IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アロン化成株式会社の特許一覧

特開2022-90879熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090879
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20220613BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220613BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20220613BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20220613BHJP
   C08L 89/06 20060101ALI20220613BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220613BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20220613BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20220613BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20220613BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C08L23/16
C08L23/08
C08L23/12
C08L91/00
C08L89/06
C08K5/14
C08K5/11
C08K5/3417
C08J3/24 CES
C08J3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203450
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雄希
(72)【発明者】
【氏名】早川 祐生
(72)【発明者】
【氏名】伊達 憲昭
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AA16
4F070AB24
4F070AC32
4F070AC44
4F070AC45
4F070AC56
4F070AC66
4F070AE02
4F070FA17
4F070FB07
4F070FC06
4F070GA05
4F070GA06
4F070GB08
4J002AE053
4J002BB05W
4J002BB12X
4J002BB15W
4J002EH107
4J002EK016
4J002EK036
4J002EK046
4J002EK066
4J002EK086
4J002EU027
4J002FD023
4J002FD146
4J002FD157
4J002GC00
4J002GG00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】柔軟性、引張強さ、及び耐圧縮永久歪み性に優れ、良好な外観を有する熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAと、該非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、オレフィン系樹脂Bを10~270質量部、ゴム軟化剤Cを10~150質量部、有機過酸化物であるゴム架橋剤Dを0.2~10質量部、及び多官能性(メタ)アクリレート及び/又は多官能性マレイミド化合物である架橋助剤Eを0.25~4.5質量部を含む組成物の混練物であって、前記非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAが動的架橋されてなる、熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAと、
該非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、
オレフィン系樹脂Bを10~270質量部、
ゴム軟化剤Cを10~150質量部、
有機過酸化物であるゴム架橋剤Dを0.2~10質量部、及び
多官能性(メタ)アクリレート及び/又は多官能性マレイミド化合物である架橋助剤Eを0.25~4.5質量部
を含む組成物の混練物であって、前記非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAが動的架橋されてなる、熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
多官能性(メタ)アクリレートがトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートであり、多官能性マレイミド化合物がN,N’-1,3-フェニレンビスマレイミドである、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
工程1:非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAとオレフィン系樹脂Bを溶融混練する工程
工程2:得られた混練物と、ゴム軟化剤Cを溶融混練する工程、及び
工程3:得られた混練物と、ゴム架橋剤Dを溶融混練する工程
を含み、工程1~3での溶融混練を押出機により行う、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項4】
架橋助剤Eを、工程1又は工程3で溶融混練に供する、請求項3記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用部品、土木・建材用品、電気・電子部品、衛生用品、フィルム・シートなど種々の用途に使用される熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車部品等において、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDM)等のエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体のゴム配合物からなる加硫成形品が、低硬度かつゴム弾性が要求される部品において、広く用いられてきた。ところが近年、加硫工程を伴わない生産性の良さ、再溶融ができ、別形状の成形品に作り替えることができるリサイクル性及び軽量化の観点により、加硫工程が不要な熱可塑性エラストマー組成物が使用されている。
【0003】
特に、熱可塑性成分であるポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂とゴム弾性成分であるエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体ゴムを含む混合物と、柔軟性と流動性を付与するゴム軟化剤の混合物を溶融混合する工程において、有機過酸化物を加えることで前記共重合体ゴムに架橋処理を施した組成物は、動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物として知られており、熱可塑性とゴム弾性を併せ持つ特徴を有する材料として、自動車内装材、外装材等の自動車部品等に広く使用されている。
【0004】
動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物は架橋したゴム成分がオレフィン系樹脂に分散した海島構造と呼ばれる内部構造を形成しているために、熱可塑性とゴム弾性が両立できていると言われている。
【0005】
一方、動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物は、島相である架橋ゴムが均一かつ微分散できない場合、期待される強度やゴム弾性が発揮できない。さらに、得られる成形品の表面に粗大ゴム粒子に起因するブツが多数見られ、成形品の表面外観を損なう等の大きな問題を長年抱えている。そこで、架橋ゴム起因の粗大ゴム粒子の課題を解決すべく、多くの方法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、粒子状ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合ゴム及びペルオキシド分解型ポリオレフィン系樹脂を二軸押出機に直接供給し、有機ペルオキシドの存在下で、特定の条件下で動的熱処理を行うことを特徴とする部分架橋ゴム-樹脂組成物の製造法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、オレフィン系共重合体ゴム及びポリオレフィン系樹脂を主成分とする混合物を、L/Dが20以上の二軸押出機に直接供給し、半減期が一分となる温度が160℃以上の有機過酸化物の存在下で動的熱処理する際、該二軸押出機の原料供給口側のシリンダー温度を該二軸押出機の口径の10倍長以上に渡って、130℃~155℃の温度に制御し、かつ該温度に制御されたシリンダー部分以外のダイス側のシリンダー温度を該二軸押出機の口径の10倍長以上に渡って、180℃~280℃に制御しておくことを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、二軸押出機を用い、オレフィン系共重合体ゴム及びオレフィン系プラスチックを動的に架橋して熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法において、二軸押出機が動的架橋部に一箇所以上の混練部を有し、その第一番目の混練部に一枚当りの最も薄い厚さ(Tmin)が13mm未満の順送りのニーディングディスクを有するスクリューで構成されてなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法が開示されている。
【0009】
特許文献4には、ペレット状オレフィン系樹脂(A)と、塊状オレフィン系ゴムを粉砕することによって得られた粉砕物(B)と、架橋剤(C)を含む混合物を、連続混練機に連続的に供給し、動的に熱処理して得られることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58-025340号公報
【特許文献2】特開平5-220825号公報
【特許文献3】特開平9-095540号公報
【特許文献4】特開2003-321553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1~4に記載の方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物は、架橋ゴムの粗大粒子に起因する成形品のブツの問題が十分には解決されていない。また、柔軟性、引張強さ、及び耐圧縮永久歪み性についても良好な熱可塑性エラストマー組成物が求められる。
【0012】
本発明の課題は、柔軟性、引張強さ、及び耐圧縮永久歪み性に優れ、良好な外観を有する熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
〔1〕 非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAと、
該非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、
オレフィン系樹脂Bを10~270質量部、
ゴム軟化剤Cを10~150質量部、
有機過酸化物であるゴム架橋剤Dを0.2~10質量部、及び
多官能性(メタ)アクリレート及び/又は多官能性マレイミド化合物である架橋助剤Eを0.25~4.5質量部
を含む組成物の混練物であって、前記非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAが動的架橋されてなる、熱可塑性エラストマー組成物、
〔2〕 多官能性(メタ)アクリレートがトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートであり、多官能性マレイミド化合物がN,N’-1,3-フェニレンビスマレイミドである、前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物、
〔3〕 工程1:非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAとオレフィン系樹脂Bを溶融混練する工程
工程2:得られた混練物と、ゴム軟化剤Cを溶融混練する工程、及び
工程3:得られた混練物と、ゴム架橋剤Dを溶融混練する工程
を含み、工程1~3での溶融混練を押出機により行う、前記〔1〕又は〔2〕記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、並びに
〔4〕 架橋助剤Eを、工程1又は工程3で溶融混練に供する、前記〔3〕記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性、引張強さ、及び耐圧縮永久歪み性に優れ、外観においても優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA、オレフィン系樹脂B、ゴム軟化剤C、ゴム架橋剤D、及び架橋助剤Eを含む組成物の混練物であって、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAが動的架橋された組成物である。
【0016】
本発明は、ゴム成分である非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA(以下、ゴム成分Aともいう)が、予めゴム軟化剤が含侵された油展ゴムではなく、非油展ゴムである点に1つの特徴を有しており、これは、予め、ゴム成分Aとオレフィン系樹脂Bとを、ゴム軟化剤の非存在下で混合できること、即ち、溶融混練時に、ゴム成分Aとオレフィン系樹脂Bとを、ゴム軟化剤の存在下よりも溶融粘度が高い状態での溶融混練が可能なことを意味している。これにより、ゴム成分Aとオレフィン系樹脂Bの混練物の均一性を高めることができる。通常、ゴム成分とオレフィン系樹脂を溶融混練すると、オレフィン系樹脂がゴム成分中に分散した状態、即ちゴム成分が海相、オレフィン系樹脂が島相となる海島構造を形成するが、ゴム用軟化剤の非存在下で両者を溶融混練することにより、オレフィン系樹脂をより均一に微細にゴム成分中に分散させることができる。
次いで、ゴム成分Aとオレフィン系樹脂Bの混練物をゴム軟化剤Cと混合し溶融混練した後に、ゴム架橋剤Dを加え、ゴム成分Aを動的架橋することで、架橋反応と共にゴム成分Aは流動性を失い、次第にオレフィン系樹脂成分Bとの相反転が進行する。最終形態(熱可塑性エラストマー組成物)においては、オレフィン系樹脂Bが海相、ゴム成分Aが島相となる。本発明では、反転前の海島構造が均一であることで、この反転した相構造も均一な海島構造となり、成形品のブツの発生が抑制されているものと推察される。
【0017】
なお、本発明において、非油展ゴムとは、ゴム軟化剤等の伸展油が添加されていないゴムであり、油成分の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
【0018】
非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAは、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンと非共役ポリエンとの共重合体であることが好ましい。
【0019】
炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等の1種又は2種以上が挙げられ、これらの中でも、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンが好ましく、プロピレンがより好ましい。
【0020】
非共役ポリエンとしては、鎖状非共役ジエン、環状非共役ジエン、非共役トリエン等が挙げられる。
【0021】
鎖状非共役ジエンとしては、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等が挙げられる。
【0022】
環状非共役ジエンとしては、メチルテトラヒドロインデン、2-エチリデン-5-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0023】
非共役トリエンとしては、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ナノジエン等が挙げられる。
【0024】
これらの共役ポリエンは単独でも、2種類以上でも使用することができる。これらの中でも、環状非共役ジエンが好ましく、2-エチリデン-5-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、及びジシクロペンタジエンがより好ましい。
【0025】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAにおいて、エチレン単位とα-オレフィン単位のモル比(エチレン単位/α-オレフィン単位)は、好ましくは50/50~95/5、より好ましくは55/45~90/10、さらに好ましくは60/40~85/15である。
【0026】
非共役ポリエン単位の割合は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAを構成する全単位中、好ましくは0.05~5モル%、より好ましくは0.1~4モル%、さらに好ましくは0.2~3モル%である。
【0027】
非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAは、単独で、又は二種以上のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの組み合わせであってもよい。
【0028】
非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAは、従来公知の方法により製造することができる。
【0029】
非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAの市販品としては、JSR社製の商品名、JSR EPシリーズ、SABIC社の商品名、SABIC EPDM、ダウ社製の商品名、NORDEL IPシリーズ、住友化学社の商品名、エスプレンシリーズ等が挙げられる。
【0030】
非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAのムーニー粘度[ML1+4(125℃)]は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAとゴムAとゴム軟化剤Cの均一混合性の観点から、20以上が好ましく、溶融混練時のせん断発熱量が多くなることによる、得られる組成物の熱分解等を抑制する観点から、150以下が好ましい。これらの観点から、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAのムーニー粘度[ML1+4(125℃)]は、好ましくは20~150、より好ましくは30~100、さらに好ましくは35~90である。ムーニー粘度は、分子量の指標になり、分子量が高いほど粘度は大きく、逆に分子量が低くなれば粘度も低くなる。
【0031】
非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは10~85質量%、より好ましくは15~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%である。
【0032】
オレフィン系樹脂Bとは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等の単独重合体又は共重合体が挙げられ、これらの中では、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンと、エチレン及び炭素原子数4~10のα-オレフィンとからなる群より選ばれた少なくとも1種のコモノマーとの共重合体等が挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体であってもよい。共重合体において、プロピレン単位の割合は、全モノマー単位中、好ましくは30~90モル%、より好ましくは40~80モル%である。
【0034】
α-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0035】
プロピレンとコモノマーとの共重合体の具体例としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ヘキセン共重合体等が挙げられる。
【0036】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、及びプロピレン・1-ブテン共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂の立体構造として、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、及びこれら両構造が混合した構造を例示することができる。主たる構造がアイソタクチック構造であることが好ましい。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等を用いた公知の重合方法で製造することができる。該重合方法としては、溶液重合法、バルク重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂の、230℃、荷重21.18Nの条件下におけるメルトマスフローレートは、好ましくは0.1~200g/10min、より好ましくは0.5~100g/10min、さらに好ましくは1~80g/10minである。
【0040】
オレフィン系樹脂Bの含有量は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、強度、成型性、及びブツの抑制の観点から、10質量部以上であり、ゴム弾性を維持する観点から、270質量部以下である。これらの観点から、オレフィン系樹脂Bの含有量は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、10~270質量部であり、好ましくは20~260質量部、より好ましくは30~250質量部、さらに好ましくは30~150質量部、さらに好ましくは30~80質量部である。
【0041】
オレフィン系樹脂Bの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは1~70質量%、より好ましくは5~60質量%である。
【0042】
ゴム軟化剤Cとしては、アロマ系ゴム軟化剤、ナフテン系ゴム軟化剤、パラフィン系ゴム軟化剤が挙げられ、これらの中では、パラフィン系ゴム軟化剤が好ましい。
【0043】
ゴム軟化剤Cの40℃における動粘度は、好ましくは10~1000mm2/s、より好ましくは15~800mm2/s、さらに好ましくは30~200mm2/sである。
【0044】
ゴム軟化剤Cの含有量は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、柔軟性や成形性(流動性)の観点から、10質量部以上であり、ゴム軟化剤のブリード抑制の観点から、150質量部以下である。これらの観点から、ゴム軟化剤Cの含有量は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、10~150質量部であり、好ましくは20~140質量部、より好ましくは30~130質量部、さらに好ましくは70~110質量部である。
【0045】
ゴム軟化剤Cの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは1~55質量%、より好ましくは5~45質量%である。
【0046】
ゴム架橋剤Dは、有機過酸化物である。
【0047】
有機過酸化物として、公知のケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、パーカーボネート類、パーオキシジカーボネート類、アルキルパーオキシエステル類等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0048】
ケトンパーオキサイド類としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
【0049】
ジアシルパーオキサイド類としては、ジイソブチリルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、シスクシノイックアシッドパーオキサイド、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド等が挙げられる。
【0050】
ハイドロパーオキサイド類としては、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0051】
ジアルキルパーオキサイド類としては、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0052】
パーオキシケタール類としては、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート等が挙げられる。
【0053】
パーカーボネート類としては、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート等が挙げられる。
【0054】
パーオキシジカーボネート類としては、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0055】
アルキルパーオキシエステル類としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルバーオキシベンゾエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0056】
有機過酸化物の市販品としては、Nouryon社製の商品名、パーカドックス、トリゴノックス、日油社製の商品名、パーヘキサ、パーブチル、パークミル、パーヘキシン、アルケマ吉富社製の商品名、ルペロックス等が挙げられる。
【0057】
有機過酸化物の1分間半減期温度は、オレフィン系樹脂Bを溶融さて混練する観点から、100℃以上が好ましく、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAとオレフィン系樹脂Bの熱分解を抑制する観点から、290℃以下が好ましい。これらの観点から、有機過酸化物の1分間半減期温度は、好ましくは100~290℃、より好ましくは120~260℃、さらに好ましくは140~240℃、さらに好ましくは160~220℃である。
【0058】
本発明において好ましい有機過酸化物は、ジクミルパーオキサイド(1分半減期温度175.2℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(1分半減期温度179.8℃)、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン(1分半減期温度194.3℃)であり、より好ましくは2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシンであり、さらに好ましくは2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンである。
【0059】
ゴム架橋剤Dの含有量は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、架橋度を高める観点から、0.2質量部以上であり、ブツの発生を抑制する観点から、10質量部以下である。これらの観点から、ゴム架橋剤Dの含有量は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、0.2~10質量部であり、好ましくは0.3~5質量部、より好ましくは0.4~3質量部、さらに好ましくは0.5~1.5質量部、さらに好ましくは0.7~1.0質量部である。
【0060】
ゴム架橋剤Dの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは0.05~1質量%、より好ましくは0.1~0.8質量%である。
【0061】
架橋助剤Eは、多官能性(メタ)アクリレート及び/又は多官能性マレイミド化合物であり、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAのゴム中の不飽和結合部分等の架橋点を有機過酸化物で架橋させる際に、効率的に架橋反応を進行させる作用を有する。
【0062】
多官能性(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)メタクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上等が挙げられ、これらの中では、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0063】
多官能性マレイミド化合物としては、N,N’-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンビスマレイミド、N,N’-1,3-トルイレンビスマレイミド、1,4-ビスマレイミドブタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられ、これらの中では、N,N’-1,3-フェニレンビスマレイミドが好ましい。
【0064】
架橋助剤Eの含有量は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、強度及び耐圧縮永久歪の観点から、0.25質量部以上であり、ブツの発生を抑制する観点から、4.5質量部以下である。これらの観点から、架橋助剤Eの含有量は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA 100質量部に対して、0.25~4.5質量部であり、好ましくは0.5~4質量部、より好ましくは0.9~3.5質量部、さらに好ましくは2.0~3.0質量部である。
【0065】
架橋助剤Eの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物中、好ましくは0.05~2.5好ましくは0.5~2質量%である。
【0066】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、無機フィラー(例えば、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、シリカ、珪藻土、雲母粉、アルミナ、硫酸バリウム及びカオリン、)、有機フィラー(例えば、木粉及びセルロースパウダー)、酸化防止剤(例えば、フェノール系、イオウ系、燐系)、耐候性安定剤、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系、トリジアミン系、アニリド系及びベンゾフェノン系)、熱安定剤、老化防止剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系及びベンゾエート系)、帯電防止剤、造核剤、顔料、吸着剤(例えば、金属酸化物)、金属塩化物(例えば、塩化鉄及び塩化カルシウム)、ハイドロタルサイト、アルミン酸塩、滑剤(例えば、脂肪酸、高級アルコール、脂肪族アミド、脂肪族エステル)、難燃剤、発泡剤、シリコーン化合物等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0067】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムA、オレフィン系樹脂B、ゴム軟化剤C、ゴム架橋剤D、及び架橋助剤Eを含む組成物を、押出機により溶融混練する工程を含む方法により得られるが、より均一な海島構造を有する組成物を得る、かつブツの少ない成形品を得る観点から、
工程1:非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAとオレフィン系樹脂Bを溶融混練する工程
工程2:得られた混練物と、ゴム軟化剤Cを溶融混練する工程、及び
工程3:得られた混練物と、ゴム架橋剤Dを溶融混練する工程
を含み、工程1~3での溶融混練を押出機により行う方法が好ましい。架橋助剤Eは、工程1又は工程3で溶融混練に供することが好ましい。
【0068】
従来、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー等のバッチ式ミキサーを用いることが一般的であるが、ゴム軟化剤を多量に使用する場合には、一度に添加することができず(溶融樹脂温度の低下とスリップ発生)に逐次添加する必要がある。次いで、ゴム架橋反応行う必要があるため、合計混練時間がその分長くなり、操作が煩雑なうえ、生産性が良くない。さらに、長時間の熱履歴により熱・酸化分解が生じやすく、得られる組成物の熱着色や熱分解が生じるため、物性が低下する。
【0069】
これに対し、本発明では、押出機を用いて、混練時間が短時間の熱履歴で熱可塑性エラストマー組成物を製造することにより、物性に優れた組成物を得ることができる。
【0070】
本発明に用いられる押出機としては、単軸押出機や2軸押出機、4軸押出機等の多軸押出機等が挙げられる。また、多軸押出機として、同方向回転かみ合い型多軸押出機、異方向回転かみ合い型多軸押出機、異方向回転非かみ合い型多軸押出機、コニーダー型押出機、プラネタリギヤ型押出機等が挙げられ、本発明では、せん断力が強く、生産性の高い同方向回転かみ合い型2軸押出機及び同方向回転かみ合い型4軸押出機が好ましい。
【0071】
本発明に用いられる押出機は、原料供給ホッパーとセグメントに分割された多段加熱ゾーンと押出機出口の押出ダイを備えていることが好ましい。
【0072】
押出機の温度は、少なくともオレフィン系樹脂Bが溶融し、均一な混練が可能な程度に適宜調整することが好ましい。
【0073】
工程1と工程2では、原料供給ホッパーから押出ダイの途中で液状物を添加するポンプと連結された液注セグメントを備えた押出機を使用し、原料供給ホッパーから、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAとオレフィン系樹脂Bを投入して両者を溶融混練し、途中、液注セグメントから、ゴム軟化剤Cを投入することが好ましい。
【0074】
他の添加剤を配合する場合は、工程1~3の溶融混練で添加することができるが、組成物中の分散性を高める観点から、工程1で非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAとオレフィン系樹脂Bとともに溶融混練に供することが好ましい。
【0075】
工程2の後、得られた混練物を、そのまま、別の押出機に投入して、工程3を行ってもよいが、その場合は混練物の取扱いが煩雑であることから、工程2で用いた押出機から吐出されたストランド状の混練物を一旦冷却し、ペレット状等の固形物とした後に、別の押出機に投入し、工程3を行うことが好ましい。
【0076】
工程3において、ゴム架橋剤D及び架橋助剤Eは、工程2で得られた混練物とより均一に溶融混練する観点から、混練物の表面に均一に付着させ、押出機に投入して溶融混練することが好ましい。工程3において、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムAの動的架橋が進行する。
【0077】
工程3の後、押出機から排出された混練物を、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状等のペレットに切断し、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0078】
熱可塑性エラストマー組成物のA硬度は、柔軟性の観点から、好ましくは96以下、より好ましくは30~90、さらに好ましくは40~85である。
【0079】
熱可塑性エラストマー組成物の、230℃、荷重49Nの条件下におけるメルトマスフローレイトは、好ましくは0.05g/10min以上、より好ましくは0.07~30g/10min、さらに好ましくは0.1~20g/10minである。
【0080】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、種々公知の成形方法、例えば、押出成形、プレス成形、射出成形、カレンダー成形、中空成形、発泡成形などの各種の成形方法により、熱可塑性エラストマー成形体とすることができる。さらに、前記成形方法で得られたシート状等の成形体を再度熱成形等で二次加工することができる。
【0081】
本発明の熱可塑性エラストマー成形体は、特にその使用用途が限定されるものではないが、例えば、自動車部品(ウェザーストリップ、天井材、内装シート、バンパーモール、サイドモール、エアスポイラー、エアダクトホース、エアバッグカバー、カップホルダー、サイドブレーキグリップ、シフトノブカバー、各種ツマミ類、フラッパードアシール、ワイヤーハーネスグロメット、ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションカバーブーツ、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、ルーフガイド、トランクリッドシール、モールデッドクォーターウィンドガスケット、コーナーモールディング、グラスエンキャプシュレーション、フードシール、グラスランチャンネル、セカンダリーシール、各種パッキン類等)、土木・建材部品(止水材、地盤改良用シート、目地材、建築用窓枠等)、電気・電子部品(電線被覆材、コネクター、キャップ、プラグ等)スポーツ用品(ゴルフクラブ、テニスラケット、野球バットのグリップ類等)、工業用部品(ホースチューブ、ガスケット等)、家電部品(ホース、パッキン類等)、衛生用品(生理用品、使い捨ておむつ、歯ブラシ用グリップ等の衛生用品等)、フィルム・シート(輸液バッグ、医療容器、自動車内外装材、飲料ボトル、衣装ケース、食品包材、食品容器、レトルト容器、パイプ、透明基盤、シーラント等)、雑貨等の種々公知の用途に使用可能である。
【実施例0082】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0083】
<成分A(エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム)>
〔共重合体の組成〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)によって、プロトンNMR測定により求める。
【0084】
〔ムーニー粘度〕
JIS K6300-1に則り測定する。
【0085】
<成分B(オレフィン系樹脂)>
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
JIS K7210に従って、21.18Nの荷重下、温度230℃で測定する。
【0086】
<成分C(ゴム用軟化剤)>
〔動粘度〕
JIS K 2283に従って、40℃の温度で測定する。
【0087】
<成分D(ゴム架橋剤)>
〔1分間半減期温度〕
半減期とは、有機過酸化物が温度条件によって分解し、その活性酸素量が半分になるまでの時間を示す。この場合、1分間で半減期を迎える温度を示す。
有機過酸化物の温度は、以下のように測定する。
ベンゼン等のラジカルに対して不活性な溶剤に、有機過酸化物を溶解させ、窒素雰囲気下で各設定温度、及び時間で熱処理を行った後、ヨウ素滴定法により、残存する活性酸素濃度を定量する。
【0088】
実施例1~10及び比較例1~3
(1) 熱可塑性エラストマー組成物(ペレット)の作製
〔工程1及び工程2〕
表1に示す成分Aと成分B、及び酸化防止剤として「SONGNOX 11B」(Songwon社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とホスファイト系酸化防止剤の混合物)0.8質量部を、原料供給ホッパーから押出機に供給し、液注セグメントから、成分Cを供給して、以下の条件下で溶融混練した。押出機から吐出されたストランド状樹脂を、冷水中で冷却しつつカッターによって、直径3mm程度、厚さ3mm程度に切断し、ペレットを得た。
【0089】
<溶融混練条件>
押出機:(株)テクノベル製、KZW32TW-60MG-NH、スクリュー直径32mmの同方向回転かみ合い型2軸押出機、L/D=90(L:押出機バレルの長さ、D:スクリュー直径)、原料供給ホッパーから押出機出口までの間で、ホッパーから2/3の距離の位置に液注ポンプを配置
シリンダー温度:ホッパー付近の温度条件を180℃、ホッパーから液注ポンプまでを200℃、液注ポンプから押出機出口までを230℃に設定
スクリュー回転数:350r/min
押出ダイ:直径3mmのストランドダイ
原料供給速度:15kg/h
【0090】
〔工程3〕
得られたペレットに、表1に示す成分Dと成分Eをまぶし、押出機に供給し、押出機から吐出されたストランド状混練物を、冷水中で冷却しつつカッターによって、直径3mm程度、厚さ3mm程度に切断し、ペレットAを得た。
【0091】
実施例及び比較例で使用した表1に記載の原料の詳細は以下の通り。
【0092】
〔成分A(エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム)〕
成分A1:EPDM657(SABIC社製)
非油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)
エチレン含有量:82.2モル%、プロピレン:16.5モル%、2-エチリニデン-5-ノルボルネン含有量:1.3モル%
ムーニー粘度[ML1+4(125℃)]:60
成分A2:エスプレン EPDM6101(住友化学(株)製)
油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(油展量:41質量%)
エチレン含有量:80.3モル%、プロピレン:18.0モル%、2-エチリニデン-5-ノルボルネン含有量:1.7モル%
ムーニー粘度[ML1+4(125℃)]:52
【0093】
〔成分B(オレフィン系樹脂)〕
POLYMAXX 1100RC(IRPC Public Company社製)
ホモポリプロピレン、アイソタクチック構造
メルトマスフローレイト(230℃、21.18N荷重):20g/10min
【0094】
〔成分C(ゴム軟化剤)〕
ダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産(株)製)
パラフィンオイル
40℃における動粘度:90mm2/s
【0095】
〔成分D(ゴム架橋剤)〕
パーヘキサ25B(日油(株)製)
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン
1分間半減期温度:179.8℃
【0096】
〔成分E(架橋助剤)〕
成分E1:サンエステルTMP(三新化学工業(株)製)
トリメチロールプロパントリメタクリレート
成分E2:BMI-3000H(大和化成工業(株)製)
N,N’-1,3-フェニレンビスマレイミド
成分E3:TAIC(三菱ケミカル(株)製)
トリアリルイソシアヌレート
成分E4:バルノックGM-P(大内新興化学工業(株)製)
p-キノンジオキシム
【0097】
(2) 熱可塑性エラストマー組成物の成形体の作製
(2-1) ペレットを、下記の条件で射出成形し、幅125mm×長さ125mm×厚さ2mmのシートAを作製した。
【0098】
〔射出成条件〕
射出成形機:100MSIII-10E(商品名、三菱重工業(株)製)
射出成形温度:200℃
射出圧力:30%
射出時間:10sec
金型温度:40℃
【0099】
実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
〔A硬度〕
シートAを3枚重ね(合計6mm)としたものについて、JIS K 6253に準拠し、タイプAデュロメータを用いた。測定時間1秒のA硬さ(試験開始から1秒後の値)を測定した。測定は温度23℃、湿度50%の室内で1日状態調節の後、実施した。
【0101】
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
ペレットAを用い、JIS K7210-1に準拠し、230℃、49N荷重の試験条件で測定した。
【0102】
〔引張強さ〕
シートAから、型抜機を用いてJIS K6251に記載の3号試験片(長さ20mm)を作製し、(株)島津製作所製の引張試験機(オートグラフ AG-50kND型)を用いて、23℃の温度環境下、200mm/minの速度で試験片を引っ張った。試験片破断時の応力(MPa)と伸び率(破断時の試験片の長さ(mm)/20(mm)×100、%)をそれぞれ引張強度と引張伸びとして記録した。
【0103】
〔圧縮永久歪み率〕
シートAから、直径29mmの円形打ち抜き刃を用いて直径29mm×厚さ2mmの円形サンプルを作製した。この円形サンプルを6枚重ね、圧縮により厚さ12.5mmに調整した試験片を用いて、JIS K 6262に準拠した方法により、23℃、70℃、100℃のそれぞれの温度、24時間環境下での圧縮永久歪み率(CS)を測定した。
【0104】
〔ブツの発生〕
ペレットA 1000gと黒顔料マスターバッチペレット3gをブレンドし、黒色の射出成形シート(幅125mm×長さ125mm×厚さ2mm)を作製した。このシートから幅40mm×長さ40mmのサイズのサンプルを切り出し、200℃に加熱されたプレス機を用いて5MPa、2分間プレスして、薄肉(0.1mm程度)のプレスシートを作製した。
【0105】
得られたプレスシートにブツがある場合、黒色のシート中にゴム成分のブツが白く見える状態となるため、白い部分(粒子径、数)をマイクロスコープにより定量化した。
【0106】
ブツの計測には、マイクロスコープ(VHX-6000、キーエンス製)を用いた。50倍のレンズを用いて、面積500mm2(5mm×4mmの観測画像を25枚(縦5枚×横5枚)連結)の画像を撮影し、画像解析ソフト(マイクロスコープ装置内蔵)を用いてブツ(白い部分)の長径[X]が、0.1mm以上0.2mm未満、0.2mm以上0.3mm未満、0.3mm以上0.5mm以下のそれぞれの数を測定した。
【0107】
【表1】
【0108】
以上の結果より、実施例1~10の熱可塑性エラストマー組成物は、流動性、柔軟性、引張強さ、及び耐圧縮永久歪み性が良好で、ブツの少ない外観に優れた成形品が得られることが分かる。
これに対し、油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムを配合した比較例1では、ブツが多数発生している。また、架橋助剤として、多官能性(メタ)アクリレート及び多官能性マレイミド化合物以外の架橋助剤を配合した比較例2、3においても、同様にブツの発生が顕著である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車用部品、土木・建材用品、電気・電子部品、衛生用品、フィルム・シートなど種々の用途に好適に用いることができる。