(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090707
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/04 20060101AFI20220613BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
G01R1/04 A
H02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203159
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟井 秀紀
(57)【要約】
【課題】テストプラグをテストターミナルに挿入し、テストプラグのプラグ端子に接続される試験器によって保護継電器の試験を可能とする試験装置において、テストプラグに試験器が接続された状態で、誤ってテストプラグがテストターミナルに挿入された場合でも短絡状態になることを回避する試験装置を提供する。
【解決手段】非接触状態に配置された対をなす接触導体23,24を備えるテストプラグ20を盤61に設けられたテストターミナル10に挿入した後に、盤内配線接続端子5(保護継電器62)と電気的に接続される一方の接触導体23にプラグ端子25を介して試験器30から電圧を印加することで保護継電器60を試験するにあたり、試験器30を常開型のスイッチ40を介してプラグ端子25に接続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部材を隔てて非接触状態に配置された対をなす接触導体を備えるテストプラグを盤に設けられたテストターミナルに挿入する前、または、前記テストプラグを前記テストターミナルから引き抜いた後においては、前記テストターミナルの盤外配線接続端子と盤内配線接続端子とが電気的に接続されて前記盤に実装されている保護継電器に印加される通電状態が形成され、
前記テストプラグを前記テストターミナルに挿入する途中、または、前記テストプラグを前記テストターミナルから引き抜く途中においては、前記盤外配線接続端子と前記盤内配線接続端子とが電気的に接続された状態で、一方の接触導体が前記盤内配線接続端子に電気的に接続されると共に、他方の接触導体が前記盤外配線接続端子に電気的に接続される遷移状態が形成され、
前記テストプラグを前記テストターミナルに挿入し得る終端まで挿入した場合においては、前記盤外配線接続端子と前記盤内配線接続端子との電気的な接続が遮断された状態で、前記一方の接触導体が前記盤内配線接続端子に電気的に接続されると共に、前記他方の接触導体が前記盤外配線接続端子に電気的に接続される試験可能状態が形成され、
前記試験可能状態において前記一方の接触導体に導通するプラグ端子を介して試験器から電圧を印加することによって前記保護継電器の試験を可能とする試験装置であって、
前記試験器を、常開型のスイッチを介して前記テストプラグの前記プラグ端子に接続することを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記常開型のスイッチは、押しボタン式である
ことを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項3】
前記常開型のスイッチは、前記試験器に常時接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所の主要機器に接続されている保護継電器を試験するために使用される試験装置に関し、特に、テストプラグをテストターミナルに対して挿抜する試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統中の変電所等には、短絡事故や地絡事故から主要機器を守るための保護継電器(リレー装置)が設けられている。
図5は、電力系統の保護システムの概略構成例を示す回路図であり、電力系統(変電所)の主要機器には、計器用変圧器(例えば、GPT)60を通して盤61等に実装された保護継電器62が接続されている。
この保護継電器62は、線路や変電所等の主要機器に発生した事故等を検出すると、図示しない遮断器にトリップ信号を送って遮断器を動作させ、事故が発生した区間を系統から切り離し、発生した事故の影響を最小限に抑えるようにしている。
【0003】
このような保護継電器62は、定期的に点検を行う必要があり、この点検を行うためには、保護継電器62への通電を止める必用がある。変電所の主要機器を停電させれば、保護継電器62も停電させることは可能であるが、主要機器は安定した送電を確保するために安易に停電させることができない。したがって、このような主要機器の停電が困難である場合には、保護継電器62のみを停電させる必要がある。
【0004】
そこで、計器用変圧器(GPT)60の一次側を活線状態にしたまま保護継電器62の試験を可能とするために、計器用変圧器(GPT)60と保護継電器62との間に、テストターミナル10を配置し、このテストターミナル10にテストプラグ20を挿入することで、保護継電器62のみを停電させ、保護継電器62の動作試験が行えるようにしている(特許文献1等参照)。
【0005】
図6において、盤61に設けられるテストターミナル10と、これに挿抜されるテストプラグ20が示されている。
【0006】
テストターミナル10は、内部に接点収容空間8が形成され、プラグ挿入部2を有するハウジング3と、接点収容空間8に設けられた接点11と、この接点11に接続されると共に、盤外側配線R1が接続される盤外配線接続端子4、及び、盤内側配線R2が接続される盤内配線接続端子5を有して構成されている。
ハウジング3は、盤61の正面パネルPを外板6との間に挟み込み、これらをねじ止めすることで正面パネルPに固定されているもので、プラグ挿入部2が正面パネルP及び外板6の通孔Pa,6aを介して前面に開口されるように取り付けられている。
【0007】
接点11は、接点収容空間8に配された上下一対の可動接触板111, 121と、この可動接触板111, 121の前端部が固着し、この可動接触板111, 121の外側で接点収容空間8の内壁に沿って配された上下一対の固定導体112, 122と、可動接触板111, 121の後部において固定導体112, 122に固着された上下一対の中継導体113, 123とを備えている。
上側の可動接触板121と上側の中継導体123は、上側の固定導体122を介して盤内配線接続端子5に導通しており、下側の可動接触板111と下側の中継導体113は、下側の固定導体112を介して盤外配線接続端子4に導通している。
【0008】
このテストターミナル10は、テストプラグ20を挿入する前においては、
図6(a)に示されるように、盤外配線接続端子4と盤内配線接続端子5とは、固定導体112, 122、可動接触板111, 121、中継導体113, 123を介して導通した状態にある。したがって盤外側と盤内側とは電気的に接続された状態となっている。
【0009】
テストプラグ20は、絶縁支持体21と、この絶縁支持体21の背面側に突出した絶縁部材22と、絶縁部材22に取り付けられ、この絶縁部材22を隔てて非接触状態に配置された対をなす一方の接触導体23及び他方の接触導体24とを備えている。また、テストプラグ20には、絶縁支持体21の前面側、すなわち、絶縁支持体21に対して絶縁部材22とは反対側に、プラグ端子25が設けられている。このプラグ端子25は、基端側テスト用端子25aと、この基端側テスト用端子25aより前方側に設けられた先端側テスト用端子25bとを有し、また、先端側テスト用端子25bに他の装置の端子をとりつけ固定するための締付部材25cと、基端側テスト用端子25aに他の装置の端子を取付け固定するための締付部材25dとを備えている。
【0010】
先端側テスト用端子25bと基端側テスト用端子25aとは互いに電気的に遮断されており、絶縁支持体21の内部において、一方の接触導体23と先端側テスト用端子25bとは互いに電気的に接続され、他方の接触導体24と基端側テスト用端子25aとは互いに電気的に接続されている。
【0011】
したがって、
図6(b)に示されるように、テストプラグ20をテストターミナル10に挿入し終えた状態(挿入し得る終端まで挿入した状態)においては、可動接触板111,121の全体がテストプラグ20により押し広げられた状態となり、テストプラグ20の一方の接触導体23は上側の可動接触板121に接触し、また、他方の接触導体24は下側の可動接触板111に接触されるものの、上側の可動接触板121と下側の中継導体113とが非接触となり、また、下側の可動接触板111と上側の中継導体123とが非接触となる。このため、計器用変圧器60の二次側に通じる盤外配線接続端子4と保護継電器62に通じる盤内配線接続端子5とは電気的に遮断された状態(保護継電器62のみを停電させた試験可能状態)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、このようなテストターミナル10とテストプラグ20を用いて保護継電器62を試験する場合、試験器をテストプラグ20のプラグ端子25に接続する必要がある。この際、試験器とプラグ端子25との接続は、テストプラグ20をテストターミナル10に挿入した後に行うべきところ、
図7に示すように、テストプラグ20をテストターミナル10に挿入する前に誤って試験器30(印加線)をプラグ端子25に接続し、この状態でテストプラグ20をテストターミナル10に挿入する場合には、次のような問題が生じる。
【0014】
試験に用いる試験器30は、
図7(b)に示すように、出力電圧を可変できるスライダックで構成され、出力電圧を最小にすると二次側のインピーダンスが小さくなって、短絡に近い状態となる。このため、プラグ端子25(先端側テスト用端子25b)に試験器300を接続した状態で、テストプラグ20をテストターミナル10に挿入すると、挿入途中においては
図8に示すような状態となる。
すなわち、テストプラグ20の一方の接触導体23は上側の可動接触板121に接触し、他方の接触導体24は下側の可動接触板111に接触した状態となるが、可動接触板111,121は、先端部のみが押し広げられ、全体が押し広げられた状態とはならないため、上側の可動接触板121と下側の中継導体113との接触状態は維持され、また、下側の可動接触板111と上側の中継導体123との接触状態は維持された状態となる。
このため、試験器30の出力電圧が小さい状態に設定されていると、テストプラグ20の一対の接触導体23,24が上下の可動接触板111, 121に接触してから、
図6(b)に示す可動接触板111, 121の全体が押し広げられる直前までの短い区間で計器用変圧器60の二次側がインピーダンスの小さい試験器30と導通し、短絡が生じる不都合がある。
【0015】
また、
図9に示すように、テストターミナル10にテストプラグ20を挿入して試験を終えた後に、試験器(スライダック)30をテストプラグ20のプラグ端子25(先端側テスト用端子25b)から外すのを忘れてテストプラグ20をテストターミナル10から引き抜く場合においても、引き抜く途中においては、
図8に示される状態となり、計器用変圧器60の二次側で短絡が生じる不都合がある。
【0016】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、テストプラグ20のプラグ端子25に誤って試験器30を接続した状態でテストプラグ20をテストターミナル10に挿抜した場合でも、テストプラグ20の挿抜途中で生じる短絡を防止することが可能な試験装置を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を達成するために、本発明に係る試験装置は、
絶縁部材を隔てて非接触状態に配置された対をなす接触導体を備えるテストプラグを盤に設けられたテストターミナルに挿入する前、または、前記テストプラグを前記テストターミナルから引き抜いた後においては、前記テストターミナルの盤外配線接続端子と盤内配線接続端子とが電気的に接続されて前記盤に実装されている保護継電器に印加される通電状態が形成され、
前記テストプラグを前記テストターミナルに挿入する途中、または、前記テストプラグを前記テストターミナルから引き抜く途中においては、前記盤外配線接続端子と前記盤内配線接続端子とが電気的に接続された状態で、一方の接触導体が前記盤内配線接続端子に電気的に接続されると共に、他方の接触導体が前記盤外配線接続端子に電気的に接続される遷移状態が形成され、
前記テストプラグを前記テストターミナルに挿入し得る終端まで挿入した場合においては、前記盤外配線接続端子と前記盤内配線接続端子との電気的な接続が遮断された状態で、前記一方の接触導体が前記盤内配線接続端子に電気的に接続されると共に、前記他方の接触導体が前記盤外配線接続端子に電気的に接続される試験可能状態が形成され、
前記試験可能状態において前記一方の接触導体に導通するプラグ端子を介して試験器から電圧を印加することによって前記保護継電器の試験を可能とする試験装置であって、
前記試験器を、常開型のスイッチを介して前記テストプラグの前記プラグ端子に接続することを特徴としている。
【0018】
したがって、テストプラグをテストターミナルに挿入する途中、または、テストプラグをテストターミナルから引き抜く途中においては、盤外配線接続端子と盤内配線接続端子とが電気的に接続された状態で、一方の接触導体が盤内配線接続端子に電気的に接続されると共に、他方の接触導体が盤外配線接続端子に電気的に接続された状態となるが、誤ってテストプラグのプラグ端子に試験器を接続した状態でテストプラグをテストターミナルに挿抜した場合でも、試験器とプラグ端子との間は常開型のスイッチにより開成された状態となっているので、試験器を介して短絡する恐れがなくなる。
また、試験可能状態において一方の接触導体と導通されているプラグ端子を介して試験器から電圧を印加して保護継電器を試験する場合には、試験中だけスイッチを閉成することで従来通りの試験が可能となる。
【0019】
ここで、常開型のスイッチは押しボタン式とすることが好ましい。
このような構成においては、押しボタンを押している間だけ試験器とテストプラグのプラグ端子との間が導通されるので、作業中のスイッチ操作が容易となり、作業性を高めることが可能となる。
【0020】
また、常開型のスイッチは、試験器に常時接続させておくことが好ましく、試験器に一体に設けるようにしてもよい。
このような構成においては、試験の都度、試験器に常開型のスイッチを取り付ける作業が不要となり、試験器にスイッチを付け忘れることがなくなる。また、スイッチを試験器と一体型とする場合には、スイッチの設置箇所を試験器とは別に確保する必要もなくなる。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように、本発明に係る試験装置によれば、試験器を常開型のスイッチを介してテストプラグのプラグ端子に接続するようにしたので、誤ってプラグ端子に試験器を接続した状態でテストプラグをテストターミナルに挿抜した場合でも、この常開型のスイッチを作動させて閉成させない限り、試験器とテストプラグが電気的に接続されることがないので、テストプラグのテストターミナルへの挿抜途中で生じる短絡を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(a)は、本発明に係る試験装置のテストターミナルとテストブラグを示し、テストプラグをテストターミナルに挿入する前、又は、テストプラグをテストターミナルから引き抜いた後の状態を示す図であり、
図1(b)は、
図1(a)の状態のテストプラグにスイッチを介して試験器が接続されている状態を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明に係る試験装置のテストターミナルに対してテストプラグを挿入する途中、又は、引き抜く途中の状態を示す図であり、
図2(b)は、
図2(a)の状態のテストプラグにスイッチを介して試験器が接続されている状態を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明に係る試験装置のテストターミナルにテストプラグを挿入し得る終端まで挿入した状態を示す図であり、
図3(b)は、
図3(a)の状態のテストプラグにスイッチを介して試験器が接続されている状態を示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図3(a)の状態のテストプラグにスイッチを介して試験器が接続されている状態で、スイッチを閉成した状態を示す模式図である。
【
図5】
図5は、電力系統の保護システムの概略構成例を示す回路図である。
【
図6】
図6(a)は、テストターミナルにテストプラグを挿入する前の状態、又は、テストターミナルからテストプラグを引き抜いた後の状態を示す図であり、
図6(b)は、テストターミナルにテストプラグを挿入し得る終端まで挿入した状態を示す図である。
【
図7】
図7(a)は、テストターミナルにテストプラグを挿入する前の状態、又は、テストターミナルからテストプラグを引き抜いた後の状態を示す図であり、
図7(b)は、試験器が接続されたテストプラグをテストターミナルに挿入する前の状態、又は、試験器が接続されたテストプラグをテストターミナルから引き抜いた後の状態を示す模式図である。
【
図8】
図8(a)は、テストターミナルに対してテストプラグを挿入する途中、又は、引き抜く途中の状態を示す図であり、
図8(b)は、試験器が接続されたテストプラグをテストターミナルに挿抜する途中の状態を示す模式図である。
【
図9】
図9(a)は、テストターミナルにテストプラグを挿入し得る終端まで挿入した状態を示す図であり、
図9(b)は、試験器が接続されたテストプラグをテストターミナルに挿入し得る終端まで挿入した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1乃至
図4に、本発明に係る試験装置1が示されている。この試験装置1は、盤61に設けられたテストターミナル10と、このテストターミナル10に挿抜されるテストプラグ20と、所望の電圧を発生させる試験器30と、テストプラグ20と試験器30との間に設けられるスイッチ40とを有して構成されている。
【0025】
テストターミナル10は、従来と同様の構成であり、プラグ挿入部2を有する直方体状のハウジング3と、このハウジング3内に設けられた接点11と、この接点11に接続されると共に、盤外側配線R1が接続される盤外配線接続端子4、及び、盤内側配線R2が接続される盤内配線接続端子5を有して構成されている。
【0026】
ハウジング3は、内部に接点収容空間8が形成され、後方が解放されたハウジング本体3aと、このハウジング本体3aの後方を閉塞し、盤外配線接続端子4と盤内配線接続端子5が設けられた端子装着ブロック3bとを有して構成され、ハウジング本体3aの前面にテストプラグ20を挿入する前記プラグ挿入部2が形成されている。
【0027】
このハウジング11は、盤61の正面パネルPを外板6との間に挟み込み、これらをねじ止めすることで正面パネルPに固定されているもので、プラグ挿入部2が正面パネルP及び外板6の通孔Pa,6aを介して前面に開口されるように取り付けられている。
【0028】
接点11は、接点収容空間8に配された上下一対の可動接触板111, 121と、この可動接触板111, 121の前端部が固着し、この可動接触板111, 121の外側に配置されて接点収容空間8の内壁に沿って配された上下一対の固定導体112, 122と、可動接触板111, 121の後部において固定導体112, 122に固着された上下一対の中継導体113, 123とを備えている。
上側の可動接触板121と上側の中継導体123は、上側の固定導体122を介して盤内配線接続端子5に導通しており、下側の可動接触板111と下側の中継導体113は、下側の固定導体112を介して盤外配線接続端子4に導通している。
【0029】
このテストターミナル10は、
図1(a)に示すテストプラグ20を挿入する前の状態においては、盤外配線接続端子4と盤内配線接続端子5とが、固定導体112, 122、可動接触板111, 121、及び中継導体113, 123を介して導通した状態にあり、したがって、計器用変圧器60の二次側に通じる盤外配線接続端子4と保護継電器62に通じる盤内配線接続端子5とは電気的に接続された通電状態となっている。
【0030】
テストプラグ20は、従来と同様の構成であり、絶縁支持体21と、この絶縁支持体21の背面側に突出した絶縁部材22と、絶縁部材22に取り付けられ、この絶縁部材22を隔てて非接触状態に配置された対をなす一方の接触導体23及び他方の接触導体24と、を備えている。また、テストプラグ20には、絶縁支持体21の前面側、すなわち、絶縁支持体21に対して絶縁部材22とは反対側に、プラグ端子25が設けられている。
【0031】
このプラグ端子25は、基端側に設けられた基端側テスト用端子25aと、先端側に設けられた先端側テスト用端子25bとを有し、また、先端側テスト用端子25bに他の装置の端子をとりつけ固定するための締付部材25cと、基端側テスト用端子25aに他の装置の端子を取付け固定するための締付部材25dとが設けられている。先端側テスト用端子25bと基端側テスト用端子25aは互いに非導通の状態にあり、絶縁支持体21の内部において、先端側テスト用端子25bは一方の接触導体23と電気的に接続され、基端側テスト用端子25aは他方の接触導体24と電気的に接続されている。
【0032】
したがって、テストプラグ20をテストターミナル10に挿入する途中においては、
図2(a)に示されるように、テストプラグ20により可動接触板111,121の先端部分のみが押し広げられ、可動接触板121,111と中継導体113, 123との接触状態が維持された状態で、接触導体23,24が可動接触板121,111と接触する(遷移状態)が形成される。すなわち、盤外配線接続端子4と盤内配線接続端子5とが電気的に接続された状態で、一方の接触導体23が可動接触板121及び固定導体122を介して盤内配線接続端子5に電気的に接続され、また、他方の接触導体24が可動接触板111及び固定導体112を介して盤外配線接続端子4に電気的に接続される状態が形成される。
【0033】
また、テストプラグ20をテストターミナル10に挿入し得る終端まで挿入した状態では、
図3(a)に示されるように、可動接触板111,121の全体が押し広げられ、一方の接触導体23と他方の接触導体24とが上下の可動接触板121, 111に接触するものの、上側の可動接触板121と下側の中継導体113とは非接触となり、また、下側の可動接触板111と上側の中継導体123とは非接触となる。このため、計器用変圧器60の二次側に通じる盤外配線接続端子4と保護継電器62に通じる盤内配線接続端子5とは電気的に遮断された状態(保護継電器62のみを停電させた試験可能状態)となる。
【0034】
試験器30は、保護継電器62の試験に必要な電圧を発生させるスライダックからなる電圧発生装置で構成され、発生電圧を出力端子30aから取り出すことが可能なそれ自体周知のものである。
【0035】
スイッチ40は、常開型のスイッチであり、特に形状は限定されるものではないが、指や手の平で操作しやすい押しボタン40aによって構成され、プラグ側端子40bと試験器側端子40cが通常においては電気的に非接続の状態(非導通状態)であり、押しボタン40aを押した場合にのみスイッチ40が閉成されてプラグ側端子40bと試験器側端子40cとが電気的に接続され、また、押した状態を解除すると(手を離すと)、スイッチ40が再び開成されてプラグ側端子40bと試験器側端子40cとの電気的な接続が解除される。このようなスイッチ40は、試験器側端子40cを試験器30の出力端子30aに配線51を介して予め接続させておき、テストプラグ20に対して、保護継電器62を試験する際に、スイッチ40のプラグ側端子40bに接続された配線52を接続させるようにする。
なお、他の構成は、従前と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
以上の構成において、保護継電器62を試験するために、テストプラグをテストターミナルに挿入する場合には、テストプラグ20のプラグ端子25(先端側テスト用端子25b)に試験器30を接続させない状態でテストターミナル10に挿入し、その後に試験器30に通じる配線をテストプラグ20のプラグ端子25(先端側テスト用端子25b)に接続する操作が基本である。
【0037】
ところが、このような基本操作を怠り、
図1(b)に示されるように、テストプラグ20をテストターミナル10に挿入する前の段階で、試験器30に通じる配線52をテストプラグ20のプラグ端子25(先端側テスト用端子25b)に接続させ、この状態で、
図2(b)に示されるように、テストプラグ20をテストターミナル10に挿入すると、挿入途中においては、可動接触板121,111が、中継導体113, 123との接触状態を維持しつつテストプラグ20の接触導体23,24にも接触する遷移状態が形成されるため、プラグ端子25(先端側テスト用端子25b)が計器用変圧器60の二次側に電気的に接続される状態が形成される。
【0038】
しかしながら、試験器(電圧発生装置)30の出力端子30aには、常開型のスイッチ40が接続され、このスイッチ40のプラグ側端子40bに接続された配線52をテストプラグ20のプラグ端子25(先端側テスト用端子25b)に接続させているので、遷移状態においても、テストプラグ20が試験器30に導通されないようになっており、計器用変圧器60の二次側が試験器(電圧発生装置)30を介して短絡する不都合を回避することが可能となる。
【0039】
また、
図3(a)に示されるように、テストターミナル10にテストプラグ20を挿入し得る終端まで挿入し、
図3(b)に示されるように、テストプラグ20のプラグ端子25(先端側テスト用端子25b)に試験器30をスイッチ40を介して接続して保護継電器62の試験を行う場合は、
図4に示されるように、試験中はスイッチ40の押しボタン40aを押下してスイッチ40を閉成することで、試験器30とテストプラグ20との電気的な接続状態が形成され、試験器30による保護継電器62の試験が可能となる。
【0040】
その後、保護継電器62の試験が終わり、テストプラグ20をテストターミナル10から引き抜く場合には、テストプラグ20をテストターミナル10から引き抜く前に、テストプラグ20のプラグ端子25(先端側テスト用端子25b)に接続されていた試験器30に通じる配線52を外す操作が基本である。
【0041】
ところが、このような基本操作を怠り、試験器30に通じる配線52をテストプラグ20のプラグ端子25(先端側テスト用端子25b)に接続させた状態(
図3(b)参照)で、テストプラグ20をテストターミナル10から引き抜くと、引き抜く途中においては、
図2に示されるように、可動接触板121,111が、中継導体113, 123との接触状態を維持したままテストプラグ20の接触導体23,24にも接触される遷移状態が形成されるため、プラグ端子25(先端側テスト用端子25b)が計器用変圧器60の二次側に電気的に接続される状態が形成される。
【0042】
しかしながら、この場合においても、試験器(電圧発生装置)30の出力端子30aとテストプラグ20のプラグ端子25(先端側テスト用端子25b)との間は、常開型のスイッチ40により開成状態となっているので、テストプラグ20が試験器30に導通されることはなく、計器用変圧器60の二次側が試験器(電圧発生装置)30を介して短絡する不都合を回避することが可能となる。
また、本実施例においては、スイッチ40を押しボタン式としたので、試験時での操作も簡単となり、誤操作をなくすことが可能となる。
さらに、常開型のスイッチ40は、試験器30に常時接続させているので、試験の都度、試験器30にスイッチ40を取り付ける作業が不要となり、試験器30にスイッチを付け忘れることがなくなる。
【0043】
なお、以上の構成においては、スイッチ40として押しボタン式のスイッチ40を用いた例を示したが、保護継電器62の試験時だけ閉成するスイッチであれば、押しボタン式に限定されない。また、試験器30についても、スライダック方式の電圧発生装置を用いた場合を示したが電圧調整機能を有さない電圧発生装置であっても良い。
【0044】
さらに、スイッチ40は、試験器30内に組み込んで試験器30と一体化させてもよい。このような構成においては、試験の都度、試験器30にスイッチ40を取り付ける作業が不要となり、試験器30にスイッチ40を付け忘れることがなくなる効果に加え、スイッチ40の設置箇所を試験器30とは別に確保する必要がなくなる。
【符号の説明】
【0045】
1 試験装置
4 盤外配線接続端子
5 盤内配線接続端子
10 テストターミナル
20 テストプラグ
22 絶縁部材
23 一方の接触導体
24 他方の接触導体
25 プラグ端子
30 試験器
40 スイッチ
40a 押しボタン
60 計器用変圧器
61 盤
62 保護継電器