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特開2022-9033高濃度NOを吸入療法ガスとともに拡散させるための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009033
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】高濃度NOを吸入療法ガスとともに拡散させるための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/12 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61M16/12
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167327
(22)【出願日】2021-10-12
(62)【分割の表示】P 2018516421の分割
【原出願日】2016-09-30
(31)【優先権主張番号】62/235,798
(32)【優先日】2015-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/281,512
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516160429
【氏名又は名称】マリンクロット ホスピタル プロダクツ アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フォーリガント,ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】トルミエ,クレイグ アール.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高濃度NOが、望ましくない大量のNOを発生させることなく、拡散装置を介して、人工呼吸器の呼吸回路に送達されるシステム及び方法を提供する。
【解決手段】拡散装置100は、壁部115および中空(開放)内部領域118を有する円筒により形成される環状本体であり得る本体110を含む。本体110は、人工呼吸器の呼吸回路内のチューブに接続する。流入端部は、人工呼吸器チューブに接合するような構成および寸法を有するオス型接続部を含み、流出端部は、人工呼吸器チューブまたは加湿器チャンバ流入口に接合するような構成および寸法を有するメス型接続部を含む。拡散装置100は、人工呼吸器の呼吸回路または加湿器チャンバなどの他の構成要素に連結する、インジェクタモジュールの1つの構成要素または部品であり得る。
【選択図】図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガスストリームの患者への供給のために、酸素分子(O)を含む第1ガスストリームと、一酸化窒素(NO)を含む第2ガスストリームとを混合する際の使用のための装置であって、NOおよびOの拡散は、1ppmより少ないNOが前記患者に供給されるほど十分迅速に発生する、装置。
【請求項2】
前記第2ガスストリームは、800ppm超乃至10,000ppmのNO濃度を有するNO供給源により提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記混合ガスストリームは、1ppm乃至80ppmのNO濃度を有する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1ガスストリームは、N分子およびO分子を含む呼吸可能なガスを含み、前記第2ガスストリームはNO分子およびN分子を含む、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2ガスストリームは最初、60度乃至120度の範囲内の角度で前記第1ガスストリームに進入する、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2ガスストリームの体積流量は、前記第1ガスストリームの体積流量に線形比例する、請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1ガスストリームは第1速度を有し、前記第2ガスストリームは第2速度を有し、前記第1速度と前記第2速度との比は2:1よりも小さい、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1速度と前記第2速度との比は、1:1よりも小さいかまたは等しい、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1ガスストリームが2SLPMよりも小さい体積流量を有するときに、1:1よりも小さいかまたは等しい前記第1速度と前記第2速度との比が提供される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第2ガスストリームは、前記第1ガスストリームの最も高い速度の中心中間点またはその近くで前記第1ガスストリームに進入する、請求項1~9のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第2ガスストリームは、複数のパルスとして前記第1ガスストリーム内に注入される、請求項1~10のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、
厚さ、外側表面、および中空内部領域を包囲する内側表面を有する壁部を含む本体と、
前記本体の内側表面から前記中空内部領域内に延長する突起物と、
注入ポートが前記本体の内側表面からある距離において高濃度ガスを横方向ガスストリーム内に注入するように、前記壁部および前記突起物を通って前記注入ポートに至る注入流路と、
を含む、請求項1~11のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記中空内部領域はある直径を有し、前記内側表面から前記注入ポート流出口までの前記突起物の長さは、前記中空内部領域の直径の30%乃至45%の範囲内にある、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は複数の注入ポートを含む、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記装置は、流れセンサを含むインジェクタモジュールに対して一体化されている、請求項1~14のうちのいずれか1項に記載の拡散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の原則および実施形態は、全般的には、吸入療法のために、一酸化窒素(NO)と、患者に投与される他のガスと、を混合させるための装置に関する。
【0002】
いくつかのガスが、ヒトおよび動物において薬剤作用を有することが示されてきた。1つの係るガスが一酸化窒素(NO)である。一酸化窒素は、吸入されたとき肺内の血管を拡張させ、それにより血液の酸素化を改善し、肺高血圧を減少させる作用を有する。例えば急性の肺血管収縮、高血圧、および血栓塞栓症、または気道障害などの様々な肺疾患のための吸入療法の分野では、治療には、ガスボンベから供給される治療ガスNOの使用が用いられてきた。さらに詳細には、吸入療法のためのこのガス状NOはNOを含む高圧ガスボンベから患者に供給される。例えば、係る手法が、「Nitric Oxide Delivery System」を発明の名称とする米国特許第5,558,083号で開示されており、同特許の全体は参照することにより本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
吸入用一酸化窒素(INO)療法は、全般的に、ある濃度のNOを設定用量で人工呼吸器を装着する患者に送達することを伴う。この種(ラップアラウンド式)のNO送達システムは、処方された患者用量を達成するために、人工呼吸器の吸息肢内のフレッシュガス流を検知し、供給ボンベからインジェクタモジュールを介して人工呼吸器の吸息肢にNOをレシオメトリックに供給することが可能である。
【0004】
通常は、NO供給源(例えば供給ボンベから)の濃度は、約800ppmNOであり得る。上述のように、800ppmのこのNO供給源ガスは、フレッシュガス流内のNO濃度が約5~80ppmとなるよう、比例的(例えばレシオメトリック)に、フレッシュガス流に送達され得る。
【0005】
INO療法は多数の利点を有するが、NOをフレッシュガス流に送達したときに、フレッシュガス流内のOと反応することにより有毒ガスである二酸化窒素(NO)が発生し得ることが知られている。さらに詳細には、二酸化窒素の形成は、NO濃度の2乗にOの濃度を乗算した値に比例する。
【0006】
NOからNOへの変換に対する反応速度式は、
2NO→N
+O→2NO
により与えられる。
【0007】
したがって、NOの形成速度=k[NO][O]が与えられる。式中、kはL×mol-1×s-1の単位であり、または、ガスに対する分圧である。
【0008】
したがって発生するNOの量(ppmNO)は、NO濃度の2乗に関連し、酸素濃度および時間に対して線形である。
【0009】
上記に鑑みて、低濃度NO供給源(例えば100ppm、400ppm、および800ppmのNOボンベ)から人工呼吸器の呼吸回路に送達されるNOは、好ましくない大量(例えば1ppmを越える)のNOを発生させ得ないが、上記の反応速度論にしたがえば、高濃度供給源(例えば2000ppm、5000ppm、および10,000ppmのNOボンベ)から人工呼吸器の呼吸回路に送達されるNOを使用した場合、許容不能な量の有毒なNOの発生が期待されるであろう。例えば40ppmNO用量に60%Oを提供した場合、1ppmを越えるNOが発生する。理論的に、同一のNO療法用量に対しては、5000ppm供給源ガスから供給されたNOは、800ppm供給源から供給された場合の39倍大きい形成率を有するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
様々な技術を使用してこの問題を解決することが試みられてきた。しかし、これらの技術は、特定のシステムでは作用しない場合があり、高濃度NOを送達した場合に作用しない場合があり、まったく作用しない場合があり、またはNO発生の実際の原因および/または以前は認識されなかったNO発生における潜在的な要因の解決ができない場合がある。したがって、特定のシステムにおいて作用し、NO発生の実際の原因および/または以前は認識されなかった潜在的な要因を解決する、NO発生を低減させるシステムおよび方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシステムおよび方法は、例えば人工呼吸器の呼吸回路内のフレッシュガス流に送達されたときに発生するNOの低減化において使用が可能である。さらに、本発明のシステムおよび方法は、例えば100%Oを有する40ppmNOに対して、1ppmを越える好ましくない大量のNOを発生させることなく、高濃度NOが拡散装置を介して人工呼吸器の呼吸回路に送達されることを可能にし得る。高濃度NO供給源(例えば2000、4880、10,000ppmのNOボンベ)の使用は、より小型のNOガスボンベを使用すること(これにより携帯性が向上し、人工呼吸器のガス流に導入される高濃度ガスの体積を低減化することが可能となる)、および、NOおよびキャリアNガスによる、酸素を豊富に含むフレッシュガス流(FGF)の希釈が低減されること、などの利点をもたらし得るが、もたらされる利点はこれらに限定されない。同等であるかまたはより高速な拡散を用いて、より小さい体積のNOを導入した場合、全体的により少量のNOが発生し得る(これは、より短い拡散時間が、より小さいガス体積に関連付けられるためである)ことが、驚くべきことに見出された。本明細書で解決される諸課題は、高濃度のNOが形成され得ないうちに、少なくともNO濃度を迅速に低下させることに関連する。
【0012】
上述の諸問題を解決する方法は、高濃度NOが人工呼吸器ガスストリーム内に存在する時間を短縮すること(これは、NOが他のガスへと拡散する速度を上昇させることにより達成され得る)を、および/または、迅速に拡散される以前の、高濃度NOの人工呼吸器呼吸回路内滞留時間を短縮することを、含んで、いくつか存在する。この時間短縮化は、高(供給源)濃度から低(設定用量)濃度への過渡的NO濃度時間を最小化する方法を通して、NOが注入されるまさにその地点において達成され得る。注入のまさにその地点における供給源から設定用量への非常に迅速なNO濃度低減化はNOの発生を顕著に減少させ、係るNO濃度低減化は、ガス混合、ガス拡散、熱効果、交差するガスストリームの方向、交差するガスストリームの速度、またはこれらの任意の組み合わせなどの方法を含むがこれらに限定されない多様な方法を通してなされ得る。過渡的NO濃度時間(すなわちNOが実質的に設定用量を越える量でFGF内に滞留する時間)は、NOが設定用量において、または設定用量の付近においてFGF内に滞留する時間と比較して、NOが顕著に高い速度で生成される時間である。換言すると、均一なNO濃度が達成された後でさえもNOが継続して生成されることが確認されている。しかし、NO濃度が設定用量付近にある領域におけるNO発生は、O濃度および時間に対して線形であり、したがって過渡的NO濃度の時間におけるNO発生と比較して、顕著に低い速度にある。
【0013】
本発明の原則および実施形態は、全般的には、高濃度NO供給源を含むNO吸入療法を用いて患者を治療する装置および方法に関する。しかし本明細書で記載のこれらの方法、システム、および装置は、高濃度NO供給源の文脈において議論されるが、本明細書で記載の方法、システム、および装置は、より低い濃度のNO(例えば800ppm以下のNOなど)供給源にも適用され得る。
【0014】
本発明の態様は、患者に送達するために、NOを含むガスストリームと、酸素分子(O)を含むフレッシュガス流ストリームと、を混合する装置に関する。ここでNOおよびOの拡散は十分迅速に発生し、それにより、NOの発生が最小化され、1ppmより少量のNOが患者に供給され、および/または人工呼吸器回路において発生する。
【0015】
様々な実施形態では患者吸入ガスにおけるNOの濃度は、約1ppm~約80ppm、もしくは代替的に5ppm~約80ppm、または約20ppm~約60ppmの範囲である。設定用量に対する他の例示的なNO濃度は、約1ppm、約2ppm、約3ppm、約4ppm、約5ppm、約10ppm、約15ppm、約20ppm、約25ppm、約30ppm、約35ppm、約40ppm、約45ppm、約50ppm、約55ppm、約60ppm、約65ppm、約70ppm、約75ppm、または約80ppmを含む。
【0016】
様々な実施形態ではNO供給源の濃度は、約200ppm~約10,000ppm、または約400ppm~約10,000ppm、または800ppm超~約10,000ppm、または約1,000ppm~約5,500ppmの範囲である。NO供給源の他の例示的なNO濃度は、約200ppm、約300ppm、約400ppm、約500ppm、約600ppm、約700ppm、約800ppm、約1000ppm、約1200ppm、約1500ppm、約2000ppm、約2200ppm、約2400ppm、約2440ppm、約2500ppm、約3000ppm、約3500ppm、約4000ppm、約4500ppm、約4800ppm、約4880ppm、約5000ppm、約6000ppm、約7000ppm、約8000ppm、約9000ppm、または約10,000ppmを含む。
【0017】
様々な実施形態では、高濃度NO供給源(例えば4880または5000ppmのNO供給源)を使用して生成されたNOレベルは、より低い濃度のNO供給源(例えば200ppmまたは800ppmのNO供給源)を用いて生成されたNOレベルに同等であるかまたは係るNOレベルよりも小さい値であり得る。
【0018】
本発明の態様は、様々な肺疾患の治療のために、呼吸ガス、フレッシュガス流内におけるNOの混合および/または拡散の効率を向上させることにより、供給源濃度から設定用量までの迅速なNO濃度低減化の方法に関する。
【0019】
本発明の態様は、厚さを有する壁部、外側表面、および、中空内部領域を包囲する内側表面を含む本体と、本体の内側表面から延長する突起物と、壁部および突起物を通って、フレッシュガス流の速度が高い速度となる位置に配置された(例えば、本体の断面における中心(係る中心では、より高速に誘導される)、その他に配置された)注入ポートに至る注入流路と、を含む、高濃度ガスを横方向ガスストリームに注入するための拡散装置に関する。本明細書で使用される「高速度」のガス流は、縁部境界(例えばチューブの壁部)におけるガス流の速度または縁部境界付近のガス流の速度よりも高い速度を有する任意部分のガス流である。非スリップ状態により、縁部境界におけるガス流はゼロ速度を有し、ガスの粘性のために、ゼロ速度ガスに対してより近位にあるガス流は、縁部境界およびゼロ速度ガスに対してより遠位にあるガス流よりも低い速度を有する。
【0020】
したがって例示的な実施形態では、高濃度ガスは、縁部境界(例えば壁部)からある距離にある横方向ガスストリームの一部に注入される。
【0021】
本発明の態様は、高濃度ガス(例えば800超~10,000ppmのNO)を横方向ガスストリームに注入するための拡散装置に関する。なお拡散装置は、厚さ、外側表面、および内側表面を有する壁部を含む本体と、環状本体の内側表面から延長する突起物と、厚さ、外側表面、および内側表面を有する壁部と、第1直径を有する流入端部と、流入端部の反対側において第1直径よりも小さい第2直径を有する流出端部とを有するテーパ状区域と、を含み、突起物がテーパ状区域に対する支持体を形成し、注入流路が突起物を通って、テーパ状区域の内側表面内の注入ポートに達するよう、テーパ状区域は突起物に接続され、かつ突起物から懸下される。例示的な実施形態では、注入流路から、次に注入ポートから流れるガス流は、最も高速なガス速度が存在する横方向ガスストリームに流入するよう誘導され得る。
【0022】
1つまたは複数の実施形態では、高濃度ガス(例えば800超~10,000ppmのNO)を横方向ガスストリームに注入するための拡散装置は、突起物から懸下されるテーパ状区域を含まない。様々な実施形態では、突起物は、環状本体の内側表面から、円筒形壁部により包囲される開放体積のおよそ中心へと径方向に延長し、注入流路が突起物を通って注入ポートまで通過する。
【0023】
様々な実施形態では、注入ポートは、約0.58mm(0.023インチ)~約4.75mm(0.187インチ)、もしくは約0.8mm(0.031インチ)~約2.4mm(0.094インチ)、もしくは約1.12mm(0.044インチ)~約2.29mm(0.090インチ)の範囲の、または約1.83mm(0.072インチ)の内径を有する。例示的な下限は、約0.58mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約1.1mm、約1.2mm、約1.3mm、約1.4mm、約1.5mm、約1.6mm、約1.7mm、および約1.8mmを含む。例示的な上限は、約4.75mm、約4.5mm、約4mm、約3.5mm、約3mm、約2.5mm、約2.4mm、約2.29mm、約2.2mm、約2.1mm、約2mm、および約1.9mmを含む。
【0024】
1つまたは複数の実施形態では、拡散装置は、新生児用、小児用、または成人用の規模である呼吸回路(新生児、小児、または成人のそれぞれに対応し、かつそれぞれに対して適切な人工呼吸器チューブサイズを有する)へと挿入され、かつ係る呼吸回路と流体連通するような構成および寸法を有し得る。様々な実施形態では、環状本体は、約10mm~約25mmの範囲の外径と、約10mm~約25mmの範囲の内径と、を有する。なお内径は、外径よりも、円筒形壁部の厚さだけ小さい。
【0025】
様々な実施形態では、円筒形壁部の厚さ「C」は、約1mm~約3.175mmの範囲、または約1.5mmである。
【0026】
様々な実施形態では、拡散装置は、呼吸チューブ(例えば人工呼吸器の呼吸回路用)に挿入されるよう構成され、かつ係る呼吸チューブに挿入される寸法を有する。
【0027】
様々な実施形態では、第1直径は約6mm~約18mmの範囲であり、第2直径は約3.17mm~約9.5mmの範囲であり、第1直径は第2直径よりも大きい。
【0028】
様々な実施形態では、テーパ状区域は軸の周りに対称的であり、注入流路は、テーパ状区域の軸に対して約60度~約120度の範囲の角度を形成する。
【0029】
様々な実施形態では、テーパ状区域は漏斗形状である。
【0030】
様々な実施形態では、テーパ状区域は円維台形状である。
【0031】
様々な実施形態では、テーパ状区域はベル形状である。
【0032】
本発明の態様は、高濃度ガスを横方向ガスストリームに拡散する方法に関する。この方法は、厚さ、外側表面、および内側表面を有する壁部と、第1直径を有する流入端部と、流入端部の反対側において第1直径よりも小さい第2直径を有する流出端部とを有するテーパ状区域を通して、第1ガスの少なくとも1部分を通過させることと、第2ガスストリームを、注入流路を通して、テーパ状区域の内側表面の注入ポートまで通過させることと、を含み、第2ガスストリームはテーパ状区域に進入し、テーパ状区域内で第1ガスストリームと少なくとも部分的に拡散する。
【0033】
様々な実施形態では、この方法は、第1ガスの少なくとも1部分を、テーパ状区域の外側表面の少なくとも1部分の周囲に通過させることをさらに含む。なおテーパ状区域は、外側表面および内側表面と、テーパ状区域の第1直径よりも大きい内径と、を有する環状本体内にある。
【0034】
様々な実施形態では、注入流路を通過する第2ガスが支持体を通して注入ポートまで通過するよう、支持体は環状本体をテーパ状区域注入に接続する。
【0035】
様々な実施形態では、第2ガスストリームは最初、約60度~約120度の範囲の角度で第1ガスストリームに進入する。
【0036】
様々な実施形態では、第1ガスはN分子およびO分子を含む呼吸可能なガスであり、第2ガスはNO分子およびN分子を含む。
【0037】
様々な実施形態では、第2ガス中のNOの濃度は800ppm超~約5,500ppmの範囲である。
【0038】
様々な実施形態では、第1ガスは約0リットル/分(SLPM)~約120SLPM、または約0.5SLPM~約60SLPM、または約0.5SLPM~約2SLPMの範囲の流量で環状本体に進入する。
【0039】
様々な実施形態では、第1ガス(例えばFGF)はN分子およびO分子を含む呼吸可能なガスであり、第2ガスは1000ppm超~約5,500ppmの範囲の濃度のNO分子を含み、第2ガスは、約0.05ミリリットル/分(SMLPM)~約2SLPM、または約0.1SMLPM~約1SLPMの範囲の流量で注入ポートから流出する。
【0040】
患者の人工呼吸器回路における酸素濃度は、医療用空気(21%O)~医療用酸素(100%O)の連続的範囲を越える値に設定され得るが、全般的に、INO療法を受ける患者に対しては60%まで上昇され得る。
【0041】
様々な実施形態では、第2ガスの流量は第1ガスの流量に線形比例する。
【0042】
様々な実施形態では、第1ガスの速度は、テーパ状区域の第2直径において、テーパ状区域の第1直径における第1ガスの速度よりも大きい。なお第2ガスは、より大きい速度または等しい速度の地点において、第1ガスに進入する。
【0043】
本発明の態様は、高濃度ガスを横方向ガスストリームに拡散する方法に関する。この方法は、中空内部領域を包囲する内側表面を有する本体の中空内部領域を通して、第1ガスの少なくとも1部分を通過させることと、第2ガスストリームを、注入流路を通して、本体の中空内部領域に突出する注入ポートまで通過させることと、を含み、第2ガスストリームは中空内部領域に進入し、中空内部領域内で第1ガスストリームと少なくとも部分的に拡散する。
【0044】
本発明の様々な実施形態、本発明の性質、および様々な利点に関するさらなる特徴は、以下の詳細な説明を、添付の図面と併せて考慮すると、より明らかとなるであろう。なおこれらの図面は、出願人らにより考えられた最良の形態も例示するものであり、これらの図面の全部を通じて、同様の参照符号は同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A】様々な条件下で、酸素を豊富に含む空気にNOを注入した後に発生するNOを示す図である。
図1B】様々な条件下で、酸素を豊富に含む空気にNOを注入した後に発生するNOを示す図である。
図1C】様々な条件下で、酸素を豊富に含む空気にNOを注入した後に発生するNOを示す図である。
図1D】様々な条件下で、酸素を豊富に含む空気にNOを注入した後に発生するNOを示す図である。
図1E】様々な条件下で、酸素を豊富に含む空気にNOを注入した後に発生するNOを示す図である。
図1F】様々な条件下で、酸素を豊富に含む空気にNOを注入した後に発生するNOを示す図である。
図1G】NO注入地点から下流側の様々な地点において発生するNOを示す図である。
図2A】複数のブレードを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図2B】複数のブレードを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図2C】複数のブレードを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図3A】複数の角度を有するフィンを有するテーパ状区域の例示的な実施形態を示す図である。
図3B】複数の角度を有するフィンを有するテーパ状区域の例示的な実施形態を示す図である。
図3C】複数の角度を有するフィンを有するテーパ状区域の例示的な実施形態を示す図である。
図4A】複数のプレートを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図4B】複数のプレートを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図4C】複数のプレートを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図5A】複数の湾曲ブレードを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図5B】複数の湾曲ブレードを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図5C】複数の湾曲ブレードを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図6A】テーパ状区域において複数の湾曲ブレードと注入流路とを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図6B】テーパ状区域において複数の湾曲ブレードと注入流路とを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図6C】テーパ状区域において複数の湾曲ブレードと注入流路とを有する混合装置の例示的な実施形態を示す図である。
図7】チューブ内におけるガス流の例示的な速度分布を示す図である。
図8A】高NO供給源濃度、低体積ガス流、および高体積ガス流を拡散するための装置の例示的な実施形態を示す図である。
図8B】高NO供給源濃度、低体積ガス流、および高体積ガス流を拡散するための装置の例示的な実施形態を示す図である。
図8C】高NO供給源濃度、低体積ガス流、および高体積ガス流を拡散するための装置の他の例示的な実施形態を示す図である。
図8D】高NO供給源濃度、低体積ガス流、および高体積ガス流を拡散するための装置の他の例示的な実施形態を示す図である。
図9A】漏斗形状を有するテーパ状区域の例示的な実施形態を示す図である。
図9B】円錐形状を有するテーパ状区域の例示的な実施形態を示す図である。
図9C】ベル形状を有するテーパ状区域の例示的な実施形態を示す図である。
図10】双方向テーパ状区域の例示的な実施形態を示す図である。
図11】テーパ状区域壁部の内側表面の凸状輪郭を図示する例示的なテーパ状区域を示す図である。
図12】テーパ状区域を通過する第1ガスへと注入流路を通過して進入する第2ガスの例示的な実施形態を示す図である。
図13】人工呼吸器回路に挿入される拡散装置の例示的な実施形態を示す図である。
図14】本明細書で記載の例示的な拡散器と、従来の低供給源濃度インジェクタモジュールと、を使用する機械的人工呼吸の際に発生するNOの比較を示す図である。
図15A】本明細書で記載の例示的な拡散器と、本明細書で記載の例示的な加速器と、従来の低供給源濃度インジェクタモジュールと、を使用して、滑らかなボアチューブ内において定常状態FGF流のもとで発生するNOの比較を示す図である。
図15B】本明細書で記載の例示的な拡散器と、本明細書で記載の例示的な加速器と、従来の低供給源濃度インジェクタモジュールと、を使用して、滑らかなボアチューブ内において定常状態FGF流のもとで発生するNOの比較を示す図である。
図15C】本明細書で記載の例示的な拡散器と、本明細書で記載の例示的な加速器と、従来の低供給源濃度インジェクタモジュールと、を使用して、滑らかなボアチューブ内において定常状態FGF流のもとで発生するNOの比較を示す図である。
図15D】本明細書で記載の例示的な拡散器と、本明細書で記載の例示的な加速器と、従来の低供給源濃度インジェクタモジュールと、を使用して、滑らかなボアチューブ内において定常状態FGF流のもとで発生するNOの比較を示す図である。
図15E】本明細書で記載の例示的な拡散器と、本明細書で記載の例示的な加速器と、従来の低供給源濃度インジェクタモジュールと、を使用して、滑らかなボアチューブ内において定常状態FGF流のもとで発生するNOの比較を示す図である。
図15F】本明細書で記載の例示的な拡散器と、本明細書で記載の例示的な加速器と、従来の低供給源濃度インジェクタモジュールと、を使用して、滑らかなボアチューブ内において定常状態FGF流のもとで発生するNOの比較を示す図である。
図16】例示的な人工呼吸器の呼吸回路を加熱することにより発生するNOの低減化を示す図である。
図17】およそ1:1のガス速度比(FGF:NO)で、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度を用いて初期領域において発生するNOを示す図である。
図18A】様々なガス速度比(FGF:NO)および10ppmNOの設定用量で、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度を用いて初期領域において発生するNOを示す図である。
図18B】様々なガス速度比(FGF:NO)および10ppmNOの設定用量で、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度を用いて初期領域において発生するNOを示す図である。
図18C】様々なガス速度比(FGF:NO)および10ppmNOの設定用量で、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度を用いて初期領域において発生するNOを示す図である。
図18D】様々なガス速度比(FGF:NO)および10ppmNOの設定用量で、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度を用いて初期領域において発生するNOを示す図である。
図19】様々なガス速度比(FGF:NO)で、4880ppmNO供給ボンベ濃度および40ppmの設定用量を用いて、初期領域において発生するNOを示す図である。
図20A】様々なガス速度比(FGF:NO)および10ppmNOの設定用量で、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度を用いて、初期領域において発生するNOを示す図である。
図20B】様々なガス速度比(FGF:NO)および10ppmNOの設定用量で、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度を用いて、初期領域において発生するNOを示す図である。
図21】様々なガス速度比(FGF:NO)で、4880ppmNO供給ボンベ濃度および40ppmの設定用量を用いて初期領域で発生するNOと、設定用量に等しい40ppmの均質な位相の間に発生するNOと、を示す図である。
図22A】発生したNOを、ppmにおいて、設定用量のパーセンテージとして、より高い流れを有する吸気時間的期間に対する呼気時間的期間の変化のシミュレーションとともに示す図である。
図22B】発生したNOを、ppmにおいて、設定用量のパーセンテージとして、より高い流れを有する吸気時間的期間に対する呼気時間的期間の変化のシミュレーションとともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、全般的には、人工呼吸器の呼吸回路の吸息肢内のフレッシュガス流にNOを、NOの発生が最小化されるよう、注入するシステムおよび方法を対象とする。本発明は、NOの発生に影響を及ぼすことを出願人が驚くべきことに見出した、以前は周知ではなかった要因を利用する。さらに詳細には本発明のシステムおよび方法は、わずかに例を挙げるとNOをフレッシュガス流に注入する位置、フレッシュガス流速度、NO流速度、および/またはNOならびにフレッシュガス流の衝突速度の比などを含むがこれらに限定されない変数を考慮に入れることにより、NOの発生が実質的に最小化され、および/または、発生したNOが所望の範囲内となる(例えば、従来のインジェクタモジュール、その他を使用して、実質的により低い濃度のNO供給源により発生するNOと同じであるかまたはより少ない1ppm未満のNOが患者に送達される)よう、NOを、高濃度NOの供給源(例えば5000ppmNO供給源)から、人工呼吸器の呼吸回路の吸息肢内のフレッシュガス流に、送達するために使用され得る。
【0047】
さらに本発明のシステムおよび方法は、圧力低下を実質的に生じさせないこと(例えば60SLPMにおいて1.5cmHOより低い圧力低下)、流れプロファイルの変化を最小化すること、フレッシュガス流の圧縮性体積における増加を最小化すること、および/または、患者が人工呼吸器の呼吸回路において自発的に呼吸することを可能にすることにより、人工呼吸器の呼吸回路とともに使用され得る。さらに、本発明のシステムおよび方法は、フレッシュガス流が層流であることを要求する流れセンサの直下流側で使用され得、および/または、少なくとも1つのガスサンプリングラインの直上流側で使用され得る。
【0048】
「圧縮性体積」は、導管の、および導管の流路に対して流体連通し、かつ、係る導管の流路に接続された全部の構成要素の、体積を意味する。例えば、呼吸回路の圧縮性体積は、呼吸回路、および、呼吸回路内の全部の構成要素(例えば、加湿器、インジェクタモジュール、試料T)の体積である。
【0049】
本明細書で使用される「拡散」、「拡散する」、およびその関連用語は、1つのガス(例えばNO)の分子が、他のガス(例えば酸素を豊富に含む空気)のストリームに対して、総合的に輸送されることを指す。「拡散」、「拡散する」、およびその関連用語の使用は、2つ以上のガスストリームの混合および均質化に対する大量の流体移動または他の輸送現象の寄与を除外しない。
【0050】
上述のように、出願人の研究以前には、NOの形成がNOおよびOの濃度(例えばNOのppm、Oのパーセント(他にFiOとしても知られる))に、ならびに、ガス混合と患者との間の距離/滞留時間に、基づくものであると考えられていた。その考えにしたがうなら、高濃度供給源(例えば5000ppm、10,000ppmのNOボンベ)からNOを送達すると、実質的に高レベルのNOが生じることとなる。例えば、10ppmの設定用量に低下された4880ppmのNOボンベ濃度は488:1の低下比であり、その一方で、10ppmの設定用量に低下された800ppmボンベ濃度は80:1の低下比を有する。理論的にNOは10ppmの用量に対して、800ppmNO供給ボンベを用いた場合よりも、4880ppmNO供給を用いた場合、およそ37倍大きい率で生成される。この問題を克服する手段がない場合、NOの高濃度供給源をINO療法に対して使用することは、好ましくない高レベルのNOが患者に送達されることとなるため、不可能であり、INO療法のためにNOの高濃度供給源を使用することに関連する多数の利点(例えば、NO供給ボンベの小型化、INO療法装置の可搬性の向上、呼吸回路内におけるNO含有ガス(例えば窒素およびNOガスの混合)の体積低減化、注入されたNO含有ガス体積が小さいことに起因する吸入酸素の希釈低減化、その他)が、実現されないこととなるであろう。
【0051】
例示的な実施形態では、より高い濃度の供給源ガスを使用することにより、患者に送達されるNOの分量を減少させることが可能である。例えば、供給源ガスのNO濃度が高いほど、所望の設定NO用量を達成するために送達されることが必要な供給源ガスの体積は小さくなる。供給源ガス中のNO濃度が同一(例えばガスボンベ中のNO濃度が同一)であったとしても、このより小さい体積の供給源ガスを使用することにより、供給源ガスに含まれるより少量体積のNOが送達されることとなり、したがって患者はNO供給源(例えばボンベ)からより少量のNOを受け取ることとなる。
【0052】
少なくともこれらの実現されない利点に鑑みて、出願人は、広範な研究と、NOを人工呼吸器の呼吸回路の吸息肢に注入する際のNO発生に関する試験と、を実施した。
【0053】
この研究および試験から、人工呼吸の吸気非層流(乱流)位相の間におけるよりも、人工呼吸の呼気位相(人工呼吸器の吸息肢内のフレッシュガス流がより低速で、層流(非乱流)である)の間に、NO形成がより大きくなることが、驚くべきことに見出された。この知識を用いて、さらなる研究および試験が実施され、NO出力と、変数(例えばNO含有ガスの衝突速度、FGFの流量、およびNO用量など)と、の間の関係が決定された。これらの実験の各々では、フレッシュガスは酸素を豊富に含み(例えば60%O/空気)、NO濃度はNO注入地点を越える距離(例えば1,000mm)において測定され、NO供給源濃度は、低濃度(例えば800ppmNO)または高濃度(例えば4880ppmNO)のいずれかであった。NOは注入され、ガスは従来のインジェクタモジュールを使用して混合された。この試験の結果を表1~表2および図1A図1Fに示す。
【表1】
【表2】
【0054】
図1Aおよび図1Bでは、呼吸回路内のフレッシュガス流に対するNOの衝突速度がNOの発生量に対して実質的に影響を及ぼすことが示されている。図1A(低濃度)と図1B(高濃度)とを比較することにより見られ得るように、NO濃度が増加すると全般的にNOの発生量が増加する。
【0055】
図1C図1Fでは、異なる流量を有するFGFにNOが注入されたときの、異なる設定NO用量に対して発生したNOのそれぞれの量が示されている。図1C(低濃度)と図1D(高濃度)とを比較することにより見られ得るように、特により低い流量のFGFにおいて、NO濃度が増加すると全般的にNOの発生量が増加した。このことは、図1E(低濃度)と図1F(高濃度)とを比較することによっても示される。なぜなら0.5SLPMに対するNO出力曲線が、低NO供給源濃度と高NO供給源濃度との間で劇的に異なるものであったためである。
【0056】
上記はNO発生に関する理解については有益であるが、NO(例えば高濃度NO供給源からの)が人工呼吸器の呼吸回路の吸息肢に注入されるときのNO発生の最小化を実質的に複雑化する。例えば、フレッシュガス流速度は変動し得(例えば、フレッシュガス流量は患者の呼吸サイクルのうちに変動し得る)、フレッシュガス流に注入されるNO速度は変動し得(例えばNO流量は、わずかに例を挙げると、NO送達ラインにおける圧力、拡散装置におけるNO注入ポートの寸法、NO送達システムにおけるNO送達導管の寸法に応じて変動し得)、例えば一定の吸気NO濃度を達成するためにINO療法に対して要求され得るレシオメトリックな送達は、フレッシュガス流に比例して送達されるNOを変動させることを要求し得る。呼気位相の間、いくつかの人工呼吸器は、人工呼吸器の呼吸回路において、低バイアス流(0.5SLPM)を使用し、より低速のFGFを有する。このことは、吸気位相の間(人工呼吸器の呼吸回路においてFGFがより高速である)よりも、より多量のNOを発生させ得る。例えば、上記のデータでは、同一の時間的期間にわたり、人工呼吸器の呼気バイアス流に関連付けられた低いFGFにおいて(ここでは、従来のインジェクタモジュールを用いた場合、不十分な拡散が生じ得る)、800ppmNOを用いた場合よりも、4880ppmNOを用いた場合に10~20倍多いNOが発生し得ることが示されている。
【0057】
したがって例示的な実施形態では、拡散装置は、NOおよびフレッシュガス流の衝突速度と、NOをFGFに注入する位置と、を制御することにより、NOの発生を最小化するよう設計され得る。様々な実施形態では、NO流れストリームの速度は、NOの発生を最小化するためには、NOが注入される位置におけるFGFに対して十分に高い速度であり得る。理論に拘束されることなく、NO流れストリームは、FGFストリームに対して垂直に、比例した速度で、貫入するものと考えられる。FGF速度に対してNO速度が非常に低い場合には、理論に拘束されることなく、NOがFGFの外側壁部に滞留し、その結果、十分な混合が達成されないものと考えられる。逆に、NO速度のみが高く、FGF速度が高くない場合、混合時間は延長され、それにより高NOが発生し得る。
【0058】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、2つの混合ガスストリームの初期接触拡散速度は主に分子の運動エネルギーにより制御され得るものと考えられる。係るガス衝突混合プロセスでは、ガス運動量からの散逸的交換が直接的な能動的混合を提供し得る。この迅速な拡散は、ノズル流出口のすぐ近傍で、または直接的にガス衝突地点において、生じ得る。分子運動エネルギーは(1/2)×(モル質量)×(速度の2乗)として定義され、したがって速度はモル質量の平方根に反比例する。同等な体積の異なるガスは同一個数の粒子を含み、したがって所与の温度および圧力において、単位リットルあたりのモル数は一定である。このことは、ガスの密度がそのモル質量に正比例することを示す。したがって、このことは、同一の、すなわち1:1の比の混合エネルギー(すなわち同一の運動エネルギー)が、略等しい速度において存在するであろうことを示す。なぜなら、NO、N、空気、およびOの分子量が同様である(すべて単位モルあたり28~32グラムの範囲内である)ためである。しかし、空気/O混合物とNO/N混合物との間でわずかな分子量の不均衡が存在した場合、散逸的エネルギー交換からの最大の拡散は、N、NO、O、および空気の相対的比率に応じて、1:1(FGF:NO)より小さい速度比(例えば0.85:1、0.9:1、または0.95:1)において生じ得る。
【0059】
様々な実施形態では、2つのガスストリームの速度は、NOの発生を最小化させるために、互いに対して比例し得る。他の要因(例えばNO送達ライン内の圧力、NO注入流路の寸法、その他)が固定され得るため、NO速度は例えばNO注入ポートの寸法を変化させることにより制御され得る。NO速度を制御するためのあらゆる手段が使用され得ることが理解されるであろう。しかし、フレッシュガス流速度の制御は実質的には困難であり得る。なぜならフレッシュガス流の速度は通常は人工呼吸器により制御されるためである。さらに上述のように、呼気位相の間のフレッシュガス流の速度は実質的に低速である。少なくともいくつかの事例では、少なくとも呼気位相の間のフレッシュガス流の衝突速度は、低速すぎるため、NO発生の最小化は不可能である。したかって例示的な実施形態では、拡散装置は、例えばNO含有ガスとの交差地点に誘導され得るフレッシュガス流を所望の衝突速度に加速する能力を有する少なくとも1つの加速器を含み得る。
【0060】
1つまたは複数の実施形態では、フレッシュガス流チューブに対するNOガス衝突地点におけるオリフィス径は、拡散モジュール100チューブ径(すなわちFGFチューブ径)とNOノズル流出口直径面積(すなわち注入ポートオリフィス径)との間の固定されたアスペクト比の流出口面積を適切に維持するようなサイズであり得る。チューブ流出口面積におけるこの比は、NO設定用量に対してNOボンベ濃度に比例し得る。例えば、20ppmの設定用量における800ppmボンベ濃度に対して、40~1の低下比がNO流量において存在する。1:1の衝突ガス速度関係を維持するために、注入ノズル流出口面積に対するインジェクタモジュール流チューブ面積は、期待される最も低いフレッシュガス流量(例えば0.5SLPM)において、40:1のサイズであり得る。他の例として、10ppmの設定用量における4880ppmボンベ濃度に対して、488~1の低下比がNO流量において存在する。1:1の衝突ガス速度関係を維持するために、インジェクタモジュールチューブ面積と、注入ノズル流出口面積と、は488:1のサイズであり得る。
【0061】
1つまたは複数の実施形態では、注入流路および注入ポートの寸法は、NO速度とFGF速度との比が約2:1より小さくなる(例えば1.5:1、1:1、0.95:1、0.9:1、0.85:1、0.8:1、0.7:1、0.6: 0.5:1、0.4:1、0.3:1、0.2:1、0.1:1、または0.05:1)よう、調整され得る。
【0062】
例示的な実施形態では、少なくとも1つの加速器は、フレッシュガス流の全部または一部を加速する能力を有する任意の装置または構成要素であり得る。例えば加速器は、テーパ状表面、テーパ状区域、双方向円錐形状構造体、および/または、フレッシュガス流を加速する能力を有する任意の形状もしくは表面を有する円錐形状構造体であり得る。他の例としては、翼に類似する表面を有する構造体が挙げられる。なぜなら、翼上部(湾曲した表面)の上方を流れるガスは、翼底部(比較的平坦な表面)の下方を流れるガスよりも、より速い速度を有するためである。これらの加速器構造体は単なる例示であり、ガス流の少なくとも一部を加速する能力を有する他の構造体も、本発明の範囲に含まれる。
【0063】
特に、NOをフレッシュガス流に注入するとき、装置の構成および寸法は、供給源NO濃度を可能な限り迅速に低下されるよう、調整され得る。様々な実施形態では、混合機能がNO注入地点の下流側の装置に追加され得る。様々な実施形態では、混合は2つの位相において考えられ得る。NOの大部分が発生し得る第1位相は、NOの注入時から、NO濃度が設定用量(例えば設定用量に等しい均一状態)に到達する時点までの時間である。NO発生の第2位相は、設定用量における吸息肢内の滞留時間に起因する。NOの大部分は、NOと、フレッシュガス流(例えばO)と、の間の第1接触地点において、またはその近傍において、発生し得る。NO発生のこれらの2つの位相が図1Gにおいて見られ得、図1Gでは、注入地点から下流側に位置する様々な地点におけるNO濃度が示されている。図1Gから見られ得るように、NOの大部分は、NOの注入直後に発生し(位相1)、NOのわずかな部分のみが初期注入およびNOの混合の後に発生する(位相2)。第1位相の間に発生するNOの大部分は、上記のNO発生反応速度論にしたがう。なぜなら、NO注入の第1位相では局所的NO濃度が最も高いため(例えば、NOがフレッシュガス流に対してまだ拡散せず、均質な設定NO用量が提供されていないため)である。例えば、5000ppmNOを呼吸回路に注入するとき、NO濃度は注入地点において最も高い(例えば、およそ5000ppmNO)。なぜならNOがフレッシュガス流に対してまだ拡散していないためである。この注入地点後、注入されたNOおよびフレッシュガス流は一緒に拡散して、それによりNO濃度が、より低い濃度に(例えば5000ppmNOから、20ppmNOの所望の用量に)低下する。
【0064】
したがって、NOおよびFGFを迅速に混合するための1つの手法は、混合されたガスストリームをできるだけ素早く均質なNO濃度を有することを確保するための、NO注入地点の直下流側かまたはNO注入地点の近傍に配置された混合装置の使用である。例えば複数のブレード、プレート、および/またはフィンが、2つのガスストリームの速やかな混合を確保するために、NO注入地点の下流側に配置され得る。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またそれ以上のブレード、プレート、および/またはフィンが使用され得る。図2A図2Cでは、4つのブレードを有する混合装置の例示的な構成の様々な図面が示されている。図3A図3Cでは、角度を有する3つのフィンを有する混合装置の例示的な構成の図面が示されている。図4A図4Cでは、8つのプレートを有する混合装置の例示的な構成の図面が示されている。図5A図5Cでは、4つの湾曲ブレードを有する混合装置の例示的な構成の図面が示されている。図6A図6Cでは、テーパ区域において4つの湾曲ブレードと注入流路とを有する混合装置の例示的な構成の様々な図面が示されている。
【0065】
複数のブレード、プレート、および/またはフィンが混合装置において使用され場合、ブレード、プレート、および/またはフィンは、NO注入地点から下流側に同一距離において並列に配置されてもよく、またはNO注入地点から下流側の様々な距離において直列に配置されてもよい。例えば、各ブレード、プレート、またはフィンは、NO注入地点から下流側の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、または100cmに配置され得る。
【0066】
混合装置の存在は、NO注入地点と、O、NO、およびNOの濃度などの混合ガスの組成を監視するための1つまたは複数のサンプリング地点と、の間の距離を短縮するためにも使用され得る。例えば第1サンプリング地点は、混合装置から下流側の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、または100cmに配置され得る。さらに、複数のサンプリング地点(例えばNO注入地点から様々な距離に配置されたサンプリング地点)が使用され得る。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、またはそれ以上のサンプリング地点が使用され得る。サンプリング地点間の距離は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、または30cmであり得る。複数のサンプリング地点が、呼吸回路の下流側の長さの関数として混合ガスストリームを別個に分析するために使用されてもよく、または、2つ以上のサンプリングが、ガスの組成に関する平均を提供するために、組み合わされてもよい。
【0067】
さらに、フレッシュガス流へのNOの注入地点の場所は、NO発生における低減に影響を及ぼし得る。例示的な実施形態では、NO注入地点は、初期高濃度の滞留時間が最小化される場所、および/または、初期高濃度NOが迅速に消散される場所に、配置され得る。例えばNO(例えば高濃度NO、5000ppmNO)の注入地点は、NOが初期高濃度において維持される時間量を低減させるために、環状本体の中心に、またはテーパ状区域の一部に、配置され得る。したがってNO注入地点は、NOがフレッシュガス流と迅速に混合され、それにより高濃度NOの滞留時間が最小化されて、NOの発生が低減される場所に、配置され得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、フレッシュガス流が高速度を有する地点にNOを注入することにより、フレッシュガス流が低速を有するであろうチューブの縁部(すなわち壁部)においてNOを注入する従来の技術よりも、NOの発生量が減少すると考えられる。
【0068】
図7では、チューブを通るガス流の例示的な速度分布が図示されている。図7から見られ得るように、ガス流は、縁部境界(すなわちチューブの壁部)の最も近位において最も低い速度を有し、縁部境界から最も遠位において最も高い速度を有する。したがって、いくつかの実施形態では、NOは縁部境界からある距離において注入される。なお、係る特定距離において、ガス速度は、縁部境界におけるかまたは縁部境界の近位にあるガス速度よりも、より高い値となっている。
【0069】
例示的な実施形態では、NOの発生を低下させるため、フレッシュガス流に対するNOの注入地点は、フレッシュガス流が所望の速度に加速されている場所に配置され得る。加速器は、フレッシュガス流速度を、流入端部から流出端部まで増加するよう作用し得る。注入ポートは、流入口からある距離に配置されており、当該距離では、フレッシュガス流は意図された速度に増加されている。速度の増加は、ガスのポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換することにより、作られ得る。例えば速度は、テーパ状区域の断面積を減少させることにより増加され得る。なぜなら、ガスは、より高い圧力の領域からより低い圧力の領域に流れるためである。ガス速度は、断面積における変化およびガス密度における変化に比例する。もちろん、速度を増加するための他の技術も考えられる。
【0070】
NOを人工呼吸器の呼吸回路に注入するときのNO発生を最小化させるための任意の潜在的な解決策をさらに複雑化することは、人工呼吸器に、人工呼吸器の呼吸回路とともに使用される任意の要素(例えば、インジェクタモジュール、NO最小化装置、その他)が、(流れに対する増加した抵抗、または増加した圧縮性体積により)人工呼吸器の吸気流れプロファイルに実質的な変化を生じさせないことを要求する。全般的に、呼吸回路全体にわたる許容可能な圧力低下は、人工呼吸器流出口抵抗を含んで、成人に対しては30SLPMにおいて6cmHOであり、小児に対しては15SLPMにおいて6cmHOであり、新生児に対しては2.5SLPMにおいて6cmHOであり得る。上記に鑑みて、拡散器にわたる許容可能な圧力低下は最小化されるべきである。例えば現行のINOMaxDSインジェクタモジュールは、60SLPMにおいて1.5cmHOにおいて評価される。したがって、本発明のシステムおよび方法は、人工呼吸器の性能に影響を及ぼすことなく、および/または、実質的に圧力低下、流れプロファイル変化を生じさせること、ならびに、例えば、患者の人工呼吸ガス交換に影響を及ぼし得る実質的な圧縮性体積を導入することなく、NOを最小化させる。
【0071】
したがって、例示的な実施形態では、拡散装置は、最も高いピークフレッシュガス流において実質的な圧力低下を生じさせず、吸気フレッシュガス流の流れプロファイルに実質的な変化を生じさせることなく、かつ、呼吸回路において実質的な圧縮性体積を作らない一方で、少なくとも1つの加速器が、フレッシュガス流衝突速度を、最も低い期待されるフレッシュガス流量に増加させるような構成および寸法を有し得る。例えば、口部および喉部の直径は、FGF速度を増加させる一方で、圧力変化における遅延および患者へのガス流を最小化させるよう、選択され得る。圧力、流れ、および圧縮性体積に対する変化を最小化するために、拡散装置は、フレッシュガス流が加速器をバイパスするための領域を含み得る。例えば、拡散器は、拡散器および/または加速器の周辺部の周りに配置され得るバイパス間隙を含み得る。
【0072】
第1位相におけるNOの発生を最小化する(すなわち、NOおよびフレッシュガス流を注入地点において迅速に拡散すること、その他)ための本明細書で開示の技術を使用した後、NOは、所望の設定用量(例えば1~80ppmNO)において、または係る設定用量にきわめて近い値において、呼吸回路の残余領域を横断し続け得る。このNO用量(または所望の設定用量に非常に近い用量)が呼吸回路の残余領域を横断するにつれて、NOが発生し得る(第2位相)。しかし上述のように、本明細書で開示の技術を使用すると、発生したであろうNOの大部分は実質的に最小化され、それにより、発生するNOの総量(例えば、直接的なNO発生および潜在的なNO発生)が実質的に低減されることとなるであろう。
【0073】
さらにNOの発生を緩和するために、NOは、NOおよびOが一緒に移動する時間が短縮されそれにより部分的にNOの形成が減少するよう技術的に可能な限り患者に近接して(例えば、人工呼吸器の呼吸回路において)導入され得る。NO変換時間は、NOおよび酸素が、患者に到達する以前に、混合された状態で残留する経過時間である。したがってNO変換時間は、人工呼吸器流量(吸気および呼気)、人工呼吸器I:E比、および、NO注入地点から患者気道の端部までの呼吸回路体積の関数である。
【0074】
しかし上記で説明したように、例示的な実施形態では、下流側NO発生(すなわち位相2)は、注入時におけるNO発生(位相1)よりも著しく少ない。したがっていくつかの実施形態では、NO含有ガスは、患者から著しく上流側にあるが、依然としてNOが許容可能なレベル(例えば1ppm未満)にある位置(例えば患者から数フィートなど)において注入される。例示的なNO注入地点は、患者から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10フィート上流側にある地点を含む。係る場所は、患者の「Y」ピースの上流側、加湿器の上流側、噴霧器の上流側、または人工呼吸器の呼吸回路内の患者から上流側の他の場合であり得る。
【0075】
様々な実施形態では、第2ガスストリームは、第1ガスストリームの軸に対して、約60度~約120度の範囲の角度、または約75度~約105度の範囲の角度、または約80度~約100度、または約85度~約95度、または約90度で、注入され得る。
【0076】
本発明の一態様は、高濃度ガスを横方向ガスストリームに注入するための注入装置に関する。
【0077】
1つまたは複数の実施形態では、この装置は、第1ガスストリームに対して垂直に第2ガスストリームを注入する注入ポートを含む。
【0078】
様々な実施形態では、高濃度NO含有ガスは、800ppmNO超~約5000ppmNOもしくは約2000ppmNO~約4880ppmNOの範囲、または約4880ppmNOであり得る。例示的な下限は、約800ppm、約1,000ppm、約1,200ppm、約1,400ppm、約1,600ppm、約1,800ppm、約2,000ppm、約2,200ppm、約2,400ppm、約2,600ppm、約2,800ppm、約3,000ppm、約3,200ppm、約3,400ppm、約3,600ppm、約3,800ppm、約4,000ppm、約4,200ppm、約4,400ppm、約4,600ppm、および約4,800ppmを含む。例示的な上限は、約10,000pm、約9,000ppm、約8,000ppm、約7,000ppm、約6,500ppm、約6,000ppm、約5,500ppm、約5,200ppm、約5,000ppm、および約4,900ppmを含む。高濃度NO含有ガスは、約200psig~約3000psigの範囲、または約2000psig~約2400psigの、もくしは約2200psig~約2400psigの範囲の圧縮ボンベ内に含まれ得る。もちろん高濃度NOの他の供給源も考えられる。
【0079】
図8A図8Bでは、上記で開示の技術を使用して高濃度低体積ガス流および高体積ガス流を拡散するための例示的な装置が図示されている。
【0080】
1つまたは複数の実施形態では、拡散装置100は、壁部115および中空(開放とも呼ばれる)内部領域118を有する円筒により形成される環状本体であり得る本体110を含む。本体110は、人工呼吸器の呼吸回路内のチューブ(例えば、10、15、および22mm)に接続するような、人工呼吸器チューブに嵌入するような、または人工呼吸器チューブが本体に嵌入するような、構成および寸法を有し得る。様々な実施形態では、この装置の流入端部は、人工呼吸器チューブに接合するような構成および寸法を有するオス型接続部を含み、流出端部は、人工呼吸器チューブまたは加湿器チャンバ流入口に接合するような構成および寸法を有するメス型接続部を含む。非限定的な事例では、この装置の流入端部は22mm(外径)オス型接続部を含み、流出端部は22mm(内径)メス型接続部を含む。追加的に様々な実施形態では、拡散装置100は、当該技術分野で周知のように、人工呼吸器の呼吸回路または加湿器チャンバなどの他の構成要素に連結する、インジェクタモジュールの1つの構成要素または部品であり得る。
【0081】
1つまたは複数の実施形態では、拡散装置100は、人工呼吸器の呼吸回路内のチューブ(例えば10、15、および22mm)に接続するような構成および寸法を有する長方形、立方体、または他の幾何学的形状であり得、かつ、中空内部領域を有する、本体110を含む。簡便性のために、本体が円筒形壁部を含む実施形態では、本体は、本明細書では環状本体と呼ばれる。
【0082】
1つまたは複数の実施形態では、環状本体110は、流入端部および/または流出端部において外径「A」を有し得る。外径「A」は、約10mm(0.394インチ)~約25mm(1.0インチ)の範囲、または約22mm(0.866インチ)であり得る。人工呼吸器チューブは、流入端部外径の外側および流出端部内径の内側の周りに嵌入し得る。様々な実施形態では、人工呼吸器チューブは当該技術分野で周知のように摩擦嵌合接続を利用して拡散装置の流入端部および/または流出端部に接続され得る。様々な実施形態では、流入端部における外径は、流出端部における外径と同一であってもよく、または異なってもよい。
【0083】
1つまたは複数の実施形態では、環状本体は、流出端部および/または流入端部において内径「B」を有し得る。内径「B」は、約10mm(0.394インチ)~約25mm(1.0インチ)の範囲、または約22mm(0.866インチ)であり得る。人工呼吸器チューブは流入端部内径の内側に嵌入し得る。様々な実施形態では、人工呼吸器チューブは当該技術分野で周知のように摩擦嵌合接続を利用して拡散装置の流入端部および/または流出端部に接続され得る。様々な実施形態では、流入端部における内径は、流出端部における内径と同一であってもよく、または異なってもよい。
【0084】
1つまたは複数の実施形態では、ガス(単数または複数)が拡散装置100の流入端部に進入し、拡散装置の流出端部から流出し得る。なお当該ガス(単数または複数)は呼吸可能なガスの混合物を含み得る。様々な実施形態では、呼吸可能なガスは空気を、または空気および追加的な酸素を、含み得る。
【0085】
様々な実施形態では、円筒形壁部115の壁部厚さ「C」は、約1mm(0.040インチ)~約3.175mm(0.125インチ)の範囲、または約1mm(0.040インチ)~約2mm(0.079インチ)の範囲、または約1.588mm(0.0625インチ)~約2.388mm(0.094インチ)の範囲であり得る。
【0086】
1つまたは複数の実施形態では、拡散装置は、約6.35mm(0.25インチ)~約41.3mm(1.625インチ)の範囲、または約22.225mm(0.875インチ)~約41.275mm(1.625インチ)の範囲、または約25.4mm(1.00インチ)~約38.1mm(1.50インチ)の範囲の長さ「D」を有し得る。
【0087】
1つまたは複数の実施形態では、送達チューブを拡散装置に取り付けるための乳頭状突起190が円筒形壁部115の外側表面から突起し得る。様々な実施形態では、乳頭状突起は、4.5mm直径(0.177インチ)である直径「M」を有し、8.7mm(0.34インチ)である高さ「N」を有する円筒形壁部115の外側表面から突起し得る。様々な実施形態では、乳頭状突起は送達チューブを固定するためのホース有刺突起を含み得る。
【0088】
1つまたは複数の実施形態では、この装置は、円筒形壁部115の内側表面から延長する突起物195をさらに含む。様々な実施形態では、突起物195は中空内部領域118へと径方向距離「P」だけ延長し得る。様々な実施形態では突起物195は、壁部115の内径の半分の距離にある中空内部領域118の中心まで、または当該の中心付近まで延長し得る。様々な実施形態では、距離「P」は内径の半分よりわずかに小さく、そのためにNO含有ガスはノズルオリフィスから中央部に放出される。なおこの中央部では、FGFガス速度は、円筒形壁部の内側表面におけるよりも、より大きくなっている。したがって様々な実施形態では、「P」と「B」/2との間の差は、約0.1mm~約5mm、または約0.5mm~約3mmの範囲である。例示的な実施形態では、「P」と「B」/2との間の差は約1.5mmであり、すなわち突起物195は中空内部領域118の中心から約1.5mmの位置において終端する。「P」と「B」/2との間の例示的な差は、約0.1mm、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約1.1mm、約1.2mm、約1.3mm、および約1.4mmの下限を有し得、例示的な上限は、約5mm、約4.5mm、約4mm、約3.5mm、約3mm、約2.5mm、約2.4mm、約2.3mm、約2.2mm、約2.1mm、約2mm、約1.9mm、約1.8mm、約1.7mm、および約1.6mmであり得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、「P」は、「B」の特定パーセンテージ(例えば「B」の約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約40%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、または約5%などとして)として提供される。例示的な実施形態では、「P」は「B」の約40%~約45%の範囲内である。
【0090】
1つまたは複数の実施形態では、「B」、「P」、「L」、その他の寸法は、これらの寸法間の所望の関係が、および/または、特定条件下でのガス特性間の所望の関係が、達成されるよう選択され得る。例えば、「B」および「L」は、所与の供給源ガス濃度および所与の所望NO用量(例えば20ppm)に対して、最も低いFGFにおけるガス速度がNO含有ガスのガス速度とおよそ等しくなるよう、選択され得る。他の例として「B」および「L」は、所与の供給源ガス濃度に対して、FGFのガス速度が、所望のNO用量の範囲(例えば5ppm~80ppm)にわたりNO含有ガスのガス速度と等しくなるよう、選択され得る。他の例として「B」および「P」は、NO含有ガスがノズルオリフィスから、円筒形壁部の内側表面からある距離の位置(例えば中空内部領域118の中心位置または係る中心位置の近傍)に、放出されるよう、選択され得る。さらなる例として、「B」および「P」は、NO含有ガスがノズルオリフィスから、FGFのピーク速度の特定パーセンテージ(例えばFGFのピーク速度の99%、98%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、または10%など)を有するFGFの1部分に放出されるよう、選択され得る。
【0091】
様々な実施形態では、注入ポート185に至る注入流路180が乳頭状突起に形成され得る。なお注入流路180は「L」の内径を有する。様々な実施形態では、内径「L」は、約0.8mm(0.03125インチ)~約2.4mm(0.094インチ)の範囲、または約1.6mm(0.0625インチ)であり得る。例示的な下限は、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約1.1mm、約1.2mm、約1.3mm、約1.4mm、約1.5mm、および約1.6mmを含む。例示的な上限は、約4.75mm、約4.5mm、約4mm、約3.5mm、約3mm、約2.5mm、約2.4mm、約2.29mm、約2.2mm、約2.1mm、約2mm、約1.9mm、約1.8mm、約1.7mm、および約1.6mmであり得る。注入流路は、拡散装置100の中空内部領域118にガス(例えばNO)を送達するための流路を提供する。
【0092】
1つまたは複数の実施形態では、拡散装置100は、本体110から突出する乳頭状突起190を含まず、メス型コネクタを有する。このメス型コネクタに送達チューブが差し込まれ得る。なおメス型コネクタは、送達チューブが、注入流路180に対して接続および流体連通することを可能にする。様々な実施形態では、送達チューブの内径および注入流路の内径は、同一であり、および/または、均一な断面積を有する。
【0093】
1つまたは複数の実施形態において、注入ポート185は、注入流路180を通って流れるガスが、意図された率および/または速度で中空内部領域118に進入することを可能にするオリフィスであり得る。様々な実施形態では、注入ポートは、固定された寸法(注入流路の直径と同一であるかまたは異なり得る)の開口部であり得る。この注入ポートは、流量に関連する意図された流速度を提供する。様々な実施形態では、2つ以上の注入ポート185が、例えば、突起物195の長さに沿って複数の注入ポート185を有することにより、および/または、複数の突起物195を有し、かつ各突起物195が1つまたは複数の注入ポート185を有することにより、使用され得る。上述のように注入ポートは、NO含有ガスが、ゼロ速度または低速度を有するFGFの部分にではなく、高速度を有するFGFに注入されるよう、NO含有ガスを、縁部境界からある距離にあるFGFの1部分に、注入し得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の注入ポート185が使用される場合、注入ポート185の直径は、NO含有ガスの速度が低下せず、FGF速度に比例した状態に維持されることが確保されるよう、単一の注入ポート185に対して使用されるであろう直径よりも小さい直径を有し得る。
【0094】
複数の注入ポート185を利用するいくつかの実施形態では、注入ポート185のうちの1つのみまたはいくつかが一度に使用され得る。なおその際の選択はNOの設定用量に依存する。例えば複数の注入ポート185は、より低い設定用量のNOに対してはより小さいオリフィス径が使用され、より高い設定用量のNOに対してはより大きいオリフィス径が使用されるよう、様々なオリフィス径を有し得る。かくしてNO含有ガスおよびFGFの速度の比は、たとえ異なる設定用量のNOに対してさえも、一定の比に保たれ得る。いくつかの実施形態では、NO含有ガスおよびFGFの速度を所望の比に調整するために、より多数のポート185がより高い設定用量のNOにおいて使用され、より小数の注入ポート185がより低い設定用量のNOにおいて使用され得る。他の実施形態では、複数の注入ポート185の全部が並列的に使用され得る。様々な実施形態では、複数の注入ポート185は、インジェクタモジュールの部品として複数の比例制御バルブであり得る。
【0095】
1つまたは複数の実施形態では、バルブ(図示せず)および/または可変オリフィスが、注入ポート185と流体連通してもよく、および/または注入ポート185に配置されてもよい。比例バルブおよび/または可変オリフィスは、注入流路180から中空内部領域118に注入されるガスの速度を制御するよう調整され得る。様々な実施形態では、バルブオリフィスおよび/または可変オリフィスのサイズ、および注入ポート185を通して注入されるガスの速度は、FGF速度に関して調整され得る。なおバルブおよびガス速度はフィードバックループを通して制御され得る。様々な実施形態では、フィードバックループは、呼吸回路内のフレッシュガス流を測定する能力を有する流れセンサを含み得る。なお流れセンサは、バルブおよび/または可変オリフィスを調整することにより、注入流路180を通って、およびバルブおよび/または可変オリフィスを通って、拡散モジュール100に供給されるNOの用量を制御する制御モジュールと電気連通し得る。1つまたは複数の実施形態において、拡散器およびフレッシュガス流を測定する能力を有する流れセンサは、単一部品に組み込まれる(例えばインジェクタモジュールに対して一体化される)。
【0096】
1つまたは複数の実施形態では、拡散モジュール100は、比例制御バルブと、NO流れセンサと、呼吸回路内のフレッシュガス流を測定し、所望の設定用量のNOが提供されるようFGFに比例するNO含有ガスの流れを送達するためのFGF流れセンサと、を含む。係る実施形態では、比例制御バルブおよび/または流れセンサは、制御モジュールから除外され得る。係る構成は、制御モジュールと拡散器との間の圧縮ガス体積を排除し得る。なぜなら拡散モジュール100内の比例バルブが、NO含有ガスの呼吸回路への流れを加減するための主要バルブとして使用されるためである。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、拡散モジュール100内の比例バルブおよび制御モジュール内の制御バルブの両方を有することにより、各吸気サイクルの終点において圧縮ガスが注入流路およびNO送達チューブ内に格納され、次にこの圧縮ガスが減圧され、それによりある量のNO含有ガスが呼吸回路に進入し、NOの過剰な供給を生じさせることが可能になると考えられる。この潜在的問題は、送達体積が減少することにより、高濃度NOにより拡大され得る。したがって、制御モジュール内の比例制御バルブに対して拡散モジュール100内の比例制御バルブを代用することは、この潜在的問題の影響を低減または排除することが可能である。
【0097】
1つまたは複数の実施形態では、NO含有ガスは、1つまたは複数の注入ポート185からの複数のパルスとしてFGFに注入される。複数のパルスは、NO含有ガスの流れが一定である場合よりも、より高い速度のNO含有ガスを提供するために使用され得る。パルス(例えばNOの流れがOFF-ON-OFF-ON)を提供することにより、混合ガスストリームにおいて所望のNO濃度を提供するために必要とされるよりも高い平均体積流量を提供することなく、より高い瞬間NO体積流量に対して、瞬間NO速度における対応する増加が提供され得る。例えば、システムが低FGFバイアス流(例えば0.5SLPM)を検出した場合、NOは、この位相の間の正確な量のNO含有ガス体積を維持するために、複数の高速度パルスとして供給され得る。このようにしてNO送達システムは、(例えば呼気バイアス流の間に)FGFガス速度に比例する、より高いガス速度のNOを維持するために、NO流のパルス幅変調を利用し得、一方で所望の平均NO流量または設定用量濃度が維持され得る。
【0098】
呼気位相の間のみ、拍動性高ピーク流の送達はNO流出速度を増加させる。この位相の間の正確な量のガス体積を維持するために。拍動性流は、設定用量を満足するにあたり要求される平均流量を満足するために、Off-On-Off-Onとなるであろう。NO流のパルス幅変調。
【0099】
本発明の態様はまた、中空内部領域を包囲する内側表面を有する本体の中空内部領域を通して長手方向に第1ガスの少なくとも1部分を通過させることと、第2ガスストリームを、注入流路を通して、本体の中空内部領域に突出する注入ポートまで通過させることと、を含み、第2ガスストリームは、本体の中空内部領域に進入し、中空内部領域内で第1ガスストリームと少なくとも部分的に拡散する、高濃度ガスを横方向ガスストリームに拡散する方法にも関する。
【0100】
図8C図8Dでは、上記で開示の技術を使用して高濃度低体積ガス流および高体積ガス流を拡散するための他の例示的な装置が図示されている。もちろん、上記の技術を使用して高濃度低体積ガス流および高体積ガス流を拡散する能力を有する他の構成も考えられる。これらの寸法は、成人用呼吸回路/取り付け具とともに使用するための22mm定格拡散器に対して例示的である。寸法および/または構成の非限定的な例が、標準的な成人用呼吸回路に対して意図されたものであることに、および、装置の寸法および比例が、必要以上の実験を実施することなく、標準的な新生児用呼吸回路を、標準的な小児用呼吸回路を、または他の非標準的サイズの呼吸回路を、含む用途に対して調整され得ることに、留意すべきである。
【0101】
1つまたは複数の実施形態では、拡散装置100は、壁部および中空内部領域を有する円筒形であり得る環状本体110を含む。本体は、人工呼吸器の呼吸回路内のチューブ(10、15、および22mm)に接続するような、人工呼吸器チューブに嵌入するような、または人工呼吸器チューブが本体に嵌入するような、構成および寸法を有し得る。様々な実施形態では、この装置の流入端部は、人工呼吸器チューブに接合するような構成および寸法を有するオス型接続部を含み、流出端部は、人工呼吸器チューブまたは加湿器チャンバ流入口に接合するような構成および寸法を有するメス型接続部を含む。非限定的な事例では、この装置の流入端部は22mm(外径)オス型接続部を含み、流出端部は22mm(内径)メス型接続部を含む。追加的に、拡散装置100は、当該技術分野で周知のように、人工呼吸器の呼吸回路に連結する、インジェクタモジュールの1つの構成要素または部品であり得る。
【0102】
1つまたは複数の実施形態では、環状本体110は、流入端部および/または流出端部において外径「A」を有し得る。外径「A」は、約10mm(0.394インチ)~約25mm(1.0インチ)の範囲、または約22mm(0.866インチ)であり得る。人工呼吸器チューブは、流入端部外径の外側および流出端部内径の内側の周りに嵌入し得る。様々な実施形態では、人工呼吸器チューブは当該技術分野で周知のように摩擦嵌合接続を利用して拡散装置の流入端部および/または流出端部に接続され得る。
【0103】
1つまたは複数の実施形態では、環状本体は、流出端部および/または流入端部において内径「B」を有し得る。内径「B」は、約10mm(0.394インチ)~約25mm(1.0インチ)の範囲、または約22mm(0.866インチ)であり得る。人工呼吸器チューブは流入端部内径の内側に嵌入し得る。様々な実施形態では、人工呼吸器チューブは当該技術分野で周知のように摩擦嵌合接続を利用して拡散装置の流入端部および/または流出端部に接続され得る。
【0104】
1つまたは複数の実施形態では、ガス(単数または複数)が拡散装置100の流入端部に進入し、拡散装置の流出端部から流出し得る。なお当該ガス(単数または複数)は呼吸可能なガスの混合物を含み得る。様々な実施形態では、呼吸可能なガスは空気を、または空気および追加的な酸素を、含み得る。
【0105】
様々な実施形態では、拡散装置100の壁部厚さ「C」は、約1mm(0.040インチ)~約3.175mm(0.125インチ)の範囲、または約1mm(0.040インチ)~約2mm(0.079インチ)の範囲、または約0.0625~約0.094の範囲であり得る。
【0106】
1つまたは複数の実施形態では、拡散装置は、約6.35mm(0.25インチ)~約41.3mm(1.625インチ)の範囲、または約22.225mm(0.875インチ)~約41.275mm(1.625インチ)の範囲、または約25.4mm(1.00インチ)~約38.1mm(1.50インチ)の範囲の長さ「D」を有し得る。
【0107】
1つまたは複数の実施形態では、この装置は、円維台、漏斗、またはベルの形状を有し得る、壁部を含むテーパ状区域150をさらに含む。なおテーパ状区域150は、第1(流入)端部における内径「E」から、第1端部の反対側の第2(流出)端部における内径「F」まで、細くなり、第1(流入)端部における開口部は、第2(流出)端部における開口部よりも、直径がより大きい。様々な実施形態では、より大きい直径を有する第1端部は口部152であり、より小さい直径を有する第2端部は喉部158である。
【0108】
1つまたは複数の実施形態では、加速器は、テーパ状区域または双方向テーパ状区域を含み得る。
【0109】
様々な実施形態では、口部152における内径「E」は、約14mm(0.511インチ)~約18mm(0.709インチ)の範囲、または約16.03mm(0.631インチ)であり得る。
【0110】
様々な実施形態では、喉部158における内径「F」は、約3.17mm(0.125インチ)~約9.5mm(0.375インチ)の範囲、または約6.35mm(0.250インチ)であり得る。
【0111】
1つまたは複数の実施形態では、テーパ状区域150は、口部152の前縁部から喉部158の後縁部まで、長さ「T」を有し得る。様々な実施形態では、テーパ状区域150における長さ「T」は、約8mm(0.315インチ)~約13mm(0.519インチ)の範囲、または約10.3mm(0.405インチ)であり得る。
【0112】
1つまたは複数の実施形態では、テーパ状区域の内側表面は、口部150の前縁部において鋭利なコーナー部を形成し、それにより、テーパ状区域の軸に対して垂直な平坦な表面は存在しない。様々な実施形態では、テーパ状区域の壁部は、約1mm~約2mmの範囲、または約1.5mmの厚さを有し得る。
【0113】
1つまたは複数の実施形態では、テーパ状区域150は、拡散装置100の本体110の内部に配置され得る。様々な実施形態では、テーパ状区域は、支持体160により、環状本体110の円筒形壁部115から懸下され得る。なお支持体160は円筒形壁部115の内側表面から開放内部領域118に延長し得る。様々な実施形態では、環状本体110と、テーパ状区域150と、テーパ状区域150を環状本体に接合する支持体とは単一部品であり得る。なお環状本体110、テーパ状区域150、および支持体160は、これらの構成要素が単一構造を含むよう、単一部品として成型される。様々な実施形態では、テーパ状区域150および環状本体110は同軸状である。1つまたは複数の実施形態では、突起物195は、本体110およびテーパ状区域150を相互接続することにより、支持体160を形成し得る。
【0114】
1つまたは複数の実施形態では、口部152のリムと円筒形壁部115の内側表面との間に間隙151が存在し得、間隙151は、約0.5mm(0.02インチ)~約3mm(0.118インチ)の範囲のサイズ「G」を有する。それにより、口部152のリムの周りに開口部が提供される。様々な実施形態では開口部は、内部領域の周辺部に沿って、および、テーパ状区域150の周りを、流れることにより、流入してくるガス(単数または複数)の少なくとも1部分がテーパ状区域150を迂回することを可能にする。
【0115】
1つまたは複数の実施形態では、開口部は、内部領域の断面積の約9.5%~約19.0%の範囲の断面積を有する。
【0116】
1つまたは複数の実施形態では、間隙151は、内部領域の断面積の約15%~約35%の範囲の断面積を有し、B直径として画成される内部領域は20mmである。
【0117】
1つまたは複数の実施形態では、テーパ状区域150は、環状本体110の前縁部から距離「H」であり得る。様々な実施形態では、環状本体110の前縁部からの距離「H」は3.175mm(0.125インチ)~約12.7mm(0.50インチ)の範囲であり得る。様々な実施形態では、寸法Hを小さくすると装置のサイズおよび重量が最小化され得る。
【0118】
1つまたは複数の実施形態では、テーパ状区域150は環状本体110の後縁部から距離「J」であり得る。様々な実施形態では、環状本体110の後縁部からの距離「J」は3.175mm(0.125インチ)~約12.7mm(0.50インチ)の範囲であり得る。様々な実施形態では、寸法Jを小さくすることにより、装置のサイズおよび重量が最小化され得る。
【0119】
1つまたは複数の実施形態では、送達チューブを拡散装置に取り付けるための乳頭状突起190が円筒形壁部115の外側表面から突起し得る。様々な実施形態では、乳頭状突起は、約4.5mm直径(0.177インチ)の直径「M」を有し、8.7mm(0.34インチ)の高さ「N」を有する円筒形壁部115の外側表面から突起し得る。
【0120】
様々な実施形態では、注入ポートに至る注入流路180が乳頭状突起に形成され得る。なお注入流路180は「L」の内径を有する。様々な実施形態では、内径「L」は、約0.8mm(0.03125インチ)~約2.4mm(0.094インチ)の範囲、または約1.6mm(0.0625インチ)であり得る。
【0121】
1つまたは複数の実施形態では、注入流路180の内部端部における注入ポート185を形成する開口部は、フレッシュガス速度が拡散器装置内で最大化される領域の近傍に配置され得る(例えば、テーパ状区域150の流出端部から距離「K」)。様々な実施形態では、距離「K」は、テーパ状区域150の流出端部から約2mm(0.787インチ)~約5mm(0.197インチ)の範囲、または約3mm(0.118インチ)であり得る。
【0122】
1つまたは複数の実施形態では、NO注入ポートは喉部壁部において終端してもよく、または、延長チューブがテーパ状区域の内部表面から喉部へとさらに突出してもよい。様々な実施形態では、延長チューブは喉部の中心へと突出し得る。
【0123】
1つまたは複数の実施形態では、注入ポートはテーパ状区域の前縁部から6.81mmであり得る。
【0124】
1つまたは複数の実施形態では、テーパ状区域は、ハウジングの中空円筒形部分内で懸下され得る。ここでハウジングは人工呼吸器チューブに接続されるよう適応される。様々な実施形態では、ハウジングは、円筒形または環状以外の形状を有し、その一方で、好適な人工呼吸器チューブに接続されるような構成および寸法を有する流入口および流出口を有し得る。例えば、拡散装置の長方形ハウジングは、チューブに接続される内径を有する円筒形の流入口および流出口の開口部を有する。
【0125】
1つまたは複数の実施形態では拡散装置は、鼻カニューレまたは顔マスクとともに、人工呼吸器回路内で利用され得る。
【0126】
図9Aでは、漏斗形状を有するテーパ状区域300の例示的な実施形態が図示されている。
【0127】
1つまたは複数の実施形態では、漏斗形状のテーパ状区域300は凸状の内部表面を有し、口部320に進入するガス(単数または複数)を喉部310に向かって誘導する。様々な実施形態では、内部表面の凸状輪郭は、一定の曲率または変化する曲率を有し得る。
【0128】
図9Bでは、円錐形状を有するテーパ状区域340の例示的な実施形態が図示されている。
【0129】
1つまたは複数の実施形態では、円錐形状のテーパ状区域340は、テーパ状区域340の口部320から喉部310まで直線状である内部表面を有し、口部320に進入するガス(単数または複数)を喉部310に誘導する。
【0130】
図9Cでは、ベル形状を有するテーパ状区域370の例示的な実施形態が図示されている。このベル形状は一定の曲率または変化する曲率を有し得る。
【0131】
様々な実施形態では、300、340、および370において示されるテーパ状区域は、喉部と喉部とを隣接させると、双方向テーパ状区域が提供され、それにより、人工呼吸器回路において、いずれの方向における挿入および使用も可能となる。図10では、双方向テーパ状区域の例示的な実施形態が図示されている。双方向テーパ状区域700は、喉部で連結された2つのテーパ状区域150を含み得る。注入バルブが、双方向テーパ状区域700の最も狭い部分において、ガスを注入する。様々な実施形態では、2つのテーパ状区域は、円筒形区域740を含む喉部において連結され得る。様々な実施形態では、注入ポートは2つのテーパ状区域が接合する位置に配置され、FGF速度は、最も低い期待されるFGF率において最大化されるであろう。いくつかの実施形態では、テーパ状区域は、FGF率が低く(例えば2SLPMより低い)なることが期待される環境において利用される。
【0132】
1つまたは複数の実施形態では、ベル形状のテーパ状区域370は、凹状である内部表面を有し、口部320に進入するガス(単数または複数)を喉部310に向かって誘導する。
【0133】
図11ではテーパ状区域400が図示されており、テーパ状区域壁部415の内側表面の輪郭が示されている。
【0134】
本発明の原則および実施形態は、減少する断面積を含むテーパ状区域400を含む拡散装置にも関する。テーパ状区域400の断面積が減少するために、注入ポートを通過して喉部を流出するガス流の速度が増加され、それにより高濃度ガスが人工呼吸器ガスにより迅速に消散および拡散されることとなる。
【0135】
1つまたは複数の実施形態では、テーパ状区域400は、可変の断面積を有する軸対称のチューブであり得る。なおこの断面積は、口部の面積から喉部の面積へ減少する。様々な実施形態では、壁部415は、直線状、放物線状、双曲線状、懸垂面状、または漏斗状の輪郭を有し得る。
【0136】
1つまたは複数の実施形態では、断面積が最小である地点、および/または、テーパ状区域の傾斜が0(ゼロ)になる(すなわち水平)地点から長さ「P」だけ延長する、一定の直径および断面積を有するテーパ状区域400は、円筒形区域440を含み得る。
【0137】
様々な実施形態ではテーパ状区域は、増加する圧力勾配を作る。それにより、圧力勾配が好適であるために、流れまたは境界の分離が生じ得ない。境界分離の回避は、ガス流のエネルギーを消耗させ流れ抵抗を増加させる逆流領域および渦流も回避する。60SLPMの体積流量に対する圧力低下はおよそ0.65cmHOであり、30SLPMにおいては、およそ0.16cmHOである。
【0138】
1つまたは複数の実施形態では、テーパ状区域壁部430の輪郭は、半径Rを有する一定の曲率を有する。なおRは7.5mm(0.296インチ)~約8.3mm(0.328インチ)の範囲、または約7.6mm(0.299インチ)であり得る。
【0139】
本発明の一態様は高濃度ガスを横方向ガスストリームに拡散する方法に関する。
【0140】
図12では、テーパ状区域150を通過する第1ガスへと注入流路180を通過して進入する第2ガスの例示的な実施形態が図示されている(ガス流は直線状および湾曲した矢印により示される)。
【0141】
1つまたは複数の実施形態では、第1ガスの少なくとも一部分は拡散装置100に進入し、厚さ、外側表面、および内側表面を有する壁部155と、第1直径を有する流入端部と、流入端部の反対側において第1直径よりも小さい第2直径を有する流出端部とを有するテーパ状区域150を通して、第2ガスストリームを、注入流路180を通して、テーパ状区域150の内側表面内の注入ポート185まで通過させる。様々な実施形態では、第2ガスストリームはテーパ状区域150に進入し、テーパ状区域150内で第1ガスストリームと少なくとも部分的に拡散する。様々な実施形態では、第2ガスが、意図された流量および速度で第1ガスのストリームに注入されることにより、2つのガスストリームが接触または合流する地点において十分な拡散が生じる。様々な実施形態では、第2ガス(1~80ppm用量のNO)の意図される体積流量は、4880ppmNOに対して約0.1SMLPM~約33.3SMLPMの範囲であり、第1ガス流量が約0.5SLPM~約2.0SLPMの範囲の範囲にあるとき、第2ガス(NO)の体積流量は第1ガス(FGF)の体積流量に比例する。
【0142】
1つまたは複数の実施形態では、第1ガスの少なくとも1部分は、テーパ状区域の外側表面の少なくとも1部分の周囲を通過する。なおテーパ状区域150は、外側表面および内側表面と、テーパ状区域の第1直径よりも大きい内径と、を有する環状本体110内にある。様々な実施形態では、第1ガスの少なくとも1部分は、口部152のリム153と、円筒形壁部115の内側表面と、の間の間隙151を通過する。
【0143】
1つまたは複数の実施形態では、第1ガスはN分子およびO分子を含む呼吸可能なガスであり、第2ガスはNO分子およびN分子を含む。
【0144】
1つまたは複数の実施形態では、第1ガスは、毎分約0リットル(SLPM)~毎分約120リットル(SLPM)の範囲の流量において、人工呼吸器により提供される。いくつかの事例では本明細書で記載のように、呼気流れの間、より高いNO2を発生させ得る、0.5SLPM~2SLPMの範囲の流れが存在し得る。したがって少なくともいくつかの事例では、本明細書で開示の技術は、これらの低い流量を対象とし得る。
【0145】
様々な実施形態では、第2ガス中のNOの濃度は、800ppm超~約5000ppmの、もしくは約2000ppm~約4880ppmの範囲、または約4800ppmである。
【0146】
1つまたは複数の実施形態では、第2ガスの流量は第1ガスの流量に対して線形比例する。
【0147】
1つまたは複数の実施形態では、第2ガスストリームは、最初、第1ガスストリームの軸に対して、約60度~約120度の範囲の角度で、または約75度~約105度の範囲、もしくは約80度~約100度、もしくは約85度~約95度の範囲の角度で、または約90度で、第1ガスストリームに進入する。様々な実施形態では、第2ガスは第1ガスストリームに対して垂直に注入され得る。ここで、2つの直交するガスストリームは、接触地点における乱流に影響を及ぼすよう作用し、それによりNOレベルが、現行の800ppm療法により発生する量に等しいか、または係る量よりも低い値まで、低下する。
【0148】
理論に制限されることなく、FGFが交差するNO流により衝突され、NOおよびFGFが人工呼吸器バイアス流において十分な速度を有する場合、十分な拡散が生じると考えられる。加えて、NO注入地点の直後における短い環状流出口は、テーパ状区域内で一度圧縮されたFGFガスが迅速に発散し(なおこの時点でNOと混合され)、突然に流出し、テーパ状区域の周囲のバイパス流と自由に拡散することを可能にし得る。
【0149】
1つまたは複数の実施形態では、第2ガスは、約毎分0.1ミリリットル(SMLPM)~約6.3SLPMの、または約毎分0.05ミリリットル(SMLPM)~約2SLPMの、または約毎分1.0ミリリットル(SMLPM)~約1SLPMの範囲の流量で、注入ポート185から流出する。2SLPMのガス流量は、0.16cmの内径を有する注入流路および注入ポートを通る、およそ0.42メートル/秒の速度を有する。この速度を有するガスは、拡散装置の通過時に、この速度(音速の0.2倍より小さい。すなわち、マッハ数<0.2)において、さほど顕著な圧縮を経験することはないであろう。0.5SLPMのガス流量は、0.16cmの内径を有する注入流路および注入ポートを通る、およそ0.10メートル/秒の速度を有する。非常に低い人工呼吸器流量(例えば呼気の間のバイアス流≦2SLPM)、高い酸素濃度(FiO≧60%)、および、高いNO設定用量(≧20ppm)の期間の間にNO変換を管理することが有用であり得る。
【0150】
1つまたは複数の実施形態では、第1ガスの速度は、テーパ状区域150の第2直径において、テーパ状区域150の第1直径における第1ガスの速度よりもより大きい。
【0151】
1つまたは複数の実施形態では、第1ガスの速度は、テーパ状区域の第2直径において、テーパ状区域の第1直径における第1ガスの速度よりも大きい。ここで第2ガスは、より大きい速度の地点において、第1ガスに進入する。様々な実施形態では、テーパ状区域は、環状本体の中央に向かって、より大きいガス速度および圧力勾配を生成する。そのため、最も高いガス速度はテーパ状区域150の軸に沿う。例えば、テーパ状区域150の内径が口部における1.6cmから喉部における0.635cmに減少するため、第1ガス速度は増加することとなるであろう。いくつかの事例では、流入口ガス速度と流出口ガス速度との比は、流入口面積と流出口面積との比に比例する。
【0152】
図12で見られ得るように、第2ガスは注入ポート185において第1ガスに進入する。注入ポート185は、テーパ状区域150の喉部に対してより近位にある。この位置における第1ガス流の速度は、テーパ状区域の口部における第1ガス速度と比較して、より大きい。
【0153】
図13では、人工呼吸器回路600に挿入される拡散装置100の例示的な実施形態が図示されている。様々な実施形態では、人工呼吸器システムは、人工呼吸器を装着する患者に対するNO用量とともに、高い(21%を越える)間欠吸入酸素(FiO)濃度を提供し得る。患者の人工呼吸器回路における酸素濃度は医療用空気(21%O)から医療用酸素(100%O)の範囲であり得るが、全般的にINO療法を受ける患者に対しては、60%まで上昇され得る。高濃度NOガス供給源610内のNOは、窒素Nで希釈され得る。
【0154】
1つまたは複数の実施形態では、(例えば、呼吸回路内のフレッシュガス流を測定する能力を有する流れセンサ615の下流側にあるインジェクタモジュール605、その他の1つの構成要素としての)拡散装置100は、人工呼吸器630から来る人工呼吸器チューブに対して接続および流体連通し得る。人工呼吸器は、フレッシュガス供給源620に対して接続および流体連通し得る。拡散モジュール100は、拡散モジュール100に供給されるNOの用量を制御する制御モジュール640に対しても、接続および流体連通し得る。制御モジュール640は、NOガス供給源610に対して接続および流体連通し得る。様々な実施形態では、フレッシュガス供給源620およびNOガス供給源610は、ボンベからの圧力を制御するための調節器を有し得る。様々な実施形態では、拡散装置は、患者に供給される吸気ガス流に水蒸気成分を加える加湿器650に対して接続および流体連通し得る。様々な実施形態では、拡散装置100から患者までの距離は、およそ1メートルであり得る。様々な実施形態では、加湿器は約280mlの圧縮性体積を有し得る。様々な実施形態では、拡散装置100および流れセンサ615は、インジェクタモジュール605に一体化される。
【0155】
1つまたは複数の実施形態では、拡散装置は、人工呼吸器630およびフレッシュガス流供給源620を通して流入してくるフレッシュガス流を、制御モジュール640を通してNOガス供給源610から流入してくるNO含有ガスで拡散する。患者に送達されるガス流は、加湿器650および/または拡散装置100から下流側に挿入されたサンプリングT字管660においてサンプリングされ得る。様々な実施形態では、NO、NO、および/またはOの濃度は、患者に到達する以前に監視され得る。サンプリングT字管600は、NO含有ガスおよびFGFがいかに迅速に混合して設定用量の均質なガスストリームが提供されるかに応じて、呼吸回路内の様々な位置に配置され得る。さらに、複数のサンプリング地点(例えばNO注入地点から様々な距離に配置されたサンプリング地点)が使用され得る。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、またはそれ以上のサンプリング地点が使用され得る。サンプリング地点間の距離は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、または30cmであり得る。複数のサンプリング地点が、呼吸回路の下流側の長さの関数として混合ガスストリームを別個に分析するために使用されてもよく、または、2つ以上のサンプリングが、ガスの組成に関する平均を提供するために、組み合わされてもよい。
【0156】
以下の実施例で説明されるように、温度を上昇させると、普通であれば同様の条件下で発生したであろうNOの量を減少させることが驚くべきことに見出された。したがって、本発明の様々な実施形態は、NO送達システムおよび/または人工呼吸器回路の1つまたは複数の部分を加熱することにより、NO発生を最小化することにも関する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ガス温度が上昇すると、ガス分子に関する利用可能な運動エネルギーが増加し得、それにより初期混合が促進され、結果的にNOがさらに減少し得るものと考えられる。
【0157】
例えば、加熱要素は、NO送達システム、NO送達システムからインジェクタモジュールまでのチューブ、インジェクタモジュール、および/または、人工呼吸器回路の吸息肢に追加されてもよく、および/または、注入地点の上流側、下流側の任意の他の場所に、または注入地点に配置されてもよい。加熱要素は加熱された加湿器であってもよく、または専用の加熱構成要素であってもよい。例示的な加熱要素は、電熱冷却装置または抵抗性加熱要素を含むが、これらに限定されない。NO送達システム内の加熱要素は、NO送達システム内で内部的に発生するNOの最小化を支援し得る。同様に、NOをインジェクタモジュールに送達しインジェクタモジュールから患者に送達するチューブ内に配置され、および/または、係るチューブと熱的連通する加熱要素は、これらの地点におけるNO発生の最小化を支援し得る。
【0158】
様々な実施形態では、加熱要素は、NO供給源ガスを、および/または混合されたNOおよびFGFを、所望の温度に加熱し得る。例示的な温度は、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約45℃、または約50℃を含むが、これらに限定されない。
【0159】
実施例
本発明は、以下で提示される実施例により、さらに説明される。係る実施例の使用は、単に説明を目的とし、本発明の、または任意の例示的な用語の、範囲および意味をいかなる方法でも制限しない。同様に本発明は、本明細書で記載のいかなる特定の好適な実施形態にも限定されない。実際に、本発明の多数の改変および変形は、本明細書を読むことにより、当業者に明らかとなるであろう。したがって本発明は、添付の請求項の言語と、係る請求項が権利を与えられた等価物の全範囲と、によってのみ限定される。
【0160】
実施例1-NO発生システム比較
高NO供給源濃度(例えば4880ppm)および本明細書で記載の例示的な拡散器(例えば図8A図8Bに示される拡散器)を利用するNO送達システムが、低NO供給源濃度(例えば800ppm)および従来のインジェクタモジュールを利用する従来のNO送達システムと比較された。FGFは、例示的な人工呼吸器パラメータ(例えば、40の呼吸速度、30mlの1回換気量、60%のFiO、0.5SLPMバイアス流、その他)を有する新生児用人工呼吸器により提供された。図14から見られ得るように、拡散器を利用する高NO供給源濃度システム(システム2)は、NO供給源濃度が顕著により高いにも関わらず、より低いNO供給源濃度における従来のNO送達システム(システム1)と同等な量のNOを生成した。
【0161】
システム1およびシステム2は、高NO供給源濃度(例えば4880ppm)と、本明細書で記載の例示的な加速器(図8C図8Dで示された加速器)を有するインジェクタモジュールと、を利用するNO送達システム(システム3として)に対しても比較された。図15A図15Fでは、様々なNO設定用量およびFGF流量において各システムに対して生成されたNOが示されている。図15A図15Fから見られ得るように、システム2およびシステム3の両方が高NO供給源濃度において、40ppmの設定用量において従来のNO送達システムと同等であるかまたはそれよりも低い量のNOを、より低いNO供給源濃度において生成した。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、40ppmにおけるシステム2およびシステム3に対する比較的低いNO値が、同様の速度を有するFGFおよびNO含有ガスの結果であると考えられる。以下の表3から見られ得るように、NO含有ガスの速度は、システム2およびシステム3として試験された特定の構成に対する40ppmにおけるFGF速度とおよそ同様であった。
【表3】
【0162】
実施例2-加熱システムを用いるNO発生
次に、実施例1のシステム2において使用されるNO送達システムは、加熱された人工呼吸器の呼吸回路(例えば約38℃)とともに使用された。図16から見られ得るように、人工呼吸器の呼吸回路を加熱することにより、試験されたすべての条件下でNOレベルが低下した。
【0163】
本発明について本明細書で特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態が、本発明の原則および用途を単に説明するものであることが理解されるべきである。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の装置、システム、および方法に対する様々な改変および変形が可能であることが当業者には明らかとなるであろう。したがって本発明が、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲に含まれる改変および変形を含むことが、意図される。
【0164】
実施例3-ガス速度比を使用するNO最小化
実施例1のシステム2において使用されるNO送達システムは、様々なNO供給源濃度を有するよう、および、FGF速度とNO含有ガス速度との様々な比を提供するよう、改変された。複数のガスサンプリング地点が、NOおよびNOの濃度測定のために使用された。これらの測定値は、チューブの断面内のガスの任意の不均一な分布を考慮して平均化される。NO濃度は、NO注入地点から下流側の3つの異なる地点T0:T1(NO注入地点から203mm下流側)、T2(NO注入地点から673mm下流側)、およびT3(NO注入地点から2268mm下流側)において測定された。以下で記載の実験に対して、T0~T1の領域は、不均一ガス分布を有すると考えられ、T2~T3の領域は均質ガス分部を有すると考えられた。NO変換率は、測定されたNO濃度から、NO供給ボンベからのNO寄与分を減算し、NO濃度における純増加分をサンプリング地点間の滞留時間により除算する(体積流量を区域の体積で徐算する)ことにより判定された。
【0165】
図17では、初期T0~T1領域において発生したNOが、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度とともに、およそ1:1のガス速度比(FGF:NO)で示されている。図17から見られ得るように、およそ1:1のガス速度比を有することにより、NO発生率は、同一の設定用量(20ppm)および同一のFGF流量(0.5または2SLPM)において様々なボンベ濃度間で同等である。
【0166】
図18A図18Dでは、様々なガス速度比(FGF:NO)および10ppmNOの設定用量で、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度を用いて初期領域T0~T1において発生するNOが示されている。図18A図18Dから見られ得るように、NO供給源濃度、FGF流量、およびNO設定用量が同一である場合でさえも、2:1より低いガス速度比は、2:1より大きいガス速度比よりも、より低いNO発生比を提供する。
【0167】
図19では、様々なガス速度比(FGF:NO)で、4880ppmNO供給ボンベ濃度および40ppmの設定用量を用いて、初期領域T0~T1において発生するNOが示されている。図19および図18Cを比較することにより見られ得るように、NO発生比とガス速度比との間の関係は、他の設定用量濃度においても見られる。
【0168】
図20A図20Bでは、様々なガス速度比(FGF:NO)および10ppmNOの設定用量で、800ppm~9760ppmの範囲の様々なNO供給ボンベ濃度を用いて、初期領域T0~T1において発生するNOが示されている。図20A図20Bから見られ得るように、NO供給源濃度、FGF流量、およびNO設定用量が同一である場合でさえも、2:1より低いガス速度比は、2:1より大きいガス速度比よりも、より低いNO発生率を提供する。図20A図20Bが、X軸およびY軸の両方に対して、10を底とする対数の尺度でプロットされているため、瞬間NO発生は非線形である。
【0169】
図21では、様々なガス速度比(FGF:NO)で、4880ppmNO供給ボンベ濃度および40ppmの設定用量を用いて、初期領域T0~T1において発生するNOが示されている。図21では、T2~T3までの平均NO発生率も示されている。図21から見られ得るように、T0~T1のNO発生率は、T2~T3のNO発生率よりも顕著に高い。またT2~T3のNO発生率(三角形で示される)はガス速度比とともに変化せず、一定率のNO発生率が、混合ガスストリームがT2において均質な位相に到達した後、達成されることが示されている。図21では、各構成:0.942インチ、0.669インチ、または0.335インチに対するFGFパイプの内径のサイズがさらに示されている。見られ得るように、FGFパイプ径の減少にともなってNOの発生は減少せず、むしろNO発生率がより高くなる。これは、FGF:NO速度比がより低い(特に2:1より低い)場合に、NO発生が最小化されるという観察現象と一致する。
【0170】
実施例4-循環流の間のNO発生システム比較
実施例3のNO送達システムは、様々な流量を有する人工呼吸器をシミュレートするよう改変された。0.5SLPMの最小流れおよび5SLPMの最大流れを有する矩形波流が、吸気から呼気への比(高から低への流れ比)が2:2~1:3の範囲で変化する状態で、使用された。図22A図22Bでは、発生したNO2がppmにおいてNOの設定用量のパーセンテージとして示されている。図22A図22Bから見られ得るように、大部分のNOは、より高い呼気(低流)比で発生した。図22Bから見られ得るように、高パーセンテージのNOが低い設定用量においてNOに変換された。なお、吸気:呼気比が1:3、NO設定用量が1ppmのときに、ほぼ25%のNOがNOに変換された。
【0171】
実施例5:NO発生システム比較
懸下される漏斗を利用するNO送達システム(実施例1のシステム3)および実施例3のNO送達システムのNO発生率が、10ppmNOの設定用量および4880ppmNOのボンベ濃度においてT0~T1まで比較された。この比較結果が以下の表4で示される。


【表4】
【0172】
表4から見られ得るように、懸下漏斗の設計は、約2:1のガス速度比を有する拡散器と同等の性能を示した。しかし2:1より低い(1:1または0.5:1)速度比を有する拡散器は、懸下漏斗の設計よりも低いNO発生率を提供した。
【0173】
本明細書を通して使用される「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、「または一実施形態」という参照は、当該の実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、物質、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な場所での「1つまたは複数の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「1つの実施形態では」、または「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態を参照するとはものとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、物質、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の好適な様式で組み合わされ得る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20A
図20B
図21
図22A
図22B