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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090765
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】布帛および繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/513 20210101AFI20220613BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20220613BHJP
   D03D 15/20 20210101ALI20220613BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20220613BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20220613BHJP
   A41D 31/08 20190101ALI20220613BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20220613BHJP
【FI】
D03D15/12 Z
D03D15/00 D
D03D15/00 E
D02G3/04
A41D13/00 102
A41D31/08
A41D31/00 503F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203264
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 篤士
【テーマコード(参考)】
3B011
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
3B011AB01
3B011AC14
4L036MA04
4L036MA35
4L036MA39
4L036PA31
4L036PA33
4L036UA06
4L048AA13
4L048AA16
4L048AA19
4L048AA20
4L048AA25
4L048AA48
4L048AA50
4L048AA53
4L048AA56
4L048AB01
4L048AB05
4L048AC09
4L048AC11
4L048AC14
4L048BA01
4L048BA02
4L048CA01
4L048CA03
4L048CA06
4L048CA15
4L048DA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】難燃性だけでなく、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する布帛および繊維製品を提供する。
【解決手段】アラミド繊維を含む糸1とポリベンズオキサゾール繊維からなる糸2とを含む布帛であって、好ましくは、前記糸1が、難燃剤を含有するアラミド繊維を含む糸であり、前記糸1が、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、酸化ポリアクリロニトリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ポリエステル繊維の群から選択されるいずれかの繊維をさらに含む、布帛である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維を含む糸1とポリベンズオキサゾール繊維からなる糸2を含むことを特徴とする布帛。
【請求項2】
前記糸1が、難燃剤を含有するアラミド繊維を含む糸である、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記糸1が、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、酸化ポリアクリロニトリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ポリエステル繊維の群から選択されるいずれかの繊維をさらに含む、請求項1または2に記載の布帛。
【請求項4】
前記糸1が、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維および/またはポリベンズオキサゾール繊維および/または酸化ポリアクリロニトリル繊維を糸1の重量対比10重量%以上含む、請求項1~3のいずれかに記載の布帛。
【請求項5】
布帛が織物であり、前記糸2が経および緯に格子状に織り込まれており、かつ織物の経糸および緯糸において糸1と糸2が1:1~15:1の割合で配されてなる、請求項1~4のいずれかに記載の布帛。
【請求項6】
ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後のISO13934-1に規定される引張強度保持率(タテ方向またはヨコ方向)が10%以上である、請求項1~5のいずれかに記載の布帛。
【請求項7】
ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後の熱収縮率(タテ方向またはヨコ方向)が15%以下である、請求項1~6のいずれかに記載の布帛。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載された布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性だけでなく、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する布帛および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消防服などの防護服に用いられる布帛として種々の布帛が提案されている。しかし、現在用いられている布帛は消防活動中に火炎や熱に一度でも暴露されると、その暴露を受けた部位が硬化、炭化して脆化してしまい、防護機能を著しく損ねるといった問題を有している。例えば、特許文献1では、耐熱性、軽量性、耐候性、および火炎暴露炭化後の布帛柔軟性を兼ね備えた布帛が提案されているが、熱暴露後の強度についてはまだ十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-094043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、難燃性だけでなく、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する布帛および繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、布帛を構成する繊維種類などを巧みに工夫することにより難燃性だけでなく、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「アラミド繊維を含む糸1とポリベンズオキサゾール繊維からなる糸2を含むことを特徴とする布帛。」が提供される。
その際、前記糸1が、難燃剤を含有するアラミド繊維を含む糸であることが好ましい。
【0007】
また、前記糸1が、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、酸化ポリアクリロニトリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ポリエステル繊維の群から選択されるいずれかの繊維をさらに含むことが好ましい。特に、前記糸1が、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維および/またはポリベンズオキサゾール繊維および/または酸化ポリアクリロニトリル繊維を糸1の重量対比10重量%以上含むことが好ましい。また、布帛が織物であり、前記糸2が経および緯に格子状に織り込まれており、かつ織物の経糸および緯糸において糸1と糸2が1:1~15:1の割合で配されてなることが好ましい。また、ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後のISO13934-1に規定される引張強度保持率(タテ方向またはヨコ方向)が10%以上であることが好ましい。また、ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後の熱収縮率(タテ方向またはヨコ方向)が15%以下であることが好ましい。
【0008】
また、本発明によれば、前記の布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるい
ずれかの繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、難燃性だけでなく、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する布帛および繊維製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の布帛において、糸1はアラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維)を含む。かかるアラミド繊維としては、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、およびこれらの繊維の混合などいずれでもよい。
【0011】
ここで、メタ系アラミド繊維はメタフェニレンイソフタルアミド繊維であり、市販品では、帝人株式会社製の「コーネックス」(商標名)や「コーネックスネオ」(商標名)、デュポン社製「ノーメックス」(商標名)などが知られている。パラ系アラミド繊維としては、パラフェニレンテレフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「トワロン」(商標名)、東レ・デュポン株式会社製「ケブラー」(商標名)など)、コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名)など)いずれでもよい。
【0012】
前記アラミド繊維は、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化チタン、着色剤、不活性微粒子などの添加剤を含有してもよい。難燃剤を含有するアラミド繊維であることが好ましく、特に、難燃剤を含有するメタ系アラミド繊維であると熱暴露時の収縮を低減することができ好ましい。
【0013】
前記糸1はアラミド繊維のみで構成されていてもよいし他の繊維を含んでいてもよい。例えば、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、酸化ポリアクリロニトリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ポリエステル繊維の群から選択されるいずれかの繊維をさらに含んでいてもよい。また、前記糸1が、ポリベンズオキサゾール繊維および/またはポリベンズオキサゾール繊維および/または酸化ポリアクリロニトリル繊維を糸重量対比10重量%以上含んでいてもよい。
【0014】
前記糸1の形態は特に限定されず、紡績糸、長繊維(マルチフィラメント)、これらの複合糸、いずれでもよいが、紡績糸が好ましい。特に、メタ系アラミド繊維の混紡率が2~100重量%(より好ましくは30~100重量%)の紡績糸が好ましい。
【0015】
前記糸1において、総繊度は、用途に応じて、表面外観、耐熱性、熱防護性、伸縮性、風合いなどを考慮して適宜選択すればよく、特に紡績糸の場合、繊度は58dtex(英式綿番手100番単糸相当)~580dtex(英式綿番手10番手相当)の範囲が好ましい。
【0016】
また、前記糸1の単繊維繊度は、良好な紡績工程通過性、柔軟性の求められている衣料用途への使用の観点から、0.6~5.5dtexの範囲が好ましい。
【0017】
本発明の布帛において、糸2はポリベンズオキサゾール繊維からなる。かかるポリベンズオキサゾール繊維として市販品では、東洋紡社製「ザイロン」(商標名)が知られている。糸2はフィラメント(長繊維)でもよいし紡績糸(短繊維)でもよい。
ここで、糸2の総繊度としては278~1670dtexの範囲が好ましく、フィラメント(長繊維)の場合はフィラメント数としては166~996本の範囲が好ましい。
【0018】
本発明の布帛において、布帛組織としては特に限定されないが、織物または編物であることが好ましく、特に織物が好ましい。織物であれば、平組織、綾組織、朱子組織および各組織のリップストップ化などが例示される。また、編物であれば、機械編、かぎ針編、棒針編、アフガン編、レース編などが例示される。
【0019】
ここで、火炎または熱によって暴露された際の強度を高める上で、布帛が織物であり、前記糸2が経および緯に格子状に織り込まれており、かつ織物の経糸および緯糸において糸1と糸2とがこの順に1:1~15:1(より好ましくは2:1~10:1)の割合で配されていることが好ましい。
【0020】
製編織の方法は特に限定されず、通常の編機や織機を用いた方法でよい。また、かかる布帛に、精錬、リラックス、染色処理、セットなどの熱処理を施してもよい。さらには、吸水加工、撥水加工、起毛加工、難燃加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0021】
かくして得られた布帛は、難燃性だけでなく、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する。ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後の引張強度保持率(タテ方向および/またはヨコ方向)が10%以上(より好ましくは10~60%)であることが好ましい。その際、初期引張強度としては1000N以上(より好ましくは1000~10000N)であることが好ましい。また、ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した時の熱収縮率(タテ方向および/またはヨコ方向)が15%以下(より好ましくは1~15%)であることが好ましい。
【0022】
次に、本発明の繊維製品は、前記の布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。かかる繊維製品は前記の布帛を用いているので、難燃性だけでなく、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する。
【実施例0023】
次に本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0024】
(1)熱暴露後の引張強度および引張強度保持率
ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後、ISO13934-1に規定される引張試験を行った。なお、織物のタテ方向について測定した。
引張強度保持率(%)=熱暴露後の引張強度÷初期引張強度×100
【0025】
(2)熱暴露時の熱収縮率
ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後、室温下で、熱暴露前と後の試験片長さより熱収縮率を求めた。なお、織物のタテ方向およびヨコ方向について測定した。
熱収縮率(%)=(熱暴露後-熱暴露前の試験片長さ)÷熱暴露前の試験片長さ×100
【0026】
[実施例1]
ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製「コーネックス」(商標名))とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ)とを混合比率(重量比率)が90:10となる割合で混合した紡績糸(
番手:40/2)を糸1とした。ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維(東洋紡社製「ザイロン」(商標名))のフィラメント(278dtex)を糸2とした。
【0027】
次いで、経糸は糸1:糸2を3:1、緯糸は第1の糸1:糸2を2:1の割合で配して、織物密度が経100本/インチ(2.54cm)、緯71本/インチ(2.54cm)の綾織に製織し、目付220g/mの織物を得た。糸1の経方向の間隔は1.1mm、緯方向の間隔は1.3mmであった。熱暴露前後の経方向の引張強度、および熱暴露後の熱収縮率の測定結果を表1に示す。
【0028】
[実施例2]
実施例1において、経糸は糸1:糸2を9:1、緯糸は糸1:糸2を6:1の割合に変更する以外は実施例1と同様に実施した。糸1の経方向の間隔は2.3mm、緯方向の間隔は2.5mmであった。
【0029】
[実施例3]
実施例1において、経糸は糸1:糸2を18:1、緯糸は糸1:糸2を12:1の割合に変更する以外は実施例1と同様に実施した。糸1の経方向の間隔は4.6mm、緯方向の間隔は5.5mmであった。
【0030】
[実施例4]
実施例1において、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製「コーネックス」(商標名))とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ)とポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維(東洋紡社製「ザイロン」(商標名))とを混合比率が70:20:10となる割合で混合した紡績糸(番手:30/2)を糸1とする以外は実施例1と同様に実施した。
【0031】
[比較例1]
実施例1において、糸1のみを用いて織物密度が経100本/インチ(2.54cm)、緯71本/インチ(2.54cm)の綾織に製織する以外は実施例1と同様に実施した。
【0032】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、難燃性だけでなく、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する布帛および繊維製品が得られその工業的価値は極めて大である。