IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベイパー テクノロジーズ インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-90639摩耗指標を備えた銅基の抗菌PVDコーティング
<>
  • 特開-摩耗指標を備えた銅基の抗菌PVDコーティング 図1A
  • 特開-摩耗指標を備えた銅基の抗菌PVDコーティング 図1B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090639
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】摩耗指標を備えた銅基の抗菌PVDコーティング
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
B32B9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021197427
(22)【出願日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】63/122,240
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521359944
【氏名又は名称】ベイパー テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライス ランドルフ アントン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ピーターソン
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA12
4F100AA12B
4F100AA12C
4F100AA17
4F100AA17B
4F100AA21
4F100AA21B
4F100AA21C
4F100AA27
4F100AA27B
4F100AA27C
4F100AA37
4F100AA37B
4F100AA37C
4F100AB01
4F100AB01A
4F100AB04
4F100AB04A
4F100AB17
4F100AB17B
4F100AB19
4F100AB19B
4F100AB19C
4F100AB31
4F100AB31C
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK74
4F100AK74A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100EH46
4F100EH66
4F100EH66C
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB41
4F100GB66
4F100GB71
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗菌コーティングされた基板を提供する。
【解決手段】生物活性コーティングされた基板は、ベース基板12と、ベース基板の上に配置された指標層14と、指標層上に配置された生物活性層16とを含む。生物活性コーティングは、生物に対して生物学的効果または生理学的効果を有する材料を指す。指標層は、生物活性層が摩耗除去されたときに使用者によって視覚的に知覚されるように、生物活性層とは十分に異なる色を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
前記ベース基板上に配置された指標層と、
前記指標層上に配置された生物活性層と
を備え、前記指標層は、前記生物活性層が摩耗除去されたときに使用者によって視覚的に知覚されるように、前記生物活性層とは十分に異なる色を有する、生物活性コーティングされた基板。
【請求項2】
前記生物活性層は、生物活性金属、生物活性合金、生物活性金属含有化合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分から構成される、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項3】
前記生物活性層は、銅金属、銅酸化物、銅窒化物、炭素原子を含む銅酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分から構成される、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項4】
前記生物活性層は、銅金属、銅合金、銅酸化物、銅窒化物、炭素原子を含む銅酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分から構成される、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項5】
前記生物活性層は、銅合金、銅含有化合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分から構成される、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項6】
前記生物活性層は、銅合金と、窒化ジルコニウム、窒化チタン、酸炭化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ダイヤモンドライクカーボン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分との混合物から構成される、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項7】
前記指標層は、炭窒化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸炭化ジルコニウム、酸窒化ジルコニウムまたはオキシ炭窒化ジルコニウム、窒化チタン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、またはダイヤモンドライクカーボンから構成される、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項8】
前記生物活性層は、約50~1500nmの厚さを有し、前記指標層は、20~300nmの厚さを有する、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項9】
前記生物活性層はCuOで構成され、ここで、xは0.6~1.2である、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項10】
前記生物活性層はCuOから構成され、ここで、aは0.0~1.2であり、bは0.01~0.4である、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項11】
前記生物活性層はCuOで構成され、ここで、cは0.0~1.2であり、dは0.01~0.4である、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項12】
前記生物活性層のCIE標準光源D50に対するLab色空間座標L、a、およびbのうちの少なくとも1つは、前記指標層のものと少なくとも5%異なる、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項13】
前記生物活性層のCIE標準光源D50に対するLab色空間座標L、a、およびbのうちの各々は、前記指標層のものと少なくとも5%異なる、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項14】
前記生物活性層および前記指標層のデルタEは、2.0以上である、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項15】
前記生物活性層および前記指標層のデルタEは、5.0以上である、請求項1に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項16】
ベース基板と、
前記ベース基板上に配置されたベース層と、
前記ベース層上に配置された複数の交互の生物活性層および中間層と
を備え、前記ベース層および/または前記中間層のうちの少なくとも1つは、前記生物活性層のうちの1つまたは複数が摩耗除去されたときに使用者によって視覚的に知覚されるように、前記生物活性層とは十分に異なる色を有する指標層である、生物活性コーティングされた基板。
【請求項17】
1~10層の生物活性層および1~10層の中間層を備える、請求項16に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項18】
各々の生物活性層は、生物活性金属、生物活性合金、生物活性金属含有化合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分から構成される、請求項16に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項19】
各々の生物活性層は、銅金属、銅合金、銅酸化物、銅窒化物、炭素原子を含む銅酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分から構成される、請求項16に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項20】
前記ベース層および各々の中間層は、炭窒化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸炭化ジルコニウム、酸窒化ジルコニウムまたはオキシ炭窒化ジルコニウム、窒化チタン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、またはダイヤモンドライクカーボンから構成される、請求項16に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項21】
各々の生物活性層は、約50~1500nmの厚さを有し、各々の中間層は、20~300nmの厚さを有し、前記ベース層は、20~300nmの厚さを有する、請求項16に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項22】
最も外側の生物活性層のCIE標準光源D50に対するLab色空間座標L、a、およびbのうちの少なくとも1つは、前記指標層のものと少なくとも5%異なる、請求項16に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項23】
最も外側の生物活性層のCIE標準光源D50に対するLab色空間座標L、a、およびbのうちの各々は、前記指標層のものと少なくとも5%異なる、請求項16に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項24】
最も外側の生物活性層および前記指標層のデルタEは、2.0以上である、請求項16に記載の生物活性コーティングされた基板。
【請求項25】
最も外側の生物活性層および前記指標層のデルタEは、5.0以上である、請求項16に記載の生物活性コーティングされた基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも1つの観点によれば、本発明は、物理蒸着および/または関連する方法によって形成される生物活性特性を備えたコーティングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物理蒸着(PVD)は、薄膜の形成または基板のコーティングの技術である。PVDは、後に表面上で凝縮してコーティング層を形成する材料の気化を伴う。PVDは、欠陥と見なされることがよくあるマクロ粒子の堆積を引き起こす可能性がある。マクロ粒子は、コーティングされた層に緩く結合され得る。機械的プロセスを使用してこれらのマクロ粒子を除去できるが、除去するとピンホールが残り、これもまた欠陥と見なされることがよくある。例えば、陰極ターゲットの表面に高電流、低電圧のアークを伴うPVDの一形態である陰極アーク蒸着(CAE)は、マクロ粒子を生成する。マクロ粒子およびピンホールは欠陥として認識されるため、マクロ粒子のサイズおよび量を排除または低減するための多大な努力が払われている。
【0003】
生物活性特性を備えたコーティングは、様々な目的に役立つ可能性がある。生物活性とは、生物に対して生物学的効果または生理学的効果を有する材料を指す。例えば、生物活性材料は、生物の正常な生物学的機能または生理学的機構の改変をもたらす材料を含む。本明細書で使用される場合の生物活性には、微生物に対する有益および有害な効果、または微生物の正常な機能に対する改変が含まれる。一般的な生物活性材料の1つは、抗菌物質である。抗菌コーティングは多くの目的に役立つ。一般的に、抗菌コーティングは、ウイルス、細菌、または真菌のような微生物の増殖を抑制するか、または微生物を死滅させる。特に関連する一例には、抗菌材料を使用して伝染病の蔓延を防ぐことが含まれる。抗菌材料はまた、衛生的な目的に役立つ可能性がある。病気の蔓延を防ぎ、衛生状態を高めたいという願望は、抗菌材料を開発するための多大な努力をもたらした。
【0004】
医療施設および健康治療での抗菌材料の使用は、大きな利益を提供することができる。病院などの医療施設は、高濃度の細菌と脆弱な免疫を持つ個人を組み合わせた独特の環境を提供する。したがって、病院などの施設は抗菌性の表面から大きな恩恵を受ける。医療機器用の抗菌材料は、消毒の負担を軽減し、病気の蔓延を防ぐことができる。さらに、手頃な価格の抗菌表面は、生物と接触するあらゆる表面に利点をもたらす可能性がある。例えば、調理に関係する表面またはドアノブのような一般的に接触される表面は、抗菌特性から大きな恩恵を受けることができる。主に装飾的な表面でさえ、手頃な価格であれば、抗菌特性の恩恵を受け、有害なまたは望ましくない抗菌生命の拡散と成長を抑制するのに役立つ可能性がある。
【0005】
しかしながら、抗菌材料の製造は困難で費用がかかる可能性がある。さらに、抗菌特性は他の望ましくない特性を有する可能性がある。例えば、一部の抗菌材料は柔らかすぎる場合がある。他の抗菌材料は、耐摩耗性が低い場合がある。Microban(登録商標)は、有機マトリックスに分散した銀粒子を含む抗菌コーティングである。有機マトリックスを含む抗菌コーティングは、塗料の美的外観を有する場合がある。一部の用途では、塗料の外観が望ましくない場合がある。一部の抗菌コーティングは、ナノ粒子蒸着を使用して、コーティングの表面に抗菌特性を備えたナノ粒子を堆積させることができる。例えば、ProtecのABACO(登録商標)は、ナノ粒子を使用した抗菌コーティングである。しかしながら、ナノ粒子の使用は、複雑で費用がかかる可能性がある。さらに、そのようなコーティングは、繊細な表面または不十分な耐摩耗性を有する可能性がある。抗菌材料の別の一例には、様々な金属が含まれる。例えば、銀には抗菌性があることが知られている。しかしながら、上記のように、銀は高価である可能性があり、その特性は多くの用途に適していない可能性がある。例えば、銀の外観または耐摩耗性は、特定の用途には適さない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、これらの問題のうちの1つまたは複数を解決するか、または現在の抗菌材料に代わるものを提供する抗菌コーティングが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも1つの態様では、生物活性コーティングされた基板が提供される。生物活性コーティングされた基板は、ベース基板と、ベース基板の上に配置された指標層と、指標層上に配置された生物活性層とを含む。特徴的に、指標層は、生物活性層が摩耗除去されたときに使用者によって視覚的に知覚されるように、生物活性層とは十分に異なる色を有する。
【0008】
別の一態様では、生物活性コーティングされた基板が提供される。生物活性コーティングされた基板は、ベース基板と、ベース基板の上に配置されたベース層と、ベース層の上に配置された複数の交互の生物活性層および中間層とを含む。特徴的に、ベース層および/または中間層のうちの少なくとも1つは、1つまたは複数の生物活性層が摩耗除去されたときに、使用者によって視覚的に知覚される生物活性層とは十分に異なる色を有する指標層である。
【0009】
さらに別の一態様では、生物活性コーティングされた基板が提供される。生物活性コーティングされた基板は、ベース基板と、ベース基板の上に配置された最も外側の生物活性層と、最も外側の生物活性層の下に配置された指標層とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】生物活性層および指標層を備えた生物活性コーティングされた基板の概略断面図である。
図1B】複数の交互の生物活性層、中間層を有する生物活性コーティングされた基板の概略断面であり、少なくとも1つの層は、指標層である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明者に現在知られている本発明を実施するための最良の様式を構成する、本発明の現在好ましい組成物、実施形態、および方法を詳細に参照する。図面は、必ずしも縮尺通りではない。しかしながら、開示された実施形態は、様々な代替の形態で具体化することができる本発明の単なる例示であることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される特定の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に本発明の任意の態様の代表的な基礎として、および/または当業者に本発明を様々に使用することを教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0012】
実施例を除いて、または他に明示的に示された場合を除いて、材料の量または反応および/または使用の条件を示す本明細書内のすべての数量は、本発明の最も広い範囲を説明する際に「約」という単語によって修正されると理解されるべきである。記載されている数値制限内での実施が一般的に推奨される。また、特に明記されていない限り、パーセント、「の一部」、および比率の値は重量によるものである。本発明に関連して所与の目的に適切または好ましいものとしての材料のグループまたはクラスの説明は、グループまたはクラスの任意の2つ以上の要素の混合物が等しく適切または好ましいことを意味する。化学的用語での構成要素の説明は、説明で指定された任意の組み合わせへの添加時の構成要素を指し、一度混合された混合物の構成要素間の化学的相互作用を必ずしも排除するものではない。頭字語または他の略語の最初の定義は、同じ略語の本明細書でのその後のすべての使用に適用され、変更すべきところは変更して、最初に定義された略語の通常の文法的変化形に適用される。また、特に明記されていない限り、特性の測定は、同じ特性について以前または後で参照されたのと同じ手法で決定される。
【0013】
明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の指示対象を含むことにも留意しなければならない。例えば、単数形の構成要素への参照は、複数の構成要素を含むことを意図している。
【0014】
「で構成される」というフレーズは、「含む(including)」または「含む(comprising)」を意味する。通常、このフレーズは、対象物が材料から形成されていることを示すために使用される。
【0015】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、または「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義である。これらの用語は包括的でオープンエンドであり、追加の、引用されていない要素または方法ステップを除外するものではない。
【0016】
「からなる」というフレーズは、特許請求の範囲で指定されていない要素、ステップ、または成分を除外する。このフレーズが、プリアンブルの直後ではなく、請求項の本文の節に表れる場合、その節に記載されている要素のみを制限し、その他の要素は、全体として請求項から除外されない。
【0017】
「から本質的になる」というフレーズは、請求項の範囲を、特定の材料またはステップに加えて、特許請求された主題の基本的および新規の特性に実質的に影響を与えないものに限定する。
【0018】
「含む」、「からなる」、および「から本質的になる」という用語に関して、これらの3つの用語のうちの1つが本明細書で使用される場合、現在開示および特許請求される主題は、他の2つの用語のいずれかの使用を含むことができる。
【0019】
「実質的に」、「一般的に」、または「約」という用語は、本明細書において、開示または特許請求された実施形態を説明するために使用することができる。「実質的に」という用語は、本開示において開示または特許請求される価値または相対的特徴を改変することができる。そのような場合、「実質的に」は、それが改変する値または相対的特性が値または相対的な特性の±0%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、または10%以内であることを意味することができる。
【0020】
整数範囲には、介在するすべての整数が明示的に含まれることも理解すべきである。例えば、整数範囲1~10には、明示的に1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10が含まれる。同様に、1~100の範囲には、1、2、3、4・・・97,98,99、100が含まれる。同様に、任意の範囲が必要な場合、上限と下限の差を10で割った値の増分である介在する数値を代替の上限または下限と見なすことができる。例えば、範囲が1.1~2.1の場合、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0の数値を下限または上限として選択できる。本明細書に記載の特定の例では、濃度、温度、および反応条件(例えば、圧力、流量など)は、有効数字3桁に四捨五入して、示された値のプラスまたはマイナス50パーセントで実行することができる。改良版では、濃度、温度、および反応条件(例えば、圧力、流量など)は、例で提供された値の有効数字3桁に四捨五入して、示された値のプラスまたはマイナス30%で実行することができる。別の改良版では、濃度、温度、および反応条件(例えば、流量など)は、例で提供された値の有効数字3桁に四捨五入して、示された値のプラスまたはマイナス10パーセントで実行することができる。
【0021】
本明細書に記載の例では、濃度、温度、および反応条件(例えば、圧力、流量など)は、例で提供される値の有効数字2桁に四捨五入または切り捨てて、示された値のプラスまたはマイナス50パーセントで実行することができる。改良版では、濃度、温度、および反応条件(例えば、圧力、流量など)は、例で提供される値の有効数字2桁に四捨五入または切り捨てて、示された値のプラスマイナス30パーセントで実行することができる。別の改良版では、濃度、温度、および反応条件(例えば、圧力、流量など)は、例で提供される値の有効数字2桁に四捨五入または切り捨てて、示された値のプラスまたはマイナス10パーセントで実行することができる。
【0022】
複数の文字と数字の下付き文字を含む経験的な化学式(例えば、CHO)として表されるすべての化合物の場合、下付き文字の値は、有効数字2桁に四捨五入または切り捨てて、示された値のプラスまたはマイナス50パーセントとすることができる。例えば、CHOが示されている場合、化学式C(0.8-1.2)(1.6-2.4)(0.8-1.2)の化合物を示す。改良版では、下付き文字の値は、有効数字2桁に四捨五入または切り捨てて、示された値のプラスまたはマイナス30パーセントとすることができる。さらに別の改良版では、下付き文字の値は、有効数字2桁に四捨五入または切り捨てて、示された値のプラスまたはマイナス20パーセントとすることができる。
【0023】
文献が参照される本出願を通して、これらの文献の全体の開示は、本発明が関係する最新技術をより完全に説明するために、参照により本出願に組み込まれる。
【0024】
略語:
「DLC」は、ダイヤモンドライクカーボンを意味する。
「CAE」は、陰極アーク蒸発を意味する。
「PVD」は、物理蒸着を意味する。
【0025】
図1Aおよび図1Bは、生物活性層でコーティングされ、指標層を有する基板の断面を提供する。図1Aを参照すると、生物活性コーティングされた基板10は、ベース基板12と、ベース基板の上に配置され、任意選択でベース基板と接触する指標層14とを含む。「ベース基板」という用語は、以下に示す生物活性基板を形成するためにコーティングされる前の基板を指す。生物活性層16は、指標層14の上に配置され、任意選択で指標層14に接触する。特徴的に、指標層14は、最も外側の生物活性層16が損なわれていることの視覚的表示として役立つことができる。特に、指標層は、生物活性層が摩耗除去されたときに使用者によって視覚的に知覚されるように生物活性層とは十分に異なる色を有し、それにより、生物活性層16が損なわれていることを使用者に視覚的に警告する。色の違いを決定できるように様々な層の色を設定することに関して、上記の層の各々の色は、層の厚さおよび/または化学量論比を調整することによって独立して変更できることを理解すべきである。改良版では、指標層14は、通常、約20~300nmの厚さを有する。別の改良版では、生物活性層16は、約50~1500nmの厚さを有する。生物活性コーティングされた基板10の層の各々は、スパッタリングまたはCAEとすることができるCVD、PVDによって作製することができる。
【0026】
図1Bは、複数の交互の生物活性層および中間層22を有する生物活性コーティングされた基板の概略断面を提供する。この変形例では、生物活性コーティングされた基板10’は、ベース基板12と、ベース基板の上に配置され、任意選択でベース基板と接触する任意選択のベース層18とを含む。複数の交互の生物活性層16’および中間層22は、存在する場合、基板12およびベース層18の上に配置される。通常、1~10層の生物活性層16’および1~10層の中間層22が存在し得る。特徴的に、ベース層18、および/または中間層22の少なくとも1つは、指標層である。通常、コーティングされた基板10’の最も外側の層は生物活性層である。改良版では、ベース層18および/または中間層22は、炭窒化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸炭化ジルコニウム、酸窒化ジルコニウム(zirconium oxynitride)、またはオキシ炭窒化ジルコニウム(zirconium oxycarbonitride)から構成することができる。別の改良版では、中間層22はまた、生物活性層とすることができるが、それが反対側の面で接触する生物活性層とは異なる厚さおよび/または化学量論比を有する。これに関して、中間層22は、以下に記載されるように、様々な銅合金から構成することができる。別の改良版では、中間層22は、金属窒化物から構成することができる。例えば、中間層22は、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化チタン(TiN)、酸炭化ジルコニウム(ZrOC)、酸化ジルコニウム(ZrO)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、またはそれらの組み合わせから構成することができる。別の変形例では、1つまたは複数の中間層22は、指標層とすることができる。生物活性コーティングされた基板10の層の各々は、スパッタリングまたはCAEとすることができるCVD、PVDによって作製することができる。
【0027】
改良版では、ベース層18および/または中間層22は、各々が独立して、約20~300nmの厚さを有する。別の改良版では、生物活性層16は、約50~1500nmの厚さを有する。
【0028】
図1Aおよび図1Bに示されるコーティングされた基板のいくつかの変形例では、指標層は、炭窒化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸炭化ジルコニウム、酸窒化ジルコニウムまたはオキシ炭窒化ジルコニウム、窒化チタン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、またはダイヤモンドライクカーボンから構成することができる。指標層14は、通常、約20~300nmの厚さを有する。本実施形態は、指標層14および生物活性層16を堆積させるための特定の堆積方法によって制限されないことを理解すべきである。例えば、これらの層は、スパッタリングまたはCAEとすることができるCVD、PVDによって作製することができる。
【0029】
図1Aおよび図1Bの生物活性層16および16’は、生物活性特性を備えた任意の材料にすることができる。特に、生物活性層16および16’は抗菌層である。したがって、生物活性層16および16’は、抗菌特性を備えた材料を含むことができる。改良版では、生物活性層16および16’は、生物活性金属、生物活性合金、生物活性金属含有化合物(例えば、金属酸化物)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される(抗菌特性を備えた)成分から構成することができる。例えば、生物活性層16および16’は、銅金属、銀金属、銅金属含有化合物、銀金属含有化合物、およびそれらの組み合わせから構成することができる。
【0030】
別の改良版では、生物活性層16および16’は、銅合金、銅含有化合物、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される成分から構成することができる。このような銅含有化合物には、+1または+2の酸化状態の銅原子またはそれらの銅原子の組み合わせが含まれる。銅含有化合物の例には、銅、銅酸化物、銅窒化物、炭素原子を含む銅酸化物、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。一変形例では、銅合金には銅とニッケルが含まれる。典型的には、各々の銅合金は、生物活性層の総重量の約8~28重量パーセントの量でニッケルを含み、銅は、生物活性層の総重量の約72~92重量パーセントの量で存在する。改良版では、銅合金は、生物活性層の総重量の約10~25重量パーセントの量のニッケルと、生物活性層の総重量の約75~90重量パーセントの量の銅とを含む。いくつかの変形例では、銅合金は、鉄、ジルコニウム、タングステン、クロム、およびそれらの組み合わせなどの追加の元素を独立して含むことができる。改良版では、これらの追加の元素の各々は、生物活性層の総重量の約0.01~約5重量パーセントの量で独立して存在する。改良版では、これらの追加の元素の各々は、生物活性層の総重量の約0.01~約5重量パーセントの量で独立して存在する。銅合金の例は、ケンタッキー州ルイビルにあるOlin Brassから市販されているCuVerro(登録商標)White BronzeおよびCuVerro(登録商標)Roseである。
【0031】
他の変形例では、生物活性層16および16’は、銀、銀合金、銀含有化合物(例えば、酸化銀)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。抗菌特性を示すことができる他の金属には、ガリウム(Ga)、金(Au)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、および亜鉛(Zn)が含まれるが、これらに限定されない。生物活性層14および14’は、金属、金属酸化物、または合金の組み合わせを含むことができる。これには、例えば、銅(Cu)および銀(Ag)を含む生物活性層14が含まれる。
【0032】
1つの改良版では、1つまたは複数の生物活性層16および16’の各々は、CuOで独立して構成され、ここで、xは0.6~1.2である。別の改良版では、1つまたは複数の生物活性層14および14’の各々は、CuOで独立して構成され、ここで、aは0.0~1.2であり、bは0.01~0.4である。さらに別の改良版では、1つまたは複数の生物活性層14および14’の各々は、CuOで独立して構成され、ここで、cは0.0~1.2であり、dは0.01~0.4である。一変形例では、1つまたは複数の生物活性層14および14’の各々は、銅金属、CuO、CuO、およびCuOの任意の組み合わせから独立して構成される。したがって、1つまたは複数の生物活性層14および14’の各々は、銅金属、CuO、CuO、およびCuOの組み合わせ、または銅金属とCuOの組み合わせ、または銅金属とCuOの組み合わせ;銅金属とCuOの混合物、または銅金属、CuO、およびCuOの組み合わせ、または銅金属、CuOとCuOの組み合わせ、または銅金属、CuO、およびCuOの組み合わせ、またはCuO、CuO、およびCuOの組み合わせ、またはCuOとCuOの組み合わせ、またはCuOとCuOの組み合わせ、またはCuO、CuO、およびCuOの組み合わせから独立して構成される。いくつかの適切な生物活性層は、Cu、Cu、Cu、およびCuで構成することができ、ここで、xは、1、2、または3とすることができ、yは、1、2、または3とすることができ、zは、1、2、または3にすることができる。
【0033】
別の一変形例では、1つまたは複数の生物活性層は、銅合金と、窒化ジルコニウム、窒化チタン、酸炭化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ダイヤモンドライクカーボン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分との混合物から構成される。
【0034】
別の一変形例では、層16および16’は、銅合金と、窒化ジルコニウム、窒化チタン、酸炭化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、またはダイヤモンドライクカーボンのうちの少なくとも1つとの混合物で構成される。
【0035】
指標層14、ベース層18、中間層22、および生物活性層16および16’は、任意の適切な基板12に塗布することができる。適切な基板12は、各々の層の操作温度(すなわち、生物活性コーティングされた基板が使用される温度)または堆積温度で熱安定性を示す任意の材料で構成することができる。特に、基板12は、少なくとも80℃の温度で熱的に安定である必要がある。改良版では、基板12は、少なくとも250℃の温度で熱的に安定である必要がある。いくつかの改良版では、適切な基板12は、導電性である任意の材料で構成することができる。例えば、ベース基板を構成することができる適切な材料には、金属、合金、および/または炭素材料が含まれるが、これらに限定されない。ベース基板を構成できる適切な材料の追加の例には、ステンレス鋼、クロムニッケルメッキされた真ちゅう、クロムニッケル銅メッキされた亜鉛、クロムニッケル銅メッキされたABSプラスチック、およびクロムニッケル銅メッキされたアルミニウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
別の一変形例では、ベース層18および中間層22は、ジルコニウムまたはチタン、炭素、および窒素から独立して構成され、ここで、ジルコニウムは、少なくとも50モルパーセントの量で存在し、炭素および窒素の各々は、それぞれ少なくとも0.02および0.1モルパーセントの量で存在する。改良版では、ベース層18および中間層22は、以下の化学式を有する化合物から独立して構成される:
【化1】

ここで、Mはジルコニウムまたはチタンであり、xは0.0~0.3であり、Yは0.1~0.5である。改良版では、xは0.0~0.2であり、yは0.2~0.3である。別の改良版では、xは、少なくとも優先度の昇順で0.0、0.02、0.03、0.04、0.05、0.07、または0.09であり、最大でも優先度の昇順で、0.5、0.4、0.3、0.25、0.2、0.15、または0.11である。同様に、この改良版では、yは、少なくとも優先度の昇順で0.1、0.15、0.2、0.25、0.27、または0.29であり、最大でも優先度の昇順で0.6、0.5、0.40、0.35、0.33、または0.31である。さらなる改良版では、ベース層は、Zr0.600.100.30で記述された炭窒化ジルコニウムで構成される。
【0037】
さらに別の一変形例では、ベース層18および中間層22は、ジルコニウムまたはチタン、炭素、および酸素から独立して構成され、ここで、ジルコニウムは、少なくとも50モルパーセントの量で存在し、炭素および酸素の各々は、それぞれ少なくとも0.02および0.1モルパーセントの量で存在する。改良版では、ベース層18および中間層22は、以下の化学式を有する化合物から独立して構成される:
【化2】

ここで、Mはジルコニウムまたはチタンであり、xは0.1~0.4であり、yは0.5~0.2である。さらなる改良版では、ベース層は、Zr0.500.350.15によって記載される酸炭化ジルコニウムから構成される。
【0038】
指標層と生物活性層16および16’との間の色の違いにアクセスする際に、生物活性層16および16’および指標層14(ならびに基板および他の層)は、CIE標準光源D50に対するLab色空間座標L、a、およびbによって特徴付けることができることを理解すべきである。改良版では、生物活性層(例えば、通常、最も外側の生物活性層)のCIE標準光源D50に対するLab色空間座標L、a、およびbの少なくとも1つは、指標層のものと、優先度の昇順で、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、または50%異なる。別の改良版では、生物活性層(例えば、通常、最も外側の生物活性層)のCIE標準光源D50に対するLab色空間座標L、a、およびbの各々は、指標層のものと、優先順位の高い順に、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、または50%異なる。一変形例では、色空間内の2点間の距離を定量化するデルタE(2000)を使用して、2つの色間の差を定量化できる。2つの色の間の視覚的または顕著な区別は、ビューア、テクスチャ、光沢を含む様々な要因の影響を受ける可能性がある。改良版では、1.0以上のデルタEは、指標の色の十分な違いとなる。別の改良版では、2.0以上のデルタEは、色の十分な違いとなる。さらに別の改良版では、5.0以上のデルタEは、色の十分な違いとなる。いくつかの変形例では、優先順位の昇順で、2.0、5.0、8.0、10.0、15.0、および20.0以上のデルタEで十分な色の違いとなる。
【0039】
別の一実施形態では、図1Aおよび図1Bの生物活性コーティングされた基板は、物品に含まれる。改良版では、有用な物品は、上記のような指標層をさらに含む。多くの医療機関または病院の表面は、生物活性コーティングされた基板から大きな恩恵を受ける可能性がある。例えば、有用な物品には、ベッドレール、フットボード、ベッドサイドテーブル、ノブ、ハンドル、安全レール、カート、プッシュプレート、キックプレート、モッププレート、ストレッチャープレート、栓、排水口、シンク、蛇口、排水レバー、噴水部品、消毒剤/石鹸ディスペンサー、ハンドドライヤー、一般的に使用されるボタン、ヘッドレスト、シャワーヘッド、カウンタートップ、ヒンジ、ロック、ラッチ、トリム、トイレまたは小便器のハードウェア、ライトスイッチ、アームレスト、サーモスタット制御装置、電話、フロアタイル、天井タイル、壁タイル、器具ハンドル(例えば、薬物送出システム、監視システム、病院用ベッド、事務機器、手術室機器、スタンド、および備品)、IVポール、トレイ、フライパン、歩行器、車椅子、キーボード、コンピューターマウス表面、運動器具、リハビリ器具、理学療法器具、ランプ、照明システム、蓋、ハンガー、リモコン、カップホルダー、歯ブラシホルダー、ガウンスナップ、および窓枠が含まれ得るが、これらに限定されない。同様に、概して人気のあるまたは一般的な領域は、生物活性コーティングされた基板を備えた物品から利益を得ることができる。例えば、一部の物品または表面には、ショッピングカート、ショッピングカートのハンドル、チャイルドシート、ハンドレール、レジスターキーパッド、レジスターハウジング、ATM、ロッカー、エレベーター制御装置、ペーパータオルディスペンサー、トイレットペーパーディスペンサー、自動販売機、およびトイレの表面が含まれ得るが、これらに限定されない。同様の物品および表面は、住宅地、大量輸送機関、研究所、宗教集会施設、または一般的に訪問する施設で恩恵を受けることができる。その他の用途には、いくつか例を挙げると、筆記用具、眼鏡フレーム、くし、電話カバー、タブレットカバー、ヘッドフォン、栓抜きなどが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0040】
例示的な実施形態が上で説明されているが、これらの実施形態が本発明のすべての可能な形態を説明することを意図するものではない。むしろ、本明細書で使用される単語は、限定ではなく説明の単語であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解される。また、様々な実施形態の構成を組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を形成することができる。
図1A
図1B
【外国語明細書】