光と2回目の露光で多少の位置ずれが生じても絶縁体凸部の寸法に影響することはなく、開口寸法精度の高いマスクが容易に作製できるという利点もある。
【0040】
(第3実施形態)
第3の実施形態は、部分的に厚さを変えた絶縁体凸部を感光性レジストで作製するものであり、金属マスクが厚い仕様のスクリーン印刷版を製造する場合には、本実施形態によりスクリーン印刷版を製造することが可能である。
図6(A)、(B)は実施例3の製造工程を説明する部分断面図であり、
図6(A)は、本実施形態における、母型の製造工程を、
図6(B)は、得られた母型を用いて、スクリーン印刷版を製造する工程を、それぞれ説明するものである。
【0041】
本実施形態においては、
図6(A)に示すとおり、金属(SUS)基板の外表面にフォトレジストシートを貼り付けるか、あるいはフォトレジスト剤を塗工して、印刷パターン用開口部に対応するパターン状に露光処理を施す(第1の露光)。さらにその外表面に再度フォトレジストシートを貼り付けるか、あるいはフォトレジスト剤を塗工して、前記パターンの一部分のみ(外周部)に露光処理を施す(第2の露光)。その後、現像液を用いてレジストの未露光部分を除去することにより、絶縁体凸部(レジスト)を形成する。
図から明らかように、該工程により、金属基板上には、外周部の厚さが厚くなった絶縁体凸部(レジスト)が形成された母型を得ることが可能となる。
【0042】
その後、
図5(B)に示すとおり、電鋳めっき(ニッケル)により、前記母型の金属基板の絶縁体凸部(レジスト)が存しない外面領域に、絶縁体凸部の外周部の厚さと同じ厚さとなるように電鋳金属を形成する。ついで、電鋳金属が形成された母型の外面に金属メッシュ部を密着させた状態で接合めっき(ニッケル)を施して一体化させる。その後、得られた一体化物の電鋳金属を絶縁体凸部の外面から剥離するとともに、電鋳金属を金属基板の絶縁体凸部が存しない外面領域から抜き出して、一体化物を母型から離型する。
【0043】
第3の実施形態においても、
図5(B)に示すとおり、絶縁体凸部の外周部では、絶縁体凸部と金属メッシュの間に間隙がないため、めっきの成長方向がスクリーン面に平行な方向(横方向)に変化して(
図2の右の図参照)、マスク開口部のメッシュの目開きが小さくなっている。その結果、外周部の開口部におけるペーストの透過量を、外周部以外の領域における開口部に対して、抑えることができる(サドル低減効果)。
【実施例0044】
以下、本発明について、実施例を用いて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
SUS基板上に、
図4(A)、(B)に示す方法により、第1のDLC薄膜(厚さ0.3μm)と第2のDLC薄膜(厚さ1.2μm)を形成して、外周部の厚さが厚くなったDLC薄膜が形成された母型を製造し、得られた母型を用いて、
図4(C)に示す方法により、金属マスク部との境界から、それぞれ55μm、65μm、75μm、及び85μmの開口部外周領域に、目開きを小さくされた領域を有するスクリーン印刷版を製造した。
【0046】
図7は、実施例で作製した、それぞれのスクリーン印刷版の開口部の金属メッシュの状態を、印刷ペーストの出口側から撮影した平面写真であり、開口部外周領域のおける金属メッシュの目開きが、その他の領域における金属メッシュの目開きより小さいことを示している。
【0047】
図8は、メッシュの目開きが小さい領域Aと目開きが大きい領域Bにおける金属メッシュの断面状態を撮影した写真であり、それぞれの領域におけるめっきの成長状態を示している。
該図からわかるように、印刷ペーストの出口側の金属メッシュ部において、メッシュの目開きが小さい領域Aではメッシュ直下に絶縁体凸部が接しているため、めっきは下方向には成長できず、横方向に成長している。これによってメッシュの目開きが小さく、とくに絶縁体凸部側、すなわち印刷ペーストの吐出側のメッシュの目開きが小さくなっている。
また、印刷ペーストの入口側の金属メッシュ部においては、メッシュの目開きが小さい領域Aと目開きが大きい領域Bで、スクリーン面に垂直な方向に付着するめっきの厚さは同等になっている。
本発明に係るメタルマスクによれば、薄膜印刷パターンを精度良く、且つ経時変化なく安定して形成することができるので、薄膜印刷でありながらも表面に凹凸のない、均一な膜厚を有する印刷パターンを得ることができ、より薄く、より印刷位置ずれのない高精度の印刷が安定して求められている電子部品における配線印刷等の分野における利用が可能となる。