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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090312
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/32 20060101AFI20220610BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B41J2/32 Z
B41J29/38 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202639
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村越 利生
【テーマコード(参考)】
2C061
2C065
【Fターム(参考)】
2C061AQ04
2C061HJ01
2C061HX10
2C065AA01
2C065AD03
2C065CZ14
(57)【要約】
【課題】印刷終了時に駆動系電源の蓄電部に残留した電荷を確実に放電させる。
【解決手段】ライン状に配列された複数の発熱体287と、発熱体287を有するサーマルヘッド204と、発熱体287に通電して発熱させる制御を行う通電制御部289と、通電制御部289に供給される制御系電源Vgと、発熱体287に供給される駆動系電源Vfと、発熱体287に接続され、前記駆動系電源によって蓄電される蓄電部と、制御系電源Vgの通電制御部289への供給と、駆動系電源Vfの発熱287体への供給を制御する制御部200とを備え、制御部200は、サーマルヘッド204による印刷動作の終了時に、通電制御部289に制御系電源289を供給した状態で、蓄電部から発熱体287に通電し、蓄電部を放電させる放電制御を実行することを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン状に配列された複数の発熱体と、
前記発熱体を有するサーマルヘッドと、
前記発熱体に通電して発熱させる制御を行う通電制御部と、
前記通電制御部に供給される制御系電源と、
前記発熱体に供給される駆動系電源と、
前記発熱体に接続され、前記駆動系電源の電源によって蓄電される蓄電部と、
前記制御系電源の前記通電制御部への供給と、前記駆動系電源の前記発熱体への供給を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記サーマルヘッドによる印刷動作の終了時に、前記通電制御部に前記制御系電源を供給した状態で、前記蓄電部から前記発熱体に通電し、前記蓄電部を放電させる放電制御を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記放電制御において、感熱紙が発色しない程度に前記発熱体を発熱させることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記駆動系電源が前記発熱体に供給されるように切り替える第一切替手段と、
前記制御系電源が前記通電制御部に供給されるように切り替える第二切替手段と
を備え、
前記制御部は、
前記サーマルヘッドによる印刷動作の終了時に、前記第二切替手段を切り替えて前記通電制御部に前記制御系電源を供給した状態で、前記放電制御を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記予め定められた条件を満たすと前記放電制御を終了し、前記通電制御部への前記制御系電源の供給を停止することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
同時に発熱させる前記発熱体の個数を設定する発熱体数設定手段を備え、
前記制御部は、前記放電制御において、
前記発熱体数設定手段が設定した個数の分割単位毎に印刷データを分割し、当該分割単位で順次前記発熱体を発熱させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯可能なサーマルヘッドを有する感熱式の印刷装置であるサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯可能なモバイル式のサーマルプリンタにおいて、サーマルヘッドの発熱体が発熱するためにはモバイル機器としては比較的大きな電力が必要となり、特にA4サイズの用紙に対し印刷可能なサーマルヘッドとなると、より大きな電力が必要となる。
【0003】
大電力を実現するため、発熱体に電力を供給する駆動系電源は、発熱体のON/OFFを制御する制御系電源よりも電圧値が高く、電流値も大きい。
【0004】
更に、発熱体に供給する駆動系電源は、頻繁にON/OFFするため、電流が変動しやすい。そのため、駆動系電源には大容量のコンデンサを接続し、変動を抑制している。そのため、印刷後などの駆動系電源オフ後に、コンデンサ等に蓄積された電荷が長時間残留してしまう。
【0005】
電荷が残留した状態で発熱体が通電され続けると故障の要因になったりするため、残留した電荷を速やかに放電することが望まれている。
【0006】
この課題を解決するため、例えば、特許文献1では、電源オフを検知してからサーマルヘッドの発熱体に通電させて、残留する電荷を放電させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-034430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、電源オフ後には、サーマルヘッドの発熱体への通電を制御する制御部の入力電源電圧も低下するため、制御部が制御可能な電圧までしか発熱体への通電を制御できず、コンデンサに残留する電荷を放電し切れない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を鑑み、本発明の印刷装置は
ライン状に配列された複数の発熱体と、
前記発熱体を有するサーマルヘッドと、
前記発熱体に通電して発熱させる制御を行う通電制御部と、
前記通電制御部に供給される第一の電源と、
前記発熱体に供給される第二の電源と、
前記発熱体に接続され、前記第二の電源によって蓄電される蓄電部と、
前記第一の電源の前記通電制御部への供給と、前記第二の電源の前記発熱体への供給を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記サーマルヘッドによる印刷動作の終了時に、前記通電制御部に前記第一の電源を供給した状態で、前記蓄電部から前記発熱体に通電し、前記蓄電部を放電させる放電制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
駆動系電源と制御系電源を別にすることにより、印刷終了時に駆動系電源の蓄電部に残留した電荷を確実に放電しきることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置の構成を正面側から見た斜視図。
図2】本発明の一実施形態に係る印刷装置の構成を背面側から概略的に示す斜視図。
図3】本発明の一実施形態に係る印刷装置の電気的接続を示すブロック図。
図4】本発明の一実施形態に係る印刷装置の内部構成を側面から見た断面図。
図5】本発明の一実施形態に係る印刷装置の内部構成を上面から見た断面図。
図6】本発明の一実施形態に係る印刷装置の印刷制御の処理手順を示すフローチャート。
図7】本発明の一実施形態に係る放電波形を示すタイミングチャート。
図8】本発明の一実施形態に係る印字濃度とエネルギーの関係を示すグラフ。
図9】本発明の一実施形態に係るグレースケールチャート。
図10】本発明の一実施形態に係る印刷時と放電時のストローブ信号の期間を示すグラフ。
図11】本発明の一実施形態に係るサーマルヘッドの構成図。
図12】本発明の一実施形態に係る印刷データを分割印刷する手順を説明する模式図。
図13】本発明の一実施形態に係る印刷装置の印刷部の電源ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の実施形態に記載されている構成はあくまで例に過ぎず、本発明の範囲は実施形態に記載されている構成によって限定されることはない。
【0013】
(第1の実施形態)
<印刷装置の構成説明>
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置100の構成を正面側から見た斜視図である。
【0014】
印刷装置100は、略直方体の筐体からなる本体101を備え、本体101は金属、例えば、アルミニウムや合成樹脂によって形成される。本体101には、図中矢印A方向から眺めたときの正面に、印刷用紙の排出口(以下、「プリンタ出口」という。)103が設けられる。
【0015】
更に、本体101には、図中矢印A方向から眺めたときの上面に、窪み部104が形成される。
【0016】
窪み部104には、図4に示すように印刷用紙の挿入口(以下、「プリンタ入口」という。)106が設けられる。
【0017】
プリンタ出口103、プリンタ入口106は、本体101の長手方向に沿って開口する。なお、プリンタ入口106の開口位置は、後述の図4において詳細に示す。
【0018】
本体101には、図中矢印A方向から眺めたときの上面左側に操作表示部221が設けられる。操作表示部221は、スイッチやタッチパネル等で構成され、ユーザーがプリンタの操作を行うことができる。また、LEDや液晶パネルなどでユーザーに対して情報を表示するようになっている。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係る印刷装置100の構成を背面側から概略的に示す斜視図である。
【0020】
本体101は、印刷動作を行うためのプリンタユニット101aとプリンタユニットへの電源を供給するための電池ユニット101bからなり、電池ユニット101bが取り外し可能な構成となっている。
【0021】
本体101には、図中矢印A方向から眺めたときの背面右側にUSB端子108、DC電源端子109が設けられる。USB端子108は印刷データを印刷装置100に送信する外部機器などとUSBケーブルを介して接続する際に用いられる接続端子である。
【0022】
DC電源端子109は、プリンタユニット101aや電池ユニット101bに内蔵されたバッテリー210(図4参照)へ図3に示す外部のDC電源機器283から電力を供給するための電源線が接続される接続端子である。
【0023】
<印刷装置の内部構成説明>
図4及び図5は、本実施形態に係る印刷装置の内部構成を概略的に示す断面図である。図4は側面側から見た断面図(図1におけるB-B断面)であり、図5は上面側から見た断面図(図1におけるC-C断面)である。
【0024】
印刷装置100は、バッテリー210及びプリンタ制御基板203を有する。バッテリー210は、プリンタユニット101aに電池ユニット101bが取り付けられる際に、プリンタ制御基板203に接続されて印刷装置100の各構成要素へ電力を供給する。また、図3に示すように、DC電源端子109を介して供給される電力Vc’によって充電制御部251の制御の元でバッテリー210が充電される。
【0025】
また、電池サーミスタ210tが電池ユニット101b内の印刷装置100の長手方向における中央部付近に配置されており、筐体の下部でプリンタユニット101aと電池ユニット101bが接触している部分に沿って配置されている。なお、電池サーミスタ210tは電池ユニット101b内のバッテリー210の上方で、プリンタユニット101aと電池ユニット101bとが接触している部分に沿って配置しても良い。また、電池ユニット101b内のバッテリー210の下方で筐体の外壁側に配置しても良い。
【0026】
プリンタ制御基板203は、図5に示すように、サーマルヘッド204の下方で、印刷装置100の長手方向の端部に第1電圧変換回路281が搭載されており、その近傍に回路サーミスタ281tが配置されている。
【0027】
さらに、印刷装置100は、プラテンローラ300(搬送用ローラ)及びサーマルヘッド204を有する。サーマルヘッド204はプラテンローラ300の下方に配置され、サーマルヘッド204がプラテンローラ300との間に印刷用紙を挟んだ状態で加熱することにより印刷が行われる。
【0028】
サーマルヘッド204は印刷装置100の長手方向に沿うように配置された平板状を呈し、サーマルヘッド204の搬送方向上流側(印刷装置100の中央側)の端部には、長手方向に沿うように配置された丸棒状の支持部304が設けられ、印刷装置100の側板と係合する。これにより、サーマルヘッド204は支持部304を中心として回転軸周りに回動可能となる。加えて、ヘッドサーミスタ204tが長手方向の中央部付近に配置されている。
【0029】
また、サーマルヘッド204の下方には弾性部材、例えば、コイルスプリング305が配置され、コイルスプリング305はサーマルヘッド204をプラテンローラ300へ向けて付勢する。
【0030】
プラテンローラ300は、その回転軸が印刷装置100の長手方向に沿うように配置され、モータ205は印刷装置100の長手方向の端部、かつ第1電圧変換回路281の反対側に配置される。プラテンローラ300はギア列によってモータ205から伝達された駆動力により、回転軸周りに回転する。
【0031】
窪み部104は、サーマルヘッド204へ向けて傾斜する斜面104aを有する。斜面104aと、サーマルヘッド204及びプラテンローラ300の間で搬送経路111を構成する(図4中破線矢印参照)。
【0032】
印刷装置100では、印刷用紙が搬送経路111に沿って搬送される。具体的には、印刷用紙は、窪み部104の斜面104aへ向けて投入されると、プリンタ入口106を経て、サーマルヘッド204及びプラテンローラ300の間を通過し、プリンタ出口103から排出される。
【0033】
<印刷装置のブロック図>
図3は、本実施形態に係る印刷装置100の電気的接続を示すブロック図である。印刷装置100は、プリンタユニット101a内に、プリンタ制御基板203、サーマルヘッド204、モータ205、無線モジュール206、操作表示部221を備える。
【0034】
また、プリンタ制御基板203には、USB端子108、DC電源端子109、制御部200、充電制御部251、第1電圧変換回路281、第1SW282(第一切替手段)、第2電圧変換回路284、第2SW288(第二切替手段)が搭載されている。
【0035】
一方、電池ユニット101b内は、バッテリー210、バッテリー210の温度を検出するための電池サーミスタ210tを備えている。
【0036】
バッテリー210は充電を行うことにより繰り返し使用することのできる二次電池である。また、バッテリー210の電圧は、制御部200及び充電制御部251に入力され、制御部200による電池接続検知や、充電制御部251による充電電圧の制御や過電圧の検知などに使用される。
【0037】
電池サーミスタ210tの検出値(検出電圧)は、制御部200及び充電制御部251に入力され、充電時の外部短絡や、過充電によるリチウムイオン電池の熱暴走を検出するために使用される。また、バッテリー210を使用した印刷時には、筐体内の環境温度を検出するためにも使用される。
【0038】
制御部200は、CPU、マイコン等で構成され、装置全体の制御、演算、情報転送を司る。制御部200内には通信部202とIO部207を備えている。
【0039】
通信部202は、外部機器と有線接続して情報通信を行う。通信規格としてはUSBやLAN、SCSIなどを挙げることができる。
【0040】
また、装置内にある無線モジュール206を介すことで、外部機器と無線での通信を行うこともできる。無線通信の規格としては、無線LAN、BLUETOOTH(登録商標)などを挙げることができる。
【0041】
IO部207は、信号の入力検知と出力制御を行う。入力検知されるものは、操作表示部221のボタンの入力、バッテリー210の電池電圧、ヘッドサーミスタ204t、電池サーミスタ210t、回路サーミスタ281tで検知した温度を変換した検出電圧などがある。また、出力制御するものは、サーマルヘッド204(加熱量制御)、モータ205(駆動制御)、充電制御部251(充電許可制御)、第1SW282(ON/OFF制御)、第2SW288(ON/OFF制御)、操作表示部221の表示用LEDの制御などがある。
【0042】
サーマルヘッド204は、複数の微小な発熱体287を1ライン状に整列配置したものである。また、サーマルヘッド204は発熱体287への通電時間を制御する通電制御部を備えている。制御部200が印刷データに対応した通電時間を通電制御部に通知することで、サーマルヘッド204では選択的に発熱体が加熱され、所望する画像(印刷データ)を印刷することができる。また、サーマルヘッド204には温度を検出するためのヘッドサーミスタ204tが内蔵されている。
【0043】
ヘッドサーミスタ204tの検出電圧は、制御部200がサーマルヘッドの通電時間を調整するために使用される。
【0044】
モータ205は、後述の搬送用ローラ(搬送部)であるプラテンローラ300を回転させ、印刷用紙を搬送するための駆動源である。
【0045】
無線モジュール206は、無線通信を行うために無線チップと無線(アンテナ)回路が小型基板に実装されたものである。
【0046】
充電制御部251は、バッテリー210の充電に必要な電圧、電流の制御を行う。また、バッテリー210の電圧、電池サーミスタ210tの検出電圧を入力することにより、バッテリー210の過電圧、過放電、電池温度超過や充電時間超過などを検出し、バッテリー210への通電を遮断する安全機能も備えている。さらに、制御部200の指示により充電のオン/オフを行う。
【0047】
第1電圧変換回路281は、バッテリー210より供給された電圧をサーマルヘッド204、モータ205を駆動するために必要な電池変換電圧Vbに変換するものである。変換にはDC/DCコンバータなどが用いられる。また、第1電圧変換回路281には温度を検出するための回路サーミスタ281tが配置されている。
【0048】
回路サーミスタ281tは、印刷時に、連続印刷などの高負荷により、第1電圧変換回路281が過熱しているのを検出するために使用される。また、DC電源機器283を使用した印刷時には筐体内の温度を検出するために使用される。
【0049】
第1SW282は、サーマルヘッド204、モータ205への電力(駆動系電源電圧Vf)の供給の切り替えを行うものである。第1SW282では、バッテリー210から第1電圧変換回路281を介して供給された電力(電池変換電圧Vb)または、DC電源機器283から供給された電力(DC電源電圧Vc)のどちらかを選択できる構成となっている。
【0050】
駆動系電源電圧Vfには蓄電部としてのコンデンサ290が接続され、駆動系電源電圧Vfが供給されている間に電荷が蓄えられる。印刷に必要な電力が不足する状況においては、このコンデンサ290からサーマルヘッド204等への電力供給によって印刷を行うことができる。なお、コンデンサ290としては、アルミ電解コンデンサ、セラミックコンデンサ以外にも、電気二重層キャパシタなどのコンデンサを用いることが可能であり、また、これらを複数用いて構成することも可能である。
【0051】
また、図3のブロック図は、図13でその他の実施形態として示すブロック図と同等のものであるが、説明の都合上その一部の構成を省略している(すなわち、図13を用いて他の実施形態として説明しているが、本実施形態は図13のブロック図を含むものである)。図13においては示しているが、蓄電部としてのコンデンサ290は、電源側から見て、サーマルヘッド204やモータ205の入力側に接続される位置に設けられることで、これらへの入力電圧の安定化を図っている。一方で、第1電圧変換回路281の出力側にも設けられており、これによって、第1電圧変換回路281の出力の安定化を図っている。後述する放電制御は、これらすべてのコンデンサ290に対する放電を可能とするものである。
【0052】
また、制御部200を駆動するための電源として、バッテリー210から供給された電力(バッテリー電圧Vd)、またはDC電源機器283から供給された電力(DC電源電圧Vc)のどちらかの電力から第2電圧変換回路284を介して供給された電力(変換電圧Ve)を供給する。
【0053】
第2SW288は、サーマルヘッドの通電制御部289への電力(制御系電源電圧Vg)の供給をON/OFFするものである。第2SW288では、バッテリー210からの電力(バッテリー電圧Vd)または、DC電源機器283から供給された電力(DC電源電圧Vc)のどちらかから第2電圧変換回路284を介して供給された電力(変換電圧Ve)をON/OFFできる構成になっている。
【0054】
DC電源機器283は、プリンタユニットを駆動するために必要な直流電圧(DC電源電圧Vc)を機器に供給する。DC電源機器283には、商用電源から直流電圧を供給するACアダプタや外部電池、モバイルバッテリーなどがある。
【0055】
<印刷制御の処理手順>
図6は本発明の一実施形態に係る印刷装置100の電源制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0056】
ステップS501において外部機器、または、操作表示部221へのユーザー操作による画像の印刷指示を待つ。
【0057】
ステップS501において、印刷指示があると、次のステップS551において、制御部200は第2SW288をオンさせる。これにより、サーマルヘッド204の通電制御部289へ変換電圧Veからの電源である制御系電源電圧Vgの供給が開始される。
【0058】
ステップS551において、制御部200はサーマルヘッド204の通電制御部289へ変換電圧Veからの電源(制御系電源電圧Vg)が供給させると、ステップS556において、制御部200は第1SW282をオンさせる。これにより、サーマルヘッド204の発熱体287、モータ205へバッテリー210から電圧変換回路281を介して供給された電源(電池変換電圧Vb)、または、DC電源機器283から供給された電源(DC電源電圧Vc)のどちらか電源として用いられている方からの電源(駆動系電源電圧Vf)の供給が開始される。
【0059】
ステップS556において、制御部200は発熱体287、モータ205へバッテリー210からの電源(電池変換電圧Vb)、または、DC電源機器283から供給された電源(DC電源電圧Vc)のどちらか電源として用いられている方の電源を供給させると、ステップS505において、制御部200はモータ205に通電させることでプラテンローラ300を回転させて印刷用紙の搬送を開始させ、サーマルヘッド204で加熱処理を行う印刷処理を実行する。
【0060】
ステップS505にて印刷処理が完了すると、ステップS506において制御部200は第1SW282をオフさせる制御により、サーマルヘッド204の発熱体287、モータ205へバッテリー210から電圧変換回路281を介して供給された電源(電池変換電圧Vb)、または、DC電源機器から供給された電源(DC電源電圧Vc)のどちらか電源として用いられている方の電源(駆動系電源電圧Vf)の供給を停止させる。
【0061】
ステップS506において、制御部200は第1SW282をオフする制御により、サーマルヘッド204の発熱体287、モータ205への電源(駆動系電源電圧Vf)の供給を停止させると、ステップS552において、制御部200は通電制御部289へ発熱体287を通電させてコンデンサ290にチャージされている電荷の放電を行う放電制御を行う。
【0062】
ステップS552において、制御部200は通電制御部289へ発熱体287を通電させる制御を行い、予め定められた放電終了条件を満たすと、ステップS555において制御部200は第2SW288をオフさせる制御により、サーマルヘッド204の通電制御部289へ変換電圧Veからの電源(制御系電源電圧Vg)の供給を停止させる。本実施形態においては、予め定められた放電終了条件として、所定時間の経過が用いられており、詳しくは後述する。
【0063】
ステップS555において、制御部200は第2SW288をオフさせ、電源(制御系電源電圧Vg)の供給を停止させると、ステップS501に戻り、印刷指示が行われたかを判定する。
【0064】
<印刷装置の電源制御手順>
次に、本発明の一実施形態に係る印刷装置100の電源制御、印刷終了時の放電制御において、電源投入と切断タイミングについて図7を参照しつつ説明する。
【0065】
なお、図7は、印刷装置100の電源制御を説明するためのタイミングチャートである。最初に、電源投入処理について説明する。
【0066】
ステップS551において、制御部200は第2SW288をオンさせる制御により、サーマルヘッド204の通電制御部289へ変換電圧Veからの電源(制御系電源電圧Vg)の供給が開始される。
【0067】
次に、制御系電源電圧Vgを供給開始後、時間Ts時間経過後にステップS556において、制御部200は第1SW282をオンする制御により、サーマルヘッド204の発熱体287、モータ205へバッテリー210から電圧変換回路281を介して供給された電源(電池変換電圧Vb)、または、DC電源機器283から供給された電源(DC電源電圧Vc)のどちらか電源として用いられている方からの電源(駆動系電源電圧Vf)の供給が開始される。
【0068】
時間Trは制御系電源電圧Vgの立ち上がりに必要な時間であり、Tsは制御部200がステップS551において第2SW288をオンさせてからステップS556において第1SW282をオンさせるまでの時間である。したがって、TsはTr以上に設定されている。
【0069】
次に、電源遮断処理について説明する。ステップS506において、制御部200は第1SW282をオフする制御により、サーマルヘッド204の発熱体287、モータ205への電源(駆動系電源電圧Vf)の供給を停止させる。ステップS552において、制御部200は通電制御部289へ発熱体287を通電させる放電制御を行う。
【0070】
ステップS552において、制御部200は通電制御部289へ発熱体287を通電させる放電制御を行いコンデンサ290の放電を開始し、予め定められた放電終了条件を満たすと、ステップS555において制御部200は第2SW288をオフする制御により、サーマルヘッド204の通電制御部289への変換電圧Veからの電源(制御系電源電圧Vg)の供給を停止させる。
【0071】
時間Tfは、制御系電源電圧Vfの立ち下がりに必要な時間であり、Teは制御部200がステップS506においてSW282をオフさせてからステップS555においてSW288をオフさせるまでの時間である。したがって、TeはTf以上に設定される。
【0072】
<サーマルヘッドの通電時間の補正制御>
制御部200は、印刷用紙への印刷濃度を所定の濃度とするために必要なサーマルヘッド204の各発熱体への通電時間を、基準温度での通電時間に対し、サーマルヘッド204の温度や環境温度に基づいて選択された補正係数を乗算して得られる時間に補正する補正処理を行っている。
【0073】
はじめに、印刷時の通電時間の算出式の一例を示す。通電時間 Pt、基準温度での通電時間Ps、サーマルヘッドの温度による補正係数Ct1、環境温度による補正係数Ct2、とすると、算出式は以下の式1となる。
【0074】
Pt=Ps×Ct1×Ct2 ・・・(式1)
【0075】
一例として、基準温度が25℃であり、ヘッドサーミスタ204tの温度が30℃であり、電池変換電圧Vbで印刷を行っている際の電池サーミスタ210tの温度が28℃である場合、30℃に対応するサーマルヘッド204の温度による補正係数Ct1が-1.5%、28℃に対応する環境温度による補正係数Ct2が-0.5%だったとする。
【0076】
この場合、通電時間は次の式2で算出され、制御部200は通電時間を短くすることになる。
【0077】
Pt=Ps×0.985×0.995 ・・・(式2)
【0078】
なお、上記実施形態では補正係数Ct2を環境温度そのもので補正しているが、サーマルヘッド204の温度に対する相対的な温度(サーマルヘッド温度-環境温度)で補正係数を算出しても良い。
【0079】
つぎに、印刷処理完了後における、サーマルヘッド204の発熱体287への通電時間の算出式の一例を示す。
【0080】
本実施形態における印刷装置が動作する環境温度において、印刷用紙を発色させないための補正係数Ct3とすると、算出式は次の式3となる。
【0081】
Pt=Ps×Ct1×Ct2×Ct3 ・・・(式3)
【0082】
ここで、図8は印刷用紙の動的発色特性であり、サーマルヘッド204の発熱体287が発するエネルギーに対する印字濃度を表している。例えば、0.3mJ/dotのエネルギーを与えると、印刷用紙の印字濃度は約0.9となる。
【0083】
また、図9は白黒の濃淡を薄いほうから順に印字濃度0.1から2.0までの20段階で表すグレースケールチャートである。印字濃度0.1以下では、目視では発色していることが分からない。
【0084】
サーマルヘッド204の発熱体287の発熱量は、制御部200が制御するストローブ信号(STB)の期間により決まる。図10は印刷時と放電時のストローブ信号(STB)の期間の違いである。印字濃度が0.1以下になるように補正係数Ct3を減らすことで調整する。
【0085】
一例として、基準温度が25℃であり、ヘッドサーミスタ204tの温度が30℃であり、電池変換電圧Vbで印刷を行っている際の電池サーミスタ210tの温度が28℃である場合、30℃に対応するサーマルヘッドの温度による補正係数Ct1が-1.5%、28℃に対応する環境温度による補正係数Ct2が-0.5%、印刷用紙を発色させないための補正係数が-90%とする。
【0086】
この場合、通電時間は次の式4で算出され、制御部200は通電時間を短くすることになる。
【0087】
Pt=Ps×0.985×0.995×0.10 ・・・(式4)
【0088】
なお、上記実施形態では補正係数Ct2を環境温度そのもので補正しているが、サーマルヘッド204の温度に対する相対的な温度(サーマルヘッド温度-環境温度)で補正係数を算出しても良い。
【0089】
以上のように、感熱紙を発色させることなく、制御系電源電圧Vgを駆動系電源電圧Vfが低下するまで保持しておくことができ、サーマルヘッド204の発熱体287が通電し続けることによる破壊などの故障を防ぐことができる。
【0090】
更に、駆動系電源電圧Vfが低下するまでの時間を短縮することができるため、印刷装置100の電源をオフする時間も短縮することができる。また、放電用の抵抗を設ける必要もなく、放電用の抵抗を設けることで印刷中に放電用の抵抗によるロスの影響もないため、モバイル式のサーマルプリンタにおいて特に効果的である。
【0091】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る印刷装置は、発熱体への通電時間の設定を可変にしたものである。本実施形態における印刷装置の構成、電気的接続のブロック図、およびフローチャートは、第1の実施形態と同様である。
【0092】
以下、第1の実施形態と異なる印刷制御の処理手順について異なる部分についてのみ説明する。
【0093】
ステップS501からS555までは、第1の実施形態と同じため図示及び説明を省略する。
【0094】
第1と実施形態とはサーマルヘッド204の発熱体の通電制御において分割制御する点で異なる。
【0095】
<サーマルヘッドの発熱体の分割制御>
図11は、本発明の一実施形態に係るサーマルヘッド204の外観を示した図である。
【0096】
サーマルヘッド204には、発熱体287が直線上に等間隔で配列されている。発熱体287の必要個数と間隔は印刷に必要な幅と解像度により決まる。
【0097】
例えば、必要な幅がA4サイズ(210mm)で、印字解像度が300dpiの場合、発熱体287の配列幅は紙セットのずれを想定して219.5[mm]、配列ピッチは0.0847[mm]であり、2592ドット分の(即ち2592個の)発熱体287が配置されている。
【0098】
図12は、本発明の一実施形態に係る印刷データを分割印刷する手順を説明するための模式図である。
【0099】
ここでは、説明を容易にするため不図示の外部装置から制御部200に4ドット設定の指定を含む制御指示が送信されたものとする。これは、4ドットずつの通電を繰り返す設定である。
【0100】
制御部200は、不図示の外部装置から送信されてくる放電制御データによって、サーマルヘッドの一端側から、発熱させる発熱体287を4個毎に同時に発熱させる。
【0101】
制御部200は、この動作をサーマルヘッド204の他端側まで繰り返し、他端側に4ドット未満の端数があった場合はこれを最後に同時に発熱させて1行分の印刷を完了する。
【0102】
図12の模式図では、第1回目にサーマルヘッド204の端部から4個分の発熱体287を発熱させ、第2回目に隣接する4個の発熱体287を発熱させ、同様に最終回目まで、発熱体287を4個ずつ、サーマルヘッド204の他端側にかけて発熱させていく様子を示している。
【0103】
なお、発熱させる発熱体287の総個数が4で割り切れない場合、制御部200は、端数分の発熱体287を最終回に発熱させる。
【0104】
通常の印刷においては、制御部200は、このようにしてNループ目の印刷を終えると、N+1ループ目に対して、同様に4個ずつの発熱体287を順次発熱させていく。
【0105】
このように、制御部200は、指定されたドット設定がMドットの場合(Mは自然数)、サーマルヘッド204の一端側から他端側にかけて、発熱させる発熱体287の個数をM個毎に発熱させるように制御する。このとき制御部200は、発熱体数設定手段として機能している。
【0106】
すなわち、本実施形態においては、Mドットで物理ブロックをまとめることで、物理ブロックごとに分割通電する。
【0107】
本実施形態においては、ステップS552の放電制御においても同様に分割制御する。すなわち、ステップS552が開始すると、制御部200は、サーマルヘッド204の一端側から他端側にかけて、発熱体287をM個ずつ他端側に向けて切り替えながら通電させていく。この時、同時に通電させる発熱体287の個数によって通電電流が変更されるため、通電時間 Ptもそれに応じて変更することができる。
【0108】
また、発熱体287をM個ごとに分割したサーマルヘッド204の物理ブロックに対し、一端側から他端側にかけて発熱体287をM個ずつ通電しなくてもよく、飛び飛びの物理ブロックごとに通電したり、一端側から他端側に向けて行ったり来たりするように物理ブロックを切り替えながら通電するなど、種々の変更が可能である。いずれの場合においても、通電する物理ブロックに対する図9で説明した印字濃度が、印字濃度0.1程度となる発熱量であれば良い。
【0109】
いずれの場合であっても、放電制御において通電する発熱体287をM個ごとの分割単位に分割して順次発熱させることによって、サーマルヘッド204の長手方向において局所的に発熱することなく、好ましくは均一に発熱させることができ、サーマルヘッド204の過熱をより確実に防ぐことができる。
【0110】
以上のように、本実施形態では、サーマルヘッド204の発熱体に通電させることにより、印刷終了後に駆動系電源に残留する電荷を放電することができる。
【0111】
また、システムの電源オフ時に限らず、駆動系電源オフ時にも有効であり、待機時に駆動系電源をオフできるため電力を削減でき、モバイル機器の動作時間を延長することができる。
【0112】
(その他の実施形態)
<印刷部の昇圧回路>
以下、その他の実施形態に係る印刷装置100の印刷部における昇圧回路について説明する。なお、印刷部とは、サーマルヘッド204およびモータ205を含む構成を意味する。以下に説明する内容は第1の実施形態および第2の実施形態のいずれにも適用可能である。
【0113】
図13には、本実施形態に係る印刷装置100の印刷部の電源ブロック図を示している。これは、図3のブロック図の抜粋である。なお、第1SW282については、図3においては1つのスイッチとして説明したが、実際には複数のスイッチで構成しても良く、図13においては、2つの第1SW282がそれぞれDC電源端子109とバッテリー210とに接続されるものとして記載している。
【0114】
本実施形態においては、印刷部の駆動電圧Vfを、DC電源機器283の出力電圧Vcとほぼ同等に設定している。一方、電池ユニット101bの出力電圧VdはDC電源機器283の出力電圧Vcに比べて小さく設定されているため、電池ユニット101bを駆動電源として用いて印刷を行う場合には、出力電圧VdをDC電源機器283の出力電圧Vc(=Vf)と同等まで第1電圧変換回路281で昇圧させてから印刷部に供給している。
【0115】
なお、第1の実施形態で説明したように、蓄電部としてのコンデンサ290を第1電圧変換回路281の出力側に設けている。これによって、第1電圧変換回路(具体的には昇圧回路)の出力電圧を安定化させることができる。
【0116】
この構成によれば、DC電源機器の出力電圧Vcを例えば24V程に設定し、印刷部の駆動電圧Vfも同等の24V前後に設定することで、印刷開始時の印刷部の温度上昇を早めることができ、印刷が開始されるまでの時間を短くすることができる。それに対し、電池ユニット101bを用いて印刷可能にするために、電池ユニット101bの出力電圧Vdを第1電圧変換回路281で昇圧して駆動電圧Vfと同等にしている。電池ユニット101bからの出力電圧を昇圧する構成にすることで、本来であれば駆動部の駆動電圧を確保するために電池ユニット101bのバッテリー210を例えば3セルの二次電池とする必要があるところを、2セルの二次電池を用いることができ、モバイル式のサーマルプリンタである印刷装置100を小型化することができる。
【符号の説明】
【0117】
100 印刷装置
101 本体
101a プリンタユニット
101b 電池ユニット
109 DC電源端子
200 制御部
203 プリンタ制御基板
204 サーマルヘッド
204t ヘッドサーミスタ
210 バッテリー
282 第1SW
283 DC電源機器
288 第2SW
287 発熱体
289 通電制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13