IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱転写シート及び印画物 図1
  • 特開-熱転写シート及び印画物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090738
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】熱転写シート及び印画物
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/382 20060101AFI20220613BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20220613BHJP
   B41M 5/44 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B41M5/382 420
B41M5/40 440
B41M5/40 340
B41M5/44 310
B41M5/44 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203219
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小野 靖方
(72)【発明者】
【氏名】掛川 駿太
(72)【発明者】
【氏名】磯和 愛実
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111AA26
2H111AA52
2H111BA02
2H111BA03
2H111BA07
2H111BA08
2H111BA14
2H111BA53
2H111BA61
(57)【要約】
【課題】箔切れ性が良好で、高光沢且つ虹ムラの発生がない高品位な印画物を与える熱転写シート、及び箔切れ性が良好で、高光沢且つ虹ムラの発生がない高品位な印画物を提供する。
【解決手段】熱転写シート1は、剥離層40が、ポリエステル樹脂と、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂とを少なくとも含有し、膜厚0.3μm~0.7μmであり、接着層50が、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂以外の樹脂を含むことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の第一面上に形成された耐熱滑性層と、
前記基材における前記第一面と反対側の第二面上に形成された熱転写性保護層と、を備え、
前記熱転写性保護層は、
前記基材の第二面上に形成された剥離層と、
該剥離層上に形成された接着層と、を有し、
前記剥離層が、ポリエステル樹脂と、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂とを少なくとも含有し、膜厚0.3μm~0.7μmであり、
前記接着層が、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂以外の樹脂を含むことを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
前記剥離層のポリエステル樹脂の固形分重量比が、1%~5%であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記剥離層のスチレンアクリル樹脂の重量平均分子量が、30000~70000であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記接着層の主成分の樹脂の重量平均分子量が、30000~70000であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱転写シートを転写してなる印画物の表面層が、前記剥離層であることを特徴とする印画物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華型転写記録方式のプリンタに使用される熱転写シート及び印画物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱転写シートは、熱転写方式のプリンタに使用されるインクリボンを指し、サ-マルリボンとも呼ばれる。一般的な熱転写シートは、基材の一方の面に熱転写層を、他方の面に耐熱滑性層(バックコ-ト層)をそれぞれ設けた構成を有する。通常熱転写層は、インクの層であって、プリンタのサ-マルヘッドに発生する熱によって、インクが昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)され、熱転写受像シ-ト側に転写される。
【0003】
熱転写方式の一つである昇華転写方式は、プリンタの高機能化と合わせて、各種画像を簡便にフルカラ-形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書等のカ-ド類、アミュ-ズメント用出力物等に広く利用されている。用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また得られる印画物の耐久性向上を求める声も大きくなっており、近年では、基材の同じ側に、印画物への耐久性を付与する熱転写性保護層が互いに重ならないように設けられた複数の熱転写層を有する熱転写シートが普及してきている。
【0004】
印画物表面に形成される熱転写性保護層には、画像の耐久性以外に印画物の品位も要求されてきている。具体的には、高光沢であること、虹ムラおよび箔落ちの発生がないことが挙げられる。虹ムラとは、光干渉による虹色のムラを指し、黒地の印画物において、蛍光灯などの光を印画物に映り込ませた際に視認され易い現象である。箔落ちとは、本来熱転写シートに残るべき熱転写性保護層が剥がれ落ち、印画物上に付着する現象を指す。熱転写性保護層は本来熱が印加された部分のみが被転写体に転写されることが理想であるが、非熱印加部の熱転写性保護層が印画物端部にはみでる形で箔として形成されることがある。このように熱転写性保護層の箔切れ性が悪い熱転写シートでは、プリンタ内搬送過程において箔が舞い散り、画像形成前の被転写体上に付着して、結果として印画欠陥をもたらす。
【0005】
高光沢および虹ムラ抑制の技術として、基材フィルムと、基材フィルムの一方の面の少なくとも一部に、熱転写可能に形成された保護層、とからなる保護層熱転写シートであって、保護層の基材フィルム側の界面に形成される剥離層が、アクリル樹脂とスチレンアクリル樹脂とを併用的に含んでなる樹脂組成物であって、樹脂組成物の全量に対して、アクリル樹脂30~60重量%、スチレンアクリル樹脂40~70重量%の範囲で含み、剥離層の厚さが、0.5μm~1.0μm、であることを特徴とする、保護層熱転写シートが提案されている(下記の特許文献1参照)。
【0006】
また、箔切れ性改善の技術として、基材シートの一方の面に、少なくとも、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色相を呈する3種類の熱転写性インク層と熱転写性保護層とが基材シートの長手方向に面順次に設けられてなる熱転写シートであって、基材シート側と熱転写性保護層との25℃環境下でのJIS K 6854-2に基づく剥離強度が0.8gf/cm以上であり、熱転写性保護層を構成する樹脂が、重量平均分子量(Mw)が90000以下のアクリル系樹脂である熱転写シートが提案されている(下記の特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5641404号公報
【特許文献2】特開2011-93225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の剥離層に粘着テープを貼り付け、ピール試験を行ったところ、剥離層が容易に剥がれる結果となった。このように基材と剥離層との間の密着性が不十分であると、スリット等の後加工時や印画搬送時に掛かる負荷によって剥離層が基材から剥がれ落ち、印画欠陥を招く可能性がある。
【0009】
また、特許文献2の熱転写シートは、良好な箔切れ性を示すものの、光沢および虹ムラ抑制は不十分であった。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、箔切れ性が良好で、高光沢且つ虹ムラの発生がない高品位な印画物を与える熱転写シート、及び箔切れ性が良好で、高光沢且つ虹ムラの発生がない高品位な印画物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る熱転写シートは、基材と、前記基材の第一面上に形成された耐熱滑性層と、前記基材における前記第一面と反対側の第二面上に形成された熱転写性保護層と、を備え、前記熱転写性保護層は、前記基材の第二面上に形成された剥離層と、該剥離層上に形成された接着層と、を有し、前記剥離層が、ポリエステル樹脂と、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂とを少なくとも含有し、膜厚0.3μm~0.7μmであり、前記接着層が、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂以外の樹脂を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る熱転写シートでは、前記剥離層のポリエステル樹脂の固形分重量比が、1%~5%であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る熱転写シートでは、前記剥離層のスチレンアクリル樹脂の重量平均分子量が、30000~70000であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る熱転写シートは、前記接着層の主成分の樹脂の重量平均分子量が、30000~70000であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る印画物は、上記のいずれか一に記載の熱転写シートを転写してなる印画物の表面層が、前記剥離層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る熱転写シート及び印画物によれば、箔切れ性が良好で、高光沢且つ虹ムラの発生がない高品位な印画物を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る熱転写シートの一例を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の一実施形態の変形例に係る熱転写シートの一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の熱転写シート1を示す図である。熱転写シート1は、シート状の基材10と、基材10の第一面10a上に形成された耐熱滑性層20と、基材10における第一面10aと反対側の第二面10b上にされた熱転写性保護層30と、を備えている。熱転写性保護層30は、基材10の第二面10b上に形成された剥離層40と、剥離層40上に形成された接着層50と、を有している。
【0019】
基材10は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルムや、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類等の単独のもの、あるいはこれらを組み合わせてなる複合体を使用することができる。中でも、物性面、加工性、コスト面等を考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、その厚みは、特に制限はなく、例えば2~50μmである。
【0020】
耐熱滑性層20は、サーマルヘッドとの滑り性を付与するものである。耐熱滑性層20は、例えば、耐熱性に優れたバインダー樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂等からなる。耐熱滑性層20の厚みは、0.1μm~2.5μmが好ましい。
【0021】
剥離層40は、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂を少なくとも含有する。主成分とは、乾燥後の重量固形分比で50%以上を占めることを意味する。スチレンアクリル樹脂を剥離層40の主成分とすることで、印画物表面に高光沢を付与できる。また、バインダー樹脂の分子量が大きいほど膜の凝集力が高くなり、箔落ちの発生が顕著となる。スチレンアクリル樹脂の重量平均分子量を90000以下にすることで、実用上問題ない100μm程度以下の箔の大きさに制御できる。さらに、スチレンアクリル樹脂の重量平均分子量を70000以下に限定することで、視認できない80μm程度以下の箔の大きさに制御できる。一方、スチレンアクリル樹脂の重量平均分子量が30000未満になると、保護層に要求される耐久性、すなわち耐溶剤性、耐油脂性、耐擦過性などを損なう可能性があるため、スチレンアクリル樹脂の重量平均分子量は30000以上であることが好ましい。
【0022】
ここで、スチレンアクリル樹脂は、アクリル酸モノマーとスチレンモノマーの共重合を意味する。アクリル酸モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル等を例示できる。スチレンモノマーとしては、置換基を有するスチレン、置換基を有さないスチレンのいずれも用いることができる。適用可能な市販樹脂例として、三菱ケミカル(株)製ダイヤナールMB-2539,BR-50,BR-113等が挙げられる。
【0023】
剥離層40の乾燥後の膜厚は、0.3μm~0.7μmとすることが必須である。スチレンアクリル樹脂の屈折率nは、1.5~1.6であり、これを明線ができる条件式に代入すると、膜厚0.6μm前後の時に緑色干渉光、0.75μm前後の時に赤色干渉光を発現することになる。面内での膜厚偏差は0.10μm程度のため、熱転写性保護層30の膜厚が0.7μmを超えると緑色干渉光と赤色干渉光が視認され、虹ムラが顕著となる。そのため、剥離層40の膜厚を0.7μm以下に設計することで、赤色干渉光は発現しないため、虹ムラを解消することができる。一方、剥離層40の膜厚が0.3μm未満では印画物の光沢が十分に得られない。
【0024】
また、剥離層40は、ポリエステル樹脂を少なくとも含有する。基材10にはポリエチレンテレフタレートを用いることが主流であるため、類似構造のポリエステル樹脂を剥離層40に含有させることで、基材10との冷時密着性を向上することができる。そのため、箔切れ性に効果を発揮する。ポリエステル樹脂の含有量は、剥離層40の樹脂固形分比(固形分量比)で1%~5%が好適である。ポリエステル樹脂の含有量が1%未満では、基材10との冷時密着性が十分に得られない可能性がある。また、ポリエステル樹脂の含有量が5%を超えると、熱転写時に凝集破壊を起こし、印画物光沢の低下が懸念される。
【0025】
剥離層40は、必要に応じてその他の樹脂や添加剤を含有させても良い。他の樹脂としては、アクリル系樹脂、セルロース誘導体を好ましく用いることができる。添加剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、フィラー等を例示できる。
【0026】
接着層50は、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂以外の樹脂を含むことを必須とする。剥離層40と同様に、接着層50がスチレンアクリル樹脂を主成分とすると、虹ムラが発生する。剥離層40と同様に、箔切れ性の観点から、接着層50の樹脂の平均分子量は90000以下が必須であり、さらに好ましくは30000~70000である。
【0027】
上記を満たし、熱転写接着性を持たせることができれば、接着層50樹脂の種類は限定することはなく、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル、エポキシ、フェノキシ樹脂等を好ましく用いることができる。
【0028】
また、接着層50には、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒促進剤、着色剤、艶調整剤、蛍光増白剤等の各種機能性添加剤が添加されてもよい。接着層50の厚さは、乾燥膜厚で0.2μm~3μmが適当である。
【0029】
上記の熱転写シート1が熱転写受像シートに熱転写された場合、剥離層40が表面層となる印画物が作製される。
【0030】
このように構成された熱転写シート1では、剥離層40が、ポリエステル樹脂と、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂を少なくとも含有し、膜厚0.3μm~0.7μmであり、接着層50が、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂以外の樹脂を含む。その結果、箔切れ性が良好で、高光沢且つ虹ムラの発生がない高品位な印画物を与えることができる。
【0031】
(変形例)
次に、上記に示す実施形態の変形例に係る熱転写シートについて、主に図2を用いて説明する。
以下の実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
図2は、本実施形態の変形例の熱転写シート1Aを示す図である。図2に示すように、本変形例に係る熱転写シート1Aは、シート状の基材10と、基材10の第一面10a上に形成された耐熱滑性層20と、基材10における第一面10aと反対側の第二面10b上にされた熱転写性保護層30及びインキ層60と、を備えている。熱転写性保護層30は、基材10の第二面10b上に形成された剥離層40と、剥離層40上に形成された接着層50と、を有している。インキ層60は、イエローインキ層61と、マゼンタインキ層62と、シアンインキ層63と、を有している。基材10の第二面10b上に、イエローインキ層61、マゼンタインキ層62、シアンインキ層63及び熱転写性保護層30がこの順で配置されている。
【0033】
インキ層60は昇華転写可能な色材を任意の樹脂で担持させてなる層である。色材として使用する染料は、従来公知の熱転写シートに使用されている染料のいずれもが使用可能であり、特に限定されるものではない。
【0034】
イエローインキ層61の染料成分としては、例えば、ソルベントイエロー56,16,30,93,33、ディスパースイエロー201,231,33等が挙げられる。また、マゼンタインキ層62の染料成分としては、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等が挙げられる。さらに、シアンインキ層63の染料成分としては、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等が挙げられる。
【0035】
インキ層60の構成材料として用いられるバインダーとしては、特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂等の耐熱性、染料移行性等に優れる樹脂が使用できる。また必要に応じて、剥離強度を制御するために上記の樹脂の他に、イソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ジアルデヒド系樹脂等の樹脂を用いてもよい。
【0036】
このように構成された熱転写シート1Aでは、剥離層40が、ポリエステル樹脂と、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂を少なくとも含有し、膜厚0.3μm~0.7μmであり、接着層50が、主成分として重量平均分子量90000以下のスチレンアクリル樹脂以外の樹脂を含む。その結果、箔切れ性が良好で、高光沢且つ虹ムラの発生がない高品位な印画物を与えることができる。
【0037】
次に、本発明の熱転写シートについて、実施例および比較例を用いてさらに説明する。以下の説明において、「部」とは、特に断りのない限り質量基準である。また、本発明は実施例の説明により何ら限定されるものではない。
【0038】
<保護層熱転写シート(熱転写シート)の作成>
(実施例1)
下記組成の耐熱滑性層用インキ組成物を調整し、厚み4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥後の耐熱滑性層の塗布量が1.0g/mとなるように塗布及び乾燥を行った。
〔耐熱滑性層用インキ〕
・アクリルポリオール樹脂 70部
・2-6,トリレンジイソシアネート 24部
・シリコーンフィラー(粒径1.0μm) 1部
・アミノ変性シリコーンオイル 5部
・メチルエチルケトン 250部
・トルエン 250部
【0039】
次に、下記組成の剥離層用インキ組成物を調製し、基材10における耐熱滑性層20を形成した面10aとは反対側の面10bに、乾燥後の剥離層40の膜厚が0.5μmとなるように塗布及び乾燥した。
〔剥離層用インキ-1〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-50
(スチレンアクリル樹脂、Mw=65000、三菱ケミカル(株)) 98部
・エリーテル(登録商標)UE-9900
(ポリエステル樹脂、Mn=15000、ユニチカ(株)) 2部
・トルエン 900部
【0040】
次に、下記組成の接着層用インキ組成物を調製し、剥離層40上に、乾燥後の接着層50の膜厚が1.0μmとなるように塗布及び乾燥した。
〔接着層用インキ-1〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-83
(アクリル樹脂、Mw=40000、三菱ケミカル(株)) 100部
・メチルエチルケトン 900部
【0041】
(実施例2)
剥離層用インキの組成を下記に変更した以外は実施例1と同様に、保護層熱転写シートを作製した。
〔剥離層用インキ-2〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-50
(スチレンアクリル樹脂、Mw=65000、三菱ケミカル(株)) 50部
・ダイヤナール(登録商標)BR-75
(アクリル樹脂、Mw=85000、三菱ケミカル(株)) 48部
・エリーテル(登録商標)UE-9900
(ポリエステル樹脂、Mn=15000、ユニチカ(株)) 2部
・トルエン 900部
【0042】
(実施例3)
剥離層用インキおよび接着層用インキの組成を下記に変更した以外は実施例1と同様に、保護層熱転写シートを作製した。
〔剥離層用インキ-3〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-52
(スチレンアクリル樹脂、Mw=85000、三菱ケミカル(株)) 98部
・エリーテル(登録商標)UE-9900
(ポリエステル樹脂、Mn=15000、ユニチカ(株)) 2部
・トルエン 900部
〔接着層用インキ-2〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-75
(アクリル樹脂、Mw=85000、三菱ケミカル(株)) 100部
・メチルエチルケトン 900部
【0043】
(実施例4)
剥離層用インキの組成を下記に変更した以外は実施例1と同様に、保護層熱転写シートを作製した。
〔剥離層用インキ-4〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-50
(スチレンアクリル樹脂、Mw=65000、三菱ケミカル(株)) 93部
・エリーテル(登録商標)UE-9900
(ポリエステル樹脂、Mn=15000、ユニチカ(株)) 7部
・トルエン 900部
【0044】
(比較例1)
剥離層用インキの組成を下記に変更した以外は実施例1と同様に、保護層熱転写シートを作製した。
〔剥離層用インキ-5〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-50
(スチレンアクリル樹脂、Mw=65000、三菱ケミカル(株)) 100部
・トルエン 900部
【0045】
(比較例2)
剥離層用インキの組成を下記に変更した以外は実施例1と同様に、保護層熱転写シートを作製した。
〔剥離層用インキ-6〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-50
(スチレンアクリル樹脂、Mw=65000、三菱ケミカル(株)) 30部
・ダイヤナール(登録商標)BR-75
(アクリル樹脂、Mw=85000、三菱ケミカル(株)) 68部
・エリーテル(登録商標)UE-9900
(ポリエステル樹脂、Mn=15000、ユニチカ(株)) 2部
・トルエン 900部
【0046】
(比較例3)
剥離層用インキの組成を下記に変更した以外は実施例1と同様に、保護層熱転写シートを作製した。
〔剥離層用インキ-7〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-122
(スチレンアクリル樹脂、Mw=210000、三菱ケミカル(株)) 98部
・エリーテル(登録商標)UE-9900
(ポリエステル樹脂、Mn=15000、ユニチカ(株)) 2部
・トルエン 900部
【0047】
(比較例4)
接着層用インキの組成を下記に変更した以外は実施例1と同様に、保護層熱転写シートを作製した。
〔接着層用インキ-3〕
・ダイヤナール(登録商標)BR-82
(アクリル樹脂、Mw=15000、三菱ケミカル(株)) 100部
・メチルエチルケトン 900部
【0048】
(比較例5)
剥離層用インキの乾燥後の剥離層40の膜厚が0.8μmに変更した以外は実施例1と同様に、保護層熱転写シートを作製した。
【0049】
(比較例6)
剥離層用インキの乾燥後の剥離層40の膜厚が0.2μmに変更した以外は実施例1と同様に、保護層熱転写シートを作製した。
【0050】
<熱転写受像シートの作成>
基材として、188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/mとなるように塗布及び乾燥することで、熱転写受像シートを作製した。
【0051】
<受像層塗布液>
・塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体 100部
・ポリエーテル変性シリコーンオイル 3部
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0052】
<熱転写性保護シートの評価>
得られた熱転写性保護シートについて、冷時密着性を評価した。詳細な評価方法を以下に記載した。
<冷時密着性>
実施例1~4、比較例1~6の保護層熱転写シート表面に粘着テープであるセロテープ(登録商標)を貼り付け、貼り付けたセロテープ(登録商標)を剥離させることで保護層熱転写シートの基材と剥離層との間の冷時密着性を確認した。評価は以下の基準にて行った。
〇:基材から剥離層が剥離しない
×:基材から剥離層が剥離する
【0053】
<印画物作製>
フジフイルム サーマルフォトプリンター ASK-300用熱転写シートと、熱転写受像シートとを重ね合わせ、解像度が300×300DPI、印画速度が10msec/line、転写の熱エネルギーをそれぞれ0.40mJ/dotとして、評価用サーマルプリンタにて黒ベタ印画物(保護層未転写)を作製した。続いて、実施例1~4、比較例1~6にて作製した保護層熱転写シートを、黒ベタ印画物上に重ね合わせ、解像度が300×300DPI、印画速度が10msec/line、転写の熱エネルギーをそれぞれ0.40mJ/dotとして、評価用サーマルプリンタにて保護層付き黒ベタ印画物を作製した。
【0054】
<印画物の評価>
得られた印画物について、箔切れ性、光沢度および虹ムラを評価した。各評価項目の詳細な評価方法を以下に記載した。
【0055】
<箔切れ性>
実施例1~4、比較例1~6の保護層熱転写シートと熱転写受像シートとを用いて作製した印画物の箔切れ性を以下の装置にて測定した。また、評価は以下の基準にて行った。
・キーエンス デジタルマイクロスコープ VHX-1000
〇:印画物端面に保護層箔の最大長さが80μm未満である
△:印画物端面に保護層箔の最大長さが110μm未満である
×:印画物端面に保護層箔の最大長さが100μm以上である
なお、△以上が実用上問題ないレベルである
【0056】
<光沢度評価>
実施例1~4、比較例1~6の保護層熱転写シートと熱転写受像シートとを用いて作製した黒ベタ印画物の光沢度を以下の装置にて測定した。また、評価は以下の基準にて行った。
・光沢度計(Rhopoint IQ,Rhopoint Instruments社製) 角度:60°
〇:光沢度が90%以上である
△:光沢度が85%以上90%未満である
×:光沢度が85%未満である
なお、△以上が実用上問題ないレベルである
【0057】
<虹ムラ>
実施例1~4、比較例1~6の保護層熱転写シートと熱転写受像シートとを用いて作製した黒ベタ印画物を蛍光灯下で目視し、表面の虹ムラ有無を確認した。評価は以下の基準にて行った。
〇:虹ムラが認められない
×:虹ムラが認められる
評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示す結果からわかるように、実施例1~4は、冷時密着性が〇であり、箔切れ性が〇または△であり、光沢度が〇または△であり、虹ムラが〇となった。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態および各実施例を説明したが、本発明はこの実施形態および各実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0061】
1,1A 熱転写シート、10 基材、10a 第一面、10a 面、10b 第二面、20 耐熱滑性層、30 熱転写性保護層、40 剥離層、50 接着層、60 インキ層
図1
図2