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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090796
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】p型超格子構造体及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/24 20060101AFI20220613BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/43 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H01L29/24
H01L29/06 601S
H01L29/78 616L
H01L29/78 618A
H01L29/78 618B
H01L29/78 652T
H01L29/78 652C
H01L29/78 652D
H01L29/78 658E
H01L29/78 653C
H01L29/78 658J
H01L29/91 F
H01L29/91 H
H01L29/91 K
H01L29/86 301D
H01L29/91 C
H01L29/86 301F
H01L27/146 A
H01L21/28 301B
H01L29/48 F
H01L29/48 D
H01L29/46
H01L29/50 M
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203323
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(71)【出願人】
【識別番号】515277942
【氏名又は名称】株式会社ノベルクリスタルテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 義昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 公平
【テーマコード(参考)】
4M104
4M118
5F110
5F849
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104AA07
4M104AA09
4M104BB09
4M104BB14
4M104CC03
4M104CC05
4M104EE03
4M104EE06
4M104EE14
4M104FF02
4M104FF04
4M104FF07
4M104FF32
4M104GG02
4M104GG03
4M104GG05
4M104GG08
4M104GG18
4M104HH20
4M118CA03
4M118CB01
4M118CB14
5F110AA07
5F110AA11
5F110BB12
5F110CC02
5F110DD04
5F110EE02
5F110FF01
5F110GG01
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5F110GG42
5F110HJ01
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5F110HK04
5F110HM14
5F110QQ01
5F849AA04
5F849AB01
5F849DA35
5F849GA03
5F849LA03
5F849XB13
5F849XB24
5F849XB37
(57)【要約】
【課題】Ga系半導装置のp型領域として用いることのできるp型超格子構造体、及びそのp型超格子構造体を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】一実施の形態として、p型のNiO単結晶又はp型のCuO単結晶からなるp型酸化物半導体層10とGa系半導体の単結晶からなるGa系半導体層11が交互積層された、p型超格子構造体1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型のNiO単結晶又はp型のCuO単結晶からなるp型酸化物半導体層とGa系半導体の単結晶からなるGa系半導体層が交互積層された、p型超格子構造体。
【請求項2】
前記p型酸化物半導体層がp型のNiO単結晶からなる、
請求項1に記載のp型超格子構造体。
【請求項3】
p型のNiO単結晶又はp型のCuO単結晶からなるp型酸化物半導体層とGa系半導体の単結晶からなるGa系半導体層が交互積層されたp型超格子構造体からなるp型領域を備えた、
半導体装置。
【請求項4】
前記p型酸化物半導体層がp型のNiO単結晶からなる、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記p型領域をチャネルとしての反転層を形成する領域として備えた電界効果トランジスタである、
請求項3又は4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記p型領域をトレンチ内のp型の領域として備えたジャンクションバリアショットキーダイオードである、
請求項3又は4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記p型領域をp型層として備えたフォトダイオードである、
請求項3又は4に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p型超格子構造体及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体層の材料にGaを用いた半導体装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。Gaは、SiCやGaNよりもさらに大きなバンドギャップを有する材料であり、Gaを用いることにより、高耐圧、高出力、高効率(低損失)といったパワーデバイスに適した優れた特性を有するトランジスタやダイオードなどの半導体装置を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6284140号公報
【特許文献2】特許第6543869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、Gaは、Mgなどのp型ドーパントを添加しても、n型伝導性を低下させることはできるものの、p型化することができないという欠点がある。このため、p型領域に反転層を形成するNチャネルMOSFETなどの、p型領域を有する半導体装置を、Gaを用いて形成することは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、Ga系半導装置のp型領域として用いることのできるp型超格子構造体、及びそのp型超格子構造体を備えた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]、[2]のp型超格子構造体、及び下記[3]~[7]の半導体装置を提供する。
【0007】
[1]p型のNiO単結晶又はp型のCuO単結晶からなるp型酸化物半導体層とGa系半導体の単結晶からなるGa系半導体層が交互積層された、p型超格子構造体。
[2]前記p型酸化物半導体層がp型のNiO単結晶からなる、上記[1]に記載のp型超格子構造体。
[3]p型のNiO単結晶又はp型のCuO単結晶からなるp型酸化物半導体層とGa系半導体の単結晶からなるGa系半導体層が交互積層されたp型超格子構造体からなるp型領域を備えた、半導体装置。
[4]前記p型酸化物半導体層がp型のNiO単結晶からなる、上記[3]に記載の半導体装置。
[5]前記p型領域をチャネルとしての反転層を形成する領域として備えた電界効果トランジスタである、上記[3]又は[4]に記載の半導体装置。
[6]前記p型領域をトレンチ内のp型の領域として備えたジャンクションバリアショットキーダイオードである、上記[3]又は[4]に記載の半導体装置。
[7]前記p型領域をp型層として備えたフォトダイオードである、上記[3]又は[4]に記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、Ga系半導装置のp型領域として用いることのできるp型超格子構造体、及びそのp型超格子構造体を備えた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体の垂直断面図である。
図2図2は、交互積層されたNiOとGaのバンドラインアップを示す。
図3図3は、歪系ヘテロ結晶の格子ひずみの大きさと臨界膜厚との関係を示すグラフである。
図4図4は、第2の実施の形態に係る半導体装置の垂直断面図である。
図5図5(a)~(c)は、p型超格子層の凹部内にn型ソース領域、n型ドレイン領域を形成する工程の一例を説明するための垂直断面図である。
図6図6(a)~(d)は、p型超格子層の凹部内にn型ソース領域、n型ドレイン領域を形成する工程の他の一例を説明するための垂直断面図である。
図7図7は、第3の実施の形態に係る半導体装置の垂直断面図である。
図8図8(a)~(d)は、nGa層の凹部内にp型超格子領域とnコンタクト領域を形成する工程の一例を説明するための垂直断面図である。
図9図9(a)~(d)は、nGa層の凹部内にp型超格子領域とnコンタクト領域を形成する工程の他の一例を説明するための垂直断面図である。
図10図10は、第4の実施の形態に係る半導体装置の垂直断面図である。
図11図11は、第5の実施の形態に係る半導体装置の垂直断面図である。
図12図12は、第6の実施の形態に係る半導体装置の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1の実施の形態〕
(p型超格子構造体の構成)
図1は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1の垂直断面図である。p型超格子構造体1は、p型のNiO単結晶からなるp型酸化物半導体層10とGa系半導体の単結晶からなるGa系半導体層11が交互積層された超格子構造体であり、全体としてp型の半導体として機能する。
【0011】
ここで、Ga系半導体とは、Ga、又は、Al、Inの一方若しくは両方が添加されたGaであり、(GaAlIn(1-x-y)(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)で表される組成を有する。GaにAlを添加した場合にはバンドギャップが広がり、Inを添加した場合にはバンドギャップが狭くなる。なお、Ga系半導体層11を構成するGa系半導体の単結晶は、通常、β型のGa系半導体の単結晶である。
【0012】
図2は、交互積層されたNiOとGaのバンドラインアップを示す。NiOはp型酸化物半導体層10の材料であり、GaはGa系半導体層11の典型的な材料である。このため、図2は、p型超格子構造体1の典型的なバンドラインアップを示している。
【0013】
図2中の長方形はNiOとGaのバンドギャップを示す。NiOのバンドギャップの大きさはおよそ3.7eVであり、Gaのバンドギャップの大きさはおよそ4.7eVである。また、図2中のΔEはNiOとGaの伝導帯の下端のエネルギー差を示し、ΔEはNiOとGaの価電子帯の上端のエネルギー差を示す。
【0014】
図2中のEとEは、交互積層されたNiOとGaが構成する超格子構造、すなわちp型超格子構造体1の典型例の全体の伝導帯の下端のエネルギーと価電子帯の上端のエネルギーを示す。
【0015】
NiOは、Ni原子の空孔によりp型化する(例えば、ホール濃度は~1020cm-3オーダー)ことが知られている。このため、意図的にドーパントを添加しない(アンドープの)NiOの単結晶によりp型酸化物半導体層10を形成することができる。
【0016】
p型酸化物半導体層10中のキャリアを増やしたい場合は、Liなどのp型ドーパントを添加してもよい。p型酸化物半導体層10にp型ドーパントを添加するには、例えば、NiOを成長する際、別に準備した原料供給ラインによりp型ドーパントの原料(例えば、リチウム(Li)など)を同時に供給することにより、p型ドーパントを含むNiOを成長させる(ユニフォームドープ)。又は、p型酸化物半導体層10の厚さ方向の中心近傍に、アンドープのNiO層に挟まれるようにp型ドーパントからなる非常に薄い層(例えばLi層)を形成する(デルタドープ)。この場合、p型ドーパントの層を2分子層以上の層厚で形成することにより、効果的にキャリアをドーピングすることができる。
【0017】
図3は、歪系ヘテロ結晶の格子ひずみの大きさと臨界膜厚(エピタキシャル成長可能な膜厚の上限値)との関係を模式的(定性的)に示すグラフである。図3は、エピタキシャル成長する結晶の歪みが大きいほど臨界膜厚が小さくなることを示している。ここで、点線で囲まれた領域内の曲線上の点がGa結晶上のNiO結晶の臨界膜厚を示している。
【0018】
図3に示されるように、Ga結晶上のNiO結晶は、歪みが小さくないため厚くエピタキシャル成長させることはできないが、逆に言えば、ごく薄くであればエピタキシャル成長が可能である。このため、p型超格子構造体1に含まれる全てのp型酸化物半導体層10は単結晶として形成することができる。
【0019】
p型酸化物半導体層10の厚さは、p型酸化物半導体層10を構成するNiOがエピタキシャル成長する範囲、すなわち単結晶となる範囲(例えばおよそ2nm以下)であれば特に限定されない。
【0020】
Ga系半導体層11の厚さは、p型酸化物半導体層10とGa系半導体層11の超格子構造体が全体としてp型バルクとして振る舞う範囲、すなわちp型の超格子構造体であるp型超格子構造体1が得られる範囲内であればよい。具体的には、p型酸化物半導体層10の両側のGa系半導体層11にしみ出すp型酸化物半導体層10の波動関数が、隣接するp型酸化物半導体層10の間でつながる程度にGa系半導体層11が薄ければ、p型酸化物半導体層10とGa系半導体層11の超格子構造体が全体としてp型バルクとして振る舞うと考えられる。
【0021】
p型酸化物半導体層10とGa系半導体層11の超格子構造体が全体としてp型バルクとして振る舞うGa系半導体層11の厚さの上限値は明らかになっていないが、例えば、Ga系半導体層11の厚さが5nm以下のときにp型酸化物半導体層10とGa系半導体層11の超格子構造体が全体としてp型バルクとして振る舞う。
【0022】
p型超格子構造体1は、例えば、図1に示されるように、Ga系半導体からなる基板12を下地とするエピタキシャル成長により形成される。p型超格子構造体1の成長には、例えば、分子線エピタキシー法(MBE法)などの気相成長法が用いられる。
【0023】
なお、p型のNiO単結晶と同様に、p型のCuO単結晶をp型酸化物半導体層10の材料として用いることができる。ただし、p型酸化物半導体層10をMBE法により形成する場合、Cuの原料にはCuの融液を用いる必要があるが、Niの原料には固体のNiを用いることができるため、NiO単結晶の方がCuO単結晶よりも取り扱いが容易である。また、NiOの方がCuOよりもバンドギャップが広いので、NiO単結晶をp型酸化物半導体層10の材料として用いる方が、p型超格子構造体1をp型領域として用いる半導体装置の耐圧を大きくできる可能性がある。
【0024】
また、p型酸化物半導体層10のバンド変調(バンドライン制御)のために、p型酸化物半導体層10とGa系半導体層11の間にMgO層を付加してもよい。MgOはNiOやCuOよりも価電子帯の上端のエネルギーが低いため、p型酸化物半導体層10をMgO層で挟み込むことにより、価電子帯の上端のエネルギーを下げることができる。
【0025】
〔第2の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図4は、第2の実施の形態に係る半導体装置2の垂直断面図である。半導体装置2は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1をp型領域として有する半導体装置の一例であり、p型超格子構造体1をチャネルとしての反転層を形成するp型領域として有する横型の電界効果トランジスタ(Ga系MISFET)である。
【0026】
半導体装置2は、高抵抗Ga基板20と、高抵抗Ga基板20上に形成され、高抵抗Ga基板20と反対側の面に凹部211、212が設けられたp型超格子層21と、凹部211、212内にそれぞれ形成されたn型ソース領域22、n型ドレイン領域23と、凹部211と凹部212の間のp型超格子層21のメサ状部分213の上にゲート絶縁膜24を介して形成されたゲート電極25と、n型ソース領域22、n型ドレイン領域23にそれぞれ接続されたソース電極26、ドレイン電極27とを備える。
【0027】
高抵抗Ga基板20は、Mgなどのp型ドーパントを添加することにより高抵抗化したβ型のGa単結晶からなる基板である。
【0028】
p型超格子層21は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1からなるp型の層であり、高抵抗Ga基板20の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0029】
n型ソース領域22とn型ドレイン領域23は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる領域である。
【0030】
図5(a)~(c)は、p型超格子層21の凹部211、212内にn型ソース領域22、n型ドレイン領域23を形成する工程の一例を説明するための垂直断面図である。まず、図5(a)に示されるように、高抵抗Ga基板20上に均一な厚さに形成されたp型超格子層21のメサ状部分213を形成する部分をマスク70で覆う。次に、図5(b)に示されるように、マスク70の上からp型超格子層21にエッチングを施して、凹部211、212とメサ状部分213を形成する。次に、図5(c)に示されるように、凹部211、212の内面を下地とするエピタキシャル成長によりn型ソース領域22とn型ドレイン領域23を形成する。その後、マスク70を、その上のn型ソース領域22、n型ドレイン領域23と同時に成長した結晶80とともに除去する。
【0031】
図6(a)~(d)は、p型超格子層21の凹部211、212内にn型ソース領域22、n型ドレイン領域23を形成する工程の他の一例を説明するための垂直断面図である。まず、図6(a)に示されるように、p型超格子層21の凹部211、212を形成する部分をマスク71で覆う。次に、図6(b)に示されるように、p型超格子層21の上面のマスク71で覆われていない部分上に結晶を選択成長させ、メサ状部分213を形成する。次に、図6(c)に示されるように、マスク71を、その上のメサ状部分213と同時に成長した結晶81とともに除去する。次に、図6(d)に示されるように、メサ状部分213の上面をマスク72で覆う。ここで、上述の図5(b)に示される状態と同じ状態になるので、上述の図5(c)に示される工程以降の工程を行う。
【0032】
ゲート絶縁膜24は、HfOなどの絶縁体からなる。ゲート電極25は、Auなどの導電体からなる。ソース電極26、ドレイン電極27は、Tiなどのn型ソース領域22、n型ドレイン領域23とオーミック接触する材料からなる。
【0033】
半導体装置2は、ノーマリーオフ型のトランジスタであり、ゲート電極25に電圧を印加しない状態では、ソース電極26とドレイン電極27の間に電圧を印加しても電流は流れない。一方、ゲート電極25に電圧を印加すると、p型超格子層21のメサ状部分213の、ゲート絶縁膜24の直下の領域にチャネルとしての反転層が形成され、ソース電極26とドレイン電極27の間に電流が流れるようになる。
【0034】
〔第3の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図7は、第3の実施の形態に係る半導体装置3の垂直断面図である。半導体装置3は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1をp型領域として有する半導体装置の一例であり、p型超格子構造体1をチャネルとしての反転層を形成するp型領域として有する縦型の電界効果トランジスタ(Ga系MISFET)である。
【0035】
半導体装置3は、nGa基板30と、nGa基板30上に形成された、nGa基板30と反対側の面に凹部311、312が設けられたnGa層31と、凹部311、312の内面を覆うようにそれぞれ形成されたp型超格子領域32a、32bと、凹部311、312内のp型超格子領域32a、32b上にそれぞれ形成されたnコンタクト領域33a、33bと、凹部311と凹部312の間のnGa層31のメサ状部分313の上にゲート絶縁膜34を介して形成されたゲート電極35と、nコンタクト領域33a、33bにそれぞれ接続されたソース電極36a、36bと、nGa基板30のnGa層31と反対側の面上に形成されたドレイン電極37と、を含む。
【0036】
Ga基板30は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる基板である。
【0037】
Ga層31は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる層であり、nGa基板30の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0038】
p型超格子領域32a、32bは、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1からなるp型の領域である。
【0039】
コンタクト領域33a、33bは、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる領域である。
【0040】
図8(a)~(d)は、nGa層31の凹部311、312内にp型超格子領域32a、32bとnコンタクト領域33a、33bを形成する工程の一例を説明するための垂直断面図である。まず、図8(a)に示されるように、nGa基板30上に均一な厚さに形成されたnGa層31のメサ状部分313を形成する部分をマスク73で覆う。次に、図8(b)に示されるように、マスク73の上からnGa層31にエッチングを施して、凹部311、312とメサ状部分313を形成する。次に、図8(c)に示されるように、凹部311、312の内面を下地とするエピタキシャル成長によりp型超格子領域32a、32bを形成する。次に、図8(d)に示されるように、p型超格子領域32a、32bの表面を下地とするエピタキシャル成長によりnコンタクト領域33a、33bを形成する。その後、マスク73を、その上のp型超格子領域32a、32b、nコンタクト領域33a、33bと同時に成長した結晶83とともに除去する。
【0041】
図9(a)~(d)は、nGa層31の凹部311、312内にp型超格子領域32a、32bとnコンタクト領域33a、33bを形成する工程の他の一例を説明するための垂直断面図である。まず、図9(a)に示されるように、nGa層31の凹部311、312を形成する部分をマスク74で覆う。次に、図9(b)に示されるように、nGa層31の上面のマスク74で覆われていない部分上に結晶を選択成長させ、メサ状部分313を形成する。次に、図9(c)に示されるように、マスク74を、その上のメサ状部分313と同時に成長した結晶83とともに除去する。次に、図9(d)に示されるように、メサ状部分313の上面をマスク75で覆う。ここで、上述の図8(b)に示される状態と同じ状態になるので、上述の図8(c)に示される工程以降の工程を行う。
【0042】
ゲート絶縁膜34は、HfOなどの絶縁体からなる。ゲート電極35は、Auなどの導電体からなる。ソース電極36a、36b、ドレイン電極37は、Tiなどのnコンタクト領域33a、33b、nGa基板30とオーミック接触する材料からなる。
【0043】
半導体装置3は、ノーマリーオフ型のトランジスタであり、ゲート電極35に電圧を印加しない状態では、ソース電極36a、36bとドレイン電極37の間に電圧を印加しても電流は流れない。一方、ゲート電極35に電圧を印加すると、p型超格子領域32a、32bの、ゲート絶縁膜34の直下の領域にチャネルとしての反転層が形成され、ソース電極36a、36bとドレイン電極37の間に電流が流れるようになる。
【0044】
〔第4の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図10は、第4の実施の形態に係る半導体装置4の垂直断面図である。半導体装置4は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1をp型領域として有する半導体装置の一例であり、p型超格子構造体1をチャネルとしての反転層を形成するp型領域として有する縦型のGa系MISFETである。
【0045】
半導体装置4は、nGa基板40と、nGa基板40上に形成されたnGa層41と、nGa層41上に形成されたp型超格子層42と、p型超格子層42上に形成されたnGa層43と、nGa層43上に形成されたnコンタクト層44と、ゲート絶縁膜45a、45bを介してp型超格子層42を側方から挟み込むゲート電極46a、46bと、nコンタクト層44に接続されたソース電極47と、nGa基板40のnGa層41と反対側の面上に形成されたドレイン電極48と、表面保護膜49を含む。
【0046】
Ga基板40は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる基板である。
【0047】
Ga層41は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる層であり、nGa基板40の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0048】
p型超格子層42は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1からなるp型の層であり、nGa層41の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0049】
Ga層43は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる層であり、p型超格子層42の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0050】
コンタクト層44は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる層であり、nGa層43の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0051】
ゲート絶縁膜45a、45bは、HfOなどの絶縁体からなる。ゲート電極46a、46bは、Auなどの導電体からなる。ソース電極47、ドレイン電極48は、Tiなどのnコンタクト層44、nGa基板40とオーミック接触する材料からなる。また、表面保護膜49は、Al、SiOなどの絶縁体からなる。
【0052】
半導体装置4は、ノーマリーオフ型のトランジスタであり、ゲート電極46a、46bに電圧を印加しない状態では、ソース電極47とドレイン電極48の間に電圧を印加しても電流は流れない。一方、ゲート電極46a、46bに電圧を印加すると、p型超格子層42のゲート絶縁膜45a、45bと接する両側面からチャネルとしての反転層が形成され、ソース電極47とドレイン電極48の間に電流が流れるようになる。
【0053】
〔第5の実施の形態〕
図11は、第5の実施の形態に係る半導体装置5の垂直断面図である。半導体装置5は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1をp型領域として有する半導体装置の一例であり、p型超格子構造体1をトレンチ内のp型の領域として有する縦型のジャンクションバリアショットキー(JBS)ダイオードである。
【0054】
半導体装置5は、nGa基板50と、nGa基板50上に形成され、nGa基板50と反対側の面に複数のトレンチ511が設けられたnGa層51と、nGa層51のトレンチ511内に埋め込まれたp型超格子領域52と、隣接するトレンチ511の間のnGa層51のメサ状部分512及びp型超格子領域52に接続されたアノード電極53と、nGa基板50のnGa層51と反対側の面上に形成されたカソード電極54と、を備える。
【0055】
Ga基板50は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる基板である。
【0056】
Ga層51は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる層であり、nGa基板50の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。nGa層51のトレンチ511は、例えば、均一な厚さに成膜されたGa系半導体膜に、メサ状部分512とする部分をマスクで保護した上でエッチングを施すことにより形成される。また、トレンチ511とする部分をマスクで覆った上で、メサ状部分512とする部分を選択的に成長させてもよい。
【0057】
p型超格子領域52は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1からなるp型の領域である。p型超格子領域52は、nGa層51のトレンチ511の内面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0058】
アノード電極53は、Fe、Cu、Mo、WなどのnGa層51とショットキー接触する材料からなる。カソード電極54は、TiなどのnGa基板50とオーミック接触する材料からなる。
【0059】
半導体装置5においては、アノード電極53とカソード電極54との間に順方向の電圧(アノード電極53側が正電位)を印加することにより、nGa層51から見たアノード電極53とnGa層51との界面のポテンシャル障壁が低下し、アノード電極53からカソード電極54へ電流が流れる。
【0060】
一方、アノード電極53とカソード電極54との間に逆方向の電圧(アノード電極53側が負電位)を印加したときは、ショットキー障壁により、電流は流れない。このとき、p型超格子領域52から空乏層が広がり、隣接するp型超格子領域52間のチャネルが閉じるため、リーク電流が効果的に抑制される。
【0061】
通常、pnダイオードはショットキーダイオードよりもオン電圧が大きい。このため、半導体装置5がオンになる電圧でp型超格子領域52とnGa層51で構成されるpnダイオード部分がオンしないような設計にすることができる。
【0062】
これによって、半導体装置5の通常動作においてはpnダイオード部分がオンしないため、ショットキーダイオード本来の高速動作が可能になる。一方、突入電流発生時は半導体装置5の電圧が上昇し、pnダイオード部分がオンする電圧に達し、p型超格子領域52からnGa層51へ正孔が注入される。そのとき、カソード電極54からnGa層51へはその注入された正孔と同じ数の電子が注入され、ドリフト層の抵抗が大幅に減少する。このため、突入電流という大電流が半導体装置5を流れるが、電圧の上昇は抑えられるため、温度上昇が抑えられ、突入電流による半導体装置5の損傷を防ぐことができる。
【0063】
〔第6の実施の形態〕
図12は、第6の実施の形態に係る半導体装置6の垂直断面図である。半導体装置6は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1をp型領域として有する半導体装置の一例であり、p型超格子構造体1をp型層として有するPIN型フォトダイオードである。
【0064】
半導体装置6は、nGa基板60と、nGa基板60上に形成されたnGaバッファ層61と、nGaバッファ層61上に形成された、受光域となるGa受光層62と、Ga受光層62上に形成されたp型超格子層63と、p型超格子層63に接続されたアノード電極64と、nGa基板60のnGa層バッファ層61と反対側の面上に形成されたカソード電極65と、を備える。
【0065】
Ga基板60は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる基板である。
【0066】
Ga層バッファ層61は、Sn、Siなどのn型ドーパントを含むβ型のGa系半導体の単結晶からなる層であり、nGa基板60の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0067】
Ga受光層62は、アンドープのβ型のGa系半導体の単結晶からなる層であり、nGa層バッファ層61の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0068】
p型超格子層63は、第1の実施の形態に係るp型超格子構造体1からなるp型の層であり、Ga受光層62の上面を下地とするエピタキシャル成長により形成される。
【0069】
アノード電極64、カソード電極65は、Tiなどのp型超格子層63、nGa基板60とオーミック接触する材料からなる。
【0070】
半導体装置6は、Ga受光層62を構成するGa系半導体のバンドギャップが4.7eV程度(Gaのバンドギャップが4.7eV)であるため、およそ255nm以下の波長域(ソーラーブラインド領域)の紫外光を受光することができる。Ga受光層62を構成するGa系半導体のIn組成を大きくしてバンドギャップを小さくすることにより、受光する光の波長の上限を大きくすることができる。逆に、Ga受光層62を構成するGa系半導体のAl組成を大きくしてバンドギャップを大きくすることにより、受光する光の波長の上限を小さくすることができる。
【0071】
なお、半導体装置6は、アンドープのGa受光層62の代わりにn型のGa系半導体からなる層を受光層として用いたPN型フォトダイオードであってもよい。また、半導体装置6は、Ga受光層62を用いずにp型超格子層63をnGa基板60などのn型のGa系半導体からなるn型層に直接接続して、n型層のp型超格子層63との界面近傍に空乏層を形成し、受光時に逆方向電圧を印加して衝突電離を発生させるアバランシェフォトダイオードであってもよい。
【0072】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、Ga系半導装置のp型領域として用いることのできるp型超格子構造体、及びそのp型超格子構造体を備えた半導体装置を提供することができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0074】
1…p型超格子構造体、 2、3、4、5、6…半導体装置、 10…p型酸化物半導体層、 11…Ga系半導体層、 21…p型超格子層、 32a、32b…p型超格子領域、 42…p型超格子層、 52…p型超格子領域、 511…トレンチ、 63…p型超格子層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12