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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090501
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】凍結ボックス
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/00 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
F25D3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202937
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
【テーマコード(参考)】
3L044
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA04
3L044CA04
3L044DC03
3L044KA04
(57)【要約】
【課題】短時間で対象物を凍結させ、かつ、凍結状態を長時間維持することのできる凍結ボックスを提供すること。
【解決手段】凍結ボックス1は、凹部211を有する本体21と、凹部211の開口を覆う被覆膜22と、凹部211と被覆膜22とで画成された空間S2を第1領域S21および第2領域S22に仕切る収容部24と、第1領域S21に配置された第1溶液231および第2領域S22に配置され第1溶液231よりも凝固点が高い第2溶液232を含む冷却媒体23と、を有する容器2を備える。そして、第1溶液231および第2溶液232のうち第2溶液232だけが凝固するように冷却媒体23を冷却した状態で、被覆膜23に食品Fを載置することにより、食品Fを凍結させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する本体と、
前記凹部の開口を覆う被覆膜と、
前記凹部と前記被覆膜とで画成された空間を第1領域および第2領域に仕切る仕切部と、
前記第1領域に配置された第1溶液および前記第2領域に配置され前記第1溶液よりも凝固点が高い第2溶液を含む冷却媒体と、を有する容器を備えることを特徴とする凍結ボックス。
【請求項2】
前記第1溶液および前記第2溶液のうち前記第2溶液だけが凝固するように前記冷却媒体を冷却した状態で、前記被覆膜に凍結対象物を載置することにより、前記凍結対象物を凍結させる請求項1に記載の凍結ボックス。
【請求項3】
前記容器を一対し、
一方の前記容器が有する前記被覆膜と他方の前記容器が有する前記被覆膜とで前記凍結対象物を挟み込む請求項2に記載の凍結ボックス。
【請求項4】
前記第2領域は、前記凹部の底面側に位置し、
前記第1領域は、前記第2領域と前記被覆膜との間に位置している請求項1から3のいずれか1項に記載の凍結ボックス。
【請求項5】
前記第2領域は、前記第1領域中に分散して配置されている請求項1から3のいずれか1項に記載の凍結ボックス。
【請求項6】
前記被覆膜は、可撓性を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の凍結ボックス。
【請求項7】
前記第1溶液の凝固点は、-25℃以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の凍結ボックス。
【請求項8】
前記第1溶液の凝固点は、-7℃以下である請求項1から7のいずれか1項に記載の凍結ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、引用文献1には、凍結対象物を短時間で凍結させることのできる凍結ボックスが記載されている。このような凍結ボックスは、容器と蓋とで凍結対象物を挟み込む構造となっている。また、容器および蓋は、それぞれ、凹部を有する本体と、凹部内に配置された液状またはゲル状の冷媒と、冷媒が流出しないように凹部の開口を覆う被覆膜と、を有し、これらで凍結対象物を挟み込んだ状態では、両被覆膜が凍結対象物の表面に密着するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-197260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、このような凍結ボックスを冷凍庫に収容して用いるが、冷凍庫に収容せずに用いた場合、すなわち、冷媒を冷却した状態の凍結ボックスを冷凍庫外に置き、この凍結ボックスに凍結対象物を収容した場合、冷媒の熱量が不足し、凍結対象物を短時間で凍結させることができないか、凍結対象物を短時間で凍結させることができても、そこから凍結状態を長時間維持することが困難である。
【0005】
本発明の目的は、短時間で凍結対象物を凍結させ、かつ、凍結状態を長時間維持することのできる凍結ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) 凹部を有する本体と、
前記凹部の開口を覆う被覆膜と、
前記凹部と前記被覆膜とで画成された空間を第1領域および第2領域に仕切る仕切部と、
前記第1領域に配置された第1溶液および前記第2領域に配置され前記第1溶液よりも凝固点が高い第2溶液を含む冷却媒体と、を有する容器を備えることを特徴とする凍結ボックス。
【0008】
(2) 前記第1溶液および前記第2溶液のうち前記第2溶液だけが凝固するように前記冷却媒体を冷却した状態で、前記被覆膜に凍結対象物を載置することにより、前記凍結対象物を凍結させる上記(1)に記載の凍結ボックス。
【0009】
(3) 前記容器を一対し、
一方の前記容器が有する前記被覆膜と他方の前記容器が有する前記被覆膜とで前記凍結対象物を挟み込む上記(2)に記載の凍結ボックス。
【0010】
(4) 前記第2領域は、前記凹部の底面側に位置し、
前記第1領域は、前記第2領域と前記被覆膜との間に位置している上記(1)から(3)のいずれかに記載の凍結ボックス。
【0011】
(5) 前記第2領域は、前記第1領域中に分散して配置されている上記(1)から(3)のいずれかに記載の凍結ボックス。
【0012】
(6) 前記被覆膜は、可撓性を有する上記(1)から(5)のいずれかに記載の凍結ボックス。
【0013】
(7) 前記第1溶液の凝固点は、-25℃以下である上記(1)から(6)のいずれかに記載の凍結ボックス。
【0014】
(8) 前記第1溶液の凝固点は、-7℃以下である上記(1)から(7)のいずれかに記載の凍結ボックス。
【発明の効果】
【0015】
本発明の凍結ボックスによれば、第1溶液および第2溶液のうち第2溶液だけが凝固するように冷却媒体を冷却した状態で被覆膜に凍結対象物を載置することにより凍結対象物を凍結させるという用い方が可能となる。このような用い方によれば、第2溶液によって前記第1溶液を長時間低い温度に維持することができる。そのため、凍結対象物をより短時間で凍結させることができ、さらに、凍結状態をより長時間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る凍結ボックスを示す断面図である。
図2図1に示す凍結ボックスに食品を配置した状態を示す断面図である。
図3図1に示す凍結ボックスの変形例を示す断面図である。
図4図3に示す凍結ボックスに食品を配置した状態を示す断面図である。
図5図1に示す凍結ボックスの変形例を示す断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る凍結ボックスを示す断面図である。
図7図6に示す凍結ボックスの変形例を示す断面図である。
図8図6に示す凍結ボックスの変形例を示す断面図である。
図9図6に示す凍結ボックスの変形例を示す断面図である。
図10図6に示す凍結ボックスの変形例を示す断面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る凍結ボックスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の凍結ボックスの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1および図2に示す凍結ボックス1は、凍結対象物である食品Fを凍結(冷凍)するのに用いられる。食品Fとしては、特に限定されず、例えば、魚、海老、イカ、タコ、貝類等の魚介類、イチゴ、リンゴ、バナナ、みかん、桃、ぶどう等の果物、キャベツ、レタス、キュウリ、トマト、なす、にんじん等の野菜、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉等の食肉などの生鮮食品、これら生鮮食品を加工(調理)した加工食品、小麦粉、米粉、蕎麦粉等の穀物の粉から作られた麺、飯(炊いた米)などを挙げることができる。また、凍結対象物としては、食品Fに限定されず、例えば、植物(生花、球根、種子)や、死体、各種臓器、血液、精子、卵子等如何なるものであってもよい。
【0019】
凍結ボックス1は、一対の容器2を有する。以下では、説明の便宜上、一方の容器を蓋3とする。容器2と蓋3とは、番4を介して開閉可能に連結されている。ただし、これに限定されず、容器2と蓋3は、連結されていなくてもよい。また、凍結ボックス1は、蓋3が閉じた状態を維持する図示しないロック機構を有する。当該ロック機構の構成としては、特に限定されない。また、ロック機構は、省略してもよい。
【0020】
容器2は、蓋3と対向する面である上面210に開口する凹部211を有する本体21と、凹部211の開口を覆うシート状の被覆膜22と、凹部211と被覆膜22とで画成された空間S2内に充填された冷却媒体23と、を有する。同様に、蓋3は、容器2と対向する面である下面310に開口する凹部311を有する本体31と、凹部311の開口を覆うシート状の被覆膜32と、凹部311と被覆膜32とで画成された空間S3内に充填された冷却媒体33と、を有する。このような凍結ボックス1は、容器2と蓋3との間に挟み込まれた食品Fを冷却媒体23、33によって凍結させる構成となっている。
【0021】
本体21、31は、それぞれ、例えば、シリコーン樹脂等の各種樹脂材料、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属材料で構成することができる。特に、本実施形態の本体21、31は、それぞれ、内部に断熱層212、312を有する断熱構造となっている。これにより、本体21、31を介した内外の熱交換が抑制される。そのため、エネルギーロスが低減され、冷却媒体23、33によって食品Fを効率的に冷却することができる。したがって、冷却媒体23、33によって食品Fをより短時間で凍結し、さらに、凍結状態をより長時間維持することができる。断熱層212、312としては特に限定されないが、例えば、多孔質ウレタンフォーム等の各種断熱材、空気層、真空層等とすることができる。
【0022】
被覆膜22は、シート状をなし、凹部211の開口を塞ぐようにして、本体21の上面210に接合されている。同様に、被覆膜32は、シート状をなし、凹部311の開口を塞ぐようにして、本体31の下面310に接合されている。被覆膜22、32は、水分不透過性を有する。これにより、空間S2、S3が液密的に封止され、空間S2、S3内に充填された冷却媒体23、33の漏出を防止することができる。そのため、冷却媒体23、33と食品Fとの接触が防止され、食品Fの衛生を確保することができる。なお、被覆膜22、32と本体21、31との接合方法は、特に限定されない。
【0023】
また、被覆膜22、32は、それぞれ、可撓性と伸縮性を有する。そのため、図2に示すように、容器2と蓋3との間に食品Fを挟み込むと、被覆膜22、32が食品Fの外形に倣って弾性変形する。したがって、食品Fの表面の広範囲、好ましくは全域にわたって被覆膜22、32が接触し、食品Fと被覆膜22、32との間に隙間(空気層からなる断熱層)が形成され難くなる。その結果、冷却媒体23、33によって食品Fを効率的に冷却することができる。したがって、冷却媒体23、33によって食品Fをより短時間で凍結し、さらに、凍結状態をより長時間維持することができる。
【0024】
被覆膜22、32の構成材料としては、それぞれ、上述した機能を有していれば特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料を主材料として用いることが好ましい。これにより、生体親和性に優れ、十分な可撓性と伸縮性を有する被覆膜22、32が簡単に得られる。なお、食品Fの熱を冷却媒体23、33が効率的に奪うために、被覆膜22、32は、その強度を保てる限りにおいてなるべく薄いことが好ましい。また、被覆膜22、32中に、例えば、金属、グラファイト、カーボンブラック、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ等の熱伝導性フィラーを含有させて、被覆膜22、32の熱伝導性を高めることも好ましい。
【0025】
また、図1に示すように、食品Fを挟み込んでいない状態で蓋3を閉じたとき、被覆膜22、32は、ほぼ全域において接触する。これにより、被覆膜22、32の間に隙間(空気層からなる断熱層)が形成されなくなると共に、容器2と蓋3の間に食品Fを挟み込んだときに、食品Fの表面のより広範囲、好ましくは全域に被覆膜22、32を接触させることができる。そのため、冷却媒体23、33によって食品Fを効率的に冷却することができる。したがって、冷却媒体23、33によって食品Fをより短時間で凍結し、さらに、凍結状態をより長時間維持することができる。
【0026】
ただし、これに限定されず、例えば、図3に示すように、食品Fを挟み込んでいない状態で蓋3を閉じたとき、被覆膜22、32が離間していてもよい。これにより、容器2と蓋3との間に食品Fを挟み込み、食品Fにより押圧された冷却媒体23、33が退避するスペースS4を被覆膜22、32の間に形成することができる。そのため、食品Fを挟み込んだときの冷却媒体23、33の過度な昇圧を防止することができ、昇圧による冷却媒体23、33の温度上昇や漏出を効果的に抑制することができる。
【0027】
この場合、図4に示すように、食品Fを挟み込んだ状態では、食品Fの周囲に位置する被覆膜22、32同士が接触することが好ましい。これにより、食品Fの表面のより広範囲、好ましくは全域に被覆膜22、32を接触させることができる。その結果、冷却媒体23、33によって食品Fをより短時間で凍結し、さらに、凍結状態をより長時間維持することができる。
【0028】
なお、被覆膜22、32の隙間の大きさは、特に限定されず、凍結ボックス1の容量や挟み込む食品Fの大きさによって適宜設定することができる。
【0029】
図1および図2に示すように、冷却媒体23は、凹部211と被覆膜22とで画成された液密な空間S2に充填されており、冷却媒体33は、凹部311と被覆膜32とで画成された液密な空間S3に充填されている。また、冷却媒体23、33は、空間S2、S3内に密に充填されている。ただし、これに限定されず、冷却媒体23、33は、空間S2、S3内に密に充填されていなくてもよい。
【0030】
冷却媒体23には、第1溶液231と、第1溶液231よりも凝固点が高い第2溶液232とが含まれている。空間S2内には仕切部としての袋状の収容部24が配置されており、収容部24によって、空間S2が収容部24外の第1領域S21と、収容部24内の第2領域S22とに仕切られている。そして、第1領域S21に第1溶液231が充填され、第2領域S22に第2溶液232が充填されている。これにより、第1溶液231および第2溶液232を互いに混ざり合わないように分離した状態で空間S2内に充填することができる。
【0031】
冷却媒体33についても同様である。冷却媒体33には、第1溶液331と、第1溶液331よりも凝固点が高い第2溶液332とが含まれている。空間S3内には仕切部としての袋状の収容部34が配置されており、収容部34によって、空間S3が収容部34外の第1領域S31と、収容部34内の第2領域S32とに仕切られている。そして、第1領域S31に第1溶液331が充填され、第2領域S32に第2溶液332が充填されている。これにより、第1溶液331および第2溶液332を互いに混ざり合わないように分離した状態で空間S3内に充填することができる。
【0032】
収容部24、34は、凹部211、311の底部側に偏って位置し、収容部24、34と被覆膜22、32との間に第1溶液231、331が充填されている。後述するように、凍結ボックス1は、第1溶液231、331が液体の状態、第2溶液232、332が固体の状態で使用される。そのため、第2溶液232、332と被覆膜22、32との間に液体の第1溶液231、331を充填することにより、被覆膜22、32の食品Fに倣った弾性変形が許容される。特に、本実施形態では、収容部24、34が凹部211、311に固定されており、収容部24、34の被覆膜22、32側への意図しない移動が防止されている。そのため、上述の効果を確実に発揮することができる。
【0033】
収容部24、34は、それぞれ、被覆膜22、32と同様に、可撓性と伸縮性を有する。これにより、例えば、凝固による第2溶液232、332の膨張を許容することができる。収容部24、34の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、被覆膜22、32と同様の材料を用いることができる。ただし、これに限定されず、収容部24、34は、それぞれ、硬質であってもよい。また、本実施形態では、仕切部として収容部24、34を用いているが、空間S2、S3を第1領域S21、S31と第2領域S22、S32とに仕切ることができれば、これに限定されず、例えば、図5に示すように、空間S2、S3を上下に仕切る仕切膜25、35を用いてもよい。
【0034】
以上のような構成の凍結ボックス1は、次のようにして使用する。まず、凍結ボックス1を冷却し、第1溶液231、331を液体のまま、第2溶液232、332だけを凝固させて固体(氷)とする。次に、被覆膜22上に食品Fを載置し、蓋3を閉じてロックすることにより、容器2と蓋3との間、より具体的には被覆膜22、32の間に食品Fを挟み込む。これにより、図2に示すように、冷却媒体23、33が被覆膜22、32を介して食品Fに密着し、食品Fの熱を奪う。その結果、食品Fが冷却されて、やがて凍結する。特に、本実施形態では、冷却媒体23、33によって食品Fをその両側から冷却するため、食品Fをムラなく短時間で冷却し、凍結させることができる。
【0035】
食品Fから熱を奪って昇温した第1溶液231、331は、第2溶液232、332によって冷却される。前述したように、第2溶液232、332は、固体である。そのため、第2溶液232、332は、融点まで昇温しながら、第1溶液231、331から熱を奪って冷却し続ける(顕熱)。そして、融点まで昇温した後、第2溶液232、332は、融解熱を第1溶液231、331から奪って液体となるまでは昇温せず、第1溶液231、331を冷却し続ける(潜熱)。固体を液体とするための融解熱は、液体の比熱と比べて非常に高いため、第2溶液232、332を固体にして用いることにより、第1溶液231、331をより長時間低い温度に保ち続けることができる。
【0036】
このように、凍結ボックス1によれば、固体とした第2溶液232、332によって第1溶液231、331を長時間低い温度に保つことができる。そのため、食品Fをより短時間で凍結させることができ、さらには、その凍結状態をより長時間維持することができる。
【0037】
特に、本実施形態では、被覆膜22、32と第2溶液232、332との間に第1溶液231、331が位置している。そのため、被覆膜22、32付近に位置し、食品Fの熱を奪って温められた部分と、第2溶液232、332付近に位置し、第2溶液232、332によって冷やされた部分との温度差によって、第1溶液231、331に対流が生じる。そのため、第1溶液231、331を第2溶液232、332によってムラなく効率的に冷却することができる。そのため、食品Fをより短時間で凍結させることができ、さらには、凍結状態をより長時間維持することができる。また、食品Fの凍結状態がより安定する。
【0038】
第1溶液231、331の凝固点としては、特に限定されないが、例えば、-25℃以下であることが好ましく、-30℃以下であることがより好ましい。これにより、例えば、庫内が-20℃~-18℃程度である一般的な家庭用冷凍庫はもちろんのこと、庫内が-30℃~-20℃程度である一般的な業務用冷凍庫を用いて凍結ボックスを冷却しても、第1溶液231、331が凝固し難くなる。つまり、第1溶液231、331を液体のまま維持することができる。そのため、使い勝手のよい凍結ボックス1となる。また、第1溶液231、331を液体のままで十分に低い温度まで冷やすことができる。そのため、食品Fの外形に倣った被覆膜22、32の弾性変形を許容しつつ、食品Fをより短時間で凍結させることができる。
【0039】
特に、第1溶液231、331の凝固点を-25℃以下とすることにより、第1溶液231、331を液体のままで、最大氷結晶生成帯よりも十分に低い温度まで冷却することができる。これにより、食品Fを冷却して凍結させる過程において食品Fが最大氷結晶生成帯に留まる時間を短くすることができる。そのため、生成される氷結晶を小さくし、また、凍結濃縮による化学反応の促進を効果的に避けることができる。その結果、食品Fのダメージが抑制され、食品Fの品質の低下を抑制することができる。前記「最大氷結晶生成帯」とは、食品を凍結する過程で、氷結晶が大きくなり易い温度帯のことで、一般的には食品が凍り始める-1℃~-5℃までの温度帯を指す。
【0040】
一方、第2溶液232、332の凝固点としては、第1溶液231、331の凝固点よりも高ければ特に限定されないが、最大氷結晶生成帯よりも低いことが好ましい。具体的には、-15℃以上-7℃以下であることが好ましい。つまり、第2溶液232、332は、-15℃以上-7℃以下において凝固することが好ましい。これにより、第2溶液232、332によって第1溶液231、331をより長時間、最大氷結晶生成帯よりも低い温度に維持することができる。また、例えば、庫内が-30℃~-20℃程度である業務用冷凍庫はもちろんのこと、庫内が-20℃~-18℃程度である一般的な家庭用冷凍庫によっても、第2溶液232、332を凝固させることができる。そのため、利便性の高い凍結ボックス1となる。
【0041】
ここで、第1溶液231の体積に対して第2溶液232の体積が大きすぎると、食品Fの形状によっては、被覆膜22、32の食品Fに倣った弾性変形が阻害されるおそれがある。反対に、第1溶液231の体積に対して第2溶液232の体積が小さすぎると、第2溶液232の充填量によっては、第2溶液232による第1溶液231の冷却性能が低下するおそれがある。そこで、特に限定されないが、例えば、第1溶液231の体積:第2溶液232の体積が、30:70~70:30であることが好ましく、40:60~60:40であることがより好ましく、50:50であることがさらに好ましい。これにより、第1溶液231と第2溶液232とがバランスよく充填され、上述のような問題が発生し難くなる。第1溶液331と第2溶液332との体積比についても同様である。
【0042】
第1溶液231、331および第2溶液232、332としては、特に限定されないが、例えば、植物油、鉱物油、化学合成油等の各種油、エタノールやエチレングリコール等の各種アルコール、アルコールを混入した水、アンモニア水、塩水、塩化カルシウム水溶液、グルコース等の各種糖が溶解した水溶液、これらに凝固点降下剤を混入したもの等を用いることができる。ただし、これらの中でも、生体に対する安全性を有するものを用いることが好ましく、この観点から本実施形態では、第1溶液231、331として塩化カルシウム水溶液を用い、第2溶液232、332として塩水を用いている。また、第1溶液231、331および第2溶液232、332は、上述の溶液にゲル化剤(増粘安定剤)を混入したゲル状であってもよい。
【0043】
<第2実施形態>
本実施形態の凍結ボックス1は、収容部24、34の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0044】
図6に示すように、本実施形態の凍結ボックス1は、第2溶液232が充填された複数の収容部24を有する。そして、これら複数の収容部24は、第1溶液231中に分散して配置されている。つまり、本実施形態では、第1領域S21内に複数の第2領域S22が分散して配置されている。このように、第1溶液231中に第2溶液232を分散して配置することにより、第1溶液231を第2溶液232によってムラなく均一に冷却することができる。
【0045】
同様に、本実施形態の凍結ボックス1は、第2溶液332が充填された複数の収容部34を有する。そして、これら複数の収容部34は、第1溶液331中に分散して配置されている。つまり、本実施形態では、第1領域S31内に複数の第2領域S32が分散して配置されている。このように、第1溶液331中に第2溶液332を分散して配置することにより、第1溶液331を第2溶液332によってムラなく均一に冷却することができる。
【0046】
収容部24、34としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種樹脂材料、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属材料に代表される硬質な材料や、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料等に代表される軟質で伸縮性のある材料を用いることができる。本実施形態では、収容部24、34は、ポリプロピレンで構成されている。
【0047】
なお、本実施形態では、複数の収容部24が第1溶液231中を自由に移動できるようになっているが、これに限定されない。例えば、図7に示すように、各収容部24がアンカー部材26によって他の収容部24や凹部211の内壁に接続されていてもよい。これにより、第1溶液231中での収容部24の移動が規制され、複数の収容部24が第1溶液231中に分散した状態を維持しやすくなる。このことは、収容部34についても同様である。
【0048】
アンカー部材26としては、特に限定されないが、例えば、柔軟で伸縮性を有する線状、紐状の部材であることが好ましい。線状、紐状のアンカー部材26を用いることにより、アンカー部材26の体積を十分に小さくすることができ、第1溶液231の体積減少を抑制することができる。また、第1溶液231の対流を阻害し難くもなる。また、柔軟で伸縮性のあるアンカー部材26を用いることにより、食品Fを挟み込んだ際の被覆膜22の弾性変形に応じて収容部24が第1溶液231中を移動できるようになり、被覆膜22の弾性変形が阻害されない。
【0049】
また、本実施形態では、収容部24が第1溶液231中を自由に移動できるため、第1溶液231の液面に浮上するおそれがある。収容部24が第1溶液231の液面に浮上すると、収容部24と第1溶液231との接触面積が減少し、第2溶液232による第1溶液231の冷却能力が低下するおそれがある。そこで、例えば、図8に示すように、第1溶液231中に網目状の膜27を配置し、膜27の下側に収容部24を分散させてもよい。このような構成によれば、膜27によって収容部24が第1溶液231の液面へ浮上するのを阻止することができる。そのため、第1溶液231をより長く、低温に保ち続けることができる。このことは、収容部34についても同様である。
【0050】
膜27としては、特に限定されないが、例えば、柔軟で伸縮性を有する部材であることが好ましい。これにより、食品Fを挟み込んだ際の被覆膜22の弾性変形が阻害されない。
【0051】
また、使用のために凍結ボックス1を冷却する過程において第2溶液232、332がゆっくりと冷却されることにより、第2溶液232、332に過冷却が生じ、第2溶液232、332が凍結しないおそれがある。そこで、第2溶液232の過冷却を抑制する目的で、例えば、図9に示すように、収容部24中に氷の核となる核部材28を収容してもよい。核部材28は、第2溶液232よりも十分に小さい比熱を有している。そのため、使用のために凍結ボックス1を冷却する過程において第2溶液232と核部材28との間で温度差が生じ易く、当該温度差によって第2溶液232の過冷却を抑制することができる。そのため、第2溶液232をより確実に凍結させることができる。核部材28としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成することができる。これにより、第2溶液232に対して十分に低い比熱を有する核部材28となる。このことは、収容部34についても同様である。
【0052】
また、第2溶液232、332の過冷却を抑制する他の方法として、例えば、第2溶液232、332中に適量のバナジウム、硫黄等の過冷却抑制剤を混入する方法も好ましい。このような方法によっても、第2溶液232、332の過冷却を抑制することができる。
【0053】
また、凍結により第2溶液232の体積が増えることによる収容部24内の内圧の上昇を抑えるために、図10に示すように、収容部24内に一定量の空気(気体)を充填し、空気層29を配置してもよい。これにより、収容部24の破損を効果的に抑制することができる。このことは、収容部34についても同様である。
【0054】
<第3実施形態>
本実施形態の凍結ボックス1は、蓋3の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0055】
図11に示すように、本実施形態の凍結ボックス1の蓋3は、板状をなす本体31から構成されている。このような蓋3は、前述した第1、第2実施形態と異なり、食品Fを冷却し、凍結させる機能を有さない。つまり、本実施形態の凍結ボックス1では、容器2が有する冷却媒体23だけで食品Fを冷却し、凍結させる。
【0056】
以上のような第3実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0057】
以上、本発明の凍結ボックスについて図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、前述した各実施形態を適宜組み合わせることもできる。
【0058】
例えば、蓋3は省略してもよい。また、本発明の凍結ボックス1は、上述したように未凍結の食品Fを凍結させるのに用いることができるのに加えて、反対に、凍結した食品Fを解凍するのにも用いることができる。例えば、冷凍されていない状態の凍結ボックス1に凍結した食品Fの挟み込むことにより、冷却媒体23、33と食品Fとの間で熱交換が起こり、例えば、自然解凍と比べて短時間で食品Fを解凍することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…凍結ボックス、2…容器、21…本体、210…上面、211…凹部、212…断熱層、22…被覆膜、23…冷却媒体、231…第1溶液、232…第2溶液、24…収容部、25…仕切膜、26…アンカー部材、27…膜、28…核部材、29…空気層、3…蓋、31…本体、310…下面、311…凹部、312…断熱層、32…被覆膜、33…冷却媒体、331…第1溶液、332…第2溶液、34…収容部、35…仕切膜、4…番、F…食品、S2…空間、S21…第1領域、S22…第2領域、S3…空間、S31…第1領域、S32…第2領域、S4…スペース
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