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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090540
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/42 20060101AFI20220610BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B29C45/42
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202991
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 文武
(72)【発明者】
【氏名】白崎 篤司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 一貴
【テーマコード(参考)】
3C707
4F202
【Fターム(参考)】
3C707BS03
3C707HS27
3C707JU03
3C707JU15
4F202AR08
4F202AR10
4F202AR20
4F202CA11
4F202CB01
4F202CM11
(57)【要約】
【課題】ティーチング時の動作モードの設定と適切な条件設定が容易な搬送装置を提供する。
【解決手段】入力部51から入力された可搬重量と動作モードの組み合わせの適否を入力判定部54が判断する。モータ・パラメータ決定部55は、入力判定部54で適当と判定された動作モードと可搬重量に基づいて、1以上のサーボモータ15のサーボアンプ16の1以上のモータ・パラメータを決定する。1以上のモータ・パラメータには、1以上のサーボモータの最大速度及び最大加速度が含まれており、パラメータ変更部56は、最大速度及び最大加速度を上限値として1以上のサーボモータ15の速度及び加速度の変更を許容する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を取り出す取出ヘッドと、前記取出ヘッドを移動させるヘッド移動機構とを備えて搬送対象物を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構の動力源を制御する制御部を備えた制御装置を備え、
前記動力源は前記ヘッド移動機構の1以上の可動部を動かす1以上のサーボモータである搬送装置であって、
前記制御装置は、
ティーチングをするときに、少なくとも前記取出ヘッドの重量と前記搬送対象物の重量を加算した可搬重量及び動作モードを入力するための入力部と、
前記入力部から入力された前記可搬重量と前記動作モードの組み合わせの適否を判断する入力判定部と、
前記入力判定部で適当と判定された前記動作モードと前記可搬重量に基づいて、前記1以上のサーボモータのサーボアンプの1以上のモータ・パラメータを決定するモータ・パラメータ決定部と、
前記モータ・パラメータ決定部で決定した前記1以上のモータ・パラメータを変更するパラメータ変更部を備えており、
前記1以上のモータ・パラメータには、前記1以上のサーボモータの最大速度及び最大加速度が含まれており、
前記パラメータ変更部は、前記最大速度及び最大加速度を上限値として前記1以上のサーボモータの速度及び加速度の変更を許容することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記動作モードは予め定めた複数の動作モードから選択された1つの動作モードであり、
前記入力判定部は、予め定めた前記複数の動作モードと複数の可搬重量範囲の許容可能な組み合わせ情報に基づいて判定を行うように構成され、
前記モータ・パラメータ決定部は、予め定めた許容可能な前記複数の動作モードと前記複数の可搬重量範囲と前記1以上のモータ・パラメータの関係についての情報に基づいて前記1以上のモータ・パラメータを決定するように構成されている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御装置の前記制御部は、前記取出ヘッドの振動を前記1以上のサーボモータのサーボアンプに搭載されている制振機能を用いて抑制する機能を備えており、
前記制御装置は、前記可搬重量と前記取出ヘッドのストローク量に応じて定まる前記サーボアンプの前記1以上の制振パラメータを決定する制振パラメータ決定部を更に備えており、
前記制御部は前記制振パラメータにより定められた前記1以上の制振パラメータを用いて前記制振機能を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記制振パラメータ決定部には、前記ティーチングをするときに前記ストローク量が前記入力部から入力されている請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記1以上の制振パラメータは、前記サーボアンプの周波数フィルタの周波数を含んでいる請求項3または4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記1以上の制振パラメータのバランスを補正するバランス調整部をさらに備えている請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
成形機の型から成形品を前記搬送対象物として取り出すために用いられる請求項3に記載の搬送装置であって、
前記成形品を取り出す際に前記取出ヘッドを移動させる方向を引抜方向としたときに、
前記1以上の制振パラメータは、少なくとも前記取出ヘッドの前記引抜方向の振動を抑制するための制振パラメータを含んでいることを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティーチング時の動作モードの設定と適切な条件設定が容易な搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2009-292066号公報(特許文献1)に示される従来の成形品取出機(搬送装置)では、コントローラ装置(制御装置)を、予め定めた標準動作モードで動作しているときよりも電力消費量を少なくする省電力動作モードと、標準動作モードで動作しているときよりも振動の発生を少なくするソフト動作モード(低速モード)とを選択できるように構成している。コントローラ装置は、予め定めた標準動作モードの設定要素及び/または設定データを変更して所望の動作モードを設定できるように構成されている。またこの公報に記載された技術では、動作モード選択に応じて、予め設定しておいた設定項目を表示するだけで、適切な条件設定はできない。
【0003】
また特許第5331376号公報(特許文献2)には、重量を測定し、それに応じた動作モードを選択する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-292066号公報
【特許文献2】特許第5331376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1及び2には、速度・加速度等の制御パラメータの条件設定をどのようにするのかについては、開示がない。標準動作モードの設定要素及び/または設定データを変更して所望の動作モード(省電力動作モードやソフト動作モード)とその条件を設定する作業は、熟練作業者でも、時間を要しているのが実情である。ましてや慣れていない作業者が、この設定作業を行うと、安全を考えて、低速で搬送作業を行う設定をする場合が多い。そのために、従来は、搬送装置が持っている機能を十分に活用できない状況が発生している。
【0006】
本発明の目的は。ティーチング時の動作モードの設定と適切な条件設定が容易な搬送装置を提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、ティーチング時の動作モードの設定と適切な条件設定が容易で、しかも搬送装置が持っている振動抑制機能を十分に活用できる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の搬送装置は、搬送対象物を取り出す取出ヘッドと、取出ヘッドを移動させるヘッド移動機構とを備えて搬送対象物を搬送する搬送機構と、搬送機構の動力源を制御する制御部を備えた制御装置を備えている。動力源はヘッド移動機構の1以上の可動部を動かす1以上のサーボモータである。本発明では、制御装置が、入力部と、入力判定部と、モータ・パラメータ決定部と、パラメータ変更部を備えている。入力部は、ティーチングをするときに、少なくとも取出ヘッドの重量と搬送対象物の重量を加算した可搬重量及び動作モードを入力するためのものである。なお動作モードは複数の動作モードから選択して入力される。入力判定部は、入力部から入力された可搬重量と動作モードの組み合わせの適否を判断する。またモータ・パラメータ決定部は、入力判定部で適当と判定された動作モードと可搬重量に基づいて、1以上のサーボモータのサーボアンプの1以上のモータ・パラメータを決定する。さらにパラメータ変更部は、モータ・パラメータ決定部で決定した1以上のモータ・パラメータを変更する。1以上のモータ・パラメータには、1以上のサーボモータの最大速度及び最大加速度が含まれている。そしてパラメータ変更部は、最大速度及び最大加速度を上限値として1以上のサーボモータの速度及び加速度の変更を許容する。
【0009】
本発明では、入力判定部が入力部から入力された可搬重量と動作モードの組み合わせの適否を判断するので、経験の乏しい作業者が過った可搬重量と動作モードの組み合わせを設定しようとしても、設定ができない。そしてモータ・パラメータ決定部は、入力判定部が、動作モードと可搬重量の組み合わせが適当であると判断した場合には、動作モードと可搬重量に基づいて、1以上のサーボモータのサーボアンプの1以上のモータ・パラメータを決定するので、モータ・パラメータの設定知識が乏しい作業者が、誤ったパラメータを設定する虞がない。特に、本発明では、ティーチングの際に設定が最も難しい1以上のサーボモータの最大速度及び最大加速度が1以上のモータ・パラメータに含まれているので、設定をする作業者の負担を大幅に減らすことができる。その上、パラメータ変更部が、最大速度及び最大加速度を上限値として1以上のサーボモータの速度及び加速度の変更を許容しているので、ある程度設定条件に詳しい作業者が、より適切な設定をすることも可能である。その場合でも、最大速度及び最大加速度を上限値としているので、作業者が、搬送装置を壊すような条件を設定することを防止できる。
【0010】
具体的には、動作モードは予め定めた複数の動作モードから選択された1つの動作モードである。そして入力判定部は、予め定めた複数の動作モードと複数の可搬重量範囲の許容可能な組み合わせ情報に基づいて判定を行うように構成されている。またモータ・パラメータ決定部は、予め定めた許容可能な複数の動作モードと複数の可搬重量範囲と1以上のモータ・パラメータの関係についての情報に基づいて1以上のモータ・パラメータを決定するように構成されている。そのため作業者は、条件設定の詳細を熟知している必要がない。
【0011】
制御装置の制御部は、取出ヘッドの振動を1以上のサーボモータのサーボアンプに搭載されている制振機能を用いて抑制する機能を備えているのが好ましい。この場合、制御装置は、可搬重量と取出ヘッドのストローク量に応じて定まるサーボアンプの1以上の制振パラメータを決定する制振パラメータ決定部を更に備えているのが好ましい。制御部は制振パラメータ決定部により定められた1以上の制振パラメータを用いて制振機能を実行する。このようにすれば、作業者は、ティーチングのための条件設定のみならず、制振のための制振パラメータの設定も、基本的に行う必要がない。その結果、作業者の設定作業に要する負担を大幅に減らずことができる。
【0012】
制振パラメータ決定部には、ティーチングをするときにストローク量が入力部から入力されているのが好ましい。このようにすれば、作業者は意識しなくても、制振パラメータの設定が可能になる。
【0013】
なお1以上の制振パラメータは、サーボアンプの周波数フィルタの周波数を含むものであるのが好ましい。周波数フィルタの周波数を、可搬重量と可動部のストローク量によって定まる固有振動数に近い値にすれば、振動を抑制することができる。
【0014】
制御装置は、1以上の制振パラメータのバランスを補正するバランス調整部をさらに備えているのが好ましい。
【0015】
また成形機の型から樹脂成形品を搬送対象物として取り出すために用いられる搬送装置の場合には、成形品を取り出す際に取出ヘッドを移動させる方向を引抜方向としたときに、1以上の制振パラメータは、少なくとも取出ヘッドの引抜方向の振動を抑制するための制振パラメータを含んでいることが好ましい。引き抜き方向の動作は成形品の吸着、引き抜きに関係しており、どちらも正確に行われないと、取出が失敗して余計な時間がかかる。また、振動が大きいと金型に衝突する危険もある。しかしサイクルタイムの関係から、金型開時間は縮める必要があり、動作速度や加速度は可能な限り大きくしたい要望がある。ところが金型内の動作である以上、無理に調整すると予期せぬ振動が発生して、金型衝突が発生したり、取出失敗になる懸念がある。本発明によれば、振動を考慮した上で、適切な範囲に最大速度・最大加速度を設定ができ、ティーチング調整が用意にできる。なお1以上の制振パラメータには、取出ヘッドの上下方向及び横行方向の振動を抑制する制振パラメータを含んでいてもよいのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を成形機から成形品を取り出す搬送装置の一例としての成形品取出装置に適用した実施の形態の構成を示すブロック図である。
図2】制御装置の主要部を、マイクロコンピュータを用いて実現する場合に用いるプログラムのフローチャートの一例である。
図3】可搬重量及び動作モードを入力するための入力部の画面表示の一例を示す図である。
図4】複数の動作モードと可搬重量の許容範囲と速度範囲の関係の一例を説明するための図である。
図5】(A)及び(B)は、1以上のサーボモータのサーボアンプの1以上のモータ・パラメータとして最大速度及び最大加速度が決定されたときに、最大速度及び最大加速度を上限値としてパラメータ変更部で変更操作をするための変更画面を示している。
図6】重量とストローク量によって定まる制振パラメータのテーブルを示す図である。
図7】可搬重量とストローク量の設定を一緒に実施する場合の表示画面の表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の搬送装置の実施の形態の一例について詳細に説明する。図1は、本発明を成形機から成形品を取り出す搬送装置の一例としての成形品取出装置に適用した実施の形態の構成を示すブロック図である。図2は、図1の実施の形態の制御装置5の主要部をマイクロコンピュータを用いて実現する場合に用いるプログラムのアルゴリズムの一例を示している。
【0018】
図1において、1は成形機3の成形型から成形品(搬送対象物)を取り出して所定の位置まで成形品を搬送する搬送機構である。搬送機構1は、成形機3の金型から成形品を取り出す取出ヘッド11と取出ヘッド11を移動させるヘッド移動機構13を備えている。ヘッド移動機構13は、例えば、XYZ方向に延びる3軸のフレームを備えた3軸移動機構でも、また多関節の移動機構でもよいが、本実施の形態では、金型内に取出ヘッドを進入させる進入フレームとこの進入フレームを金型に近付け且つ金型から離すための移動フレームとが直交状態に配置され、且つ移動フレームが移動可能に支持された固定フレームとが直交状態に配置された3軸移動機構を用いる。そして各軸に沿って移動する複数の可動部の駆動源としては、複数のサーボモータ15を用いている。なお図1には、1つのサーボモータだけを代表例として示してある。複数のサーボモータ15は、制御装置5によってそれぞれ制御される。制御装置5の制御部50は、取出ヘッド11の振動を1以上のサーボモータ15のサーボアンプ16に搭載されている制振機能を用いて抑制する機能を備えて、後述する入力部51からの入力によって指定された動作モード等にしたがって動力源としての1以上のサーボモータ15を制御する。
【0019】
制御装置5は、制御部50と、入力部51,表示部52,記憶部53,入力判定部54,モータ・パラメータ決定部55、パラメータ変更部56、制振パラメータ決定部57及びバランス調整部58とを備えている。入力部51は、例えば、ティーチングをするときに、少なくとも取出ヘッド11の重量と成形機3の成形型から取り出す搬送対象物(成形品)の重量を加算した可搬重量及び動作モードを入力ときに使用される。本実施の形態では、複数の動作モード(本実施の形態では、動作モードは、高速モード、標準モード、低速モード)から選択した1つの動作モードが入力される。図3には、可搬重量及び動作モードを入力するための入力部51の画面表示(本実施の形態では表示部52の表示画面52Aの表示)の一例が示されている。図3に示す例では、高速モードにおける可搬重量の許容範囲が0.0から3.5kgであることが示され、タッチスイッチで可搬重量を選択(設定)できるようになっている。この例では、1.5kgの可搬重量が選択されたことを、表示態様を変える(スイッチ部分の色を変えたり、点滅をさせる)ことにより示している。なお選択した可搬重量が、動作モードによって定まる許容範囲WR外である場合には、タッチスイッチをタッチしても選択状態にならないようにすればよい。また動作モードによって定まる選択可能な可搬重量の許容範囲だけを選択するスイッチ部を表示するようにしてもよい。
【0020】
図4は、複数の動作モードと可搬重量の許容範囲WRと速度範囲VRの関係の一例を説明するための図である。図4おいて横軸はアーム速度(取出ヘッド11を移動させるアームの速度)であり、縦軸はアームを駆動する駆動源としてのサーボモータ15のモータトルクである。この例では、高速モードが選択された場合で可搬重量の許容範囲WRが0kg~3kgとなり、速度範囲の最上限値はV3(例えば3.3m/s)である。高速モードでは、可搬重量を軽くすることで(例えば3kg)、モータトルクは寿命の閾値を下回ることが可能となり、可搬重量を重くすることにより(例えば5kg)、モータトルクは閾値を超えて寿命が短くなる。そこでモータトルクが閾値を超えない範囲で、高速モードにおける可搬重量の許容範囲が定まることになる。また低速モードが選択された場合の可搬重量の許容範囲WRが5kg~7.6kgとなり、速度範囲の最上限値はV1(例えば2.5m/s)である。この可搬重量の許容範囲WRであれば、サーボモータのモータトルクは閾値を超えない。なお標準モード(基準)が選択された場合の可搬重量の許容範囲WRは3kg~5kgとなり、速度範囲の中央値はV2(例えば3.0m/s)である。なお図3において、「閾値」は、構造的に搬送装置の耐久限界を考慮した任意の値を示している。
【0021】
入力判定部54は、入力部51から入力された可搬重量と動作モードの組み合わせの適否を判断する。すなわち図4に示す3つの動作モードと可搬重量の許容範囲の組合せが、許容可能な組合せである。この組合せを外れる動作モードと可搬重量が入力部51から入力されると、入力判定部54はその入力をモータ・パラメータ決定部55に送らずに、動作モード及び可搬重量の再入力を要求するための表示を表示部52に表示する。図3の表示画面52Aの重量の許容範囲の表示も、この要求を間接的にするための表示の一例である。許容範囲が表示されずに、重量選択スイッチだけが表示される場合には、選択した重量に対して選択可能な動作モードしか選択できないようにして、再入力を間接的に要求するようにしてもよい。
【0022】
モータ・パラメータ決定部55は、入力判定部54で適当と判定された動作モードと可搬重量に基づいて、1以上のサーボモータ15のサーボアンプ16の1以上のモータ・パラメータを決定する。そしてパラメータ変更部56は、最大速度MV及び最大加速度MAを上限値として1以上のサーボモータ15の速度及び加速度の変更を許容する。
【0023】
本実施の形態では、入力判定部54が入力部51から入力された可搬重量と動作モードの組み合わせの適否を判断するので、経験の乏しい作業者が過った可搬重量と動作モードの組み合わせを設定しようとしても、設定ができないので安全である。またモータ・パラメータ決定部55が、入力判定部54が、動作モードと可搬重量の組み合わせが適当であると判断した場合には、動作モードと可搬重量に基づいて、1以上のサーボモータ15のサーボアンプ16の1以上のモータ・パラメータとしての少なくとも、最大速度MV及び最大加速度MAを決定するので、最大速度MV及び最大加速度MAを上限値とすれば、安全な設定が可能になる。
【0024】
図5(A)及び(B)には、1以上のサーボモータ15のサーボアンプ16の1以上のモータ・パラメータとして最大速度MV及び最大加速度MAが決定されたときに、最大速度MV及び最大加速度MAを上限値としてパラメータ変更部56で変更操作をするための変更画面52Aを示している。本実施の形態では、表示部52の表示画面にタッチスイッチとして表示される。図5(A)及び(B)の表示例は、適切な組合せとしての高速モードと可搬重量が入力された後に、「速度」及び「加速度(減速)」の設定が行われるときの変更画面52Aの一例を示している。図5(A)及び(B)の例では、「取出側下降」、「引抜前進」、「アンダーカット」、「引抜後退」、「取出側上昇」、「判定位置移動」、「横行」、「切断移動」、「切断移動接近」及び「開放側下降」動作において使用される各サーボモータ15の速度と加速度を変更できる。この変更は、速度範囲VR及び加速度範囲ARの上限値(最大速度MV、最大加速度MA)を100%として、選択できるようになっている。本実施の形態では、パラメータ変更部56で変更操作をしない場合には、上限値(最大速度MV、最大加速度MA)である100%が自動設定される。なおモータ・パラメータ決定部55が、最大速度MV、最大加速度MAを決定した場合でも、パラメータ変更部56を設ける場合には、制御部50に最初に入力する速度及び加速度のパラメータは、最大速度MV、最大加速度MAより小さい適宜の値とするようにしてもよいのは勿論である。なおその場合には、図5(A)及び(B)の「100%」表示は、例えば「50%」のようにその適宜の値に対応する値として表示される。
【0025】
図5(A)及び(B)に示す速度V及び加速度Aを変更する変更画面52Aは、速度範囲及び加速度範囲の最大値からの減少量を選択できるように構成されている。したがって本実施の形態では、入力した動作モードと可搬重量とによって定まる最大速度及び最大加速を上限値として、速度範囲及び加速度範囲の最大値からの減少量(ダウン量)を%で選択することになる。「100%」のときが最大速度MV(最大加速度MA)であり、1%のときが最小速度(最小加速度)となる。
【0026】
このようにするとモータ・パラメータの設定知識が乏しい作業者が、誤ったパラメータを設定する虞がない。特に、本実施の形態では、ティーチングの際に設定が最も難しい1以上のサーボモータ15の最大速度MV及び最大加速度MAが1以上のモータ・パラメータに含まれているので、設定をする作業者の負担を大幅に減らすことができる。その上、パラメータ変更部56が、最大速度MV及び最大加速度MAを上限値として1以上のサーボモータ15の速度及び加速度の変更を許容しているので、ある程度設定条件に詳しい作業者が、より適切な設定をすることも可能である。その場合でも、最大速度MV及び最大加速度MAを上限値としているので、作業者が、搬送装置を壊すような条件を設定することを防止できる。
【0027】
本実施の形態では、制御装置の制御部50は、取出ヘッド11の振動を1以上のサーボモータ15のサーボアンプ16に搭載されている制振機能を用いて抑制する機能を備えている。そこで制御装置5内には、制振パラメータ決定部57とバランス調整部58が設けられている。制振パラメータ決定部57は、可搬重量と取出ヘッドのストローク量に応じて定まるサーボアンプの1以上の制振パラメータを決定する。制御部50は制振パラメータ決定部57により定められた1以上の制振パラメータを用いて制振機能を実行する。このようにすれば、作業者は、ティーチングのための条件設定のみならず、制振のための制振パラメータの設定も、基本的に行う必要がない。その結果、作業者の設定作業に要する負担を大幅に減らずことができる。
【0028】
制振パラメータ決定部57には、ティーチングをするときに定めたストローク量が入力部51から予め入力されている。ストローク量は、予め記憶部53に記憶させてもよい。また記憶部53には、可搬重量と取出ヘッドのストローク量に応じて定まるサーボアンプの1以上の制振パラメータのデータが予め記憶されている。
【0029】
本実施の形態では、図6に示すように、複数の動作モードに対応して、それぞれ予め定めた可搬重量及び取出ヘッド11が装着された進入フレームのストローク量(固定位置から延びた進入フレームの長さに相当)に応じて定まるサーボアンプ16の1以上の制振パラメータの関係を示すテーブルデータが記憶部53に記憶されている。図6のテーブルは、加速度に関連した制振パラメータの例を示している。このテーブルは動作モードとして標準モードが選択された場合のテーブルの一例である。このテーブルは機体構造によって変わるため機体構造が変われば、それに応じてテーブルを作成する必要がある。また制振パラメータが複数種類ある場合には、それに応じた数の制振パラメータを含むテーブルを用意する必要がある。図6のテーブルによれば、可搬重量が例えば3.8kgと選択され、ストローク量が600mmと選択されたときの制振パラメータが7.4(本実施例では加速度に関連した数値)と定まる。この制振パラメータは、制御部50に出力される。
図7に示すように、本実施の形態では、表示部52には1以上の制振パラメータのバランスを補正するバランス調整部58の設定部59をさらに備えている。なおバランス調整部58は必ず設ける必要はない。本実施の形態では、バランス調整部58は定めた制振パラメータに乗算する補正係数を許容範囲内で変更して、制振パラメータを補正する。1以上の制振パラメータが、サーボアンプの周波数フィルタの周波数を含むものである場合、この周波数フィルタの周波数を、可搬重量と可動部のストローク量によって定まる固有振動数に近い値にすれば、振動を抑制することができる。そこで取出ヘッドの形状または寸法に応じて、サーボアンプの周波数フィルタの周波数を調整する手段として、バランス調整部58を用いている。図7の設定部59では、調整量0のときには、定められた制振パラメータに係数1が乗算されて、定められたパラメータがそのまま使用され、スライダをスライドさせることにより、係数を0.97~1.03の範囲で変更することが可能になっている。このようなバランス調整部58を設ければ、事前に準備するデータの量を大幅に削減することができる。
【0030】
なおストローク量は、ティーチングの際ではなく、可搬重量の設定と動作モードを設定する際に入力することもできる。図7は、ストローク量を入力するための入力スイッチを備えた画面の一例を示している。図7には、バランス調整部58の調整スイッチも一緒に表示されている。制振パラメータは基本的にストローク量と可搬重量によって定まるが、実際は重心位置や剛性が異なる多種多様な取出ヘッドが用いられるため、制振パラメータのバランスを補正するバランス調整部58が備わっていると、より効果的な制振が可能となる。ここでバランスを補正するとは、定めた制振パラメータに乗算する補正係数を許容範囲内で変更して、制振パラメータを補正することを意味する。このようなバランス調整部を設ければ、より効果的な制振が可能となる。
【0031】
成形機3の型から樹脂成形品を搬送対象物として取り出すために用いられる搬送装置1の場合には、成形品を取り出す際に取出ヘッド11を移動させる方向を引抜方向としたときに、1以上の制振パラメータは、少なくとも取出ヘッド11の引抜方向の振動を抑制するための制振パラメータを含んでいることが好ましい。これは引き抜き方向の動作は成形品の吸着、引き抜きに関係しており、どちらも正確に行われないと、取出が失敗して余計な時間がかかるからである。また、引抜時に振動が大きくなると取出ヘッド11が金型に衝突する危険もあるからである。なお1以上の制振パラメータには、取出ヘッドの上下方向及び横行方向の振動を抑制する制振パラメータを含んでいてもよいのは勿論である。
【0032】
図2は、本実施の形態の入力装置5の主要部を、マイクロコンピュータのCPUを用いて実現する場合に用いるプログラムのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。作業者が、まずステップST1で入力部51から可搬重量と動作モードをストローク量を入力すると、ステップST2で可搬重量と動作モードの組み合わせの可否を判断する。ステップST2で組み合わせ適切であれば、ステップST3でモータ・パラメータ(本実施の形態では最大速度及び最大加速度)が決定される。ステップST2で組み合わせが適切でないと判断されると、ステップST1に戻り、再度の入力が行われる。ステップST3でモータ・パラメータが決定されると、ステップST4でパラメータの変更の可否が判断される。パラメータの変更が必要なときには、ステップST5へと進み、最大速及び最大加速度を上限値としてサーボモータの速度及び加速度の変更が行われる。ステップST4でモータ・パラメータの変更をしない場合及びステップST5でモータ・パラメータの変更が行われると、ステップST6へと進んで制振パラメータの設定の要否が判断される。制振パラメータの設定が必要な場合には、ステップST7へと進む。ステップST7では可搬重量と取出ヘッドのストローク量に応じて定まるサーボモータの1以上の制振パラメータを決定する。そしてステップST8でバランス調整が必要か否かの判断がなされ、必要な場合にはステップST9で調整が行われて、終了する。制振パラメータの設定が必要なく、また制振パラメータの調整が不要であれば、ステップを終了する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、入力判定部が入力部から入力された可搬重量と動作モードの組み合わせの適否を判断するので、経験の乏しい作業者が過った可搬重量と動作モードの組み合わせを設定しようとしても、設定ができない。そしてモータ・パラメータ決定部は、入力判定部が、動作モードと可搬重量の組み合わせが適当であると判断した場合には、動作モードと可搬重量に基づいて、1以上のサーボモータのサーボアンプの1以上のモータ・パラメータを決定するので、モータ・パラメータの設定知識が乏しい作業者が、誤ったパラメータを設定する虞がない。その上、パラメータ変更部が、最大速度及び最大加速度を上限値として1以上のサーボモータの速度及び加速度の変更を許容しているので、ある程度設定条件に詳しい作業者が、より適切な設定をすることも可能である。その場合でも、最大速度及び最大加速度を上限値としているので、作業者が、搬送装置を壊すような条件を設定することを防止できる。
【符号の説明】
【0034】
1 搬送機構
3 成形機
5 制御装置
11 取出ヘッド
13 ヘッド移動機構
15 サーボモータ
16 サーボアンプ
50 制御部
51 入力部
52 表示部
53 記憶部
54 入力判定部
55 モータ・パラメータ決定部
56 パラメータ変更部
57 制振パラメータ決定部
58 バランス調整部
59 設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7