(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090719
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】アミノ基修飾ナノダイヤモンドおよびアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/28 20170101AFI20220613BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20220613BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220613BHJP
【FI】
C01B32/28
B82Y30/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203176
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】柏木 健
(72)【発明者】
【氏名】久米 篤史
(72)【発明者】
【氏名】西川 正浩
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA04
4G146AB01
4G146AC02B
4G146AC28A
4G146AC30A
4G146AD15
4G146AD40
4G146BA01
4G146CB09
4G146CB10
4G146CB23
4G146CB26
4G146CB35
(57)【要約】
【課題】アミノ基が粒子表面に多量に導入されたナノダイヤモンド粒子を提供する。また、アミノ基が粒子表面に多量に導入されたナノ炭素粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子の表面の炭素原子に直接結合した第一級アミノ基および/またはアンモニウムイオンとを有し、アミノ基結合量が200μmol/g以上である、アミノ基修飾ナノダイヤモンド。前記アミノ基修飾ナノダイヤモンドの等電点は3~5の範囲内にあることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子の表面の炭素原子に直接結合した第一級アミノ基および/またはアンモニウムイオンとを有し、アミノ基結合量が200μmol/g以上である、アミノ基修飾ナノダイヤモンド。
【請求項2】
等電点が3~5の範囲内にある請求項1に記載のアミノ基修飾ナノダイヤモンド。
【請求項3】
pH0~4におけるゼータ電位の最大値が10mV以上である請求項1または2に記載のアミノ基修飾ナノダイヤモンド。
【請求項4】
水溶媒中で、ナノ炭素粒子と下記式(1)で表されるアミノ化合物とを反応させる縮合工程と、前記縮合工程の後、アミノ基に結合した脱離性基を脱離させて第一級アミノ基および/またはアンモニウムイオンを表面に有するアミノ基修飾ナノ炭素粒子を得るアミノ化工程とを備える、アミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
RNH2 (1)
[式(1)中、Rは脱離性基を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アミノ基修飾ナノダイヤモンドおよびアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノダイヤモンドは、高い機械的強度を有し、物理的・化学的安定性に優れ、生体適合性にも優れる。また、その粒子径は数nm~数百nmであり、血管壁の隙間を通過することも可能なサイズである。そのため、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム) への応用や、樹脂と複合体(コンポジット)を形成することにより樹脂に強靱性を付与することが行われている。
【0003】
ナノダイヤモンドは表面原子の割合が大きく、またその表面原子においては種々の官能基が存在するため、上記官能基を利用して共有結合、イオン結合、またはその他の相互作用によって、機能性を有する元素や分子を結合または吸着させたり、重合性モノマーを結合させることで、ナノダイヤモンドに高い機能を付与することができる。
【0004】
通常、ナノダイヤモンドは表面官能基として、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシ基、カルボン酸誘導体などの酸素を有する官能基を有し、これらの酸素を有する官能基を足場とした種々の化学修飾反応やそれによる機能性の付与が行われている。
【0005】
一方で、ナノダイヤモンドは表面官能基としてアミノ基をほとんど有しないが、アミノ基はプラスの電荷を持つこと、高い求核性によりアミド化反応やアルキル化反応が容易に進行し強固な結合を形成すること、金属などの配位能力が高いことなどから、ナノダイヤモンドの表面に導入することが求められている。
【0006】
例えばナノダイヤモンド表面のアミノ基は、生体関連物質(例えば、抗体等のタンパク質、ガングリオシド等の糖鎖、DNA等のヌクレオチド類など)をナノダイヤモンド表面に固定化してDDSやその他のバイオメディカル関連用途に利用できる。
【0007】
そのため、ナノダイヤモンド表面にアミノ基を導入することが検討されている。例えば、特許文献1ではナノダイヤモンドに高温環境下、気相にてアンモニアガスを反応させることにより、アミノ基を導入する方法が記載されている。しかし、高機能化のために充分な量のアミノ基を導入することは困難であった。また、製造工程が多く煩雑であることも問題であった。
【0008】
また非特許文献1にはアミノ基を有するシランカップリング剤によりアミノ基を導入する方法、表面をアニーリングによりグラファイト化した後にアミノメチルフェニル基で修飾する方法、および表面のカルボキシ基を還元して得たヒドロキシ基に脱離基導入を経てシアノ基で置換し、これを金属水素化物で還元してアミノ基を得る方法が記載されている。しかし、いずれの方法でも、導入されるアミノ基はナノダイヤモンドの表面炭素に直接結合するものではなく、リンカーを介して結合するものであり、リンカーの導入によりナノダイヤモンドの性質や分散性が変化する可能性があった。また、いずれの方法も、アミノ基の導入において複雑かつ多段階の反応工程を必要とすることも問題であった。
【0009】
特許文献2には、10μmol/g以上のアミノ基が粒子表面に直接結合するナノダイヤモンドおよびその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2015/192142号
【特許文献2】特開第2019-167255号公報
【特許文献3】特開第2017-186234号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A. Krueger, Advanced Functional Materials, 22(5), p890-906.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に具体的に開示されているアミノ基修飾ナノダイヤモンド粒子のアミノ基含有量は最大で30μmol/g程度であるが、将来、より多くのアミノ基が粒子表面に導入されたナノダイヤモンド粒子が求められることが考えられる。なお、特許文献3には、表面にアミド基が導入された表面修飾ナノダイヤモンドの開示があるが、当該表面修飾ナノダイヤモンドを用いてアミノ基修飾ナノダイヤモンドを得ることの開示は無い。
【0013】
従って、本開示の目的は、アミノ基が粒子表面に多量に導入されたナノダイヤモンド粒子を提供することにある。また、本開示の他の目的は、アミノ基が粒子表面に多量に導入されたナノ炭素粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、ナノダイヤモンド粒子と、上記ナノダイヤモンド粒子の表面の炭素原子に直接結合した第一級アミノ基および/またはアンモニウムイオンとを有し、アミノ基結合量が200μmol/g以上である、アミノ基修飾ナノダイヤモンドを提供する。
【0015】
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドは、等電点が3~5の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドは、pH0~4におけるゼータ電位の最大値が10mV以上であることが好ましい。
【0017】
また、本開示は、水溶媒中で、ナノ炭素粒子と下記式(1)で表されるアミノ化合物とを反応させる縮合工程と、上記縮合工程の後、アミノ基に結合した脱離性基を脱離させて第一級アミノ基および/またはアンモニウムイオンを表面に有するアミノ基修飾ナノ炭素粒子を得るアミノ化工程とを備える、アミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法を提供する。
RNH2 (1)
[式(1)中、Rは脱離性基を示す。]
【発明の効果】
【0018】
本開示のアミノ基修飾ナノダイヤモンドは、表面に第一級アミノ基および/またはその塩を多量に有する。表面の炭素原子にリンカーを介してアミノ基が結合された構成を有するナノダイヤモンドは、上記リンカーによりナノダイヤモンドの特性が低減されたり、分散性が低下する場合があるが、本開示のアミノ基修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンドの表面の炭素原子に第一級アミノ基やアンモニウムイオン、もしくはその塩が直接結合した構成を有するため、ナノダイヤモンドの特性(高い機械的強度を有し、物理的・化学的安定性に優れ、生体適合性に優れる性質など)や分散性を損なうことなく高く保持することが可能となる。
【0019】
従って、本開示のアミノ基修飾ナノダイヤモンドは、ナノコンポジット用途やDDS用途に好ましく使用することができる。例えば、本開示のアミノ基修飾ナノダイヤモンドのアミノ基に生体関連物質が結合された複合体は、DDS製剤等として好ましく使用することができる。また、本開示のアミノ基修飾ナノダイヤモンドのアミノ基に繊維が結合した複合体(ナノコンポジット)は、強化繊維等として好ましく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図2】実施例1で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩のFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図3】実施例2で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図4】実施例2で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図5】実施例3で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを示す図である。
【
図6】実施例1で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩の等電点タイトレーショングラフを示す図である。
【
図7】実施例2で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンドの等電点タイトレーショングラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[アミノ基修飾ナノダイヤモンド]
本開示の一実施形態に係るアミノ基修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンド粒子と、上記ナノダイヤモンド粒子の表面の炭素原子に直接結合した第一級アミノ基(-NH2)および/またはアンモニウムイオン(-NH3
+)とを有する。すなわち、上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンドの表面の炭素原子に第一級アミノ基およびアンモニウムイオンのうちの少なくとも一方が直接結合した構造を有する。上記アンモニウムイオンは、アニオンを伴う塩の形態をとっていてもよい。
【0022】
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドにおけるアミノ基結合量は、200μmol/g以上であり、好ましくは205μmol/g以上である。上記アミノ基結合量の上限は、例えば700μmol/gであり、500μmol/g、400μmol/g、350μmol/gであってもよい。
【0023】
上記アミノ基結合量は、上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドにおける第一級アミノ基、アンモニウムイオン、およびその塩を含む結合量である。上記アミノ基含有量は、アミノ基がナノダイヤモンド表面の炭素原子に直に結合しているため直接定量することが困難な場合がある。このような場合には、例えば、上記第一級アミノ基やアンモニウムイオンにアミノ酸(例えば、Boc-アラニン-ヒドロキシコハク酸イミドエステル等)を反応させ、上記第一級アミノ基およびアンモニウムイオンと反応したアミノ酸を定量する方法(例えば、ニンヒドリンによるカイザーテストのような比色定量法や、加水分解後にアミノ酸分析を行う方法など)により間接的に測定することができる。
【0024】
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンドの表面に第一級アミノ基およびアンモニウムイオン以外の他の官能基(例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基等)を有していてもよい。
【0025】
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドは、等電点が3~5の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは3.5~4.5である。上記等電点が上記範囲内にあると、上記アミノ基修飾ナノダイヤモンド粒子表面に存在する全官能基中の第一級アミノ基およびアンモニウムイオンの割合が高いものと推測される。その結果、上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドの水分散性に優れる傾向にある。
【0026】
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドは、pH0~4におけるゼータ電位の最大値が10mV以上であることが好ましい。上記ゼータ電位の最大値は、例えば50mV、40mV、30mVであってもよい。上記ゼータ電位の最大値が10mV以上であると、上記アミノ基修飾ナノダイヤモンド粒子表面に存在する全官能基中の第一級アミノ基およびアンモニウムイオンの割合が高いものと推測され、酸性度が高く、上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドの水分散性に優れる傾向にある。
【0027】
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドにおける、アミノ基およびアンモニウム塩を含む表面修飾基に対するナノダイヤモンドの質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は、特に限定されないが、5.0以上であることが好ましく、より好ましくは7.0以上である。また、上記質量比は、15.0以下であることが好ましく、より好ましくは10.0以下である。上記質量比が5.0以上であると、ナノダイヤモンド材料としての特性を損ないにくい。上記質量比が15.0以下であると、アミノ基の修飾度が充分となる。上記質量比は、熱重量分析により測定される200℃から450℃の重量減少率に基づき、減少した重量を表面修飾基の質量として求められる。
【0028】
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドは分散性に優れる。上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドの0.1~5質量%の水懸濁液中における分散粒子径D50(メディアン径;50体積%径)は、例えば500nm以下であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは40nm以下である。上記分散粒子径D50の下限は、例えば3nmである。なお、上記分散粒子径は動的光散乱法によって測定される。
【0029】
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンドの表面に有する第一級アミノ基やアンモニウムイオンに種々の化合物(例えば、低分子医薬品、バイオ医薬品、抗体、サイトカイン、アミノ酸、タンパク質、DNA、RNA、糖類、繊維など)を結合させることができる。なお、「バイオ医薬品」とは、有効成分がタンパク質由来(成長ホルモン、インスリン、抗体など)である医薬品、或いは細胞、ウイルス、バクテリアなどの生物によって産生される物質に由来する医薬品のことである。そのため、上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドはナノコンポジット用途や、DDS製剤の原料として好ましく使用することができる。
【0030】
[アミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法]
本開示の一実施形態に係るアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法は、水溶媒中で、ナノ炭素粒子と下記式(1)で表されるアミノ化合物とを反応させる縮合工程と、上記縮合工程の後、アミノ基に結合した脱離性基を脱離させて第一級アミノ基(-NH2)および/またはアンモニウムイオン(-NH3
+)を表面に有するアミノ基修飾ナノ炭素粒子を得るアミノ化工程とを少なくとも備える。上記アンモニウムイオンは、アニオンを伴う塩の形態をとっていてもよい。
RNH2 (1)
[式(1)中、Rは脱離性基を示す。]
【0031】
(縮合工程)
上記縮合工程では、表面にヒドロキシ基を有するナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態で、上記ナノ炭素粒子と上記式(1)で表されるアミノ化合物とを反応させ、下記式に示すように、上記ナノ炭素粒子におけるヒドロキシ基と上記式(1)で表されるアミノ化合物における-NH
2のHとを脱水させて縮合させることで脱離性基であるRが結合したアミノ基修飾ナノ炭素粒子を得る。その後、下記式に示すように、上記アミノ化工程により脱離性基Rを脱離させてアミノ基修飾ナノ炭素粒子を得る。下記式中、「ND」はナノダイヤモンドを示し、「X
-」はアンモニウムイオンと塩を形成するアニオンを示す。
【化1】
【0032】
上記ナノ炭素粒子は、特に限定されず、公知乃至慣用のナノオーダーの炭素材料(ナノ炭素材料)の粒子を用いることができる。上記ナノ炭素粒子におけるナノ炭素材料としては、例えば、ナノダイヤモンド、フラーレン、酸化グラフェン、ナノグラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノフィラメント、オニオンライクカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、カーボンブラック、カーボンナノホーン、カーボンナノコイルなどが挙げられる。上記ナノ炭素粒子としては、中でも、ナノダイヤモンド粒子が好ましい。上記ナノ炭素粒子は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0033】
上記ナノダイヤモンド粒子は、特に限定されず、公知乃至慣用のナノダイヤモンド粒子を用いることができる。ナノダイヤモンド粒子は本来的に製造過程で生じるヒドロキシ基を有している。ナノダイヤモンド粒子は、一種のみを用いてもよいし二種以上を用いてもよい。
【0034】
上記ナノダイヤモンド粒子としては、例えば、爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)や、高温高圧法ナノダイヤモンド(すなわち、高温高圧法によって生成したナノダイヤモンド)を使用することができる。中でも、分散媒中の分散性がより優れる点で、すなわち一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルである点で、爆轟法ナノダイヤモンドが好ましい。
【0035】
上記爆轟法ナノダイヤモンドには、空冷式爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、空冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)と水冷式爆轟法ナノダイヤモンド(すなわち、水冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)が含まれる。中でも、空冷式爆轟法ナノダイヤモンドが水冷式爆轟法ナノダイヤモンドよりも一次粒子が小さい点で好ましい。
【0036】
爆轟は大気雰囲気下で行ってもよく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、二酸化炭素雰囲気などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0037】
上記式(1)中のRは、脱離性基を示し、例えば、-OS(=O)2-R’基、-OC(=O)-R’基、-C(=O)-R’基、-S(=O)2-R’基、-C(=O)-O-R’基、-(C=O)-NH-R’基、-R’基(上記R’は、水素原子または置換基を有していてもよい一価の有機基を示す)などが挙げられる。上記脱離性基は、上記アミノ化工程において使用する脱離剤の種類に応じて適宜選択される。上記Rとしては、中でも、-C(=O)-R’基、-R’基が好ましい。
【0038】
上記R’における一価の有機基としては、例えば、置換または無置換の炭化水素基(一価の炭化水素基)、置換または無置換の複素環式基(一価の複素環式基)、有機基置換アミノ基、これらのうちの2以上が結合した基などが挙げられる。上記結合した基は、直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。上記連結基としては、例えば、アミノ基、エーテル結合、エステル結合、ホスフィン酸基、スルフィド結合、カルボニル基、スルホニル基、有機基置換シリル基、有機基置換アミド基、有機基置換ウレタン結合、有機基置換イミド結合、チオカルボニル基、シロキサン結合、これらの2以上が結合した基などが挙げられる。
【0039】
上記一価の有機基における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基などが挙げられる。
【0040】
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。なお、上記アルケニル基、アルキニル基は、不飽和炭素-炭素結合を内部に有していてもよく、末端に有していてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等のC1-30アルキル基が挙げられ、好ましくはC10-25アルキル基、より好ましくはC12-20アルキル基である。アルケニル基としては、オレイル基等のC2-30アルケニル基が挙げられ、好ましくはC10-25アルケニル基、より好ましくはC12-20アルケニル基である。アルキニル基としては、C2-30アルキニル基が挙げられ、好ましくはC10-25アルキニル基、より好ましくはC12-20アルキニル基である。
【0041】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等のC3-12シクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のC3-12シクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等のC4-15架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
【0042】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)などが挙げられる。
【0043】
上記複素環式基を形成する複素環としては、芳香族性複素環、非芳香族性複素環が挙げられる。このような複素環としては、環を構成する原子に炭素原子と少なくとも一種のヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)を有する3~10員環(好ましくは4~6員環)、これらの縮合環が挙げられる。具体的には、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環等の3員環;オキセタン環等の4員環;フラン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、γ-ブチロラクトン環等の5員環;4-オキソ-4H-ピラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環等の6員環;ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、4-オキソ-4H-クロメン環、クロマン環、イソクロマン環等の縮合環;3-オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン-2-オン環、3-オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン-2-オン環等の橋かけ環)、ヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環(例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環等の5員環;4-オキソ-4H-チオピラン環等の6員環;ベンゾチオフェン環等の縮合環等)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環等の5員環;イソシアヌル環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の6員環;インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、プリン環等の縮合環等)などが挙げられる。
【0044】
上記炭化水素基が2以上結合した基としては、上記脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基などが挙げられる。上記脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、ベンジル基等のアラルキル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール-C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基などが挙げられる。中でも、アラルキル基が好ましく、より好ましくはベンジル基である。
【0045】
上記一価の炭化水素基および/または上記一価の複素環式基が連結基を介して2以上結合した基としては、例えば、上記一価の炭化水素基および/または上記一価の複素環式基と、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、オキセタニル基含有基、カルバモイル基、トリアルキルシリル基、アリールアミド基、またはこれらの2以上が結合した基とが結合した基などが挙げられる。
【0046】
上記R’における一価の有機基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;イソシアナート基;イソチオシアナート基などが挙げられる。
【0047】
上記Rが-C(=O)-R’基である場合のR’としては、3-ブテニル基、オレイル基等のアルケニル基;クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基(特に、ハロC1-4アルキル基);ベンジル基、3-フェニルプロピル基、1-(N-ベンゾイルアミノ)フェネチル基等のアラルキル骨格(特に、C1-4アルキル-アリール骨格)含有基;2-アニリル基、3-アニリル基、フェニル基、4-フェニルフェニル基等のアリール基(特に、アリニル基、フェニル基、p-ビフェニル基)が好ましい。中でも、融点が水の沸点以下であることにより水溶媒中の分散性に優れ、且つナノ炭素粒子表面のヒドロキシ基との反応性がより高い観点から、C2-30アルケニル基が好ましく、より好ましくはC10-25アルケニル基、さらに好ましくはC12-20アルケニル基である。
【0048】
上記Rが-S(=O)2-R’基である場合のR’としては、メチル基等のアルキル基(特に、C1-4アルキル基);ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基(特に、ジC1-4アルキルアミノ基);フェニル基;3-メトキシフェニル基等のアルコキシ置換フェニル基(特に、C1-4アルコキシ置換フェニル基):3-メチルフェニル基、1,3,5-トリメチルフェニル基等のアルキル置換フェニル基(特に、C1-4アルキル置換フェニル基)が好ましい。
【0049】
上記Rが-C(=O)-O-R’基である場合のR’としては、ベンジル基、9-フルオレニルメチル基、2,7-ジ-t-ブチル[9-(10,10-ジオキソ-10,10,10,10-テトラヒドロチオキサンチル)]メチル基等のアラルキル骨格含有基(特に、C1-4アルキル-アリール骨格含有基);2,2,2-トリクロロエチル基、1-クロロエチル基、1-(1,1-ジメチル-2,2,2-トリクロロ)エチル基等のハロアルキル基(特に、ハロC1-4アルキル基);t-ブチル基、(2,4-ジメチル)ペンタ-3-イル基等の分岐鎖アルキル基;シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等の脂環式炭化水素基;2-(トリメチルシリル)エチル基等の有機基置換シリル置換アルキル基;2-(4-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)エチル基が好ましい。
【0050】
上記Rが-R’基である場合のR’としては、脂溶性が高く水溶媒中の分散性およびナノ炭素粒子表面との反応性がより高い観点から、芳香族炭化水素(特に、ベンゼン環)を含む基であることが好ましい。また、上記R’は、融点が水の沸点以下であることにより水溶媒中の分散性に優れる観点から、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基(特に、フェニル基)とが結合した基を含む基であることが好ましい。上記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基(特にC1-10アルキル基)が好ましい。
【0051】
上記脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基を含む基としては、ベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、3-メトキシベンジル基、4-メトキシベンジル基、3,5-ジメトキシベンジル基、2-ニトロベンジル基、トリフェニルメチル基、ジフェニルメチル基、ジフェニル-4-ピリジルメチル基等のベンジル骨格含有基;4-ニトロフェネチル基、フェニルアシル基等のフェネチル骨格含有基などのアラルキル骨格含有基が好ましい。
【0052】
その他、上記Rが-R’基である場合のR’としては、2,4-ジニトロフェニル基、2-(フェニルスルホニル)エチル基、アリル基などが挙げられる。
【0053】
上記式(1)で表されるアミノ化合物は、水溶媒中の分散性に優れ、且つナノ炭素粒子表面のヒドロキシ基との反応性がより高い観点から、融点が100℃以下であることが好ましい。また、上記式(1)で表されるアミノ化合物は、後述の酸触媒の存在下または非存在下で水に対する溶解性または分散性を有するものであることが好ましい。なお、上記アミノ化合物が水への溶解性または分散性に乏しい場合、有機溶媒に上記アミノ化合物を溶解または分散させ、水と有機溶媒の混合溶媒系で反応を行うことが可能である。上記有機溶媒としては、例えば、後述のアミノ化工程にて使用可能なものが挙げられる。
【0054】
上記縮合工程は、ナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態、すなわちナノ炭素粒子の水分散組成物中で行われる。上記水分散組成物におけるナノ炭素粒子のメディアン径(D50)は、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは1~50nm、さらに好ましくは1~10nmである。上記メディアン径が上記範囲内であると、ナノ炭素粒子表面のヒドロキシ基の量が多く、上記式(1)で表されるアミノ化合物との反応がより多く進行する。また、得られるアミノ基修飾ナノ炭素粒子の分散性に優れる。
【0055】
上記縮合工程は、酸触媒の存在下で行うことが好ましい。上記酸触媒は、カルボン酸とアルコールのエステル化、アルコールとアミンの脱水縮合反応、アルコールとチオールの脱水縮合反応などに用いられる公知乃至慣用の酸触媒を用いることができる。上記酸触媒としては、例えば、スルホン酸基含有化合物、塩酸、硝酸、硫酸、無水硫酸、リン酸、ホウ酸、トリハロ酢酸(トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等)、これらの塩(アンモニウム塩等)、無機固体酸などが挙げられる。上記酸触媒は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0056】
上記酸触媒は、反応時に溶媒や基質に溶解し得る均一系触媒、反応時に溶解しない不均一系触媒のいずれの形態であってもよい。不均一系触媒としては、例えば、酸成分が担体に担持された担持型触媒が挙げられる。
【0057】
上記スルホン酸基含有化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;10-カンファースルホン酸等の脂環式スルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、オクタデシルベンゼンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ブチル-2-ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;スルホン酸型イオン交換樹脂、3-[トリオクチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸-トリフルイミド、4-[トリオクチルアンモニオ]ブタン-1-スルホン酸-トリフルイミド、下記式(A)で表される化合物などが挙げられる。
【0058】
【0059】
上記無機固体酸としては、例えば、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト類、活性白土、モンモリロナイトなどが挙げられる。
【0060】
上記酸触媒としてのアンモニウム塩としては、例えば、下記式(B-1)で表されるアンモニウムイオンの塩、下記式(B-2)で表されるアンモニウムイオンの塩、下記式(B-3)で表されるアンモニウムイオンの塩、下記式(B-4)で表されるアンモニウムイオンの塩などが挙げられる。
【化3】
【0061】
上記式(B-1)中、RI~RIIIは、同一または異なって、水素原子、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を含む基を示す。上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状または分岐鎖状C1-22炭化水素基が好ましい。上記芳香族炭化水素基を含む基としては、フェニル基等の芳香族炭化水素基;4-t-ブチルフェニル基、メシチル基等の肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基が結合した基などが挙げられる。中でも、上記RI~RIIIのうちの二以上が芳香族炭化水素基を含む基であることが好ましい。
【0062】
上記式(B-1)~(B-3)で表されるアンモニウムイオンのカウンターアニオンとなる酸アニオンとしては、スルホン酸イオンが好ましく、より好ましくは芳香族スルホン酸イオン、特に好ましくはp-ドデシルベンゼンスルホン酸イオンである。
【0063】
上記式(B-4)中、RiおよびRiiは、同一または異なって、水素原子、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を含む基を示す。上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状または分岐鎖状C1-4炭化水素基が好ましい。上記芳香族炭化水素基を含む基としては、フェニル基等の芳香族炭化水素基、肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基が結合した基などが挙げられる。中でも、水素原子、メチル基、イソプロピル基、フェニル基が好ましい。
【0064】
上記式(B-4)で表されるアンモニウムイオンのカウンターアニオンとなる酸アニオンとしては、スルホン酸イオン、硫酸イオンが好ましく、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸イオン、10-カンファースルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、硫酸イオンである。
【0065】
上記式(B-1)~(B-4)で表されるアンモニウムイオンのカウンターアニオンとなる酸アニオンは、酸基を形成する酸素原子と、上記式(B-1)~(B-4)中の窒素原子上の水素原子とで水素結合を形成して錯塩を形成していてもよい。上記錯塩は、アンモニウムカチオン1個と酸アニオン1個とで1つの塩を形成していてもよいし、アンモニウムカチオン2個と酸アニオン2個とで1つの塩を形成していてもよく、1つの塩を形成するアンモニウムカチオンと酸アニオンのそれぞれの個数は特に限定されない。また、1つの塩中において、酸アニオンは多量体を形成していてもよい。例えば、硫酸イオンを形成する硫酸は[H
2SO
4(SO
3)
X]で表される構造を形成していてもよい。酸アニオンと上記式(B-4)とで形成される錯塩としては、例えば下記式(C)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0066】
上記式(C)中、RiおよびRiiは、上記式(B-4)におけるものと同様である。
【0067】
上記酸触媒としては、中でも、上記縮合工程における反応がより促進される観点から、スルホン酸基含有化合物、スルホン酸基含有化合物のアンモニウム塩が好ましい。
【0068】
反応に供する上記ナノ炭素粒子と上記式(1)で表されるアミノ化合物との比率(前者:後者、質量比)は、例えば1:1~1:25である。また、水分散組成物中における上記ナノ炭素粒子の濃度は、例えば1~10質量%であり、水分散組成物中における上記式(1)で表されるアミノ化合物の濃度は、例えば1~60質量%である。
【0069】
上記ナノ炭素粒子と上記式(1)で表されるアミノ化合物の反応条件は、例えば、温度0~100℃、反応時間1~48時間、圧力1~5atmの範囲内から適宜選択できる。
【0070】
上記縮合工程で得られる表面修飾ナノ炭素粒子は、ナノ炭素粒子と、上記ナノ炭素粒子表面の炭素原子に直接結合した下記式(2)で表される基とを有する表面修飾ナノ炭素粒子である。なお、下記式(2)中のRは、上記式(1)で表されるアミノ化合物中のRと同じである。
-NH-R (2)
[式(2)中、Rは脱離性基を示し、左に伸びる結合手はナノ炭素粒子表面の炭素原子に結合する。]
【0071】
上記表面修飾ナノ炭素粒子における、表面修飾基に対するナノ炭素粒子の質量比[ナノ炭素粒子/表面修飾基]は、特に限定されないが、5.0以上であることが好ましく、より好ましくは7.0以上である。また、上記質量比は、15.0以下であることが好ましく、より好ましくは10.0以下である。上記質量比が5.0以上であると、ナノ炭素粒子材料としての特性を損ないにくい。上記質量比が15.0以下であると、表面修飾基の修飾度が充分となる。上記質量比は、熱重量分析により測定される200℃から450℃の重量減少率に基づき、減少した重量を表面修飾基の質量として求められる。
【0072】
上記表面修飾ナノ炭素粒子の0.1~5質量%の溶媒中における分散粒子径D50(メディアン径;50体積%径)は、例えば500nm以下であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは40nm以下である。上記分散粒子径D50の下限は、例えば3nmである。なお、上記分散粒子径は動的光散乱法によって測定される。
【0073】
(アミノ化工程)
上記縮合工程の後、アミノ基に結合した脱離性基(-R)を脱離させて第一級アミノ基(-NH2)および/またはアンモニウムイオン(-NH3
+)を表面に有するアミノ基修飾ナノ炭素粒子を得る。
【0074】
上記脱離には、脱離性基に応じた脱離剤や、活性エネルギー線或いは加熱等の脱離処理を採用することができる。上記脱離剤としては、例えば、上記Rが-OC(=O)-R’基である場合は公知乃至慣用の加水分解用の酸(例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸)や塩基(例えば、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム)が挙げられる。上記Rが-R’基である場合の脱離剤としては2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン、Pd-C、塩酸、メタノール、および水素;Pd(OH)2および水素;クロロギ酸1-クロロエチル;あるいは硝酸アンモニウムセリウム(IV)などが挙げられる。
【0075】
上記アミノ化合物と上記脱離剤または上記脱離処理との組み合わせの例を表1および表2に掲げる。
【表1】
【表2】
【0076】
上記アミノ化工程は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。上記溶媒としては有機溶媒が好ましい。上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素(特に、直鎖状飽和脂肪族炭化水素);ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;メタノール等のアルコール;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の鎖状または環状エーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン;アセトニトリル等のニトリルなどが挙げられる。上記溶媒は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0077】
上記溶媒の使用量は、ナノ炭素粒子と上記式(1)で表されるアミノ化合物の総量に対して、例えば5~100質量倍である。溶媒の使用量が上記範囲内であると反応成分の濃度適度となり、反応速度の低下を抑制できる。
【0078】
上記アミノ化工程の反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等のいずれであってもよい。上記アミノ化工程の反応温度は、例えば20~150℃である。反応時間は、例えば1~96時間である。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等のいずれの方法でも行うことができる。
【0079】
上記製造方法は、上記縮合工程および上記アミノ化工程以外のその他の工程を有していてもよい。上記縮合工程後あるいは上記アミノ化工程後、得られた生成物は、例えば、濾過、遠心分離、抽出、水洗、中和等や、これらを組み合わせた手段により精製することが好ましい。また、例えば、上記ナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態の水分散組成物を得るために、上記縮合工程の前に解砕工程を行ってもよい。
【0080】
以上のように、上記縮合工程および上記アミノ化工程を少なくとも備える上記製造方法により、ナノ炭素粒子と、上記ナノ炭素粒子の表面の炭素原子に直接結合した第一級アミノ基および/またはアンモニウムイオンとを有するアミノ基修飾ナノ炭素粒子を製造することができる。特に、上記製造方法により、アミノ基結合量が200μmol/g以上である上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドを製造することができる。
【0081】
上記製造方法によれば、ナノ炭素粒子の粉体を用いる必要がないため、ビーズミル処理などにより解砕して水分散液を得た後、乾燥または脱溶媒してナノ炭素粒子の粉体を得る必要がなく、容易にアミノ基修飾ナノ炭素粒子を製造することができる。また、ビーズミル処理により解砕と縮合反応を同時に行わないことで、解砕処理時間を最小限とすることができるため、ジルコニアの混入が少なく、また、ラジカルの発生による副反応を抑制することができる。
【0082】
[ナノ炭素粒子分散組成物]
上記アミノ基修飾ナノダイヤモンド或いは上記製造方法により得られたアミノ基修飾ナノ炭素粒子を分散媒に分散させることにより、分散媒と、上記分散媒中に分散しているアミノ基修飾ナノ炭素粒子とを含む、ナノ炭素粒子分散組成物が得られる。なお、上記アミノ化工程後にナノ炭素粒子の凝着体が残存する場合には、上記アミノ化工程後の液を静置した後にその上清液を採取し、これをナノ炭素粒子分散組成物としてもよい。また、上記製造方法により得られた反応組成物を得た後で、エバポレーターなどで分散組成物中の溶媒を留去する前或いはした後、新たな分散媒を混合して撹拌する、すなわち溶媒の交換によっても上記ナノ炭素粒子分散組成物を製造することができる。
【0083】
[複合体]
本開示の一実施形態に係る複合体は、上記アミノ基修飾ナノ炭素粒子(上記アミノ基修飾ナノダイヤモンドなど)のアミノ基に、アミノ基との反応性基を備えた化合物が、上記反応性基部分において結合したものである。
【0084】
上記アミノ基との反応性基としては、例えば、カルボキシ基、カルボキサミド基(=アミノカルボニル基)、リン酸基、アルキル基、ビニル基などが挙げられる。
【0085】
上記複合体は、例えば、ナノ炭素粒子との複合体の成形を所望する化合物であって、上記アミノ基との反応性基を備えた、若しくは反応性基が付与された化合物(例えば、低分子医薬、抗体、サイトカイン、アミノ酸、タンパク質、DNA、RNA、糖類、繊維等)と、上述のアミノ基修飾ナノ炭素粒子とを、溶媒中において撹拌・混合することによって製造することができる。
【0086】
例えば、上記アミノ基修飾ナノ炭素粒子のアミノ基に繊維等が結合した複合体(=ナノコンポジット)は、強化繊維等として好ましく使用することができる。また、上記アミノ基修飾ナノ炭素粒子のアミノ基に、例えば、低分子医薬、抗体、サイトカイン、アミノ酸、タンパク質、DNA、RNA等が結合した複合体は、DDS製剤として好ましく使用することができる。
【0087】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0088】
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
【0089】
実施例1
(縮合工程)
ドデシルベンゼンスルホン酸163mg(0.5mmol)、水4mL、爆轟法ナノダイヤモンド水分散液(固形分濃度約4質量%)744.0mg、オレアミド(純度65質量%)1.3g(有効成分3mmol)を順次加え、100℃にて30時間反応させた。反応終了後、水5mLおよびトルエン15mLを加え、室温まで冷却した後、飽和食塩水2mLを加え、水相を除去した。得られたトルエン相について遠心分離(20000G、10分)を行うことで、オレアミド基で修飾されたナノダイヤモンド粒子のトルエン分散液を得た。得られた表面修飾ナノダイヤモンド粒子のメディアン径(D50)は約24nmであった。得られた分散液に対し同量のアセトンを加え、遠心分離(20000G、10分)を行うことで表面修飾ナノダイヤモンドの固体を得た。それをアセトンで複数回洗浄し、乾燥後得られた固体の熱重量分析により求められる質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は8.1であった。
【0090】
(アミノ化工程)
上記のようにして得られた固体90mgに対し、濃塩酸13mLを加え50℃にて8時間撹拌した。反応終了後、遠心分離(7000G、30秒)を行うことで固体を沈降させた。水、アセトンで複数回洗浄を行った後、乾燥することで脱保護されたアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩60gを得た。得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩のアミノ基結合量は211μmol/gであり、等電点は3.58であった。
【0091】
実施例2
(縮合工程)
ドデシルベンゼンスルホン酸163mg(0.5mmol)、水3mL、爆轟法ナノダイヤモンド水分散液(固形分濃度約5質量%)610mg、p-メトキシベンジルアミン0.4mL(3mmol)を順次加え、100℃にて24時間反応させた。反応終了後、水5mLおよびトルエン15mLを加え、室温まで冷却した後、水相を除去した。再度、水5mLで水洗を実施し、得られたトルエン相について遠心分離(20000G、10分)を行うことで、p-メトキシベンジルアミノ基で修飾されたナノダイヤモンド粒子のトルエン分散液を得た。得られた表面修飾ナノダイヤモンド粒子のメディアン径(D50)は約31nmであった。得られた分散液に対し同量の2-プロパノールを加え、遠心分離(20000G、10分)を行うことで表面修飾ナノダイヤモンドの固体を得た。それをアセトンおよびTHF/アセトン=1/1で複数回洗浄し、乾燥後得られた固体の熱重量分析により求められる質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は8.5であった。
【0092】
(アミノ化工程)
上記のようにして得られた固体190mgに対し、トルエン5mL、水1mL、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノンを順次加え、30℃にて10時間撹拌した。反応終了後、トルエン4mLを加え遠心分離(7000G、1分)を行うことで固体を沈降させた。トルエン、THF、アセトンで複数回洗浄を行った後、乾燥することで脱保護されたアミノ基修飾ナノダイヤモンド171mgを得た。得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンドのアミノ基結合量は334μmol/gであり、等電点は4.22であった。
【0093】
実施例3
(アミノ基修飾ナノダイヤモンドと酸ハライドとの反応)
実施例2で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンド60mg、トルエン1mL、ジイソプロピルエチルアミン0.17mL(1mmol)、およびステアロイルクロリド303mg(1mmol)を順次加え、100℃にて16時間反応させた。反応終了後、トルエン2mLを加え、室温まで冷却した後、全量を遠心分離(7000G、1分)に付し、トルエン分散液と沈降した固体とを得た。沈降した固体を分離取得し、THFを3mL加え再度遠心分離(7000G、30秒)を行ってTHF分散液を得た。このTHF分散液と上記トルエン分散液とを合わせた液体に、水3mLを静かに加え、しばらくして水を除去して有機相を得た。有機相に対し2-プロパノールを5mL加え、さらに遠心分離(7000G、2分)に付してナノダイヤモンドを沈降させ、表面修飾ナノダイヤモンドを得た。それをトルエン/アセトン=1/1およびアセトンで洗浄し、乾燥後得られた固体の熱重量分析により求められる質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は5.3であった。
【0094】
<粒径D50>
上述のようにして得られた実施例のナノダイヤモンド分散液におけるナノダイヤモンド粒子のメディアン径(粒径D50)は、動的光散乱法によって得られたナノダイヤモンドの粒度分布から測定した体積基準の値である。上記粒度分布は、具体的には、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、ナノダイヤモンドの粒度分布を動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した。
【0095】
<熱重量分析>
TG/DTA(熱重量測定・示差熱分析)装置(商品名「EXSTAR6300」、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、試料(約3mg)を、空気雰囲気下、昇温速度20℃/分にて加熱して重量減少を測定した。なお、基準物質には、アルミナを用いた。
【0096】
<FT-IR分析>
実施例で得られた表面修飾ナノダイヤモンドおよびアミノ基修飾ナノダイヤモンド(またはその塩酸塩)について、フーリエ変換赤外分光光度計「IRTracer」(株式会社島津製作所製)に、加熱真空撹拌反射「Heat Chamber Type-1000℃」(株式会社エス・ティ・ジャパン製)を取り付けた装置を用いてFT-IR測定を行った。なお、ナノダイヤモンド粒子の吸着水を除去するために、真空度2×10-3Pa下、150℃、10分間加熱を行った後に、FT-IR測定を実施した。
【0097】
実施例1で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図1に、実施例1で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩のFT-IRスペクトルを
図2に、実施例2で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図3に、実施例2で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図4に、実施例3で得られた表面修飾ナノダイヤモンドのFT-IRスペクトルを
図5にそれぞれに示す。
【0098】
実施例1の表面修飾ナノダイヤモンドでは、2928cm
-1付近、2857cm
-1付近、および1460cm
-1付近にオレイル基中のアルキル基由来のピークが、1651cm
-1付近にオレイル基中のオレフィン由来のピークが、1537cm
-1付近にアミド基由来のピークがそれぞれ確認できた。また、実施例1のアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩では、
図1に対して1537cm
-1付近のアミド基由来のピークが消失していることから、脱離性基が脱保護されたことを確認した。
【0099】
実施例2の表面修飾ナノダイヤモンドでは、2928cm
-1付近、2857cm
-1付近、および1458cm
-1付近にアルキル基由来のピークが、1609cm
-1付近、1514cm
-1付近、および831cm
-1付近にベンゼン環由来のピークが、1248cm
-1付近にエーテル由来のピークがそれぞれ確認できた。また、実施例2のアミノ基修飾ナノダイヤモンドでは、
図3に対して1609cm
-1付近、1514cm
-1付近、および831cm
-1付近のベンゼン環由来のピーク、並びに1248cm
-1付近のエーテル由来のピークが消失していることから、脱離性基が脱保護されたことを確認した。
【0100】
実施例3の表面修飾ナノダイヤモンドでは、2926cm-1付近、2855cm-1付近、および1456cm-1付近にステアリル基由来のピークが、1539cm-1付近にアミド基由来のピークがそれぞれ確認できた。アミノ基を有するナノダイヤモンドと酸クロライドとを反応させればアミドが形成されるところ、実施例3の反応によりアミドが調製できたことを確認したことから、実施例2で得られたナノダイヤモンドはアミノ基を有することが確認された。
【0101】
<ゼータ電位>
実施例1で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩はそのままゼータ電位測定に使用した。一方、実施例2で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンドについては、以下のようにしてアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩を調製してゼータ電位測定に用いた。実施例2で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンド64.3mgに0℃にて濃塩酸3mLを加え、室温で40分撹拌後、遠心分離(7000G、5分)を行った。沈降した固体をアセトンで洗浄し、乾燥後アミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩66.5mgを得た。なお、得られたサンプル溶液のゼータ電位が0となるpHを等電点とした。
【0102】
そして、上記のようにして準備したアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩に、濃度0.1質量%となるように超純水を加えた。充分に撹拌した後、超音波処理を10分間行いサンプル溶液を作製した。測定範囲は、酸性側はサンプル溶液のpHからpH1までとし、アルカリ性側はサンプル溶液のpHからpH12までとした。サンプル溶液のpHをpH1まで変化させる際は1M塩酸水溶液を用いて変化させ、pH12まで変化させる際は1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて変化させた。また、pHは、pH計(商品名「ラコムテスター PH110」、ニッコー・ハンセン株式会社製)を使用して測定した。
【0103】
実施例1で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンド塩酸塩の等電点タイトレーショングラフを
図6に、実施例2で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンドの等電点タイトレーショングラフを
図7に、それぞれに示す。pH0~4におけるゼータ電位の最大値はいずれも10mV以上であった。
【0104】
<アミノ基結合量>
実施例で得られたアミノ基修飾ナノダイヤモンド(またはその塩酸塩)50mgをアセトニトリル10mLに懸濁し、N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニンヒドロキシコハク酸イミドエステル(Boc-L-Ala-OSu)60mg、およびトリエチルアミン50μLを加えて、室温で約20時間反応を行った。反応混合物の遠心沈降を行い、上澄みを除去した後に、沈降層にアセトニトリル(20mL)を加え、均一に混合した後に遠心沈降を行い上澄みを除去して洗浄を行った。沈降層をさらに炭酸水素ナトリウム水溶液30mLで洗浄し、次いで水で洗浄した。得られた沈降層を減圧乾燥して、灰色のナノダイヤモンド固体を得た(収量:42mg)。
【0105】
得られたナノダイヤモンド固体(3~5mg)を試験管に秤量し、トリフルオロ酢酸100μLを加え、超音波照射を行い均一な懸濁液とした。60℃で1分間加熱した後に、窒素ガスを吹き付けることでトリフルオロ酢酸を除去した。残渣を水200μLで懸濁し、ここにフェノールのエタノール溶液(フェノール20gをエタノール5mLで溶解したもの)200μLとシアン化カリウムのピリジン溶液(シアン化カリウム21.6mgを水30mLで溶解し、この溶液1mLをピリジン50mLで希釈したもの)200μLを加え、120℃のオイルバス中で10分間加熱した。試験管を一旦オイルバスから外し、ニンヒドリンのエタノール溶液(ニンヒドリン2.5gをエタノール50mLに溶解したもの)200μLを添加し、再び120℃のオイルバスで10分間加熱した。試験管をオイルバスから外し、30分間放冷した後に60%エタノール水溶液を加えて、容量を3mLに調整した。得られた希釈液について、遠心沈降を行うことにより沈降層を除去した。得られた上澄み液について、570nmの吸光度を測定した。アミノ基の定量はDL-アラニンを標準サンプルとして、比色定量により行った(カイザーテスト)。
【0106】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子の表面の炭素原子に直接結合した第一級アミノ基および/またはアンモニウムイオンとを有し、アミノ基結合量が200μmol/g以上(または205μmol/g以上)である、アミノ基修飾ナノダイヤモンド。
[付記2]前記アミノ基結合量は700μmol/g以下(500μmol/g以下、400μmol/g以下、または350μmol/g以下)である、付記1に記載のアミノ基修飾ナノダイヤモンド。
[付記3]等電点が3~5(または3.5~4.5)の範囲内にある付記1または2に記載のアミノ基修飾ナノダイヤモンド。
[付記4]pH0~4におけるゼータ電位の最大値が10mV以上である付記1~3のいずれか1つに記載のアミノ基修飾ナノダイヤモンド。
[付記5]前記ゼータ電位は50mV以下(40mV以下、または30mV以下)である付記4に記載のアミノ基修飾ナノダイヤモンド。
[付記6]前記アミノ基修飾ナノダイヤモンドにおける、アミノ基およびアンモニウム塩を含む表面修飾基に対するナノダイヤモンドの質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は5.0以上(または7.0以上)である付記1~5のいずれか1つに記載のアミノ基修飾ナノダイヤモンド。
[付記7]前記アミノ基修飾ナノダイヤモンドにおける、アミノ基およびアンモニウム塩を含む表面修飾基に対するナノダイヤモンドの質量比[ナノダイヤモンド/表面修飾基]は15.0以下(または10.0以下)である付記6に記載のアミノ基修飾ナノダイヤモンド。
【0107】
[付記8]水溶媒中で、ナノ炭素粒子と下記式(1)で表されるアミノ化合物とを反応させる縮合工程と、前記縮合工程の後、アミノ基に結合した脱離性基を脱離させて第一級アミノ基および/またはアンモニウムイオンを表面に有するアミノ基修飾ナノ炭素粒子を得るアミノ化工程とを備える、アミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
RNH2 (1)
[式(1)中、Rは脱離性基を示す。]
[付記9]前記ナノ炭素粒子はナノダイヤモンド粒子を含む付記8に記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記10]前記ナノダイヤモンド粒子は爆轟法ナノダイヤモンドを含む付記9に記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記11]前記式(1)中のRは、-OS(=O)2-R’基、-OC(=O)-R’基、-C(=O)-R’基、-S(=O)2-R’基、-C(=O)-O-R’基、-(C=O)-NH-R’基、または-R’基[但し、前記R’は、水素原子または置換基を有していてもよい一価の有機基を示す](好ましくは-C(=O)-R’基または-R’基)を示す、付記8~10のいずれか1つに記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記12]前記Rは-C(=O)-R’基を示し、前記R’は、アルケニル基、ハロアルキル基(特に、ハロC1-4アルキル基)、アラルキル骨格(特に、C1-4アルキル-アリール骨格)含有基、またはアリール基(特に、アリニル基、フェニル基、p-ビフェニル基)を示す、付記11に記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記13]前記R’は、C2-30アルケニル基(好ましくはC10-25アルケニル基、より好ましくはC12-20アルケニル基)を示す、付記12に記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記14]前記Rは-S(=O)2-R’基を示し、前記R’は、アルキル基(特に、C1-4アルキル基)、ジアルキルアミノ基(特に、ジC1-4アルキルアミノ基)、アルコキシ置換フェニル基(特に、C1-4アルコキシ置換フェニル基)、またはアルキル置換フェニル基(特に、C1-4アルキル置換フェニル基)を示す、付記11に記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記15]前記Rは、-C(=O)-O-R’基を示し、前記R’は、アラルキル骨格含有基(特に、C1-4アルキル-アリール骨格含有基)、ハロアルキル基(特に、ハロC1-4アルキル基)、分岐鎖アルキル基、脂環式炭化水素基、有機基置換シリル置換アルキル基、または2-(4-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)エチル基を示す、付記11に記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記16]前記Rは、-R’基を示し、前記R’は、芳香族炭化水素(特に、ベンゼン環)を含む基(好ましくは脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基)を含む基である、付記11に記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記17]前記脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基を含む基はアラルキル骨格含有基(好ましくはベンジル骨格含有基またはフェネチル骨格含有基)である、付記16に記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記18]前記式(1)で表されるアミノ化合物は融点が100℃以下である付記8~17のいずれか1つに記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記19]前記式(1)で表されるアミノ化合物は、前記酸触媒の存在下または非存在下で水に対する溶解性または分散性を有する、付記8~18のいずれか1つに記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記20]前記縮合工程は、ナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態で行われる、付記8~19のいずれか1つに記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記21]前記ナノ炭素粒子が水にナノ分散した状態におけるナノ炭素粒子のメディアン径(D50)は、1~100nm(1~50nm、または1~10nm)である、付記20に記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
[付記22]前記縮合工程は、前記式(1)で表されるアミノ化合物が有機溶媒に溶解または分散した状態で、水と有機溶媒の混合溶媒系で行われる、付記8~21のいずれか1つに記載のアミノ基修飾ナノ炭素粒子の製造方法。
【0108】
[付記23]ナノ炭素粒子と、前記ナノ炭素粒子表面の炭素原子に直接結合した下記式(2)で表される基とを有する、表面修飾ナノ炭素粒子。
-NH-R (2)
[式(2)中、Rは脱離性基を示し、左に伸びる結合手はナノ炭素粒子表面の炭素原子に結合する。]
[付記24]前記表面修飾ナノ炭素粒子における、表面修飾基に対するナノ炭素粒子の質量比[ナノ炭素粒子/表面修飾基]は、5.0以上(または7.0以上)である、付記23に記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記25]前記表面修飾ナノ炭素粒子における、表面修飾基に対するナノ炭素粒子の質量比[ナノ炭素粒子/表面修飾基]は、15.0以下(10.0以下)である、付記23または24に記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記26]前記表面修飾ナノ炭素粒子の0.1~5質量%の溶媒中における分散粒子径D50は、500nm以下(100nm以下、または40nm以下)である、付記23~25のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記27]前記ナノ炭素粒子はナノダイヤモンド粒子を含む付記23~26のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記28]前記ナノダイヤモンド粒子は爆轟法ナノダイヤモンドを含む付記27に記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記29]前記式(2)中のRは、-OS(=O)2-R’基、-OC(=O)-R’基、-C(=O)-R’基、-S(=O)2-R’基、-C(=O)-O-R’基、-(C=O)-NH-R’基、または-R’基[但し、前記R’は、水素原子または置換基を有していてもよい一価の有機基を示す](好ましくは-C(=O)-R’基または-R’基)を示す、付記23~28のいずれか1つに記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記30]前記Rは-C(=O)-R’基を示し、前記R’は、アルケニル基、ハロアルキル基(特に、ハロC1-4アルキル基)、アラルキル骨格(特に、C1-4アルキル-アリール骨格)含有基、またはアリール基(特に、アリニル基、フェニル基、p-ビフェニル基)を示す、付記29に記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記31]前記R’は、C2-30アルケニル基(好ましくはC10-25アルケニル基、より好ましくはC12-20アルケニル基)を示す、付記30に記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記32]前記Rは-S(=O)2-R’基を示し、前記R’は、アルキル基(特に、C1-4アルキル基)、ジアルキルアミノ基(特に、ジC1-4アルキルアミノ基)、アルコキシ置換フェニル基(特に、C1-4アルコキシ置換フェニル基)、またはアルキル置換フェニル基(特に、C1-4アルキル置換フェニル基)を示す、付記29に記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記33]前記Rは、-C(=O)-O-R’基を示し、前記R’は、アラルキル骨格含有基(特に、C1-4アルキル-アリール骨格含有基)、ハロアルキル基(特に、ハロC1-4アルキル基)、分岐鎖アルキル基、脂環式炭化水素基、有機基置換シリル置換アルキル基、または2-(4-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)エチル基を示す、付記29に記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記34]前記Rは、-R’基を示し、前記R’は、芳香族炭化水素(特に、ベンゼン環)を含む基(好ましくは脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基)を含む基である、付記29に記載の表面修飾ナノ炭素粒子。
[付記35]前記脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基を含む基はアラルキル骨格含有基(好ましくはベンジル骨格含有基またはフェネチル骨格含有基)である、付記34に記載の表面修飾ナノ炭素粒子。