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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090416
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】調理器用トッププレート
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/10 20060101AFI20220610BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
F24C15/10 B
H05B6/12 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202809
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 悦二
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA62
(57)【要約】
【課題】耐傷性に優れ、調理面側から視たときの美観性を向上させることができる、調理器用トッププレート。
【解決手段】調理器具が載せられる調理面2a及び調理面2aとは反対側の裏面2bを有する、ガラス基板2と、ガラス基板2の裏面2b上に設けられる、耐熱樹脂層4と、を備え、耐熱樹脂層4が、炭化ケイ素及び黒鉛を含む、調理器用トッププレート1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、
前記ガラス基板の前記裏面上に設けられる、耐熱樹脂層と、
を備え、
前記耐熱樹脂層が、炭化ケイ素及び黒鉛を含む、調理器用トッププレート。
【請求項2】
前記ガラス基板の前記裏面上に設けられており、顔料を含む、顔料層をさらに備え、
前記耐熱樹脂層が、
前記ガラス基板の前記裏面上において、前記顔料層を覆うように設けられ、かつ最外層である、請求項1に記載の調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記耐熱樹脂層が、
前記ガラス基板の前記裏面上に設けられている、第1の層と、
前記第1の層上に設けられており、かつ最外層である、第2の層と、
を有し、
前記第2の層が、前記炭化ケイ素及び黒鉛を含む、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記第1の層が、顔料を含む、請求項3に記載の調理器用トッププレート。
【請求項5】
前記第2の層中における前記炭化ケイ素の含有量が、10質量%以上、60質量%以下である、請求項3又は4に記載の調理器用トッププレート。
【請求項6】
前記第2の層中における前記黒鉛の含有量が、5質量%以上、25質量%以下である、請求項3~5のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項7】
前記調理面側から視たときに、前記裏面側にパターン模様が構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項8】
前記パターン模様が、ヘアライン模様である、請求項7に記載の調理器用トッププレート。
【請求項9】
前記パターン模様が、木目模様である、請求項7に記載の調理器用トッププレート。
【請求項10】
前記顔料層が、ガラスと、無機顔料とを含む、請求項2~9のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項11】
前記耐熱樹脂層が、透明な耐熱樹脂を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁気調理器、ラジアントヒーター調理器、ガス調理器などの調理器のトッププレートには、低い熱膨張係数を有する結晶化ガラスや硼珪酸ガラスなどからなる耐熱性を有するガラス基板が用いられている。ガラス基板として、透明なガラス基板を用いる場合には、一般に、調理器内部の構造を隠蔽したりすることを目的として、調理器内部側に位置する裏面に、顔料を含有した耐熱樹脂層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/141519号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、パターン模様の上に塗膜を形成した場合、製造工程やハンドリングで塗膜に傷が生じ易いという問題がある。この場合、調理器用トッププレートを調理面側から視たときに、美観性が損なわれるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、耐傷性に優れ、調理面側から視たときの美観性を向上させることができる、調理器用トッププレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る調理器用トッププレートは、調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の前記裏面上に設けられる、耐熱樹脂層と、を備え、前記耐熱樹脂層が、炭化ケイ素及び黒鉛を含むことを特徴としている。
【0007】
本発明においては、前記ガラス基板の前記裏面上に設けられており、顔料を含む、顔料層をさらに備え、前記耐熱樹脂層が、前記ガラス基板の前記裏面上において、前記顔料層を覆うように設けられ、かつ最外層であることが好ましい。
【0008】
本発明においては、前記耐熱樹脂層が、前記ガラス基板の前記裏面上に設けられている、第1の層と、前記第1の層上に設けられており、かつ最外層である、第2の層と、を有し、前記第2の層が、前記炭化ケイ素及び黒鉛を含むことが好ましい。
【0009】
本発明においては、前記第1の層が、顔料を含むことが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記第2の層中における前記炭化ケイ素の含有量が、10質量%以上、60質量%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記第2の層中における前記黒鉛の含有量が、5質量%以上、25質量%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記調理面側から視たときに、前記裏面側にパターン模様が構成されていることが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記パターン模様が、ヘアライン模様であってもよい。
【0014】
本発明においては、前記パターン模様が、木目模様であってもよい。
【0015】
本発明においては、前記顔料層が、ガラスと、無機顔料とを含むことが好ましい。
【0016】
本発明においては、前記耐熱樹脂層が、透明な耐熱樹脂を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐傷性に優れ、調理面側から視たときの美観性を向上させることができる、調理器用トッププレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートの変形例を示す模式的断面図である。
図3】従来の調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
図4】耐傷性試験後における実施例1の調理器用トッププレートを調理面側から視たときの写真である。
図5】耐傷性試験後における比較例1の調理器用トッププレートを調理面側から視たときの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0020】
[調理器用トッププレート]
図1は、本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。図1に示すように、調理器用トッププレート1(以下、「調理器用トッププレート」を、単に「トッププレート」とする)は、ガラス基板2を備える。ガラス基板2は、対向している調理面2a及び裏面2bを有する。調理面2aは、鍋やフライパンなどの調理器具が載せられる側の面である。裏面2bは、調理器の内部側において光源や加熱装置と対向する面である。従って、調理面2a及び裏面2bは、表裏の関係にある。
【0021】
ガラス基板2の裏面2b上には、顔料層3が設けられている。また、ガラス基板2の裏面2b上には、顔料層3を覆うように、耐熱樹脂層4が設けられている。
【0022】
耐熱樹脂層4は、第1の層5及び第2の層6を備える。第1の層5は、ガラス基板2の裏面2b上において、顔料層3を覆うように設けられている。また、第1の層5上に、第2の層6が設けられている。
【0023】
本実施形態のトッププレート1では、調理面2a側から視たときに、裏面2b側に視認可能なヘアライン模様が構成されている。ヘアライン模様の幅は、特に限定されないが、例えば、ヘアラインの延びる方向及び厚み方向に直交する方向を幅方向としたときに、例えば、10μm以上、1mm以下とすることができる。
【0024】
パターン模様としてのヘアライン模様は、顔料層3及び第1の層5により形成されている。より具体的に、ガラス基板2の裏面2b上には、顔料層3の膜が形成されている部分と、顔料層3の膜が形成されていない部分が存在している。ガラス基板2の裏面2b上において、この顔料層3の膜が形成されていない部分を埋めるように、ベタ塗りの第1の層5が設けられている。この顔料層3の膜が形成されていない部分に第1の層5が設けられることにより、ヘアライン模様が構成されている。
【0025】
本実施形態において、顔料層3は、遮光層であることが好ましい。顔料層3を構成する塗膜の色は、特に限定されないが、黒色やグレー色であることが好ましい。また、第1の層5を構成する塗膜の色は、特に限定されないが、顔料層3よりも淡く明るい色であることが好ましい。第1の層5を構成する塗膜の色としては、例えば、白色やクリーム色とすることができる。このような組み合わせにより、美観性により一層優れたパターン模様とすることができる。
【0026】
また、第1の層5上には、ベタ塗りの第2の層6が設けられている。第2の層6は、トッププレート1の最外層となる塗膜であり、炭化ケイ素及び黒鉛を含んでいる。なお、第2の層6を構成する塗膜の色は、特に限定されないが、黒色やグレー色であることが好ましい。この場合、トッププレート1の遮光性をより一層高めることができる。
【0027】
本実施形態のトッププレート1では、上記のように、裏面2b側の最外層となる第2の層6が、炭化ケイ素及び黒鉛を含んでいるので、調理面2a側から視たときの美観性を向上させることができる。なお、この点については、以下のように説明することができる。
【0028】
従来、図3に示すトッププレート101のように、ヘアライン模様のようなパターン模様103の上に耐熱樹脂層104を設けた場合、製造工程やハンドリングで傷が生じ易いという問題がある。特に、耐熱樹脂層104には傷が生じやすく、図3に示すように部分的に膜剥がれが生じることがあった。また、ヘアラインのようなパターン模様では、特にパターン模様の膜が形成されていない部分においてパターン越しに傷が見えやすく、ガラス基板102における調理面102a側から視たときに、裏面102b側の美観性が損なわれるという問題があった。これは、耐熱樹脂層104において膜剥がれが生じた部分を透過した光が、下側に設けられる部材で反射し、それが傷として認識されるためであると考えられる。
【0029】
これに対して、本発明者らは、トッププレート1の裏面2b側の最外層に着目し、最外層に炭化ケイ素及び黒鉛を含有させることで、耐傷性を高め得ることを見出した。
【0030】
特に、トッププレート1の裏面2b側の最外層に炭化ケイ素のみが含まれる場合は、最外層の硬度を高めることができる一方、製造工程やハンドリングにおける搬送器具等との滑りが悪くなるため、製造工程やハンドリングにおける搬送器具等との接触により硬くても削れやすいという問題が生じ、他方、トッププレート1の最外層に黒鉛のみが含まれる場合は、製造工程やハンドリングにおける搬送器具等との滑りを向上できる一方、柔らかいため、製造工程やハンドリングにおける搬送器具等との接触により、最外層が削れやすいという問題が生じることを見出した。そこで、トッププレート1の裏面2b側の最外層に炭化ケイ素及び黒鉛の双方を含有させることで、硬度を高めつつ、製造工程やハンドリングにおける搬送器具等が滑りやすい層を形成することができ、ひいては耐傷性を高め得ることを見出した。
【0031】
このように、トッププレート1では耐傷性が高められていることから、製造工程やハンドリングで、耐熱樹脂層4などに傷が生じ難い。そのため、トッププレート1を調理面2a側から視たときの美観性を向上させることができる。
【0032】
以下、トッププレート1を構成する各層の詳細について説明する。
【0033】
(ガラス基板)
ガラス基板2は、波長450nm~700nmにおける少なくとも一部の光を透過する。ガラス基板2は、有色透明であってもよいが、トッププレート1の美観性をより一層高める観点から、無色透明であることが好ましい。なお、本明細書において、「透明」であるとは、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上であることをいう。
【0034】
トッププレート1では、加熱及び冷却が繰り返しなされる。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱性及び低い熱膨張係数を有するものであることが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃~750℃における平均線熱膨張係数は、-10×10-7/℃~+60×10-7/℃の範囲内であることが好ましく、-10×10-7/℃~+50×10-7/℃の範囲内であることがより好ましく、-10×10-7/℃~+40×10-7/℃の範囲内であることがさらに好ましい。従って、ガラス基板2は、ガラス転移温度が高く、低膨張なガラスや、低膨張な結晶化ガラスからなるものであることが好ましい。低膨張な結晶化ガラスの具体例としては、例えば、日本電気硝子社製の「N-0」が挙げられる。なお、ガラス基板2としては、ホウケイ酸ガラスなどを用いてもよい。
【0035】
ガラス基板2の厚みは、特に限定されない。ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、例えば、2mm~6mm程度とすることができる。
【0036】
(顔料層)
顔料層3は、例えば、ガラスフリット等のガラス及び顔料により構成することができる。もっとも、顔料層3は、耐熱樹脂及び顔料により構成されていてもよい。
【0037】
顔料層3に用いられる顔料は、特に限定されず、例えば、有機顔料や無機顔料を用いることができる。顔料は、有色の無機物であることが好ましく、例えば、TiO粉末、ZrO粉末若しくはZrSiO粉末などの白色の顔料粉末、Coを含む青色の無機顔料粉末、Coを含む緑色の無機顔料粉末、Ti-Sb-Cr系若しくはTi-Ni系の黄色の無機顔料粉末、Co-Si系の赤色の無機顔料粉末、Feを含む茶色の無機顔料粉末、又はCuを含む黒色の無機顔料粉末などが挙げられる。
【0038】
Coを含む青色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al系又はCo-Al-Ti系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al系の無機顔料粉末の具体例としては、CoAl粉末などが挙げられる。Co-Al-Ti系の無機顔料粉末の具体例としては、CoAl-TiO-LiO粉末などが挙げられる。
【0039】
Coを含む緑色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al-Cr系又はCo-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Co(Al,Cr)粉末などが挙げられる。Co-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Co,Ni,Zn)TiO粉末などが挙げられる。
【0040】
Feを含む茶色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Fe-Zn系の無機顔料粉末が挙げられる。Fe-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Zn,Fe)Fe粉末などが挙げられる。
【0041】
Cuを含む黒色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Cu-Cr系の無機顔料粉末やCu-Fe系の無機顔料粉末が挙げられる。Cu-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Cu(Cr,Mn)粉末や、Cu-Cr-Mn粉末などが挙げられる。また、Cu-Fe系の無機顔料粉末の具体例としては、Cu-Fe-Mn粉末などが挙げられる。
【0042】
これらの顔料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0043】
また、ガラス成分としては、例えば、ホウケイ酸塩系ガラス、アルカリ金属成分及びアルカリ土類金属成分のうちの少なくとも一方を含む珪酸塩系ガラス、亜鉛及びアルミニウムを含むリン酸塩系ガラス等を用いることができる。ガラスの形態としては、鱗片状、粉状等であることが好ましい。
【0044】
顔料層3が耐熱樹脂により構成される場合、透明な樹脂であることが好ましい。特に、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が80%以上であることが好ましい。顔料層3に用いられる耐熱樹脂は、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。なかでも、シリコン原子に直接結合した官能基が、メチル基及びフェニル基のうち少なくとも一方であるシリコーン樹脂であることが好ましい。この場合、トッププレート1の耐熱性をより一層高めることができる。
【0045】
これらの耐熱樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。また、上記以外の他の樹脂を含んでいてもよい。
【0046】
本実施形態において、顔料層3中に含まれる顔料の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。顔料層3中に含まれる顔料の含有量が、上記の下限値以上である場合、美観性により一層優れたパターン模様とすることができる。また、顔料層3中に含まれる顔料の含有量が、上記の上限値以下である場合、顔料層3とガラス基板2との密着性やトッププレート1の耐熱性や耐衝撃性をより一層高めることができる。なお、顔料層3中に含まれる顔料の含有量は、顔料層3を構成する材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0047】
顔料層3中におけるガラスや耐熱樹脂の含有量は、特に限定されないが、それぞれ、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。ガラスや耐熱樹脂の含有量が、上記下限値以上である場合、顔料層3とガラス基板2との密着性やトッププレート1の耐熱性や耐衝撃性をより一層高めることができる。また、ガラスや耐熱樹脂の含有量が、上記上限値以下である場合、トッププレート1の機械的強度をより一層高めることができる。なお、ガラスや耐熱樹脂の含有量は、顔料層3を構成する材料全体をそれぞれ100質量%としたときの含有量である。
【0048】
顔料層3には、上述した着色顔料以外に、体質顔料が含まれていてもよい。体質顔料は、着色顔料とは異なる無機顔料粉末である。体質顔料としては、特に限定されないが、例えば、タルク、マイカなどを用いることができる。これらの体質顔料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。顔料層3に体質顔料が含まれている場合、トッププレート1の機械的強度をより一層高めることができる。
【0049】
顔料層3の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下である。顔料層3の厚みが上記範囲内にある場合、顔料層3とガラス基板2との密着性を高めることができ、トッププレート1の機械的強度をより一層高めることができる。また、美観性により一層優れたパターン模様とすることができる。
【0050】
(耐熱樹脂層)
第1の層;
第1の層5は、耐熱樹脂及び顔料を含有している。
【0051】
耐熱樹脂は、透明な樹脂であることが好ましい。特に、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が80%以上であることが好ましい。耐熱樹脂は、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。なかでも、シリコン原子に直接結合した官能基が、メチル基及びフェニル基のうち少なくとも一方であるシリコーン樹脂であることが好ましい。この場合、トッププレート1の耐熱性をより一層高めることができる。
【0052】
これらの耐熱樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。また、上記以外の他の樹脂を含んでいてもよい。
【0053】
なお、顔料としては、顔料層3の欄で説明したものを適宜用いることができる。
【0054】
第1の層5に用いられる顔料の含有量は、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。第1の層5に用いられる顔料の含有量が上記下限値以上である場合、美観性により一層優れたパターン模様とすることができる。また、第1の層5に用いられる顔料の含有量が上記上限値以下である場合、顔料層3との密着性をより一層高めることができる。また、第1の層5は、上述した着色顔料以外に、体質顔料を含んでいてもよい。体質顔料は、顔料層3の欄で説明したものを適宜用いることができる。
【0055】
第1の層5の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下である。第1の層5の厚みが上記範囲内にある場合、美観性により一層優れたパターン模様とすることができる。
【0056】
第2の層;
第2の層6は、耐熱樹脂と、炭化ケイ素と、黒鉛とを含む。耐熱樹脂としては、第1の層5の欄で説明したものを適宜用いることができる。なお、第2の層6の耐熱樹脂としては、第1の層5と同じ耐熱樹脂を用いることが望ましいが、第1の層5と異なる耐熱樹脂を用いてもよい。
【0057】
炭化ケイ素の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。炭化ケイ素の平均粒子径が上記範囲内である場合、トッププレート1の耐傷性をより一層高めることができる。
【0058】
黒鉛の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。黒鉛の平均粒子径が上記範囲内である場合、トッププレート1の耐傷性をより一層高めることができる。
【0059】
なお、本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した平均粒子径D50のことをいうものとする。
【0060】
黒鉛の形状としては、特に限定されず、鱗片状、板状、球状、不定形状、繊維状等の形状が挙げられる。なかでも、鱗片状、板状が好ましい。この場合、トッププレート1の耐傷性をより一層高めることができる。
【0061】
第2の層6中における炭化ケイ素の含有量は、特に限定されず、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。第2の層6における炭化ケイ素の含有量が上記下限値以上である場合、第2の層6の硬度をより一層高めることができ、トッププレート1の耐傷性をより一層高めることができる。
【0062】
第2の層6における黒鉛の含有量は、特に限定されず、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。第2の層6における黒鉛の含有量が上記下限値以上である場合、第2の層6における製造工程やハンドリングにおける搬送器具等との滑りをより一層向上させることができ、トッププレート1の耐傷性をより一層高めることができる。
【0063】
また、第2の層6は、さらに着色顔料や体質顔料を含んでいてもよい。特に、第2の層6がさらに着色顔料を含む場合、調理器の内部構造の隠蔽性をより一層高めることができる。なお、着色顔料及び体質顔料は、顔料層3の欄で説明したものを適宜用いることができる。
【0064】
第2の層6に用いられる着色顔料の含有量は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。第2の層6に用いられる着色顔料の含有量が上記下限値以上である場合、調理器の内部構造の隠蔽性をより一層高めることができる。また、第2の層6に用いられる着色顔料の含有量が上記上限値以下である場合、第1の層5との密着性をより一層高めることができる。
【0065】
第2の層6の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下である。第2の層6の厚みが上記範囲内にある場合、トッププレート1の耐傷性をより一層高めることができる。
【0066】
(変形例)
図2は、本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートの変形例を示す模式的断面図である。
【0067】
図2に示すように、変形例のトッププレート21では、ガラス基板22の裏面22b上において、顔料層23を覆うように、単層の耐熱樹脂層24が設けられている。従って、変形例では、耐熱樹脂層24全体がトッププレート21における最外層の層とされている。耐熱樹脂層24は、耐熱樹脂と、炭化ケイ素と、黒鉛とにより構成されている。なお、耐熱樹脂層24は、さらに着色顔料や体質顔料を含んでいてもよい。各材料は、第2の層6の欄で説明したものを適宜用いることができる。その他の点は、図1に示す実施形態と同様である。
【0068】
変形例のトッププレート21においても、最外層となる耐熱樹脂層24が炭化ケイ素及び黒鉛を含んでいるので、耐傷性に優れ、調理面22a側から視たときの美観性を向上させることができる。
【0069】
本発明においては、変形例のトッププレート21のように、耐熱樹脂層24が単層であってもよいし、図1に示す実施形態のトッププレート1のように、複数層であってもよい。もっとも、調理面2a側から視たときの美観性をより一層向上させる観点からは、図1に示す実施形態のトッププレート1のように、耐熱樹脂層4が、顔料層3とともに美観性を向上させる第1の層5と、最外層において耐傷性を向上させる第2の層6とを有していることが望ましい。
【0070】
なお、本発明においては、ガラス基板の裏面上に耐熱樹脂層4,24などの耐熱樹脂層が設けられていればよい。もっとも、本発明の効果をより一層確実に得る観点から、耐熱樹脂層が、ガラス基板の裏面上において、顔料層3,23などの顔料層を覆うように設けられ、かつ最外層であることが好ましい。
【0071】
また、上記実施形態では、ヘアライン模様が設けられる場合について説明したが、本発明においては、調理面2a側から視たときに、ヘアライン模様以外のパターン模様が構成されていてもよい。ヘアライン模様以外のパターン模様は、調理面2a側から視たときに視認可能なパターン模様であれば、特に限定されず、例えば、木目模様が挙げられる。パターン模様は、ドット状、ライン状、格子状などの模様であってもよい。なお、顔料層3は、ベタ塗りの塗膜であってもよいが、本発明の効果をより一層発揮させる観点から、膜が形成された部分と、膜が形成されていない部分とを有する、塗膜であることが望ましい。
【0072】
[調理器用トッププレートの製造方法]
トッププレート1は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0073】
まず、ガラスフリットと、顔料粉末と、溶剤とを含む顔料層形成用ペーストを用意する。用意した顔料層形成用ペーストをガラス基板2の裏面2b上に塗布し、乾燥させることにより、顔料層3を形成する。ペーストの塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法を用いることができる。
【0074】
顔料層3は、例えば、スクリーン印刷法において、1インチ当たり80本の線が形成された印刷パターンを用いて形成することができる。なお、顔料層3を形成する際のペーストの塗布スピード及び粘度は、顔料の含有量に応じて適宜設定することができる。
【0075】
顔料層3を形成する際のペーストの乾燥温度としては、例えば、60℃以上、100℃以下の温度とすることができる。乾燥時間としては、例えば、10秒以上、10分以下とすることができる。乾燥後、さらに焼成工程を設けてもよい。
【0076】
次に、耐熱樹脂と、着色顔料粉末と、溶剤とを含む第1の層形成用ペーストを用意する。用意した第1の層形成用ペーストを、顔料層3を覆うように塗布し、乾燥させることにより、第1の層5を形成する。ペーストの塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法を用いることができる。第1の層5は、顔料層3とは異なり、連続的かつ均一に塗布し、ベタ塗りの塗膜を形成するものとする。
【0077】
次に、耐熱樹脂と、炭化ケイ素と、黒鉛と、必要に応じて着色顔料と、溶剤とを含む第2の層形成用ペーストを用意する。用意した第2の層形成用ペーストを、第1の層5上に塗布し、乾燥させることにより、第2の層6を形成する。ペーストの塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法を用いることができる。第2の層6を形成するに際しても、連続的かつ均一に塗布し、ベタ塗りの塗膜を形成するものとする。
【0078】
第1の層5及び第2の層6を形成する際のペーストの乾燥温度としては、例えば、60℃以上、100℃以下の温度とすることができる。乾燥時間としては、例えば、10秒以上、10分以下とすることができる。
【0079】
なお、第1の層5及び第2の層6が形成された積層体をさらに焼成してもよい。第1の層5及び第2の層6は、別々に焼成してもよいし、同時に焼成してもよい。また、顔料層3と同時に焼成してもよい。なお、各工程における焼成温度は、特に限定されるものではないが、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。また、焼成温度は、400℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましい。
【0080】
以上のようにして、トッププレート1を製造することができる。
【0081】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0082】
(実施例1)
まず、ガラス粉末17.5質量%と、CuCrMn系の黒色の無機顔料粉末32.5質量%と、樹脂バインダー50質量%とを混合し、ペーストを作製した。
【0083】
次に、このペーストをガラス基板としての透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)全体の上に、厚みが5μmとなるように、1インチ当たり80本の線が形成された印刷パターンを用いて、スクリーン印刷した。その後、80℃で1分間、加熱乾燥を行なうことにより、ガラス基板の裏面上に顔料層を形成した。
【0084】
次に、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂38質量%(樹脂固形分)と、着色顔料35質量%と、有機溶剤27質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、作製したペーストを用いて、顔料層が形成されたガラス基板上に、厚みが7μmとなるように、ベタ塗りでスクリーン印刷した。その後、80℃で1分間乾燥させることにより、第1の層を形成した。これにより、ヘアライン模様のパターン模様を形成した。
【0085】
次に、透明な耐熱樹脂としてのシリコーン樹脂41質量%(樹脂固形分)と、炭化ケイ素(SiC)22.5質量%と、黒鉛(C)12.5質量%と、有機溶剤24質量%とを混合して、ペーストを作製した。次に、作製したペーストを用いて、顔料層及び第1の層が形成されたガラス基板上に、厚みが7μmとなるように、ベタ塗りでスクリーン印刷した。その後、80℃で1分間乾燥させることにより、第2の層を形成し、調理器用トッププレートを作製した。なお、第1の層及び第2の層において、有機溶剤(バインダー)を除く各成分の含有量(質量%)は、下記の表1に示す通りである。
【0086】
(実施例2及び比較例1~2)
第2の層に含まれる各成分の含有量を下記の表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、調理器用トッププレートを作製した。
【0087】
[評価]
(耐傷性)
実施例1~2及び比較例1~2で作製した調理器用トッププレートにおける第2の層を、コインにより、45度の角度及び速度一定で、同じ箇所を3回引っ掻き、耐傷性試験を行った。
【0088】
図4は、耐傷性試験後における実施例1の調理器用トッププレートを調理面側から視たときの写真である。図5は、耐傷性試験後における比較例1の調理器用トッププレートを調理面側から視たときの写真である。
【0089】
図4及び図5から明らかなように、実施例1では、傷が確認されなかったのに対し、比較例1では、傷が生じていることがわかる。
【0090】
また、実施例1~2及び比較例1~2で作製した調理器用トッププレートの耐傷性を以下の評価基準にて評価した。結果を下記の表1に示す。
【0091】
[評価基準]
◎…耐傷性試験後におけるトッププレートを調理面から視たときに、目視で傷が全く確認されなかった
〇…耐傷性試験後におけるトッププレートを調理面から視たときに、目視で傷がほとんど確認されなかった
×…耐傷性試験後におけるトッププレートを調理面から視たときに、目視で傷が確認された
【0092】
【表1】
【0093】
以上より、最外層に炭化ケイ素及び黒鉛の双方を含む実施例1~2の調理器用トッププレートは、耐傷性に優れ、調理面側から視たときの美観性を向上できることが確認できた。一方、最外層に炭化ケイ素及び黒鉛の一方を含まない比較例1~2の調理器用トッププレートでは、傷が観察され、調理面側から視たときの美観性が十分ではなかった。
【符号の説明】
【0094】
1,21…調理器用トッププレート
2,22…ガラス基板
2a,22a…調理面
2b,22b…裏面
3,23…顔料層
4,24…耐熱樹脂層
5…第1の層
6…第2の層
図1
図2
図3
図4
図5