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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090493
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/018 20060101AFI20220610BHJP
   B60R 21/268 20110101ALI20220610BHJP
【FI】
A41D13/018
B60R21/268
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202921
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【テーマコード(参考)】
3B011
3D054
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AC04
3D054DD02
(57)【要約】
【課題】孔開けピンを利用してガス発生器からの膨張用ガスをエアバッグに流入させる構成としても、熱によるエアバッグのダメージを抑制できるエアバッグ装置の提供。
【解決手段】エアバッグ20と、ガス発生器35と、を備える。ガス発生器は、蓋部38を設けて膨張用ガスGを貯留する本体部37と、蓋部開口時に、ガスGをエアバッグに吐出する流出口47を有したガス吐出部42と、を備える。ガス吐出部は、蓋部開口用の孔開けピン61と、孔開けピン移動用のばね66と、ばねを係止する係止部材68と、係止部材を係止解除位置にずらすスライド機構70とを備える。スライド機構は、駆動源71と、駆動源の駆動力により、係止部材を係止解除位置にずらす連結部材78と、を備える。ガス吐出部は、ピン61、ばね、蓋部、係止部材のばね近傍、を覆うハウジング43、を備え、駆動源と連結部材とは、ハウジング内の膨張用ガスの流路46と区画されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグと、
膨張用ガスを貯留するガス発生器と、
を備え、
前記ガス発生器が、
開口可能な蓋部を設けて前記膨張用ガスを貯留する本体部と、
前記蓋部の開口時に、前記本体部内の膨張用ガスを前記エアバッグのガス流入側部位に吐出する流出口を有したガス吐出部と、
を備えて構成されるとともに、
前記ガス吐出部に、前記蓋部を開口可能な開口手段が配設され、
前記開口手段が、
前記蓋部に挿入させて前記蓋部を開口させる孔開けピンと、
該孔開けピンを前記蓋部に挿入させるように移動させる移動手段と、を備えて構成されるエアバッグ装置であって、
前記移動手段が、
挿入前位置から前記蓋部への挿入位置まで前記孔開けピンを移動させるように押圧するばねと、
挿入前位置で前記孔開けピンを待機させるように、前記ばねの先端側を係止する係止部材と、
該係止部材を、前記ばねの先端側の係止位置から係止解除位置にずらすスライド機構と、
を備え、
前記スライド機構が、
作動時に駆動力を発揮する駆動源と、
前記係止部材と前記駆動源とに連結されて、前記駆動源の駆動力により、前記係止部材を係止解除位置にずらす連結部材と、
を備えて構成され、
前記ガス吐出部が、前記流出口を有して、前記孔開けピン、前記ばね、前記ガス発生器の前記蓋部、及び、前記係止部材における前記ばね近傍の部位、の周囲を覆って、開口時の前記蓋部からの前記膨張用ガスを前記流出口から前記エアバッグの前記ガス流入側部位へ流出可能なハウジング、を備えて構成され、
前記駆動源と前記連結部材とが、前記ハウジング内における前記蓋部から前記流出口まで流れる前記膨張用ガスの流路と区画された領域の前記ガス吐出部に配設されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記駆動源が、可逆的に動作可能として、作動信号により駆動されるアクチュエータから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータが、作動タイミングを検知可能なセンサからの信号を入力した制御装置に作動を制御されるように、構成されていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記駆動源が、揺動する錘の運動エネルギーとし、
前記連結部材が前記錘に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグと前記ガス発生器とが、保護対象者に装着可能な保持体に、保持されて、着用エアバッグ装置として構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔開けピンに押し付けられて開口することにより、貯留した膨張用ガスをガス発生器からエアバッグに流入させて、エアバッグを膨張させる構成のエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置としては、膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグと、膨張用ガスを貯留するガス発生器と、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。ガス発生器は、開口可能な蓋部を設けて膨張用ガスを貯留する本体部と、蓋部の開口時に、本体部内の膨張用ガスをエアバッグのガス流入側部位に吐出する流出口を有したガス吐出部と、を備えて構成されていた。ガス吐出部には、蓋部を開口させる開口手段が配設されていた。開口手段は、蓋部に挿入させて蓋部を開口させる孔開けピンと、孔開けピンを蓋部に挿入させるように移動させる移動手段と、を備えて構成されていた。移動手段は、火薬を爆発させた際の圧力を利用するものであり、孔開けピンは、その圧力を受けて、蓋部に当り、蓋部に開口を開けることにより、ガス発生器の本体部内に貯留していた圧縮ガスや不活性ガス等の膨張用ガスを、ガス吐出部の流出口を経て、エアバッグのガス流入側部位に流し、そして、エアバッグを膨張させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,746,442号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエアバッグ装置では、蓋部を開口させるように孔開けピンを移動させる移動手段が、火薬を燃焼させた際に発生する圧力を利用するものであり、孔開けピン付近に、燃焼した火炎が発生しており、その火炎が、膨張用ガスとともに、エアバッグ内に流入する事態を招き、エアバッグ内に火炎が流入すれば、エアバッグにダメージを招く虞れが生ずる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、孔開けピンを利用してガス発生器からの膨張用ガスをエアバッグに流入させる構成としても、熱によるエアバッグのダメージを抑制できるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグと、
膨張用ガスを貯留するガス発生器と、
を備え、
前記ガス発生器が、
開口可能な蓋部を設けて前記膨張用ガスを貯留する本体部と、
前記蓋部の開口時に、前記本体部内の膨張用ガスを前記エアバッグのガス流入側部位に吐出する流出口を有したガス吐出部と、
を備えて構成されるとともに、
前記ガス吐出部に、前記蓋部を開口可能な開口手段が配設され、
前記開口手段が、
前記蓋部に挿入させて前記蓋部を開口させる孔開けピンと、
該孔開けピンを前記蓋部に挿入させるように移動させる移動手段と、を備えて構成されるエアバッグ装置であって、
前記移動手段が、
挿入前位置から前記蓋部への挿入位置まで前記孔開けピンを移動させるように押圧するばねと、
挿入前位置で前記孔開けピンを待機させるように、前記ばねの先端側を係止する係止部材と、
該係止部材を、前記ばねの先端側の係止位置から係止解除位置にずらすスライド機構と、
を備え、
前記スライド機構が、
作動時に駆動力を発揮する駆動源と、
前記係止部材と前記駆動源とに連結されて、前記駆動源の駆動力により、前記係止部材を係止解除位置にずらす連結部材と、
を備えて構成され、
前記ガス吐出部が、前記流出口を有して、前記孔開けピン、前記ばね、前記ガス発生器の前記蓋部、及び、前記係止部材における前記ばね近傍の部位、の周囲を覆って、開口時の前記蓋部からの前記膨張用ガスを前記流出口から前記エアバッグの前記ガス流入側部位へ流出可能なハウジング、を備えて構成され、
前記駆動源と前記連結部材とが、前記ハウジング内における前記蓋部から前記流出口まで流れる前記膨張用ガスの流路と区画された領域の前記ガス吐出部に配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置では、作動時、スライド機構の駆動源の駆動力が連結部材に作用されて、連結部材が、係止位置から係止解除位置に係止部材をずらすこととなり、移動手段のばねが、係止部材の係止を解除され、蓋部を孔開けするように、孔開けピンを、挿入前位置から挿入位置に、押圧して、蓋部が開口することから、ガス発生器の本体部内の膨張用ガスが、蓋部からガス吐出部のハウジング内に流入し、そして、ハウジングの流出口からエアバッグのガス流入側部位に流入して、エアバッグが膨張する。この時、ガス発生器の蓋部からエアバッグの流入側部位までは、孔開けピン、ばね、及び、係止部材のばね近傍部位が、ガス吐出部のハウジングに周囲を覆われ、スライド機構の駆動源や係止部材をずれ移動させる連結部材は、ハウジング内における膨張用ガスの流路と区画された領域に配設されており、ガス発生器の膨張用ガスの流路中に配設されていないことから、仮に、駆動源に、火薬等のパイロテクニックを利用しても、作動時の火炎が、エアバッグ内に流入することが防止される。勿論、駆動源に、可逆的に動作するモータやソレノイド等のアクチュエータや重力を利用する構成とすれば、作動時に、エアバッグ側に火炎が進入する事態は、全く、生じない。
【0008】
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、孔開けピンを利用してガス発生器からの膨張用ガスをエアバッグに流入させる構成としても、熱によるエアバッグのダメージを抑制できる。
【0009】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、前記駆動源が、可逆的に動作可能として、作動信号により駆動されるアクチュエータから構成されていてもよい。
【0010】
このような構成では、火薬を利用するパイロテクニックでなく、モータやソレノイド等の可逆動作可能なアクチュエータにより、作動時、連結部材が、係止部材をずれ移動させることができる。そして、アクチュエータを、作動前の状態に復帰させることも可能であり、ガス発生器の本体部を交換すれば、他のエアバッグや、ガス吐出部の孔開けピン、係止部材、連結部材等は、再利用することができる。
【0011】
この場合、前記アクチュエータは、作動タイミングを検知可能なセンサからの信号を入力した制御装置に作動を制御されるように、構成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、作動タイミングを的確に判断できることから、適切に、エアバッグ装置を作動させることができる。
【0013】
そしてまた、本発明に係るエアバッグ装置では、前記前記駆動源が、揺動する錘の運動エネルギーとして、前記連結部材が前記錘に連結されていてもよい。
【0014】
このような構成では、エアバッグ装置が、転倒時の急激な移動停止に伴なって慣性力を強く作用されると、錘が大きく揺動して、連結部材が、係止部材を係止解除位置までずれ移動させるように、動作し、係止部材による係止を解除されたばねが孔開けピンを押圧し、そして、孔開けピンが蓋部を開口させることから、本体部から膨張用ガスをエアバッグ側に流出させることができる。すなわち、このような構成では、駆動源を作動させるようなセンサや、センサの信号値によって電気的に作動させるアクチュエータを利用せずに、エアバッグを膨張させることができる。
【0015】
また、本発明に係るエアバッグ装置では、前記エアバッグと前記ガス発生器とが、保護対象者に装着可能な保持体に、保持されて、着用エアバッグ装置として構成されていることが望ましい。
【0016】
このような構成では、作動時、エアバッグ内に火炎が侵入せず、仮に、エアバッグが損傷しても、火炎による不具合を、保護対象者に与えない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る第1実施形態のエアバッグ装置の使用状態を示す概略正面図と概略背面図である。
図2】第1実施形態のエアバッグ装置を平らに展開した状態の背面図である。
図3】第1実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図であり、図2のIII-III部位に対応する。
図4】第1実施形態のエアバッグ装置のエアバッグを平らに展開させた正面図である。
図5】第1実施形態のエアバッグ装置の概略断面図であり、図7のV-V部位に対応する。
図6】第1実施形態のエアバッグ装置の概略断面図であり、図7のVI-VI部位に対応する。
図7】第1実施形態のエアバッグ装置の概略断面図であり、図6のVII-VII部位に対応する。
図8】第1実施形態のエアバッグ装置の概略断面図であり、図6のVIII-VIII部位に対応する。
図9】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時の概略断面図であり、図5に示す断面部位に対応する。
図10】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時の概略断面図であり、図6に示す断面部位に対応する。
図11】第2実施形態のエアバッグ装置の作動前の状態を示す概略断面図である。
図12】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時の状態を示す概略断面図である。
図13】第3実施形態のエアバッグ装置の作動前の状態を示す概略断面図である。
図14】第3実施形態のエアバッグ装置の作動時の状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のエアバッグ装置は、保護対象者(例えば、高齢者)1に装着して使用する着用エアバッグ装置10であり、図1~6に示すように、エアバッグ20、ガス発生器35、保護対象者1の転倒を検知するセンサ81を配設させてガス発生器35を作動させる作動制御装置80と、エアバッグ20、ガス発生器35、及び、作動制御装置80を保持するベルト型の保持体11と、を備えて構成されている。
【0019】
保持体11は、図1~3に示すように、保護対象者1の腰部2に巻付可能なベルトタイプとして構成され、左右両端に、締結具12としての鉤状の面状ファスナ12aとループ状の面状ファスナ12bをそれぞれ配設させて構成されている。保持体11は、エアバッグ20を覆うアウタカバー14としての機能を有し、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成される表側材14aと裏側材14bとの外周縁相互を縫合して形成されている。
【0020】
保持体11としてのアウタカバー14は、平らに展開した状態の上縁側に左右方向に延びる帯状の帯状部16と、帯状部16の左右方向の中央部16cの左右両側で下方へ延びる幅広部17,18と、を備えて構成されている。帯状部16の左右の端部16a,16bには、既述の面状ファスナ12a,12bが配設されている。
【0021】
エアバッグ20は、図1~4に示すように、左右両側に略長方形板状の保護膨張部23(L,R)を配設させるとともに、保護膨張部23L,23Rの上部側相互を連結する連通部22を配設させて構成されている。このエアバッグ20も、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成される表側材20aと裏側材20bとの外周縁相互を縫合して形成されている。保護膨張部23L,23Rは、膨張時に、保護対象者1の腰部2の側面2aを覆って、保護対象者1の保護対象部位である左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を覆うように配設されている。保護膨張部23L,23R内には、保護膨張部23L,23Rが所定の厚さを確保して板状に膨張できるように、表側材20aと裏側材20bとの離隔距離を規制するテザー31が配設されている。
【0022】
なお、大腿骨転子部3(L,R)付近は、保護対象者1が転倒して骨折等して損傷すると、治療等が長引くこととなるため、保護が必要な部位であり、エアバッグ20は、その部位を保護するように、保護膨張部23(L,R)を配設させている。
【0023】
エアバッグ20は、上縁側をアウタカバー14の上縁側に共縫いして、保持体11としてのアウタカバー14に保持され、左右の保護膨張部23L,23Rが、幅広部17,18内に収納され、連通部22が、帯状部16の中央部16c内に収納されるように配設されている。そして、連通部22の表側材20aに、図4,6~8に示すように、膨張用ガスGを流入させる流入口27を開口させている。流入口27付近は、膨張用ガスGのガス流入側部位25として、ガス発生器35の後述するガス吐出部42の取付部位とし、4箇所に取付孔25aを開口させている。また、表側材20aには、ガス発生器35の後述する本体部37の外表面側を覆うカバー布29が縫着されている。
【0024】
ガス発生器35は、図2,4~10に示すように、炭酸ガス等からなる膨張用ガスGを圧縮して貯留してなる本体部37と、本体部37内の膨張用ガスGをエアバッグ20のガス流入側部位25に吐出する流出口47を有したガス吐出部42と、を備えて構成されている。
【0025】
本体部37は、金属製のボンベに膨張用ガスGを封入して構成されており、ボンベの先端には、開口時に膨張用ガスGを吐出可能な先細り状の蓋部38が、配設されており、蓋部38の先端には、封止板部39が配設されて、本体部37内に、膨張用ガスGが封入されている。封止板部39は、後述する孔開けピン61の先端61aを挿入させて、開口40(図9,10参照)を形成可能な板厚として、配設されている。また、小径の円筒状の蓋部38には、外周面に、雄ねじ38aが螺刻されている。
【0026】
ガス吐出部42は、エアバッグ20のガス流入側部位25付近で、表側材20aの表面側に配設される表側材42aと、表側材20aの裏面側に配設される裏側材42bと、を備えて構成されている。表側材42aと裏側材42bとは、ガス流入側部位25に設けられた取付孔25aを貫通するボルト58とナット59とにより、ガス流入側部位25を挟持して、エアバッグ20に取り付けられることなる。
【0027】
また、ガス吐出部42の表側材42a側には、蓋部38を開口可能な開口手段60が配設されている。開口手段60は、蓋部38の封止板部39に挿入させて蓋部38を開口させる孔開けピン61と、孔開けピン61を蓋部38に挿入させるように移動させる移動手段65と、を備えて構成されている。
【0028】
移動手段65は、挿入前位置から蓋部38への挿入位置まで孔開けピン61を移動させるように押圧するばね66と、挿入前位置で孔開けピン61を待機させるように、ばね66の先端66a側を係止する係止部材68と、係止部材68を、ばね66の先端66a側の係止位置FPから係止解除位置RPにずらすスライド機構70と、を備えて構成されている。
【0029】
スライド機構70は、作動時に駆動力を発揮する駆動源71と、係止部材68と駆動源71とに連結されて、駆動源71の駆動力により、係止部材68を係止解除位置RPにずらす連結部材78と、を備えて構成されている。
【0030】
第1実施形態の場合、孔開けピン61は、先端61aを尖らせた円錐形状として、元部61b側に、外周面に沿った環状の係止溝62を配設させている。係止部材68は、帯状の金属材として、先端68aを係止溝62に挿入させた位置を係止位置FPとし(図5,7参照)、係止溝62から離脱した位置を係止解除位置RPとしている(図7,9参照)。連結部材78は、ワイヤから形成されて、先端78aを係止部材68の元部68bに結合させ、元部78b側を駆動源71としてのモータからなるアクチュエータ72の駆動軸72aに巻き掛けている。
【0031】
そして、第1実施形態のガス吐出部42は、表側材42aが、鋼やアルミニウム等の金属材からなって、孔開けピン61やばね66の周囲を覆うハウジング43から構成され、裏側材42bが、鋼やアルミニウム等の金属材からなる当板材55、から構成されている。
【0032】
ハウジング43は、左右方向に沿って貫通する貫通孔45を有した筒状部44と、筒状部44のエアバッグ20側でガス流入側部位25に圧接される平板状の取付板部53と、から構成されている。
【0033】
筒状部44には、貫通孔45の右端側の内周面に、本体部37の蓋部38の雄ねじ38aに対応する雌ねじ50が螺刻されている。本体部37は、蓋部38の雄ねじ38aを雌ねじ50に螺合させて、筒状部44に組み付けられている。筒状部44の左端側の外周には、雄ねじ51が螺刻されて、キャップ52が筒状部44の左端側に取り付けられている。貫通孔45内には、キャップ52がばね座となって、圧縮コイルばねからなるばね66の元部66b側が支持され、ばね66の先端66aは、孔開けピン61の元部61bに結合されている。孔開けピン61とばね66とは、貫通孔45内を本体部37の蓋部38側付近まで移動可能に配設されている。そして、筒状部44には、ばね66の先端66a付近に、貫通孔45と直交方向に貫通する組付孔48が配設され、組付孔48内には、係止部材68が摺動可能に嵌挿されている。そして、組付孔48内に挿入された係止部材68の先端68aが、孔開けピン61の係止溝62に挿入された係止位置FPへの配置状態では、孔開けピン61は、ばね66の付勢力を受けた状態で、係止部材68に係止されて、蓋部38に挿入される前段階の位置で待機され、そして、係止部材68の先端68aが、係止溝62から引き抜かれた係止解除位置RPにずれれば、ばね66の係止が解除されて、孔開けピン61が、ばね66の付勢力を受けて、蓋部38に当たるように、移動する。なお、係止部材68は、係止解除位置RPに配置された際、組付孔48からの抜け防止のため、取付板部53に配設されたストッパ69に、元部68b側が当接して位置規制されることとなる。
【0034】
そしてまた、筒状部44には、組み付けた本体部37の蓋部38の封止板部39から僅かに左方側に外れた位置に、貫通孔45と直交方向に貫通して、エアバッグ20側に延びる流出口47が配設されている。そのため、孔開けピン61が、ばね66の付勢力を受けて、蓋部38に当たるように、移動して、蓋部38の封止板部39に先端61aを差し込ませて、開口40を形成すれば(図9,10参照)、本体部37内の膨張用ガスGは、開口40から貫通孔45内に吐出され、さらに、流出口47から流入口27を経て、エアバッグ20内に流入することとなる。なお、貫通孔45内では、気密性が確保されており、開口40から貫通孔45内に吐出された膨張用ガスGは、漏れることなく、貫通孔45内の流路46を経て、流出口47から流入口27側に流れることとなる。
【0035】
また、駆動源71としてのモータ72は、ハウジング43の取付板部53に取り付けられ、連結部材78は、元部78bをモータ72の駆動軸72aに巻き掛けて、先端78aを筒状部44から突出した係止部材68の元部68bに結合させている。そのため、駆動源71としてのモータ72と連結部材78とは、ハウジング43内における蓋部38から流出口47まで流れる膨張用ガスGの流路46と区画された領域、すなわち、貫通孔45の周囲の周壁44aに区画された状態として、ガス吐出部42に配設されている。
【0036】
ガス吐出部42は、既述したように、エアバッグ20の表側材20aの表面側にハウジング43側の取付板部53を配置させ、当板材55を表側材20aの裏面側に配置させ、さらに、ボルト58を、取付板部53の取付孔53aとガス流入側部位25の取付孔25aとを貫通させて、当板材55の取付孔55a内に埋設させたナット59に締結すれば、エアバッグ20の表側材20aにおける流入口27周縁のガス流入側部位25に、取り付けられることとなる。
【0037】
なお、当板材55は、流入口27からエアバッグ20内に流入しようとする膨張用ガスGを左右の保護膨張部23L,23R側に分岐して流すように、左右両側に延びるように、凹溝からなる流路56が配設されている(図6~8参照)。
【0038】
また、着用エアバッグ装置10の作動制御装置80は、アウタカバー14に取付られ、上下前後左右の3軸周りの角速度を検知可能な角速度センサと、上下前後左右の3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有してなるセンサ81を備えるとともに、センサ18からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を行っていると検知されると、アクチュエータとしてのモータ72を作動させるように構成されている。なお、具体的には、作動制御装置80は、センサ18からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を開始していると、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えて、判定手段の判定に基づいて、保護対象者1が転倒したと検出し、そして、モータ72を作動させる。また、作動制御装置80には、センサ81やモータ72の作動用に、図示しない電池等からなる電源も内蔵されている。
【0039】
第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、締結具12を利用して、保持体11を保護対象者1の腰部2に装着し、その後、保護対象者1が転倒等すると、センサ81からの信号を入力していた作動制御装置80が、ガス発生器35のガス吐出部42におけるスライド機構70の駆動源71としてのモータ72、を駆動させる。すると、モータ72の駆動軸72aの回転駆動力が連結部材78の元部78b側に作用されて、元部78b側が巻き取られ、連結部材78が、係止位置FPから係止解除位置RPに係止部材68をずらすこととなり(図5,9参照)、移動手段65のばね66が、係止部材68の係止を解除され、蓋部38を孔開けするように、孔開けピン61を、挿入前位置から挿入位置に、押圧して、蓋部38が開口することから(図9,10参照)、ガス発生器35の本体部37内の膨張用ガスGが、蓋部38からガス吐出部42のハウジング43内に流入し、そして、ハウジング43の流出口47からエアバッグ20のガス流入側部位25に流入して、エアバッグ20が膨張する。そして、ガス発生器35の蓋部38からエアバッグ20の流入側部位25までは、孔開けピン61、ばね66、及び、係止部材68のばね66近傍部位の先端68aが、ガス吐出部42のハウジング43に周囲を覆われ、スライド機構70の駆動源71としてのモータ72や係止部材68をずれ移動させる連結部材78は、ハウジング43内における膨張用ガスGの流路46と、周壁44aにより区画された領域に配設されており、ガス発生器35の膨張用ガスGの流路46中に配設されていないことから、仮に、駆動源71に、火薬等のパイロテクニックを利用しても、作動時の火炎が、エアバッグ内に流入することが防止される。勿論、駆動源71に、可逆的に動作するモータ72を利用する構成とすれば、作動時に、エアバッグ20側に火炎が進入する事態は、全く、生じない。
【0040】
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置10では、孔開けピン61を利用してガス発生器35からの膨張用ガスGをエアバッグ20に流入させる構成としても、熱によるエアバッグ20のダメージを抑制できる。
【0041】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置10では、駆動源71が、可逆的に動作可能として、作動信号により駆動されるアクチュエータとしてのモータ72から構成され、モータ72の駆動部(駆動軸)72aに、連結部材78の元部78bが巻き掛けられて、連結されている。
【0042】
このような構成では、火薬を利用するパイロテクニックでなく、可逆動作可能なアクチュエータとしてのモータ72により、作動時、連結部材78が、係止部材68をずれ移動させることができる。そして、駆動部(駆動軸)72aを、作動前の状態に復帰させることも可能であり、ガス発生器35の本体部37を交換すれば、他のエアバッグ20や、ガス吐出部42の孔開けピン61、係止部材68、連結部材78等は、再利用することができる。
【0043】
この場合、第1実施形態のアクチュエータ72は、保護対象者1の転倒による作動タイミングを検知可能なセンサ81からの信号を入力した制御装置80に作動を制御されるように、構成されている。
【0044】
そのため、第1実施形態では、保護対象者1の転倒という作動タイミングを的確に判断できることから、適切に、エアバッグ装置10を作動させることができる。
【0045】
なお、第1実施形態では、アクチュエータ72として、駆動部としての駆動軸72aに連結部材78の元部78bを巻き掛けて、作動時、駆動軸72aを回転駆動させて、連結部材78を引張り、係止部材68をずれ移動させるモータ72を例示した。しかし、第2実施形態のスライド機構70Aのように、アクチュエータ73として、プランジャ73aを出し入れ駆動させるソレノイド73を駆動源としてもよい。このソレノイド73は、プランジャ73aを連結部材78と兼用としており、作動時、プランジャ73a、すなわち、連結部材78、を引き込めるように動作し、連結部材78に連結させた係止部材68を係止位置FPから係止解除位置RPに移動させることとなる。
【0046】
そのため、この第2実施形態のエアバッグ装置10Aでも、図11,12に示すように、図示しないセンサ81の保護対象者1の転倒検知により、図示しない作動制御装置80がソレノイド73に通電し、アクチュエータとしてのソレノイド73が、連結部材78兼用のプランジャ73aを引き込めるように動作し、その連結部材78の牽引により、係止部材68が係止位置FPから係止解除位置RPに配置されて、ばね66の付勢力を開放して、ばね66が孔開けピン61を押圧することから、蓋部38の封止板部39が孔開けピン61により孔開けされて、開口40が形成され、本体部37内の膨張用ガスGが、ハウジング43内の流路46を経て、エアバッグ20内に流れて、エアバッグ20が膨張することとなる。
【0047】
この第2実施形態でも、第1実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0048】
なお、この第2実施形態は、駆動源71に、連結部材78兼用のプランジャ73aを駆動させるソレノイド73を使用している点が第1実施形態と異なっているだけで、他の本体部37やガス吐出部42、エアバッグ20、保持体11等は、第1実施形態と同様の構成としている。
【0049】
また、図13,14に示す第3実施形態のエアバッグ装置10Bのように、スライド機構70Bとしての駆動源71を、揺動する錘74の運動エネルギーとして、連結部材78を錘74に連結させる構成としてもよい。
【0050】
この第3実施形態では、ガス吐出部42の係止部材68に連結されるワイヤから形成される連結部材78の元部78b側が、錘74に連結されている。この錘74は、保護対象者1が、保護対象部位としての大腿骨転子部3(L,R)付近を損傷させるような転倒時、急激な移動停止に伴なって、慣性力が強く作用されることとなり、その際、錘74が大きく揺動して、連結部材78が、係止部材68を係止位置FPから係止解除位置RPまでずれ移動させるように、引っ張るように動作する。
【0051】
なお、第3実施形態では、錘74は、アウタカバー14内で周囲の部材と干渉しないように、カバー76に覆われて、自由に揺動可能としており、そして、連結部材78の元部78b側が、テーパ管状のガイド75内を挿通している。そのため、錘74が、強く揺動されると、連結部材78の元部78b側が、その錘74の揺動に伴なって揺動し、そして、ガイド75の縁75aに引っ掛かり、錘74が揺動時の回転半径を小さくして反転するように回転して、連結部材78を強く引っ張ることとなり、そのため、連結部材78が、係止部材68を係止位置FPから係止解除位置RPまでずれ移動させるように、引っ張ることとなる。
【0052】
そして、係止部材68が係止位置FPから係止解除位置RPに移動して、ばね66が、解放されて、孔開けピン61を押圧し、蓋部38の封止板部39が孔開けピン61により孔開けされて、開口40が形成され、本体部37内の膨張用ガスGが、ハウジング43内の流路46を経て、エアバッグ20内に流れて、エアバッグ20が膨張することとなる。
【0053】
この第3実施形態でも、第1,2実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0054】
そしてさらに、この第3実施形態では、駆動源71に錘74の慣性力に伴なう運動エネルギーを利用することから、駆動源71を作動させるようなセンサ81や制御装置80、さらに、制御装置80によって作動させるアクチュエータ72,73、を利用せずに、エアバッグ20を膨張させることができる。
【0055】
なお、この第3実施形態は、駆動源71に、錘74を使用している点が第1実施形態と異なり、さらに、センサ81を有して作動制御装置80を使用しない点が異なっているだけで、他の本体部37やガス吐出部42、エアバッグ20、保持体11等は、第1,2実施形態と同様の構成としている。
【0056】
また、各実施形態のエアバッグ装置10,10A,10Bでは、エアバッグ20と火薬を使用せずに膨張用ガスGを発生可能なガス発生器35とが、保護対象者1に装着可能な保持体11に、保持されて、着用エアバッグ装置として構成されている。
【0057】
そのため、各エアバッグ装置10,10A,10Bでは、作動時、エアバッグ20内に火炎が侵入せず、仮に、エアバッグ20が損傷しても、火炎による不具合を、保護対象者1に与えない。
【0058】
なお、各実施形態では、エアバッグ20等を保持する保持体11として、ベルト型を例示したが、エアバッグ20の保護膨張部23L,23Rが保護対象者1の大腿骨転子部3(L,R)付近を覆うように配設されていれば、ベスト型、あるいは、ジャケット型の保持体として、エアバッグ20やガス発生器35を保持するようにしてもよい。
【0059】
また、各実施形態では、ガス発生器35をエアバッグ20における保護対象者1から離れた表側材20a側に取り付けた場合を例示したが、ガス発生器35は、エアバッグ20における保護対象者1に近い裏側材20b側に取り付けてもよい。
【0060】
さらに、第1~3実施形態のガス発生器35のように、火薬式のパイロテクニックを利用せずに、膨張用ガスGをエアバッグ20側に供給できるエアバッグ装置であれば、着用エアバッグ装置に限らず、ドローンに設けて、ドローンの落下時に落下先の人や家屋を保護するためのドローン用エアバッグ装置等に、本発明を利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10,10A,10B…(着用)エアバッグ装置、20…エアバッグ、25…ガス流入側部位、35…ガス発生器、37…本体部、38…蓋部、40…開口、
42…ガス吐出部、43…ハウジング、47…流出口、60…開口手段、61…孔開けピン、62…係止溝、65…移動手段、66…ばね、68…係止部材、70,70A,70B…スライド機構、71…駆動源、72…(アクチュエータ)モータ、72a…(駆動部)駆動軸、73…(アクチュエータ)ソレノイド、73a…(連結部材兼用駆動部)プランジャ、74…錘、78…連結部材、80…作動制御装置、81…センサ、
FP…係止位置、RP…係止解除位置、G…膨張用ガス。
図1
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