(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090766
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】スピーカー振動板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 7/02 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
H04R7/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203265
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】水田 悠生
(72)【発明者】
【氏名】赤松 哲也
【テーマコード(参考)】
5D016
【Fターム(参考)】
5D016CA06
5D016EA03
5D016EA11
(57)【要約】
【課題】高音質のスピーカー振動板を提供する。
【解決手段】セルロース繊維と、平均繊維径が100nm以下のパラ型全芳香族ポリアミドからなるアラミドナノファイバー、を含み、
アラミドナノファイバーの含有割合が、該セルロース繊維100重量部に対して、2重量部~20重量部である、ことを特徴とするスピーカー振動板。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維と、平均繊維径が100nm以下のパラ型全芳香族ポリアミドからなるアラミドナノファイバー、を含み、
アラミドナノファイバーの含有割合が、該セルロース繊維100重量部に対して、2重量部~20重量部である、ことを特徴とするスピーカー振動板。
【請求項2】
パラ型全芳香族ポリアミドが、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドである請求項1に記載のスピーカー振動板。
【請求項3】
セルロース繊維と、パラ型全芳香族ポリアミド繊維またはパルプを、非プロトン性極性溶媒下に強塩基性物質を添加し、ナノファイバー化して得られる平均繊維径が100nm以下のアミドナノファイバーとを混合、混抄、成形して得られる請求項1または2に記載のスピーカー振動板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラミドナノファイバーを含有するスピーカー振動板およびその製造方法に関する。
【0002】
一般に、スピーカー振動板に要求される特性としては、各種強度が高いこと、気密度が高いこと、ヤング率(弾性率、剛性)が高いこと、および、内部損失(tanδ)が大きいことが挙げられる。このような要求に応えるべく、スピーカー振動板の材料および構造が継続的に検討されている。
しかしながら、再生音質はヤング率、内部損失、また、ヤング率と比重より算出される音速にのみ支配されるのではなく、低音から高音までバランスの良いことが求められる。
【0003】
ヤング率が高いものは振動板の変形が少ないことから低音のひずみが生じにくい、内部損失の高いものは素材特有の音がしないため原音再生が忠実であり、音速の高いものは高音領域の再生が良好であるとされる。一方、振動板の変形抑制ではあえて密度を小さくして厚みを持たせることで曲げ剛性が高く軽量性を有するノンプレス抄紙コーンなど求める音質によって同じ素材であっても再生される音質が異なり、視聴による感応試験により判定される。
【0004】
特許文献1によれば、セルロースパルプを用いたスピーカーコーンにTEMPO酸化処理および微細化処理により生成されたセルロースナノファイバーを添加する事で音質改善を行っている。また、特許文献2によれば、TEMPO酸化処理および微細化して得られるセルロ―スナノファイバーを添加することでヤング率の向上が認められることが開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの文献は、パルプの有する分岐構造をナノファイバーで充填し紙構造の均質化を図ることで、空隙の不均一性により生じる不等振動を軽減し再生音の向上を行うものであると考えられるが、微細化により生成したナノファイバーもセルロースパルプも同じく植物の生長に伴いセルロース分子が配向した同じ構造であるため、形状は異なっても結晶構造はおなじであり、これらが発揮する音質改善効果は、得られた紙の密度上昇に伴うものであり、高音領域の音質は向上するものの、低音領域では改善効果が認められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-42405号公報
【特許文献2】特開2017-118334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高音質のスピーカー振動板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の繊維径を有するパラ型全芳香族ポリアミドからなるアラミドナノファイバーを特定量使用することにより、高音質のスピーカー振動板が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明によれば、下記構成(1)~(3)が提供される。
(1)セルロース繊維と、平均繊維径が100nm以下のパラ型全芳香族ポリアミドからなるアラミドナノファイバー、を含み、
アラミドナノファイバーの含有割合が、該セルロース繊維100重量部に対して、2重量部~20重量部である、ことを特徴とするスピーカー振動板。
(2)パラ型全芳香族ポリアミドが、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドである前項(1)に記載のスピーカー振動板。
(3)セルロース繊維と、パラ型全芳香族ポリアミド繊維またはパルプを、非プロトン性極性溶媒下に強塩基性物質を添加し、ナノファイバー化して得られる平均繊維径が100nm以下のアミドナノファイバーとを混合、混抄、成形して得られる前項(1)または(2)に記載のスピーカー振動板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の繊維径を有するパラ型全芳香族ポリアミドからなるアラミドナノファイバーを特定量含有させることにより、全音域において音質に優れるスピーカー振動板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のアラミドナノファイバーの構造観察画像を示した一例である。
【
図2】平均繊維径算出用に、
図1を拡大した構造観察画像を示した一例である。
【
図3】平均繊維径の算出方法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細について説明する。
<スピーカー振動板>
本発明のスピーカー振動板は、セルロース繊維と、平均繊維径が100nm以下のパラ型全芳香族ポリアミドからなるアラミドナノファイバー、を含み、アラミドナノファイバーの含有割合が、該セルロース繊維100重量部に対して、2重量部~20重量部を含有する。このようにすることで全音域において良好な音質のスピーカー振動板を得ることができる。
【0013】
また、本発明のスピーカー振動板は、アラミドナノファイバーの含有割合は、セルロース繊維100重量部に対して、2重量部~20重量部であり、好ましくは3重量部~15重量部であり、さらに好ましくは5重量部~10重量部である。このような範囲であれば、全音域において優れた音質のスピーカー振動板を得ることができる。アラミドナノファイバーの含有割合が20重量%を超える場合、スピーカー振動板は、抄造時間が長くなり、製造効率が顕著に低下するおそれがある。さらに、ナノファイバーは比表面積が大きく乾燥時間の延長や表層が乾燥することで被膜を形成し内部の水分の膨張による膨れ、破裂の恐れがあるため好ましくない。
【0014】
また、本発明のスピーカー振動板に使用されるセルロース繊維は、例えば、針葉樹や、広葉樹からなる木材パルプであってもよいし、ケナフなどからなる非木材パルプであっても良いが、繊維長が比較的長く、剛性の高い針葉樹のパルプであるとスピーカー振動板として取り回しが良いため好ましい。
【0015】
なお、本発明のスピーカー振動板は、必要に応じて、他の繊維をさらに含んでいてもよい。他の繊維は、目的に応じて適切に選択され得る。例えば機械的強度の向上を目的とする場合には、高強度繊維が混合され得る。さらに、目的に応じた繊維(例えば、放熱性繊維、)が混合され得る。
【0016】
なお、本発明のスピーカー振動板は、必要に応じて、他成分を含んでいても良い。具体的な他成分として、例えば、シリコン、シリコンカーバイト(SiC)、ゲルマニウムなどの半導体材料、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化アルミニウム(アルミニウムナイトライド)、窒化ホウ素(ボロンナイトライド)などの窒化化合物、カーボンブラック、ダイヤモンド、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、グラファイトなどの炭素材料等の無機物を挙げることができる。また、カオリン、タルク、クレー、ハイドロタルサイト、珪藻土などの鉱物微粒子を用いることもできる。また、粒子としては上記に挙げたものに加えて、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、ガラス等を用いることもできる。アラミドナノファイバーの有する高比表面積が有効に作用し、成分の把持材として機能させることも可能である。
【0017】
なお、本発明のスピーカー振動板の密度は、好ましくは0.3g/cc以上0.5g/cc以上であることが好ましい。0.3g/cc以下では空隙の増大による中~高温でのコモリが生じ好ましくない。また、0.5g/cc以上では高温再生能力は向上するが、同一重量では薄くなりによる曲げ剛性の低下による低音ひずみ、同一厚みでは重量増加による音圧の低下を招く恐れがある。
【0018】
なお、本発明のスピーカー振動板は、任意の適切な製造方法により製造され得る。代表的な製造方法は、セルロース繊維(木材パルプ)を主成分とし、該セルロース繊維(木材パルプ)に所定量のアラミドナノファイバーを配合し、混抄する。混抄方法および成形方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。成形方法の具体例としては、例えば、立体抄紙+熱プレス成形が挙げられる。
【0019】
なお、本発明のスピーカー振動板は、目的に応じて任意の適切な形状を有し得る。例えば、本発明のスピーカー振動板は、コーン形状であってもよく、ドーム形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0020】
なお、本発明のスピーカー振動板は、あらゆる用途のスピーカーに適用され得る。例えば、本発明の振動板を用いるスピーカーは、車載用であってもよく、携帯電子機器用(例えば、携帯電話、携帯音楽プレーヤー)であってもよく、据置型であってもよい。また、例えば、本発明の振動板を用いるスピーカーは、大口径(25cm以上)であってもよく、中口径(20~10cm)であってもよく、小口径(5cm以下)であってもよい。好ましくは、中~小口径のスピーカーに用いられる。
【0021】
<アラミドナノファイバー>
本発明のスピーカー振動板用シートに使用されるアラミドナノファイバーは、平均繊維径が100nm以下であり、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは25nm以下である。平均直径の下限は1nm以上、好ましくは3nm以上であることが好ましい。また、アラミドナノファイバーは500nm以上の直径のものを有さないことが好ましい。平均繊維径が100nmを超えると、アラミドナノファイバー間の水素結合的相互作用密度が低くなり、高ヤング率及び高い内部損失(tanδ)が発現されにくくなる。その結果、高音速性や鋭い音切れなどの音響特性が得られないため好ましくない。
【0022】
本発明におけるアラミドナノファイバーは、繊維長/繊維径で表されるアスペクト比が好ましくは10以上1、000以下であり、より好ましくは10以上500以下であり、さらに好ましくは10以上100以下である。アスペクト比が10未満であると、繊維の交絡構造が発現しにくく、それゆえに期待される特性発現が困難になる場合がある。
【0023】
また、本発明におけるアラミドナノファイバーは、パラ型全芳香族ポリアミドである。パラ型全芳香族ポリアミドとしては、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリ-p-ベンズアミド、ポリ-p-アミドヒドラジド、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド-3,4-ジフェニルエーテルテレフタルアミドなどが好ましく、配向結晶性(紡糸溶液中で液晶構造のドメインを形成)を有するポリ-p-フェニレンテレフタルアミド繊維であることが好ましい。
【0024】
なお、パラ型全芳香族ポリアミドを用いた繊維としては、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「トワロン」(商標名)、東レ・デュポン株式会社製「ケブラー」(商標名)など)や、コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名)など)が挙げられる。
【0025】
<アラミドナノファイバーの製造>
本発明におけるアラミドナノファイバーの製造は、パラ型芳香族ポリアミド繊維を原料とし、当該繊維を親和性の高い溶媒中にて浸漬・膨潤し、さらに強塩基物質を添加することで水素結合部を切断し、その結果生成される。本発明で好ましく用いることのできるパラ型全芳香族ポリアミドは、1種または2種以上の2価の芳香族基がアミド結合により連結されたポリマーであって、芳香族基には2個以上の芳香環が存在してもよく、その芳香環は直接結合していても、酸素や硫黄を介して結合していてもよい。また、2価の芳香族基の水素原子は、ハロゲン化物、低級アルキル基、フェニル基で置換されていてもよい。また、アラミドナノファイバー生成時に使用する溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましく、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチル―2-ピロリドンなどが挙げられる。アラミドナノファイバー生成時に使用する強塩基物質としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
【0026】
本発明におけるアラミドナノファイバーの製造は、具体的にパラ型全芳香族ポリアミド(例えば、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド)繊維またはパルプをアルカリ性に調整したジメチルスルホキシド中に浸漬することで製造することができる。
【0027】
パラ型全芳香族ポリアミド(例えば、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド)は紡糸溶液中で液晶構造のドメインを形成し、キャピラリーより吐出した後、紡糸溶媒を水洗することにより得られる。得られた繊維を前記手法により繊維を構成する液晶ドメイン間の弱い結合をアルカリ条件により切断した後、得られた繊維を相溶性の高い溶媒中に遊離させることで、高弾性かつ高強度の切断された繊維を得ることができる。次いで、得られた切断された繊維を分散溶媒である貧溶媒(水、アルコール、アセトンなど)に投入することでアラミドナノファイバーを単離することが可能である。
【0028】
なお、直径10~20μmのパラ型全芳香族ポリアミド(例えば、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド)繊維を数mmにカットし、水中で相互にせん断付与するリファイナー処理を行うことで得られるパラ型全芳香族ポリアミド(例えば、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド)パルプを得ることができる。このようなリファイナー処理では、液晶界面のせん断破壊により繊維表面より微細化した繊維は完全に分離せず分岐した状態となり、該該微細化繊維の直径は100~1000nmとなり、原料繊維の中心部の直径は数μmとなる。リファイナー処理されたパルプを上記の処理により、アラミドナノファイバー化させることもできる。
【0029】
アラミド素材のその他微細化手法としては、上述したような化学処理ではなく、機械的なせん断力を付与する手法も考えられるが、当該手法ではナノオーダーの繊維径を有する
フィブリル構造が部分的に得られるにとどまる。従って、フィブリル化していないマイクロオーダーの構造体も含むことになるため、ナノオーダーでの均質な交絡構造が得られずに期待されるような物性が発現しない。本発明においては、部分的なナノ化ではなく、均質にナノ化した繊維による交絡構造の形成が好ましい。
【0030】
本発明においては、セルロース繊維と、パラ型全芳香族ポリアミド繊維またはパルプを、非プロトン性極性溶媒下に強塩基性物質を添加し、ナノファイバー化して得られる平均繊維径が100nm以下のアミドナノファイバーとを混合、混抄、成形して、スピーカー振動板を製造する方法が特に好ましい。
【実施例0031】
以下、実施例及び比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例及び比較例に制限されるものではない。なお、実施例中の各特性値は下記の方法で測定した。
【0032】
<音質評価>
内径35mm、外形135mmのコーンを作成し、コーン中央に中心に振動子に接合するためのねじ穴を設けたアルミニウム製のピースを接着し、ねじを介して振動子に固定した。
音源に女性ボーカル(バンド伴奏)、ピアノ独奏曲を用い、20代~50代の男性8名、女性3名でヒアリングにより判定した。尚、被試験者にはコーンの成分がわからないようにした。
【0033】
高音領域:明るく鮮明で伸びのあるものを5、不明瞭なものを1とした
中音領域:ボーカルの声に伸びとツヤのあるものを5、不明瞭でこもったものを1とした
低音領域:バスドラムの立ち上がりがシャープで力強く鮮明なものを5、コモリ、ひずみのあるものを1とした。
いずれも針葉樹BKP製コーンを基準として2として、繰り返し試聴により評点を付けた。
【0034】
<濾水時間評価>
25cm角の角型タッピ抄紙機にて、抄紙目付が100g/m2となるように固形分を添加し、15Lの水を加えた後に濾水(常圧)する際の濾水時間を測定した。
判定基準は以下の通りとした。
〇:濾水時間が30秒未満
△:濾水時間が30秒以上60秒未満
×:濾水時間が60秒以上
【0035】
<乾燥評価>
25cm角の抄紙後サンプルを濾紙で挟みこみ、表面温度を140℃に設定したロータリードライヤーに3回通した後、60℃乾燥機内で3時間乾燥させた。その後の抄紙サンプルを観察し、乾燥状態の良否を判断した。
判定基準は以下の通りとした。
〇:内部の水分の膨張による膨れ、破裂箇所がない
△:内部の水分の膨張による膨れ、破裂箇所が1箇所あり
×:内部の水分の膨張による膨れ、破裂箇所が2箇所以上あり
【0036】
<平均繊維径>
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、品盤:JSM-6330F)を用い、サンプ
ルの構造を観察した。50,000倍の倍率設定で観察した画像から、横1,800nm~2,000nm、縦1,200nm~1,500nmの画像領域を選択し、当該画像領域をさらに縦に4分割、横に4分割して得られる計16箇所のグリッド領域A1-D4を定義し、各グリッド領域内に存在するサンプルを1点選択し、選択したサンプルの繊維径を画像上で計測した平均値を平均繊維径として採用した(
図2)。
【0037】
[実施例1]
<アラミドナノファイバーの作製>
・アラミドパルプ:10g(帝人アラミド社製のトワロン1000を6mmのカットした繊維10gを沸騰水1000gで30分煮沸洗浄し、冷却後水洗、乾燥し得た)。
・東京化成工業株式会社 ジメチルスルホキシド(DMSO)>99% 80g、
・東京応化工業株式会社 水酸化カリウム(KOH) 10g
【0038】
上記をプラネタリーミキサーに投入し70℃で2時間撹拌処理を行った。撹拌後、アラミドパルプは形状がなくなり、赤色半透明の高粘度溶液を得た。
得られたナノファイバーを含む赤色半透明の溶液を3倍量のDMSOで希釈し、20リットルの水中に撹拌しながら徐々に投入し、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドのナノファイバーを析出させた。この時、溶液は黄赤色のスラリーであり、ここに硫酸をKOH中和に必要量投入し、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドナノファイバーをろ過により採取した。
【0039】
続いて、蒸留水またはイオン交換水をもちい3~5回洗浄と延伸脱水を行い溶媒と塩を除去した。得られたポリ-p-フェニレンテレフタルアミドナノファイバー含有の水固形物を、固形分濃度1%となるように蒸留水を添加し、増幸産業株式会社製石臼式粉砕混錬機(スーパーマスコロイダー)を用いて、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドナノファイバー分散水溶液を得た。得られたポリ-p-フェニレンテレフタルアミドナノファイバー分散液をイソプロピルアルコールで希釈しプレパラートに滴下、乾燥し、平均繊維径が20nmであることを確認した。
【0040】
<スピーカー用振動板の作製>
針葉樹由来のBKP(叩解度500cc)100重量部に対し、上記で得られたアラミドナノファイバーを2重量部配合し、コーン形状立体抄紙を行った。抄造したコーン紙は190℃の立体形状熱板ヒーターを0.5MPで1分間プレスし乾燥を行った、この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は3.0gであった。
【0041】
[実施例2]
アラミドナノファイバーの配合量を3重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は3.0gであった。
【0042】
[実施例3]
アラミドナノファイバーの配合量を5重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は2.9gであった。
【0043】
[実施例4]
アラミドナノファイバーの配合量を10重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は2.8gであった。
【0044】
[実施例5]
アラミドナノファイバーの配合量を20重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は2.7gであった。
【0045】
[比較例1]
アラミドナノファイバーを使用せず(0重量部)に、針葉樹由来のBKP100重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は3.0gであった。
【0046】
[比較例2]
アラミドナノファイバーの配合量を1重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は3.0gであった。
【0047】
[比較例3]
アラミドナノファイバーに変えて、セルロースナノファイバー(中越パルプ製、20nm)を5重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は3.0gであった。
【0048】
[比較例4]
アラミドナノファイバーに変えて、セルロースナノファイバー(中越パルプ製、20nm)を10重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は3.0gであった。
【0049】
[比較例5]
アラミドナノファイバーに変えて、炭素繊維(帝人株式会社製STS-40(6mm))を10重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は3.1gであった。
【0050】
[比較例6]
アラミドナノファイバーに変えて、アラミド繊維(帝人アラミドBV製 トワロン1000(6mm))を10重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は2.8gであった。
【0051】
[比較例7]
アラミドナノファイバーに変えて、アラミドパルプ(帝人アラミドBV製 トワロンパルプ 1094)を10重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は2.8gであった。
【0052】
[比較例8]
アラミドナノファイバーに変えて、PPTA微細パルプ(ダイセル化学製 ティアラ)を10重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は2.8gであった。
【0053】
[比較例9]
アラミドナノファイバーに変えて、セルロース微細パルプ(ダイセル化学製 セリッシュ)を10重量部とした以外は実施例1と同様に行った。この時の厚みが0.4mmとなるように調整したところ、コーン紙重量は3.0gであった。
【0054】