(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090645
(43)【公開日】2022-06-17
(54)【発明の名称】高周波レーザ光学装置、及び高周波レーザ光学装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/082 20140101AFI20220610BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220610BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20220610BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/21 A
B23K26/064 N
G02B26/10 104Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021197936
(22)【出願日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】10 2020 215 397.3
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング アンドレアシュ
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ブルガー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ヨハネス ガイガー
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン クリングシャット
【テーマコード(参考)】
2H045
4E168
【Fターム(参考)】
2H045AB01
2H045AB24
2H045AB25
4E168BA00
4E168BA37
4E168BA87
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB04
4E168EA15
4E168EA17
4E168KB02
(57)【要約】
【課題】高周波レーザ光学装置を提供する。
【解決手段】本発明は、レーザ光(12)を高周波偏向させる装置(10)に関する。この装置(10)は、可動結像素子(34)の上流側に配置されたビーム拡張結像素子(32)を備えており、それによって、可動結像素子(34)の僅かな移動においても、レーザ光の焦点の大きな移動が生じる。レーザ光(12)を走査するスキャナ(22)の上流側にコリメータ(30)を配置することができ、それによって、スキャナミラー(24,26)は、小型化及び軽量化して形成可能であり、且つ大きなダイナミクスを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光(12)を用いてワーク(14)を加工する装置(10)であって、
a)前記レーザ光(12)を前記ワーク(14)上において第1の方向に走査する第1のスキャナミラー(24)を有するスキャナ(22)と、
b)前記スキャナ(22)の下流側に配置され、前記レーザ光(12)を束ねる、可動結像素子(34)と、を備えた装置(10)において、
c)前記スキャナ(22)の下流側であって、且つ前記可動結像素子(34)の上流側に配置されたビーム拡張結像素子(32)を備えることを特徴とする、装置(10)。
【請求項2】
前記ビーム拡張結像素子(32)は、凹レンズ系、特に凹レンズの形態の凹レンズ系を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記可動結像素子(34)は、凸レンズ系、特に凸レンズの形態の凸レンズ系を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置(10)のコリメータ(30)は、特に凸レンズ系の形態において、好ましくは凸レンズの形態において、前記スキャナ(22)の上流側に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記レーザ光(12)を前記ワーク(14)上に集束させる前記装置(10)の対物レンズ(42)は、特に凸レンズ系の形態において、好ましくは凸レンズの形態において、前記可動結像素子(34)の下流側に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記スキャナ(22)は、前記ワーク(14)上において前記レーザ光(12)を第2の方向に、特に前記第1の方向と垂直の方向に走査する第2のスキャナミラー(26)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置(10)は、前記レーザ光(12)を前記装置(10)内に進入させる光ガイドケーブル(28)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置(10)は、前記レーザ光(12)に同軸に作用するセンサシステム(40)を結合するビームスプリッタ(38)、特にダイクロイックミラーを有するビームスプリッタ(38)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置(10)は、レーザ溶接装置の形態に形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の装置(10)の動作方法であって、
前記ワーク(14)上におけるレーザ光移動の周波数(f)は、0.1mmを超える振幅(A)の場合には2400Hzを超え、1mmを超える振幅(A)の場合には1000Hzを超え、及び/又は、3mmを超える振幅(A)の場合には500Hzを超える、装置(10)の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光によってワークを加工する装置に関するものであり、この装置は以下の、
a)ワーク上においてレーザ光を第1の方向に走査する第1のスキャナミラーを有するスキャナと、
b)スキャナの下流側に配置され、レーザ光を束ねる可動結像素子と、を備える。
【0002】
本発明はさらに、そのような装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高速に移動可能なレーザ光によってワークを加工するために形成された装置を提供することが知られている。
【0004】
特許文献1から、レーザ光を偏向させるためのスキャナを備えた装置が知られている。そのスキャナの上流側には、ビーム形成用のテレスコープユニットが接続されている。
【0005】
また、特許文献2には、レーザ光を形成するためのテレスコープユニットと、レーザ光を偏向させるスキャナとを備えた装置が開示されている。スキャナの下流側には、集束レンズが接続されている。
【0006】
特許文献3から、スキャナを備えた汎用的な装置が知られている。レーザ光の集束のために、モータによって可動な少なくとも1つの光学結像素子がスキャナの下流側に配置されている。
【0007】
従来の装置においては、レーザ光を集束させる光学結像素子の位置調整経路が比較的大きくなるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0127697号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0245084号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102007028570号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、構造的に簡単な方法によって、レーザ光をワークに迅速に集束させることができる汎用的な装置をさらに形成することである。さらに本発明の課題は、そのような装置の動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明によれば、請求項1による装置、及び請求項10による方法によって解決される。従属請求項は、好ましいさらなる形態を表している。
【0011】
本発明による課題は、そのため、スキャナと可動結像素子との間にビーム拡張結像素子が配置された、冒頭で述べた装置によって解決される。
【0012】
そのため、本発明による装置は、レーザ光を偏向させるスキャナを備える。その際、スキャナとは、特に、レーザ光を、制御されて偏向させるように形成されたあらゆる器具一式であると解される。本装置は、スキャナによって偏向されたレーザ光(ビーム)を拡張する結像素子を備える。拡張されたレーザ光は、続いて、可動結像素子によって再コリメートされる。それによって、可動結像素子のわずかな移動によっても、ワーク上においてレーザ光の焦点位置又は直径を大きく変化させることができる。
【0013】
ビーム拡張結像素子は、好ましくは凹レンズ系の形態に形成されている。レンズ系とは、少なくとも1つのレンズを有する系であると解される。レンズ系は特に構造的に簡単に形成可能であり、同時にレーザ光を効果的に形成することができる。特に、ビーム拡張結像素子は、単一の凹レンズの形態に形成可能である。
【0014】
可動結像素子は、凸レンズ系の形態に、特に単一の凸レンズの形態に形成可能である。
【0015】
本発明の特に好ましい実施形態においては、スキャナの上流側にコリメータが設けられている。それによって、スキャナは、小型化して及び効率的に形成可能であり、且つ大きなダイナミクス(変動範囲:Dynamik)を有することができる。コリメータは、凸レンズ系の形態に、特に単一の凸レンズの形態に形成可能である。
【0016】
さらに好ましくは、可動結像素子の下流側に、レーザ光をワークに集束させる対物レンズが配置されている。対物レンズは、凸レンズ系の形態に、特に単一の凸レンズの形態に形成可能である。
【0017】
対物レンズの下流側に、加工時のワークのスパッタから装置を保護するための保護ガラスを配置することができる。
【0018】
スキャナは、1つの(第1の)スキャナミラーのみを有してもよい。しかしながら、スキャナは、レーザ光をさらに別の方向に偏向できるように、好ましくは、第2のスキャナミラーを有する。
【0019】
本装置は、ミラーを介してレーザ光をスキャナに向ける場合、特にコンパクトに形成され得る。
【0020】
スキャナは、スキャナヘッドの形態においてコンパクトに形成可能である。
【0021】
本装置は、レーザ光を、光ガイドケーブルを介して装置内にガイドする場合には、例えばロボットアームを使用して、特に柔軟に、且つ迅速に移動可能に形成され得る。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、本装置は、センサシステムを結合するビームスプリッタを備える。その際、そのビームスプリッタは、ダイクロイックミラーを有することができる。
【0023】
ビームスプリッタは、可動結像素子の下流側に配置することができる。特に、ビームスプリッタは、可動結像素子と対物レンズとの間に配置することができる。
【0024】
特に好ましくは、本装置は、レーザ溶接装置の形態に形成されている。本発明による利点は、その際、フレキシブルな金属板の生産における、レーザ溶接の適用範囲の拡大を可能にする。すなわち、
-ギャップの橋渡し;
-レーザカットされた厚金属板(開先加工なし)のレーザ溶接;
-レーザを用いた溶接がこれまで不可能又は困難だった金属合金(例えば、AlMgSi)のレーザ溶接;
-1つのワークにおける様々な溶接方法(厚板/薄板、ギャップあり/なし、熱伝導溶接/深溶込み溶接など)に柔軟に使用可能な、普遍的であり、しかもコンパクトな溶接光学系。
【0025】
本装置は、溶接ワイヤの供給装置を備えていてもよい。
【0026】
本発明による課題は、さらに、本明細書に記載された装置の動作方法によって解決される。その際、ワーク上におけるレーザ光移動の周波数は、0.1mmを超える振幅の場合には2400Hzを超え、1mmを超える振幅の場合には1000Hzを超え、及び/又は3mmを超える振幅の場合には500Hzを超える。そのため、特に、本明細書に記載の装置によって溶接する場合には、スキャン動作のダイナミクスが特に大きい。
【0027】
本発明のさらなる利点は、本明細書及び図面から明らかになる。同様に、上述の特徴及びさらに説明される特徴は、本発明に従って、それぞれ個別に、又はいくつかの任意の組み合わせにおいて、使用することができる。図示され、説明された実施形態は、決定的な列挙として解されるべきではなく、むしろ本発明の説明のための例示的な性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による装置の第1の実施例を示す概略図である。
【
図2】本発明による装置の第2の実施例を示す概略図である。
【
図3】本発明による装置によって得られる周期運動ダイナミクス(Pendeldynamik)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、レーザ光12をガイドする装置10を示しており、この装置10は、ワーク14の加工、特に溶接のために形成されている。本実施形態においては、溶接継ぎ目18を形成することによって、第1の金属板16aが第2の金属板16bに結合される。その際、溶接継ぎ目18は、金属板16a,bの間のギャップ20を橋渡しする。これは、ワーク14上におけるレーザ光12の非常に速い振動移動によって可能になる。
【0030】
レーザ光12のこの振動移動は、スキャナ22によって得られる。スキャナ22は、本実施形態においては、スキャナヘッドの形態に形成されている。スキャナ22は、レーザ光12を第1の方向(ここにおいてはX方向)に振動させるための第1のスキャナミラー24と、任意に、レーザ光12を第2の方向(ここにおいてはY方向)に振動させるための第2のスキャナミラー26とを有している。その際、この2つの方向は、好ましくは互いに直交している。
【0031】
本実施形態においては、レーザ光12は、光ガイドケーブル28を介して装置10に入る。スキャナ22と光ガイドケーブル28との間には、コリメータ30が配置されている。コリメータ30は、好ましくは、凸レンズ系を有する。さらに好ましくは、コリメータ30は、凸レンズの形態に形成されている。コリメータ30は、特に好ましくは、レーザ光12を比較的小さい光径に、好ましくは20mm未満、特に15mm未満にコリメートする短焦点レンズを有する。それによって、スキャナミラー24,26は、特に小型化及び軽量化して形成可能であり、その結果、大きなダイナミクスを有して移動することができる。ミラー31は、レーザ光12をスキャナ22に向ける。
【0032】
対応してコンパクトに形成され小開口を備えたスキャナ22に、ビーム拡張結像素子32が隣接している。そのビーム拡張結像素子32は、凹レンズ系の形態に形成することができる。本実施形態においては、ビーム拡張結像素子32は、凹レンズの形態に形成されている。
【0033】
ビーム拡張結像素子32の下流側には、特に凹レンズ系の形態の、ここにおいては、凸レンズの形態の可動結像素子34が配置されている。その可動結像素子34によって、レーザ光12はコリメートされる。
【0034】
可動結像素子34は、特にモータによって、好ましくは直線的に、レーザ光12の光軸に沿って移動させることができる。可動結像素子34を移動させることによって、ワーク14上においてレーザ光12の焦点位置の変化が得られる。ビーム拡張結像素子32のビーム拡張、すなわち拡散に基づいて、小さな移動範囲36において、ワーク14上において大きな焦点位置移動、又はレーザ光12の直径の大きな変化を得ることができる。
【0035】
レーザ光12は、センサシステム40の結合のために、図においては破線によって示されたダイクロイックビームスプリッタ38を有することができる。そのセンサシステムは、溶接継ぎ目箇所の検出、カメラ、及び/又は光干渉断層撮影(OCT)を含むことができる。
【0036】
装置10を出る前に、レーザ光12は、対物レンズ42、及び/又は保護ガラス44を通過することができる。対物レンズ42は、凸レンズ系を有することができる。本実施形態においては、対物レンズ42は凸レンズの形態に形成されている。
【0037】
図2は、レーザ光12をガイドする装置10のさらなる実施形態を示している。この装置10は、光ガイドケーブル28、コリメータ30、スキャナミラー24,26を有するスキャナ22、ビーム拡張結像素子32、可動結像素子34、及び対物レンズ42を備える。ミラー31がレーザ光12をスキャナ22に向けることによって、装置10のさらなるコンパクト設計が得られる。
【0038】
図1の装置10とは対照的に、ビーム拡張結像素子32は、2つの凹レンズ又は負レンズ48a,48bを有する凹レンズ系を有している。
【0039】
図2は、スキャナミラー24,26の旋回移動50a,50bが、5°未満、特に3°未満、好ましくは2°未満であることを概略的に示している。
【0040】
さらに、
図2は、可動結像素子34の移動範囲36によって、2倍を超える、特に3倍を超える焦点範囲52が得られることを概略的に示している。これは、ビーム拡張結像素子32と可動結像素子34との相互作用によって得られる。
【0041】
図3は、振幅Aの増加に伴って実験的に求められた最大周波数fを示している。その際、スキャナミラー24及び/又は26(
図1及び
図2参照)のモータ電流を正弦波によって制御した場合の最大周波数fを実線によって、スキャナミラー24及び/又は26のモータ電流を三角波によって制御した場合の最大周波数fを破線によって示している。
図3から、得られた最大周波数fは、本発明による光学系を使用しない場合に一般的に得られる最大周波数よりも大幅に高いことが認識できる。
【0042】
図面の全ての図の概観のもとに、本発明は、要約すると、レーザ光12を高周波偏向させる装置10に関するものである。この装置10は、可動結像素子34の上流側に配置されるビーム拡張結像素子32を備え、それによって、可動結像素子34の僅かな移動においてもレーザ光焦点の大きな移動が生じる。レーザ光12を走査するスキャナ22の上流側にコリメータ30を配置することが可能である。それによって、スキャナミラー24,26は、小型化及び軽量化して形成可能であり、且つ大きなダイナミクスを有する。
【符号の説明】
【0043】
10 装置
12 レーザ光
14 ワーク
16a,b 金属板
18 溶接継ぎ目
20 ギャップ
22 スキャナ
24 第1のスキャナミラー
26 第2のスキャナミラー
28 光ガイドケーブル
30 コリメータ
31 ミラー
32 ビーム拡張結像素子
34 可動結像素子
36 移動範囲
38 ビームスプリッタ
40 センサシステム
42 対物レンズ
44 保護ガラス
48a,b 凹レンズ
50a,b 旋回移動
52 焦点範囲
f 最大周波数
A 振幅
【外国語明細書】