(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090563
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】自律走行式台車及び床清掃ロボット
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220610BHJP
A47L 11/282 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
G05D1/02 Z
A47L11/282
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203044
(22)【出願日】2020-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】池本 善行
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB11
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG12
5H301HH10
(57)【要約】
【課題】床面等の走行面の凹凸に対して安定した接地性能を簡易な構成で確保できる自律走行式台車及び自律走行式台車を利用した床清掃ロボットを提供すること。
【解決手段】自律走行式台車ACは、2輪構成の駆動輪DWと、駆動輪DWを固定する駆動輪フレームDFと、2輪構成の従動輪TWと、従動輪TWを固定する従動輪フレームTFと、従動輪フレームTFを駆動輪フレームDFに対して回転可能に取り付ける取付部ATとを備え、床清掃ロボット100は、自律走行式台車ACを備え、駆動輪フレームDFの底面に取り付けられる床面清掃用のパッド部である清掃パッド50を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2輪構成の駆動輪と、
前記駆動輪を固定する駆動輪フレームと、
2輪構成の従動輪と、
前記従動輪を固定する従動輪フレームと、
前記従動輪フレームを前記駆動輪フレームに対して回転可能に取り付ける取付部と
を備える自律走行式台車。
【請求項2】
前記駆動輪フレームは、前記駆動輪の駆動源を載置物とともに支持する本体フレームであり、
前記従動輪フレームは、棒状部材の両端において前記従動輪のそれぞれの車輪を固定し、走行路面における凹凸の度合に応じて前記従動輪のうち少なくとも一方の車輪が接地する、請求項1に記載の自律走行式台車。
【請求項3】
前記取付部による前記従動輪フレームの回転範囲を制限させる回転制限機構を備える、請求項1及び2のいずれか一項に記載の自律走行式台車。
【請求項4】
前記回転制限機構は、前記駆動輪フレームに設けた駆動輪側ピンと前記従動輪フレームに設けた従動輪側ピンとを相対的に変位可能としつつ接続する弾性部材を含む、請求項3に記載の自律走行式台車。
【請求項5】
前記従動輪は、水平面に対して回転可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の自律走行式台車。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の自律走行式台車を備える床清掃ロボットであって、
前記駆動輪フレームの底面に取り付けられる床面清掃用のパッド部を備える床清掃ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪を備えて自走可能となっている自律走行式台車及び自律走行式台車を利用した床清掃ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動輪を備えることで自律走行可能となっている装置として、例えば従動輪と駆動輪とによって構成される全3輪構成の電気掃除機(特許文献1参照)や、全4輪構造の無人搬送車(特許文献2参照)等が知られている。
【0003】
しかしながら、例えば、上記特許文献1のように、1つの従動輪と2つの駆動輪とで構成される全3輪構成とすると、車輪の取付位置についての制限から、例えば自律走行型の床清掃ロボットにおいて清掃用の回転型パッドを設ける場合に、回転型パッドの構成によっては、車輪の配置との関係で省スペースのレイアウトが困難になる場合がある。さらに、上記事態を回避すべく、例えば、上記特許文献2のように全4輪構造とすることで車輪を四隅に配置させ、回転型パッド用のスペースを確保することが考えられるが、全4輪構造の場合、床面等の走行路面の凹凸によっていずれかの車輪が浮きやすくなるため、駆動輪がスリップしてしまい、走行の安定化が図れなくなる等の可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-144055号公報
【特許文献2】特開2019-067315号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、床面等の走行面の凹凸に対して安定した接地性能を簡易な構成で確保できる自律走行式台車及び自律走行式台車を利用した床清掃ロボットを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための自律走行式台車は、2輪構成の駆動輪と、駆動輪を固定する駆動輪フレームと、2輪構成の従動輪と、従動輪を固定する従動輪フレームと、従動輪フレームを駆動輪フレームに対して回転可能に取り付ける取付部とを備える。
【0007】
上記自律走行式台車では、2輪構成の駆動輪と2輪構成の従動輪との全4輪構成であっても、駆動輪を固定する駆動輪フレームに対して、従動輪を固定する従動輪フレームを回転可能な状態で取り付けることで、床面等の走行面の凹凸に対して安定した接地性能を簡易な構成で確保できる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、駆動輪フレームは、駆動輪の駆動源を載置物とともに支持する本体フレームであり、従動輪フレームは、棒状部材の両端において従動輪のそれぞれの車輪を固定し、走行路面における凹凸の度合に応じて従動輪のうち少なくとも一方の車輪が接地する。この場合、走行路面に凹凸があっても、本体フレームに対して従動輪フレームが回転しつつ従動輪を構成する車輪が当該路面に接地した状態を維持することが可能になる。
【0009】
本発明の別の側面では、取付部による従動輪フレームの回転範囲を制限させる回転制限機構を備える。この場合、適度な回転制限を設けることで、安定した回転動作を維持できる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、回転制限機構は、駆動輪フレームに設けた駆動輪側ピンと従動輪フレームに設けた従動輪側ピンとを相対的に変位可能としつつ接続する弾性部材を含む。この場合、簡易な構成で回転による変位を許容しつつ適切な回転制限ができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、従動輪は、水平面に対して回転可能である。
【0012】
上記目的を達成するための床清掃ロボットは、上記いずれかに記載の自律走行式台車を備える床清掃ロボットであって、駆動輪フレームの底面に取り付けられる床面清掃用のパッド部を備える。
【0013】
上記床清掃ロボットでは、自律走行式台車を備えることで、床面等の走行面の凹凸に対して安定した接地性能を簡易な構成で確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)~(E)は、第1実施形態に係る自律走行式台車について説明するための概念図である。
【
図2】(A)は、自律走行式台車の走行の様子について一例を示す概念図であり、(B)は、(A)に対する一比較例の図である。
【
図3】(A)及び(B)は、自律走行式台車を備える床清掃ロボットの一構成例を説明するための概念図である。
【
図4】床清掃ロボットの一構成例を説明するためのブロック図である。
【
図5】(A)~(C)は、床清掃ロボットの自律走行式台車とその周辺部分について示す概念図である。
【
図6】床清掃ロボットの比較例について示す概念図である。
【
図7】(A)~(D)は、第2実施形態に係る従動輪フレームの構造について説明するための概念図である。
【
図8】(A)~(C)は、回転制限機構について説明するための概念図である。
【
図9】(A)~(C)は、一変形例の自律走行式台車を含む床清掃ロボットに設けた回転制限機構について説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、
図1を参照して、第1実施形態に係る自律走行式台車について一例を説明する。
図1(A)は、本実施形態に係る自律走行式台車ACを概念的に示す側面図であり、
図1(B)は、平面図である。また、
図1(C)~
図1(E)は、自律走行式台車ACの走行の様子を示す正面図である。また、各図では、自律走行式台車ACの前方方向を+Z方向とし、上方向を+Y方向とし、左右方向を±X方向として右手系のXYZ座標で方向を示している。
【0016】
本実施形態に係る自律走行式台車ACは、例えば
図1(A)等に示すように、走行装置10と、走行制御部20と、駆動輪フレームDFと、従動輪フレームTFと、取付部ATとを備える。走行装置10は、第1走行部10Aと、第2走行部10Bと、従動輪部10Cとを備える。自律走行式台車ACは、走行制御部20での制御に従って第1及び第2走行部10A,10Bを駆動させることで、自律した走行を可能にしている。
【0017】
走行装置10のうち、第1走行部10Aは、2輪構成の駆動輪DWのうちの一方である右車輪WRと、右車輪WRを駆動させるためのモーター等で構成される右車輪駆動部RDとを有する。同様に、第2走行部10Bは、2輪構成の駆動輪DWのうちの他方である左車輪WLと、左車輪WLを駆動させるためのモーター等で構成される左車輪駆動部LDとを有する。すなわち、第1走行部10Aは、左右一対の後輪部において右側の駆動回転を担い、第2走行部10Bは、左右一対の後輪部において左側の駆動回転を担う。この際、車輪駆動部RD,LDは、駆動輪DWの駆動源として機能する。さらに、第1及び第2走行部10A,10Bは、車輪WR,WLの回転について計測するエンコーダRE,LEを備える。走行装置10において、第1走行部10Aと第2走行部10Bとは、各々独立して駆動することで、自律走行式台車ACは、前進や後進等に加え、例えば自転(旋回)を可能にしている。つまり、第1走行部10Aと第2走行部10Bとにより、左右一対の駆動輪DWが同一方向に回転することで前進や後退等が可能となっており、左右一対の駆動輪DWが互いに逆方向に回転することで、自転が可能となっている。なお、走行装置10による回転方向を適宜変更可能とすることで、さらに後退が可能となっていてもよく、自転(旋回)の方向についても、左右双方向について回転可能となっていてもよい。また、エンコーダRE,LEは、右車輪WRの回転と左車輪WLの回転とについてそれぞれ計測し、計測結果を走行制御部20に対して出力する。なお、2輪構成の駆動輪DWである右車輪WR及び左車輪WLは、回転可能な状態で、駆動輪フレームDFに固定されている。
【0018】
走行装置10のうち、従動輪部10Cは、2輪構成の従動輪TWを構成する右車輪FWaと左車輪FWbとを備え、右車輪FWa及び左車輪FWbは、回転可能な状態で、従動輪フレームTFに固定されている。
【0019】
なお、以上のように、自律走行式台車ACは、2輪構成の駆動輪DW(WR,WL)と2輪構成の従動輪TW(FWa,FWb)との全4輪構成となっている。一般に、全4輪構成の場合、全3輪構成の場合と比較して、いずれかの車輪が浮きやすくなる。これに対して、本実施形態では、上記従動輪フレームTF等を設けることで、かかる問題を解決している。これについて詳しくは
図2を参照して説明する。
【0020】
図1(A)等に戻って、自律走行式台車ACのうち、走行制御部20は、例えば各種回路基板等で構成され、走行装置10の各部と接続され、駆動信号等の各種指令信号を走行装置10の車輪駆動部RD,LDに対して出力するとともにエンコーダRE,LEからの計測結果を得ることで、自律走行式台車ACの走行位置の把握等を行いながら、走行装置10による走行の制御をする。
【0021】
駆動輪フレームDFは、既述のように、2輪構成の駆動輪DWを固定するための支持部材である。また、図示の一例では、駆動輪フレームDFは、筐体状の部材で形成され、内部に走行制御部20等の各部を格納している。なお、駆動輪フレームDFの構造については、上記一例以外にも種々の態様が可能であり、例えば、板状の部材で構成し、当該板状の部材に種々の部品を載置した構造とすることも考えられ、また、駆動輪フレームDFの下部に種々の部品を取り付けるものとしてもよい。以上のように、駆動輪フレームDFは、装置の各部を固定支持して一体化された自律走行式台車ACの本体部分MMを形成可能な本体フレームとして機能する。
【0022】
従動輪フレームTFは、既述のように、2輪構成の従動輪TWを固定するための支持部材である。また、図示の一例では、従動輪フレームTFは、棒状部材を本体部分とし、当該棒状部材の両端において2輪構成の従動輪TWを構成する右車輪FWaと左車輪FWbとを固定している。この場合、従動輪フレームTFは、2輪構成の従動輪TWを一体化する部材として機能している。この結果、例えば
図1(D)や
図1(E)に示すように、従動輪フレームTFは、走行路面である路面GNにおける障害物(凹凸)OBの度合(高さの度合)に応じて傾斜して、従動輪TWを構成する右車輪FWaと左車輪FWbとのうち少なくとも一方の車輪が接地するようにできる。
【0023】
取付部ATは、従動輪フレームTFを駆動輪フレームDFに対して回転可能に取り付けるための部材であり、図示の一例では、進行方向すなわちZ方向について延びる円柱状部材CCにより従動輪フレームTFと駆動輪フレームDFとを接続し、かつ、
図1(C)~
図1(E)に示すように、従動輪フレームTFを、当該円柱状部材CCを軸として軸回転可能な状態としている。これにより、自律走行式台車ACは、例えば走行する路面GN上に障害物(凹凸)OBがあっても、従動輪フレームTFをこれに付随する2輪構成の従動輪TWとともに回転させることで、障害物OBを乗り越えることが可能となっている。また、以上のような円柱状部材CCを軸とする軸周りについて一体的に回転動作する従動輪フレームTF及び2輪構成の従動輪TWを、本体部分MMに対する可動部分MAとする。すなわち、取付部ATは、可動部分MAを本体部分MMに対して回転可能に取り付ける部材ということになる。また、上記の場合、重量面で相対的に駆動輪フレームDFを含む本体部分MM側が重くなり、従動輪フレームTFを含む可動部分MA側が軽くなって、本体部分MMに対して可動部分MAが回転駆動しやすい構成となる。
【0024】
以上のように、本体部分MMに対して可動部分MAが回転駆動する、すなわち可動部分MA側が本体部分MMに対して姿勢変更可能となっていることで、例えば
図1(D)や
図1(E)に例示したように、可動部分MAが傾いても、本体部分MMが必ずしも可動部分MAとともに傾くとは限らないようにして、本体部分MM側において、駆動輪DWを構成する右車輪WR及び左車輪WLの双方が、路面GNに設置した状態を維持できる。一方、可動部分MA側においては、従動輪フレームTFが回転することで、従動輪TWを構成する右車輪FWaと左車輪FWbとのうち少なくとも一方の車輪が接地する状態を維持する。つまり、右車輪WR及び左車輪WLの2点と可動部分MA側の少なくとも1点とが接地した状態を維持して、自律走行式台車ACは、安定した走行ができる。
【0025】
なお、上記回転動作を円滑に行うために、可動部分MAにおいて、例えば従動輪フレームTFにある程度の可撓性をもたせたり、従動輪TWに弾力性(収縮膨張性)をもたせたり、サスペンション等を設けたりすることも考えられる。なお、本体部分MM側の駆動輪フレームDFや駆動輪DWにおいても、同様のことが考えられる。
【0026】
以下、
図2を参照して、自律走行式台車ACの走行時の動作について説明する。
図2(A)は、自律走行式台車ACの走行の様子について一例を示す概念図であり、
図2(B)は、
図2(A)に対する一比較例の図である。なお、
図2(B)に示す一比較例の自律走行式台車ACxでは、2輪構成の駆動輪DW(WR,WL)と2輪構成の従動輪TW(FWa,FWb)とで構成される全4輪構成における全ての車輪が、1つの大きなフレームFRに取り付けられている点において、
図2(A)に例示する本実施形態の場合と異なっている。
【0027】
上記の場合、まず、本実施形態に係る自律走行式台車ACでは、
図2(A)に示すように、また、
図1(E)等を参照して説明したように、自律走行式台車ACの前方方向(+Z方向)において、自律走行式台車ACの右側に障害物OBが存在する場合、障害物OBのある場所まで達すると、まず、2輪構成の従動輪TWのうち右車輪FWaが障害物OBに乗り上げて、さらに進行するにしたがって可動部分MAが本体部分MMに対して回転していくことで、可動部分MAが傾き、障害物OBを乗り越えることが可能となる。この際、本体部分MM側は、駆動輪DWが障害物OBに達するまでは、傾くことなく水平な状態、すなわち右車輪WRと左車輪WLとの双方が路面GNに設置した状態が維持される。
【0028】
これに対して、比較例として
図2(B)に示す自律走行式台車ACxでは、同様の位置に障害物OBがあると、図示のように、右車輪FWaが障害物OBに乗り上げると同時にフレームFRを含む自律走行式台車ACxの全体が傾いてしまう。この結果、右車輪FWaと同じ側にある右車輪WRすなわち駆動輪DWまでもが傾き、図示のように、右車輪WRが路面GNから浮いてしまう可能性が高い。なお、同様のことは、左側すなわち駆動輪DWを構成する左車輪WLにおいても、障害物OBがあれば生じ得る。
【0029】
上記のように、駆動輪DWを構成する車輪WR,WLが浮いて空回りする状態となると、例えば、駆動輪DWがスリップしてしまって走行の安定化が図れなくなったり、エンコーダRE,LEからの計測結果に基づく自律走行式台車ACの走行位置の把握において誤差が生じたりする可能性がある。これに対して、本実施形態では、上記のような構成とすることで、かかる事態を回避又は抑制している。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る自律走行式台車ACは、2輪構成の駆動輪DWと、駆動輪DWを固定する駆動輪フレームDFと、2輪構成の従動輪TWと、従動輪TWを固定する従動輪フレームTFと、従動輪フレームTFを駆動輪フレームDFに対して回転可能に取り付ける取付部ATとを備える。自律走行式台車ACでは、上記のような2輪構成の駆動輪DWと2輪構成の従動輪TWとの全4輪構成であっても、駆動輪DWを固定する駆動輪フレームDFに対して、従動輪TWを固定する従動輪フレームTFを回転可能な状態で取り付けることで、障害物OBのような床面(路面GN)等の走行面の凹凸に対して安定した接地性能を簡易な構成で確保できる。
【0031】
以下、
図3等を参照して、本実施形態に係る自律走行式台車ACを備える床清掃ロボット100について、一例を説明する。
図3(A)は、自律走行式台車ACを備える床清掃ロボット100の一構成例を説明するための概念的な側面図であり、
図3(B)は、底面図である。また、
図4は、床清掃ロボット100の一構成例を説明するためのブロック図である。さらに、
図5(A)~
図5(C)は、床清掃ロボット100の自律走行式台車ACとその周辺部分について示す概念図であり、
図5(A)は、側面図であり、
図5(B)は、底面図であり、
図5(C)は、正面図である。
【0032】
例えば
図3(A)及び
図3(B)に示すように、本実施形態に係る床清掃ロボット100は、自律走行式台車ACを構成する各部に加え、清掃を行うための清掃パッド50や、清掃パッド駆動制御部PDを備える。また、このほか、図示等を省略するが、周囲の状況を把握するための測距装置や、例えば散水しながらの清掃も可能とすべく、貯水タンクや散水設備、さらには排水回収設備等を備えていてもよい。さらに、地図情報について取り扱い可能とするための設備を有して走行経路を事前に記憶させ、清掃ルートを予め設定しておくことも可能である。なお、これらの各設備については、床清掃ロボット100の筐体CS等に収納することができる。なお、図示の一例では、筐体CSは、本体フレームである駆動輪フレームDF上に載置されている。見方を変えると、駆動輪フレームDFは、下部側に配置した駆動輪の駆動源たる車輪駆動部RD,LDを、筐体CSに収納した載置物とともに支持することで、自律走行式台車ACの延いては床清掃ロボット100の本体フレームとして機能している。
【0033】
なお、上記各部と連携した走行を可能とすべく、床清掃ロボット100における走行制御部20は、走行装置10の各部に加え、例えば清掃パッド駆動制御部PDとも連携する。これらについては、
図4として示すブロック図を参照して後述する。また、
図3(A)等に示す一例では、走行制御部20を含む各種回路等をまとめたものを制御部CRとする。すなわち、制御部CRは、例えば単数または複数の各種回路基板で構成され、床清掃ロボット100における各種動作の制御を行う。
【0034】
以下、床清掃ロボット100を構成する各部のうち、床清掃を行うための主要部である清掃パッド50と清掃パッド駆動制御部PDとについて説明する。
【0035】
清掃パッド50は、自律走行式台車ACのうち本体フレームである駆動輪フレームDFの下面に取り付けられて、清掃の対象となる床面すなわち路面GNに接する円盤状の部材であり、清掃に際して路面(床面)GNに接した状態で回転動作する床面清掃用のパッド部である。ここでの一例では、清掃パッド50は、例えば
図3(B)において矢印A1に示すように、清掃パッド50の軸部XAを中心に一方向に回転駆動して、路面(床面)GNを磨く。
【0036】
清掃パッド駆動制御部PDは、例えば各種回路基板等で構成されており、走行制御部20に接続され、かつ、清掃パッド50に接続されている。清掃パッド駆動制御部PDは、走行制御部20からの指令信号に従って、走行状況に応じた清掃パッド50の駆動制御を行う。
【0037】
以下、
図4として示すブロック図を参照して、上述した床清掃ロボット100の一構成例を説明する。特にここでは、床清掃ロボット100のうち、制御部CRにおける走行制御動作に関係する部分について説明する。なお、図示の一例では、制御部CRのうち、CPU等で構成されて床清掃ロボット100の各部の動作制御全般を担う本体部分である主制御部MPが、走行制御部20の主要部分として設けられている。つまり、この一例では、走行制御部20が、床清掃ロボット100の各部と直接的または間接的に接続され、走行制御をしつつ、床掃除のための各種動作処理の全般を行う。
【0038】
上記態様とすべく、図示の一例では、走行制御部20は、CPU等で構成される主制御部MPのほか、走行装置10の駆動調整を行うための駆動調整部DAを備えている。
【0039】
主制御部MPは、走行装置10を構成する各部と接続されるとともに、清掃パッド駆動制御部PDにも接続されており、走行制御とともに走行状態に応じた清掃パッド駆動の駆動制御を行う。また、主制御部MPには、計測結果の確認を行う走行位置確認部DCが含まれる。走行位置確認部DCは、左右の車輪WR,WL(駆動輪DW)に対応して設けた左右のエンコーダRE,LEでの計測結果に基づいて走行位置を確認する。
【0040】
主制御部MPは、走行装置10による走行を制御すべく、駆動調整部DAを介して各車輪駆動部RD,LDの駆動制御を行う。この際、走行装置10は、走行位置確認部DCでの位置確認の結果に基づき、駆動輪DWを構成する各車輪WR,WLの駆動状態(回転速度すなわち走行速度等)を調整する。また、これらに併せて、清掃パッド50の駆動状況(パッドの回転数等)を調整する。
【0041】
以上のように、床清掃ロボット100において各部が連携することで、自身の走行における位置検知を行いつつ、床清掃の動作がなされる。
【0042】
以下、
図5(A)等を参照して、床清掃ロボット100のうち、自律走行式台車ACとその周辺の構造について説明する。
図5(A)~
図5(C)では、駆動輪フレームDFや従動輪フレームTF、これらを繋ぐ取付部AT、走行装置10、駆動輪フレームDFの下面側の構成以外については、省略している。図示の例では、駆動輪フレームDFは板状の部材となっており、駆動輪フレームDFの上に載置物として筐体CS(
図3等参照)に収納される各部が設置される。一方、駆動輪フレームDFの下部には、例えば走行装置10を構成する各部のほか、清掃を行うための清掃パッド50が設けられている。言い換えると、清掃パッド50は、駆動輪フレームDFの底面に取り付けられる床面清掃用のパッド部である。
【0043】
なお、図示の一例では、取付部ATは、駆動輪フレームDF上に設けられた凸部としての第1接続部CN1と従動輪フレームTF内に設けられた凹部としての第2接続部CN2とを円柱状のピンPNで接続しつつ、従動輪フレームTFが、Z方向に延びるピンPNを軸として回転可能となっている。なお、図示の一例では、左右一対構成の従動輪FWa,FWbは、従動輪フレームTFの底面に取付固定されてキャスタのような構造となっており、水平面に対して回転可能である。
【0044】
ここで、本実施形態のように、床清掃ロボット100のうち、自律走行式台車ACの底面側に、より具体的には、駆動輪フレームDFの下面に、清掃パッド50が取り付けられている場合、特に
図5(B)から明らかなように、下面あるいは底面部分における清掃パッド50と各車輪WR,WL,FWa,FWbとの配置関係が、装置全体の大きさや清掃パッド50の大きさを定める上で重要になることが分かる。本実施形態では、全4輪構成となっていることで、図示のように、駆動輪フレームDF及び従動輪フレームTFの下面で定まる矩形状の底面部分において、四隅に4つの車輪WR,WL,FWa,FWbを配置することができるので、装置全体に対して極力大きな範囲で円形状の清掃パッド50を配置させることが可能となっている。
【0045】
これに対して、例えば、
図6において比較例α1として示す側面図及び底面図にあるように、2輪構成の駆動輪WR,WLと、1輪構成の従動輪FWの全3輪構成とすると、全4輪構成と比較して車輪が浮きにくくなるという利点はあるものの、本体幅W1及び本体長H1に比べて清掃面の径R1が小さくなってしまう。これは、安定化の観点から従動輪FWの配置を四隅の1つにできないことに由来する。このため、清掃面の径R1を大きくしようとすると、例えば
図6において比較例α2として示す側面図及び底面図にあるように、比較例α1に示す状態から本体長H1も大きくする必要がある。つまり、全3輪構成の場合、車輪WR,WL,FWの配置との関係で省スペースのレイアウトが困難になる可能性がある。これに対して、
図6において比較例α3として示す側面図及び底面図にあるように、2輪構成の駆動輪WR,WLと、2輪構成の従動輪FWa,FWbの全4輪構成とすることで、清掃面の径R1を大きくしつつ、本体長H1については、大きくすることなくコンパクト化を図ることが考えられる。しかし、比較例α3のように、1つのフレームFRに4つの車輪WR,WL,FWa,FWbを設けた構成では、例えば
図2(B)を参照して説明したように、車輪WR,WL,FWa,FWbが浮いてしまう、特に駆動輪WR,WLが浮いてしまう可能性がある。
【0046】
これに対して、本実施形態では、自律走行式台車ACを適用して床清掃ロボット100を構成している。これにより、円形状の清掃パッド50として大きなものを採用しつつ、走行の安定性を実現している。なお、これについては、見方を変えると、清掃パッド50に対して装置全体の小型化を図ることを可能にしているとも言える。
【0047】
また、車輪WR,WL,FWa,FWbとの干渉を回避できる範囲において、例えば清掃パッド50を矩形状の底面のギリギリかあるいは一部はみ出す程度の大きさにすることも可能であり、床面の隅々まで清掃を行うことが可能となる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る床清掃ロボット100は、自律走行式台車ACを備え、駆動輪フレームDFの底面に取り付けられる床面清掃用のパッド部である清掃パッド50を備える。この場合、上記床清掃ロボット100では、自律走行式台車ACを備えることで、床面等の走行面である路面GNの凹凸に対して安定した接地性能を簡易な構成で確保できる。
【0049】
〔第2実施形態〕
以下、
図7等を参照して、第2実施形態に係る自律走行式台車とこれを備える床清掃ロボットについて一例を説明する。なお、本実施形態に係る自律走行式台車AC及びこれを備える床清掃ロボット100は、取付部ATによる従動輪フレームTFの回転範囲を制限させるための回転制限機構RLが設けられている点において、第1実施形態の場合と異なっているが、これ以外の点については、第1実施形態の場合と同様であるので、自律走行式台車ACや床清掃ロボット100についての図示や説明については、省略する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる点である回転制限機構RLは、床清掃ロボット100のうち自律走行式台車ACにかかるものであるため、床清掃ロボット100についての一実施形態であるだけでなく、自律走行式台車ACについての一実施形態でもある。
【0050】
図7(A)は、回転制限機構RLを有する自律走行式台車ACのうち、従動輪フレームTFの構造について説明するための概念的な正面図であり、
図7(B)は、障害物OBを乗り越える際に傾いた状態にある従動輪フレームTFについて一例を示す正面図である。また、
図7(C)及び
図7(D)は、
図7(A)及び
図7(B)の一部拡大図である。さらに、
図8(A)は、回転制限機構RLについて示す概念的な平面図であり、
図8(B)及び
図8(C)は、
図7(C)及び
図7(D)のうち、回転制限機構RLについてさらに一部拡大した図である。なお、
図8(B)及び
図8(C)において、比較により傾斜の様子を示すべく、水平基準線HSを破線で示している。
【0051】
まず、
図7(A)等に示すように、本実施形態では、左右一対構成の回転制限機構RLが、取付部ATを構成するピンPNを中心にして左右対称に、棒状に延びる従動輪フレームTFの両端側に設けられている。例えば
図7(B)に例示するように、障害物(凹凸)OBによって、従動輪フレームTFが傾くと、回転制限機構RLは、従動輪フレームTFのある程度までの傾きは許容しつつ、ある程度以上には傾かないようにストッパーとして機能する。つまり、まず、
図7(C)及び
図8(B)に示すように、従動輪フレームTFが傾いていない状態では、動きが許容された状態にある。一方、
図7(D)及び
図8(C)に示すように、従動輪フレームTFがある程度まで傾くと、それ以上の傾きが制限されるものとなる。なお、取付部ATにおいては、水平面走行時において
図7(A)、
図7(B)又は
図8(B)に示す姿勢を維持すべく、例えば、バネ機構等により中立位置維持機構を設けて、取付部ATを上下で保持するようにしてもよい。
【0052】
以下、上記のような機能を果たすための回転制限機構RLの構成について、主に
図8(A)を参照して一例を説明する。
図8(A)等に示すように、回転制限機構RLは、駆動輪フレームDFに設けた駆動輪側ピンDPと、従動輪フレームTFに設けた従動輪側ピンTPと、これらを繋ぐリング状の弾性部材(輪ゴム)EPとを有する。すなわち、弾性部材EPは、駆動輪側ピンDPと従動輪側ピンTPとを相対的に変位可能としつつ接続している。なお、
図8(B)及び
図8(C)に示すように、従動輪フレームTFには、駆動輪フレームDFから延びる駆動輪側ピンDPを挿通させるための挿通孔HLが設けられている。
【0053】
まず、
図8(B)又は
図7(C)に示すような従動輪フレームTFが傾いていない状態では、駆動輪側ピンDPと従動輪側ピンTPとの距離が近くこれらに対して弾性部材EPから大きな力はかからず、従動輪フレームTFは、回転可能な状態となっている。これに対して、
図8(C)又は
図7(D)に示すような従動輪フレームTFがある程度まで傾いた状態では、駆動輪側ピンDPと従動輪側ピンTPとの距離が遠くなり、弾性部材EPからこれらを近づけようとする力が働く。つまり、従動輪フレームTFの回転に対して規制がかかる。以上のように、簡易な構成の回転制限機構RLにおいて、弾性部材EPの強度や、駆動輪側ピンDPと従動輪側ピンTPとの相対的な位置を適宜定めることで、駆動輪フレームDFの回転による変位を許容しつつ、適切な回転制限ができる。
【0054】
なお、回転制限機構RLについては、上記一例に限らず、種々の変形例が適用可能である。例えば、
図8(A)~
図8(C)に対応する
図9(A)~
図9(C)に示す一変形例のように、弾性部材EPや従動輪側ピンTPを有さず、駆動輪側ピンDPとこれを挿通させるための挿通孔HLを設け、挿通孔HLの側面に駆動輪側ピンDPが当たることで、回転制限を行う態様とすることも考えられる。
【0055】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0056】
まず、上記のうち、取付部ATについては、必要な回転動作が得られれば上記に限らず、他の態様としてもよい。なお、上記態様においては、円柱状の軸に対する遊び等は設けず、正確な回転動作のみをすることが有効な1つの態様と考えられる。
【0057】
また、上記ではエンコーダRE,LEにより走行位置を算出するものとしているが、これに限らず、例えば各種センサー等を搭載させて、これらと組み合わせた位置計測を行うものとしてもよい。例えば床清掃ロボット100において、清掃パッド50の回転による作用が位置変動に影響する場合には、これを加味した位置把握を行うものとしてもよい。
【0058】
また、上記では、例えば
図1等に示した自律走行式台車ACは、左右で個別に回転駆動を行うものとしているが、一体的に駆動する構成とすることも考えられる。
【0059】
また、床清掃ロボット100については、種々の態様が考えられ、例えばより小型・薄型のものとすべく、貯水タンク等を有しない乾式の床清掃ロボットにおいて本願を適用することも可能である。
【0060】
また、上記では、走行位置を計測しながら移動する床清掃ロボット(掃除ロボット)100に自律走行式台車ACを適用する場合について説明しているが、上記床清掃ロボット100と同様精密な移動を必要とする種々の移動体(移動型ロボット、搬送ロボット)において、本願を適用することも考えられる。
【符号の説明】
【0061】
10…走行装置、10A…第1走行部、10B…第2走行部、10C…従動輪部、20…走行制御部、50…清掃パッド、100…床清掃ロボット(掃除ロボット)、A1…矢印、AC…自律走行式台車、ACx…自律走行式台車、AT…取付部、CC…円柱状部材、CN1…第1接続部、CN2…第2接続部、CR…制御部、CS…筐体、DA…駆動調整部、DC…走行位置確認部、DF…駆動輪フレーム(本体フレーム)、DP…駆動輪側ピン、DW…駆動輪、EP…弾性部材(輪ゴム)、FR…フレーム、FW…従動輪、FWa…右車輪(従動輪)、FWb…左車輪(従動輪)、GN…路面(床面)、H1…本体長、HL…挿通孔、LD…左車輪駆動部、MA…可動部分、MM…本体部分、MP…主制御部、OB…障害物(凹凸)、PD…清掃パッド駆動制御部、PN…ピン、R1…径、RD…右車輪駆動部、RE,LE…エンコーダ、RL…回転制限機構、TF…従動輪フレーム、TP…従動輪側ピン、TW…従動輪、W1…本体幅、WL…左車輪(駆動輪)、WR…右車輪(駆動輪)、XA…軸部、α1~α3…比較例