(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090346
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】共重合体、ならびに当該共重合体を用いるエレクトロルミネッセンス素子材料およびエレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20220610BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220610BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C08G61/12
H05B33/14 B
H05B33/22 D
H05B33/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202696
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】辻 雅司
(72)【発明者】
【氏名】藤山 高広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直俊
(72)【発明者】
【氏名】小西 悠作
(72)【発明者】
【氏名】キム テホ
(72)【発明者】
【氏名】チョン テヨン
(72)【発明者】
【氏名】クォン ハイル
(72)【発明者】
【氏名】チャ スンミン
【テーマコード(参考)】
3K107
4J032
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107AA06
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC22
3K107DD57
3K107DD64
3K107DD71
3K107DD79
3K107GG06
4J032BA12
4J032BB03
4J032BC03
4J032BC12
4J032CA04
4J032CA14
4J032CB03
4J032CC01
4J032CD02
4J032CE03
4J032CG01
4J032CG03
(57)【要約】
【課題】エレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)の発光効率および耐久性(特に発光寿命)を向上しうる手段を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される構成単位を含む、共重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位を有する共重合体;
【化1】
式(1)中、
Xは、単結合、-L
1-または-L
1-L
1-を表し、この際、L
1は、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換の炭素数6以上25以下の2価の芳香族炭化水素基を表し、
L
2は、置換されたもしくは非置換の炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基を表し、
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基、または置換もしくは非置換の環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基を表し、
Yは、置換されたもしくは非置換の炭素数6以上60以下の2価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数3以上60以下の2価の芳香族複素環基を表し、
この際、L
2、Ar
1およびAr
2は、下記条件(i)および(ii)の少なくとも1つを満たす;
(i)Ar
1およびAr
2は互いに異なる基を表す;
(ii)L
2およびAr
1は互いに環を形成する。
【請求項2】
前記式(1)において、L
2、Ar
1およびAr
2は、前記条件(i)を満たし、Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、下記群から選択される基を表す、請求項1記載の共重合体;
【化2】
ただし、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した炭化水素基を表す。
【請求項3】
前記式(1)において、L
2は、下記群から選択される基を表す、請求項1または2に記載の共重合体。
【化3】
ただし、*は、主鎖のカルバゾール環の窒素原子との結合手を表す。
【請求項4】
前記式(1)において、L
2、Ar
1およびAr
2は、前記条件(ii)を満たし、-L
2-N(Ar
1)(Ar
2)は、下記群から選択される基を表す、請求項2に記載の共重合体。
【化4】
ただし、Ar
2は、式(1)と同様の定義である。
【請求項5】
前記式(1)において、Ar2は、前記(2-1)~(2-24)から選択される基を表す、請求項4に記載の共重合体。
【請求項6】
前記式(1)において、Yは、下記群から選択される基を表す、請求項1~5のいずれか1項に記載の共重合体。
【化5】
ただし、R
1、R
2およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基、または炭素数6以上28以下の芳香族炭化水素基を表し、R
3は、それぞれ独立して、炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基を表す。
【請求項7】
前記式(1)において、Yは、前記(5-1)~(5-7)から選択される基を表す、請求項6に記載の共重合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の共重合体と、
少なくとも溶媒または分散媒と、
を含有する、液状組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の共重合体を含む、薄膜。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の共重合体を含む、エレクトロルミネッセンス素子材料。
【請求項11】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される1層以上の有機膜と、を備えるエレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機膜の少なくとも1層が、請求項1~7のいずれか1項に記載の共重合体を含む、エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記共重合体を含む有機膜が、正孔輸送層または正孔注入層である、請求項11に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記有機膜が半導体ナノ粒子または有機金属錯体を含む発光層を有する、請求項11または12に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記有機膜のうちの少なくとも1層は、塗布法により形成される、請求項11~13のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体、ならびに当該共重合体を用いるエレクトロルミネッセンス素子材料およびエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)は、研究開発が活発に進められている。特に、EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視されている。EL素子は、陽極と陰極との間に数ナノメートルから数百ナノメートルの薄膜を有する発光素子である。また、EL素子は、通常、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などをさらに有する。
【0003】
このうち、発光層としては、蛍光発光材料、りん光発光材料がある。りん光発光材料は、蛍光発光材料と比較し、約4倍の発光効率が見込まれる材料である。また、広い色域を網羅するために、RGB光源は半値幅の狭い発光スペクトルが要求される。特に青色は深い青が要求されるが、長寿命かつ色純度の観点を満足できる素子は見出されていないのが現状である。
【0004】
これらの問題を解決する方法として、発光材料に無機発光物質である「量子ドット」を用いる発光デバイスがある(特許文献1)。量子ドット(quantum dot;QD)は、数ナノメートルの大きさの結晶構造を有する半導体物質であって、数百から数千個程度の原子で構成されている。量子ドットは、大きさが非常に小さいため、単位体積当たりの表面積が広い。このため、大部分の原子がナノ結晶の表面に存在し、量子閉じ込め(quantum confinement)効果などを示す。このような量子閉じ込め効果により、量子ドットは、その大きさを調節することだけで発光波長を調節することができ、優れた色純度および高いPL(photoluminescence)発光効率などの特性を有するため、多くの関心を集めている。量子ドット発光素子(quantum dot electroluminescence device;QD LED)は、量子ドット発光層を間において両側に正孔輸送層(hole transport layer;HTL)および電子輸送層(electron transport layer;ETL)を含む3層構造の素子が基本素子として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の正孔輸送材料を用いたエレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)では、十分な発光効率および耐久性(特に発光寿命)を達成することができないという問題を有していた。
【0007】
そこで本発明は、エレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)の発光効率および耐久性(特に発光寿命)を向上しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、特定の構造を有する高分子化合物を用いることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、上記目的は、下記式(1)で表される構成単位を有する共重合体によって達成できる。
【0010】
【0011】
式(1)中、
Xは、単結合、-L1-または-L1-L1-を表し、この際、L1は、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換の炭素数6以上25以下の2価の芳香族炭化水素基を表し、
L2は、置換されたもしくは非置換の炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基を表し、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基、または置換もしくは非置換の環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基を表し、
Yは、置換されたもしくは非置換の炭素数6以上60以下の2価の芳香族炭化水素基、
または置換されたもしくは非置換の環形成原子数3以上60以下の2価の芳香族複素環基を表し、
この際、L2、Ar1およびAr2は、下記条件(i)および(ii)の少なくとも1つを満たす;
(i)Ar1およびAr2は互いに異なる基を表す;
(ii)L2およびAr1は互いに環を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)の発光効率および耐久性(特に発光寿命)を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の側面では、本発明は、下記式(1)で表される構成単位を有する共重合体を提供する:
【0015】
【0016】
式(1)中、
Xは、単結合、-L1-または-L1-L1-を表し、この際、L1は、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換の炭素数6以上25以下の2価の芳香族炭化水素基を表し、
L2は、置換されたもしくは非置換の炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基を表し、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基、または置換もしくは非置換の環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基を表し、
Yは、置換されたもしくは非置換の炭素数6以上60以下の2価の芳香族炭化水素基、
または置換されたもしくは非置換の環形成原子数3以上60以下の2価の芳香族複素環基を表し、
この際、L2、Ar1およびAr2は、下記条件(i)および(ii)の少なくとも1つを満たす;
(i)Ar1およびAr2は互いに異なる基を表す;
(ii)L2およびAr1は互いに環を形成する。
【0017】
本明細書において、「式(1)で表される構成単位」を「構成単位(1)」または「本発明に係る構成単位(1)」とも称する。「式(1)で表される構成単位」中の下記構造:
【0018】
【0019】
を有する構成単位を「構成単位A」、または「本発明に係る構成単位A」とも称する。同様にして、「式(1)で表される構成単位」中の下記構造:
【0020】
【0021】
を有する構成単位を「構成単位B」、または「本発明に係る構成単位B」とも称する。また、式(1)で表される構成単位を有する共重合体を、「共重合体」または「本発明に係る共重合体」とも称する。
【0022】
第2の側面では、本発明に係る共重合体を含むエレクトロルミネッセンス素子材料を提供する。
【0023】
第3の側面では、本発明は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される1層以上の有機膜と、を備えるエレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機膜の少なくとも1層が、本発明に係る共重合体を含む、エレクトロルミネッセンス素子を提供する。本明細書において、エレクトロルミネッセンス素子を、単に「LED」とも称する。量子ドットエレクトロルミネッセンス素子を、単に「QLED」とも称する。有機エレクトロルミネッセンス素子を、単に「OLED」とも称する。
【0024】
エレクトロルミネッセンス素子の発光層やキャリア輸送層を構成する材料として、種々の低分子材料や高分子材料が使用されている。これらのうち、低分子材料は素子の効率・寿命の面で優れている。しかし、低分子材料を用いる場合には、真空プロセスで素子を作成する必要があるため製造コストが高いという課題がある。一方、高分子材料としては、TFB等が正孔輸送材料として知られている(例えば、特許文献1の段落「0037」)。しかしながら、このような高分子材料では発光効率および耐久性(発光寿命)が十分長いとはいえない(下記比較例1参照)。このため、発光効率および耐久性(発光寿命)を向上できる高分子材料の開発が求められた。本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行った。その結果、上記式(1)の構成単位Aを有する共重合体をエレクトロルミネッセンス素子に適用することによって、公知の材料を使用した場合に比して耐久性(発光寿命)を向上できることを見出した。さらに、上記式(1)の構成単位Aを有する共重合体をエレクトロルミネッセンス素子に適用することによって、高い発光効率を発揮できることを見出した。本発明の構成による上記作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。上記式(1)の構成単位Aでは、主鎖にカルバゾールが存在する。これにより本発明に係る共重合体のHOMOレベルが深くなり、発光効率が向上する。また、上記式(1)の構成単位Aは、L2、Ar1およびAr2が「条件(i):Ar1およびAr2は互いに異なる基を表す」および「条件(ii):L2およびAr1は互いに環を形成する」の少なくとも1つを満たす。すなわち、側鎖が非対称アミンとなる。これにより、本発明に係る共重合体は主鎖だけでなく側鎖においても分子軌道が非局在化するため、正孔移動速度が早くなり、耐久性(発光寿命)が向上する。より詳細には、従来の高分子材料は、十分な正孔移動速度を有していなかったため、電子の移動速度に対して正孔の移動速度が遅く、正孔と電子との結合が発光層中の主に正孔輸送層側の領域で起こっていた。これにより発光層中の正孔輸送層側の領域が劣化しやすく、十分な耐久性(発光寿命)が得られなかったと考えられる。本発明に係る共重合体は、正孔移動速度が電子移動速度とほぼ同等であるため、発光層における発光領域が広い。これにより、発光層中における局所的な劣化を防ぐことができるため、耐久性(発光寿命)を向上できる。
【0025】
ゆえに、上記式(1)の構成単位Aを有する共重合体を用いたエレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)は、高い発光効率を発揮できるとともに、耐久性(特に発光寿命)を向上することが可能となる。
【0026】
加えて、本発明に係る共重合体は、製膜性および溶媒溶解性に優れるため、湿式(塗布)法での製膜が可能である。ゆえに、本発明の共重合体を用いることによって、エレクトロルミネッセンス素子の大面積化、高生産性が可能となる。上記効果は、本発明の共重合体がEL素子、特にQLEDの正孔輸送層または正孔注入層に適用される場合に、効果的に発揮できる。
【0027】
なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら拘泥されるものではない。
【0028】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
【0030】
本明細書において「置換」とは、特に定義しない限り、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、チオール基(-SH)、シアノ基(-CN)で置換されていることを指す。なお、場合によって存在する置換基は、置換される基と同じになることはない。例えば、アルキル基がアルキル基で置換されることはない。
【0031】
ここで、置換基としてのアルキル基としては、直鎖もしくは分岐のいずれでもよいが、好ましくは炭素数1以上20以下の直鎖のアルキル基および炭素数3以上20以下の分岐のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-イソプロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、1,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2-メチル-1-イソプロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチル-1-イソプロピルブチル基、2-メチル-1-イソプロピル基、1-tert-ブチル-2-メチルプロピル基、n-ノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基などが挙げられる。
【0032】
置換基としてのシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0033】
ヒドロキシアルキル基としては、例えば、上記アルキル基が1以上3以下(好ましくは1以上2以下、特に好ましくは1)の水酸基で置換されるもの(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基)が例示される。
【0034】
置換基としてのアルコキシアルキル基としては、例えば、上記アルキル基が1以上3以下(好ましくは1以上2以下、特に好ましくは1)の下記に詳述するアルコキシ基で置換されるものが例示される。
【0035】
置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖もしくは分岐のいずれでもよいが、好ましくは炭素数1以上20以下の直鎖のアルコキシ基および炭素数3以上20以下の分岐のアルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、3-エチルペンチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基などが挙げられる。
【0036】
置換基としてのシクロアルコキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0037】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、5-ヘプテニル基、1-オクテニル基、3-オクテニル基、5-オクテニル基などが挙げられる。
【0038】
置換基としてのアルキニル基としては、例えば、アセチレニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンテチル基、2-ペンテチル基、3-ペンテチル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、1-ヘプチニル基、2-ヘプチニル基、5-ヘプチニル基、1-オクチニル基、3-オクチニル基、5-オクチニル基などが挙げられる。
【0039】
置換基としてのアリール基としては、炭素数6以上30以下のアリール基が挙げられる。例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。
【0040】
置換基としてのアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
【0041】
置換基としてのアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基などが挙げられる。
【0042】
置換基としてのシクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基などが挙げられる。
【0043】
置換基としてのアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基などが挙げられる。
【0044】
置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0045】
置換基としてのアリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0046】
[共重合体]
本実施形態に係る共重合体は、下記式(1)で表される構成単位(構成単位(1))を有する。下記構造を有する共重合体は、構成単位Aを有する。このため、本実施形態に係る共重合体を(特に正孔輸送層に)有するエレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)は、発光効率および耐久性に優れる(発光寿命が長い)。また、高電流効率化および低駆動電圧化を達成できる。本実施形態に係る共重合体は、式(1)の構成単位(構成単位(1))1種を含むものであっても、または2種以上の構成単位(1)を含むものであってもよい。なお、複数の構成単位(1)は、ブロック状に存在しても、ランダム状に存在してもよい。また、2種以上の構成単位(1)が存在する場合、各構成単位(1)中の「構成単位A」は同じであってもまたは異なるものであってもよい。同様にして、2種以上の構成単位(1)が存在する場合、各構成単位(1)中の「構成単位B」は同じであってもまたは異なるものであってもよい。
【0047】
【0048】
上記式(1)において、L2、Ar1およびAr2は、「条件(i):Ar1およびAr2は互いに異なる基を表す」および「条件(ii):L2およびAr1は互いに環を形成する」の少なくとも1つを満たすことを特徴とする。条件(i)および(ii)についての詳細な説明は後述する。
【0049】
Xは、単結合、-L1-または-L1-L1-を表す。この際、L1は、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換の炭素数6以上25以下の2価の芳香族炭化水素基を表す。L1が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なってもよい。炭素数6以上25以下の2価の芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、具体的には、ベンゼン(フェニレン基)、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アントラセン、アズレン、ヘプタレン、アセナフテン、フェナレン、フルオレン、フェナントリン、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、キンキフェニル、ピレン、9,9-ジフェニルフルオレン、9,9’-スピロビ[フルオレン]、9,9-ジアルキルフルオレン等の芳香族炭化水素化合物由来の2価の基が挙げられる。また、炭素数6以上25以下の2価の芳香族炭化水素基は、上記したような芳香族炭化水素化合物を2種以上組み合わせた構造由来の2価の基であってもよい。これらのうち、Xは、単結合、ならびにベンゼン、フルオレン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンおよびビフェニルから選択される化合物由来の2価の基(L1)であることが好ましい。より好ましくは、Xは、単結合、ならびにベンゼン(o,m,p-フェニレン基)、ジベンゾフランおよびフルオレンから選択される化合物由来の2価の基(L1)である。さらに好ましくは、Xは、単結合、フェニレン基(特にp-フェニレン基)である。特に好ましくは、Xは、単結合である。このようなXであれば、共重合体のHOMOレベルをより適切に制御できる。また、より高いホール注入性、さらにはより高い三重項エネルギー準位およびより低駆動電圧化および製膜性の観点ならびにこれらのいずれか2種以上のバランス(特にホール注入性と製膜性とのバランス)を達成できる。
【0050】
なお、上記好ましい形態において、L1は無置換であってもまたはいずれかの水素原子が置換基で置換されてもよい。ここで、L1のいずれかの水素原子が置換される場合の置換基の導入数は、特に制限されないが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1以上2以下であり、特に好ましくは1である。L1が置換基を有する場合の置換基の結合位置は、特に制限されない。置換基は、好ましくはL1がL2を介して連結する側鎖の窒素原子に対してなるべく遠位に存在することが好ましい。このような位置に置換基が存在することにより、共重合体のHOMOレベルをより適切に制御できる。また、より高いホール注入性、さらにはより高い三重項エネルギー準位およびより低駆動電圧化および製膜性の観点ならびにこれらのいずれか2種以上のバランス(特にホール注入性と製膜性とのバランス)を達成できる。
【0051】
L2は、置換されたもしくは非置換の炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基を表す。この際、L2が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なってもよい。炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基としては、上記L1における芳香族炭化水素化合物由来の基が同様にして例示される。環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基としては、特に制限されないが、具体的には、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、フェナンスリジン、フェナントロリン、アントラキノン、フルオレノン、ジベンゾフラン、フェニルジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、フェニルジベンゾチオフェン、カルバゾール、イミダゾフェナンスリジン、ベンズイミダゾフェナンスリジン、アザジベンゾフラン、9-フェニルカルバゾール、アザカルバゾール、アザジベンゾチオフェン、ジアザジベンゾフラン、ジアザカルバゾール、ジアザジベンゾチオフェン、キサントン、チオキサントン、ピリジン、キノリン、アントラキノリンなどの複素環式芳香族化合物由来の基が挙げられる。また、炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基および環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基は、上記L1における芳香族炭化水素化合物を2種以上組み合わせた構造由来の基であってもよく、上記したような複素環式芳香族化合物を2種以上組み合わせた構造由来の基であってもよく、1種以上の上記L1における芳香族炭化水素化合物と1種以上の上記したような複素環式芳香族化合物とを組み合わせた構造由来の基であってもよい。これらのうち、芳香族炭化水素化合物由来の基または環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基は、ベンゼン(フェニレン基)、ビフェニル、クアテルフェニル、フルオレン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンから選択される化合物由来の基であることが好ましく、ベンゼン(フェニレン基)、ビフェニル、フルオレン、ジベンゾフランから選択される化合物由来の基であることがより好ましく、ベンゼン(フェニレン基)、ビフェニルから選択される化合物由来の基であることがさら好ましい。特に好ましい一形態によると、L2は、下記群から選択される基を表す。
【0052】
【0053】
ただし、*は、主鎖のカルバゾール環の窒素原子との結合手を表す(*が付いていない結合手は、側鎖のアリールアミンの窒素原子との結合手を表す)。
【0054】
これらの基のうち、(3-1)、(3-4)、(3-13)~(3-24)が特に好ましく、(3-4)が最も好ましい。このようなL2であれば、共重合体のHOMOレベルをより適切に制御できる。また、より高いホール注入性、さらにはより高い三重項エネルギー準位およびより低駆動電圧化および製膜性の観点ならびにこれらのいずれか2種以上のバランス(特にホール注入性と製膜性とのバランス)を達成できる。なお、L2、Ar1およびAr2が、「条件(ii):L2およびAr1は互いに環を形成する」を満たす場合は、L2は3価の基であり、条件(ii)を満たさない場合は、L2は2価の基である。
【0055】
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基、または置換もしくは非置換の環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基を表す。この際、Ar1およびAr2が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なってもよい。炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基および環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基としては、上記L1における芳香族炭化水素化合物由来の基、上記L2における複素環式芳香族化合物由来の基、上記L1における芳香族炭化水素化合物を2種以上組み合わせた構造由来の基、上記L2における複素環式芳香族化合物を2種以上組み合わせた構造由来の基、1種以上の上記L1における芳香族炭化水素化合物と1種以上の上記L2における複素環式芳香族化合物とを組み合わせた構造由来の基が同様にして例示される。これらのうち、炭素数6以上25以下の芳香族炭化水素基または環形成原子数3以上25以下の芳香族複素環基は、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、9,9-ジフェニルフルオレン、9,9’-スピロビ[フルオレン]、9,9-ジアルキルフルオレン、ジベンゾフラン、フェニルジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、フェニルジベンゾチオフェンから選択される化合物由来の基であることが好ましく、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、9,9-ジフェニルフルオレン、9,9’-スピロビ[フルオレン]、9,9-ジアルキルフルオレン、ジベンゾフラン、フェニルジベンゾフランから選択される化合物由来の基であることがより好ましく、ベンゼン、ビフェニル、9,9-ジフェニルフルオレン、9,9-ジアルキルフルオレン、ジベンゾフランから選択される化合物由来の基であることがさらに好ましい。このようなAr1およびAr2であれば、共重合体の正孔移動速度を高めることができるため、耐久性(発光寿命)を向上できる。また、より高いホール注入性、さらにはより高い三重項エネルギー準位およびより低駆動電圧化および製膜性の観点ならびにこれらのいずれか2種以上のバランス(特にホール注入性と製膜性とのバランス)を達成できる。なお、Ar2は1価の基である。一方、L2、Ar1およびAr2が、「条件(ii):L2およびAr1は互いに環を形成する」を満たす場合は、Ar1は2価の基であり、条件(ii)を満たさない場合は、Ar1は1価の基である。
【0056】
好ましい一形態によると、L2、Ar1およびAr2は、「条件(i):Ar1およびAr2は互いに異なる基を表す」を満たし、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、下記群から選択される基を表す。
【0057】
【0058】
ただし、Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した炭化水素基を表す。
【0059】
炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-イソプロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、1,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2-メチル-1-イソプロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチル-1-イソプロピルブチル基、2-メチル-1-イソプロピル基、1-tert-ブチル-2-メチルプロピル基、n-ノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、5-ヘプテニル基、1-オクテニル基、3-オクテニル基、5-オクテニル基、アセチレニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンテチル基、2-ペンテチル基、3-ペンテチル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、1-ヘプチニル基、2-ヘプチニル基、5-ヘプチニル基、1-オクチニル基、3-オクチニル基、5-オクチニル基などが挙げられる。
【0060】
これらの基のうち、Ar1およびAr2は、(2-1)~(2-24)が特に好ましく、(2-1)~(2-4)、(2-16)、(2-23)、(2-27)が最も好ましい。中でも、Ar1およびAr2の組み合わせとしては、(2-2)と(2-23)との組み合わせ、(2-3)と(2-23)との組み合わせ、(2-4)と(2-23)との組み合わせ、(2-16)と(2-27)との組み合わせ、(2-23)と(2-27)との組み合わせが好ましい。この際、Rは、それぞれ独立して、炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上8以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-イソプロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基であることがさらに好ましい。このようなAr1およびAr2であれば、共重合体の正孔移動速度を高めることができるため、耐久性(発光寿命)を向上できる。また、より高いホール注入性、さらにはより高い三重項エネルギー準位およびより低駆動電圧化および製膜性の観点ならびにこれらのいずれか2種以上のバランス(特にホール注入性と製膜性とのバランス)を達成できる。
【0061】
他の好ましい一形態によると、L2、Ar1およびAr2は、「条件(ii):L2およびAr1は互いに環を形成する」を満たし、-L2-N(Ar1)(Ar2)は、下記群から選択される基を表す。
【0062】
【0063】
ただし、Ar2は、式(1)と同様の定義である。
【0064】
これらの基のうち、(4-1)、(4-4)、(4-7)が特に好ましく、(4-4)が最も好ましい。このような-L2-N(Ar1)(Ar2)であれば、共重合体の正孔移動速度を高めることができるため、耐久性(発光寿命)を向上できる。また、より高いホール注入性、さらにはより高い三重項エネルギー準位およびより低駆動電圧化および製膜性の観点ならびにこれらのいずれか2種以上のバランス(特にホール注入性と製膜性とのバランス)を達成できる。
【0065】
Yは、置換されたもしくは非置換の炭素数6以上60以下の2価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数3以上60以下の2価の芳香族複素環基を表す。炭素数6以上60以下の2価の芳香族炭化水素基および環形成原子数3以上60以下の2価の芳香族複素環基としては、上記L1における芳香族炭化水素化合物由来の2価の基、上記L2における複素環式芳香族化合物由来の2価の基、上記L1における芳香族炭化水素化合物を2種以上組み合わせた構造由来の2価の基、上記L2における複素環式芳香族化合物を2種以上組み合わせた構造由来の2価の基、1種以上の上記L1における芳香族炭化水素化合物と1種以上の上記L2における複素環式芳香族化合物とを組み合わせた構造由来の2価の基が同様にして例示される。これらのうち、炭素数6以上25以下の2価の芳香族炭化水素基または環形成原子数3以上25以下の2価の芳香族複素環基が好ましく、ベンゼン(フェニレン基)、ビフェニル、クアテルフェニル、フルオレン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンから選択される化合物またはこれらの化合物を組み合わせた構造由来の2価の基であることがより好ましく、ベンゼン(フェニレン基)、フルオレン、ジベンゾフランから選択される化合物またはこれらの化合物を組み合わせた構造由来の2価の基であることがさらに好ましい。このようなYであれば、共重合体のHOMOレベルをより適切に制御できる。また、より高いホール注入性、さらにはより高い三重項エネルギー準位およびより低駆動電圧化および製膜性の観点ならびにこれらのいずれか2種以上のバランス(特にホール注入性と製膜性とのバランス)を達成できる。
【0066】
好ましい一形態によると、Yは、下記群から選択される基を表す。
【0067】
【0068】
ただし、R1、R2およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基、または炭素数6以上28以下の芳香族炭化水素基を表し、R3は、それぞれ独立して、炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基を表す。
【0069】
炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-イソプロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、1,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2-メチル-1-イソプロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチル-1-イソプロピルブチル基、2-メチル-1-イソプロピル基、1-tert-ブチル-2-メチルプロピル基、n-ノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基などが挙げられる。
【0070】
炭素数6以上28以下の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。
【0071】
これらの基のうち、(5-1)~(5-7)がさらに好ましく、(5-2)、(5-5)が特に好ましい。この際、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素数1以上14以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基であることが好ましく、炭素数6以上14以下の直鎖のもしくは分岐した飽和炭化水素基であることがより好ましく、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ドデシル基であることがさらに好ましい。このようなYであれば、共重合体のHOMOレベルをより適切に制御できる。また、より高いホール注入性、さらにはより高い三重項エネルギー準位およびより低駆動電圧化および製膜性の観点ならびにこれらのいずれか2種以上のバランス(特にホール注入性と製膜性とのバランス)を達成できる。
【0072】
上述したように、本実施形態に係る共重合体は、構成単位(1)のみで構成されてもよい。または、本実施形態に係る共重合体は、構成単位(1)以外の他の構成単位をさらに含んでもよい。他の構成単位を含む場合の他の構成単位は、共重合体の効果(特に高い三重項エネルギー準位、低い駆動電圧)を阻害しない限り特に制限されない。具体的には、下記群から選択される構成単位などが挙げられる。なお、以下では、下記群で示される構成単位を「構成単位(2)」とも称する。
【0073】
【0074】
本実施形態の共重合体における構成単位(2)の組成は、特に制限されない。得られる高分子化合物による製膜容易性、被膜強度のさらなる向上効果などを考慮すると、構成単位(2)は、共重合体を構成する全構成単位に対して、好ましくは1モル%以上10モル%以下である。なお、共重合体が2種以上の構成単位(2)を含む場合には、上記構成単位(2)の含有量は、構成単位(2)の合計量を意味する。
【0075】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、本発明の目的効果が得られる限りにおいて、特に制限されるものではない。重量平均分子量(Mw)は、例えば、8,000以上400,000以下であることが好ましく、15,000を超え350,000未満であることがより好ましい。このような重量平均分子量であれば、共重合体を用いて層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層)を形成するための塗布液の粘度を適切に調節して、均一な膜厚の層を形成することが可能である。
【0076】
また、共重合体の数平均分子量(Mn)は、本発明の目的効果が得られる限りにおいて、特に制限されるものではない。数平均分子量(Mn)は、例えば、5,000以上190,000以下であることが好ましく、より好ましくは9,000。このような数平均分子量であれば、共重合体を用いて層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層)を形成するための塗布液の粘度を適切に調節して、均一な膜厚の層を形成することが可能である。また、本実施形態の共重合体の多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、例えば、1.4以上4.0以下、好ましくは1.5を超え3.6未満である。
【0077】
ここで、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定は、特に制限されず、公知の方法を用いてまたは公知の方法を適宜修飾して適用できる。本明細書では、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、下記方法により測定される値を採用する。なお、ポリマーの多分散度(Mw/Mn)は、下記方法により測定された数平均分子量(Mn)で重量平均分子量(Mw)を除することによって算出される。
【0078】
(数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定)
共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質として用いて、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー:Size Exclusion Chromatography)により、以下の条件で測定する。
【0079】
(SEC測定条件)
分析装置(SEC):株式会社島津製作所製、Prominence
カラム:ポリマーラボラトリーズ製、PLgel MIXED-B
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/min
試料溶液の注入量:20μL(ポリマー濃度:約0.05質量%)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検出器(UV-VIS検出器):株式会社島津製作所製、SPD-10AV
標準試料:ポリスチレン。
【0080】
本実施形態に係る共重合体の主鎖の末端は、特に制限されず、使用される原料の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。
【0081】
本実施形態に係る共重合体は、公知の有機合成方法を用いることで合成することが可能である。本実施形態の共重合体の具体的な合成方法は、後述する実施例を参照した当業者であれば、容易に理解することが可能である。具体的には、本実施形態の共重合体は、下記式(1’)で示される1種以上の単量体(1)を用いた重合反応により、または下記式(1’)で示される1種以上の単量体(1)および上記他の構成単位に相当する他の単量体を用いた共重合反応により製造することができる。
【0082】
【0083】
または、下記式(1-1’)で示される1種以上の単量体(1-1)及び下記式(1-2’)で示される1種以上の単量体(1-2)を用いた、または下記式(1-1’)で示される1種以上の単量体(1-1)、下記式(1-2’)で示される1種以上の単量体(1-2)および上記他の構成単位に相当する他の単量体を用いた共重合反応により製造することができる。
【0084】
【0085】
【0086】
本発明において、共重合体の重合に用いられる上記単量体は、公知の合成反応を適宜組み合わせて合成することができ、その構造も、公知の方法(例えば、NMR、LC-MS等)により確認できる。
【0087】
上記式(1’)、式(1-1’)および式(1-2’)中、L1、Ar1、Ar2、Yは、上記式(1)と同様の定義である。Z1、Z2、Z1’、Z2’、Z1”およびZ2”は、それぞれ独立して、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、特に臭素原子)または下記構造の基である。なお、下記構造において、RA~RDは、それぞれ独立して、炭素数1以上3以下のアルキル基である。好ましくは、RA~RDはメチル基である。なお、上記式(1’)中のZ1およびZ2は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。同様にして、上記式(1-1’)中のZ1’およびZ2’は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。上記式(1-2’)中のZ1”およびZ2”は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。好ましくは、上記式(1’)中、Z1およびZ2は異なる。上記式(1-1’)中、Z1’およびZ2’は同じであり;上記式(1-2’)中、Z1”およびZ2”は同じであり;上記式(1-1’)中のZ1’およびZ2’は上記式(1-2’)中のZ1”およびZ2”と異なることが好ましい。
【0088】
【0089】
[エレクトロルミネッセンス素子材料]
本実施形態に係る共重合体は、エレクトロルミネッセンス素子材料として好適に用いられる。本形態によれば、優れた発光効率および耐久性(特に発光寿命)を有するエレクトロルミネッセンス素子材料が提供される。また、本実施形態に係る共重合体によれば、高い三重項エネルギー準位(電流効率)および低い駆動電圧を有するエレクトロルミネッセンス素子材料もまた提供される。さらに、本実施形態に係る共重合体は、溶媒への高い溶解性および高い耐熱性を示す。ゆえに、湿式(塗布)法により容易に製膜(薄膜化)できる。したがって、本発明は、第2の側面では、本実施形態に係る共重合体を含むエレクトロルミネッセンス素子材料が提供される。または、本発明に係る共重合体のエレクトロルミネッセンス素子材料としての使用が提供される。
【0090】
[エレクトロルミネッセンス素子]
上述したように、本実施形態に係る共重合体は、エレクトロルミネッセンス素子に好適に用いられる。すなわち、一対の電極と、該電極間に配置され、本実施形態の共重合体またはエレクトロルミネッセンス素子材料を含む1層以上の有機膜と、を備える、エレクトロルミネッセンス素子を提供する。このようなエレクトロルミネッセンス素子は、優れた耐久性(発光寿命)を発揮できる。また、このようなエレクトロルミネッセンス素子は、高い発光効率(特に低駆動電圧で優れた発光効率)を発揮できる。したがって、第3の側面では、本発明は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される1層以上の有機膜と、を備えるエレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機膜の少なくとも1層は、本実施形態に係る共重合体を含む、エレクトロルミネッセンス素子が提供される。本発明の目的(または効果)は、このような本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子によっても達成できる。上記態様の好ましい形態としては、エレクトロルミネッセンス素子は、上記電極間に配置され、三重項励起子からの発光が可能な発光材料を含む発光層をさらに備える。なお、本実施形態のエレクトロルミネッセンス素子は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子の一例である。
【0091】
さらに、本実施形態は、一対の電極と、該電極間に配置され、本実施形態の共重合体を含む1層以上の有機膜と、を備える、エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、上記有機膜のうち少なくとも1層を塗布法により形成する、方法を提供する。また、このような方法により、本実施形態は、上記有機膜のうち少なくとも1層が塗布法により形成される、エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0092】
本実施形態の共重合体、および本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子材料(EL素子材料)(以下、一括して、「共重合体/EL素子材料」とも称する)は、有機溶媒に対する溶解性に優れる。このため、本実施形態に係る共重合体/EL素子材料は、塗布法(ウェットプロセス)による素子(特に薄膜)の製造に特に好適に用いられる。このため、本実施形態は、上記共重合体と、溶媒または分散媒と、を含有する液状組成物を提供する。このような液状組成物は、本発明に係る液状組成物の一例である。
【0093】
また、上記のように実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子材料が、塗布法(ウェットプロセス)による素子(特に薄膜)の製造に好適に用いられる。上記観点から、本実施形態は、上記共重合体を含有する薄膜を提供する。このような薄膜は、本発明に係る薄膜の一例である。
【0094】
また、本実施形態に係る共重合体/EL素子材料は、ホール注入性およびホール移動性に優れる。このため、正孔注入材料、正孔輸送材料または発光材料(ホスト)等のいずれの有機膜の形成においても好適に利用され得る。このうち、正孔の輸送性の観点から、正孔注入材料または正孔輸送材料として好適に用いられ、正孔輸送材料として特に好適に用いられる。
【0095】
以下では、
図1を参照して、本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子を示す模式図である。なお、本明細書において、「エレクトロルミネッセンス素子」は「EL素子」と省略する場合がある。
【0096】
図1に示すように、本実施形態に係るEL素子100は、基板110と、基板110上に配置された第1電極120と、第1電極120上に配置された正孔注入層130と、正孔注入層130上に配置された正孔輸送層140と、正孔輸送層140上に配置された発光層150と、発光層150上に配置された電子輸送層160と、電子輸送層160上に配置された電子注入層170と、電子注入層170上に配置された第2電極180とを備える。
【0097】
ここで、本実施形態の共重合体/EL素子材料は、例えば、第1電極120と第2電極180との間に配置されたいずれかの有機膜(有機層)中に含まれる。具体的には、共重合体/EL素子材料は、正孔注入材料として正孔注入層130または正孔輸送材料として正孔輸送層140または発光材料(ホスト)として発光層150に含まれることが好ましい。共重合体/EL素子材料は、正孔注入材料として正孔注入層130にまたは正孔輸送材料として正孔輸送層140に含まれることがより好ましい。共重合体/EL素子材料は、正孔輸送材料として正孔輸送層140に含まれることが特に好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、共重合体/EL素子材料を含む有機膜が、正孔輸送層、正孔注入層または発光層である。本発明のより好ましい形態では、共重合体を含む有機膜が、正孔輸送層または正孔注入層である。本発明の特に好ましい形態では、共重合体を含む有機膜が、正孔輸送層である。
【0098】
また、本実施形態の共重合体/EL素子材料を含む有機膜は、塗布法(溶液塗布法)によって形成される。具体的には、有機膜は、スピンコート(spin coat)法、キャスティング(casting)法、マイクログラビアコート(micro gravure coat)法、グラビアコート(gravure coat)法、バーコート(bar coat)法、ロールコート(roll coat)法、ワイアーバーコード(wire bar coat)法、ディップコート(dip coat)法、スプレーコート(spry coat)法、スクリーン(screen)印刷法、フレキソ(flexographic)印刷法、オフセット(offset)印刷法、インクジェット(ink jet)印刷法等の溶液塗布法を用いて製膜される。
【0099】
なお、溶液塗布法に使用する溶媒は、共重合体/EL素子材料を溶解することができるものであれば、どのような溶媒でも使用することができ、使用する共重合体の種類によって適宜選択できる。例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メチシレン、プロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジメトキシベンゼン、アニソール、エトキシトルエン、フェノキシトルエン、イソプロピルビフェニル、ジメチルアニソール、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、シクロヘキサン等が例示できる。また、溶媒の使用量は、特に制限されないが、塗布容易性などを考慮すると、共重合体の濃度が、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下程度となるような量である。
【0100】
なお、共重合体/EL素子材料を含む有機膜以外の層の製膜方法については、特に限定されない。本実施形態の共重合体/EL素子材料を含む有機膜以外の層は、例えば、真空蒸着法にて製膜されてもよく、溶液塗布法にて製膜されてもよい。
【0101】
基板110は、一般的なEL素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板110は、ガラス(glass)基板、シリコン(silicon)基板などの半導体基板、または透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
【0102】
基板110上には、第1電極120が形成される。第1電極120は、具体的には、陽極であり、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数が大きいものによって形成される。例えば、第1電極120は、透明性および導電性に優れる酸化インジウムスズ(In2O3-SnO2:ITO)、酸化インジウム亜鉛(In2O3-ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等によって透過型電極として形成されてもよい。また、第1電極120は、上記透明導電膜に対して、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを積層することによって反射型電極として形成されてもよい。また、基板110上に第1電極120を形成した後、必要であれば、洗浄、UV-オゾン処理を行ってもよい。
【0103】
第1電極120上には、正孔注入層130が形成される。正孔注入層130は、第1電極120からの正孔の注入を容易にする層であり、具体的には、約10nm以上約1000nm以下、より具体的には約20nm以上約50nm以下の厚さ(乾燥膜厚;以下同様)にて形成されてもよい。
【0104】
正孔注入層130は、公知の正孔注入材料にて形成することができる。正孔注入層130を形成する公知の正孔注入材料としては、例えば、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(poly(ether ketone)-containg triphenylamine:TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(4-isopropyl-4’-methyldiphenyliodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate:PPBI)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン(N,N’-diphenyl-N,N’-bis-[4-(phenyl-m-tolyl-amino)-phenyl]-biphenyl-4,4’-diamine:DNTPD)、銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine:m-MTDATA)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(N,N’-di(1-naphthyl)-N,N’-diphenylbenzidine:NPB)、4,4’,4”-トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(diphenylamino)triphenylamine:TDATA)、4,4’,4”-トリス(N,N-2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N,N-2-naphthylphenylamino)triphenylamine:2-TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(polyaniline/dodecylbenzenesulphonic acid)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/poly(4-styrenesulfonate):PEDOT/PSS)、およびポリアニリン/10-カンファースルホン酸(polyaniline/10-camphorsulfonic acid)等を挙げることができる。
【0105】
正孔注入層130上には、正孔輸送層140が形成される。正孔輸送層140は、正孔を輸送する機能を備えた層であり、例えば、約10nm以上約150nm以下、より具体的には約20nm以上約50nm以下の厚さにて形成されてもよい。正孔輸送層140は、本実施形態の共重合体を用いて溶液塗布法によって製膜されることが好ましい。この方法によれば、EL素子100の耐久性(発光寿命)を延長することが可能である。また、EL素子100の性能(発光効率)を向上させることも可能である。また、EL素子100の電流効率を向上させ、駆動電圧を低減させることも可能である。また、溶液塗布法にて正孔輸送層を形成できるため、効率的に大面積にて製膜することができる。
【0106】
ただし、EL素子100のいずれかの他の有機膜が本実施形態に係る共重合体を含む場合、正孔輸送層140は、公知の正孔輸送材料にて形成されてもよい。公知の正孔輸送材料としては、例えば、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(1,1-bis[(di-4-tolylamino)phenyl]cyclohexane:TAPC)、N-フェニルカルバゾール(N-phenylcarbazole)およびポリビニルカルバゾール(polyvinylcarbazole)などのカルバゾール(carbazole)誘導体、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(N,N’-bis(3-methylphenyl)-N,N’-diphenyl-[1,1-biphenyl]-4,4’-diamine:TPD)、4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N-carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、ならびにN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(N,N’-di(1-naphthyl)-N,N’-diphenylbenzidine:NPB)等を挙げることができる。
【0107】
正孔輸送層140上には、発光層150が形成される。発光層150は、蛍光、りん光等によって光を発する層であり、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット印刷法などを用いて形成される。発光層150は、例えば、約10nm以上約60nm以下、より具体的には約20nm以上約50nm以下の厚さにて形成されてもよい。発光層150の発光材料としては、公知の発光材料を用いることができる。ただし、発光層150に含まれる発光材料は、三重項励起子からの発光(すなわち、りん光発光)が可能な発光材料であることが好ましい。このような場合、EL素子100の駆動寿命をさらに向上させることができる。
【0108】
発光層150は、特に制限されず、公知の構成とすることができる。好ましくは、発光層は、半導体ナノ粒子または有機金属錯体を含む。すなわち、本発明の好ましい形態では、有機膜が半導体ナノ粒子または有機金属錯体を含む発光層を有する。なお、発光層が半導体ナノ粒子を含む場合には、EL素子は、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子(QLED)、量子ドット発光素子または量子点発光素子である。また、発光層が有機金属錯体を含む場合には、EL素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)である。
【0109】
発光層が半導体ナノ粒子を含む形態(QLED)において、発光層は、多数の半導体ナノ粒子(量子ドット)が単一層または複数層に配列されたものである。ここで、半導体ナノ粒子(量子ドット)は、量子拘束効果を持つ所定サイズの粒子である。半導体ナノ粒子(量子ドット)の直径は、特に制限されないが、1nm以上10nm以下程度である。
【0110】
発光層に配列される半導体ナノ粒子(量子ドット)は、ウェット化学工程、有機金属化学蒸着工程、分子線エピタキシー工程または他の類似した工程等により合成することができる。中でも、ウェット化学工程は、有機溶媒に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。
【0111】
ウェット化学工程では、結晶が成長する際に、有機溶媒が自然に量子ドット結晶の表面に配位されて、分散剤の役割を果たすことで、結晶の成長が調節される。そのため、ウェット化学工程では、有機金属化学蒸着(MOCVD、Metal Organic Chemical Vapor Deposition)や、分子線エピタキシー(MBE、Molecular Beam Epitaxy)などの気相蒸着法に比べて、容易かつ低コストで、半導体ナノ粒子の成長を制御することができる。
【0112】
半導体ナノ粒子(量子ドット)は、そのサイズを調節することによって、エネルギーバンドギャップを調節できるようになり、発光層(量子ドット発光層)で多様な波長帯の光を得ることができる。したがって、複数の異なるサイズの量子ドットを使用することで、複数波長の光を出射(または発光)するディスプレイを可能にする。量子ドットのサイズは、カラーディスプレイを構成できるように、赤色、緑色、青色光が出射されるように選択できる。また、量子ドットのサイズは、多様なカラー光が白色光を出射するように組み合わせられる。
【0113】
半導体ナノ粒子(量子ドット)としては、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素または化合物;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される半導体物質等を用いることができる。
【0114】
II-VI族半導体化合物は、特に限定されないが、例えば、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnTeSe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択される。
【0115】
III-V族半導体化合物は、特に限定されないが、例えば、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択される。
【0116】
IV-VI族半導体化合物は、特に限定されないが、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されることができる。
【0117】
IV族元素または化合物は、特に限定されないが、例えば、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群から選択される一元素化合物;及びSiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物からなる群から選択される。
【0118】
半導体ナノ粒子(量子ドット)は、均質な単一構造またはコア・シェルの二重構造を持つことができる。コア・シェルは相異なる物質を含むことができる。それぞれのコアとシェルとを構成する物質は、相異なる半導体化合物からなり得る。ただし、シェル物質のエネルギーバンドギャップは、コア物質のエネルギーバンドギャップより大きい。具体的には、ZnTeSe/ZnSe/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、CdSe/ZnS、InP/ZnSなどの構造が好ましい。
【0119】
例えば、コア(CdSe)・シェル(ZnS)構造を持つ量子ドットを作製する場合を説明する。まず、界面活性剤として、TOPO(trioctylphosphine oxide)を使用した有機溶媒に、(CH3)2Cd(dimethylcadmium)、TOPSe(trioctylphosphine selenide)などのコア(CdSe)の前駆体物質を注入して結晶を生成させる。このとき、結晶が一定のサイズに成長するように高温で一定時間維持した後、シェル(ZnS)の前駆体物質を注入して、既に生成されたコアの表面にシェルを形成させる。これによって、TOPOでキャッピングされたCdSe/ZnSの量子ドットを作製することができる。
【0120】
また、発光層が有機金属錯体を含む形態(OLED)において、発光層150は、ホスト材料として、例えば、6,9-ジフェニル-9’-(5’-フェニル-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル)3,3’-ビ[9H-カルバゾール]、3,9-ジフェニル-5-(3-(4-フェニル-6-(5’-フェニル-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル)-1,3,5,-トリアジン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール、9,9’-ジフェニル-3,3’-ビ[9H-カルバゾール]、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(tris(8-quinolinato)aluminium:Alq3)、4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(4,4’-bis(carbazol-9-yl)biphenyl:CBP)、ポリ(n-ビニルカルバゾール)(poly(n-vinyl carbazole):PVK)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(9,10-di(naphthalene)anthracene:ADN)、4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N-carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(1,3,5-tris(N-phenyl-benzimidazol-2-yl)benzene:TPBI)、3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン(3-tert-butyl-9,10-di(naphth-2-yl)anthracene:TBADN)、ジスチリルアリーレン(distyrylarylene:DSA)、4,4’-ビス(9-カルバゾール)-2,2’-ジメチル-ビフェニル(4,4’-bis(9-carbazole)2,2’-dimethyl-bipheny:dmCBP)などを含んでもよい。
【0121】
また、発光層150は、ドーパント材料として、例えば、ペリレン(perylene)およびその誘導体、ルブレン(rubrene)およびその誘導体、クマリン(coumarin)およびその誘導体、4-ジシアノメチレン-2-(p-ジメチルアミノスチリル)-6-メチル-4H-ピラン(4-dicyanomethylene-2-(pdimethylaminostyryl)-6-methyl-4H-pyran:DCM)およびその誘導体、ビス[2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジネート]ピコリネートイリジウム(III)(bis[2-(4,6-difluorophenyl)pyridinate]picolinate iridium(III):FIrpic)、ビス(1-フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(bis(1-phenylisoquinoline)(acetylacetonate)iridium(III):Ir(piq)2(acac))、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2-phenylpyridine)iridium(III):Ir(ppy)3)、トリス(2-(3-p-キシイル)フェニル)ピリジンイリジウム(III)などイリジウム(Ir)錯体、オスミウム(Os)錯体、白金錯体などを含んでもよい。これらのうち、発光材料が発光性有機金属錯体化合物であることが好ましい。
【0122】
発光層を形成する方法は、特に制限されない。半導体ナノ粒子または有機金属錯体を含む塗布液を塗布すること(溶液塗布法)によって形成できる。この際、塗布液を構成する溶媒としては、正孔輸送層中の材料(正孔輸送材料、特に共重合体)を溶解しない溶媒を選択することが好ましい。
【0123】
発光層150上には、電子輸送層160が形成される。電子輸送層160は、電子を輸送する機能を備えた層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて形成される。電子輸送層160は、例えば、約15nm以上約50nm以下の厚さにて形成されてもよい。
【0124】
電子輸送層160は、公知の電子輸送材料にて形成されてもよい。公知の電子輸送材料としては、例えば、(8-キノリノラト)リチウム(リチウムキノレート)(Liq)、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(tris(8-quinolinato)aluminium:Alq3)、および含窒素芳香環を有する化合物等を挙げることができる。含窒素芳香環を有する化合物の具体例としては、例えば、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン(1,3,5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzene)のようなピリジン(pyridine)環を含む化合物、2,4,6-トリス(3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(2,4,6-tris(3’-(pyridin-3-yl)biphenyl-3-yl)-1,3,5-triazine)のようなトリアジン(triazine)環を含む化合物、2-(4-(N-フェニルベンゾイニダゾリル-1-イル-フェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン(2-(4-(N-phenylbenzoimidazolyl-1-yl-phenyl)-9,10-dinaphthylanthracene)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(1,3,5-tris(N-phenyl-benzimidazol-2-yl)benzene:TPBI)のようなイミダゾール(imidazole)環を含む化合物等を挙げることができる。上記電子輸送材料は、1種を単独で使用してもまたは2種以上の混合物として使用してもよい。
【0125】
電子輸送層160上には、電子注入層170が形成される。電子注入層170は、第2電極180からの電子の注入を容易にする機能を備えた層である。電子注入層170は、真空蒸着法などを用いて形成される。電子注入層170は、約0.1nm以上約5nm以下、より具体的には約0.3nm以上約2nm以下の厚さにて形成されてもよい。電子注入層170を形成する材料として公知の材料ならば、いずれも使用することができる。例えば、電子注入層170は、(8-キノリノラト)リチウム(リチウムキノレート)((8-quinolinato)lithium:Liq)およびフッ化リチウム(LiF)等のリチウム(lithium)化合物、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)、または酸化バリウム(BaO)等にて形成されてもよい。
【0126】
電子注入層170上には、第2電極180が形成される。第2電極180は、真空蒸着法などを用いて形成される。第2電極180は、具体的には、陰極であり、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数が小さいものによって形成される。例えば、第2電極180は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の金属、またはアルミニウム-リチウム(Al-Li)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)等の合金で反射型電極として形成されてもよい。第2電極180は、約10nm以上約200nm以下、より具体的には約50nm以上約150nm以下の厚さにて形成されてもよい。または、第2電極180は、上記金属材料の20nm以下の薄膜、酸化インジウムスズ(In2O3-SnO2)および酸化インジウム亜鉛(In2O3-ZnO)などの透明導電膜によって透過型電極として形成されてもよい。
【0127】
以上、本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子の一例として、本実施形態に係るEL素子100について説明した。本実施形態に係るEL素子100は、共重合体を含む有機膜(特に正孔輸送層または正孔注入層)を設置することにより、耐久性(発光寿命)をより向上させることができる。また、発光効率(電流効率)をより向上させ、駆動電圧を低減させることができる。
【0128】
なお、本実施形態に係るEL素子100の積層構造は、上記例示に限定されない。本実施形態に係るEL素子100は、他の公知の積層構造にて形成されてもよい。例えば、EL素子100は、正孔注入層130、正孔輸送層140、電子輸送層160および電子注入層170のうちの1層以上が省略されてもよく、また、追加で他の層を備えていてもよい。また、EL素子100の各層は、それぞれ単層で形成されてもよく、複数層で形成されてもよい。
【0129】
例えば、EL素子100は、励起子または正孔が電子輸送層160に拡散することを防止するために、正孔輸送層140と発光層150との間に正孔阻止層をさらに備えていてもよい。なお、正孔阻止層は、例えば、オキサジアゾール(oxadiazole)誘導体、トリアゾール(triazole)誘導体、または、フェナントロリン(phenanthroline)誘導体等によって形成することができる。
【0130】
さらに、本実施形態に係る共重合体は、上記QLEDまたはOLED以外のエレクトロルミネッセンス素子に適用することができる。本実施形態に係る共重合体を適用することが可能な他のエレクトロルミネッセンス素子としては、特に限定されないが、例えば、有機無機ペロブスカイト発光素子等が挙げられる。
【実施例0131】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「
部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0132】
[実施例1]
(単量体M-1の合成)
単量体M-1を下記反応に従って合成した。
【0133】
【0134】
500mL-四つ口フラスコに、2-ブロモ-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン](15.6g)、2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(30.0g)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(3.09g)、t-ブトキシナトリウム(14.6g)、トルエン(190mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間攪拌した。室温(25℃、以下同様)まで放冷し、不溶物をセライト(Celite:登録商標、以下同様)を用いてろ別した。ろ液から溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、N-(9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[フルオレン]-2-アミン(33.4g、収率84.0%)を得た。
【0135】
2L-四つ口フラスコに、3,6-ジクロロカルバゾール(100.0g)、4-ブロモ-4’-ヨードビフェニル(167g)、ヨウ化銅(4.03g)、t-ブトキシナトリウム(81.4g)、trans-1,2-シクロヘキサンジアミン(9.67g)、1,4-ジオキサン(1060mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間加熱、攪拌した。室温まで放冷し、不溶物をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、トルエン(800mL)に溶解した。溶液を水(1L)、2N-HCl(500mL×2)、水(500mL×2)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶液をセライト、シリカゲルを用いてろ過した。溶媒を減圧留去し、トルエン/エタノール混合溶媒で再結晶、および乾燥し、9-(4’ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール(81.5g、74.8%)を得た。
【0136】
500mL-四つ口フラスコに、N-(9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[フルオレン]-2-アミン(8.00g)、9-(4’ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール(7.13g)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)(0.171g)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(t-Bu3P・BF4)(0.332g)、t-ブトキシナトリウム(2.93g)、トルエン(150mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で3時間攪拌した。不溶物をセライトを用いてろ別し、活性炭(3g)、ゼオライト(3g)を加え、110℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通した。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/トルエン)を用いて精製し、さらにトルエン、アセトニトリル混合溶媒で再結晶および乾燥し、N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[フルオレン]-2-アミン(6.57g、76.0%)を得た。
【0137】
200mL-四つ口フラスコに、N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[フルオレン]-2-アミン(6.56g)、ビスピナコールジボレート(6.79g)、酢酸カリウム(6.25g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)(0.48g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)(0.754g)、1,4-ジオキサン(160mL)を入れ、窒素雰囲気下で4時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン(100mL)に溶解し、活性炭(2g)およびゼオライト(2g)を加え、130℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン、ヘキサン混合溶媒で再結晶、および乾燥し、単量体M-1を得た(6.84g、59.3%)。
【0138】
(共重合体P-1の合成)
窒素雰囲気下、単量体M-1(1.15g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジオクチルフルオレン(0.581g)、酢酸パラジウム(2.40mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(19.3mg)、トルエン(35mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5.46g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。フェニルボロン酸(128mg)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(44.6mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5.46g)を加え、85℃で6時間攪拌した。その後、イオン交換水(35mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(3.58g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-1を得た(0.89g)。得られた共重合体の重量平均分子量および分散度をSECにて測定したところ、Mw=15,700、Mw/Mn=1.60であった。
【0139】
共重合体P-1は、単量体の仕込み比から以下の構造単位を有すると推定される。
【0140】
【0141】
(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1の作製)
第1電極(陽極)として、酸化インジウムスズ(ITO)が膜厚150nmでパターニングされているITO付きガラス基板を使用した。このITO付きガラス基板を、中性洗剤、脱イオン水、水及びイソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV-オゾン処理を実施した。次に、このITO付きガラス基板上に、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)(Sigma-Aldrich製)を、乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法により塗布した後、乾燥させた。その結果、厚さ(乾燥膜厚)30nmの正孔注入層がITO付きガラス基板上に形成された。
【0142】
この正孔注入層上に、共重合体P-1(正孔輸送材料)の1.0質量%のトルエン溶液を、乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法により塗布した後、230℃で60分間熱処理して、正孔輸送層を形成した。その結果、厚さ(乾燥膜厚)30nmの正孔輸送層が正孔注入層上に形成された。
【0143】
シクロヘキサン中に、下記構造:
【0144】
【0145】
を有するZnTeSe/ZnSe/ZnS(コア/シェル/シェル;平均直径=約10nm)の青色量子ドットを、1.0質量%となるように分散させ、量子ドット分散液を調製した。なお、正孔輸送層(特に共重合体P-1)はシクロヘキサンには溶解しない。この量子ドット分散液を、乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法により上記正孔輸送層上に塗布した後、乾燥させた。その結果、厚さ(乾燥膜厚)30nmの量子ドット発光層が正孔輸送層上に形成された。なお、量子ドット分散液に紫外線を照射することにより発せられる光は、中心波長が462nm、半値幅が30nmであった。
【0146】
この量子ドット発光層を完全に乾燥させた。この量子ドット発光層上に、真空蒸着装置を用いて、リチウムキノレート(Liq)及び電子輸送材料としての1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBI)(Sigma-Aldrich製)を共蒸着させた。その結果、厚さが36nmの電子輸送層が量子ドット発光層上に形成された。
【0147】
真空蒸着装置を用いて、この電子輸送層上に、(8-キノリノラト)リチウム(リチウムキノレート)(Liq)を蒸着させた。その結果、厚さ0.5nmの電子注入層が電子輸送層上に形成された。
【0148】
真空蒸着装置を用いて、この電子注入層上に、アルミニウム(Al)を蒸着させた。その結果、厚さ100nmの第2電極(陰極)が電子注入層上に形成された。これにより、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1得た。
【0149】
[実施例2]
(単量体M-2の合成)
単量体M-2を下記反応に従って合成した。
【0150】
【0151】
500mL-四つ口フラスコに、2-(4-ビフェニル)アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(10.0g)、9-(4’ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール(12.9g)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)(0.311g)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(t-Bu3P・BF4)(0.602g)、t-ブトキシナトリウム(5.31g)、トルエン(280mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で5時間攪拌した。不溶物をセライトを用いてろ別し、活性炭(3g)、ゼオライト(3g)を加え、110℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通した。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/トルエン)を用いて精製し、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(18.5g、89.4%)を得た。
【0152】
200mL-四つ口フラスコに、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(10.0g)、ビスピナコールジボレート(8.52g)、酢酸カリウム(7.92g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)(0.695g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)(0.950g)、1,4-ジオキサン(110mL)を入れ、窒素雰囲気下で4時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン(100mL)に溶解し、活性炭(3g)およびゼオライト(3g)を加え、130℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通し、溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン、ヘキサン混合溶媒で再結晶、および乾燥し、単量体M-2を得た(6.09g、48.9%)。
【0153】
(共重合体P-2の合成)
窒素雰囲気下、単量体M-2(1.57g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジオクチルフルオレン(0.927g)、酢酸パラジウム(3.8mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(30.9mg)、トルエン(54mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(8.71g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。フェニルボロン酸(204mg)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(71.1mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(8.71g)を加え、85℃で6時間攪拌した。その後、イオン交換水(54mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.71g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-2を得た(0.63g)。得られた共重合体の重量平均分子量および分散度をSECにて測定したところ、Mw=52,300、Mw/Mn=2.76であった。
【0154】
共重合体P-2は、単量体の仕込み比から以下の構造単位を有しすると推定される。
【0155】
【0156】
(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-2の作製)
実施例1の(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1の作製)において、共重合体P-1の代わりに、共重合体P-2を使用したこと以外は、これと同様の操作を行い、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-2を作製した。
【0157】
[実施例3]
(単量体M-3の合成)
単量体M-3を下記反応に従って合成した。
【0158】
【0159】
500mL-四つ口フラスコに、2-(3-ビフェニリル)アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(5.00g)、9-(4’ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール(12.9g)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)(0.156g)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(t-Bu3P・BF4)(0.150g)、t-ブトキシナトリウム(2.65g)、トルエン(140mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で5時間攪拌した。不溶物をセライトを用いてろ別し、活性炭(5.0g)、ゼオライト(5.0g)を加え、110℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通しした。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/トルエン)を用いて精製し、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(9.18g、88.8%)を得た。
【0160】
200mL-四つ口フラスコに、N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(9.00g)、ビスピナコールジボレート(7.64g)、酢酸カリウム(7.08g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)(0.551g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)(0.860g)、1,4-ジオキサン(100mL)を入れ、窒素雰囲気下で4時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン(100mL)に溶解し、活性炭(3g)およびゼオライト(3g)を加え、130℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン、ヘキサン混合溶媒で再結晶、および乾燥し、単量体M-3を得た(6.94g、62.0%)。
【0161】
(共重合体P-3の合成)
窒素雰囲気下、単量体M-3(1.39g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジオクチルフルオレン(0.824g)、酢酸パラジウム(3.4mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(31.7mg)、トルエン(44mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.74g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。フェニルボロン酸(181mg)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(63.2mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.74g)を加え、85℃で6時間攪拌した。その後、イオン交換水(44mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.07g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-3を得た(0.83g)。得られた共重合体の重量平均分子量および分散度をSECにて測定したところ、Mw=33,300、Mw/Mn=2.19であった。
【0162】
共重合体P-3は、単量体の仕込み比から以下の構造単位を有すると推定される。
【0163】
【0164】
(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-3の作製)
実施例1の(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1の作製)において、共重合体P-1の代わりに、共重合体P-3を使用したこと以外は、これと同様の操作を行い、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-3を作製した。
【0165】
[実施例4]
(単量体M-4の合成)
単量体M-4を下記反応に従って合成した。
【0166】
【0167】
500mL-四つ口フラスコに、2-(2-ビフェニリル)アミノ-9,9-ジメチルフルオレン(12.0g)、9-(4’ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール(15.5g)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)(0.372g)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(t-Bu3P・BF4)(0.722g)、t-ブトキシナトリウム(6.38g)、トルエン(330mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で1時間攪拌した。不溶物をセライトを用いろ別し、活性炭(6.0g)、ゼオライト(6.0g)を加え、110℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通した。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/トルエン)を用いて精製し、N-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(18.2g、73.4%)を得た。
【0168】
200mL-四つ口フラスコに、N-([1,1’-ビフェニル]-2-イル)-N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(9.00g)、ビスピナコールジボレート(7.64g)、酢酸カリウム(7.08g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)(0.551g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)(0.860g)、1,4-ジオキサン(100mL)を入れ、窒素雰囲気下で4時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン(100mL)に溶解し、活性炭(3g)およびゼオライト(3g)を加え、130℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン、ヘキサン混合溶媒で再結晶、および乾燥し、単量体M-4を得た(7.88g、63.5%)。
【0169】
(共重合体P-4の合成)
アルゴン雰囲気下、単量体M-4(1.57g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン(0.927g)、酢酸パラジウム(3.8mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(30.9mg)、トルエン(50mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(8.71g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。次に、フェニルボロン酸(204mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(71.1mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(8.71g)を加え、6時間攪拌した。その後、イオン交換水(50mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.71g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-4を得た(0.76g)。得られた共重合体の重量平均分子量および分散度をSECにて測定したところ、Mw=72,700、Mw/Mn=3.45であった。
【0170】
共重合体P-4は、単量体の仕込み比から以下の構造単位を有すると推定される。
【0171】
【0172】
(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-4の作製)
実施例1の(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1の作製)において、共重合体P-1の代わりに、共重合体P-4を使用したこと以外は、これと同様の操作を行い、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-4を作製した。
【0173】
[実施例5]
(共重合体P-5の合成)
アルゴン雰囲気下、単量体M-4(1.42g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジドデシルフルオレン(1.01g)、酢酸パラジウム(3.4mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(27.9mg)、トルエン(50mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.88g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。次に、フェニルボロン酸(185mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(64.4mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.88g)を加え、6時間攪拌した。その後、イオン交換水(50mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.17g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-5を得た(0.44g)。得られた共重合体の重量平均分子量および分散度をSECにて測定したところ、Mw=30,000、Mw/Mn=2.29であった。
【0174】
共重合体P-5は、単量体の仕込み比から以下の構造単位を有すると推定される。
【0175】
【0176】
(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-5の作製)
実施例1の(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1の作製)において、共重合体P-1の代わりに、共重合体P-5を使用したこと以外は、これと同様の操作を行い、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-5を作製した。
【0177】
[実施例6]
(単量体M-5の合成)
単量体M-5を下記反応に従って合成した。
【0178】
【0179】
500mL-四つ口フラスコに、3-クロロ-9H-カルバゾール(10.0g)、4-ヘキシルブロモベンゼン(13.2g)、t-ブトキシナトリウム(t-BuONa)(7.15g)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(Pd2(dba)3)(0.91g)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(t-Bu3P・BF4)(0.58g)トルエン(169mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で10時間還流した。反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/トルエン)を用いて精製し、3-クロロ-9-(4-ヘキシルフェニル)-9H-カルバゾール(15.2g、83%)を得た。
【0180】
500mL-四つ口フラスコに、3-クロロ-9-(4-ヘキシルフェニル)-カルバゾール(15.0g)、ビスピナコールジボレート(15.8g)、酢酸カリウム(5.97g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)(0.76g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)(0.79g)、1,4-ジオキサン(145mL)を入れ、窒素雰囲気下で8時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン(50mL)に溶解し、活性炭(1.5g)およびゼオライト(1.5g)を加え、130℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通し、溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン、アセトニトリル混合溶媒で再結晶、および乾燥し、9-(4-ヘキシルフェニル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9H-カルバゾール得た(13.1g、70%)。
【0181】
1L-四つ口フラスコに、3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール(50.0g)、p-ブロモヨードベンゼン(72.4g)、ヨウ化銅(2.02g)、t-ブトキシナトリウム(30.5g)、trans-1,2-シクロヘキサンジアミン(2.42g)、1,4-ジオキサン(423mL)を入れ、窒素雰囲下、100℃で12時間加熱、攪拌した。室温まで放冷し、不溶物をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、トルエン(400mL)に溶解した。溶液を水(500mL)、2N-HCl(300mL×2)、水(300mL×2)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を減圧留去し、テトラヒドロフラン/エタノール混合溶媒で再結晶、および乾燥し、9-(4-ブロモフェニル)-3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール(56.6g、68.4%)を得た。
【0182】
500mL-四つ口フラスコに、9-(4-ヘキシルフェニル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9H-カルバゾール)(10.0g)、9-(4-ブロモフェニル)-3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール(8.63g)、炭酸ナトリウム(3.51g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)3)(1.27g)、トルエン(45mL)、エタノール(55mL)、蒸留水(55mL)を入れ、窒素雰囲気下で4時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。ろ液をシリカゲルに通し、溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン、メタノール混合溶媒で再結晶、および乾燥し、3,6-ジクロロ-9-(4-(9-(4-ヘキシルフェニル)-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-カルバゾールを得た(11.9g、84.4%)
500mL-四つ口フラスコに、3,6-ジクロロ-9-(4-(9-(4-ヘキシルフェニル)-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(10.0g)、ビスピナコールジボレート(15.9g)、酢酸カリウム(9.04g)、酢酸パラジウム(0.352g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)(0.748g)、1,4-ジオキサン(157mL)を入れ、窒素雰囲気下で4時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン(200mL)に溶解し、活性炭(3g)およびゼオライト(3g)を加え、130℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン、アセトニトリル混合溶媒で再結晶、および乾燥し、単量体M-5を得た(7.68g、59.5%)。
【0183】
(共重合体P-6の合成)
アルゴン雰囲気下、単量体M-5(1.72g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジオクチルフルオレン(1.152g)、酢酸パラジウム(4.7mg)、トリス(o-トルイル)ホスフィン(38.1mg)、トルエン(57mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(10.8g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。次に、フェニルボロン酸(253mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(88.0mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(10.8g)を加え、6時間攪拌した。その後、イオン交換水(60mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(7.06g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%塩酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-6を得た(1.01g)。得られた共重合体の重量平均分子量および分散度をSECにて測定したところ、Mw=16,500、Mw/Mn=1.53であった。
【0184】
共重合体P-6は、単量体の仕込み比から以下の構造単位を有すると推定される。
【0185】
【0186】
(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-6の作製)
実施例1の(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1の作製)において、共重合体P-1の代わりに、共重合体P-6を使用したこと以外は、これと同様の操作を行い、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-6を作製した。
【0187】
[実施例7]
(単量体M-6の合成)
単量体M-6を下記反応に従って合成した。
【0188】
【0189】
300mL-四つ口フラスコに、9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(14.0g)、1-ブロモジベンゾフラン(10.4g)、t-ブトキシナトリウム(t-BuONa)(11.4g)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロライドジクロロメタン付加物(PdCl2(dppf)CH2Cl2)(1.71g)、トルエン(105mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で2時間還流した。反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧留去した。得られた固体をメタノール(400mL)に分散させ、1時間攪拌し、ろ過した。得られた固体を水(300mL)、メタノール(300mL)で洗浄し、トルエン、ヘキサン混合溶媒で再結晶、および乾燥し、N-(9,9’-スピロビ[フルオレン]-2-イル)ジベンゾ[d、b]フラン-1-アミン(6.69g、31.8%)を得た。
【0190】
300mL-四つ口フラスコに、N-(9,9’-スピロビ[フルオレン]-2-イル)ジベンゾ[d,b]フラン-1-アミン(6.00g)、9-(4’ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール(5.63g)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)(0.135g)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(t-Bu3P・BF4)(0.262g)、t-ブトキシナトリウム(2.31g)、トルエン(120mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で3時間攪拌した。不溶物をセライトを用いろ別し、活性炭(3.0g)、ゼオライト(3.0g)を加え、110℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通した。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/トルエン)を用いて精製し、N-(9,9’-スピロビ[フルオレン]-2-イル)-N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジベンゾ[d、b]フラン-1-アミン)(7.40g、69.4%)を得た。
【0191】
200mL-四つ口フラスコに、N-(9,9’-スピロビ[フルオレン]-2-イル)-N-(4’-(3,6-ジクロロ-9H-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジベンゾ[d、b]フラン-1-アミン)(5.00g)、ビスピナコールジボレート(4.31g)、酢酸カリウム(3.33g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)(0.259g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)(0.404g)、1,4-ジオキサン(45mL)を入れ、窒素雰囲気下で4時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン(100mL)に溶解し、活性炭(3g)およびゼオライト(3g)を加え、130℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、ろ液をシリカゲルに通した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエン、アセトニトリル混合溶媒で再結晶、および乾燥し、単量体M-6を得た(3.05g、50.5%)。
【0192】
(共重合体P-7の合成)
アルゴン雰囲気下、単量体M-6(1.42g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジオクチルフルオレン(0.822g)、酢酸パラジウム(3.4mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(27.7mg)、トルエン(55mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.81g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。次に、フェニルボロン酸(183mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(63.1mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.81g)を加え、6時間攪拌した。その後、イオン交換水(50mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.17g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-7を得た(0.81g)。得られた共重合体の重量平均分子量および分散度をSECにて測定したところ、Mw=69,900、Mw/Mn=2.12であった。
【0193】
共重合体P-7は、単量体の仕込み比から以下の構造単位を有すると推定される。
【0194】
【0195】
(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-7の作製)
実施例1の(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1の作製)において、共重合体P-1の代わりに、共重合体P-7を使用したこと以外は、これと同様の操作を行い、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-7を作製した。
【0196】
[比較例1]
(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-8の作製)
実施例1の(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1の作製)において、共重合体P-1の代わりに、下記構成単位を有するポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)](TFB)(Luminescence Technology Corp.製)を使用したこと以外は、これと同様の操作を行い、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-8を作製した。なお、TFBの重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)をSECで測定した。その結果、TFBの重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、それぞれ、359,000および3.40であった。
【0197】
【0198】
[比較例2]
(単量体M-7の合成)
単量体M-7を下記反応に従って合成した。
【0199】
【0200】
500mL-三つ口フラスコに、9-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(5.34g)、4,4’-ジブロモ-4”-ヨードトリフェニルアミン(7.50g)、炭酸ナトリウム(2.69g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.74g)、1,4-ジオキサン(125mL)、水(63mL)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で3時間攪拌した。室温まで冷却し、トルエン(125mL)を加え、水(50mL×3)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を減圧留去し、トルエン(50mL)、ヘキサン(100mL)に溶解し、活性炭(8g)を加え、30分間還流した。室温まで冷却し、セライトを用いて活性炭をろ別し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィーおよび再結晶(トルエン/アセトン)し、単量体M-7(6.38g)を得た。
【0201】
(共重合体P-8の合成)
アルゴン雰囲気下、単量体M-7(1.47)、2,7-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9,9-ジ-N-オクチルフルオレン(1.47g)、酢酸パラジウム(5.1mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(48.4mg)、トルエン(59mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(9.98g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。次に、フェニルボロン酸(242mg)、テトラキシ(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(52.9mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(9.98g)を加え、3時間攪拌した。その後、イオン交換水(59mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(7.74g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-8を得た(0.788g)。得られた共重合体の重量平均分子量および分散度をSECにて測定したところ、Mw=74,000、Mw/Mn=2.45であった。
【0202】
共重合体P-8は、単量体の仕込み比から以下の構造単位を有すると推定される。
【0203】
【0204】
(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-9の作製)
実施例1の(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-1の作製)において、共重合体P-1の代わりに、共重合体P-8を使用したこと以外は、これと同様の操作を行い、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子D-9を作製した。
【0205】
<評価>
[共重合体の特性]
各共重合体について、下記方法により、HOMOレベル(eV)、LUMOレベル(eV)およびガラス転移温度(Tg)(℃)を測定した。結果を下記表1に示す。
【0206】
(HOMOレベルの測定)
各共重合体を、濃度が1質量%となるようにキシレンに溶解させ、塗布液を調製した。UV洗浄したITO付きガラス基板上に、上記で調製した塗布液を用い、回転数2000rpmの条件で、スピンコート法により製膜した後、ホットプレート上で、150℃、30分の条件で乾燥させ、測定用のサンプルを作製した。大気中光電子分光装置(理研計器株式会社製、AC-3)を用いて、サンプルのHOMOレベルを測定した。このとき、測定結果から、立ち上がりの接線交点を算出し、HOMOレベル(eV)とした。なお、HOMOレベルは、通常、負の数値である。
【0207】
(LUMOレベルの測定)
各共重合体を、濃度が3.2質量%となるようにトルエンに溶解させ、塗布液を調製した。UV洗浄したITO付きガラス基板上に、上記で調製した塗布液を用い、回転数1600rpmの条件で、スピンコート法により製膜した後、ホットプレート上で、250℃、60分の条件で乾燥させ、測定用のサンプル(製膜された膜の膜厚:約70nm)を作製した。得られたサンプルを77K(-196℃)まで冷却して、フォトルミネッセンス(PL)スペクトルを測定した。PLスペクトルの最も短波長側のピーク値から、LUMOレベル(eV)を算出した。
【0208】
(ガラス転移温度(Tg))
各共重合体を、示差走査熱量計(DSC)(セイコーインスツル社製、商品名:DSC6000)を用いて、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温して10分間保持したサンプルを、降温速度10℃/分で25℃まで冷却して10分間保持した後、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温して測定を行った。測定終了後は10℃/分で室温(25℃)まで冷却した。
【0209】
【0210】
[量子ドットエレクトロルミネッセンス素子の評価]
各量子ドットエレクトロルミネッセンス素子について、下記方法により、発光効率および発光寿命を評価した。結果を下記表2に示す。
【0211】
(発光効率)
各量子ドットエレクトロルミネッセンス素子に対して、電圧を印加すると、一定の電圧で電流が流れ始め、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子が発光する。直流定電圧電源(KEYENCE製、ソースメータ(source meter))を用いて、各素子に対して、徐々に電圧を増加させ、その時の電流値を計測し、発光時の輝度を輝度測定装置(Topcom製、SR-3)を用いて測定した。ここで、輝度が減衰を始めた時点で測定を終了した。各素子の面積から単位面積あたりの電流値(電流密度)を計算し、輝度(cd/m2)を電流密度(A/m2)にて除算することで、電流効率(cd/A)を算出した。そして、測定した電圧範囲で最も高い電流効率を「cd/A max」とした。なお、電流効率は、電流を発光エネルギーへ変換する効率(変換効率)を示し、電流効率が高いほど素子の性能が高いことを示す。
【0212】
また、直流定電圧電源(KEYENCE製、ソースメータ(source meter))を用いて、各量子ドットエレクトロルミネッセンス素子に対して、電圧を印加すると、一定の電圧で電流が流れ始め、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子が発光する。電流密度が5mA/cm2における電圧(V)を駆動電圧「V@5mA」とした。
【0213】
また、輝度測定装置で測定した分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行ったと仮定して、cd/A max時の外部量子効率(EQE)(%)を算出し、発光効率を評価した。
【0214】
(発光寿命)
直流定電圧電源(株式会社キーエンス製、ソースメータ(source meter))を用いて、各量子ドットエレクトロルミネッセンス素子に対して所定の電圧を加え、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子を発光させた。量子ドットエレクトロルミネッセンス素子の発光を輝度測定装置(株式会社Topcom製、SR-3)にて測定しつつ、徐々に電流を増加させ、輝度が650nit(cd/m2)になったところで電流を一定にし、放置した。輝度測定装置で測定した輝度の値が徐々に低下し、初期輝度の90%になるまでの時間を「LT90(hr)」とし、初期輝度の50%になるまでの時間を「LT50(hr)」とした。
【0215】
【0216】
上記表2の結果から、実施例の量子ドットエレクトロルミネッセンス素子は、比較例の量子ドットエレクトロルミネッセンス素子に比して、有意に高い発光効率および耐久性(特に発光寿命)を発揮できることが示された。なお、本例では、青色量子ドットエレクトロルミネッセンス素子について評価したが、赤色量子ドットエレクトロルミネッセンス素子等においても、上記と同様の結果が得られると考察される。
【0217】
以上、本発明について実施形態および実施例を挙げて説明したが、本発明は特定の実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。