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特開2022-90922炭化珪素半導体装置およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090922
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20220613BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 21/283 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652H
H01L29/78 652G
H01L29/86 301D
H01L29/86 301P
H01L29/78 655A
H01L29/78 658F
H01L21/28 301B
H01L21/283 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203511
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 啓道
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB02
4M104BB14
4M104CC01
4M104DD21
4M104DD37
4M104EE02
4M104EE14
4M104EE18
4M104FF02
4M104FF17
4M104FF27
4M104FF31
4M104GG03
4M104GG09
4M104GG18
4M104HH12
(57)【要約】
【課題】炭化珪素半導体装置の裏面電極の平坦性を向上させる。
【解決手段】SiCウェハ20の表面20a側に、不純物層21等の表面側素子構造を形成する。その後、SiCウェハ20の裏面20b側を除去して、SiCウェハ20を所望の厚さまで薄板化する。その後、SiCウェハ20の裏面20bに閉塞材料を成膜し、マイクロパイプ15のみに閉塞材料が残存するように、閉塞材料を除去する。これにより、SiCウェハ20の裏面20bの一部を構成する一面16aを有する閉塞部16を形成する。その後、閉塞部16の一面16aを含むSiCウェハ20の裏面20bに対して、裏面電極23を形成する。これによれば、閉塞部16を形成しない場合と比較して、裏面電極23の平坦性を向上させることができる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型の半導体素子を備える炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
表面(20a)と裏面(20b)とを有するとともに、結晶欠陥による穴部(15)が前記裏面に存在する炭化珪素半導体基板(20)を用意することと、
前記炭化珪素半導体基板の前記表面側に対して、前記半導体素子の一部を構成する表面側素子構造(11~13、32~41)を形成することと、
前記表面側素子構造を形成した後、前記炭化珪素半導体基板の前記裏面側を除去して、前記炭化珪素半導体基板を薄板化することと、
前記炭化珪素半導体基板を薄板化した後、前記裏面に閉塞材料(22)を成膜することと、
前記穴部のうち少なくとも前記裏面側の部分に前記閉塞材料が存在し、かつ、前記裏面のうち前記穴部を除く領域が前記閉塞材料から露出した状態となるように、前記閉塞材料を除去することで、前記裏面の一部を構成する一面(16a)を有し、前記裏面において前記穴部を閉塞する閉塞部(16)を形成することと、
前記閉塞部の前記一面を含む前記裏面に対して、裏面電極(23)を形成することと、を含む、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記閉塞材料を成膜することにおいて、前記閉塞材料を成膜する成膜温度は、前記表面側素子構造を構成する部材の融解、軟化または変形が生じる温度よりも低い温度とされる、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記閉塞部を形成した後であって、前記裏面電極を形成する前に、前記閉塞部の前記一面を含む前記炭化珪素半導体基板の前記裏面を平坦化することを含む、請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
縦型の半導体素子を備える炭化珪素半導体装置であって、
表面(10a、31a)と裏面(10b、31b)とを有するとともに、結晶欠陥による穴部(15)が前記裏面に存在する炭化珪素半導体基板(10、31)と、
前記炭化珪素半導体基板の前記表面側に形成され、前記半導体素子の一部を構成する表面側素子構造(11~13、32~41)と、
前記裏面のうち前記穴部のみに存在し、前記裏面の一部を構成する一面(16a)を有し、前記裏面において前記穴部を閉塞する閉塞部(16)と、
前記閉塞部の前記一面を含む前記裏面に形成された裏面電極(14、42)と、を備える炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)によって構成される半導体素子を備えるSiC半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SiC半導体装置に用いられるSiC基板には、マイクロパイプ等の結晶欠陥が存在することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-172556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縦型の半導体素子を備えるSiC半導体装置は、次の手順によって製造される。まず、表面と裏面とを有するSiC基板を用意する。用意したSiC基板の表面側に、表面側素子構造を形成する。表面側素子構造は、半導体素子の一部を構成する部分である。その後、SiC基板の裏面側を除去して、SiC基板を薄板化する。そして、SiC基板の裏面に対して、裏面電極を形成する。
【0005】
ここで、裏面電極を形成するときに、SiC基板の裏面にマイクロパイプが存在すると、裏面電極の一部がマイクロパイプに入り込むことで、裏面電極に窪みが発生し、裏面電極の平坦性が悪化する。裏面電極の平坦性が悪化すると、半導体装置の抗折強度が低下する。抗折強度は、半導体素子の信頼性と相関があることが知られている。このため、裏面電極の平坦性の悪化により、抗折強度が低下することは、好ましくない。なお、裏面電極の平坦性が悪化するという問題は、マイクロパイプ以外の結晶欠陥による穴部が、SiC基板の裏面に存在する場合においても生じる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、裏面電極の平坦性を向上させることができるSiC半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、縦型の半導体素子を備えるSiC半導体装置の製造方法は、
表面(20a)と裏面(20b)とを有するとともに、結晶欠陥による穴部(15)が裏面に存在するSiC半導体基板(20)を用意することと、
SiC半導体基板の表面側に対して、半導体素子の一部を構成する表面側素子構造(11~13、32~41)を形成することと、
表面側素子構造を形成した後、SiC半導体基板の裏面側を除去して、SiC半導体基板を薄板化することと、
SiC半導体基板を薄板化した後、裏面に閉塞材料(22)を成膜することと、
穴部のうち少なくとも裏面側の部分に閉塞材料が存在し、かつ、裏面のうち穴部を除く領域が閉塞材料から露出した状態となるように、閉塞材料を除去することで、裏面の一部を構成する一面(16a)を有し、裏面において穴部を閉塞する閉塞部(16)を形成することと、
閉塞部の一面を含む裏面に対して、裏面電極(23)を形成することと、を含む。
【0008】
これによれば、裏面電極を形成するときに、閉塞部の一面によって裏面電極が穴部へ入り込むことを抑制することできる。このため、裏面電極の窪みの発生を抑制することができる。よって、これによれば、閉塞部を形成しない場合と比較して、裏面電極の平坦性を向上させることができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明によれば、縦型の半導体素子を備えるSiC半導体装置は、
表面(10a、31a)と裏面(10b、31b)とを有するとともに、結晶欠陥による穴部(15)が裏面に存在するSiC半導体基板(10、31)と、
SiC半導体基板の表面側に形成され、半導体素子の一部を構成する表面側素子構造(11~13、32~41)と、
裏面のうち穴部のみに存在し、裏面の一部を構成する一面(16a)を有し、裏面において穴部を閉塞する閉塞部(16)と、
閉塞部の一面を含む裏面に形成された裏面電極(14、42)と、を備える。
【0010】
これによれば、裏面電極は、閉塞部の一面を含むSiC半導体基板の裏面に形成されている。このため、SiC半導体装置が閉塞部を備えていない場合と比較して、裏面電極の平坦性を向上させることができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における半導体装置の断面図である。
図2図1に示す半導体装置の製造工程を示した図である。
図3図2に続く半導体装置の製造工程を示した図である。
図4図3に続く半導体装置の製造工程を示した図である。
図5図4に続く半導体装置の製造工程を示した図である。
図6図5に続く半導体装置の製造工程を示した図である。
図7図6に続く半導体装置の製造工程を示した図である。
図8】比較例1の半導体装置において、SiC基板の裏面に存在するマイクロパイプ付近に形成された裏面電極の拡大図である。
図9】第1実施形態の半導体装置において、SiC基板の裏面に存在するマイクロパイプ付近に形成された裏面電極の拡大図である。
図10】第2実施形態における半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のSiC半導体装置1は、縦型の半導体素子としてのショットキーダイオードを備える。具体的には、SiC半導体装置1は、n型のSiC基板10と、n型層11と、ショットキー電極12と、保護膜13と、オーミック電極14と、を備える。
【0015】
SiC基板10は、所定のn型の不純物濃度とされた単結晶SiCで構成される半導体基板である。SiC基板10は、表面10aおよびその反対側の裏面10bを有する。n型層11は、SiC基板10の表面10a上に形成されている。n型層11は、SiC基板10よりもn型の不純物濃度が低くされたSiCで構成される。ショットキー電極12は、n型層11の表面上に形成されている。保護膜13は、ショットキー電極12の周囲のn型層11の表面およびショットキー電極12の表面を覆っている。
【0016】
n型層11、ショットキー電極12および保護膜13は、SiC基板10の表面10a側に形成された半導体素子の一部を構成する表面側素子構造である。オーミック電極14は、SiC基板10の裏面10b上に形成された裏面電極である。
【0017】
ショットキー電極12は、アルミニウム等の金属材料で構成されており、n型層11に対してショットキー接触させられている。保護膜13は、ポリイミド等の合成樹脂材料で構成されている。オーミック電極14は、Ti/Ni/Au等の金属材料で構成されている。
【0018】
SiC基板10は、マイクロパイプ15を有する。マイクロパイプ15は、大型のらせん転位であり、SiC単結晶のc軸方向にSiC基板10を貫通する中空の結晶欠陥である。マイクロパイプ15の直径は、例えば100nm以上10μm以下である。マイクロパイプ15は、SiC基板10の表面10aから裏面10bに到達している。このため、SiC基板10の裏面10bには、マイクロパイプ15が存在する。SiC基板10の裏面10bに存在するマイクロパイプ15は、SiC基板10の裏面10bに存在する、結晶欠陥による穴部である。
【0019】
SiC半導体装置1は、SiC基板10の裏面10bにおいてマイクロパイプ15を閉塞する閉塞部16を備える。閉塞部16は、SiC基板10の裏面10bのうちマイクロパイプ15を除く領域に形成されていない。すなわち、閉塞部16は、SiC基板10の裏面10bのうちマイクロパイプ15のみに存在する。閉塞部16は、SiC基板10の裏面10bの一部を構成する一面16aを有する。閉塞部16の一面16aは、SiC基板10の裏面10bのうち閉塞部16を除く領域に対して連続しており、同一平面となっている。閉塞部16の一面16aを含むSiC基板10の裏面10bに対して、オーミック電極14が形成されている。
【0020】
閉塞部16は、マイクロパイプ15の全域に埋め込まれておらず、マイクロパイプ15のうちマイクロパイプ15の延伸方向の裏面10b側の一部のみに存在する。なお、閉塞部16は、マイクロパイプ15の全域に埋め込まれていてもよい。すなわち、閉塞部16は、マイクロパイプ15のその延伸方向での全域に存在していてもよい。
【0021】
次に、本実施形態のSiC半導体装置1の製造方法について、図2~7を用いて説明する。
【0022】
まず、図2に示すように、円盤状のSiC半導体基板であるSiCウェハ20を用意する。SiCウェハ20がSiC基板10に対応する。SiCウェハ20は、表面20aとその反対側の裏面20bとを有する。SiCウェハ20の表面20aがSiC基板10の表面10aに対応する。SiCウェハ20の裏面20bがSiC基板10の裏面10bに対応する。SiCウェハ20は、マイクロパイプ15を含有している。マイクロパイプ15は、SiCウェハ20の表面20aから裏面20bに到達している。したがって、マイクロパイプ15は、SiCウェハ20の表面20aに存在するとともに、SiCウェハ20の裏面20bに存在する。
【0023】
続いて、図3に示すように、SiCウェハ20の表面20a側に、表面側素子構造を形成する。具体的には、SiCウェハ20の表面20a上に、エピタキシャル成長法によって、SiCからなるn型の不純物層21を形成する。不純物層21は、図1中のn型層11に対応する。不純物層21の形成によって、SiCウェハ20の表面20aに存在するマイクロパイプ15は、閉塞される。その後、図示しないが、不純物層21の表面上に、ショットキー電極を形成する。さらに、ショットキー電極の周囲の不純物層21の表面上およびショットキー電極の表面上に、保護膜を形成する。これにより、図1に示すショットキー電極12、保護膜13が形成される。
【0024】
表面側素子構造を形成した後、図4に示すように、SiCウェハ20の裏面20b側を除去して、SiCウェハ20を所望の厚さまで薄板化する。薄板化する方法として、例えば、裏面研削、研磨などを用いることができる。
【0025】
薄板化した後、図5に示すように、SiCウェハ20の裏面20bに存在するマイクロパイプ15を閉塞するように、SiCウェハ20の裏面20b上に閉塞材料22を成膜する。閉塞材料22は、図1中の閉塞部16を形成するための材料である。
【0026】
閉塞材料22を成膜したとき、閉塞材料22は、マイクロパイプ15のうち少なくともSiCウェハ20の裏面20b側の部分に埋め込まれる。すなわち、閉塞材料22は、マイクロパイプ15のうちその延伸方向のSiCウェハ20の裏面20b側の一部に埋め込まれる、または、マイクロパイプ15の全域に埋め込まれる。
【0027】
閉塞材料22を成膜するときには、閉塞材料22のマイクロパイプ15内への入り込み量が閉塞材料22を除去して平坦化した後でも閉塞部16として残る量となるように、SiCウェハ20の裏面20b上での閉塞材料22の膜厚が調整される。
【0028】
閉塞材料22として、導電材料、絶縁材料のどちらを用いてもよいが、導電材料を用いると閉塞材料22が表面20aに達するまで埋め込まれたときに表裏が導通してしまうため、絶縁材料を用いることが好ましい。閉塞材料22としては、例えば、カーボン、SiO等が挙げられる。閉塞材料22がカーボンである場合、成膜方法としてスパッタリング法等が用いられる。閉塞材料22がSiOである場合、成膜方法としてプラズマCVD法、スピンコート法等が用いられる。
【0029】
また、閉塞材料22を成膜するときの成膜温度は、表面側素子構造を構成する部材の融解、軟化または変形が生じる温度よりも低い温度とされる。以下では、融解、軟化または変形が生じる温度を単に融解等が生じる温度ともいう。具体的には、保護膜13として、融点が350℃であるポリイミド膜が用いられる場合、閉塞材料22の成膜温度は、350℃よりも低い温度とされる。なお、ショットキー電極12として、アルミニウム膜が用いられる場合、アルミニウム膜の成膜後に、470℃で焼き締めが行われる。この焼き締め温度が、表面側素子構造を構成する部材の融解等が生じる温度に相当する。閉塞材料22の成膜温度は、表面側素子構造を構成する各部材の融解等が生じる温度のうち最も低い温度よりも低い温度とされる。
【0030】
続いて、図6に示すように、閉塞材料22を除去する。これにより、マイクロパイプ15のうち少なくともSiCウェハ20の裏面20b側の部分に閉塞材料22が存在し、かつ、SiCウェハ20の裏面20bのうちマイクロパイプ15を除く領域が閉塞材料22から露出した状態となるようにする。閉塞材料22の除去方法としては、機械的な除去方法である研削および研磨や、化学的な除去方法であるドライエッチング法等が用いられる。このとき、SiCウェハ20の裏面20bのうちマイクロパイプ15を除く領域に閉塞材料22が残らないように、成膜された閉塞材料22の厚さよりも、除去される層の厚さを大きく設定する。また、除去される層の厚さが大きすぎると、マイクロパイプ15に埋め込まれた閉塞材料22の全部が消失するため、閉塞材料22の全部が消失しない範囲に、除去される層の厚さ、すなわち、除去量を設定する。
【0031】
この結果、SiCウェハ20の裏面20bのうちマイクロパイプ15のみに閉塞材料22が残留して、SiCウェハ20の裏面20bの一部を構成する一面16aを有する閉塞部16が形成される。そして、閉塞部16の一面16aを含むSiCウェハ20の裏面20bが平坦化される。
【0032】
続いて、図7に示すように、閉塞部16の一面16aを含むSiCウェハ20の裏面20bに対して、裏面電極23を形成する。裏面電極23は、図1のオーミック電極14に対応する。このとき、例えば、スパッタリング法により、裏面電極23を構成するための導電膜を形成している。
【0033】
その後、図示しないが、SiCウェハ20をダイシングカットする。これにより、図1に示すSiC半導体装置1が製造される。
【0034】
次に、本実施形態の効果について、図8に示す比較例1と対比して説明する。図8に示す比較例1では、SiC半導体装置の製造方法において、閉塞材料22を成膜せずに、SiCウェハ20の裏面20bに対して、裏面電極23を形成する点が、第1実施形態のSiC半導体装置の製造方法と異なる。SiC半導体装置の製造方法の他の手順については、第1実施形態と同じである。
【0035】
比較例1では、裏面電極23を形成するときに、SiCウェハ20の裏面20bに存在するマイクロパイプ15に、裏面電極23の一部が入り込むことで、図8に示すように、裏面電極23に窪みが発生し、裏面電極23の平坦性が悪化する。裏面電極23の平坦性が悪化すると、局所的な応力が増大し、SiC半導体装置の抗折強度が低下する。抗折強度が低下すると、半導体素子の信頼性が低下する。すなわち、機械的応力および熱応力による割れ、チッピング、変形などが生じやすくなる。
【0036】
これに対して、本実施形態のSiC半導体装置1の製造方法では、SiCウェハ20を薄板化した後であって、裏面電極23を形成する前に、図6に示すように、SiCウェハ20の裏面20bの一部を構成する一面16aを有する閉塞部16を形成する。その後、図7、9に示すように、閉塞部16の一面16aを含むSiCウェハ20の裏面20bに対して、裏面電極23を形成する。このようにして、図1に示すように、本実施形態のSiC半導体装置1では、裏面電極であるオーミック電極14は、閉塞部16の一面16aを含むSiC基板10の裏面10bに形成されている。
【0037】
これによれば、裏面電極23を形成するときに、閉塞部16の一面16aによって、裏面電極23のマイクロパイプ15への入り込みを抑制できる。このため、図9に示すように、裏面電極23の窪みの発生を抑制することができ、比較例1と比較して、裏面電極23の平坦性を向上させることができる。よって、SiC半導体装置1の抗折強度の低下を抑制することができる。
【0038】
閉塞部16の一面16aを含むSiCウェハ20の裏面20bは平坦面であることが好ましい。すなわち、閉塞部16の一面16aとSiC基板10の裏面10bのうち閉塞部16を除く領域との間に段差が無いことが好ましい。この場合、裏面電極23の表面を平坦にすることができる。なお、比較例1と比較して、裏面電極23の平坦性が向上していれば、閉塞部16の一面16aを含むSiCウェハ20の裏面20bは、完全な平坦でなくてもよく、平坦に近ければよい。
【0039】
ところで、従来技術として、SiC基板の表面上にエピタキシャル成長法によってSiCを成膜することで、マイクロパイプを閉塞する技術がある(例えば、特許文献1、特開2007-137689号公報参照)。そこで、比較例2のSiC半導体装置の製造方法として、SiCウェハの表面側に表面側素子構造を形成する前に、SiCウェハの裏面に対して、エピタキシャル成長法によってSiCを成膜することが考えられる。この場合、表面側素子構造を形成した後に、SiCウェハの裏面側を除去して、SiCウェハを薄板化する。その後、SiCウェハの裏面に、裏面電極を形成する。
【0040】
しかし、比較例2では、SiCウェハを薄板化する前に、エピタキシャル成長法によってSiCウェハの裏面にSiCを成膜して、マイクロパイプを閉塞するが、SiCウェハの内部のマイクロパイプは空洞のままである。このため、エピタキシャル成長法によってSiCウェハの裏面にSiCを成膜した後に、SiCウェハを薄板化すると、SiCウェハの裏面にマイクロパイプが露出してしまう。
【0041】
これに対して、本実施形態では、SiCウェハ20を薄板化した後に、SiCウェハ20の裏面20bに閉塞部16を形成するので、SiCウェハ20の裏面20bに存在するマイクロパイプ15を閉塞することができる。
【0042】
また、比較例3のSiC半導体装置の製造方法として、SiCウェハの表面側に表面側素子構造を形成し、SiCウェハの裏面側を除去してSiCウェハを薄板化した後に、SiCウェハの裏面に対して、エピタキシャル成長法によってSiCを成膜することが考えられる。しかし、エピタキシャル成長は、1600℃以上の高温処理によって行われるため、ショットキー電極12、保護膜13等の表面側素子構造を構成する部材が融解してしまう。このため、比較例3のSiC半導体装置の製造方法は実施できない。
【0043】
また、従来技術として、SiC基板の裏面に対して、高耐熱材料としてのスピンオングラス(すなわち、SOG)を塗布して、マイクロパイプ内に流し込み、500℃で焼結させることで、マイクロパイプの全域にSOGを隙間なく埋め込む技術がある(例えば、特開2006-278609号公報参照)。そこで、比較例4のSiC半導体装置の製造方法として、SiCウェハの表面側に表面側素子構造を形成する前に、SiCウェハの裏面に対して、SOGを塗布してマイクロパイプの全域にSOGを隙間なく埋め込むことが考えられる。この場合、表面側素子構造を形成した後に、SiCウェハの裏面側を除去して、SiCウェハを薄板化する。その後、SiCウェハの裏面に、裏面電極を形成する。
【0044】
しかしながら、表面側素子構造の一部としてSiCからなる層を形成するときに、SiC特有の1600℃以上の活性加熱処理が行われる。このため、比較例4では、この活性化熱処理で、マイクロパイプに埋め込まれたSOGが融解し、SiCウェハの裏面にマイクロパイプが露出してしまう。よって、比較例4のSiC半導体装置の製造方法は実施できない。
【0045】
また、比較例5のSiC半導体装置の製造方法として、比較例4で示したSOGの形成を表面側素子構造形成後に行うことが考えられる。すなわち、SiCウェハの表面側に表面側素子構造を形成し、SiCウェハの裏面側を除去してSiCウェハを薄板化した後に、SiCウェハの裏面に対して、SOGを塗布してマイクロパイプ内に流し込み、500℃で焼結させる。しかしながら、表面側素子構造を構成する部材が500℃で加熱されると、融解、軟化または変形が生じる場合、SOGの500℃の焼結処理時に、表面側素子構造が融解、軟化または変形する。例えば、保護膜としてポリイミド膜が用いられる場合、SOGの500℃の焼結処理時に、ポリイミド膜が融解する。また、ショットキー電極としてアルミニウム電極が用いられる場合、SOGの500℃の焼結処理時に、アルミニウム電極が軟化し、変形する。このため、表面側素子構造を維持することができない。よって、比較例5のSiC半導体装置の製造方法は実施できない。
【0046】
これに対して、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法では、閉塞材料22を成膜するときの成膜温度は、表面側素子構造を構成する部材の融解等が生じる温度よりも低い温度とされる。これにより、閉塞材料22の成膜時に、表面側素子構造を構成する部材の融解、軟化または変形を防止することができ、表面側素子構造を維持することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図10に示すように、本実施形態のSiC半導体装置1Aは、縦型の半導体素子としての縦型MOSFETを備える。具体的には、SiC半導体装置1Aは、n型のSiC基板31と、n型のドリフト層32と、p型のベース領域33と、n型のソース領域34と、ディープ層35など、を備える。
【0048】
SiC基板31は、所定のn型の不純物濃度とされた単結晶SiCで構成される半導体基板である。SiC基板31は、表面31aおよびその反対側の裏面31bを有する。ドリフト層32は、SiC基板31の表面31a上に形成されている。ドリフト層32は、SiC基板31よりもn型の不純物濃度が低くされたSiCで構成される。ベース領域33は、ドリフト層32の上に形成されている。ベース領域33は、p型のSiCで構成される。ベース領域33のうち表層部は、p型の不純物濃度が高くされたコンタクト領域33aとされている。ソース領域34は、ベース領域33の上に形成されている。ソース領域34は、ドリフト層32よりもn型の不純物濃度が高くされたSiCで構成される。ドリフト層32の表層部には、p型のディープ層35が形成されている。ディープ層35は、ベース領域33よりもp型の不純物濃度が高くされている。
【0049】
また、SiC半導体装置1Aは、ゲート絶縁膜37と、ゲート電極38と、層間絶縁膜39と、ソース電極40と、保護膜41と、ドレイン電極42と、を備える。
【0050】
SiC基板31の表面31a側には、ベース領域33およびソース領域34を貫通してドリフト層32に達するゲートトレンチ36が形成されている。ベース領域33のうちゲートトレンチ36の側面に位置している部分は、縦型MOSFETの作動時にソース領域34とドリフト層32との間を繋ぐチャネル領域とされる。このチャネル領域を含むゲートトレンチ36の内壁面に、ゲート絶縁膜37が形成されている。このように、ゲート絶縁膜37は、ドリフト層32とソース領域34との間におけるベース領域33の表面に形成されている。
【0051】
ゲート電極38は、ゲートトレンチ36を埋めるように、ゲート絶縁膜37の上に形成されている。ゲート電極38およびゲート絶縁膜37によって、ゲートトレンチ36内が埋め込まれている。層間絶縁膜39は、ゲート電極38およびゲート絶縁膜37を覆っている。層間絶縁膜39には、コンタクトホール39aが形成されている。ソース電極40は、層間絶縁膜39の上に形成されている。ソース電極40は、コンタクトホール39aを通じて、ソース領域34に電気的に接続されている。ソース電極40は、アルミニウム等の金属材料で構成されている。保護膜41は、ソース電極40を覆っている。保護膜41は、ポリイミド等の合成樹脂材料で構成されている。
【0052】
ドリフト層32、ベース領域33、ソース領域34、ディープ層35、ゲートトレンチ36、ゲート絶縁膜37、ゲート電極38、層間絶縁膜39、ソース電極40および保護膜41は、SiC基板31の表面31a側に形成された半導体素子の一部を構成する表面側素子構造である。ドレイン電極42は、SiC基板31の裏面31bに形成された裏面電極である。
【0053】
第1実施形態と同様に、SiC基板31は、マイクロパイプ15を有する。SiC基板31の裏面31bには、マイクロパイプ15が存在する。第1実施形態と同様に、SiC半導体装置1Aは、SiC基板31の裏面31bにおいてマイクロパイプ15を閉塞する閉塞部16を備える。閉塞部16の説明については、第1実施形態と同じである。閉塞部16の一面16aを含むSiC基板31の裏面31bに対して、ドレイン電極42が形成されている。
【0054】
本実施形態のSiC半導体装置1Aの製造方法は、表面側素子構造の形成を除き、第1実施形態と同じである。本実施形態では、第1実施形態で説明したSiCウェハ20がSiC基板31に対応する。SiCウェハ20の表面20aがSiC基板31の表面31aに対応する。SiCウェハ20の裏面20bがSiC基板31の裏面31bに対応する。裏面電極23がドレイン電極42に対応する。
【0055】
表面側素子構造を形成するときでは、図3に示すように、SiCウェハ20の表面20a上に、エピタキシャル成長法によって、SiCからなるn型の不純物層21を形成する。不純物層21は、図10中のドリフト層32に対応する。その後、図10に示すように、ドリフト層32に対してp型不純物をイオン注入することで、p型のディープ層35を形成する。ディープ層35を形成したドリフト層32の上に、ベース領域33およびソース領域34を形成する。例えば、ベース領域33およびソース領域34をエピタキシャル成長させた後、p型不純物をイオン注入することで、ベース領域33のコンタクト領域33aを形成する。なお、ベース領域33をエピタキシャル成長させた後、n型不純物をイオン注入することで、ソース領域34を形成してもよい。その後、ゲートトレンチ36、ゲート絶縁膜37、ゲート電極38、層間絶縁膜39、ソース電極40および保護膜41を形成する。これにより、表面側素子構造が形成される。
【0056】
以上の説明の通り、本実施形態のSiC半導体装置1Aの製造方法は、表面側素子構造の形成を除き、第1実施形態と同じである。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0057】
なお、本実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプの縦型MOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプの縦型MOSFETとしても良い。また、上記説明では、MOS構造を有する半導体素子として縦型MOSFETを例に挙げて説明したが、同様のMOS構造を有するIGBTに対しても本発明を適用することができる。nチャネルタイプのIGBTの場合、本実施形態に対してSiC基板31の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては本実施形態と同様である。さらに、トレンチゲート型のMOS構造に限らず、プレーナ型のMOS構造の半導体素子であっても良い。すなわちドリフト層とソース領域との間におけるベース領域の表面にゲート絶縁膜が形成され、このゲート絶縁膜の上にゲート電極が配置された構造であれば、トレンチゲート型であってもプレーナ型であっても良い。
【0058】
(他の実施形態)
(1)上記した各実施形態では、SiC半導体装置1、1Aの製造方法において、閉塞材料22を除去して閉塞部16を形成した後に、SiCウェハ20の裏面20bに対して裏面電極23を形成する。これらのSiC半導体装置1、1Aの製造方法において、閉塞部16を形成した後であって、裏面電極23を形成する前に、閉塞部16の一面16aを含むSiCウェハ20の裏面20bをCMP(すなわち、化学機械研磨)等によって平坦化することを追加してもよい。これによれば、閉塞部16の一面16aを含むSiCウェハ20の裏面20bの平坦性をさらに向上させることができ、裏面電極23の平坦性をさらに向上させることができる。
【0059】
(2)上記した各実施形態では、SiC基板10、31およびSiCウェハ20の裏面にマイクロパイプ15が存在するが、マイクロパイプ以外の結晶欠陥による穴部が存在する場合においても、本発明の適用が可能である。結晶欠陥による穴部とは、結晶欠陥に起因して生じた穴部のことである。この穴部は、SiC基板10、31およびSiCウェハ20を貫通するもの、貫通しないもののどちらでもよい。
【0060】
(3)第1実施形態のSiC半導体装置は、ダイオード構造の半導体素子を備える。第2実施形態のSiC半導体装置は、MOS構造の半導体素子を備える。しかしながら、SiC半導体装置は、他の構造の縦型の半導体素子を備えていてもよい
【0061】
(4)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
10 SiC基板
10b 裏面
14 ショットキー電極
15 マイクロパイプ
16 閉塞部
16a 一面
20 SiCウェハ
20b 裏面
23 裏面電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10