(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090772
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】電子時計
(51)【国際特許分類】
G04C 3/14 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
G04C3/14 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203274
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬▲崎▼ 章吾
(72)【発明者】
【氏名】田京 祐
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101BA05
2F101BH04
2F101BH07
(57)【要約】
【課題】簡易な回路構成により回転判定の検出感度を上げる。
【解決手段】電子時計100は、ロ-タRTとコイルCを含むステップモータ8と、ステップモータ8を駆動させるドライバ回路7と、検出抵抗R1と、検出抵抗R2と、検出抵抗R1を介してコイルCの端子O1に接続されるトランジスタTN1と、検出抵抗R2を介してコイルCの端子O2に接続されるトランジスタTN2とを含み、ロ-タRTの自由振動より生じる逆起電流に基づいてロ-タRTが回転したか否かを検出する回転検出回路9と、を有し、ドライバ回路7は、少なくとも基準電圧VDDに接続されており、トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、基準電圧VDDよりも低い基準電圧VSSに接続されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロ-タとコイルを含むステップモータと、
前記ステップモータを駆動させるドライバ回路と、
第1検出抵抗と、第2検出抵抗と、前記第1検出抵抗を介して前記コイルの一方の端子に接続される第1スイッチと、前記第2検出抵抗を介して前記コイルの他方の端子に接続される第2スイッチとを含み、前記ロ-タの自由振動より生じる逆起電流に基づいて前記ロ-タが回転したか否かを検出する回転検出回路と、
を有し、
前記ドライバ回路は、少なくとも高基準電圧に接続されており、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、前記高基準電圧よりも低い低基準電圧に接続されている、
電子時計。
【請求項2】
電源電圧が変動する変動電源と、
前記電源電圧を検出する電源電圧検出回路と、
を有し、
前記回転検出回路は、回転検出時に前記電源電圧が第1閾値より大きい場合に、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを用いて前記ロータが回転したか否かを判定する、
請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
前記第1スイッチは、ドレイン端子が前記第1検出抵抗に接続されており、ソース端子が前記低基準電圧に接続されているNチャンネルMOSトランジスタであり、
前記第2スイッチは、ドレイン端子が前記第2検出抵抗に接続されており、ソース端子が前記低基準電圧に接続されているNチャンネルMOSトランジスタである、
請求項2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記回転検出回路は、
前記第1検出抵抗と前記コイルの一端との間に接続されており、前記第1検出抵抗において第2閾値以上の検出値が検出されたか否かを判定する第1判定部と、
前記第2検出抵抗と前記コイルの他端の間に接続されており、前記第2検出抵抗において第3閾値以上の検出値が検出されたか否かを判定する第2判定部と、
を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項5】
前記回路検出回路は、前記第1検出抵抗を介して前記コイルの一方の端子に接続される第3スイッチと、前記第2検出抵抗を介して前記コイルの他方の端子に接続される第4スイッチと、をさらに有し、
前記第3スイッチ及び第4スイッチは、前記高基準電圧に接続されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項6】
前記回転検出回路による回転検出動作時において、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチと、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチとのうちいずれを用いるかまたはいずれも用いないかを選択する検出感度選択回路を有する、
請求項5に記載の電子時計。
【請求項7】
電源電圧が変動する変動電源と、
前記電源電圧を検出する電源電圧検出回路と、
を有し、
前記検出感度選択回路は、前記電源電圧が第4閾値より大きい場合に、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを選択し、前記電源電圧が第5閾値以下の場合に、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを選択する、
請求項6に記載の電子時計。
【請求項8】
前記検出感度選択回路は、指針を通常運針させる通常駆動パルスのデューティ比が第6閾値より小さい場合に、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを選択し、前記デューティ比が第7閾値以上の場合に、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを選択する、
請求項6に記載の電子時計。
【請求項9】
前記第3スイッチは、ドレイン端子が前記第1検出抵抗に接続されており、ソース端子が前記高基準電圧に接続されているPチャンネルMOSトランジスタであり、
前記第4スイッチは、ドレイン端子が前記第2検出抵抗に接続されており、ソース端子が前記高基準電圧に接続されているPチャンネルMOSトランジスタである、
請求項5~8のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項10】
指針を通常運針させる通常駆動パルスを生成し、出力する通常駆動パルス生成回路を有し、
前記回転検出回路による検出結果に基づいて、前記通常駆動パルスの駆動ランクを選択する駆動ランク選択回路を有する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電子時計。
【請求項11】
前記高基準電圧は0であり、
前記低基準電圧は負の電圧である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロータの自由振動により生じる逆起電力に基づいて、ロータの回転の有無を判定する検出回路を備える電子時計が開示されている。特許文献1の
図1には、高電圧側であるVDD及び検出抵抗15、16に接続されるトランジスタ19、20をスイッチとして用いることでロータの回転の有無を判定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、消費電力を抑制するために、ステップモータを低消費駆動行うことが好ましい。しかしながら、ステップモータを低消費駆動した場合、ロータの自由振動が小さくなり、精度良く回転検出を行うのが困難になる。すなわち、ロータが回転しているにも関わらず、非回転判定がされてしまうおそれがある。そのため、消費電力を抑制しつつも、検出感度を上げるための工夫が必要となる。なお、オペアンプやレギュレータを複数使用することにより検出感度を上げることも可能であるが、回路構成が複雑になってしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡易な回路構成により回転判定の検出感度を上げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ロ-タとコイルを含むステップモータと、前記ステップモータを駆動させるドライバ回路と、第1検出抵抗と、第2検出抵抗と、前記第1検出抵抗を介して前記コイルの一方の端子に接続される第1スイッチと、前記第2検出抵抗を介して前記コイルの他方の端子に接続される第2スイッチとを含み、前記ロ-タの自由振動より生じる逆起電流に基づいて前記ロ-タが回転したか否かを検出する回転検出回路と、を有し、前記ドライバ回路は、少なくとも高基準電圧に接続されており、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、前記高基準電圧よりも低い低基準電圧に接続されている、電子時計。
【0007】
(2)(1)において、電源電圧が変動する変動電源と、前記電源電圧を検出する電源電圧検出回路と、を有し、前記回転検出回路は、回転検出時に前記電源電圧が第1閾値より大きい場合に、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを用いて前記ロータが回転したか否かを判定する、電子時計。
【0008】
(3)(2)において、前記第1スイッチは、ドレイン端子が前記第1検出抵抗に接続されており、ソース端子が前記低基準電圧に接続されているNチャンネルMOSトランジスタであり、前記第2スイッチは、ドレイン端子が前記第2検出抵抗に接続されており、ソース端子が前記低基準電圧に接続されているNチャンネルMOSトランジスタである、電子時計。
【0009】
(4)(1)~(3)のいずれかにおいて、前記回転検出回路は、前記第1検出抵抗と前記コイルの一端との間に接続されており、前記第1検出抵抗において第2閾値以上の検出値が検出されたか否かを判定する第1判定部と、前記第2検出抵抗と前記コイルの他端の間に接続されており、前記第2検出抵抗において第3閾値以上の検出値が検出されたか否かを判定する第2判定部と、を含む、電子時計。
【0010】
(5)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記回路検出回路は、前記第1検出抵抗を介して前記コイルの一方の端子に接続される第3スイッチと、前記第2検出抵抗を介して前記コイルの他方の端子に接続される第4スイッチと、をさらに有し、前記第3スイッチ及び第4スイッチは、前記高基準電圧に接続されている、電子時計。
【0011】
(6)(5)において、前記回転検出回路による回転検出動作時において、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチと、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチとのうちいずれを用いるかまたはいずれも用いないかを選択する検出感度選択回路を有する、電子時計。
【0012】
(7)(6)において、電源電圧が変動する変動電源と、前記電源電圧を検出する電源電圧検出回路と、を有し、前記検出感度選択回路は、前記電源電圧が第4閾値より大きい場合に、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを選択し、前記電源電圧が第5閾値以下の場合に、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを選択する、電子時計。
【0013】
(8)(6)において、前記検出感度選択回路は、指針を通常運針させる通常駆動パルスのデューティ比が第6閾値より小さい場合に、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを選択し、前記デューティ比が第7閾値以上の場合に、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを選択する、電子時計。
【0014】
(9)(5)~(8)のいずれかにおいて、前記第3スイッチは、ドレイン端子が前記第1検出抵抗に接続されており、ソース端子が前記高基準電圧に接続されているPチャンネルMOSトランジスタであり、前記第4スイッチは、ドレイン端子が前記第2検出抵抗に接続されており、ソース端子が前記高基準電圧に接続されているPチャンネルMOSトランジスタである、電子時計。
【0015】
(10)(1)~(9)のいずれかにおいて、指針を通常運針させる通常駆動パルスを生成し、出力する通常駆動パルス生成回路を有し、前記回転検出回路による検出結果に基づいて、前記通常駆動パルスの駆動ランクを選択する駆動ランク選択回路を有する、電子時計。
【0016】
(11)(1)~(10)のいずれかにおいて、前記高基準電圧は0であり、前記低基準電圧は負の電圧である、電子時計。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の(1)~(11)の側面によれば、簡易な回路構成により回転判定の検出感度を上げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係る電子時計の全体構成の概要を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態において出力される各パルスの波形の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態におけるドライバ回路及び回転検出回路を示す回路図である。
【
図4】第1の実施形態におけるドライバ回路及び回転検出回路のON/OFF制御を説明する図である。
【
図5】第1の実施形態における回転検出動作に基づく通常駆動パルスのランク設定制御を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態の回転検出動作において回転判定がなされる場合の一例を示す波形図である。
【
図7】第1の実施形態の回転検出動作において、非回転判定がなされる場合の一例を示す波形図である。
【
図8】従来例の回路構成を採用した場合、回転検出動作において検出される波形の一例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係る電子時計の全体構成の概要を示すブロック図である。
【
図10】第2の実施形態におけるドライバ回路及び回転検出回路を示す回路図である。
【
図11】第2の実施形態における回転検出動作に基づく通常駆動パルスのランク設定制御を示すフローチャートである。
【
図12】第2の実施形態の変形例におけるドライバ回路及び回転検出回路を示す回路図である。
【
図13】従来例のドライバ回路及び回転検出回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
[電子時計100の概要]
まず、
図1、
図2を参照して、第1の実施形態に係る電子時計100の概要について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電子時計の全体構成の概要を示すブロック図である。
図2は、第1の実施形態において出力される各パルスの波形の一例を示す図である。
【0021】
図1に示すように、電子時計100は、電源1と、基準信号生成回路2と、通常駆動パルス生成回路3と、補正駆動パルス生成回路4と、回転検出パルス生成回路5と、セレクタ6と、ドライバ回路7と、ステップモータ8と、回転検出回路9と、駆動ランク選択回路10とを含む。
【0022】
[電子時計100の概要:ステップモータ8]
ステップモータ8は、ロータRT、コイルC、ステータSTを含んで構成されており、(後述の
図3参照)、ロ-タRTの回転により指針(秒針)を運針させる。ロータRTは2極磁化された円盤状の回転体であり、径方向にN極、S極に着磁されている。ステータSTは軟磁性材により成り、単相のコイルCが巻装されている。単相とはコイルが1個であり、後述の各パルスを入力する端子が2個(端子O1、O2)であることを意味している。
【0023】
[電子時計100の概要:基準信号生成回路2]
基準信号生成回路2は、不図示の水晶振動子の発振により基準クロックを生成する発振回路21と、発振回路21からの基準信号を分周する分周回路22とを含む。
【0024】
[電子時計100の概要:通常駆動パルス生成回路3]
通常駆動パルス生成回路3は、基準信号生成回路2から出力される基準信号に基づいて通常駆動パルスSPを生成し、出力する。通常駆動パルスSPは、単位秒(正秒、1[sec])毎に、指針を1ステップ分駆動させるために出力されるものである。
図2(a)においては、0.5[ms]毎に断続的に出力される複数の単パルスを含み、出力期間が4[ms]である通常駆動パルスSPが、単位秒毎に出力される例を示している。
【0025】
[電子時計100の概要:補正駆動パルス生成回路4]
補正駆動パルス生成回路4は、基準信号生成回路2から出力される基準信号に基づいて補正駆動パルスFPを生成し、出力する。補正駆動パルスFPは、ステップモータ8が非回転の場合、又は、回転したか否かが不確実な場合に、ステップモータ8のロータRTを強制的に回転させるために出力されるパルスである。
図2(d)においては、通常駆動パルスSPの出力が開始されてから32[ms]後に出力される、出力期間が7[ms]の補正駆動パルスFPを示している。
【0026】
[電子時計100の概要:回転検出パルス生成回路5]
回転検出パルス生成回路5は、基準信号生成回路2から出力される基準信号に基づいて回転検出パルスを生成し、出力する。回転検出パルスは、ステップモータ8のロ-タRTが回転したか否かを検出するために出力されるものである。
【0027】
[電子時計100の概要:回転検出回路9]
回転検出回路9は、判定回路90を含んでいる。判定回路90は、第1判定部91と、第2判定部92を有している。第1判定部91は、第1検出モードにおいて、第2閾値である閾値Vth以上の誘起電圧(検出値)が検出されたか否かを判定する。第2判定部92は、第2検出モードにおいて、第3閾値である閾値Vth以上の誘起電圧(検出値)が検出されたか否かを判定する。
【0028】
回転検出回路9は、判定回路90による判定結果をセレクタ6及び駆動ランク選択回路10へ出力する。具体的には、回転検出回路9は、閾値Vth以上の誘起電圧(検出値)を回転検出信号として検出し、その回転検出信号をセレクタ6及び駆動ランク選択回路10へ出力する。
【0029】
ステップモータ8のコイルCに通常駆動パルスSPが供給されると、ステータSTは磁化され、ロータRTは振動し、しだいに振幅が小さくなる。このときのロータRTの減衰振動はコイルCへの磁束変化となり、電磁誘導による逆起電力が発生してコイルCに誘起電流(逆起電流)が流れる。回転検出回路9は、通常駆動パルスSPが出力された後、コイルCに発生する誘起電圧に基づいて、ステップモータ8のロータRTが回転したか否かを検出する回転検出動作を行う。
【0030】
以下の説明において、回転検出回路9により、ステップモータ8のロータRTが回転したと判定されたことを「回転判定」と呼び、回転していないと判定されたことを「非回転判定」と呼ぶこととする。
【0031】
第1の実施形態においては、回転検出動作において、第1検出モードと、第1検出モードにおいて所定条件を満たした場合に開始される第2検出モードにより回転検出を行う例について説明する。
【0032】
第2検出モードは、回転が成功したこと、すなわち、ロ-タRTが磁気ポテンシャルの山を越えたことを検出するものである。第2検出モードの前に、第1検出モードを行うことにより、まだロ-タRTの回転が終了していないのにもかかわらず、磁気ポテンシャルを超えた信号を回転検出信号として誤って検出してしまうことを防止することができる。すなわち、第1の実施形態においては、第1検出モードと第2検出モードの2段階で回転検出を行うことにより、精度良く回転検出できる。
【0033】
図2(b)においては、第1検出モードにおいて回転検出パルス生成回路5により出力される回転検出パルスB5~B14を示している。なお、回転検出パルスB5~B14のうち数字5~14は、通常駆動パルスSPの出力が開始された時点からの経過時間に対応している。すなわち、
図2(b)に示す回転検出パルスB5~B14は、通常駆動パルスSPの出力が開始された時点から5[ms]後に出力が開始され、14[ms]後に出力が終了する、出力間隔が0.5[ms]のパルスである。なお、第2検出モードへの移行に伴い第1検出モードは終了するため、第1検出モードが終了した時点で回転検出パルスB5~B14の出力は終了するとよい。
【0034】
また、
図2(c)においては、第2検出モードにおいて回転検出パルス生成回路5により出力される回転検出パルスF6.5~F14を示している。なお、回転検出パルスF6.5~F14のうち数字6.5~14は、通常駆動パルスSPの出力が開始された時点からの経過時間に対応している。すなわち、回転検出パルスF6.5~F14は、通常駆動パルスSPの出力が開始された時点から6.5[ms]後に出力が開始され、14[ms]後に出力が終了する、出力間隔が0.5[ms]のパルスである。なお、第2検出モードが終了した時点で回転検出パルスF6.5~F14の出力は終了するとよい。
【0035】
第1の実施形態において、回転検出パルスB5~B14は通常駆動パルスSPが出力されたコイルCの端子の反対側の端子に出力される。すなわち、指針を運針させるために通常駆動パルスSPがコイルCの端子O1に出力された場合、回転検出パルスB5~B14は、コイルCの端子O2に出力される。そして、回転検出回路9は、コイルCを含む閉ループのインピーダンスを急激に変化させることにより、通常駆動パルスSP出力後のロータRTの自由振動によって発生する誘起電圧を検出する。
【0036】
一方、回転検出パルスF6.5~F14は、通常駆動パルスSPが出力されたコイルCの端子と同じ側の端子に出力される。すなわち、指針を運針させるために通常駆動パルスSPがコイルCの端子O1に出力された場合、回転検出パルスF6.5~F14は、コイルCの端子O1に出力される。そして、回転検出回路9は、コイルCを含む閉ループのインピーダンスを急激に変化させることにより、通常駆動パルスSP出力後のロータRTの自由振動によって発生する誘起電圧を検出する。
【0037】
[電子時計100の概要:セレクタ6]
セレクタ6は、回転検出回路9の検出結果に基づいて、通常駆動パルスSP、補正駆動パルスFP、回転検出パルスのいずれを出力するか選択し、選択したパルスをドライバ回路7に出力する。
【0038】
[電子時計100の概要:ドライバ回路7]
ドライバ回路7は、セレクタ6から入力されたパルスに応じた信号(駆動波形)をステップモータ8のコイルCの端子O1、O2に出力する。
【0039】
[電子時計100の概要:駆動ランク選択回路10]
駆動ランク選択回路10は、通常駆動パルスSPの駆動ランクを選択し、通常駆動パルス生成回路3を制御する。駆動ランクは、通常駆動パルスSPのデューティ比に相当する。デューティ比が大きいほど、コイルCに供給される電流量は多くなり、ステップモータ8の駆動力が大きくなる。デューティ比とは、所定の期間内で通常駆動パルスSPのパルスが出力される割合を示す。
【0040】
例えば、通常駆動パルスSPのデューティ比として8/32、16/32、24/32、32/32が予め用意されているとよい。デューティ比が大きいほど、駆動力が大きいパルスである。すなわち、デューティ比8/32、16/32、24/32、32/32の通常駆動パルスSPのうち、デューティ比32/32の通常駆動パルスSPが最大の駆動力(駆動ランク)であり、デューティ比8/32の通常駆動パルスSPが最小の駆動力である。
【0041】
駆動ランク選択回路10は、回転検出回路9により回転判定がなされた場合、通常駆動パルス生成回路3により出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクを維持させる。ただし、駆動ランクが維持される状態が所定回数に達した場合、駆動ランク選択回路10は、通常駆動パルス生成回路3により出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクを下げる。これは、通常駆動パルスSPの駆動力が必要以上に強く、不要に電力を消費している可能性があるためである。第1の実施形態においては、回転判定が連続して256回カウントされた場合、通常駆動パルスSPの駆動ランクを1ランク下げることとする(後述の
図5参照)。なお、これは一例であって、256回に限られるものではない。
【0042】
駆動ランク選択回路10は、回転検出回路9により非回転判定がなされた場合、補正駆動パルス生成回路4により補正駆動パルスFPを出力すると共に、通常駆動パルス生成回路3により出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクを上げる。これは、現在出力されている通常駆動パルスSPの駆動力が弱い可能性があるためである。ただし、現在出力されている通常駆動パルスSPが最大ランクである場合、最小ランクに下げてもよい。これは、駆動力が強すぎることにより、ロータRTは十分な力で正常に回転できていたとしても、回転検出の際に非回転判定がなされてしまう場合があるからである。特に、駆動ランクが最大ランクになる場合は、一時的な負荷の増加により駆動ランクが大きくなっている可能性が高い。そのため、適切な駆動ランクに戻す必要があるが、駆動ランクを1ランクダウンさせるためには回転判定を256回カウントする必要があり、時間がかかり、消費電力が増加してしまうため、一旦最小駆動ランクに設定し、その後、回転判定がなされるまで段階的に駆動ランクを上げていくとよい。
【0043】
[ドライバ回路の回路構成]
次に、
図3を参照して、第1の実施形態におけるドライバ回路の回路構成を具体的に説明する。
図3は、第1の実施形態におけるドライバ回路及び回転検出回路を示す回路図である。
図3においては、各トランジスタのゲート端子を「G」、ドレイン端子を「D」、ソース端子を「S」で示している。なお、第1の実施形態において、各トランジスタはスイッチとして機能するものである。
【0044】
ドライバ回路7は、第1ドライバ回路71と、第2ドライバ回路72とによって構成される。第1ドライバ回路71は、コンプリメンタリ接続からなる、PチャンネルMOSトランジスタP1(以下、トランジスタP1)と、NチャンネルMOSトランジスタN1(以下、トランジスタN1)を含む。第2ドライバ回路72も同様に、コンプリメンタリ接続からなる、PチャンネルMOSトランジスタP2(以下、トランジスタP2)と、NチャンネルMOSトランジスタN2(以下、トランジスタN2)を含む。
【0045】
トランジスタP1のソース端子は、高基準電圧である基準電圧VDDに接続されており、トランジスタN1のソース端子は、低基準電圧である基準電圧VSSに接続されている。同様に、トランジスタP2のソース端子は、基準電圧VDDに接続されており、トランジスタN2のソース端子は、基準電圧VSSに接続されている。
【0046】
なお、基準電圧VSS及び基準電圧VDDは電源1の電源電圧に基づくものである。基準電圧VSSは基準電圧VDDよりも低い電圧であり、例えば、マイナス電源を用いる場合は、基準電圧VDDは0[V]であり、基準電圧VSSは負の電圧であるとよく、プラス電源を用いる場合は、基準電圧VDDは正の電圧であり、基準電圧VSSは0[V]であるとよい。
【0047】
第1ドライバ回路71のトランジスタP1及びトランジスタN1のドレイン端子は、コイルCの一方の端子O1に接続されている。第2ドライバ回路72のトランジスタP2及びトランジスタN2のドレイン端子は、コイルCの他方の端子O2に接続されている。
【0048】
図3においては図示を省略するが、トランジスタP1、N1、P2、N2の各ゲート端子は、セレクタ6に接続されている。セレクタ6により選択された通常駆動パルスSP、補正駆動パルスFP、回転検出パルスは、ドライバ回路7に入力され、ドライバ回路7からステップモータ8に対して出力される。
【0049】
[ドライバ回路の動作]
次に、
図3及び
図4を参照して、ドライバ回路7の動作について説明する。ここでは、通常運針を行う場合のドライバ回路7の動作を説明することとする。
図4は、第1の実施形態におけるドライバ回路及び回転検出回路のON/OFF制御を説明する図である。
【0050】
まず、セレクタ6により通常駆動パルスSPが選択されると、トランジスタP1とトランジスタN2をONとし、他のトランジスタをOFFとする(
図4の「SP出力時」の上段参照)。次に、トランジスタN1とトランジスタP2をONとし、他のトランジスタをOFFとする(
図4の「SP出力時」の下段参照)。このON/OFF制御を交互に行うことで、ステップモータ8のステータSTが交互に反転磁化され、ロ-タRTが回転することとなる。そして、ロ-タRTの回転に伴って指針が運針することとなる。
【0051】
[回転検出回路の構成]
次に、
図3を参照して、第1の実施形態における回転検出回路の構成を具体的に説明する。
【0052】
回転検出回路9は、第1検出抵抗である検出抵抗R1と、第2検出抵抗である検出抵抗R2と、NチャンネルMOSトランジスタTN1(以下、トランジスタTN1)(第1スイッチ)と、NチャンネルMOSトランジスタTN2(以下、トランジスタTN2)(第2スイッチ)と、判定回路90とを含む。なお、検出抵抗R1とR2の抵抗値は等しいとよい。
【0053】
トランジスタTN1及びトランジスタTN2のソース端子は、基準電圧VSSに接続されている。また、トランジスタTN1のドレイン端子は検出抵抗R1の一端に接続されており、トランジスタTN2のドレイン端子は検出抵抗R2の一端に接続されている。
【0054】
検出抵抗R1の他端は、トランジスタP1及びトランジスタN1のドレイン端子(すなわち、第1ドライバ回路71の出力端子)と、判定回路90のインバータINV1に接続されている。検出抵抗R2の他端は、トランジスタP2及びトランジスタN2のドレイン端子(すなわち、第2ドライバ回路72の出力端子)と、判定回路90のインバータINV2に接続されている。
【0055】
インバータINV1、INV2は、閾値VthとなるC-MOSのインバータ回路であるとよい。なお、閾値Vthは、基準電圧VDDが0[V]の場合、基準電圧VSSの1/2であるとよい。なお、第1の実施形態においては、判定回路90がインバータを含む例について説明するが、これに限られず、例えば、オペアンプを含むものであってもよい。
【0056】
インバータINV1は、検出抵抗R1とコイルCの端子O1との間に接続されており、検出抵抗R1において閾値Vth以上の誘起電圧が検出されたか否かを判定する。同様に、インバータINV2は、検出抵抗R2とコイルCの端子O2との間に接続されており、検出抵抗R2において閾値Vth以上の誘起電圧が検出されたか否かを判定する。
【0057】
[回転検出時の動作]
次に、
図3及び
図4を参照して、第1の実施形態における回転検出時の動作について説明する。
【0058】
図4の「SP出力時」を参照して上述したように、トランジスタP1、P2、N1、N2のON/OFF制御を行うことによりロ-タRTを回転させた後、ロ-タRTは自由振動を始める。この際、セレクタ6により回転検出パルスが選択され、ドライバ回路7へ回転検出パルスを出力してステップモータ8のコイルCのインピーダンス値を急激に変化させ、発生する誘起電流をコイルCの端子O1、O2で検出する。
【0059】
具体的には、トランジスタP2とトランジスタTN1をONすると共に他のトランジスタをOFFとし、その後、トランジスタP1とトランジスタTN2をONすると共に他のトランジスタをOFFとする制御を交互に切り替えて行う(
図4の「第1検出モード時」及び「第2検出モード時」参照)。なお、検出される電圧波形と、ロ-タRTの回転の有無の判定については、
図6~
図8を参照して後述する。
【0060】
ここで、トランジスタTN1、TN2と検出抵抗R1、R2は、回転検出パルスに基づいて回転検出信号を発生させる機能を有する。検出抵抗R1、R2が接続されたインバータINV1、INV2に入力される一対の信号が、ステップモータ8のロータRTからの回転検出信号である。すなわち、回転検出信号は、ステップモータ8のロータRTからの誘起電流が検出抵抗R1、R2に流れることによって、検出抵抗R1、R2の両端に誘起電圧として発生する。判定回路90は、検出抵抗R1、R2に発生する誘起電圧を入力して内部に設定している閾値Vthを超えたか否かを判定する。
【0061】
第1検出モードにおいては、コイルCの端子O1に接続されたインバータINV1を動作させる。第1検出モードで閾値Vth以上の回転検出信号が所定回数検出された場合、第1検出モードを停止すると共に、第2検出モードに移行する。第1の実施形態においては、閾値Vth以上の回転検出信号が3回検出された場合、第1検出モードを停止すると共に、第2検出モードに移行することとする。
【0062】
第2検出モードにおいては、コイルCの端子O2に接続されたインバータINV2を動作させる。第2検出モードで閾値Vth以上の回転検出信号が所定回数検出された場合に回転判定がなされ、所定回数検出されなかった場合に非回転判定がなされる。第1の実施形態においては、閾値Vth以上の回転検出信号が2回検出された場合に回転判定がなされ、0回又は1回検出された場合に非回転判定がなされることとする。
【0063】
なお、第1の実施形態においては、第1検出モード及び第2検出モードで用いる閾値Vthを共通としたが、これに限られず、異なる閾値を用いてもよい。
【0064】
[第1の実施形態の回路構成の特徴について]
図13は、従来例のドライバ回路及び回転検出回路の回路図であって、
図3に示す第1の実施形態との比較のために参照する図である。
図13に示すように、従来例の回路においては、ステップモータ8の出力端子が検出抵抗R1、R2を介して、基準電圧VDDにプルアップされている。
【0065】
一方、
図3に示すように、第1の実施形態においては、ドライバ回路7に含まれる各トランジスタのドレイン端子、すなわち、ドライバ回路7の出力端子は、検出抵抗R1、R2を介して、基準電圧VSSに接続されている。すなわち、ステップモータ8の出力端子は、検出抵抗R1、R2を介して、基準電圧VSSにプルダウンされている。
【0066】
ここで、回転検出動作時において、ロータRTの自由振動により生じる磁束の一部は、コイルCを通過せず、検出電流に寄与しない場合がある。しかしながら、第1の実施形態の回路構成においては、トランジスタTN1をONにした瞬間に、トランジスタP2のソース端子に接続された基準電圧VDDからトランジスタTN1のドレイン端子に接続された基準電圧VSSに電流が流れ、それによりコイルCの周辺に生じる磁束が、ロータRTの自由振動により生じる磁束と干渉し、本来コイルCを通過しなかった磁束がコイルCを通過するという効果も期待できる。同様に、トランジスタTN2をONにした瞬間に、トランジスタP1のソース端子に接続された基準電圧VDDからトランジスタTN2のドレイン端子に接続された基準電圧VSSに電流が流れ、それによりコイルCの周辺に生じる磁束が、ロータRTの自由振動により生じる磁束と干渉し、本来コイルCを通過しなかった磁束がコイルCを通過するという効果も期待できる。これにより、検出される誘起電圧が大きくなるという効果が期待できる。
【0067】
以上説明したように、第1の実施形態の構成においては、従来の構成と比較して検出される誘起電圧を大きくすることができ、誘起電圧が閾値Vth以上となりやすくなる。その結果、回転検出回路9が回転判定をしやすくなる。すなわち、ステップモータ8の出力端子が検出抵抗R1、R2を介して、基準電圧VDDにプルアップされている構成(
図13の従来例)と比較して、回転判定の検出感度を高くすることができる。
【0068】
回転判定の検出感度が高くなることにより、ロータRTが回転しているにも関わらず非回転判定がなされて、補正駆動パルスFPが出力されてしまうことを抑制できる。すなわち、不要に消費電力が大きくなることを抑制できる。特に判定回路90にインバータを用い、回転検出の判定における電圧の閾値Vthを電源電圧Vの1/2と設定する場合は、電源電圧が大きいほど閾値Vthが大きくなり回転判定がされにくくなるため、本実施形態により回転判定の検出感度を高くすることは有効である。そのため、電源電圧が所定の値(第1閾値)以上の場合に、トランジスタTN1、TN2を用いて回転検出を行うようにしてもよい。また、電源電圧が所定の値(第1閾値)より小さい場合は、トランジスタTN1、TN2を用いずに回転検出を行うようにしてもよい。この場合、ロータRTの回転によりコイルCに発生した電流は、ドライバ回路または判定回路の寄生容量(図示せず)を介して、いずれかのVDDあるいはVSSに接続する。このとき、検出感度はトランジスタTN1、TN2を用いた場合よりも低くすることができる。
【0069】
[通常駆動パルスのランク設定制御]
次に、
図5を参照して、第1の実施形態における回転検出動作に基づく通常駆動パルスSPのランク設定制御を説明する。
図5は、第1の実施形態における回転検出動作に基づく通常駆動パルスのランク設定制御を示すフローチャートである。なお、
図5は正秒毎の動作を示すものである。
【0070】
まず、セレクタ6が、正秒のタイミングで通常駆動パルスSPを選択、出力する(ステップST1)。
【0071】
そして、正秒から5[ms]後に回転検出動作を開始する(ステップST2、
図2(b)参照)。回転検出動作においては、まず、第1検出モードが行われる。第1検出モードにおいては、セレクタ6が、回転検出パルスを選択、出力する。そして、回転検出回路9が、回転検出パルスに基づいてコイルCに発生する誘起電圧を検出する。
【0072】
その一方で、回転検出回路9は、第1判定部91により判定動作を開始する。第1判定部91が、回転検出信号を3回検出したとの判定をした場合(ステップST3:Y)、回転検出回路9が、セレクタ6に対して第1検出モードの終了指示を送信すると共に、第2検出モードへの移行指示を送信する。
【0073】
一方、第1判定部91が、回転検出信号の検出が3回未満であるとの判定をした場合(ステップST3:N)、回転検出回路9は、非回転判定を行い、セレクタ6に対して第1検出モードの終了指示を送信すると共に、補正駆動パルスFPを選択、出力させる(ステップST5)。
【0074】
第2検出モードに移行した場合(ステップST3:Y)、セレクタ6が、回転検出パルスを選択、出力する。そして、回転検出回路9が、回転検出パルスに基づいてコイルCに発生する誘起電圧を検出する。
【0075】
その一方で、回転検出回路9は、第2判定部92により判定動作を開始する。第2判定部92が、回転検出信号を2回検出したとの判定をした場合(ステップST4:Y)、回転検出回路9が、セレクタ6に対して第2検出モードの終了指示を送信すると共に、その時点において回転判定がなされた回数が取得される(ステップST9)。
【0076】
ステップST4において、第2判定部92が、回転検出信号の検出が2回未満であるとの判定をした場合(ステップST4:N)、回転検出回路9は、非回転判定を行い、セレクタ6に対して第2検出モードの終了指示を送信すると共に、補正駆動パルスFPを選択、出力させる(ステップST5)。
【0077】
ステップST5において補正駆動パルスFP出力後、駆動ランク選択回路10が、直前に出力された通常駆動パルスSPの駆動ランクが最大ランクか否かを判定する(ステップST6)。駆動ランクが最大である場合(ステップST6:Y)、駆動ランク選択回路10が、次回出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクを最小ランクにダウンさせる(ST7)。その後、回転判定回数がリセットされる(ステップST12)。一方、駆動ランクが最大でない場合(ステップST6:N)、駆動ランク選択回路10が、次回出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクを1ランクアップさせる(ステップST8)。その後、回転判定回数がリセットされる(ステップST12)。
【0078】
第2検出モードの終了後、ステップST9において取得された回転判定の回数が256回である場合(ステップST10:Y)、駆動ランク選択回路10が次回出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクを1ランクダウンさせる(ステップST11)。その後、回転判定回数がリセットされる(ステップST12)。
【0079】
一方、取得された回転判定の回数が256回に達していない場合(ステップST10:N)、駆動ランク選択回路10は次回出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクを維持する。
【0080】
[検出される波形の例]
次に、
図6、
図7を参照して、第1の実施形態の回転検出動作において検出される波形について具体的に説明する。
図6は、第1の実施形態の回転検出動作において回転判定がなされる場合の一例を示す波形図である。
図7は、第1の実施形態の回転検出動作において、非回転判定がなされる場合の一例を示す波形図である。
図6、
図7は、ステップモータ8の出力端子が検出抵抗R1、R2を介して、基準電圧VSSにプルダウンされている回路構成、すなわち、
図3に示す第1の実施形態における回路構成を採用した場合の例を示している。
図6(a)、
図7(a)は、コイルCに誘起される電流波形の一例を示している。
図6(b)、
図7(b)は、第2検出モードにおいて検出される回転検出信号(誘起電圧)の一例を示している。
図6(c)、
図7(c)は、第1検出モードにおいて検出される回転検出信号(誘起電圧)の一例を示している。
【0081】
図6(a)に示す波形c1は、通常駆動パルスSPがコイルCに出力された際の電流波形である。通常駆動パルスSPの出力が終了すると、ロータRTは自由振動状態となり、電流波形はc2、c3、c4に示す誘導電流波形となる。
【0082】
通常駆動パルスSPの出力開始時点から5[ms]が経過した時点で、第1検出モードにおける、回転検出パルスB5(
図2参照)がコイルCの端子O2に出力される。
図6(a)に示すように5[ms]が経過した時点では電流波形は電流波形c2の領域にあり、電流値は負方向である。したがって、
図6(c)に示すように回転検出パルスB5によって生じる誘起電圧V5は、インバータINV2の閾値Vthを超えることはない。
【0083】
通常駆動パルスSPの出力開始時点から6.5[ms]が経過した時点では電流波形は電流波形c3の領域になり、電流値は正方向に変わる。
図6(c)に示すように、回転検出パルスB6.5によって生じる誘起電圧V6.5は閾値Vthを超えた回転検出信号となる。同様に、7[ms]、7.5[ms]でも電流波形は電流波形c3の領域にあり、回転検出パルスB7、B7.5によって生じる誘起電圧V7、V7.5は閾値Vthを超えた回転検出信号となる。誘起電圧V6.5、V7、V7.5の3つの誘起電圧が閾値Vthを超えたことで、第1検出モードが終了し、第2検出モードに切り換わる。
【0084】
第2検出モードにおいて、第1検出モードで最後に出力された回転検出パルスの次の回転検出パルスが出力されるタイミング、すなわち、通常駆動パルスSPの出力開始時点から8[ms]が経過した時点で、コイルCの端子O1に回転検出パルスF8(
図2(c)参照)が出力される。
【0085】
図6(a)に示すように8[ms]が経過した時点では電流波形は電流波形c3の領域にあり、電流値は正方向にある。したがって、
図6(b)に示すように回転検出パルスF8によって生じる誘起電圧V8は閾値Vthを超えることはない。
【0086】
図6(a)に示すように9.5[ms]が経過した時点では電流波形は電流波形c4の領域になり、電流値は負方向に変わる。
図6(b)に示すように、回転検出パルスB9.5によって生じる誘起電圧V9.5は閾値Vthを超えた回転検出信号となる。同様に、10[ms]でも電流波形は電流波形c4の領域にあり、回転検出パルスB10によって生じる誘起電圧V10は閾値Vthを超えた回転検出信号となる。誘起電圧V9.5、V10の2つの誘起電圧が閾値Vthを超えたことで、判定回路90により回転判定がなされ、第2検出モードを終了する。そして、補正駆動パルスFPを出力することなく、駆動ランク選択回路10が次回出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクを維持する。
【0087】
次に、
図7を参照して、非回転判定される場合の波形について説明する。
図7(a)においては、ピーク値が低く、
図6(a)と比較して滑らかな電流波形が検出された例について示す。なお、
図7は、
図6と同様に、
図3に示す第1の実施形態の回路を用いた場合の例である。
【0088】
図7(a)に示す波形c1は、通常駆動パルスSPがコイルCに出力された際の電流波形である。通常駆動パルスSPの出力が終了すると、ロータRTは自由振動状態となり、電流波形はc2、c5に示す誘導電流波形となる。
【0089】
図7(a)に示すように、5[ms]で電流波形は電流波形c2の領域であり、電流値が負方向にある。したがって、
図7(c)に示すように回転検出パルスB5によって生じる誘起電圧V5は、インバータINV2の閾値Vthを超えることはない。
【0090】
通常駆動パルスSPの出力開始時点から6[ms]が経過した時点では電流波形は電流波形c5の領域になり、電流値は正方向に変わる。
図7(c)に示すように、回転検出パルスB6によって生じる誘起電圧V6は閾値Vthを超えた回転検出信号となる。同様に、6.5[ms]、7[ms]でも電流波形は電流波形c5の領域にあり、回転検出パルスB6、B6.5によって生じる誘起電圧V6、V6.5は閾値Vthを超えた回転検出信号となる。誘起電圧V6、V6.5、V7の3つの誘起電圧が閾値Vthを超えたことで、第1検出モードが終了し、第2検出モードに切り換わる。
【0091】
第2検出モードにおいて、第1検出モードで最後に出力された回転検出パルスの次の回転検出パルスが出力されるタイミング、すなわち、通常駆動パルスSPの出力開始時点から7.5[ms]が経過した時点で、コイルCの端子O1に回転検出パルスF7.5(
図2(c)参照)が出力される。
【0092】
図7(a)に示すように、電流波形c5は、正の電流値を維持しており、負の電流値になることがない。そのため、
図7(b)に示すように回転検出パルスF7.5によって生じる誘起電圧V7.5、及び以降に生じる誘起電圧が閾値Vthを超えることはない。
【0093】
したがって、第2判定部92は、非回転判定を行い、第2検出モードを終了する。それにより、セレクタ6は、補正駆動パルスFPを選択し、ステップモータ8に対して補正駆動パルスFPを出力する。また、駆動ランク選択回路10は、次回出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクを1ランクアップする。
【0094】
ここで、
図8を参照して、従来例の回路構成を採用した場合、回転検出動作において検出される波形について説明する。
図8は、従来例の回路構成、すなわち、
図13に示す回路構成を採用した場合、回転検出動作において検出される波形の一例を示す図である。
【0095】
図8(a)に示すように、コイルCに誘起される電流波形は
図6(a)で示したものと同じであるとする。一方、検出抵抗R1、R2の両端に発生する誘起電圧は、
図6(b)、
図6(c)で示したものよりも小さく出ている。これは、従来例においては、ステップモータ8の出力端子が検出抵抗R1、R2を介して、基準電圧VDDにプルアップされており、第1の実施形態のように検出抵抗R1、R2の両端に発生する誘起電圧が大きくならないためである。
【0096】
そのため、
図8に示す例においては、第2検出モードにおいて、閾値Vthを超えた回転検出信号を検出することができず、非回転判定がなされることとなる。その結果、補正駆動パルス生成回路4により補正駆動パルスFPを出力すると共に、駆動ランク選択回路10により次回出力される通常駆動パルスSPの駆動ランクが1ランクアップされることとなる。このように
図8に示す例においては、ロータRTの自由振動により発生する電流波形は同じにも関わらず、非回転判定がなされ、不要に消費電力が大きくなってしまう。
【0097】
以上説明したように、第1の実施形態においては、ロータRTが回転しているにも関わらず非回転判定がなされてしまうことを抑制できる構成を簡易な回路構成で実現できる。その結果、補正駆動パルスFPが不要に出力されることにより消費電力が大きくなってしまうことを抑制できる。第1の実施形態の構成は、特にステップモータ8を低消費駆動する場合に有効である。
【0098】
[第2の実施形態]
次に、
図9~
図11を参照して、第2の実施形態に係る電子時計200について説明する。
図9は、第2の実施形態に係る電子時計の全体構成の概要を示すブロック図である。
図10は、第2の実施形態におけるドライバ回路及び回転検出回路を示す回路図である。
図11は、第2の実施形態における回転検出動作に基づく通常駆動パルスのランク設定制御を示すフローチャートである。なお、第1の実施形態で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いてその説明は省略する。
【0099】
第2の実施形態に係る電子時計200は、第1の実施形態の電子時計100の構成に加えて、電源電圧検出回路110と、検出感度選択回路120とを有する。また、電源1の代わりに変動電源11を有する。
【0100】
変動電源11は、電源電圧Vが変動する電源である。例えば、変動電源11は、太陽電池などの二次電池であるとよい。電源電圧検出回路110は、変動電源11の電源電圧Vを検出する回路である。検出感度選択回路120は、回転検出回路9における検出感度を選択する回路である。
【0101】
図10に示すように、第2の実施形態のドライバ回路7は、第1の実施形態で説明した構成と同じである。
【0102】
第2の実施形態の回転検出回路209は、スイッチとして機能するトランジスタを4つ有している。具体的には、回転検出回路209は、第1スイッチとしてドレイン端子が検出抵抗R1の一端に接続されるNチャンネルMOSトランジスタTN1(以下、トランジスタTN1)と第3スイッチとしてPチャンネルMOSトランジスタTP1(以下、トランジスタTP1)を有している。また、回転検出回路209は、第2スイッチとしてドレイン端子が検出抵抗R2の一端に接続されるNチャンネルMOSトランジスタTN2と第4スイッチとしてPチャンネルMOSトランジスタTP2(以下、トランジスタTP2)を有している。
【0103】
トランジスタTN1のソース端子は基準電圧VSSに接続されており、一方で、トランジスタTP1のソース端子は基準電圧VDDに接続されている。
【0104】
トランジスタTN2のソース端子は基準電圧VSSに接続されており、一方で、トランジスタTP2のソース端子は基準電圧VDDに接続されている。
【0105】
第2の実施形態においては、検出感度選択回路120が、電源電圧検出回路110が検出した電源電圧Vに基づいて、回転検出動作に時に用いるスイッチとして、トランジスタTN1及びトランジスタTN2、又はトランジスタTP1及びトランジスタTP2のいずれかを選択する。
【0106】
第2の実施形態においては、閾値Vthは、基準電圧VSSに応じて設定されるものであり、具体的には、基準電圧VSSの1/2である。そのため、変動電源11の電源電圧Vが高い場合、その分閾値Vthは大きくなり、回転判定がされにくくなる。
【0107】
そこで、第2の実施形態においては、電源電圧Vが比較的高い場合、検出感度を上げることした。
【0108】
検出感度選択回路120は、電源電圧検出回路110が検出した電源電圧Vが3.0[V]よりも大きい場合、回転検出動作時において、トランジスタTN1及びトランジスタTN2を用いる。この場合において、回転検出回路209は、
図3を参照して説明した第1の実施形態の回転検出回路9と同等になる。すなわち、回転判定の検出感度が高くなる。
【0109】
一方、検出感度選択回路120は、電源電圧検出回路110が検出した電源電圧Vが2.0[V]以下の場合、回転検出動作時において、トランジスタTP1及びトランジスタTP2を用いる。この場合において、回転検出回路209は、
図13に示す従来例の回転検出回路と同等になる。
【0110】
図11を参照して、第2の実施形態における回転検出動作に基づく通常駆動パルスのランク設定制御を説明する。
図11は、第2の実施形態における回転検出動作に基づく通常駆動パルスのランク設定制御を示すフローチャートである。なお、
図11は正秒毎の動作を示すものである。
【0111】
まず、セレクタ6が、正秒のタイミングで通常駆動パルスSPを選択、出力する(ステップST1)。
【0112】
そして、正秒から5[ms]後に回転検出動作を開始する(ステップST2、
図2(b)参照)。第2の実施形態の回転検出動作においては、まず、電源電圧検出回路110により、変動電源11の電源電圧Vが取得される。
【0113】
取得された電源電圧Vが2.0[V](第5閾値)以下の場合(ステップST20:Y)、検出感度選択回路120は、トランジスタTP1、TP2を選択する(ステップST30)。すなわち、トランジスタTP1、TP2をON/OFF制御することによりロータRTの回転検出を行うこととする。この場合、電源電圧Vが小さいため、回転検出の感度を下げることで適切に回転検出を判定することが可能となる。
【0114】
取得された電源電圧Vが2.0[V]よりも大きく(ステップST20:N)、3.0[V]以下の場合(ステップST21:Y)、検出感度選択回路120は、トランジスタTP1、TP2、TN1、TN2のいずれもOFFとする(ステップST31)。この場合、ロータRTの回転によりコイルCに発生した電流は、ドライバ回路または判定回路の寄生容量(図示せず)を介して、いずれかのVDDあるいはVSSに接続する。この寄生容量の抵抗成分は、検出抵抗R1、R2に対して十分大きいため、検出感度はトランジスタTP1、TP2を選択した場合とトランジスタTN1、TN2を選択した場合との中間の検出感度となる。このように、電源電圧Vが中間の値である場合に、回転検出を中間の検出感度とすることで、適切に回転検出を判定することが可能となる。
【0115】
取得された電源電圧Vが3.0[V](第4閾値)よりも大きい場合(ステップST21:N)、検出感度選択回路120は、トランジスタTN1、TN2を選択する(ステップST32)。すなわち、トランジスタTN1、TN2をON/OFF制御することによりロータRTの回転検出を行うこととする。この場合、電源電圧Vが大きいため、回転検出の感度を上げることで適切に回転検出を判定することが可能となる。
【0116】
以下、
図11に示すステップST3~ST12は、
図5で説明した制御と同様であるため、説明を省略する。
【0117】
以上説明した第2の実施形態においては、変動電源11の電源電圧Vが変動した場合であっても、精度良く回転検出を行うことが可能となる。また、第2の実施形態においては、電源電圧Vに基づいて検出感度選択回路120は各トランジスタの選択を行なったが、デューティ比に基づいて行なってもよい。これは、電源電圧Vとデューティ比との間にある程度の相関があるからであり、電源電圧Vが大きい場合はデューティ比が小さくなり、電源電圧Vが小さい場合はデューティ比が大きくなる可能性が高いからである。そのため、デューティ比がある閾値(第7閾値)以上の場合は、検出回路選択回路120はトランジスタTP1、TP2を選択し、デューティ比がある閾値(第6閾値)より小さい場合は、検出回路選択回路120はトランジスタTN1、TN2を選択するとしてもよい。
【0118】
[第2の実施形態の変形例]
次に、
図12を参照して、第2の実施形態の変形例について説明する。
図12は、第2の実施形態の変形例におけるドライバ回路及び回転検出回路を示す回路図である。なお、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明した構成と同様の構成については同じ符号を用いてその説明は省略する。
【0119】
図12に示すように、第2の実施形態の変形例のドライバ回路7は、第2の実施形態で説明した構成と同じである。
【0120】
第2の実施形態の変形例の回転検出回路309は、
図10で示した構成に加えて、検出抵抗R11、PチャンネルMOSトランジスタTP11(以下、トランジスタTP11)、NチャンネルMOSトランジスタTN11(以下、トランジスタTN11)を含む。さらに、回転検出回路309は、検出抵抗R21、PチャンネルMOSトランジスタTP21(以下、トランジスタTP21)、NチャンネルMOSトランジスタTN21(以下、トランジスタTN21)を含む。
【0121】
検出抵抗R1、R2、R11、R21の抵抗値は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0122】
検出抵抗R11の一端は、トランジスタTP11及びトランジスタTN11のドレイン端子に接続されており、他端はコイルCの端子O1及びインバータINV1に接続されている。
【0123】
検出抵抗R21の一端は、トランジスタTP21及びトランジスタTN21のドレイン端子に接続されており、他端はコイルCの端子O2及びインバータINV2に接続されている。
【0124】
第2の実施形態の変形例の回転検出動作においては、例えば、トランジスタTP1及びトランジスタTP11を同時にONすることで、検出抵抗R1と検出抵抗R11の合成抵抗を生成するとよい。同様に、トランジスタTN1及びトランジスタTN11を同時にONすることで、検出抵抗R1と検出抵抗R11の合成抵抗を生成するとよい。
【0125】
第2の実施形態の変形例においては、検出抵抗の抵抗値のパターン、すなわち、検出感度のパターンを増やすことができ、より精度良く回転検出を行うことができる。
【0126】
なお、上記各実施形態及び変形例においては、指針を通常運針させる場合の回転検出について説明したが、これに限らず、高速運針にも適用可能である。
【0127】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0128】
1 電源、11 変動電源、2 基準信号生成回路、21 発信回路、22 分周回路、3 通常駆動パルス生成回路、4 補正駆動パルス生成回路、5 回転検出パルス生成回路、6 セレクタ、7 ドライバ回路、71 第1ドライバ回路、72 第2ドライバ回路、8 ステップモータ、9,209,309 回転検出回路、90 判定回路、91 第1判定部、92 第2判定部、10 駆動ランク選択回路、100 電子時計、110 電源電圧検出回路、120 検出感度選択回路、C コイル、RT ロータ、ST ステータ。