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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090617
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】省エネルギー型流体ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/02 20060101AFI20220610BHJP
   F04D 11/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
F04D13/02 A
F04D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021189762
(22)【出願日】2021-11-23
(31)【優先権主張番号】17/113,871
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521513029
【氏名又は名称】キネティック・テクノロジー・システムズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Kinetic Technology Systems, LLC
【住所又は居所原語表記】116 Powder Point Avenue, Duxbury, MA 02332, United States
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 潔
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・レイモンド・コーンウェル
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AA04
3H130AB22
3H130AB47
3H130AC01
3H130BA61G
3H130BA71G
3H130CA21
3H130CB01
3H130DD01Z
3H130DE03X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水や燃料などの低粘度流体を、キャビテーション、リサーキュレーション、モーターのロックなどを発生させずに搬送し、エネルギーの節約を実現する装置を提供する。
【解決手段】流体ディフューザ、流体デンシファイア、収束ハウジング、およびストラットアセンブリを含み、流体ディフューザは、流体の流入を拡大し、流体圧力の上昇を維持することにより、装置の効率を向上させる。流体デンシファイアは、流体ディフューザから流入する流体の流れを剪断し、流出圧力を増加させる。収束ハウジングは、流体ディフューザと流体デンシファイアを囲み、流体圧力の低下やキャビテーションを起こさずに加圧流体の流出を促進する。さらに収束ハウジングは、装置の動作のための流体ディフューザへのトルク伝達を容易にする。ストラットアセンブリは、流体デンシファイアを静止させつつ、収束ハウジング、流体デンシファイア、または、その両方の回転を可能にする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ディフューザと、
流体デンシファイアと、
収束ハウジングとを含み、
前記流体デンシファイアは、デンシファイア本体と、複数のデンシファイア入口と、デンシファイア出口と、複数の螺旋状流路とを含み、
前記デンシファイア本体は、第1デンシファイア面と第2デンシファイア面とを含み、
前記収束ハウジングは、ハウジング入口とハウジング出口とを含み、
前記流体ディフューザと流体デンシファイアは、互いに回転可能に取り付けられており、
前記流体ディフューザと流体デンシファイアは、前記収束ハウジング内に位置しており、
前記第1デンシファイア面と前記第2デンシファイア面は、前記デンシファイア本体に対して、互いに反対の位置に位置しており、
前記複数のデンシファイア入口は、前記第1デンシファイア面から、前記デンシファイア本体を通じて、前記第2デンシファイア面へと延伸し、
前記複数のデンシファイア入口は、前記デンシファイア本体の周辺上に分散配置され、
前記デンシファイア出口と前記複数の螺旋状流路のそれぞれは前記第2デンシファイア面から前記デンシファイア本体へと延伸し、
前記複数の螺旋状流路は、前記デンシファイア出口に対し放射状に配置され、
前記ハウジング入口は、前記流体デンシファイアを介して前記複数のデンシファイア入口と流体連通しており、
複数のデンシファイア入口の各々は、前記複数の螺旋状流路のうちの対応する螺旋状流路を介して前記デンシファイア出口と流体連通しており、
前記デンシファイア出口は、前記ハウジング出口と流体連通している、
省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項2】
さらに、磁気カップリングを含み、
前記磁気カップリングは、カップリングローターとカップリングステーターとを含み、
前記流体ディフューザは、前記収束ハウジング内に回転可能に取り付けられており、
前記流体デンシファイアは、前記収束ハウジング内に固定的に取り付けられており、
前記流体デンシファイアは、前記カップリングローターであり、
前記カップリングステーターは、前記収束ハウジングの外部に取り付けられており、
前記カップリングステーターは、前記流体ディフューザの近辺に位置しており、
前記カップリングステーターは、前記カップリングローターと動作可能に接続されており、前記カップリングステーターは前記カップリングローターを磁気的に回転させるために使用される、
請求項1に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項3】
さらに、
ポンプ駆動カップリングを含み、
前記流体ディフューザは、前記収束ハウジング内に固定的に取り付けられており、
前記流体デンシファイアは、前記収束ハウジング内に回転可能に取り付けられており、
前記ポンプ駆動カップリングは、前記ハウジング出口の近辺に位置しており、
前記ポンプ駆動カップリングは、前記収束ハウジングの外部にねじれ可能に取り付けられている、
請求項1に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項4】
さらに、
電動モーターを含み、
前記電動モーターは、モーターローターとモーターステーターとを含み、
前記流体ディフューザは、前記収束ハウジング内に回転可能に取り付けられており、
前記流体デンシファイアは、前記収束ハウジング内に固定的に取り付けられており、
前記電動モーターは、前記収束ハウジング内に位置し、
前記電動モーターは、前記収束ハウジングに固定的に取り付けられており、
前記電動モーターは、前記流体ディフューザにねじれ可能に接続されている、
請求項1に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項5】
前記流体ディフューザは、ディフューザ本体と1つ以上のディフューザ流路と流体受け穴を含み、
前記ディフューザ本体は、第1ディフューザ面と第2ディフューザ面とを含み、
前記第1ディフューザ面と前記第2ディフューザ面は、前記ディフューザ本体に対して互いに反対側に位置し、
前記流体受け穴は、前記第1ディフューザ面から前記ディフューザ本体内を通り、前記第2ディフューザ面へと軸方向に延伸し、
前記1つまたは複数のディフューザ流路は、前記第2ディフューザ面から前記ディフューザ本体に向けて延伸し、
前記1つまたは複数のディフューザ流路は、前記流体受け穴に対して放射状に位置し、
前記ハウジング入口は、前記流体受け穴と流体連通し、
前記流体受け穴は、前記1つまたは複数のディフューザ流路と流体連通し、
前記1つまたは複数のディフューザ流路のそれぞれは、前記複数のハウジング入口と流体連通する、
請求項1に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項6】
前記流体ディフューザは、さらに、環状流路を含み、
前記環状流路は、前記第2ディフューザ面から前記ディフューザ本体へと延伸し、
前記環状流路は、前記流体受け穴を中心に放射状に配置され、
前記環状流路は、前記第2ディフューザ面の周辺上に配置され、
前記環状流路は、前記1つ以上のディフューザ流路のそれぞれと交差している、
請求項5に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項7】
前記収束ハウジングは、さらに、第1収容部と第2収容部とを含み、
前記ハウジング入口は、前記第1収容部と一体化されており、
前記ハウジング出口は、前記第2収容部と一体化されており、
前記第1収容部と前記第2収容部は、前記収束ハウジングに対して、互いに反対側に位置しており、
前記流体ディフューザは、前記第1収容部内に配置されており、
前記流体デンシファイアは、前記第2収容部内に配置されている、
請求項1に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項8】
前記第2収容部は、円錐形内面を含み、
前記円錐形内面は、狭小部と広幅部とを含み、
前記狭小部は、前記ハウジング出口の近隣に位置し、
前記広幅部は、前記流体ディフューザの近隣に位置し、
前記デンシファイア本体は、前記第1デンシファイア面から前記第2デンシファイア面に向かってテーパー状を成し、
前記円錐形内面は、前記デンシファイア本体と同軸上に配置される、
請求項7に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項9】
ストラットアセンブリをさらに含み、
前記ストラットアセンブリは、前記ハウジング入口を通って、前記収束ハウジング内へ、さらに、前記流体ディフューザの流体受け穴を通って、前記第1デンシファイア面に達するように位置し、
前記流体デンシファイアは、前記ストラットアセンブリの末端に接続され、
前記ストラットアセンブリは、前記第1デンシファイア面と垂直を成し、
前記ストラットアセンブリは、前記第1デンシファイア面と同軸上に位置する、
請求項1に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項10】
流体ディフューザと、
流体デンシファイアと、
収束ハウジングと、
ストラットアセンブリとを含み、
前記流体デンシファイアは、デンシファイア本体と、複数のデンシファイア入口と、デンシファイア出口と、複数の螺旋状流路とを含み、
前記デンシファイア本体は、第1デンシファイア面と第2デンシファイア面とを含み、
前記収束ハウジングは、ハウジング入口とハウジング出口とを含み、
前記流体ディフューザと前記流体デンシファイアとは、互いに回転可能に接続されており、
前記流体ディフューザと前記流体デンシファイアは、前記収束ハウジング内に位置しており、
前記流体ディフューザと前記流体デンシファイアは、前記デンシファイア本体に対して互いに反対側に位置しており、
前記複数のデンシファイア入口は、前記第1デンシファイア面から、前記デンシファイア本体を通って、前記第2デンシファイア面へと延伸し、
前記複数のデンシファイア入口は、前記デンシファイア本体の周辺に配置され、
前記デンシファイア出口と前記複数の螺旋状流路のそれぞれは、前記第2デンシファイア面から前記デンシファイア本体へと延伸し、
前記複数の螺旋状流路は、前記デンシファイア本体に対して放射状に配置され、
前記ハウジング入口は、前記流体ディフューザを通って前記複数のデンシファイア入口へと流体連通し、
前記複数のデンシファイア入口のそれぞれは、前記複数の螺旋状流路のうちの対応する螺旋状流路を介して、前記デンシファイア出口と流体連通し、
前記デンシファイア出口は、前記ハウジング出口と流体連通し、
前記ストラットアセンブリは、前記ハウジング入口を通って、前記収束ハウジング内へ、さらに、前記流体ディフューザの流体受け穴を通って、前記第1デンシファイア面に達するように位置し、
前記流体デンシファイアは、前記ストラットアセンブリの末端に接続されており、
前記ストラットアセンブリは、前記第1デンシファイア面と垂直を成し、
前記ストラットアセンブリは、前記第1デンシファイア面と同軸上に位置する、
省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項11】
さらに、磁気カップリングを含み、
前記磁気カップリングは、カップリングローターとカップリングステーターを含み、
前記流体ディフューザは、前記収束ハウジング内に回転可能に取り付けられており、
前記流体デンシファイアは、前記収束ハウジング内に固定的に取り付けられており、
前記流体ディフューザは、前記カップリングローターであり、
前記カップリングステーターは、前記収束ハウジングに外部から取り付けられており、
前記カップリングステーターは、前記流体ディフューザの近隣に位置し、
前記カップリングステーターは、前記カップリングローターと動作可能に接続し、前記カップリングローターを磁気的に回転させるために使用される、
請求項10に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項12】
さらに、ポンプ駆動カップリングを含み、
前記流体ディフューザは、前記収束ハウジング内に固定的に取り付けられており、
前記流体ディフューザは、前記収束ハウジング内に回転可能に取り付けられており、
前記ポンプ駆動カップリングは、前記ハウジング出口の近隣に位置し、
前記ポンプ駆動カップリングは、前記収束ハウジングにねじれ可能に、かつ、外部に接続されている
請求項10に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項13】
さらに、電動モーターを含み、
前記電動モーターは、モーターローターとモーターステーターとを含み、
前記流体ディフューザは、前記収束ハウジング内に回転可能に取り付けられており、
前記流体デンシファイアは、前記収束ハウジング内に固定的に取り付けられており、
前記電動モーターは、前記収束ハウジング内に位置し、
前記モーターステーターは、前記収束ハウジングに固定的に接続され、
前記モーターローターは、前記流体ディフューザにねじれ可能に接続されている、
請求項10に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項14】
前記流体ディフューザは、ディフューザ本体と、1つ以上のディフューザ流路と、流体受け穴と、環状流路とを含み、
前記ディフューザ本体は、第1ディフューザ面と第2ディフューザ面とを含み、
前記第1ディフューザ面と前記第2ディフューザ面は、前記ディフューザ本体に対して、互いに反対側に位置し、
前記流体受け穴は、前記第1ディフューザ面から、前記ディフューザ本体を通って、前記第2ディフューザ面へと軸方向に横断し、
前記1つ以上のディフューザ流路は、前記第2ディフューザ面から前記ディフューザ本体へ延伸し、
前記1つ以上のディフューザ流路は、前記流体受け穴を中心に放射状に配置され、
前記ハウジング入口は、前記流体受け穴と流体連通し、
前記流体受け穴は、前記1つ以上のディフューザ流路と流体連通し、
前記1つ以上のディフューザ流路のそれぞれは、前記複数のディフューザ入口と流体連通し、
前記環状流路は、前記第2ディフューザ面から前記ディフューザ本体へ延伸し、
前記環状流路は、前記流体受け穴の周囲に同心で配置され、
前記環状流路は、前記第2ディフューザ面の外周上に配置され、
前記環状流路は、前記1つ以上のディフューザ流路によって横切られている、
請求項10に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【請求項15】
前記収束ハウジングは、さらに、第1収容部と第2収容部とを含み、
前記第2収容部は、円錐形内面を含み、
前記円錐形内面は、狭小部と広幅部とを含み、
前記ハウジング入口は前記第1収容部に一体化されており、
前記ハウジング入口は前記第2収容部に一体化されており、
前記第1収容部と前記第2収容部は、前記収束ハウジングに対して、互いに反対側に位置し、
前記流体ディフューザは前記第1収容部内に位置し、
前記流体デンシファイアは前記第2収容部内に位置し、
前記狭小部は、前記ハウジング出口の近隣に位置し、
前記広幅部は、前記流体ディフューザの近隣に位置し、
前記デンシファイア本体は、前記第1デンシファイア面から前記第2デンシファイア面に向かってテーパー状を成し、
前記円錐形内面は、前記デンシファイア本体と同軸上に配置される、
請求項10に記載の省エネルギー型流体ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、広くは、遠心流体ポンプに関するものであり、より具体的には、ポンプをハウジングと一体で駆動し、サイズを縮小した流路を利用することで、省エネルギーとキャビテーション低減を図ったポンプに関する。
【0002】
本出願は、2019年12月6日に出願された米国仮特許出願(出願番号62/944,702)に基づく優先権を主張する。この出願日は、2020年12月6日が週末だったことにより2020年12月7日である。
【背景技術】
【0003】
現在市販されている代表的なポンプは、遠心ポンプと容積式ポンプの2種に分類される。この分類の各タイプにはそれぞれ明確に異なる特徴があり、両者が区別される。これに対し、本願発明はその両方の特徴を取り入れている点が特徴である。本願発明は、ポンプとポンプ・ハウジングを同一軸上で回転させる点で、他の流体ポンプとは異なる独自の特徴を持つ。現在、本願発明のような製品は市場に存在しない。本願発明では、回転速度が速いほど、生成される流量(分あたりのガロン(GPM))が大きくなり、流量圧力も高くなる。本願発明に係るポンプは、1,000から100,000rpm(毎分回転数)の範囲で、キャビテーション(空洞現象)を発生させずに動作できる。これに対し、一般的な渦巻ポンプでは、キャビテーションの問題から、3500rpm程度の回転数が限界である。
【0004】
本願発明を一般的なポンプと比較するために、すべてのポンプに圧力開放弁がないことを前提にして、各ポンプを同じレベルで比較する。さらに、ポンプの電源を入れて放置したものとする。
● 一般的な渦巻ポンプでは、作動中に流体が停止してもポンプは作動し続け、ハウジング/ボリュート内の流体を撹拌し、キャビテーションやリサーキュレーション(再循環)を発生させる。ここで、回転数を上げても流体の流れはなく、圧力の上昇もない。これは、ポンプ/インペラーがハウジングから独立して回転することで、インペラーの周囲に隙間ができ、液体がスロッシング(揺動)するために起こる現象である。結果:高負荷状態で、エネルギーロスが大きく、仕事が行われない。
●容積型液圧ポンプ(ギア・ポンプ、ローター・ポンプ、ダイアフラム・ポンプ、ピストン・ポンプ)は、駆動用モーターの力で液体を押し出す。流れが止まると、駆動モーターがロックされて回転が止まる。この現象は、液体は圧縮できないという物理学的な理由で起こる。結果:エネルギーロスが大きく、モーターが損傷し、仕事が行われない。
●本願発明のポンプ内の流体が停止した場合、流体ロックは発生せず、ポンプは無流量で回転したままとなるが、回転数の上昇に応じて、圧力の上昇は継続する。本願発明のポンプを使用した無流量状態でのエネルギー効果は、基本的にポンプと内部の流体を回転させることである。負荷も、キャビテーションも、流体のリサーキュレーションもない、低エネルギー状態になる。これは、掃除機の吸引ホースを塞ぐと、回転数が上がり電流が減少し、動いている空気である負荷がなくなるのと同じ状態である。回転数が上がるとCEMF(Counter Electro Motive Force)(逆起電力)が増加し、電気抵抗が増加するため、電流が減少し、コストが下がる。
【0005】
現在市販されている流体ポンプで、本願発明のような性能を持つものは他にない。さらに、本願発明に係るポンプは、流体が流路を移動するにつれて圧力を増加させるサイズ減少型の流路を有する。これらの特徴から、本願発明のポンプは、水の脱塩だけでなく、他の用途にも最適なポンプであると言える。本願発明の追加の利点および特徴については、以降でさらに説明する。
【発明の概要】
【0006】
本願発明は、収束ハウジング、流体ディフューザ、および流体デンシファイアを含む省エネルギー型流体ポンプを提供する。構成要素は、流体デンシファイアを除く構成部品は、密閉された一つのユニットとして一緒に回転するように接続され、固定されている。流体は、省エネルギー型流体ポンプ内を移動する際に、常に圧力を上昇するため、収束ハウジング内でキャビテーションが発生する可能性はない。流体ディフューザから出た流体は、直ちに静止した流体デンシファイアで剪断され、収束ハウジングの回転中心まで下方に送られ、自転せずに収束ハウジングの外に出ていく。流体デンシファイアは、流体がハウジングの出口に導かれるまで、流体デンシファイアを通過する流体の圧力を増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本願に係るエネルギー節約型流体ポンプを示す上面正面透視図である。
図2】本願に係るエネルギー節約型流体ポンプを示す底面背面透視図である。
図3】本願に係るエネルギー節約型流体ポンプを示す上面正面展開図である。
図4】本願に係るエネルギー節約型流体ポンプを示す底面背面展開図である。
図5】本願に係るエネルギー節約型流体ポンプ内の流体ディフューザと流体デンシファイアを示す概略図である。
図6】流体デンシファイアの上面正面透視図である。
図7】流体デンシファイアの底面背面透視図である。
図8】流体デンシファイアの上面正面透視図である。
図9】流体ディフューザの上面正面透視図である。
図10】流体ディフューザの底面背面透視図である。
図11】流体ディフューザの上面図である。
図12】ポンプ駆動カップリングを備えた省エネルギー型流体ポンプの上面正面透視図である。
図13】ポンプ駆動カップリングを備えた省エネルギー型流体ポンプの概略図である。
図14】電動モーターに接続されている省エネルギー型流体ポンプの底面背面透視図である。
図15】電動モーターに接続されている省エネルギー型流体ポンプの概略図である。
図16】磁気カップリングを使用した省エネルギー型流体ポンプを示す模式図である。
図17】ストラットアッセンブリを備えた省エネルギー流体ポンプを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
すべての図は、本願発明の特定のバージョンを説明するためのものであり、本願発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0009】
本願発明は、省エネルギーでありながら、キャビテーション、リサーキュレーション、モーター・ロックを防止できる省エネルギー型流体ポンプである。本願発明は、水や燃料のような低粘度の流体を輸送でき、その主な用途は、高圧力に加えて高容量とエネルギー使用量の削減が重要な、水の脱塩(desalinization)と推進(propulsion)である。図1から図4に示すように、本願発明は、流体ディフューザ7、流体デンシファイア13、および収束ハウジング1から構成されてよい。流体ディフューザ7は、流体の流入を拡大することで本願発明の効率を向上させる。流体デンシファイア13は、流体ディフューザ7からの流体の流れを剪断し、流体の流出圧力を増加させる。収束ハウジング1は、流体ディフューザ7と流体デンシファイア13を囲み、流体圧力の喪失やキャビテーションなしに、加圧された流体の流出を促進する。さらに、収束ハウジング1は、本願発明を動作させるための流体ディフューザ7へのトルクの伝達を容易にする。
【0010】
前述の部品の全体的構成により、本願発明は、エネルギーを節約し、キャビテーションを防止し、高圧出力を維持しながら、低粘度流体を輸送できる。図5から図8に示すように、デンシファイア13は、デンシファイア本体14と、複数のデンシファイア入口17と、デンシファイア出口18と、複数の螺旋状流路19とを備える。また、デンシファイア本体14は、第1デンシファイア面15と第2デンシファイア面16とを備える。収束ハウジング1は、収束ハウジング1内を流体が流れるように、ハウジング入口2とハウジング出口3を備える。流体ディフューザ7と流体デンシファイア13は、流体ディフューザ7が回転できるように、互いに回転可能に取り付けられている。ただし、流体デンシファイア13は、流体ディフューザ7と一緒に回転しない。さらに、流体ディフューザ7と流体デンシファイア13は、収束ハウジング1内に配置されているので、流体ディフューザ7と流体デンシファイア13は内部に密閉されている。そのため、動作中や動作後に収束ハウジング1内でスロッシングが起こることはない。
【0011】
図6から図8に示すように、第1デンシファイア面15と第2デンシファイア面16は、デンシファイア本体14を中心に互いに対向して配置されており、デンシファイア本体14の円盤形状を形成する。複数のデンシファイア入口17は、第1デンシファイア面15から、デンシファイア本体14を経て、第2のデンシファイア面16へと延伸(トラバース)し、デンシファイア本体14を通じた流体の流れを可能にする。複数のデンシファイア入口17は、デンシファイア本体14の周辺上に分散配置されており、流れる流体をデンシファイア本体14の周辺から中央に導く。デンシファイア出口18および複数の螺旋状流路19のそれぞれは、第2デンシファイア面16からデンシファイア本体14内に延伸し、流動する流体の剪断を可能にする。複数の螺旋状流路19は、デンシファイア本体14を流れる流体を剪断するために、デンシファイア出口18を中心に放射状に配置されている。さらに、複数の螺旋状流路19の個数は、複数のデンシファイア入口17の個数と一致している。図3から図5に示すように、ハウジング入口2は、流体ディフューザ7を介して複数のデンシファイア入口17と流体連通しているので、流動する流体は流体デンシファイア13に到達する前に拡張される。流体が回転する流体ディフューザ7から固定された流体デンシファイア13に流れるとき、流体の剪断が起こり、それは流体の流れが減少するにつれて増加する。この際、システムに負荷をかけずに流体の圧力や回転数が上げられるため、エネルギーが節約できる。複数のデンシファイア入口17のそれぞれは、剪断された流体がデンシファイア本体14から出ることができるように、複数の螺旋状流路19のうちの対応する螺旋状流路を介して、デンシファイア出口18と流体連通している。さらに、デンシファイア出口18はハウジング出口3と流体連通しているので、加圧された流体は収束ハウジング1から出ることができる。デンシファイア出口18は、流体を収束ハウジング1の中心に戻して外部の配管システムに出すように方向を決めながら高圧を維持するために、複数の螺旋状流路19よりも体積がわずかに小さくなっている。
【0012】
従来のポンプに見られるモーター・ロックなどの動作上の問題を防ぐために、本願発明では、異なる方法で流体ディフューザ7の回転を駆動している。収束ハウジング1、流体ディフューザ7、または、その両方は、外部の手段によって駆動されるか、または駆動手段の一体部分であってよい。いくつかの実施形態では、本願発明は、流体ディフューザ7を外部の電磁モーターで駆動することを可能にするための磁気カップリング21をさらに含んでもよい。図16に示すように、磁気カップリング21は、カップリングローター22とカップリングステーター23を含む。前述したように、流体ディフューザ7は収束ハウジング1内に回転可能に取り付けられており、流体デンシファイア13は収束ハウジング1内に静止して取り付けられている。本実施形態では、流体ディフューザ7はカップリングローター22である。一方、カップリングステーター23は収束ハウジング1に外付けされており、カップリングステーター23は流体ディフューザ7の近隣に配置されており、本願発明に係る装置を外部の電磁モーターに接続している。さらに、カップリングステーター23は、カップリングローター22に動作的に結合されており、カップリングステーター23は、カップリングローター22を磁気的に回転させるために使用される。たとえば、磁気カップリング21は、流体ディフューザ7または収束ハウジング1に外部接続された、磁気ブッシングなどの複数の磁気デバイスを利用してよい。
【0013】
他の実施形態では、本願発明に係るポンプは、流体ディフューザ7を駆動するために外部の機械的手段を利用してよい。外部機械的手段は、外部モーター、電気・石油燃料エンジンなどであってよい。図12および図13に示すように、本願発明は、流体ディフューザ7を所望の回転数に回転させるためのポンプ駆動カップリング20をさらに備えてもよい。ポンプ駆動用カップリング20は、歯車付きベルトや歯車であってもよい。磁気カップリング21を備えた実施形態とは異なり、流体ディフューザ7は収束ハウジング1内に静止して取り付けられているので、収束ハウジング1は流体ディフューザ7と共に回転する。一方、流体デンシファイア13は収束ハウジング1内に回転可能に取り付けられているので、流体デンシファイア13は収束ハウジング1と共に回転することはない。ポンプ駆動用カップリング20は、ハウジング出口3付近に配置されている。さらに、ポンプ駆動カップリング20は、外部からのトルクを収束ハウジング1に伝達するために、収束ハウジング1に対してねじれ可能に、かつ、外側から接続されている。したがって、収束ハウジング1が回転すると、流体ディフューザ7は回転するが、流体デンシファイア13は静止したままである。
【0014】
さらに、本願発明は、収束ハウジング1内で流体ディフューザ7を回転させるために、統合された機械的手段を利用してよい。図14および図15に示すように、本願発明は、電動モーター24をさらに備えてもよい。電動モーター24は、モーターローター25とモーターステーター26とを含む。磁気カップリング21を備えた実施形態と同様に、流体ディフューザ7は収束ハウジング1内に回転可能に取り付けられ、流体デンシファイア13は収束ハウジング1内に静止して取り付けられている。また、電動モーター24は、収束ハウジング1内に配置されているので、電動モーター24を流体ディフューザ7に接続できる。モーターステーター26は収束ハウジング1に固定的に接続され、モーターローター25は流体ディフューザ7にねじれ可能に接続されている。したがって、電動モーター24が作動すると、モーターローター25がモーターステーター26を中心に回転し、流体ディフューザ7を所望の回転数に回転させることになる。他の実施形態では、本願発明は、収束ハウジング1、流体ディフューザ7、または、その両方を所望の回転数に回転させるために、他の駆動手段を利用することができる。
【0015】
流体ディフューザ7の効率を上げるために、流体ディフューザ7は、流れる流体の圧力を大きく上げるように設計されている。図9から図11に示すように、流体ディフューザ7は、ディフューザ本体8と、1つ以上のディフューザ流路11と、流体受け穴12とを含んでよい。さらに、ディフューザ本体8は、第1ディフューザ面9と第2ディフューザ面10を含む。第1ディフューザ面9と第2ディフューザ面10は、ディフューザ本体8に対して互いに対向するように配置され、ディフューザ本体8の円盤形状を形成する。流体受け穴12は、第1ディフューザ面9からディフューザ本体8を通り、第2ディフューザ面10まで軸方向に横断し、ディフューザ本体8を流れる流体を導く。1つ以上のディフューザ流路11は、第2ディフューザ面10からディフューザ本体8内を横断し、流体デンシファイア13に向けて流体を導く。さらに、1つ以上のディフューザ流路11は、複数のデンシファイア入口17の配置に合わせて、流体受け穴12を中心に放射状に配置されている。1つまたは複数のディフューザ流路11は、外側に向かうにつれてサイズが小さくなり、常に圧力を蓄積する。図9に示すように、1つ以上のディフューザ流路11の断面積は長さに沿って収縮し、断面積は流体受け穴12に近いほど大きく、ディフューザ本体8の周縁部に近いほど小さくなっている。さらに、ハウジング入口2は、流体受け穴12と流体連通している。また、流体受け穴12は、1つ以上のディフューザ流路11と流体連通している。したがって、流体の流入は、1つまたは複数のディフューザ流路11に向かって誘導される。最後に、1つ以上のディフューザ流路11の各々は、複数のデンシファイア入口17と流体連通しているので、膨張した流体は流体デンシファイア13に流れ込む。
【0016】
また、本願発明では、流体をスロッシングさせずに流し続けるために、流体ディフューザ7が環状流路29をさらに含んでいてもよい。図5図9、および、図11に示すように、環状流路29が第2ディフューザ面10からディフューザ本体8内に延伸するため、ディフューザ本体8の回転を妨げることなく環状流路29をディフューザ本体8の一部とすることができる。環状流路29は、流体受け穴12の周囲に同心で配置され、環状流路29は、第2ディフューザ面10の外周上に配置されている。したがって、図5に示すように、ディフューザ本体8が回転し続けると、膨張した流体が1つ以上のディフューザ流路11から複数のデンシファイア入口17に流れ込み続ける。
【0017】
流体のスロッシングを防ぐよう、収束ハウジング1を完全に密閉した状態に保つために、収束ハウジング1は流体ディフューザ7と流体デンシファイア13の周りにぴったりと適合し、流体デンシファイア13を回転させないように設計されている。図1から図4に示すように、収束ハウジング1は、流体ディフューザ7と流体デンシファイア13を個別に収容するための第1収容部4と第2収容部5をさらに備えてもよい。ハウジング入口2は第1収容部4に一体化され、ハウジング出口3は第2収容部5に一体化されている。第1収容部4と第2収容部5は、流体ディフューザ7と流体デンシファイア13に一致するように、収束型ハウジング1に対して互いに反対側に配置される。したがって、流体ディフューザ7は第1収容部4内に配置され、一方、流体デンシファイア13は第2収容部5内に配置される。
【0018】
エネルギーの損失をさらに防止するために、第2収容部5は、円錐形内面30を含んでもよい。図4図5に示すように、円錐形内面30は、狭小部31と広幅部32とを含む、円錐形状を形成する。狭小部31はハウジング出口3に隣接して配置され、広幅部32は流体ディフューザ7に隣接して配置され、ディフューザ本体8を収容する。さらに、デンシファイア本体14は、デンシファイア本体14が第2収容部5内に収まるように、第1デンシファイア面15から第2デンシファイア面16に向かってテーパー(先細り)状を成す。したがって、円錐形内面30は、デンシファイア本体14と同軸上に配置される。流体がデンシファイア出口18を出ると、流体は、牽引部も羽根も捕捉部もない、滑らかに開いた第2収用部5に入る。したがって、流体は、第2収容部5の中心をすり抜けて戻るので、流れる流体に再び加わる遠心力はなくなる。他の実施形態では、第2収容部5は、デンシファイア本体14の異なる形状に合致する非円錐形の内面を含んでもよい。
【0019】
最後に、流体デンシファイア13を収束ハウジング1内に静止させるために、本願発明は、ストラットアセンブリ6を含んでよい。図17に示すように、ストラットアセンブリ6は、ハウジング入口2を通って収束ハウジング1内に入り、流体ディフューザ7の流体受け孔12を通って、流体ディフューザ7の回転を害しないように第1デンシファイア面15に位置決めされる。流体デンシファイア13は、ストラットアセンブリ6が流体デンシファイア13を支持するように、ストラットアセンブリ6に末端接続されている。さらに、ストラットアセンブリ6は、第1デンシファイア面15に対して垂直方向に配置され、ストラットアセンブリ6は、流体デンシファイア13を静止させたまま収束ハウジング1が回転できるように、第1デンシファイア面15上にも軸方向に配置される。主要なシステム負荷が流体デンシファイア13にかかり、回転部品ではなくストラットアセンブリ6で吸収されることで、本願発明に係るポンプは流れる流体に対するエネルギー保存を維持できる。いくつかの実施形態では、ストラットアセンブリ6は、トーションストラット27とストラットシャフト支持部28を含んでよい。ストラットシャフト支持部28は、ハウジング入口2の近辺に配置されている。また、ストラットシャフト支持部28は、収束ハウジング1に対して回転可能かつ外部に接続されているので、収束ハウジング1はストラットシャフト28と独立して回転することが可能である。トーションストラット27は、第1デンシファイア面15とストラットシャフト支持部28との間に接続され、収束ハウジング1内でデンシファイア本体14のねじれまたは並進を引き起こす可能性のあるデンシファイア本体14への負荷に抵抗してデンシファイア本体14を静止させる。他の実施形態では、本願発明に係るポンプは、流体デンシファイア13を収束ハウジング1内に静止させるために異なる機構を利用してもよい。
【0020】
本願発明をその好ましい実施形態に関連して説明してきたが、以下に請求する本願発明の精神と範囲から逸脱することなく、他の多くの可能な修正と変形を行うことができることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【外国語明細書】