(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090882
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】畳表
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
E04F15/02 102A
E04F15/02 102Q
E04F15/02 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203455
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕次
(72)【発明者】
【氏名】稲津 明
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA02
2E220AA13
2E220AA15
2E220AD13
2E220GB33X
2E220GB35X
(57)【要約】
【課題】本発明は、クリーン性及び耐汚染性が優れている畳表及び更に、難燃性、火がついても短時間で消化しうる防炎性、抗菌性等が優れている畳表を提供する。
【解決手段】300~2000デニールの熱可塑性樹脂単繊維2~10本が撚られてなる樹脂系撚糸を縦糸とし、いぐさを横糸として製織されていることを特徴とする畳表。いぐさはオレフィン系樹脂及び無機充填剤よりなる一軸延伸フィルムを紐状に結束し、得られた結束体を該収束体の直径より狭い空隙部を有する加熱部材の空隙部中を通過させることにより、該結束体の一軸延伸フィルムを互いに不規則且つ部分的に融着結束させると共に、該結束体の表面に融着被膜を形成することにより得られた人工いぐさが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
300~2000デニールの熱可塑性樹脂単繊維2~10本が撚られてなる樹脂系撚糸を縦糸とし、いぐさを横糸として製織されていることを特徴とする畳表。
【請求項2】
熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂又はポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の畳表。
【請求項3】
熱可塑性樹脂単繊維に、難燃剤及び/又は抗菌剤が練り込まれていることを特徴とする請求項1又は2記載の畳表。
【請求項4】
いぐさが人工いぐさであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の畳表。
【請求項5】
人工いぐさが、オレフィン系樹脂及び無機充填剤よりなる一軸延伸フィルムを紐状に結束し、得られた結束体を該収束体の直径より狭い空隙部を有する加熱部材の空隙部中を通過させることにより、該結束体の一軸延伸フィルムを互いに不規則且つ部分的に融着結束させると共に、該結束体の表面に融着被膜を形成することにより得られた人工いぐさであることを特徴とする請求項4記載の畳表。
【請求項6】
一軸延伸フィルムに、更に、難燃剤及び/又は抗菌剤が練り込まれていることを特徴とする請求項5記載の畳表。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳表に関する。
【背景技術】
【0002】
日本家屋における床材として広く使用されている畳は畳床の表面に畳表を積層することにより構成されている。畳表は天然いぐさを横糸とし、綿糸や麻糸を縦糸とし引き目織りや目積織りにより製織することにより製造されてきたが、天然いぐさは害虫が発生する、機械的強度が低い、高価格である、供給量が少ない等の欠点を有していた。
【0003】
そのため、最近は紙や種々の熱可塑性樹脂フィルムを材料とした人工いぐさが(例えば、特許文献1、2、3参照。)が提案されている。これら人工いぐさは、紙や可塑性樹脂を材料とする工業製品であるから、害虫が発生しない、低価格である、供給が安定している、機械的強度やクッション性等が優れている等の長所を有していた。更に、防ダニ剤、防カビ剤、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、VOC吸着剤、遠赤外線放射剤、マイナスイオン放射剤等の機能性物質を人工いぐさの周囲に塗布して機能性を向上させた人工いぐさ(例えば、特許文献4参照。)も提案されている。
【0004】
しかしながら、縦糸としては、依然として綿糸や麻糸が使用されている。これら縦糸は吸水性及び保水性が優れており、横糸として熱可塑性樹脂製の人工いぐさが製織されている畳表においては、吸水性及び保水性小さい人工いぐさを使用しているにもかかわらず畳表としての吸水性及び保水性が優れていた。そのため畳表上に味噌汁、コーヒー等をこぼした場合、容易にふき取ることができず、畳表の表面に長いこと残存したり、汚れがついたりするという、クリーン性、耐汚染性が小さいという欠点があった。
【0005】
又、畳表は家屋における建築材料であるから、最近はより優れた難燃性、火がついても短時間で消火しうる防炎性、抗菌性等の機能が要求されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-170422号公報
【特許文献2】特開2014-95187号公報
【特許文献3】特開平1-92443号公報
【特許文献4】特開2005-282152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、クリーン性、耐汚染性の優れた畳表を提供することにある。又、異なる目的は、難燃性、火がついても短時間で消火しうる防炎性、抗菌性等の優れた畳表を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
[1]300~2000デニールの熱可塑性樹脂単繊維2~10本が撚られてなる樹脂系撚糸を縦糸とし、いぐさを横糸として製織されていることを特徴とする畳表、
[2]熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂又はポリエステル系樹脂であることを特徴とする上記[1]記載の畳表、
[3]熱可塑性樹脂単繊維に、更に、難燃剤及び/又は抗菌剤が練り込まれていることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の畳表、
[4]いぐさが人工いぐさであることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1項記載の畳表、
[5]人工いぐさが、オレフィン系樹脂及び無機充填剤よりなる一軸延伸フィルムを紐状に結束し、得られた結束体を該結束体の直径より狭い空隙部を有する加熱部材の空隙部中を通過させることにより、該結束体の一軸延伸フィルムを互いに不規則且つ部分的に融着結束させると共に、該結束体の表面に融着被膜を形成することにより得られた人工いぐさであることを特徴とする上記[4]記載の畳表、及び、
[6]一軸延伸フィルムに、更に、難燃剤及び/又は抗菌剤が練り込まれていることを特徴とする上記[5]記載の畳表
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の畳表の構成は上述の通りであり、クリーン性及び耐汚染性が優れている。又、難燃性、火がついても短時間で消化しうる防炎性、抗菌性等が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の畳表は、300~2000デニールの熱可塑性樹脂単繊維2~10本が撚られてなる樹脂系撚糸を縦糸とし、いぐさを横糸として製織されていることを特徴とする。
【0011】
上記熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有する任意の樹脂が使用可能であり、例えば、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン―1-ペンテン共重合体、エチレン―1-ヘキセン共重合体などのエチレン系樹脂、その他のオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられ、ポリプロピレン系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましい。
【0012】
上記樹脂系撚糸は、熱可塑性樹脂単繊維が撚られてなる樹脂系撚糸であり、熱可塑性樹脂単繊維は熱可塑性樹脂を押出成形した単なる糸状の繊維である。熱可塑性樹脂単繊維の太さは細くなると、撚った際に水の吸水量や保水量が多くなり、味噌汁、コーヒー等をこぼした場合、長時間こぼれたままで放置すると、樹脂系撚糸まで含浸し、容易にふき取ることができず、クリーン性、耐汚染性が小さくなる。又、太くなると撚るのが困難なると共に撚られた樹脂系撚糸が太くなり、畳表の縦糸として使用できなくなるので300~2000デニールである。
【0013】
撚られている熱可塑性樹脂単繊維の本数は、少なくなると機械的強度が小さくなり、多くなると撚られた樹脂系撚糸は味噌汁、コーヒー等をこぼした場合、長時間こぼれたままで放置すると、樹脂系撚糸まで含浸し、容易にふき取ることができず、クリーン性、耐汚染性が小さくなると共に太くなりすぎて、製織が困難となり、畳表の縦糸として使用できなくなる。従って、撚られる熱可塑性樹脂単繊維の本数は2~10本であり、好ましくは3~5本である。又、樹脂系撚糸の太さは、特に限定されないが、畳表の縦糸であるから1000~5000デニールが好ましい。
【0014】
尚、上記熱可塑性樹脂単繊維が撚られてなる樹脂系撚糸とは、複数の熱可塑性樹脂単繊維のみが撚られてなる樹脂系撚糸であり、綿糸、麻糸等の天然糸が混合されて撚られた混合撚糸は含まない。
【0015】
畳表は家屋における建築材料であるからより優れた難燃性や火がついても短時間で消火し得る防炎性が優れているが好ましい。本発明の畳表はいぐさを横糸とし上記樹脂系撚糸を縦糸として製織されているので、畳表の難燃性や防炎性を向上させるには火がついたり高温にさらされた際に縦糸が溶断され横糸がバラバラになるのが好ましい。これは横糸がバラバラになると横糸間に隙間が発生し延焼せず消火されるからである。
【0016】
従って、樹脂系撚糸は溶融し切断された後又は同時に収縮すると、樹脂系撚糸は切断面の上下に間隙ができると共に切断面に位置する横糸は樹脂系撚糸が融着して切断面上下に引っ張られ上下に間隙ができるので樹脂系撚糸は加熱収縮性を有するのが好ましく、加熱収縮率は3%以上であるのが好ましい。
【0017】
尚、加熱収縮率は樹脂系撚糸を60℃の雰囲気下、無負荷で6時間加熱した際の収縮比率であり、下記式により計算される。
加熱収縮率(%)=(加熱前の樹脂系撚糸の長さ-加熱後の樹脂系撚糸の長さ)×100/加熱前の樹脂系撚糸の長さ
【0018】
樹脂系撚糸に加熱収縮性を付与する方法は、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、撚る前の熱可塑性樹脂単繊維を一軸延伸する等方法が挙げられる。
【0019】
畳表の難燃性、火がついても短時間で消火しうる防炎性、抗菌性等を向上させるために熱可塑性樹脂単繊維に、難燃剤及び/又は抗菌剤が添加されるのが好ましい。又、難燃剤及び/又は抗菌剤は熱可塑性樹脂単繊維の表面に塗布したのでは経時により剥離除去され効果が低下するので、熱可塑性樹脂単繊維に練り込まれているのが好ましい。
【0020】
上記難燃剤としては、従来から熱可塑性樹脂成型品の成形に使用されている公知の任意の難燃剤が使用可能であり、例えば、グラファイト系難燃剤、メラミン系化合物やグアニジン系化合物などの窒素系難燃剤、赤リン系難燃剤、リン酸アンモニウムなどのリン系難燃剤、シリコン系難燃剤、臭素系難燃剤等が挙げられ、臭素系難燃剤が好ましい。
【0021】
上記抗菌剤としては、従来公知の任意の抗菌剤が使用可能であり、例えば、抗菌作用を有する金属(例えば、銀、亜鉛、銅等)や金属イオンを無機系担体に担持させた無機系の金属イオン化合物(例えば、東亜合成社製、商品名「ノバロン」)、ニトリル系化合物、ピリジン系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物、ベンズイミダゾール化合物、わさび成分(アリルイソチオシアネート)等が挙げられ、亜鉛系金属イオン化合物が好ましい。
【0022】
又、更に、熱可塑性樹脂単繊維に防ダニ剤、防カビ剤、消臭剤、無機充填剤、着色剤等が必要に応じて練り込まれていてもよい。
【0023】
上記防ダニ剤としては、例えば、ピレスロイド系化合物、有機リン系化合物、カーバメイト系化合物等が挙げられ、上記防カビ剤としては、例えば、柿渋、木酢液、ヒノキ精油、ヒバ精油、ワサビ、カテキン、木酢液などの天然物、チアベンダゾール、ジフェニル、オルトフェニルフェノールなどの有機化合物、酸化チタンなどの無機化合物等が挙げられ、又、上記消臭剤としては、例えば、木炭、竹炭、活性炭、備長炭などの炭素材料や、シリカ、アルミナ、ゼオライト等が挙げられる。
【0024】
上記無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、クレー等が挙げられる。
【0025】
上記着色剤としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。
【0026】
更に、必要に応じて、フェノール系抗酸化剤、芳香族アミン系酸化防止剤等の酸化防止剤、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤、カチオン系、非イオン系等の帯電防止剤、衝撃改良剤等が練り込まれていてもよい。
【0027】
上記いぐさは天然いぐさでも紙や熱可塑性樹脂から製造された人工いぐさでもよいが、オレフィン系樹脂及び無機充填剤よりなる一軸延伸フィルムを紐状に結束し、得られた結束体を該結束体の直径より狭い空隙部を有する加熱部材の空隙部中を通過させることにより、該結束体の一軸延伸フィルムを互いに不規則且つ部分的に融着結束させると共に、該結束体の表面に融着被膜を形成することにより得られた人工いぐさが好ましい。
【0028】
上記いぐさの太さは、特に限定されないが、一般に直径0.5~5mmであり、0.8~3mmが好ましい。又、人工いぐさは緻密であると重くなると共に硬くなり、断熱性、耐衝撃性、遮蔽性等が低下するので、15~50%の空隙率を有するのが好ましい。
【0029】
尚、空隙率とは、人工いぐさ中に存在する、空気を有する気泡の体積比率である。気泡は独立気泡のみならず連続気泡であってもよく、連続気泡は人工いぐさの外部に連通していてもよい。
【0030】
上記一軸延伸フィルムは、オレフィン系樹脂及び無機充填剤よりなる樹脂フィルムを一軸延伸したフィルムである。
【0031】
上記オレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン―1-ペンテン共重合体、エチレン―1-ヘキセン共重合体等が挙げられ、高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0032】
上記無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、クレー等が挙げられる。
【0033】
樹脂フィルム中に無機充填剤が含有されていると、樹脂フィルムを一軸延伸した際に、含まれる無機充填剤を核として一軸延伸フィルム中に空隙が形成され、軽量になり、断熱性、クッション性等が向上するので、熱可塑性樹脂100重量部に対し10~50重量部の無機充填剤が添加されているのが好ましい。
【0034】
又、畳表の難燃性、火がついても短時間で消火しうる防炎性、抗菌性等を向上させるために上記樹脂フィルムに、難燃剤及び/又は抗菌剤が添加されるのが好ましい。熱可塑性樹脂単繊維の表面に塗布したのでは経時により剥離除去され効果が低下するので、上記樹脂フィルムに練り込まれているのが好ましい。
【0035】
上記難燃剤及び抗菌剤は前記の通りであり、更に、前記防ダニ剤、防カビ剤、消臭剤、着色剤等が必要に応じて練り込まれていてもよい。
【0036】
上記樹脂フィルムの製造方法は、従来公知の任意の製造方法が採用可能であり、例えば、上記オレフィン系樹脂及び無機充填剤等よりなる樹脂組成物を押出法、Tダイ法、キャスティング法、カレンダー法、インフレーション法、プレス法等の製膜法が挙げられる。
【0037】
上記一軸延伸フィルムは、上記樹脂フィルムを一軸延伸したものであり、一軸延伸方法は、従来公知の任意の方法が採用されればよく、例えば、ロール一軸延伸法、ゾーン一軸延伸法等が挙げられる。
【0038】
一軸延伸温度は、低くなると均一に延伸できず、高くなると樹脂フィルムが溶融切断するので、延伸する樹脂フィルムのオレフィン系樹脂の「融点-60℃」~融点の範囲が好ましく、より好ましくは、オレフィン系樹脂の「融点-50℃」~「融点-5℃」である。
【0039】
一軸延伸倍率は、倍率が低くなると機械的強度が低下し大きくなると硬くなっていぐさとしての風合いが低下するので2~10倍が好ましい。又、上記一軸延伸フィルムの厚さは5~20μmが好ましい。
【0040】
上記結束体は、上記一軸延伸フィルムを紐状に結束することにより形成される。結束方法は特に限定されず、例えば、上記一軸延伸フィルムを一軸延伸方向に沿って折り畳んで結束する方法、細幅の上記一軸延伸フィルムを撚糸状に撚り合わす方法、細幅の上記一軸延伸フィルムを組紐状に組み合わせる方法等が挙げられ、折り畳んで結束する方法が好ましい。
【0041】
次に、上記結束体を、結束体の直径より狭い空隙部を有する加熱部材の空隙部中を通過させることにより、上記一軸延伸フィルムを互いに不規則に融着収束させると共に表面に融着被膜を形成することにより人工いぐさが得られる。
【0042】
上記加熱部材は、加熱可能であり、結束体の直径より狭く且つ、結束体を通過させることが可能な狭い空隙部を有するものであればよいが、結束体を狭い空隙を通過させることにより、上記一軸延伸フィルムを互いに不規則に融着収束させると共に表面に融着被膜を形成するのであるから、空隙部の直径は結束体の直径の40~90%が好ましい。又、空隙部の断面形状は、得ようとする人工いぐさの断面形状と略同一であればよく、例えば、円形、楕円形、四角形、六角形、八角形等が好ましい。
【0043】
又、空隙部の出口付近に、形成された融着被膜にしわや貫通孔が形成されるように突起が形成されていてもよい。形成された融着被膜に貫通孔が形成されると、融着被膜内の空隙部が外気と連通され、吸湿性、断熱性等がより向上するので好ましい。
【0044】
上記加熱部材の加熱温度は、結束体を加熱部材の空隙部中を通過させることにより、上記一軸延伸フィルムを互いに不規則に融着結束させると共に表面に融着被膜を形成するのであるから、上記一軸延伸フィルムのオレフィン系樹脂の融点以上であり、好ましくは、オレフィン系樹脂の「融点+100℃」~「融点+150℃」である。
【0045】
結束体を加熱部材の空隙部中を通過させる速度は、遅くなると一軸延伸フィルムの融着率が高くなって、空隙率が減少して、重くなると共に硬くなり、逆に早くなると表面に融着被膜が形成しにくくなるので、加熱温度にもよるが、一般に、15~75m/分が好ましい。
【0046】
本発明の畳表は、上記樹脂系撚糸を縦糸とし、いぐさを横糸として製織されているが、製織方法は特に限定されず、従来公知の任意の製織方法が可能であり、例えば、引き目織、目積織り、平織、綾織等が挙げられる。
【0047】
又、畳表においては、機械的強度が向上するように、互いに隣り合ういぐさは互いに密着して製織され、互いに隣り合う縦糸は、従来の畳表と同様に、2~30mm間隔で製織されているのが好ましい。
【実施例0048】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0049】
熱可塑性樹脂単繊維の製造
表1に示した所定量のポリプロピレン樹脂(密度0.9g/cm3、融点155~165℃)、ポリエステル樹脂、臭素系難燃剤(大日精化工業社製、商品名「ダイフネン」)及び亜鉛系抗菌剤(東亜合成社製、商品名「ノバロン」)よりなる樹脂組成物を一軸混錬押出機に供給し210℃で溶融混錬押出して、表1に示すデニールの熱可塑性樹脂単繊維(1)、(2)、(3)及び(4)を得た。
【0050】
【0051】
樹脂系撚糸の製造
上記熱可塑性樹脂単繊維(1)、(2)、(3)及び(4)をそれぞれ5本束ねて撚ることにより2500デニールの樹脂系撚糸(1)及び(2)並びに5000デニールの樹脂系撚糸(3)及び(4)を得た。又、樹脂系撚糸(1)2本と550デニールの綿糸3本束ねて撚ることにより2650デニールの混合撚糸を得た。
【0052】
撚糸の吸水・保水性試験
得られた長さ10mの上記樹脂系撚糸(1)及び(4)並びに混合撚糸を25℃、湿度50%の雰囲気下で2時間以上調整した後、1時間水に浸漬した。浸漬後、取り出して、25℃、湿度50%の雰囲気下で乾燥し、表2に示した所定の乾燥時間ごとに撚糸の重量を測定し、結果を表2に示した。尚、水浸漬前の撚糸の重量を0とし、所定の乾燥時間ごとの撚糸の重量増加率を%で示した。
【0053】
加熱収縮率
得られた長さ10cmの上記樹脂系撚糸(1)及び(4)並びに混合撚糸を60℃に設定されたギアオーブンに供給し、無負荷で6時間加熱して加熱収縮率を測定し、結果を表2に示した。
【0054】
【0055】
(実施例1~4、比較例1、2)
人工いぐさの製造
ポリプロピレン樹脂(密度0.9g/cm3、融点155~165℃)100重量部、炭酸カルシウム27重量部及びアゾ系無機顔料2.0重量部並びに表3に示した所定量の臭素系難燃剤(大日精化工業社製、商品名「ダイフネン」)及び亜鉛系抗菌剤(東亜合成社製、商品名「ノバロン」)よりなる樹脂組成物をスクリュー70mmの一軸混錬押出機に供給して210℃で混錬押出して厚さ100μmのポリプロピレン樹脂フィルムを得た。
【0056】
得られたポリプロピレン樹脂フィルムを120℃に設定された熱板方式の一軸延伸装置に供給し、5倍に延伸して、厚さ20μmの一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムを一軸延伸方向に折り畳んで、直径2.0mmの貫通孔を通過させ紐状に成形した直径2.0mmの結束体を得た。得られた直径2.0mmの結束体を直径1.0mmの断面円形の空隙部を有する加熱部材に供給し、空隙部を65m/分の速度で通過させて人工いぐさ(1)、(2)、(3)及び(4)を得た。
【0057】
加熱部材は300℃に加熱されており、空隙部の出口付近に高さ0.05mmで先の尖った突起が45度間隔に8本立設されていた。得られた人工いぐさは、テープ状体が部分的に融着されていると共に表面に融着被膜が形成され、融着被膜にはランダムに貫通孔や凹凸が形成されていた。又、得られた人工いぐさは黒色であり、その直径は約1.1mm、空隙率は33%であった。又、人工いぐさ(1)、(2)、(3)及び(4)をJIS K7127に準拠し、チャック間距離200mm、引張速度300mm/minで機械的特性を測定したところ、長さ方向の破断強度は9.5~9.8Nであり、破断伸度は9~11%であった。
【0058】
【0059】
畳表の製造
表4及び5に示した所定の人工いぐさを横糸とし、撚糸を縦糸とし、縦糸の間隔4mm及び横糸の打ち込み数は90本/10cmに設定し、表4及び5に示した所定の製織方法で製織して畳表を得た。
【0060】
又、比較例2として、天然いぐさを横糸とし、上記樹脂系撚糸(2)を縦糸とし、縦糸の間隔4mm、横糸の打ち込み数は90本/10cmに設定し、引き目織で製織して畳表を得た。
【0061】
得られた畳表を切断して、3枚の試料を作成し、消防法施行規則第4条「じゅうたん」に準拠して燃焼試験を行い、残炎時間及び炭化長さを測定し、結果を表4及び5に示した。又、残炎時間20秒以下で炭化長さが10cm以下のものを総合評価○とし、それ以上の点が1か所でもあれば×とした。
【0062】
又、JIS Z2801-2012に準拠して抗菌性の評価を行い、抗菌活性値2,0以上を示した場合、〇とし、それ以下の場合は×とした。得られた結果を表4及び5に示した。結果を表4及び5に示した。
【0063】
【0064】
【0065】
実施例1、4及び比較例1、2で得られた畳表を10×10cmに切断して正方形の試料を作成し、前記撚糸の吸水・保水性試験で行ったと同様にして吸水・保水性試験を行い、結果を表5に示した。
【0066】
本発明の畳表はクリーン性、耐汚染性等が優れていると共に、難燃性、火がついても短時間で消火しうる防炎性、抗菌性等効果を適宜付与することができるので、建築部材として好適に使用できる。