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特開2022-90636ポリエステル系フィルムおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090636
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ポリエステル系フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196928
(22)【出願日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0169508
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0171208
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0171223
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0097041
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0097042
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ユ、アリム
(72)【発明者】
【氏名】キム、グンウク
(72)【発明者】
【氏名】イ、セチョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、スンキ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、サンミン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジンソク
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジョンウォン
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB01
2H149AB11
2H149CA02
2H149CB02
2H149CB13
2H149FA12X
2H149FD34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐久性および透明性を低下させることなく、かつ、視認性およびその信頼性に優れたポリエステル系フィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル系フィルムは基材層と、前記基材層の一面にコーティング層とを含み、面内第1方向に対して式2を満足する。
[式2]0.5≦|S1-S2|≦3.1
式2において、S1はN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、S2はN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、このとき、N1%はポリエステル系フィルムを第1方向に1%引っ張る荷重であり、N2%はポリエステル系フィルムを第1方向に2%引っ張る荷重である。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内第1方向に対して下記式2を満足する、ポリエステル系フィルム:
[式2]
0.5≦|S-S|≦3.1
前記式2において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に2%引っ張る荷重である。
【請求項2】
前記第1方向に垂直な第2方向に対して下記式3を満足する、請求項1に記載のポリエステル系フィルム:
[式3]
0.5≦|S-S|≦5.2
前記式3において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第2方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第2方向に2%引っ張る荷重である。
【請求項3】
前記第1方向を基準にして45°である第3方向に対して下記式4を満足する、請求項1に記載のポリエステル系フィルム:
[式4]
0.5≦|S-S|≦7.2
前記式4において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第3方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第3方向に2%引っ張る荷重である。
【請求項4】
前記Sが0.1~2.5であり、前記Sが1.5~4.5であり、
前記Sが0.8~2.4であり、前記Sが2.3~7.5であり、
前記S:前記Sは0.4~0.7:1であり、
前記S:前記Sは0.4~0.7:1である、請求項2に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項5】
前記第1方向のN1%が10N~25Nであり、
前記第1方向のN2%が28N~50Nであり、
前記第2方向のN1%が25N~45Nであり、
前記第2方向のN2%が50N~70Nである、請求項2に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項6】
ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する段階と、
前記未延伸シートを70℃~125℃にて第1方向に1倍~1.5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に3倍~5倍延伸して延伸フィルムを製造する段階と、
前記延伸フィルムを160℃~230℃にて熱固定してポリエステル系フィルムを製造する段階とを含み、
前記第1方向:前記第2方向の延伸比の比率が1:1.5~5.5であり、
前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して下記式2を満足する、請求項1に記載のポリエステル系フィルムの製造方法:
[式2]
0.5≦|S-S|≦3.1
前記式2において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に2%引っ張る荷重である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、ポリエステル系フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットPCなどのディスプレイ装置を介して電子商取引、インターネットバンキングなどの業務遂行が一般化したことにより、生体情報を認識できるセンサーを利用してセキュリティを強化しようとする研究が続けられている。
【0003】
このような生体情報を用いる方法として、指紋を認識する方法が広く用いられているが、その指紋認識方法には、光学式、超音波式、静電容量方式、電界強度測定方式、感熱式などがある。このような指紋認識方法のうち、光学式指紋認識方法は、機器内部でLED(Light Emitting Diode)などの光源を用いて光を照射し、指紋によって反射された光をイメージセンサーにより感知する原理を利用したものである。前記光学式指紋認識方法は、光に反射される指紋画像を取得して既登録の指紋情報と比較する方法であるため、機器を介して照射および反射される光量が十分に多く、かつ照射および反射される光の歪みがないほど、指紋認識率を向上させ得る。
【0004】
しかし、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットPC等のディスプレイ装置は、耐久性を向上させるために保護フィルムが貼り付けられるが、このような保護フィルムによって照射および反射される光量が低くなり、照射および反射する光の歪みが発生して、指紋認識率が低下するという問題がある。特に、用途や必要に応じて保護フィルムの厚さが異なり得るため、フィルムの厚さによって光量および視認性が低下し得る。したがって、耐久性および透明性を低下させることなく、照射および反射される光量が十分に多く、視認性に優れて指紋認識率を向上させ得る保護フィルムの研究が続けられている。
【0005】
一例として、特許文献1は、面内位相差を25nm以下に下げることにより指紋認識率を向上させた保護フィルムを開示しているが、このように位相差を大きく下げるためには高度の延伸工程制御が必要となるため、フィルムの工程コストが増加して生産性が低下し得る。
【0006】
一方、ディスプレイ技術は、IT機器の発達に伴う需要に支えられ発展し続けており、カーブド(curved)ディスプレイ、折り曲げ(bended)ディスプレイなどの技術はすでに商用化している。近年、対話面と携帯性とが同時に求められるモバイル機器分野において、外力に応じて柔軟に曲がったりフォルディング(folding)されたりし得るフレキシブルディスプレイ(flexible display)装置が好まれている。特に、フォルダブル(foldable)ディスプレイ装置は、使用しないときは折り畳んで小さくして携帯性を高め、使用するときは広く広げて対話面を実現できるということが大きな利点である。
【0007】
フレキシブルディスプレイ装置は、カバーウィンドウとして透明ポリイミドフィルムまたは超薄型ガラス(UTG)を主に用いるが、透明ポリイミドフィルムはスクラッチに脆弱であり、超薄型ガラスは飛散防止特性に脆弱な問題があるため、その表面に保護フィルムが適用される。このようなフォルダブルディスプレイ装置に適用される保護フィルムは、フォルディングされた状態でフィルムに引張荷重が加わり続けられるため、フォルディングされた部分のフィルムが浮き上がったりクラックが発生したりし得るという問題がある。
【0008】
一例として、特許文献2は脂環式エポキシ基を含むオリゴシロキサンを重合して柔軟性を向上させたフレキシブルハードコートフィルムを開示しているが、その柔軟性の程度がフォルダブルディスプレイに適用するには不足であり、フィルムの視認性を十分に確保できないため、指紋認識率が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許公開第2020-0125466号
【特許文献2】韓国特許公開第2014-0104175号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、実現例は、耐久性および透明性を低下させることなく、かつ、視認性およびその信頼性に優れたポリエステル系フィルムおよびその製造方法を提供することとする。
【0011】
また、柔軟性に優れ、一定荷重を長時間持続してもほとんど変形が発生することなく、かつ、耐スクラッチ性、耐久性、透明性および視認性に優れたポリエステル系フィルムおよびその製造方法を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実現例によるポリエステル系フィルムは、基材層と、前記基材層の少なくとも一面にコーティング層とを含み、下記式1による光通過(light passage)量が91%以上であるか、380nm~780nmの光に対する全光線透過率が92%以上である。
【0013】
前記式1において、
Aは平行に位置する2枚の偏光板に530nmの光を透過させたときの輝度(lux)であり、Bは前記2枚の偏光板の間に前記ポリエステル系フィルムを配置した後、530nmの光を透過させたときの輝度であり、このとき、前記2枚の偏光板の光軸(b)に対して、前記ポリエステル系フィルムの幅方向(TD)が45°の角度で位置している。
【0014】
他の実現例によるポリエステル系フィルムは、面内第1方向に対して下記式2を満足する。
【0015】
[式2]
0.5≦|S-S|≦3.1
前記式2において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に2%引っ張る荷重である。
【0016】
また他の実現例によるポリエステル系フィルムの製造方法は、基材層を製造する段階と、基材層の少なくとも一面にコーティング層を形成する段階とを含み、前記ポリエステル系フィルムの前記式1による光通過量が91%以上であるか、380nm~780nmの光に対する全光線透過率が92%以上である。
【0017】
また他の実現例によるポリエステル系フィルムの製造方法は、ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する段階と、前記未延伸シートを70℃~125℃にて第1方向に1倍~1.5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に3倍~5倍延伸して延伸フィルムを製造する段階と、前記延伸フィルムを160℃~230℃にて熱固定してポリエステル系フィルムを製造する段階とを含み、前記第1方向:前記第2方向の延伸比の比率が1:1.5~5.5であり、前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して前記式2を満足する。
【0018】
また他の実現例による表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルの一面に位置するポリエステル系フィルムとを含み、前記ポリエステル系フィルムが、基材層と、前記基材層の少なくとも一面にコーティング層とを含み、前記ポリエステル系フィルムの前記式1による光通過(light passage)量が91%以上であるか、または380nm~780nmの光に対する全光線透過率が92%以上である。
【0019】
また他の実現例による保護フィルムは、ポリエステル系フィルムと、前記ポリエステル系フィルムの一面に位置する硬化性樹脂層とを含み、前記ポリエステル系フィルムは面内第1方向に対して前記式2を満足する。
【発明の効果】
【0020】
実現例によるポリエステル系フィルムは、基材層と、前記基材層の少なくとも一面にコーティング層とを含み、式1による光通過量が91%以上であるか、または380nm~780nmの光に対する全光線透過率が92%以上を満足することにより、視認性に優れる。また、厚さによる配向角偏差および配向角変化率も非常に低いため、視認性およびその信頼性にさらに優れる。
【0021】
また、前記ポリエステル系フィルムは、面内位相差、厚さ方向位相差、透湿度および衝撃強度が好ましい範囲を満足することにより、耐久性および寸法安定性に優れる。
【0022】
したがって、実現例によるポリエステル系フィルムをスマートフォン、タブレットPC、ノートパソコン等のような表示装置の保護フィルムとして適用すると、光学特性および耐久性に優れるとともに、視認性および指紋認識率を向上させ得る。
【0023】
また他の実現例によるポリエステル系フィルムは、引張荷重に対する変形率が特定の範囲を満足することにより、一定荷重を長時間持続しても変形がほとんど生じない柔軟性を有しながら、外部押圧の衝撃に強い特性を同時に有する。
【0024】
したがって、前記ポリエステル系フィルムがフレキシブルディスプレイ、特にフォルダブルディスプレイの保護フィルムとして適用される場合、数万回のフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0025】
また、実現例によるポリエステル系フィルムは、配向角、光通過(light passage)量、光透過率および透湿度がいずれも好ましい範囲を有することにより、優れた視認性、透明性および耐久性を確保し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例1-1におけるポリエステル系フィルムの幅方向による配向角測定結果を示すものである。
図2図2は、実施例1-3におけるポリエステル系フィルムの幅方向による配向角測定結果を示すものである。
図3図3は、実施例1-5におけるポリエステル系フィルムの幅方向による配向角測定結果を示すものである。
図4図4は、比較例1-4におけるポリエステル系フィルムの幅方向による配向角測定結果を示すものである。
図5図5は、ポリエステル系フィルムの光通過(light passage)量を測定する方法を示すものである。
図6図6は、実現例によるフォルダブルディスプレイ装置を示すものである。
図7図7は、図6におけるフォルダブルディスプレイ装置をX-X'に沿って切断した断面図を示すものである。
図8図8は、インフォールディング(in-folding)タイプのフォルダブルディスプレイ装置の断面図を示すものである。
図9図9は、アウトフォールディング(out-folding)タイプのフォルダブルディスプレイ装置の断面図を示すものである。
図10図10は、一実現例による保護フィルムを示すものである。
図11図11は、他の実現例による保護フィルムを示すものである。
図12図12は、実施例2-1におけるポリエステル系フィルムの長さ方向(MD)に加わる荷重(N)による引張率(%)の曲線を示すものである。
図13図13は、実施例2-1におけるポリエステル系フィルムの45°方向に加わる荷重(N)による引張率(%)の曲線を示すものである。
図14図14は、実施例2-1および比較例2-1におけるポリエステル系フィルムに対して、長さ方向(MD)に一定の荷重条件下において時間(s)による引張率(%)の曲線を示すものである。
図15図15は、実施例2-1および比較例2-1におけるポリエステル系フィルムに対して、幅方向(TD)に一定の荷重条件下において時間(s)による引張率(%)の曲線を示すものである。
図16図16は、実施例2-1および比較例2-1におけるポリエステル系フィルムに対して、45°方向に一定の荷重条件下において時間(s)による引張率(%)の曲線を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実現例により発明を詳細に説明する。実現例は、以下に開示する内容に限定されるものではなく、発明の要旨が変更されない限り、様々な形態に変形され得る。
【0028】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うことは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0029】
本明細書に記載の構成成分の量、反応条件などを示す全ての数字および表現は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0030】
本明細書において、第1、第2、1次、2次などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的でのみ用いられる。
【0031】
本明細書において、各フィルムまたは層等が、各フィルムまたは層等の「上(on)」または「下(under)」に形成されるものと記載される場合において、「上(on)」および「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものを全て含む。
【0032】
図面における各構成要素の大きさは説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさとは異なり得る。
【0033】
[ポリエステル系フィルム]
一実現例によるポリエステル系フィルムは、基材層と、前記基材層の少なくとも一面にコーティング層とを含み、下記式1による光通過(light passage)量が91%以上である。
【0034】
前記式1において、
Aは平行に位置する2枚の偏光板に530nmの光を透過させたときの輝度であり、Bは前記2枚の偏光板の間に前記ポリエステル系フィルムを配置した後、530nmの光を透過させたときの輝度であり、このとき、前記2枚の偏光板の光軸(b)に対して前記ポリエステル系フィルムの幅方向(TD)が45°の角度で位置している。
【0035】
光学式指紋認識方法は、機器内部でLEDなどの光源を用いて光を照射し、指紋によって反射された光をイメージセンサーにより感知して既登録の指紋情報と比較する方法である。したがって、機器を介して照射および反射される光量が十分に多く、かつ照射および反射される光の歪みがないほど、指紋認識率を向上させ得る。
【0036】
実現例によるポリエステル系フィルムは、式1による光通過量が91%以上を満足することにより、照射および反射される光量が十分に確保できるので、視認性に優れる。したがって、前記ポリエステル系フィルムをスマートフォン、タブレットPC、ノートパソコン等のような表示装置はもちろん、バーコードリーダーのような光センサーの保護フィルムとして適用する場合、視認性に優れてバーコードのような製品情報および指紋認識率を向上させ得る。
【0037】
具体的に、前記ポリエステル系フィルムの前記式1による光通過量は91%以上であり得る。例えば、前記光通過量は、91%以上、91.2%以上、92%以上、または92.5%以上であり、91%~98%、91%~96%、91%~93%、91.2%~93%、または92%~93%であり得る。式1による光通過量が前記範囲を満足することにより、フィルムを介して照射および反射される光量を十分に確保できるので、視認性を向上させ得る。
【0038】
前記光通過量は、照度計を用いて測定され得る。例えば、前記照度計は、2つの偏光板を特定間隔で平行に配置し、前記2つの偏光板の間にポリエステル系フィルムを配置した後、光を供給および透過させて輝度を測定する装置であり得る。
【0039】
図5は、ポリエステル系フィルムの光通過量を測定する方法を示すものである。
具体的に、図5に示すように、下段に光出射器10を配置し、前記光出射器の上部に互いに間隔をおいて平行に第1偏光板21および第2偏光板22を位置させる。この際、前記光出射器10と前記第1偏光板21との間の距離は、前記光出射器10と前記第2偏光板22との間の距離よりも短く配置され得るが、これに限定されるものではない。
【0040】
例えば、前記光出射器10と前記第1偏光板21との距離は、1cm~10cm、1.2cm~8cm、1.4cm~6.5cm、1.5cm~6cm、1.8cm~5.5cm、または2cm~5cmであり、前記光出射器10と前記第2偏光板22との間の距離は、5cm~30cm、7cm~28cm、8cm~25cm、9cm~23cm、または10cm~20cmであり得る。
【0041】
その後、前記第1偏光板および前記第2偏光板の間に前記ポリエステル系フィルムを配置する前後に、前記光出射器10を用いて12Vで530nmの光(a:光の方向)を供給および透過してその輝度(lux)をそれぞれ測定した後、前記式1に基づいて光通過量を計算した。
【0042】
また、前記ポリエステル系フィルムは180°以内で回転して位置することができ、本明細書における光通過量は、前記フィルムの幅方向(TD)が前記2枚の偏光板の光軸(b)に対して45°の角度で位置した後に測定した。
【0043】
他の実現例によるポリエステル系フィルムは、基材層と、前記基材層の少なくとも一面にコーティング層とを含み、380nm~780nmの光に対する全光線透過率が92%以上である。
【0044】
実現例によるポリエステル系フィルムは、380nm~780nmの光に対する全光線透過率が92%以上を満足することにより、照射および反射される光量が十分に確保できるので、視認性に優れる。したがって、前記ポリエステル系フィルムをスマートフォン、タブレットPC、ノートパソコン等のような表示装置はもちろん、バーコードリーダーのような光センサーの保護フィルムとして適用すると、視認性に優れてバーコードのような製品情報および指紋認識率を向上させ得る。
【0045】
また、前記ポリエステル系フィルムの全光線透過率は92%以上であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの380nm~780nmの可視光線に対する全光線透過率は、92%以上、92.2%以上、92.5%以上、または92.6%以上であり得る。全光線透過率が前記範囲を満足することにより、フィルムを介して照射および反射される光量を十分に確保できるので、視認性を向上させ得る。
【0046】
前記全光線透過率は、分光光度計を用いて測定し得る。例えば、前記フィルムの表面に380nm~780nmの光を入射させて10nm毎に全光線透過率を測定し、JIS R-3106に基づいて全光線透過率を計算し得る。
【0047】
また他の実現例によるポリエステル系フィルムは、面内第1方向に対して下記式2を満足する。
【0048】
[式2]
0.5≦|S-S|≦3.1
前記式2において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に2%引っ張る荷重である。
【0049】
図6は、実現例によるフォルダブルディスプレイ装置1を示すものである。具体的に、図6は、表示パネル300と、前記表示パネル上に位置するカバーウィンドウ200と、前記カバーウィンドウ上に位置する保護フィルム100とを含むフォルダブルディスプレイ装置1を例示している。前記保護フィルム100は、前記カバーウィンドウ200の前面に位置し得る。
【0050】
図7は、図6のフォルダブルディスプレイ装置1を、X-X'に沿って切断した断面図を示すものである。具体的に、図7は、表示パネル300と、カバーウィンドウ200と、保護フィルム100とが順に積層された構造のフォルダブルディスプレイ装置1を例示している。
【0051】
具体的に、前記フォルダブルディスプレイ装置1は、フォルディングされる方向に応じてインフォールディングタイプまたはアウトフォールディングタイプであり得る。図3は、インフォールディングタイプのフォルダブルディスプレイ装置2の断面図を示すものであり、図4は、アウトフォールディングタイプのフォルダブルディスプレイ装置3の断面図を示すものである。
【0052】
図8のようにインフォールディングする場合は、フォルディングされるポイント(c)に加わる荷重によって保護フィルム100に変形が発生することがあり、図9のようにアウトフォールディングする場合は、フォルディングされるポイント(d)に発生する荷重によって保護フィルム100に白化やクラックが発生し得る。
【0053】
このような白化やクラックは、一般的に常温にてフィルムのモジュラスが低い場合に解決し得るが、従来の一般的なポリエステル系フィルムは概ね常温にてモジュラスが大きいため、フォルダブルディスプレイ装置に適用すると、浮き現象による白化やクラックが容易に発生し得る。
【0054】
しかし、実現例によるポリエステル系フィルムは、引張荷重に対する変形率を特定範囲に調節することによって、フレキシブルディスプレイ、特にフォルダブルディスプレイの保護フィルムとして求められる柔軟性、耐スクラッチ性および耐久性を実現し得る。したがって、実現例によるポリエステル系フィルムをフォルダブルディスプレイ装置の保護フィルムとして適用すると、数万回のフォルディングにも白化やクラックがほとんど発生することなく、かつ、柔軟性、耐スクラッチ性および耐久性のような元来の特性を維持できる。
【0055】
また、実現例によるポリエステル系フィルムは、従来用いられていたエラストマー系の高分子フィルムに比べて工程が容易である。また、単に柔軟性を高めるように改質されたポリエステル系フィルムに比べて、柔軟性および外部押圧の衝撃に強い特性を同時に達成し得る。
【0056】
具体的に、従来はフォルダブルディスプレイ装置に適用する際に発生し得る浮き現象による白化やクラックを防止するために、軟性素材であるエラストマー系の高分子フィルムや改質されたポリエステル系フィルムを用いた。
【0057】
しかし、エラストマー系の高分子フィルムは、付着しやすい特性に起因して工程上の制御が難しく、無欠点の透明フィルムを製造し難いためカバーウィンドウとの異質感が生じやすく、また薄型フィルムの製造が容易ではなく、外部押圧等の衝撃によって変形しやすいという問題がある。
【0058】
また、従来のポリエステル系フィルムは、フォルダブルディスプレイ用途に求められる柔軟性、つまり弾性回復能力が芳しくない。そこで、柔軟性を向上させるためにポリエステル系フィルムを改質し得るが、改質されたポリエステル系フィルムは、フィルムの製造または使用中に異物や外力による押圧(dent)跡のような外観上の欠陥が発生しやすいという問題がある。
【0059】
しかし、実現例によるポリエステル系フィルムは、引張荷重に対する変形率が特定範囲を満足することにより、一定荷重を長時間持続しても変形がほとんど発生しない柔軟性を有しつつ、外部押圧の衝撃に強い特性を同時に有する。また、実現例によるポリエステル系フィルムは、配向角、光通過量、光透過率、および透湿度がいずれも好ましい範囲を有することにより、優れた視認性、透明性および耐久性を確保できる。
【0060】
したがって、前記ポリエステル系フィルムをフレキシブルディスプレイ、特にフォルダブルディスプレイの保護フィルムとして適用すると、優れた特性を奏し得る。
【0061】
具体的に、前記式2において、前記引張率および引張荷重は、前記ポリエステル系フィルムの試験片(長さ50mm×幅10mm)に対して、常温および50mm/minの引張速度の条件で測定したものである。
【0062】
具体的に、前記Sは、実現例によるポリエステル系フィルムの面内第1方向に対してN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、Sは、実現例によるポリエステル系フィルムの面内第1方向に対してN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)である。
【0063】
さらに具体的に、前記Sを測定する方法は以下の通りである。
まず、(1)前記ポリエステルフィルムの長さ50mmおよび幅10mmの試験片を、常温および50mm/minの引張速度で第1方向に引っ張り、荷重による引張率曲線を得る。(2)前記引張率曲線から、長さが初期長さに対して1%増加したポイントの荷重(N1%)を得る。(3)前記試験片の第1方向に前記N1%の荷重を20分間持続的に加えたとき、前記試験片の初期長さに対して増加した長さの比率が最終引張率(%)として、前記Sである。
【0064】
本明細書において、前記第1方向は幅方向(TD)または長さ方向(MD)であり得る。具体的に、前記第1方向が長さ方向(MD)であり、前記第1方向に垂直な第2方向が幅方向(TD)であり得る。より具体的に、前記第2方向が主収縮方向であり得る。
【0065】
また、前記Sを測定する方法は以下の通りである。
まず、(1)前記ポリエステルフィルムの長さ50mmおよび幅10mmの試験片を常温および50mm/minの引張速度で第1方向に引っ張り、荷重による引張率曲線を得る。(2)前記引張率曲線から、長さが初期長さに対して2%増加したポイントの荷重(N2%)を得る。(3)前記試験片の第1方向に前記N2%の荷重を20分間持続的に加えたとき、前記試験片の初期長さに対して増加した長さの比率が最終引張率(%)として、前記Sである。
【0066】
前記式2による値は、0.5~3.1、0.7~2.8、0.9~2.5、1~2、または1.2~1.8であり得る。前記式2を満足することにより、前記ポリエステル系フィルムがフォルダブルディスプレイ装置の保護フィルムとして適用されると、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0067】
前記Sは0.1~2.5であり、前記Sは1.5~4.5であり得る。例えば、前記Sは、0.1~2.5、0.1~2.3、0.3~1.8、0.5~1.6、または0.8~1.2であり、前記Sは、1.5~4.5、1.5~4、1.8~3.5、1.8~3、2~3、または2.2~2.7であり得る。SおよびSが前記範囲を満足することにより、前記ポリエステル系フィルムがフォルダブルディスプレイ装置の保護フィルムとして適用されると、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0068】
また、前記第1方向のN1%は10N~25Nであり、前記第1方向のN2%は28N~50Nであり得る。例えば、前記第1方向のN1%は、10N~25N、28N~45N、30N~43N、または33N~40Nであり、前記第1方向のN2%は、28N~50N、28N~45N、30N~43N、または33N~40Nであり得る。
【0069】
また、実現例によるポリエステル系フィルムは、前記第1方向に垂直な第2方向に対して下記式3を満足し得る。
【0070】
[式3]
0.5≦|S-S|≦5.2
前記式3において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第2方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第2方向に2%引っ張る荷重である。
【0071】
前記SおよびSを測定する方法は、第1方向の代わりに第2方向に引っ張ることを除いて、前記SおよびSを測定する方法と同様である。
【0072】
前記式3による値は、0.5~5.2、0.7~5、0.7~4.5、1~4、1.2~3.3、1.5~2.8、1.7~2.5、または2~2.3であり得る。前記式3を満足することにより、前記ポリエステル系フィルムがフォルダブルディスプレイ装置の保護フィルムとして適用されると、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0073】
前記Sは0.8~2.4であり、前記Sは2.3~7.5であり得る。例えば、前記Sは、0.8~2.4、1~2.4、1.2~2.4、1.6~2.2、または1.8~2.2であり、前記Sは、2.3~7.5、2.8~7、2.8~6.5、3~6、3.5~5.8、または4.1~5.2であり得る。SおよびSが前記範囲を満足することにより、前記ポリエステル系フィルムがフォルダブルディスプレイ装置の保護フィルムとして適用されると、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0074】
また、前記第2方向のN1%は25N~45Nであり、前記第2方向のN2%は50N~70Nであり得る。例えば、前記第2方向のN1%は、25N~45N、28N~45N、30N~43N、33N~40N、または33N~38Nであり、前記第2方向のN2%は、50N~70N、50N~65N、52N~63N、または57N~63Nであり得る。
【0075】
また、実現例によるポリエステル系フィルムは、前記第1方向を基準にして45°である第3方向に対して下記式4を満足し得る。
【0076】
[式4]
0.5≦|S-S|≦7.2
前記式4において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第3方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第3方向に2%引っ張る荷重である。
【0077】
前記SおよびSを測定する方法は、第1方向の代わりに第1方向を基準にして45°である第3方向に引っ張ることを除いて、前記SおよびSを測定する方法と同様である。
【0078】
前記式4による値は、0.5~7.2、0.7~6.5、0.7~5.8、0.9~5、0.9~4、1.1~3.5、1.1~2.8、1.1~2.3、1.2~1.8、または1.2~1.6であり得る。前記式4を満足することにより、前記ポリエステル系フィルムがフォルダブルディスプレイ装置の保護フィルムとして適用されると、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0079】
前記Sは0.1~5.5であり、Sは1.5~12.5であり得る。例えば、前記Sは、0.1~5.5、0.1~5、0.1~4.5、0.2~4.3、0.2~4、0.5~3.3、0.5~2.8、0.7~2.3、0.7~1.8、0.9~1.6、または0.9~1.3であり、前記Sは、1.5~12.5、1.5~10、1.5~8.5、1.8~7、1.8~6.5、2~6、2~5、2~4、2.2~3.3、2.2~3、または2.2~2.7であり得る。SおよびSが前記範囲を満足することにより、前記ポリエステル系フィルムがフォルダブルディスプレイ装置の保護フィルムとして適用されると、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0080】
また、前記第3方向のN1%は10N~25Nであり、前記第3方向のN2%は28N~50Nであり得る。例えば、前記第2方向のN1%は、10N~25N、28N~45N、30N~43N、または33N~40Nであり、前記第2方向のN2%は28N~50N、28N~45N、30N~43N、または33N~40Nであり得る。
【0081】
前記S:前記Sは0.4~0.7:1であり、前記S:前記Sは0.4~0.7:1であり得る。例えば、前記S:前記Sは、0.4~0.7:1、0.45~0.65:1、または0.45~0.6:1であり、前記S:前記Sは、0.4~0.7:1、0.45~0.65:1、または0.45~0.6:1であり得る。SおよびSの比率とSおよびSの比率がそれぞれ前記範囲を満足することにより、浮き防止効果を向上させ得るので、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0082】
前記S:前記Sは0.4~0.7:1であり、前記S:前記Sは0.4~0.7:1であり得る。例えば、前記S:前記Sは、0.4~0.7:1、0.45~0.65:1、または0.45~0.6:1であり、前記S:前記Sは、0.4~0.7:1、0.45~0.65:1、または0.45~0.6:1であり得る。SおよびSの比率とSおよび前記Sの比率とがそれぞれ前記範囲を満足することにより、浮き防止効果を向上させ得るので、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0083】
前記S:前記Sは1:0.8~1.4であり、前記S:前記Sは1:0.8~1.4であり得る。例えば、前記S:前記Sは1:0.8~1.4、1:0.85~1.3、1:0.9~1.2、または1:0.95~1.1であり、前記S:前記Sは1:0.8~1.4、1:0.85~1.3、1:0.9~1.2、または1:0.95~1.1であり得る。SおよびSの比率とSおよびSの比率とがそれぞれ前記範囲を満足することにより、浮き防止効果を向上させ得るので、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0084】
前記第1方向のN1%:N2%は1:1.5~3であり得る。例えば、前記第1方向のN1%:N2%は、1:1.5~2.8、1:1.5~2.3、または1:1.6~2.1であり得る。
【0085】
前記第2方向のN1%:N2%は1:1.1~2.5であり得る。例えば、前記第2方向のN1%:N2%は、1:1.1~2.5、1:1.2~2.3、1:1.3~2.1、または1:1.5~2であり得る。
【0086】
前記第3方向のN1%:N2%は1:1.5~3であり得る。例えば、前記第3方向のN1%:N2%は、1:1.5~2.8、1:1.5~2.5、または1:1.6~2.2であり得る。
【0087】
第1方向~第3方向のN1%およびN2%の比がそれぞれ前記範囲を満足することにより、浮き防止効果を向上させ得るので、数万回の繰り返しフォルディングにも浮き現象による白化やクラックがほとんど発生しない。
【0088】
一方、光学式指紋認識方法は、光に反射される指紋イメージを取得して既登録の指紋情報と比較する方法であるため、光学式指紋認識方法の指紋認識率を向上させるためには、指紋を認識した後に反射される光の歪みがあってはならない。したがって、スマートフォンのような表示装置の表面に貼り付けられる保護フィルムの配向角および配向角偏差が低いほど、指紋認識率および指紋認識エラー防止効果を向上させ得る。
【0089】
実現例によるポリエステル系フィルムは、耐久性および透明性に優れることはもちろん、優れた指紋認識率および指紋認識エラー防止効果を有する。
【0090】
前記ポリエステル系フィルムの全幅は50cm~6000cmである。例えば、前記ポリエステル系フィルムの全幅は、50cm~6000cm、50cm~5500cm、50cm~5000cm、50cm~4000cm、50cm~3000、50cm~2500、50cm~2300cm、50cm~2000cm、50cm~1800cm、50cm~1500cm、50cm~1300cm、50cm~1000cm、50cm~800cm、70cm~800cm、または90cm~700cmであり得る。
【0091】
また、前記ポリエステル系フィルムの全幅に対する配向角偏差は±5°以内であり得る。具体的に、前記ポリエステル系フィルムの全幅に対して測定された配向角の平均値による配向角偏差は、±5°以内、±4.5°以内、±4°以内、±3.5°以内、±3°以内、±2.8°以内、±2.5°以内、±2°以内、±1.5°以内、±1.2°以内、±1°以内、±0.9°以内、または±0.7°以内であり得る。全幅に対する配向角偏差が前記範囲を満足することにより、フィルムのどの位置からでも優れた視認性を確保し得るので、視認性の信頼性に非常に優れる。
【0092】
また、全幅の90%以上において、配向角が前記幅方向を基準に±5°以内であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムは、前記全幅の90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%において、配向角が幅方向を基準に±5°以内、±4°以内、±3.8°以内、±3.5°以内、±3.3°以内、±3°以内、±2.8°以内、±2.5°以内、±2°以内、±1.5°以内、±1.2°以内、±1°以内、±0.9°以内、または±0.8°以内であり得る。配向角が前記範囲を満足することにより、照射および反射される光の歪みが低いため、視認性およびその信頼性を向上させ得るので、指紋認識率および指紋認識エラー防止効果に優れる。
【0093】
実現例によるポリエステル系フィルムは、50cm~6000cmの広い幅を有するにもかかわらず、光通過量が低下することなく、かつ、前記全幅の90%以上において、配向角が前記幅方向を基準に±5°以内を満足することにより、照射および反射される光の歪み性が低いので、視認性およびその信頼性に優れる。
【0094】
また、前記全幅に対する配向角:前記光通過量の比率が1:50~155であり得る。例えば、前記全幅に対する配向角:前記光通過量の比率が1:50~155、1:55~152、1:60~90、1:50~110、1:50~100、1:52~95、1:55~90、1:60~85、1:130~160、1:130~155、または1:130~152であり得る。全幅に対する配向角および光通過量の比率が前記範囲を満足することにより、フィルムを介して照射および反射される光量を十分に確保できるとともに、視認性をさらに向上させ得る。
【0095】
また、前記ポリエステル系フィルムの幅方向への配向角変化率は、3°/10cm以下であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムを幅方向に10cmの間隔で切断して各々の配向角を測定したとき、配向角変化率が3°/10cm以下、2.5°/10cm以下、2.3°/10cm以下、2°/10cm以下、1.5°/10cm以下、1.3°/10cm以下、1°/10cm以下、0.8°/10cm以下、0.6°/10cm以下、0.5°/10cm以下、0.3°/10cm以下、または0.2°/10cm以下であり得る。配向角変化率が前記範囲を満足することにより、フィルムのどの位置からでも優れた視認性を確保し得るので、視認性の信頼性に非常に優れる。
【0096】
前記ポリエステル系フィルムの全幅に対する配向角偏差は±5°以内であり得る。具体的に、前記フィルムの全幅に対して測定された配向角の平均値による配向角偏差は、±5°以内、±4.5°以内、±4°以内、±3.5°以内、±3°以内、±2.8°以内、±2.5°以内、±2°以内、±1.5°以内、±1.2°以内、±1°以内、±0.9°以内、または±0.7°以内であり得る。全幅に対する配向角偏差が前記範囲を満足することにより、フィルムのどの位置からでも優れた視認性を確保し得るので、視認性の信頼性に非常に優れる。
【0097】
また、前記ポリエステル系フィルムの中心軸から±2000mm以内の幅方向に対する配向角偏差は±2.5°以内であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの中心軸から±2000mm以内の幅方向に対する配向角偏差は、±2.5°以内、±2°以内、±1.5°以内、±1.2°以内、±1°以内、±0.9°以内または±0.7°以内であり得る。
【0098】
また、前記ポリエステル系フィルムの中心軸から±2000mmを超える幅方向に対する配向角偏差は±5°以内であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの中心軸から±2000mmを超える幅方向に対する配向角偏差は、±5°以内、±4.5°以内、±4°以内、±3.5°以内、±3°以内、±2.8°以内、±2.5°以内、±2°以内、±1.5°以内、±1.2°以内、±1°以内、±0.9°以内、または±0.7°以内であり得る。
【0099】
前記ポリエステル系フィルムの任意のポイントにおける配向角(θ)と前記任意のポイントから±2000mm以内に位置するポイントにおける配向角(θ)の差(θ-θ)は±5°以内であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの任意のポイントにおける配向角(θ)と前記任意のポイントから±2000mm以内、±1,800mm以内、±1500mm以内、±1300mm以内、±1000mm以内、±800mm以内、±500mm以内、±300mm以内、±100mm以内、または±50mm以内に位置するポイントにおける配向角(θ)の差(θ-θ)は、±5°以内、±4.5°以内、±4°以内、±3.5°以内、±3°以内、±2.8°以内、±2.5°以内、±2°以内、±1.5°以内、±1.2°以内、±1°以内、±0.9°以内、±0.7°以内、±0.5°以内、±0.4°以内、±0.2°以内、±0.1°以内、または±0.05°以内であり得る。
【0100】
前記ポリエステル系フィルムの厚さは30μm~150μmであり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの厚さは、30μm~150μm、40μm~150μm、45μm~145μm、50μm~140μm、55μm~135μm、または55μm~130μmであり得る。ポリエステル系フィルムの厚さは、成形性または耐久性向上のような必要に応じて、前記範囲内で選択され得る。具体的に、ポリエステル系フィルムの厚さが30μm未満であると、成形性には優れるが耐久性が低い場合があり、150μmを超えると、耐久性には優れるが成形性が低いため、保護フィルムとして適用すると品質が良くない。
【0101】
特に、前記ポリエステル系フィルムは、フィルムの厚さによって配向角、配向角変化率および配向角偏差に影響を受けないため、透明性、成形性および耐久性のような特性が低下することなく、かつ、優れた視認性を確保し得る。
【0102】
また、前記ポリエステル系フィルムの厚さ偏差は5μm以下であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの厚さ偏差は、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2.5μm以下、2μm以下、または1.8μm以下であり、0.05μm~5μm、0.1μm~4μm、0.1μm~3μm、0.3μm~2μm、または0.3μm~1.8μmであり得る。厚さ偏差が前記範囲を満足することにより、適切な位相差偏差を有しながら均一な視認性を有し得る。
【0103】
具体的に、前記厚さ偏差は、下記数学式Aにより計算され得る。
[数A]
厚さ偏差(μm)=幅方向厚さの最大値(μm)-幅方向厚さの最小値(μm)
【0104】
また、前記ポリエステル系フィルムの任意のポイントにおける厚さ(D1)と前記任意のポイントから±2000mm以内に位置するポイントにおける厚さ(D2)との差(D1-D2)は、±4μm以内であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの任意のポイントにおける厚さ(D1)と、前記任意のポイントから±2000mm以内、±1800mm以内、±1500mm以内、±1300mm以内、±1000mm以内、±800mm以内、±500mm以内、±300mm以内、±100mm以内、または±50mm以内に位置するポイントにおける厚さ(D2)との差(D1-D2)は、±4μm以内、±3.5μm以内、±3μm以内、±2.5μm以内、±2.3μm以内、±2μm以内、±1.8μm以内、±1μm以内、または±0.8μm以内であり得る。
【0105】
前記ポリエステル系フィルムの面内位相差(Re、550nm)は、5000nm~13000nmであり得る。例えば、550nmの波長において前記ポリエステル系フィルムの面内位相差(Re)は、5000nm~13000nm、5500nm~12500nm、5700nm~12000nm、6000nm~12000nm、7000nm~13000nm、8000nm~13000、または8500nm~12500nmであり得る。面内位相差が前記範囲を満足することにより、耐久性を向上させ得るとともに、第1方向と前記第1方向に垂直な第2方向との屈折率差を最大化して光の歪みを認知できなくなるので、優れた視認性を確保し得る。
【0106】
具体的に、前記面内位相差(Re)は、フィルムの平面内の直交する二軸の屈折率(Nx、Ny)の異方性(△Nxy=|Nx-Ny|)とフィルムの厚さd(nm)との積で定義されるパラメータであり、光学的等方性または異方性を示す尺度である。より具体的に、前記面内位相差(Re)は、下記数学式Bにより計算され得る。
【0107】
前記数学式Bにおいて、
dはフィルムの厚さであり、△NxyはNxおよびNyの差の絶対値(△Nxy=|Nx-Ny|)であり、前記Nxは面内の遅相軸方向の屈折率であり、前記Nyは面内の進相軸方向の屈折率である。具体的に、前記Nxは長さ方向(MD)の屈折率であり、前記Nyは幅方向(TD)の屈折率であり得る。
【0108】
前記二軸の屈折率(Nx、Ny)は、大塚電子社の屈折率計(RETS-100、測定波長550nm)を用いて測定し得るが、これに限定されるものではない。
【0109】
また、前記ポリエステル系フィルムの面内位相差(Re)偏差は600nm/m以下であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの面内位相差(Re)偏差は、600nm/m以下、500nm/m以下、400nm/m以下、300nm/m以下、または200nm/m以下であり、5nm/m~600nm/m、5nm/m~500nm/m、10nm/m~400nm/m、10nm/m~350nm/m、10nm/m~300nm/m、または10nm/m~200nm/mであり得る。面内位相差偏差が前記範囲を満足することにより、耐久性を向上させるとともに、第1方向と前記第1方向に垂直な第2方向との屈折率差を最大化して光の歪みを認知できなくなるため、優れた視認性を確保できる。
【0110】
一方、厚さ方向位相差(Rth、550nm)は、フィルム厚さ方向の断面から見たときの2つの複屈折である△Nxz(=|Nx-Nz|)および△Nyz(=|Ny-Nz|)にそれぞれフィルム厚さd(nm)を乗じて得られる値の平均値で計算される。具体的に、厚さ方向位相差(Rth)は、下記数学式Cにより計算され得る。
【0111】
前記数学式Cにおいて、
dはフィルムの厚さであり、△NxzはNxおよびNzの差の絶対値(△Nxz=|Nx-Nz|)であり、△NyzはNyおよびNzの差の絶対値(△Nyz=|Ny-Nz|)である。前記Nxは面内の遅相軸方向の屈折率であり、前記Nyは面内の進相軸方向の屈折率であり、前記Nzは厚さ方向の屈折率である。具体的に、前記Nxは長さ方向(MD)の屈折率であり、前記Nyは幅方向(TD)の屈折率であり得る。
【0112】
前記ポリエステル系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、8000nm~14000nmであり得る。例えば、550nmの波長において前記ポリエステル系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、8000nm~14000nm、8000nm~13500nm、8500nm~13000nm、または8500nm~12800nmであり得る。厚さ方向位相差が前記範囲を満足することにより、耐久性を向上させるとともに、第1方向と前記第1方向に垂直な第2方向との屈折率差を最大化して光の歪みを認知できなくなるため、優れた視認性を確保できる。
【0113】
また、前記ポリエステル系フィルムの透湿度は、20g/m・day以下であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの透湿度は、20g/m・day以下、18g/m・day以下、15g/m・day以下、12g/m・day以下、または10g/m・day以下であり、0.1g/m・day~20g/m・day、0.5g/m・day~18g/m・day、1g/m・day~15g/m・day、3g/m・day~13g/m・day、4g/m・day~11g/m・day、4.5g/m・day~10g/m・day、または4.8g/m・day~10g/m・dayであり得る。
【0114】
透湿度が前記範囲を満足することにより、優れた耐久性を確保し得る。具体的に、前記範囲の透湿度を有するポリエステル系フィルムは、従来保護フィルムとして用いられていたTACフィルムに比べて、著しく優れた透湿度および寸法安定性を有するものであり、前記ポリエステル系フィルムを表示装置の保護フィルムとして適用すると、外部の水分環境から表示装置を効果的に保護し得る。
【0115】
前記ポリエステル系フィルムの第1方向と前記第1方向に垂直な第2方向との屈折率の差は、0.08~0.14であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの第1方向と前記第1方向に垂直な第2方向との屈折率の差は、0.08~0.14、0.08~0.13、0.08~0.125、0.083~0.115、または0.085~0.11であり得る。第1方向および第2方向の屈折率差が前記範囲を満足することにより、光の歪みを認識できないため、優れた視認性を確保し得る。前記ポリエステル系フィルムは、下記数学式Dによる長さ方向(MD)の紫外線耐久性(TSMUV)が80%以上である。
【0116】
前記数学式Dにおいて、
TSMUVはMD方向の紫外線耐久性(%)であり、TSM1は初期MD方向の引張強度であり、TSM2は0.68W/mの出力で48時間紫外線に晒した後測定したMD方向の引張強度である。
【0117】
例えば、前記数学式Dによる紫外線耐久性(TSMUV)は、80%以上または82%以上であり、80%~100%または80%~95%であり得る。
【0118】
または、前記ポリエステル系フィルムは、下記数学式Eの幅方向(TD)の紫外線耐久性(TSTUV)が80%以上である。
【0119】
前記数学式Eにおいて、
TSTUVはTD方向の紫外線耐久性(%)であり、TST1は初期TD方向の引張強度であり、TST2は0.68W/mの出力で48時間紫外線に晒した後測定したTD方向の引張強度である。
【0120】
例えば、前記数学式Eによる紫外線耐久性(TSTUV)は、80%以上、85%以上または88%以上であり、80%~100%または80%~95%であり得る。
【0121】
具体的に、前記紫外線耐久性は引張強度を基準に評価し、前記ポリエステル系フィルムが延伸フィルムであるため、方向によって異なる紫外線耐久性を有し得る。
【0122】
実現例によるポリエステル系フィルムは、MD方向紫外線耐久性(TSMUV)およびTD方向紫外線耐久性(TSTUV)がいずれも80%以上を満足することにより、繰り返される強い紫外線においても優れた耐久性を維持し得る。
【0123】
また、前記ポリエステル系フィルムは、ポリエステル系樹脂を含み得る。
具体的に、前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとが重縮合した単一重合体樹脂または共重合体樹脂であり得る。また、前記ポリエステル系樹脂は、前記単一重合体樹脂と共重合体樹脂とが混合されたブレンド樹脂であり得る。より具体的に、前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとが1:1のモル比で混合されたものであり得る。
【0124】
前記ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメル酸、アゼライン酸、セバシン酸またはスベリン酸、ドデカジカルボン酸であり得る。
【0125】
また、前記ジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、またはビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンであり得る。
【0126】
好ましくは、前記ポリエステル系樹脂は、結晶性に優れた芳香族ポリエステル系樹脂であり、具体的にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を主成分とし得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり得る。
【0127】
例えば、前記ポリエステル系フィルムは、ポリエステル系樹脂、具体的にポリエチレンテレフタレート樹脂を85重量%以上含み、より具体的に90重量%以上、95重量%以上または99重量%以上で含み得る。
【0128】
または、前記ポリエステル系フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂以外に他のポリエステル系樹脂を含み得る。具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、2種のポリエステル系樹脂を含み得る。より具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂と、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂以外に他のポリエステル系樹脂とを含み得る。
【0129】
例えば、ポリエステル系フィルムは、15重量%以下、0.1重量%~10重量%、または0.1重量%~5重量%のポリエチレンナフタレート樹脂を含み得る。
【0130】
また、例えば、前記ポリエステル系フィルムは、85重量%以上のポリエチレンテレフタレート樹脂および15重量%以下のポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂を含み得る。より具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、85重量%以上のポリエチレンテレフタレート樹脂を含むとともに、0.1重量%~10重量%または0.1重量%~5重量%のポリエチレンナフタレート樹脂を含み得る。前記組成および含有量を満足することにより、ポリエステル系フィルムの加熱、延伸等を経る製造工程において引張強度のような機械的物性を向上させ得る。
【0131】
[基材層]
実現例によるポリエステル系フィルムは、基材層と前記基材層の少なくとも一面にコーティング層とを含む。
【0132】
前記基材層は、ポリエステル系樹脂を含み得る。ポリエステル系樹脂に関する説明は前述の通りである。
【0133】
前記基材層の厚さは30μm~145μmであり得る。例えば、基材層の厚さは、30μm~145μm、35μm~140μm、40μm~135μm、45μm~130μm、または50μm~130μmであり得る。前記基材層の厚さは、成形性または耐久性向上などの必要に応じて、前記範囲内で選択され得る。具体的に、前記基材層の厚さが30μm未満であると、成形性には優れるが耐久性が低いことがあり、145μmを超えると、耐久性には優れるが成形性が低くて保護フィルムとして適用する場合、品質が良くない。
【0134】
[コーティング層]
実現例によるポリエステル系フィルムは、前記基材層の少なくとも一面にコーティング層を含む。
【0135】
具体的に、前記コーティング層は、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上を含み得る。前記ポリエステル系フィルムは、基材層の少なくとも一面にウレタン系樹脂、エステル系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含むコーティング層を含むことにより、光通過量、全光性透過率および配向角特性を低下させることなく、かつ、耐久性およびフォルディング特性を向上させ得る。
【0136】
例えば、前記コーティング層は、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される1種以上を45重量%~65重量%または50重量%~60重量%で含み得る。
【0137】
一実現例によると、前記コーティング層は、前記基材層の一面にのみ位置してよく、前記基材層の両面にも位置し得る。
【0138】
具体的に、前記コーティング層は、前記基材層の一面に位置する第1コーティング層を含むか、または前記基材層の一面に位置する第1コーティング層と、前記基材層の他面に位置する第2コーティング層とを含み得る。
【0139】
一実現例によると、前記第1コーティング層に含まれる樹脂および第2コーティング層に含まれる樹脂は、必要に応じて同じか異なり得る。
【0140】
また、前記第1コーティング層および前記第2コーティング層の厚さは、それぞれ50nm~100nmであり得る。例えば、前記第1コーティング層の厚さは、50nm~100nm、55nm~95nm、60nm~85nm、65nm~80nm、または67nm~75nmであり、前記第2コーティング層の厚さは、50nm~100nm、55nm~95nm、60nm~85nm、65nm~80nm、または67nm~75nmであり得る。
【0141】
第1コーティング層および第2コーティング層の厚さが前記範囲を満足することにより、光通過量、全光性透過率および配向角特性を低下させることなく、かつ、耐久性およびフォルディング特性を向上させ得る効果を最大化し得る。
【0142】
また、前記第1コーティング層:前記第2コーティング層の厚さ比は、1:0.5~2.0であり得る。例えば、前記第1コーティング層:前記第2コーティング層の厚さ比は、1:0.5~2.0、1:0.7~1.6、1:0.8~1.3、1:0.9~1.1、または1:0.95~1.05であり得る。
【0143】
[硬化性樹脂層]
また他の実現例によると、前記基材層の少なくとも一面に硬化性樹脂層をさらに含み得る。具体的に、前記硬化性樹脂層は、前記基材層の一面または前記コーティング層の一面に位置し得る。
【0144】
より具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、前記基材層の一面にコーティング層が形成され、前記基材層の他面に硬化性樹脂層が形成されたものであり得る。
【0145】
あるいは、前記ポリエステル系フィルムは、前記基材層の両面に第1コーティング層および第2コーティング層が形成され、前記第1コーティング層および前記第2コーティング層の一面に硬化性樹脂層が形成されたものであり得る。具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、硬化性樹脂層、第1コーティング層、基材層、第2コーティング層、および硬化性樹脂層が順に積層されたものであり、硬化性樹脂層、第1コーティング層、基材層、および第2コーティング層が順に積層されたものであり得る。
前記基材層およびコーティング層に関する説明は前述の通りである。
【0146】
前記硬化性樹脂層は、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含み得る。例えば、前記光硬化性樹脂は、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマーまたはこれらの混合物を含んでよく、前記熱硬化性樹脂は、ウレタンアクリレートポリオール、メラミンアクリレートポリオール、エポキシアクリレートポリオールまたはこれらの混合物を含み得る。例えば、前記硬化性樹脂層はウレタンアクリレート系樹脂を含み得る。
【0147】
また、前記硬化性樹脂層は、架橋剤、帯電防止剤および消泡剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含み得る。例えば、前記架橋剤はシラン系架橋剤であり、ビニルエトキシシラン、ビニル-トリス-(β-メトキシエトキシ)シラン、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメトキシシランのようなアルコキシシラン;トリエポキシシランのようなエポキシシラン;ブチルアミノシランおよびエポキシ-アミノシランのようなアミノシラン;メチルシラン、ジメチルシラン、ビニルメチルジメチルシクロトリシロキサン、ジメチルシラン-オキソシクロペンタン、シクロヘキシルシラン、シクロヘキシルジシランのようなアルキルシラン;シランまたはジシランであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0148】
前記硬化性樹脂層の厚さは10nm~200nmであり得る。例えば、前記硬化性樹脂層の厚さは、20nm~200nm、35nm~180nm、50nm~150nm、50nm~130nm、60nm~120nm、または80nm~100nmであり得る。
【0149】
また他の実現例によるポリエステル系フィルムは、前記ポリエステル系フィルムの少なくとも一面に、必要に応じてハードコート層およびシリコーン接着層からなる群より選択される1種以上をさらに含み得る。
【0150】
[ポリエステル系フィルムの製造方法]
また他の実現例によるポリエステル系フィルムの製造方法は、基材層を製造する段階と、前記基材層の少なくとも一面にコーティング層を形成する段階とを含み、前記ポリエステル系フィルムの前記式1による光通過量が91%以上であるか、380nm~780nmの光に対する全光線透過率が92%以上である。
【0151】
前記方法により最終的に製造されるポリエステル系フィルムは、前述の光通過量、全光線透過率、および配向角のような特性を満足するように、組成および工程条件を調整し得る。具体的に、最終ポリエステル系フィルムが前述の特性を満足するためには、ポリエステル系樹脂の組成を調節し、その押出温度、延伸時の予熱温度、各方向別延伸比、延伸温度、延伸速度等を調整するか、延伸後に熱固定および弛緩を行いながら熱固定温度および弛緩率を調整し得る。
【0152】
まず、基材層を製造する。
具体的に、前記基材層を製造する段階は、ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する段階と、前記未延伸シートを70℃~90℃にて予熱する段階と、前記未延伸シートを70℃~125℃にて第1方向に1倍~1.5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に3倍~5倍に延伸して延伸シートを製造する段階と、前記延伸シートを160℃~230℃にて熱固定する段階とを含み得る。
【0153】
前記ポリエステル系樹脂に関する説明は前述の通りである。
具体的に、前記ポリエステル系樹脂を260℃~300℃、270℃~290℃または275℃~285℃の温度にて溶融押出した後、冷却して未延伸シートを製造し得る。
【0154】
その後、前記未延伸シートを70℃~90℃、75℃~90℃、または78℃~87℃にて予熱し得る。予熱温度が前記範囲を満足することにより、光通過量および全光線透過率を低下させることなく柔軟性を向上させ、優れたフォルディング特性を確保することができ、下記延伸工程中に破断する現象を効果的に防止し得る。
【0155】
その後、前記未延伸シートを70℃~125℃にて第1方向に1倍~1.5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に3倍~5倍延伸して延伸シートを製造し得る。この際、前記延伸は、前記未延伸シートを移送しながらロールに通過させることによって行うことができ、前記未延伸シートの移送速度および吐出量を調節することによって、所望の基材層の厚さに調整し得る。
【0156】
具体的に、前記延伸は、70℃~125℃、75℃~120℃、80℃~105℃、90℃~100℃、または92℃~98℃の温度にて行われ得る。延伸温度が前記範囲を満足することにより、延伸工程中に破断する現象を効果的に防止し得る。
【0157】
より具体的に、前記第1方向の延伸温度は75℃~100℃または85℃~98℃であり、前記第2方向の延伸温度は90℃~120℃または92℃~105℃であり得る。
【0158】
また、延伸速度は、1m/分~8m/分、1.3m/分~5m/分、1.5m/分~3m/分、または1.5m/分~2m/分であり得る。
【0159】
前記第1方向の延伸比は、1倍~1.5倍、1倍~1.3倍、1倍~1.2倍、または1.1倍~1.15倍であり、前記第1方向に垂直な第2方向の延伸比は、3倍~5倍、3.3倍~4.8倍、3.5倍~4.8倍、4倍~4.8倍、または4.2倍~4.5倍であり得る。
【0160】
また、前記第1方向:前記第2方向の延伸比の比率は、1:3~4.5であり得る。例えば、前記第1方向:前記第2方向の延伸比の比率は、1:3~4.5、1:3~4.4、または1:3.1~4.3であり得る。第1方向および第2方向の延伸比の比率が前記範囲を満足することにより、光通過量および全光線透過率を低下させることなく柔軟性を向上させ、優れたフォルディング特性を確保し得る。
【0161】
その後、前記延伸シートを160℃~230℃にて熱固定してポリエステル系フィルムを製造し得る。
【0162】
具体的に、前記熱固定はアニールであり、165℃~210℃、170℃~205℃または175℃~205℃にて、0.5分~8分、0.5分~5分、0.5分~3分または1分~2分間行われ得る。前記熱固定が完了した後、段階的に温度を下げられる。
【0163】
また、前記熱固定段階の後に弛緩する段階をさらに含み得る。
前記弛緩は、第1方向または前記第1方向に垂直な第2方向に行われ得る。あるいは、前記弛緩は、第1方向に1次弛緩した後、前記第2方向に2次弛緩して行われ得る。
【0164】
具体的に、前記弛緩は、60℃~180℃、80℃~150℃、80℃~120℃または90℃~110℃の温度にて、5%以下、4%以下、3%以下、0.1%~5%、0.5%~4%、1%~3%、または2%~3%の弛緩率で行われ得る。
【0165】
その後、前記基材層の少なくとも一面にコーティング層を形成する。
具体的に、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択された1種以上を含むコーティング層用組成物を前記基材層の少なくとも一面に塗布した後、乾燥してコーティング層を製造し得る。
【0166】
前記コーティング層用組成物は、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択された1種以上を、前記コーティング層用組成物の総重量を基準に45重量%~65重量%または50重量%~60重量%で含み得る。
【0167】
また、前記乾燥は、90℃~140℃、95℃~130℃、100℃~120℃、または105℃~115℃にて行われ得る。
【0168】
また他の実現例によると、前記基材層の少なくとも一面に硬化性樹脂層を形成し得る。前記硬化性樹脂層に関する説明は前述の通りである。
【0169】
具体的に、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む硬化層用組成物を、前記基材層の一面または前記コーティング層の一面にコーティングして硬化性樹脂層を形成し得る。
【0170】
より具体的に、前記硬化層用組成物は、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含んでよく、架橋剤、帯電防止剤および消泡剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含み得る。前記光硬化性樹脂、前記熱硬化性樹脂および前記添加剤に関する説明は前述の通りである。
【0171】
なお、前記コーティングは、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法などを用い得るが、これに限定されるものではない。
【0172】
また他の実現例によるポリエステル系フィルムの製造方法は、ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する段階と、前記未延伸シートを70℃~125℃にて第1方向に1倍~1.5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に3倍~5倍延伸して延伸フィルムを製造する段階と、前記延伸フィルムを160℃~230℃にて熱固定してポリエステル系フィルムを製造する段階とを含み、前記第1方向および前記第2方向の延伸比の比率が1:1.5~5.5であり、前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して前記式2を満足する。
【0173】
まず、ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する。
前記ポリエステル系樹脂に関する説明は前述の通りである。
【0174】
具体的に、前記ポリエステル系樹脂を260℃~300℃または270℃~290℃の温度にて溶融押出した後、冷却して未延伸シートを製造する。
【0175】
その後、前記未延伸シートを移送しながらロールに通過させる。この際、未延伸シートの速度および吐出量を調節することにより、所望のフィルム厚さに調整し得る。
その後、前記未延伸シートを70℃~125℃にて延伸する。
【0176】
また他の実現例によると、前記延伸段階の前に未延伸シートを予熱する段階をさらに含み得る。
【0177】
前記予熱温度の範囲は、前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準に、それぞれTg+5℃~Tg+50℃の範囲を満すとともに、70℃~90℃の範囲を満足する範囲に定められ得る。予熱温度が前記範囲を満足することにより、延伸しやすい柔軟性を確保するとともに、延伸中に破断する現象を効果的に防止し得る。
【0178】
一方、前記延伸は、70℃~125℃、75℃~120℃、80℃~110℃、85℃~100℃、または80℃~100℃にて行われ得る。延伸温度が前記範囲を外れると、破断が発生し得る。
【0179】
より具体的に、前記第1方向の延伸温度は75℃~90℃または75℃~85℃であり、前記第2方向の延伸温度は80℃~110℃または80℃~120℃であり得る。延伸温度が前記範囲を外れると、破断が発生し得る。
【0180】
前記延伸は、第1方向に1倍~1.5倍または1倍~1.45倍の延伸比で行われ、前記第1方向に垂直な第2方向に3倍~5倍、3.3倍~4.8倍、3.5倍~4.8倍、4倍~4.8倍、または4.2倍~4.5倍の延伸比で行われ得る。
【0181】
前記第1方向:第2方向の延伸比の比率が1:1.5~5.5であり得る。例えば、前記第1方向:第2方向の延伸比の比率は、1:2~5、1:2.5~4.5、または1:3.5~4.5であり得る。第1方向および第2方向の延伸比の比率が前記範囲を満足することにより、耐久性および曲率の均一性をさらに向上させ得る。
【0182】
また、前記延伸後にコーティング工程をさらに行い得る。具体的に、前記第1方向に延伸する前に、または前記第1方向に延伸した後前記第2方向に延伸する前にコーティング工程をさらに行い得る。より具体的に、前記フィルムに帯電防止などのような機能性を与え得る促進層などを形成するコーティング工程をさらに行い得る。前記コーティング工程はスピンコーティングまたはインラインコーティングにより行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0183】
その後、前記延伸フィルムを160℃~230℃にて熱固定して、ポリエステル系フィルムを製造する。
【0184】
具体的に、前記熱固定はアニールであってよく、165℃~210℃、170℃~200℃、170℃~190℃または175℃~185℃にて、0.5分~8分、0.5分~5分、0.5分~3分、または1分~2分間行われ得る。前記熱固定が完了した後、段階的に温度を下げられる。
【0185】
前記延伸段階の後に弛緩する段階をさらに含み得る。
前記弛緩は、第1方向または前記第1方向に垂直な第2方向に行われ得る。具体的に、前記弛緩は、60℃~180℃、80℃~150℃、80℃~120℃、または90℃~110℃にて5%以下の弛緩率で行われ得る。例えば、前記弛緩率は、5%以下、4%以下、または3%以下であり、0.1%~5%、0.5%~4%、または1%~3%であり得る。
【0186】
[保護フィルム]
また他の実現例による保護フィルムは、ポリエステル系フィルムと、前記ポリエステル系フィルムの一面に位置する硬化性樹脂層とを含み、前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して前記式2を満足する。
前記ポリエステル系フィルムに関する説明は前述の通りである。
【0187】
実現例による保護フィルムは、前記ポリエステル系フィルムの一面に硬化性樹脂層を含むことにより、衝撃吸収に有利な効果がある。
【0188】
図10は、一実現例による保護フィルムを示すものである。具体的に、図10は、ポリエステル系フィルム110と、前記ポリエステル系フィルム110の一面に位置する硬化性樹脂層120とからなる保護フィルム100を例示している。
前記硬化性樹脂層に関する説明は前述の通りである。
【0189】
また、前記保護フィルムは、必要に応じてハードコート層、接着層および離型層からなる群より選択される1種以上をさらに含み得る。
【0190】
図11は、他の実現例による保護フィルムを示すものである。具体的に、図11は、ポリエステル系フィルム110と、前記ポリエステル系フィルムの一面に位置する硬化性樹脂層120と、前記硬化性樹脂層120の一面に位置するハードコート層130と、前記ポリエステル系フィルム110の他面に位置する接着層140と、前記接着層140の一面に位置する離型層150とを含む保護フィルム100を例示している。
【0191】
前記ハードコート層は光硬化性樹脂を含み得る。前記保護フィルムは、前記ハードコート層を含むことによりフィルム表面硬度を向上させ得るので、優れた耐スクラッチ性を有し得る。
【0192】
前記光硬化性樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物などの1つまたは2つ以上の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。1つの不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メト)アクリレート、エチルヘキシル(メト)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。2つ以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メト)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メト)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メト)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メト)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メト)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メト)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メト)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メト)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メト)アクリレートなどが挙げられる。なお、本明細書において「(メト)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートを意味する。
【0193】
前記接着層は接着剤樹脂を含み得る。前記接着剤樹脂は、例えば、アクリル単量体およびカルボキシル基含有不飽和単量体の中から選択された1種以上が重合して形成されたものであり得る。アクリル単量体は、例えば、メチル(メト)アクリレート、ブチル(メト)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メト)アクリレート、イソブチル(メト)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メト)アクリレート、グリセロール(メト)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メト)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メト)アクリレート、ジシクロペンタニル(メト)アクリレートなどがある。また、カルボキシル基含有不飽和単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などがある。
【0194】
前記離型層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンテレトタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンナフタレートフィルムのようなポリエステル系フィルムであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0195】
[保護フィルムの製造方法]
また他の実現例による保護フィルムの製造方法は、ポリエステル系フィルムを製造する段階と、前記ポリエステル系フィルムの一面に硬化性樹脂層を形成する段階とを含み、前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して前記式2を満足する。
前記ポリエステル系フィルムおよびその製造方法に関する説明は前述の通りである。
【0196】
具体的に、前記硬化性樹脂層を形成する段階は、プライマー組成物を前記ポリエステル系フィルムの一面にコーティングする段階を含む。具体的に、前記プライマー組成物は、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂を含んでよく、架橋剤、帯電防止剤および消泡剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含み得る。前記光硬化性樹脂、前記熱硬化性樹脂および前記添加剤に関する説明は前述の通りである。
【0197】
前記コーティングは、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法などを用い得るが、これらに限定されるものではない。
【0198】
[表示装置]
また他の実現例による表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルの一面に位置するポリエステル系フィルムとを含み、前記ポリエステル系フィルムが基材層と、前記基材層の少なくとも一面にコーティング層とを含み、前記ポリエステル系フィルムの前記式1による光通過量が91%以上であるか、380nm~780nmの光に対する全光線透過率が92%以上である。
【0199】
また他の実現例による表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルの一面に位置するポリエステル系フィルムとを含み、前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して前記式2を満足する。
【0200】
前記ポリエステル系フィルムに関する説明は前述の通りである。
【0201】
具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、製造工程上の条件に応じて寸法を調節することにより、表示装置、特にフレキシブル表示装置やフォルダブルディスプレイの保護フィルムとして求められる特性を実現し得る。より具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、フレキシブル表示装置やフォルダブルディスプレイに適用すると、多数の繰り返しフォルディングの際にも浮き現象による白化やクラックのような変形がほとんど発生することなく、かつ、耐久性、透明性および視認性の特性を維持し得る。
【0202】
前記内容を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するためのものであるのみ、実施例の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0203】
(実施例)
以下の実施例により本発明をより具体的に説明する。以下の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0204】
(実施例1)
[ポリエステル系フィルムの製造]
(実施例1-1)
(1)基材層の製造
エチレングリコールとテレフタル酸を1:1のモル比で適用したポリエチレンテレフタレート樹脂(SKC社製)を280℃の押出機を介して溶融押出した後、35℃のキャスティングロールで冷却して未延伸シートを製造した。
【0205】
その後、前記未延伸シートを85℃にて予熱した後、95℃にてMD方向に1.1倍延伸し、TD方向に4.3倍延伸した後、180℃にて90秒間熱固定した。この際、TD方向への延伸速度は1.9m/分であった。その後、100℃にてTD方向に2.5%の弛緩率で弛緩して、平均厚さ125μmの基材層を製造した。
【0206】
(2)フィルムの製造
前記基材層の両面にウレタン系樹脂を55重量%で含むコーティング組成物をそれぞれ塗布し乾燥して、第1コーティング層(厚さ:70nm)および第2コーティング層(厚さ:70nm)が形成されたポリエステル系フィルムを製造した。
【0207】
(実施例1-2~1-6および比較例1-1~1-6)
下記表1に記載の工程条件に従って、下記表1に記載の厚さでポリエステル系フィルムを製造したことを除いて、実施例1-1と同様の方法によりポリエステル系フィルムを製造した。
【0208】
【0209】
(実験例1)
(実験例1-1:厚さ偏差)
前記実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-6において製造されたポリエステル系フィルムについて、電気マイクロメーター(商品名:ミリトロン1245D、ファインリューフ社製)を用いて幅方向に5cmの間隔で厚さを測定し、下記数学式Aにより厚さ偏差を計算した。
【0210】
[数A]
厚さ偏差(μm)=幅方向厚さの最大値(μm)-幅方向厚さの最小値(μm)
【0211】
(実験例1-2:面内位相差および厚さ方向位相差)
前記実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-6において製造されたポリエステル系フィルムについて、面内位相差および厚さ方向位相差を測定した。
【0212】
具体的に、前記ポリエステル系フィルムについて、直交する二軸の屈折率(Nx、Ny)および厚さ方向の屈折率(Nz)を大塚電子社製の屈折率計(商品名:RETS-100、測定波長:550nm)を用いて25℃にて測定し、フィルムの厚さd(nm)は、電気マイクロメーター(商品名:ミリトロン1245D、ファインリューフ社製)を用いて測定した後、単位をnmに換算した。
【0213】
下記数学式BおよびCにより、前記測定したΔNxy(=|Nx-Ny|)にフィルムの厚さd(nm)を乗じて面内位相差(Re)を計算し、前記測定したΔNxz(=|Nx-Nz|)およびβNyz(=|Ny-Nz|)にそれぞれフィルムの厚さd(nm)を乗じて得られる値の平均値を厚さ方向位相差(Rth)として計算した。
【0214】
【0215】
(実験例1-3:配向角、配向角偏差および配向角変化率)
前記実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-6において製造されたポリエステル系フィルムについて、大塚電子社製の屈折率計(商品名:RETS-100、測定波長:550nm)を用いて全幅に対する配向角を測定した。
【0216】
また、前記測定結果において、フィルムの中心軸に対して幅方向に±2000mmの範囲内で配向角の平均値を測定し、それによる配向角偏差を算出した。
【0217】
また、実施例1-1、1-3および1-5、および比較例1-4の前記ポリエステル系フィルムを幅方向(TD)に10cmまたは30cmの間隔で切断して配向角を測定し、それによる配向角変化率を算出した。
【0218】
図1~4は、それぞれ実施例1-1、1-3および1-5、比較例1-4のポリエステル系フィルムの幅方向TDによる配向角測定結果を示すものである。
【0219】
(実験例1-4:光通過量)
前記実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-6において製造されたポリエステル系フィルムについて、TESデジタル照度計(商品名:TES-1334A、TES社製)を用いて光通過量を測定した。
【0220】
具体的に、図5に示すように、下段に光出射器10を配置し、前記光出射器10の上部に互いに間隔を置いて平行に第1偏光板21および第2偏光板22を配置した。このとき、前記光出射器10と前記第1偏光板21との間の距離は約2.5cmであり、前記光出射器10と前記第2偏光板22との間の距離は約20cmであった。
【0221】
前記第1偏光板と前記第2偏光板との間に前記ポリエステル系フィルムを配置する前後に、前記光出射器10を用いて12Vで530nmの光(a:光の方向)を供給および透過させ、その輝度(lux)をそれぞれ測定した後、下記式1により光通過量を計算した。
【0222】
前記式1において、
Aは平行に位置する2枚の偏光板に530nmの光を透過させたときの輝度であり、Bは前記2枚の偏光板の間に前記ポリエステル系フィルムを配置した後、530nmの光を透過させたときの輝度であり、このとき、前記2枚の偏光板の光軸(b)に対して前記ポリエステル系フィルムの幅方向(TD)が45°の角度で位置している。
【0223】
また、前記実験例1-4で測定した配向角に対する光通過量の比率を算出した。
【0224】
(実験例1-5:全光線透過率)
前記実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-6で製造されたポリエステル系フィルムについて、ヘイズメーター(BYK-Gardner社製)を用いてASTM D1003に基づいて全光線透過率を測定した。
【0225】
(実験例1-6:透湿度)
前記実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-6において製造されたポリエステル系フィルムについて、ISO2528(1995)に基づいて水蒸気透過率測定装置(商品名:PERMATRAN-W、MOCON社製)を用いて透湿度(g/m・day)を測定した。
【0226】
(実験例1-7:衝撃強度)
前記実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-6において製造されたポリエステル系フィルムを保護フィルムとして貼り付けた携帯機器を80cmにて10回落下させ、液晶に衝撃が加わる損傷の程度を下記基準に基づいて評価した。
◎:10回とも損傷なし。
○:7回~9回損傷なし。
△:1回~6回損傷なし。
×:10回とも損傷あり。
【0227】
(実験例1-8:フォルディング特性)
前記実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-6において製造されたポリエステル系フィルムについて、MIT耐折疲労試験機(folding endurance tester、商品名:MIT-DA、東洋精機製作所製)を用い、ASTM D2176およびTAPPI T511に基づいてMITフォルディングテストを行った。
【0228】
具体的に、前記フォルディングテストは、前記フィルムの上面および下面に超薄型ガラスを光学透明接着剤(OCA)で貼り合わせて積層体を製造し、前記積層体を1.5mmの曲率半径でMD方向、TD方向および前記TD方向に対して45°方向にそれぞれ15000回繰り返しフォルディングした後、層間剥離の発生有無を確認した。
○:層間剥離が発生する。
×:層間剥離が発生しない。
【0229】
(実験例1-9:レインボー)
前記実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-6において製造されたポリエステル系フィルムの一面を黒く処理し、極角にて肉眼によりレインボー現象の視認性を評価した。この際、暗室および3波長ランプの下で下記基準に従って評価した。
0:レインボー現象は見られず、均一な色感を見せる。
1:レインボー現象が薄く見られ、均一な色感を見せる。
2:レインボー現象が薄く見られるが、色感が均一ではない。
3:レインボー現象が強く見られ、強い色感を見せる。
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
前記表2~5に示すように、実施例1-1~1-6のポリエステル系フィルムは、比較例1~6のポリエステル系フィルムに比べて、耐久性、信頼性および視認性に優れた結果を示した。
【0235】
具体的に、実施例1-1~1-6のポリエステル系フィルムは、光学特性、特に光通過量および全光性透過率に優れながら厚さ偏差が低く、配向角が好ましい範囲を満足することにより、優れた視認性を有する。
【0236】
特に、実施例1-1、1-3および1-5のポリエステル系フィルムの幅方向による配向角測定結果を示す図1~3から分かるように、実施例1-1、1-3および1-5は、フィルムの厚さによる配向角偏差および配向角変化率が非常に低く、全光線透過率、フォルディング特性に優れ、またレインボーの発生もないので、視認性およびその信頼性に非常に優れている。
【0237】
また、実施例1-1~1-6のポリエステル系フィルムは、面内位相差、厚さ方向位相差、透湿度および衝撃強度がいずれも好ましい結果を示すため、耐久性および寸法安定性に優れている。したがって、実施例1-1~1-6のポリエステル系フィルムをスマートフォンなどの表示装置の保護フィルムとして適用すると、光学特性および耐久性に優れるとともに、視認性および指紋認識率を向上させ得る。
【0238】
一方、比較例1-1~1-6のフィルムは配向角が高いか、光通過量および全光線透過率が低いため視認性が良くなかった。特に、比較例1-4のポリエステル系フィルムの幅方向による配向角測定結果は、図4から分かるように、フィルムの厚さによる配向角偏差および配向角変化率が極めて高いとともに全光線透過率が低く、フォルディング特性が良くないことやレインボーの発生により視認性が良くないため、視認性およびその信頼度が非常に低かった。
【0239】
また、比較例1-5および1-6は、配向角、透湿度および衝撃強度は実施例1-4と近似のレベルを示したが、コーティング層の厚さが好ましい範囲から外れることにより、配向角偏差、配向角変化率、光通過量、および全光線透過率のような光学特性が低下した。
【0240】
(実施例2)
[ポリエステル系フィルムの製造]
(実施例2-1)
エチレングリコールとテレフタル酸とを1:1のモル比で適用したポリエチレンテレフタレート樹脂(SKC社製)を280℃の押出機を介して溶融押出した後、35℃のキャスティングロールで冷却して未延伸シートを製造した。
【0241】
その後、前記未延伸シートを95℃にてMD方向に1.1倍延伸し、TD方向に4.3倍延伸した後、180℃にて90秒間熱固定した。その後、130℃にてTD方向に2%の弛緩率で弛緩して、厚さ125μmのポリエステル系フィルムを製造した。
【0242】
(実施例2-2)
エチレングリコールとテレフタル酸とを1:1のモル比で適用したポリエチレンテレフタレート樹脂(SKC社製)を280℃の押出機を介して溶融押出した後、35℃のキャスティングロールで冷却して未延伸シートを製造した。
【0243】
その後、前記未延伸シートを95℃にてMD方向に1.1倍延伸し、TD方向に4.3倍延伸した後、200℃にて90秒間熱固定した。その後、130℃にてTD方向に2%の弛緩率で弛緩して、厚さ80μmのポリエステル系フィルムを製造した。
【0244】
(比較例2-1)
エチレングリコールとテレフタル酸とを1:1のモル比で適用したポリエチレンテレフタレート樹脂(SKC社製)を280℃の押出機を介して溶融押出した後、35℃のキャスティングロールで冷却して未延伸シートを製造した。
【0245】
その後、前記未延伸シートを135℃にてMD方向に1.1倍延伸し、TD方向に4.3倍延伸した後、230℃にて90秒間熱固定した。その後、130℃にてTD方向に2%の弛緩率で弛緩して、厚さ50μmのポリエステル系フィルムを製造した。
【0246】
(実験例2)
(実験例2-1:引張率)
前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムについて、下記条件で引張強度計(UTM)を用いて引張率を測定した。
-試験片の長さ:50mm
-試験片幅:10mm
-試験片厚さ:50μm
-測定温度:常温
-引張速度:50mm/min
-引張方向:幅方向(TD)、長さ方向(MD)、および45°方向
【0247】
(1)初期引張率別荷重測定
まず、前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムの試験片を前記3つの引張方向に対して、初期寸法に対して1%または2%引っ張るそれぞれの荷重(N1%およびN2%)を測定した。
【0248】
図12は、実施例2-1のポリエステル系フィルムの長さ方向MDに加わる荷重(N)による引張率(%)の曲線を示すものであり、図13は、実施例2-1のポリエステル系フィルムの45°方向に加わる荷重(N)による引張率(%)の曲線を示したものである。このような荷重による引張率曲線からN1%およびN2%の荷重をそれぞれ得た。
【0249】
(2)荷重持続時の最終引張率測定
その後、前記で測定された各荷重を、前記3つの引張方向に対して試験片に一定に20分間加わるように維持した後、最初の試験片の寸法に対する最終引張率(%)であるS~Sをそれぞれ測定した。
【0250】
具体的に、SはN1%をMD方向に対して20分間持続した後の最終引張率(%)であり、SはN2%をMD方向に対して20分間持続した後の最終引張率(%)であり、SはN1%をTD方向に対して20分間持続した後の最終引張率(%)であり、SはN2%をTD方向に対して20分間持続した後の最終引張率(%)であり、SはN1%を45°方向に対して20分間持続した後の最終引張率(%)であり、SはN2%を45°方向に対して20分間持続した後の最終引張率(%)である。
【0251】
図14は、実施例2-1および比較例2-1のポリエステル系フィルムに対して、長さ方向(MD)に一定の荷重条件下で時間(s)による引張率(%)の曲線を示すものである。
【0252】
図15は、実施例2-1および比較例2-1のポリエステル系フィルムに対して、幅方向TDに一定の荷重条件下で時間(s)による引張率(%)の曲線を示すものである。
【0253】
図16は、実施例2-1および比較例2-1のポリエステル系フィルムに対して、45°方向に一定の荷重条件下で時間(s)による引張率(%)の曲線を示すものである。
【0254】
(3)式2~4
前記(2)で得られた最終引張率により、下記式2~4を計算した。
【0255】
[式2]
0.5≦|S-S|≦3.1
[式3]
0.5≦|S-S|≦5.2
[式4]
0.5≦|S-S|≦7.2
【0256】
(実験例2-2:フォルディングテスト)
前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムの試験片について、フォルディング耐久性試験機(folding endurance tester、商品名:MIT-DA、東洋精機製作所製)を用いてASTM D2176およびTAPPI T511に基づくMITフォルディングテスト(MIT folding test)を行った。
【0257】
具体的に、前記フォルディングテストは、前記フィルム試験片の上面および下面に超薄型ガラスを光学透明接着剤(OCA)で貼り合わせて積層体を製造し、前記積層体を1.5mmの曲率半径で15000回繰り返しフォルディングした後、層間剥離の発生有無を確認した。
【0258】
○:層間剥離が発生する。
×:層間剥離が発生しない。
【0259】
(実験例2-3:押圧(dent)跡評価)
前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムの試験片について、コアにロール状で巻取(winding)し、1週間が経過した後、巻出(unwinding)の際に、前記フィルム試験片の表面に点状の押圧跡の発生有無を確認した。
【0260】
○:押圧跡がある。
×:押圧跡がない。
【0261】
【0262】
【0263】
前記表6および7並びに図14図16から分かるように、実施例2-1および2-2のポリエステル系フィルムは、各方向による引張荷重に対する変形率が低く、式2~4を満足することにより、柔軟性に優れた結果を示した。また、実施例2-1および2-2のポリエステル系フィルムは、15000回の繰り返しフォルディング後にも剥離およびフィルム表面の押圧跡も発生しなかったため、高い柔軟性と優れた外観特性とを同時に達成したことが分かる。
【0264】
一方、比較例2-1のポリエステル系フィルムは、各方向による引張荷重に対する変形率が高かった。また、比較例2-1のポリエステル系フィルムは、15000回の繰り返しフォルディング後に剥離およびフィルム表面の押圧跡も発生したため、柔軟性および外観特性が良くなかった。
【0265】
(実験例2-4:厚さ偏差)
前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムについて、大塚電子社の屈折率計(RETS、測定波長550nm)を用いて厚さ(μm)を測定し、これに対する厚さ偏差を計算した。
【0266】
(実験例2-5:面内位相差および厚さ方向位相差)
前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムについて、面内位相差および厚さ方向位相差を測定した。
【0267】
具体的に、前記ポリエステル系フィルムについて、直交する二軸の屈折率(Nx、Ny)および厚さ方向の屈折率(Nz)を大塚電子社の屈折率計(RETS-100、測定波長550nm)を用いて測定し、フィルムの厚さd(nm)は、電気マイクロメーター(ミリトロン1245D、ファインリューフ社製)を用いて測定した後、単位をnmに換算した。
【0268】
下記数学式BおよびCにより、前記測定したΔNxy(=|Nx-Ny|)にフィルムの厚さd(nm)を乗じて面内位相差(Re)を計算し、前記測定したΔNxz(=|Nx-Nz|)およびΔNyz(=|Ny-Nz|)にそれぞれフィルム厚さd(nm)を乗じて得られる値の平均値を厚さ方向位相差(Rth)として算出した。
【0269】
【0270】
(実験例2-6:光通過量)
前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムについて、TES社の照度計(1334A)を用いて光通過量を測定した。
【0271】
(実験例2-7:光透過率)
前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムについて、島津製作所の紫外可視分光光度計(UV2600、測定波長:380nm)を用いて光透過率を測定した。
【0272】
(実験例2-8:透湿度)
前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムについて、MOCON社の水蒸気透過率測定装置(PERMATRAN-W)を用いて透湿度を測定した。
【0273】
(実験例2-9:衝撃強度)
前記実施例2-1、実施例2-2および比較例2-1のポリエステル系フィルムを保護フィルムとして貼り付けた携帯機器を80cmにて10回落下させ、液晶に衝撃が加わる損傷の有無を評価した。
【0274】
◎:10回とも損傷なし。
○:7回~9回損傷なし。
△:1回~6回損傷なし。
×:10回とも損傷あり。
【0275】
【0276】
表8から分かるように、実施例2-1および2-2のポリエステル系フィルムは、比較例2-1のポリエステル系フィルムに比べて耐久性および透明性に優れた結果を示した。
【0277】
具体的に、実施例2-1および2-2のポリエステル系フィルムは、厚さ偏差、位相差、光通過量、光透過率および透湿度がいずれも好ましい範囲を満し、衝撃強度結果も優れるので、耐久性および透明性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0278】
10:光出射器
21:第1偏光板
22:第2偏光板
30:照度計
a:光の方向
b:光軸
1:フォルダブルディスプレイ装置
2:インフォールディングタイプのフォルダブルディスプレイ装置
3:アウトフォールディングタイプのフォルダブルディスプレイ装置
c:インフォールディングされるポイント
d:アウトフォールディングされるポイント
100:保護フィルム
110:ポリエステル系フィルム
120:硬化性樹脂層
130:ハードコート層
140:接着層
150:離型層
200:カバーウィンドウ
300:表示パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2021-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内第1方向に対して下記式2を満足する、ポリエステル系フィルム:
[式2]
1.3≦|S-S|≦3.1
前記式2において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に2%引っ張る荷重である。
【請求項2】
前記第1方向に垂直な第2方向に対して下記式3を満足する、請求項1に記載のポリエステル系フィルム:
[式3]
0.5≦|S-S|≦5.2
前記式3において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第2方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第2方向に2%引っ張る荷重である。
【請求項3】
前記第1方向を基準にして45°である第3方向に対して下記式4を満足する、請求項1に記載のポリエステル系フィルム:
[式4]
0.5≦|S-S|≦7.2
前記式4において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第3方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第3方向に2%引っ張る荷重である。
【請求項4】
前記Sが0.1~2.5であり、前記Sが1.5~4.5であり、
前記Sが0.8~2.4であり、前記Sが2.3~7.5であり、
前記S:前記Sは0.4~0.7:1であり、
前記S:前記Sは0.4~0.7:1である、請求項2に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項5】
前記第1方向のN1%が10N~25Nであり、
前記第1方向のN2%が28N~50Nであり、
前記第2方向のN1%が25N~45Nであり、
前記第2方向のN2%が50N~70Nである、請求項2に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項6】
ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する段階と、
前記未延伸シートを70℃~125℃にて第1方向に1倍~1.5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に3倍~5倍延伸して延伸フィルムを製造する段階と、
前記延伸フィルムを160℃~230℃にて熱固定してポリエステル系フィルムを製造する段階とを含み、
前記第1方向:前記第2方向の延伸比の比率が1:1.5~5.5であり、
前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して下記式2を満足する、請求項1に記載のポリエステル系フィルムの製造方法:
[式2]
1.3≦|S-S|≦3.1
前記式2において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張率(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に1%引っ張る荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に2%引っ張る荷重である。
【請求項7】
請求項1に記載のポリエステル系フィルムと、
前記ポリエステル系フィルムの一面に位置した硬化性樹脂層とを含み、
前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して下記の式2を満足する、保護フィルム:
[式2]
1.3≦|S -S |≦3.1
前記式2において、
前記S はN 1% を20分間持続した後の最終引張り率(%)であり、
前記S はN 2% を20分間持続した後の最終引張り率(%)であり、
このとき、N 1% は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に1%引っ張る荷重であり、N 2% は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に2%引っ張る荷重である。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内第1方向に対して下記式2を満足する、ポリエステル系フィルム:
[式2]
1.3≦|S-S|≦3.1
前記式2において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して1%増加したときの荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して2%増加したときの荷重である。
【請求項2】
前記第1方向に垂直な第2方向に対して下記式3を満足する、請求項1に記載のポリエステル系フィルム:
[式3]
0.5≦|S-S|≦5.2
前記式3において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第2方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して1%増加したときの荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第2方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して2%増加したときの荷重である。
【請求項3】
前記第1方向を基準にして45°である第3方向に対して下記式4を満足する、請求項1に記載のポリエステル系フィルム:
[式4]
0.5≦|S-S|≦7.2
前記式4において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第3方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して1%増加したときの荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第3方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して2%増加したときの荷重である。
【請求項4】
前記Sが0.1~2.5であり、前記Sが1.5~4.5であり、
前記Sが0.8~2.4であり、前記Sが2.3~7.5であり、
前記S:前記Sは0.4~0.7:1であり、
前記S:前記Sは0.4~0.7:1である、請求項2に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項5】
前記第1方向のN1%が10N~25Nであり、
前記第1方向のN2%が28N~50Nであり、
前記第2方向のN1%が25N~45Nであり、
前記第2方向のN2%が50N~70Nである、請求項2に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項6】
ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する段階と、
前記未延伸シートを70℃~125℃にて第1方向に1倍~1.5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に3倍~5倍延伸して延伸フィルムを製造する段階と、
前記延伸フィルムを160℃~230℃にて熱固定してポリエステル系フィルムを製造する段階とを含み、
前記第1方向:前記第2方向の延伸比の比率が1:3.5~4.5であり、
前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して下記式2を満足する、請求項1に記載のポリエステル系フィルムの製造方法:
[式2]
1.3≦|S-S|≦3.1
前記式2において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して1%増加したときの荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して2%増加したときの荷重である。
【請求項7】
請求項1に記載のポリエステル系フィルムと、
前記ポリエステル系フィルムの一面に位置した硬化性樹脂層とを含み、
前記ポリエステル系フィルムが面内第1方向に対して下記の式2を満足する、保護フィルム:
[式2]
1.3≦|S-S|≦3.1
前記式2において、
前記SはN1%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
前記SはN2%を20分間持続した後の最終引張ひずみ(%)であり、
このとき、N1%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して1%増加したときの荷重であり、N2%は前記ポリエステル系フィルムを前記第1方向に所定の引張速度で引っ張り、長さが初期長さに対して2%増加したときの荷重である。