IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山本 泰弘の特許一覧 ▶ 高橋 剛の特許一覧

特開2022-90972軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022090972
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/32 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
C10L1/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203608
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】516047979
【氏名又は名称】山本 泰弘
(71)【出願人】
【識別番号】516047980
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013DC00
4H013DC07
(57)【要約】
【課題】
エマルジョン燃料においては、種々の要因が重なり、一部で試験的に運用されている例はあるものの、市場での十分な普及には至っていないのが現状である。
【解決手段】
界面活性剤からなる第1液と、水道水、浄水、改質水のいずれかからなる水と、植物油を主原料とするバイオ燃料からなる第2液とを混合させて得られる環境によく適合する添加剤を、
軽油又は重油に含有させて得られる燃料であって、
前記燃料の燃焼時の排ガス濃度の汚染数値を軽減することができ、
特にSOXに関しては汚染数値が半減され、
使用する軽油又は重油の硫黄分が半減され、
基油を減らして前記添加剤を投入した分だけ硫黄分やSOXを減少させることができるようにしたことを特徴とする軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤からなる第1液を、軽油又は重油に含有させて得られる燃料であって、
前記燃料の燃焼時の排ガス濃度の汚染数値を軽減することができ、
特にSOXに関しては汚染数値が半減され、
使用する軽油又は重油の硫黄分が半減され、
基油を減らして前記添加剤を投入した分だけ硫黄分やSOXを減少させることができるようにしたことを特徴とする軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。
【請求項2】
界面活性剤からなる第1液と、植物油を主原料とするバイオ燃料からなる第2液とを混合させて得られる環境によく適合する添加剤を、軽油又は重油に含有させて得られる燃料であって、
前記燃料の燃焼時の排ガス濃度の汚染数値を軽減することができ、
特にSOXに関しては汚染数値が半減され、
使用する軽油又は重油の硫黄分が半減され、
基油を減らして前記添加剤を投入した分だけ硫黄分やSOXを減少させることができるようにしたことを特徴とする軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。
【請求項3】
界面活性剤からなる第1液と、水道水、浄水、改質水のいずれかからなる水と、植物油を主原料とするバイオ燃料からなる第2液とを混合させて得られる環境によく適合する添加剤を、
軽油又は重油に含有させて得られる燃料であって、
前記燃料の燃焼時の排ガス濃度の汚染数値を軽減することができ、
特にSOXに関しては汚染数値が半減され、
使用する軽油又は重油の硫黄分が半減され、
基油を減らして前記添加剤を投入した分だけ硫黄分やSOXを減少させることができるようにしたことを特徴とする軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。
【請求項4】
前記第1液が、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸又はメリシン酸からなる群から選択される炭素数が16以上の脂肪酸を主原料とする界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。
【請求項5】
前記第1液が、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコールからなる群から選ばれる1種類または複数種類のバイオマスから合成可能なアルコールを配合してなるものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。
【請求項6】
前記第2液が、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコールからなる群から選ばれる1種類または複数種類のバイオマスから合成可能なアルコールを主原料とするものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。
【請求項7】
前記第1液が、オレイン酸と、イソプロピルアルコールからなる混合液であって、
前記オレイン酸60重量%~80重量%に対して、前記イソプロピルアルコール15重量%~30重量%を投入して十分に攪拌して得られる混合液であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。
【請求項8】
前記第1液が、オレイン酸と、イソプロピルアルコールと、シクロヘキシルアミンからなる混合液であって、
前記混合液の混合時の温度を25℃~45℃とした上で、
前記オレイン酸40重量%~80重量%に対して、まず前記イソプロピルアルコール10重量%~30重量%を投入して十分に攪拌し、
次いで、前記シクロヘキシルアミンを5重量%~20重量%投入して十分に攪拌して得られる混合液であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。
【請求項9】
オレイン酸からなる第1液と、水道水、浄水、改質水のいずれかからなる水と、植物油を主原料とするバイオ燃料からなる第2液と、シクロヘキシルアミンからなる第3液と、軽油又は重油からなる燃料油とを、
前記燃料油に前記第1液を混合し、次いで前記水を添加し、さらに第2液を混合し、最後に第3液を混合して得られる燃料であることを特徴とする軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、化石燃料である石油や石炭の枯渇並びに二酸化炭素削減の低減化の問題から、燃料に水を適量混ぜ合わせたエマルジョン燃料の研究が行われている。
【背景技術】
【0002】
いままでのエマルジョン燃料は
A)水と油の乳化燃料であり製造後の備蓄や輸送後の貯蔵用タンクでの分離、
B)水分による燃焼温度の低下、
C)熱効率の低下による燃料費の増大、
D)混合、水分により着火難
E)燃焼室の不燃水蒸気ガスによる温度低下
F)水可溶化溶添加剤にアンモニアが使用され、NOX(窒素酸化物)の原因となり燃焼室内を損傷する
などの欠点や問題点を有していた。
【0003】
ところで、原油価格の高騰や地球資源である化石燃料の枯渇問題、また、それを使用する際に排出され、地球の環境破壊につながるCO2等の温室効果ガスや環境汚染物質の低減化の観点から、燃料油に適量の水を混合した燃料、いわゆるエマルジョン燃料の研究が盛んに行われている。
エマルジョン燃料は、一般には燃料油(重油や灯油、軽油、廃油等)に水と界面活性剤を添加し、機械的に撹拌して燃料油中に水を分散させた燃料であり、燃料の使用量の削減やそれに伴う環境汚染物質の低減化に、ある程度有効な燃料として公知である。このようなエマルョン燃料としては、例えば特許文献1ないし5を始めとする様々なものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-77418
【特許文献2】特開2009-51939
【特許文献3】特開2008-150421
【特許文献4】特開2007-510046
【特許文献5】特開2006-188616
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、エマルジョン燃料に関しては、長年にわたり研究、開発が行われており、一部で試験的に運用されている。
しかしながら、前記従来のエマルジョン燃料においては、製造後に比較的短時間で燃料油と水が分離し、上層に油分の多くが移動し下層に水分の多くが移動して二層化することがある。このような二層化による使用上のトラブルや、貯蔵(備蓄)と輸送の困難性及び含水の影響による燃焼効率や燃焼カロリーの低下、熱効率の低下による燃費の低下、及び燃焼室の腐食等に見られるような様々な欠点や問題点を有していた。
したがって、エマルジョン燃料においては、これらの要因が重なり、一部で試験的に運用されている例はあるものの、市場での十分な普及には至っていないのが現状である。
【0006】
(本発明の目的)
したがって、本発明の目的は、水の粒子を細かくし、燃料油全体に均一に分散させ、乳化を抑制して可溶化することができる事を特徴とすることに加えてバイオ燃料添加剤の使用及びその製造方法を提供することを目的とするとともに、加水し、または加水せず、燃料油である炭化水素油、石油類と2つの添加剤のみを用いた、バイオ由来の排ガス軽減などを含む環境に配慮した燃料を精製できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法においては、界面活性剤からなる第1液を、軽油又は重油に含有させて得られる燃料であって、
前記燃料の燃焼時の排ガス濃度の汚染数値を軽減することができ、
特にSOXに関しては汚染数値が半減され、
使用する軽油又は重油の硫黄分が半減され、
基油を減らして前記添加剤を投入した分だけ硫黄分やSOXを減少させることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法においては、界面活性剤からなる第1液と、植物油を主原料とするバイオ燃料からなる第2液とを混合させて得られる環境によく適合する添加剤を、
軽油又は重油に含有させて得られる燃料であって、
前記燃料の燃焼時の排ガス濃度の汚染数値を軽減することができ、
特にSOXに関しては汚染数値が半減され、
使用する軽油又は重油の硫黄分が半減され、
基油を減らして前記添加剤を投入した分だけ硫黄分やSOXを減少させることができるようにしたことをも特徴とするものである。
【0009】
本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法においては、界面活性剤からなる第1液と、水道水、浄水、改質水のいずれかからなる水と、植物油を主原料とするバイオ燃料からなる第2液とを混合させて得られる環境によく適合する添加剤を、
軽油又は重油に含有させて得られる燃料であって、
前記燃料の燃焼時の排ガス濃度の汚染数値を軽減することができ、
特にSOXに関しては汚染数値が半減され、
使用する軽油又は重油の硫黄分が半減され、
基油を減らして前記添加剤を投入した分だけ硫黄分やSOXを減少させることができるようにしたことをも特徴とするものである。
【0010】
本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法においては、前記第1液が、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸又はメリシン酸からなる群から選択される炭素数が16以上の脂肪酸を主原料とする界面活性剤であることをも特徴とするものである。
【0011】
本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法においては、前記第1液が、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコールからなる群から選ばれる1種類または複数種類のバイオマスから合成可能なアルコールを配合してなるものであることをも特徴とするものである。
【0012】
本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法においては、前記第2液が、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコールからなる群から選ばれる1種類または複数種類のバイオマスから合成可能なアルコールを主原料とするものであることをも特徴とするものである。
【0013】
本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法においては、前記第1液が、オレイン酸と、イソプロピルアルコールからなる混合液であって、
前記オレイン酸60重量%~80重量%に対して、前記イソプロピルアルコール15重量%~30重量%を投入して十分に攪拌して得られる混合液であることをも特徴とするものである。
【0014】
本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法においては、前記第1液が、オレイン酸と、イソプロピルアルコールと、シクロヘキシルアミンからなる混合液であって、
前記混合液の混合時の温度を25℃~45℃とした上で、
前記オレイン酸40重量%~80重量%に対して、まず前記イソプロピルアルコール10重量%~30重量%を投入して十分に攪拌し、
次いで、前記シクロヘキシルアミンを5重量%~20重量%投入して十分に攪拌して得られる混合液であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法においては、オレイン酸からなる第1液と、水道水、浄水、改質水のいずれかからなる水と、植物油を主原料とするバイオ燃料からなる第2液と、シクロヘキシルアミンからなる第3液と、軽油又は重油からなる燃料油とを、
前記燃料油に前記第1液を混合し、次いで前記水を添加し、さらに第2液を混合し、最後に第3液を混合して得られる燃料であることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法を用いた燃料を各種燃焼機関に適用した場合であっても、軽油または重油のみを適用した各種燃焼機関の通常の運転において発揮される性能となんら遜色のない性能を発揮できる。したがって、軽油または重油のみを適用した場合よりも、軽油または重油の消費量を遥かに抑えることができるので、環境負荷を軽減が求められる昨今の産業事情をふまえれば、その商品価値は非常に高いものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下この発明の軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法の実施の形態について実施例を用いて詳細に説明する。
(第1液)
まず、本発明を構成する界面活性剤からなる第1液については、
a)オレイン酸とイソプロピルアルコール(以下、IPAという。)を使用する場合
b)オレイン酸とIPAとシクロヘキシルアミンとを使用する場合
の2通りが挙げられる。
上記a)については、前記オレイン酸と前記IPAの混合だけを使用した第1液の場合の混合率は、オレイン酸60重量%~80重量%に対してIPA15重量%~30重量%とする。
また、上記b)については、オレイン酸40重量%~80重量%に対してIPA10重量%~30重量%投入をする。十分に攪拌し混合したのち、シクロヘキシルアミンを5重量%~20重量%投入し十分に攪拌する。このとき、混合する際の温度は25℃~45℃が好ましい。
(水の添加)
添加する水については、水道水、軟水、アルカリイオン水、改質水などの水であればよく、加水5重量%~50重量%までの任意の加水量を決めることができる。
(第2液)
第2液については、植物油又は動物油を原料としたその他バイオマス資源の油脂からなる。油脂は使用済みの廃油を利用することもできる。
例えば、植物油においては、原料となる油脂類を水酸化ナトリウムなどの触媒存在下でメタノールとエステル交換反応させ、グリセリンを取り除き、脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Ester,以下、FAMEという)が挙げられる。前記FAMEへと変換し、油の熱量を維持しながら粘度を下げて石油類と混合しやすく、かつ燃焼しやすくするものであればよい。なお、FAMEは燃焼しても硫黄酸化物を発生せず、石油と任意の割合で混合できるほか、引火点や潤滑性が高いことなど、多くの利点を有している。ただし、その特徴として粘度を下げることを特徴とすることから、油脂を脂肪酸メチルエステル以外の製法を用いてもよい。例えば、油脂を炭化水素化する方法が挙げられる。また接触分解反応を用いることも可能である。さらに、触媒で分解反応をおこし炭化水素を取り出した油脂を使用することもできる。
【0018】
(燃料の製造方法例)
本発明の対象となる燃料油は、軽油、重油、灯油、ガソリンが挙げられる。
(1)燃料油に、前記第1液を混合する。
(2)次いで、上記(1)により得られた混合液に水を添加する。
(3)そして、上記(2)により得られた混合液に前記第2液を添加する。
上記の混合割合はいずれも任意の混合率を用いることができる。対象燃料油の成分によっては、第1液および\または第2液の状態や配合を調整することができる。例えば、灯油やジェット燃料のような軽質油においては、第2液はバイオマス由来炭化水素化油が望ましい。また炭化水素化油の性状を精製過程で調整することが可能になる。
【0019】
(第1液の精製例)
5000mlをビーカーに、オレイン酸から投入し、マグネチックスターラーを使いよく攪拌させる。攪拌した状態で次にIPAを投入する。
攪拌は十分に行いながらオレイン酸とIPAを投入したものにシクロヘキシルアミンを投入する。その後15分間攪拌を続ける。
それぞれの数量は先に述べたように対象となる燃料油に対してその倍率を変更できるものとする。
添加する水としての、水道水の場合は日本における水道水の基準に準じる。軟水を使用する場合は軟水の値は0(ゼロ)にする。一般にイオン交換樹脂が投入されている軟水機を利用することができる。
また、改質水の場合は、日本の飲料水としての水道水規格及び、その他の水は浄水器で濾過した水、海水や汚れの酷い水、硬水、軟水を問わずRO膜などにて純水にした水を用いる。それらの水にミネラルを添加した水などを条件にした水を使用することもできる。その後に天然鉱石または人工鉱石、あるいは天然鉱石および人工鉱石に通過させることによって生成するものを改質した水として用いる。
改質した水を生成するための天然鉱石として、黄鉄鉱、白鉄鉱、辰砂、方鉛鉱、斑銅鉱、ハロゲン化鉱物、蛍石、氷晶石、トルマリン、黒曜石、マグネシウム、方解石、ウレキサイト(テレビ石)、コールマン石、硼砂、ハウライト、石膏、重晶石、天青石、燐灰ウラン石、カルノー石、錦石、黒砂金石、麦飯石、バドガシュタイン鉱石、石英等を用い、その粒径としては種類に応じて1~5mm、5~10mm、10~20mm、20~40mm、30~50mmとすることが挙げられる。
また改質した水を生成するための人工鉱石としては、テラヘルツ鉱石等が挙げられる。人工鉱石を用いる場合には、人工鉱石以外の物質としてシリカ、アルミニウム、鉄、カルシウム、亜鉛、クロム、マンガン、ジルコニウム、ストロンチウム、ステンレス、銀を少なくとも1種類の金属を混合させたことをも特徴とするものである。また天然鉱石の他、天然鉱石より抽出出来るミネラルを添加することも有効である。例えば腐食花崗岩などから抽出するミネラルを使用する。添加ミネラル成分および添加する個体の物質の例として以下の、カルシウム、リン、ケイ素、マグネシウム、ナトリウム、セレン、亜鉛、バナジウム、ゲルマニウム、ニッケル、マンガン、モリブデン、銅、タングステン、コバルト、リチウム、バリウム、鉄、カリウム、アルミニウム、ルビジウム、チタンなどが挙げられる。
【0020】
(第2液の精製例)
前記FAMEを利用する。対象燃料油の成分、燃料の使用環境によっては炭化水素化バイオ燃料を利用することもできる。
現在では様々なバイオ燃料技術でバイオ由来油から軽油相当の燃料が精製される技術が広められている。そのどれも使用可能であるが、前記FAMEの製造工程の一例は次のとおりである。
1.新品のキャノーラ油又は廃食用油から天ぷらカスを取り除いた油を用いる。
2.前記廃食用油を60℃に加熱して撹拌し水分を飛ばす。
3.ナトリウムメトキサイトを作成する。新油に対しては1Lあたり3.5gの水酸化ナトリウムと20重量%のメタノールを混合して作成する。
4.新油(キャノーラ油)廃食用油に(ナトリウムメトキサイト)ナトリウムとメタノールを入れて60重量℃で撹拌し、メチルエステル交換で脂肪酸メチルとグリセリンを生成させる。
5.静置して副産物のグリセリンを沈澱させてから取り出す。
6.80℃に温めたお湯を投入し撹拌する精製過程のFAMEを中和させ、5~6回お湯で洗い、静置したのち、湯を抜く。
7.最後に加熱して水分を飛ばす。
上述の工程を経て製造されたFAME燃料油である第2液は、第1液と混合することにより、FAMEと全く違った性能を発揮することができる。
上述のとおり、前記第1液と前記第2液と軽油または重油と水とは、所定の混合率により混合して燃料として使用することができる。
【0021】
以上のとおりに得られた燃料を発電機、ボイラー、トヨタハイエース(車両)、トヨタダイナトラック(車両)に使用した場合の検証データ(走行テスト結果)について以下に示す。
以下、軽油に本発明のバイオ原料由来の添加剤を含有させて得られる燃料と、軽油に本発明のバイオ原料由来の添加剤と水を含有させて得られる燃料を総称して、本発明により得られる燃料という。
(発電機の場合)
表1~表10は、発電機の燃料として、軽油のみを燃料とした場合、本発明により得られる燃料を燃料とした場合の発電機の稼働時間の実験結果を示すものである。
【0022】
【表1】
2020年11月2日における軽油を燃料とした1回目の発電機検証データと、軽油を燃料とした2回目の発電機検証データを示す表である。
【0023】
【表2】
2020年11月2日における軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした3回目の発電機検証データと、軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした4回目の発電機検証データを示す表である。
【0024】
【表3】
2020年11月3日における軽油を燃料とした1回目の発電機検証データと、軽油を燃料とした2回目の発電機検証データを示す表である。
【0025】
【表4】
2020年11月3日における軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした3回目の発電機検証データと、軽油を燃料とした4回目の発電機検証データを示す表である。
【0026】
【表5】
2020年11月3日における軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした5回目の発電機検証データと、軽油を燃料とした6回目の発電機検証データを示す表である。
【0027】
【表6】
2020年11月3日における軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした7回目の発電機検証データを示す表である。
【0028】
【表7】
2020年11月4日における軽油を燃料とした1回目の発電機検証データと、軽油を燃料とした2回目の発電機検証データを示す表である。
【0029】
【表8】
2020年11月4日における軽油を燃料とした3回目の発電機検証データと、軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした4回目の発電機検証データを示す表である。
【0030】
【表9】
2020年11月4日における軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした5回目の発電機検証データと、軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした6回目の発電機検証データを示す表である。
【0031】
【表10】
2020年11月4日における軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした7回目の発電機検証データを示す表である。
【0032】
上記各表の同日の実験結果からわかるように、軽油のみを燃料とした場合の発電機の稼働時間に対して、本発明により得られる燃料を燃料とした場合の稼働時間は全く遜色ないものとなっている。
例えば、表1の1回目の実験において軽油1000mlのみを燃料とした場合の発電機(IDG3100M)の稼働時間は20分31秒であったところ、表2の3回目の実験において軽油600mlに本発明のバイオ原料由来の添加剤160mlおよび水としての温水200mlを含有させて燃料とした場合の、同発電機の稼働時間は24分10秒であった。
発電機の稼働時間の実験ごとの実験結果のムラを考慮すると、軽油のみを燃料とした場合と、本発明により得られる燃料を燃料とした場合で、発電機の稼働時間に大きな差はなく、本発明により得られる燃料が、軽油のみを燃料とした場合と遜色のない燃焼効率を実現した燃料であって、問題なく発電機に適用することができるものであることがわかる。
すなわち、本発明により得られる燃料は、軽油のみを燃料とした場合に比べて、軽油の消費量を大幅に抑えることができて経済的であるとともに、軽油の消費量を抑えることで環境負荷の低減まで実現することができる燃料であることがわかる。
【0033】
(ボイラーの場合)
表11~表18は、ボイラーの燃料として、重油のみを燃料とした場合、本発明により得られる燃料を燃料とした場合のボイラーの稼働時間の実験結果を示すものである。
【0034】
【表11】
2020年11月12日における重油を燃料とした1回目のボイラー検証データを示す表である。
【0035】
【表12】
2020年11月12日における重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした2回目のボイラー検証データを示す表である。
【0036】
【表13】
2020年11月12日における重油にバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした3回目のボイラー検証データを示す表である。
【0037】
【表14】
2020年11月12日における重油にバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした4回目のボイラー検証データを示す表である。
【0038】
【表15】
2020年11月16日における重油を燃料とした1回目のボイラー検証データを示す表である。
【0039】
【表16】
2020年11月16日における重油にバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした2回目のボイラー検証データを示す表である。
【0040】
【表17】
2020年11月16日における重油にバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした3回目のボイラー検証データを示す表である。
【0041】
【表18】
2020年11月16日における重油にバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料とした4回目のボイラー検証データを示す表である。
【0042】
上記各表の同日の実験結果からわかるように、重油のみを燃料とした場合のボイラーの稼働時間に対して、本発明により得られる燃料を燃料とした場合のボイラーの稼働時間は全く遜色ないものとなっている。
例えば、表15の重油5000mlのみを燃料とした場合のボイラー(NTEC)の稼働時間は13分16秒であったところ、表24の重油1250mlに本発明のバイオ原料由来の添加剤計3750mlを含有させて燃料とした場合の、同ボイラーの稼働時間は12分46秒であった。
ボイラーの稼働時間の実験ごとの実験結果のムラを考慮すると、重油のみを燃料とした場合と、本発明により得られる燃料を燃料とした場合で、ボイラーの稼働時間に大きな差はなく、本発明により得られる燃料が、重油のみを燃料とした場合と遜色のない燃焼効率を実現した燃料であって、問題なくボイラーに適用することができるものであることがわかる。
すなわち、本発明により得られる燃料は、重油のみを燃料とした場合に比べて、重油の消費量を大幅に抑えることができて経済的であるとともに、重油の消費量を抑えることで環境負荷の低減まで実現することができる燃料であることがわかる。
【0043】
(トヨタハイエースの場合)
表19~表23は、トヨタハイエースの燃料として、軽油のみを燃料とした場合、本発明により得られる燃料を燃料とした場合のトヨタハイエースの走行テストの結果を示すものである。
【0044】
【表19】
2020年11月6日における軽油を燃料とした、または軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料としたトヨタハイエース走行テスト結果を示す表である。
【0045】
【表20】
2020年11月7日における軽油を燃料とした、または軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料としたトヨタハイエース走行テスト結果を示す表である。
【0046】
【表21】
2020年11月19日における軽油を燃料とした、または軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料としたトヨタハイエース走行テスト結果を示す表である。
【0047】
【表22】
2020年11月20日における軽油を燃料とした、または軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料としたトヨタハイエース走行テスト結果を示す表である。
【0048】
【表23】
2020年11月23日における軽油を燃料とした、または軽油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料としたトヨタハイエース走行テスト結果を示す表である。
【0049】
上記各表の同日の走行テスト結果からわかるように、軽油のみを燃料とした場合のトヨタハイエースの燃料消費量1リッターあたりの走行距離(以下、燃費という)に対して、本発明により得られる燃料を燃料とした場合のトヨタハイエースの燃費は全く遜色ないものとなっている。
例えば、表19の11月6日の軽油5280mlのみを燃料とした場合のトヨタハイエースの燃費は9.66km/Lであったところ、同表の11月6日の本発明により得られる燃料を燃料とした場合の、同トヨタハイエースの燃費は8.97ml/L、8.86ml/L、9.40km/Lであった。
トヨタハイエースの燃費の実験ごとのムラを考慮すると、軽油のみを燃料とした場合と、本発明により得られる燃料を燃料とした場合で、トヨタハイエースの燃費に大きな差はなく、本発明により得られる燃料が、軽油のみを燃料とした場合と遜色のない燃焼効率を実現した燃料であって、問題なくトヨタハイエース等の車両に適用することができるものであることがわかる。
すなわち、本発明により得られる燃料は、軽油のみを燃料とした場合に比べて、軽油の消費量を大幅に抑えることができて経済的であるとともに、軽油の消費量を抑えることで環境負荷の低減まで実現することができる燃料であることがわかる。
【0050】
(トヨタダイナトラックの場合)
表24および表25は、トヨタダイナトラックの燃料として、軽油のみを燃料とした場合、本発明により得られる燃料を燃料とした場合のトヨタダイナトラックの走行テストの結果を示すものである。
【0051】
【表24】
2020年11月9日における軽油を燃料とした、または軽油にバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料としたトヨタダイナトラック走行テスト結果を示す表である。
【0052】
【表25】
2020年11月8日における軽油を燃料とした、または軽油にバイオ原料由来の添加剤を含有させて燃料としたトヨタダイナトラック走行テスト結果を示す表である。
【0053】
上記各表の同日の走行テスト結果からわかるように、軽油のみを燃料とした場合のトヨタダイナトラックの燃料消費量1リッターあたりの走行距離(以下、燃費という)に対して、本発明により得られる燃料を燃料とした場合のトヨタダイナトラックの燃費は全く遜色ないものとなっている。
例えば、表24の9月14日の軽油8000mlのみを燃料とした場合のトヨタダイナトラックの燃費は9.27km/Lであったところ、同表の11月9日の本発明により得られる燃料を燃料とした場合の、同トヨタダイナトラックの燃費は8.92ml/L、8.92ml/L、8.60km/L、9.26km/Lであった。
トヨタダイナトラックの燃費の実験ごとのムラを考慮すると、軽油のみを燃料とした場合と、本発明により得られる燃料を燃料とした場合で、トヨタダイナトラックの燃費に大きな差はなく、本発明により得られる燃料が、軽油のみを燃料とした場合と遜色のない燃焼効率を実現した燃料であって、問題なくトヨタダイナトラック等の大型車両に適用することができるものであることがわかる。
すなわち、本発明により得られる燃料は、軽油のみを燃料とした場合に比べて、軽油の消費量を大幅に抑えることができて経済的であるとともに、軽油の消費量を抑えることで環境負荷の低減まで実現することができる燃料であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
上述のとおり、本発明に係る軽油又は重油に水とバイオ原料由来の添加剤を含有させた燃料の製造方法を用いて得られた燃料は、発電機、ボイラー、家庭用自動車から大型自動車の燃料として、通常用いられる燃料としての軽油のみ、重油のみに対して、まったく遜色のない燃焼効率を実現することができるものであるが、もちろん、発電機、ボイラー、家庭用自動車、大型自動車に限らず、軽油または重油、その他の石油燃料を使用する燃焼機関を搭載した装置に適用できることはいうまでもない。