IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイチセラテック株式会社の特許一覧

特開2022-91022炉芯管用組成物、炉芯管及び炉芯管の製造方法
<>
  • 特開-炉芯管用組成物、炉芯管及び炉芯管の製造方法 図1
  • 特開-炉芯管用組成物、炉芯管及び炉芯管の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091022
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】炉芯管用組成物、炉芯管及び炉芯管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 21/30 20060101AFI20220613BHJP
   B28B 1/20 20060101ALI20220613BHJP
   C04B 35/66 20060101ALI20220613BHJP
   C04B 41/65 20060101ALI20220613BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20220613BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B28B21/30
B28B1/20
C04B35/66
C04B41/65
F27D1/00 N
F27D1/16 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203688
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】501417848
【氏名又は名称】アイチセラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】河合 和秀
(72)【発明者】
【氏名】隅田 賢人
(72)【発明者】
【氏名】小野 敦司
【テーマコード(参考)】
4G028
4G058
4K051
【Fターム(参考)】
4G028DA01
4G028DB01
4G028DC07
4G058AA00
4G058AA09
4G058BA00
4G058GA06
4K051AA03
4K051AB03
4K051BE00
4K051LD07
(57)【要約】
【課題】強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れる炉芯管が得られる炉芯管用組成物、この炉芯管組成物からなる炉芯管及び作業効率の高い炉芯管の製造方法を提供する
【解決手段】炉芯管用組成物は、遠心成形に用いられ、比重2.4~2.8、粒径3.5mm未満のセラミックA粒子及び比重2.7~3.4、粒径100μm以下のセラミックB粒子からなる骨材粒子と、セラミックC粒子からなる結合剤とを含む。炉芯管は、遠心成形により製造され、コージライト粒子及びムライト粒子を備え、コージライト粒子及びムライト粒子が一体となって構成される。炉芯管の製造方法は、炉芯管用組成物を混練して混練物を得る工程と、混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る工程と、未硬化成形体を成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る工程と、硬化成形体を脱型・乾燥する工程を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心成形により炉芯管を製造するための炉芯管用組成物であって、
比重2.4~2.8、粒径3.5mm未満のセラミックA粒子及び比重2.7~3.4、粒径100μm以下のセラミックB粒子からなる骨材粒子と、セラミックC粒子からなる結合剤と、からなる固形原料を含むことを特徴とする炉芯管用組成物。
【請求項2】
前記固形原料全体を100質量%とした場合に、セラミックA粒子35~55質量%、セラミックB粒子27~39質量%、セラミックC粒子18~26質量%である請求項1に記載の炉芯管用組成物。
【請求項3】
セラミックA粒子35~55質量%のうち粒径1.0mm以上3.5mm未満の粗粒を16~35質量%含む請求項2に記載の炉芯管用組成物。
【請求項4】
セラミックA粒子はコージライトであり、セラミックB粒子はムライトであり、セラミックC粒子は、微細アルミナ及びハイアルミナセメントである請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の炉芯管用組成物。
【請求項5】
遠心成形により製造された炉芯管であって、
コージライト粒子及びムライト粒子を備え、前記コージライト粒子及び前記ムライト粒子が一体となって構成されていることを特徴とする炉芯管。
【請求項6】
前記コージライト粒子は、粒径1.0mm以上3.5mm未満の粗粒と、粒径1.0mm未満の細粒と、を含む請求項5に記載の炉芯管。
【請求項7】
前記コージライト粒子は、粒径3.5mm未満であり、前記ムライト粒子は、粒径100μm以下である請求項5又は6に記載の炉芯管。
【請求項8】
前記炉芯管の前記内表面側の内表面にコート層が形成されている請求項5乃至7のうちのいずれか1項に記載の炉芯管。
【請求項9】
請求項5乃至7のうちのいずれか1項に記載の炉芯管の製造方法であって、
前記炉芯管用組成物を混練して混練物を得る混練工程と、
該混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る成形工程と、
該未硬化成形体を該成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る養生工程と、
該硬化成形体を脱型・乾燥して炉芯管を得る乾燥工程と、を備えることを特徴とする炉芯管の製造方法。
【請求項10】
前記成形工程は、遠心回転がその成形用の円筒型の内表面の周速度として0.8~1.6m/sとする第1段階と、1.9~2.5m/sとする第2段階と、2.7~4.5m/sとする第3段階と、からなる請求項9に記載の炉芯管の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の炉芯管の製造方法であって、
前記炉芯管用組成物を混練して混練物を得る混練工程と、
該混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る第1成形工程と、
該未硬化成形体を該成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る第1養生工程と、
該硬化成形体の内表面に前記原料を含むコート剤を塗布した後、遠心成形して未硬化コート層付き成形体を得る第2成形工程と、
該未硬化コート層付き成形体を脱型・養生して硬化コート層付き成形体を得る第2養生工程と、
該硬化コート層付き成形体を乾燥して炉芯管を得る乾燥工程と、を備えることを特徴とする炉芯管の製造方法。
【請求項12】
前記第1成形工程及び前記第2成形工程は、遠心回転がその成形用の円筒型の内表面の周速度として0.8~1.6m/sとする第1段階と、1.9~2.5m/sとする第2段階と、2.7~4.5m/sとする第3段階と、からなる請求項11に記載の炉芯管の製造方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のうちのいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする炉芯管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉芯管用組成物、炉芯管及び炉芯管の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れる炉芯管を得ることのできる炉芯管用組成物、この炉芯管組成物から得られる炉芯管及び作業効率を高めることのできる炉芯管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱コイル内に挿通して設置される炉芯管は、例えば、以下の振動鋳込み成形法により製造される。
まず、炉芯管を製造するための原料調合物を混練して混練物を調製する。混練物は振動を加えることにより流動するようになる。
次いで、縦長に設置した円筒状の成形用金型と、その軸方向中心に配置した発泡樹脂製の円柱状の中子との隙間に、成形用金型に振動を与えながら、混練物を流し込む。
その後、放置すると原料と水が反応することにより、混練物が固化して成形体が得られる。得られた成形体を加熱して水を除去するとともに、中子を収縮させて取り出す。
【0003】
しかし、上記の振動鋳込み成形法では、以下の問題がある。
混練物は気泡を含んでおり、成形中にこの気泡が合体して大型化する。これらは成形中に一部浮上除去されるが多くは成形体内部に残り、内外表面に現れることになる。そのため、成形体の内外表面にある気泡の跡を埋める手直しをする必要があり、作業時間がかかる。
更に、成形中に中子が混練物に押されて変形すると、長手方向の位置によって成形体の肉厚が変動することにもなる。
また、原料粒子の分離、気泡の浮上分離が起こるために、成形体の長手方向の位置による特性がバラつく。この現象は混練物の水の量が多くなるほど流動性が増すので顕著になる。
更に、中子を加熱除去する際に、収縮前の中子の膨張または成形体の乾燥収縮のために成形体に亀裂が生じやすい。
【0004】
ここで、遠心成形による円筒状の成形体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
遠心成形法によると、横長に設置した円筒の成形用金型に原料混練物を投入後、円筒の中心軸を回転軸として成形用金型を回転させる。流動性を有する混練物は、遠心力で成形用金型内壁に押し付けられて広がり、均一な厚みの円筒の形状になる。更に回転数を増すと、混練物中からまず気泡体が、次いで水が押し出される。更に養生、乾燥させることで強度が向上する。
遠心成形法によると、振動鋳込み成形法に比べて、大部分の気泡が除去されるので、高密度・高強度になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-179748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、遠心成形法により円筒状の成形体を形成すると、密度の異なる原料粒子を混合して用いた場合に、遠心力により高密度の粒子が円筒の外表面側に、低密度の粒子が内表面側に集まる「原料粒子の分離」が生じやすく、厚さ方向で特性が不均一になりやすい。
【0007】
本発明は、前述の従来技術の問題点を解決するものであり、強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れる炉芯管を得ることのできる炉芯管用組成物、この炉芯管組成物から得られる炉芯管及び作業効率の高い炉芯管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
1.遠心成形により炉芯管を製造するための炉芯管用組成物であって、
比重2.4~2.8、粒径3.5mm未満のセラミックA粒子及び比重2.7~3.4、粒径100μm以下のセラミックB粒子からなる骨材粒子と、セラミックC粒子からなる結合剤と、からなる固形原料を含むことを特徴とする炉芯管用組成物。
2.前記固形原料全体を100質量%とした場合に、セラミックA粒子35~55質量%、セラミックB粒子27~39質量%、セラミックC粒子18~26質量%である1.に記載の炉芯管用組成物。
3.セラミックA粒子35~55質量%のうち粒径1.0mm以上3.5mm未満の粗粒を16~35質量%含む2.に記載の炉芯管用組成物。
4.セラミックA粒子はコージライトであり、セラミックB粒子はムライトであり、セラミックC粒子は、微細アルミナ及びハイアルミナセメントである1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の炉芯管用組成物。
【0009】
5.遠心成形により製造された炉芯管であって、
コージライト粒子及びムライト粒子を備え、前記コージライト粒子及び前記ムライト粒子が一体となって構成されていることを特徴とする炉芯管。
6.前記コージライト粒子は、粒径1.0mm以上3.5mm未満の粗粒と、粒径1.0mm未満の細粒と、を含む5.に記載の炉芯管。
7.前記コージライト粒子は、粒径3.5mm未満であり、前記ムライト粒子は、粒径100μm以下である5.又は6.に記載の炉芯管。
8.前記炉芯管の前記内表面側の内表面にコート層が形成されている5.乃至7.のうちのいずれか1項に記載の炉芯管。
【0010】
9.5.乃至7.のうちのいずれか1項に記載の炉芯管の製造方法であって、
前記炉芯管用組成物を混練して混練物を得る混練工程と、
該混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る成形工程と、
該未硬化成形体を該成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る養生工程と、
該硬化成形体を脱型・乾燥して炉芯管を得る乾燥工程と、を備えることを特徴とする炉芯管の製造方法。
10.前記成形工程は、遠心回転がその成形用の円筒型の内表面の周速度として0.8~1.6m/sとする第1段階と、1.9~2.5m/sとする第2段階と、2.7~4.5m/sとする第3段階と、からなる9.に記載の炉芯管の製造方法。
11.8.に記載の炉芯管の製造方法であって、
前記組成物を混練して混練物を得る混練工程と、
該混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る第1成形工程と、
該未硬化成形体を該成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る第1養生工程と、
該硬化成形体の内表面に前記原料を含むコート剤を塗布した後、遠心成形して未硬化コート層付き成形体を得る第2成形工程と、
該未硬化コート層付き成形体を脱型・養生して硬化コート層付き成形体を得る第2養生工程と、
該硬化コート層付き成形体を乾燥して炉芯管を得る乾燥工程と、を備えることを特徴とする炉芯管の製造方法。
12.前記第1成形工程及び前記第2成形工程は、前記成形工程は、遠心回転がその成形用の円筒型の内表面の周速度として0.8~1.6m/sとする第1段階と、1.9~2.5m/sとする第2段階と、2.7~4.5m/sとする第3段階と、からなる11.に記載の炉芯管の製造方法。
13.9.乃至12.のうちのいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする炉芯管。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炉芯管用組成物は、比重2.4~2.8、粒径3.5mm未満のセラミックA粒子及び比重2.7~3.4、粒径100μm以下のセラミックB粒子からなる骨材粒子と、セラミックC粒子からなる結合剤と、からなる原料を含むため、強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れる炉芯管を得ることができる。
また、原料全体を100質量%とした場合に、セラミックA粒子35~55質量%、セラミックB粒子27~39質量%、セラミックC粒子18~26質量%である場合には更に強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れる炉芯管を得ることができる。
そして、セラミックA粒子35~55質量%のうち粒径1.0mm以上3.5mm未満の粗粒を16~35質量%含む場合には、より強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れる炉芯管を得ることができる。
また、セラミックAがコージライトであり、セラミックBがムライトであり、セラミックCが、微細アルミナ及びハイアルミナセメントである場合には特に、強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れる炉芯管を得ることができる。
【0012】
本発明の遠心成形により製造された炉芯管は、コージライト粒子、ムライト粒子及びアルミナ粒子を備え、前記コージライト粒子、前記ムライト粒子及び前記アルミナ粒子が一体となって構成されているため、強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れることができる。
また、コージライト粒子が、粒径1.0mm以上3.5mm未満の粗粒と、粒径1.0mm未満の細粒と、を含む炉芯管である場合には、更に強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れることができる。
更に、コージライト粒子が、粒径3.5mm未満であり、前記ムライト粒子は、粒径100μm以下である場合には、より、強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れることができる。
炉芯管の内表面側の内表面にコート層が形成されている場合には、特に内表面を滑らかなものとすることができる。
【0013】
本発明の炉芯管を製造する方法は、炉芯管用組成物を混練して混練物を得る混練工程と、混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る成形工程と、未硬化成形体を該成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る養生工程と、硬化成形体を脱型・乾燥して炉芯管を得る場合には、強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れる炉芯管を製造できるとともに、作業効率を高めることができる。
また、成形工程が、遠心回転がその成形用の円筒型の内表面の周速度として0.8~1.6m/sとする第1段階と、1.9~2.5m/sとする第2段階と、2.7~4.5m/sとする第3段階と、からなる場合には、更に優れた特性の炉芯管を製造することができる。
本他の発明の炉芯管を製造する方法は、炉芯管用組成物を混練して混練物を得る混練工程と、混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る第1成形工程と、未硬化成形体を該成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る第1養生工程と、硬化成形体の内表面に前記原料を含むコート剤を塗布した後、遠心成形して未硬化コート層付き成形体を得る第2成形工程と、未硬化コート層付き成形体を脱型・養生して硬化コート層付き成形体を得る第2養生工程と、硬化コート層付き成形体を乾燥して炉芯管を得る場合には、強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れるとともに、内表面が滑らかな炉芯管を得ることができる。
更に、第1成形工程及び第2成形工程が、遠心回転がその成形用の円筒型の内表面の周速度として0.8~1.6m/sとする第1段階と、1.9~2.5m/sとする第2段階と、2.7~4.5m/sとする第3段階と、からなる場合には、更に優れた特性の炉芯管を製造することができる。
本発明の製造方法によって得られた炉芯管であれば、特に強度、耐熱衝撃性及び低熱伝導性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)成形用金型に原料を投入する様子を示す模式的な斜視図である。 (b)遠心成形して未硬化成形体を得る成形工程を示す模式的な斜視図である。 (c)成型用金型から蓋材を取り外して、未硬化成形体の内表面上に染み出た水を排出する様子を示す模式的な斜視図である。 (d)未硬化成形体を養生して硬化成形体を得る養生工程を示す模式的な斜視図である。 (e)硬化成形体を乾燥して炉芯管を得る工程を示す模式的な斜視図である。
図2】(a)第1養生工程後、コーティング剤を投入する様子を示す模式的な斜視図である。 (b)遠心成形して未硬化コート層付き成形体を得る第2成形工程を示す模式的な斜視図である。 (c)未硬化コート層付き成形体を養生して硬化コート層付き成形体を得る第2養生工程を示す模式的な斜視図である。 (d)硬化コート層付き成形体を加熱・乾燥して炉芯管を得る工程を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0016】
以下、本発明を図も用いて詳しく説明する。
[1]炉芯管用組成物
本発明の炉芯管用組成物は、遠心成形により炉芯管を得るための組成物であって、
骨材粒子と、結合剤とからなる原料を含む。
骨材粒子は、炉芯管用組成物の特性を発揮するための骨格をなす粒子であり、比重及び粒径の異なるセラミックA粒子と、セラミックB粒子を含む。
【0017】
セラミックA粒子は、比重2.4~2.8、粒径3.5mm未満であり、比重2.4~2.8、粒径0.1mm以上3.5mm未満であることが好ましく、比重2.5~2.7、粒径0.3mm以上3.3mm未満であることが更に好ましい。
セラミックA粒子としては、特に限定はなく、例えば、アルミナ、シリカ、マグネシアの2種以上を含む複酸化物等が挙げられる。より具体的には、コージライト(2MgO・2Al・5SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)等が挙げられ、コージライトであることが特に好ましい。コージライトは熱膨張率が小さく耐熱衝撃性に優れる。
セラミックA粒子は、粒径1mm以上3.5mm未満の粗粒と、粒径1.0mm未満の細粒に篩い分けて、後述のようにその配合割合を調整することができる。
【0018】
セラミックB粒子は、比重2.7~3.4、粒径100μm以下であり、比重2.8~3.2、粒径5μm以上100μm以下であることが好ましく、比重2.7~3.2、粒径5μm以上70μm以下であることが更に好ましく、比重2.7~3.1、粒径5μm以上70μm以下であることが特に好ましい。
セラミックB粒子は、比重が通常2.7~3.1であり、セラミックA粒子の比重2.4~2.8と比較的近接している。そのため、セラミックA粒子と混合して遠心成形した場合、高比重粒子が外表面側に偏在する分離傾向を緩和することができる。
更に、セラミックB粒子は、粒径100μm以下であり、セラミックA粒子より粒径が小さいものが多く含まれ、セラミックA粒子の隙間にセラミックB粒子が入り込むため、粒子全体が密に充填されると共に、混練することにより、より均一に分散される。
セラミック粒子Aとセラミック粒子Bの比率は特に限定はないが、質量%比で、セラミック粒子A:セラミック粒子B=55~65:35~45であることが好ましく、セラミック粒子A:セラミック粒子B=57~59:41~43であることが更に好ましい。
【0019】
セラミックB粒子としては、特に限定はなく、アルミナ、シリカ、マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の2種以上を含む複酸化物等が挙げられる。より具体的には、例えば、ムライト(3Al・2SiO)、サイアロン(SiN・Al)等が挙げられ、ムライトであることが特に好ましい。
セラミックB粒子がムライトであれば、熱伝導率がアルミナの約1/8であり、セラミックB粒子としてアルミナを用いた場合に比べ、材料全体の熱伝導率を小さく抑えることができる。
また、ムライトの熱膨張率はアルミナの熱膨張率の約2/3であり、材料の熱膨張率を小さくするように動くので、耐熱衝撃性の改善に有利に働く。更に、ムライトの比重は約3.0であり、コージライトの比重約2.6と近い値である。そのため、ムライトはコージライトと混合しても、遠心成形時にムライト粒子とコージライト粒子の分離を引き起こしにくく、均一な組成の炉芯管が得られる。
一方、アルミナは比重が約3.9と大きいため、コージライトと混合して、遠心成形をすると、アルミナ粒子とコージライト粒子の分離を引き起こしやすい。すなわち、アルミナ粒子が炉芯管の外表面側に多く存在し、コージライト粒子が内表面側に多く存在してしまうことになり均一な組成の炉芯管が得られにくい。
【0020】
結合剤は、セラミック粒子同士を結合させて一体化させるものであり、セラミックC粒子からなる。結合剤は、セラミック粒子同士を結合させるものであれば特に限定はないが、例えば、微細アルミナ及びハイアルミナセメントからなることができる。
微細アルミナは、原料配合の分散性をよくし流動しやすくするものであり、セラミックA粒子とセラミックB粒子を更に分散させて均一化することができる。微細アルミナは、
超微粉であることが好ましい。超微粉であれば、ハイアルミナセメントとの結合性を高めることができる。具体的には、微細アルミナの粒径は、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、0.2μm以上10μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以上10μm以下であることが特に好ましい。
ハイアルミナセメントは、水の存在下で水和硬化物となって、セラミック粒子同士を結合させるものであり、セメント中のアルミナ(Al)成分を多くすることで耐熱性を高めることができる。ハイアルミナセメントの粒径は、0.1μm以上200μm以下であることが好ましく、0.2μm以上100μm以下であることが更に好ましく、0.3μm以上75μm以下あることが特に好ましい。
また、ハイアルミナセメント全体を100質量とした場合に、アルミナ70~90質量%であることが好ましく、75~85質量%であることが更に好ましい。
微細アルミナとハイアルミナセメントの配合比率は特に限定はないが、質量%比で、微細アルミナ:ハイアルミナセメント=15~30:70~85であることが好ましく、微細アルミナ:ハイアルミナセメント=20~25:75~80であることが更に好ましい。
【0021】
前記固形原料の骨材粒子と結合剤の比率は特に限定はないが、質量%比で、骨材粒子:結合剤=70~85:15~30であることが好ましく、骨材粒子:結合剤=75~80:20~25であることが更に好ましい。
更に、固形原料全体を100質量%とした場合に、セラミックA粒子35~55質量%、セラミックB粒子27~39質量%、セラミックC粒子18~26質量%であることが好ましく、セラミックA粒子40~50質量%、セラミックB粒子30~36質量%、セラミックC粒子20~24質量%であることが更に好ましい。
【0022】
セラミックA粒子35~55質量%のうち、粒径0.1mm以上1.0mm未満の細粒のみから構成することができる。粒径0.1mm以上1.0mm未満の細粒のみから構成することで、遠心成形により製造した炉芯管の内面側の内面からの粒子の突き出しを防ぎ、滑らかな内面を形成することができる。
一方、セラミックA粒子35~55質量%のうち、粒径1.0mm以上3.5mm未満の粗粒を16~35質量%、更に好ましくは18~32質量%含むことができる。粗粒をこの程度含むことで、製造した炉芯管の耐熱衝撃性をより優れたものとすることができる。
【0023】
[2]炉芯管
前記「炉芯管」は、遠心成形により製造され、例えば図1(d)に示す炉芯管10のように、通常、円筒状である。寸法は特に限定はないが、通常、外径70~160mm、肉厚5~15mm、長さ500~900mmである。この炉芯管10は、鋼材等の円柱材を加熱処理に当たり、誘導加熱(IH)コイルの内側に設置することによって、加熱されて赤熱した円柱材が発する熱やスケールからコイルを保護すること、さらにチューブ内を通過する鋼材を支える水冷チューブが破損した場合に水がコイルに達して電気的ショートを起こさないように保護する役割がある。
例えば、鍛造が必要な円柱状の鋼材を炉芯管10の一端側から押し込み、炉芯管10内を通過する間に加熱されて他端側から排出するときには鍛造が可能な温度に達した鋼材を得ることができる。
【0024】
炉芯管10は、コージライト粒子及びムライト粒子を備え、前記コージライト粒子及び前記ムライト粒子が一体となって構成されている。
コージライトは、熱膨張率が小さく耐熱衝撃性に優れるため、炉芯管の耐熱衝撃性に優れるものとすることができる。また、ムライトは、例えばアルミナに比べて熱伝導率が小さいため、炉芯管の熱伝導率を小さく抑えることができる。更に、ムライトは、例えばアルミナに比べて熱膨張率が小さいため、炉芯管の耐熱衝撃性の改善に有利に働く。
更に、ムライトの比重は約3.0であり、コージライトの比重約2.6と近い値である。そのため、ムライト粒子はコージライト粒子と混合しても、遠心成形時の原料粒子の分離を引き起こしにくいため、均一に混ざりやすく炉芯管の組成を均一なものとすることができる。
【0025】
コージライト粒子の粒径は特に限定はないが、0.1mm以上3.5mm未満であることが好ましい。0.1mm未満では、耐熱衝撃性が不十分となり、3.5mm以上では炉芯管の内面側の内面から、粒子の突き出しが生じたり、脱落するおそれがある。
ムライト粒子の粒径は特に限定はないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上70μm以下であることが更に好ましい。5μm未満では、その特性を十分発揮できず、100μmを超えると、コージライト粒子の隙間に入り込み難く炉芯管の材料の充填密度の低下を招く。
【0026】
コージライト粒子は、粒径1.0mm未満の細粒のみからなることができ、前記内面からの突き出しは許容範囲とすることができる。しかしながら、耐熱衝撃性という点では、コージライト粒子は、粒径1.0mm以上の粗粒を含むことが好ましい。
更には、コージライト粒子は、粒径1.0mm以上3.5mm未満の粗粒と、粒径0.1mm以上1.0mm未満の細粒と、を含むことが好ましい。
この粗粒と細粒の配合比率は特に限定はないが、質量%比で、粗粒:細粒=40~700:30~60であることが好ましく、粗粒:細粒=45~67:33~55であることが更に好ましい。
【0027】
粗粒のコージライトを含む場合、炉芯管の前記内表面側の内表面にコート層が形成されていることが好ましい。図2(d)に示すように、炉芯管20は、炉芯管10の内表面側の内表面にコート層30が形成されている。このコート層30は、炉芯管10の組成と同様とすることができるが、コージライトの粒径は、0.1~0.7mmであることが好ましく、0.1~0.5mmであることが更に好ましい。
コート層30によって、炉芯管20の内表面側の内表面は粗粒のコージライトの突き出しを防ぎ滑らかな表面とすることができる。
【0028】
[3]炉芯管の製造方法A
本発明の炉芯管の製造方法Aは、炉芯管用組成物を混練して混練物を得る混練工程と、混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る成形工程と、未硬化成形体を該成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る養生工程と、硬化成形体を脱型・乾燥して炉芯管を得る乾燥工程と、を備えことを特徴とする。
【0029】
[混練工程]
混練工程は、炉芯管用組成物を混練して混練物を得る工程である。炉芯管用組成物は、前述の[1]に記載の炉芯管用組成物を用いることができる。
炉芯管用組成物は水と混合し、原料が均一になるように混練する。
成形時に円筒の成形型の内面に混練物を均等にいきわたらせるためには、適切な流動性が必要である。
炉芯管用組成物と水との混合割合は、適切な流動性が得られれば特に限定はないが、炉芯管用組成物(固形原料)全体を100質量%とした場合に、水20~30質量%と混合することが好ましく、水22~28質量%とすることが更に好ましい。水20質量%未満では、成形用金型の内側に混練物を均等にいきわたらせることが困難であり、水30質量%を超えると流動性が高くなり過ぎ、密度の異なる原料粒子の分離が大きくなって製品としての炉芯管の材質が不均一となる支障が生ずる。
【0030】
[成形工程]
成形工程は、混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る工程である。例えば、図1(a)に示すように、円筒状の成形用金型80の他端側80bを蓋材85bで閉塞して、一端側80aから混練物10Mを流し込む。
次いで、図1(b)に示すように、一端側80aを蓋材85aで閉塞して、成形用金型80を水平に保ち、その中心軸の回りに回転させる。こうすることで、混練物10Mは遠心力で円筒金型80の内壁に均等な厚さで保持される。回転数を上げると混練物から気泡、水が押し出されて硬化し、未硬化成形体10Aが得られる。回転を止めても未硬化成形体10Aの形状を保持できる。遠心回転は、特に限定されないが、その成形用の円筒型の内表面の周速度として0.8~4.5m/sとすることができる。
より効果的には、上記周速度として0.8~1.6m/sとする第1段階と、1.9~2.5m/sとする第2段階と、2.7~4.5m/sとする第3段階と、からなることができる。
すなわち、第1段階では、混練物10Mを円筒型の内壁に均一の厚さにいきわたらせる。次いで第2段階では、第1段階の効果を確実にし、更に内包する気泡を押し出し除去する。そして、第3段階においては、水を押し出し除去して未硬化成形体10Aを得る。
【0031】
[養生工程]
養生工程は、未硬化成形体を成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る工程である。例えば図1(c)に示すように、成形用金型80の両端側80a又は80bからそれぞれ蓋材85a及び/又は85bを取り外して、未硬化成形体Aの内表面上に染み出た水を排出する。そして、図1(d)に示すように、取り外した蓋材85a及び/又は85bを取り付けて、常温にて養生をする。こうすることで、結合剤(例えば、ハイアルミナセメント)と水とが反応して生成された水和硬化物が、骨材粒子同士を接合し、強度が得られる。こうして、脱型可能な強度となった硬化成形体10Bが得られる。
養生時間は、脱型可能となるまでの強度が得られれば、特に限定はないが、通常12時間以上、好ましくは18時間以上、更に好ましくは24時間以上である。
【0032】
[乾燥工程]
乾燥工程は、硬化成形体を脱型・乾燥して炉芯管を得る工程である。例えば、図1(d)に示すように、脱型後乾燥して、炉芯管10が得られる。硬化成形体10Bは、内部に水分が残留しているため、更に、加熱して乾燥する。乾燥温度は、硬化成形体10Bから水分が除去できれば特に限定はないが、通常90~170℃であり、好ましくは、100~160℃、更に好ましくは110~150℃である。
以上により、炉芯管10が得られる。必要に応じて、加工等を施すことができる。
【0033】
[4]炉芯管の製造方法B
炉芯管の製造方法Bは、組成物を混練して混練物を得る混練工程と、混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る第1成形工程と、未硬化成形体を成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る第1養生工程と、硬化成形体の内表面に原料を含むコート剤を塗布した後、遠心成形して未硬化コート層付き成形体を得る第2成形工程と、未硬化コート層付き成形体を脱型・養生して硬化コート層付き成形体を得る第2養生工程と、硬化コート層付き成形体を乾燥して炉芯管を得る乾燥工程と、を備えことを特徴とする。
炉芯管の製造方法Bは、炉芯管の製造方法Aと異なる主な点は、硬化成形体を得た後更に内表面にコート剤を塗布する工程を有する点である。
【0034】
[混練工程]
混練工程は、炉芯管用組成物を混練して混練物を得る工程であり、[3]炉芯管の製造方法Aの記載の[混練工程]のとおりである。
【0035】
[第1成形工程]
第1成形工程は、混練物を円筒状の成形用金型に流し込み、遠心成形して未硬化成形体を得る工程であり、[2]炉芯管の製造方法Aの記載の[成形工程]のとおりである(図1(a)、(b)参照。)。
【0036】
[第1養生工程]
第1養生工程は、未硬化成形体を成形用金型に保持したまま養生して硬化成形体を得る工程であり、[2]炉芯管の製造方法Aの記載の[養生工程]のとおりである(図1(c)参照。)。
【0037】
[第2成形工程]
第2成形工程は、第1養生工程で得られた硬化成形体の内表面に原料を含むコート剤を塗布した後、遠心成形して未硬化コート層付き成形体を得る工程である。
例えば、図1(c)に示す養生工程後に、図2(a)に示すように、成形用金型80の他端側80bを蓋材85bで閉塞して、硬化成形体10Bの表面に少量のコート剤30Mを流し込む。
コート剤30Mは、前述の炉芯管用組成物と同様の材料を用いることができるが、コート剤30Mの骨材粒子は1mm未満の細粒を用いることが好ましい。より具体的には、コート剤30Mの骨材粒子のうちセラミックA粒子の粒径は、0.1~0.7mmであることが更に好ましく、0.1~0.5mmであることがより好ましい。セラミックB粒子の粒径は5~100μmであることが好ましく、10~70μmであることが更に好ましい。
次いで、図2(b)に示すように、一端側80aを蓋材85aで閉塞して、成形用金型80を水平に保ち、その中心軸の回りに回転させる。こうすることで、コート剤30Mは遠心力で硬化成形体10Bの内面に均等な厚さで塗布される。回転数を上げると、塗布層から気泡、水が押し出されて硬化し、硬化成形体10B表面に未硬化コート層30Aが形成され、未硬化コート層付き成形体20Aが得られる。回転を止めても未硬化コート層付き成形体20Aの形状を保持できる。
遠心回転は、特に限定されないが、その成形用の円筒型の内表面の周速度として0.8~4.5m/sとすることができる。
より効果的には、上記周速度として0.8~1.6m/sとする第1段階と、1.9~2.5m/sとする第2段階と、2.7~4.5m/sとする第3段階と、からなることができる。第1~第3段階の遠心回転の作用効果については、前述のとおりである。
【0038】
[第2養生工程]
第2養生工程は、未硬化コート層付き成形体を脱型・養生して硬化コート層付き成形体を得る工程である。第2成形工程で得られた未硬化コート層付き成形体20Aは、硬化成形体10Bがすでに形成されているため、第2成形工程後、図2(c)に示すように、直ちに脱型することができる。そして第2養生工程により、未硬化コート層30Aが硬化コート層30Bとなり、硬化コート層付き成形体20Bとなる。第2養生工程は、図示しない密閉容器内において常温で行う。養生時間は、硬化コート層30Bが形成されれば、特に限定はないが、通常12時間以上、好ましくは18時間以上、更に好ましくは24時間以上である。
【0039】
[乾燥工程]
乾燥工程は、硬化コート層付き成形体を乾燥して炉芯管を得る工程である。例えば、図2(d)に示すように、第2養生工程後、乾燥して、炉芯管20が得られる。すなわち、硬化コート層付き成形体20Bは、硬化コート層30Bの内部に水分が残留しているため、更に、加熱して乾燥する。乾燥温度は、硬化コート層付き成形体20Bから水分が除去できれば特に限定はないが、通常90~170℃であり、好ましくは、100~160℃、更に好ましくは110~150℃である。
以上により、炉芯管10の内表面側の内面にコート層30が形成された炉芯管20が得られる。必要に応じて、加工等を施すことができる。
炉芯管20は、内表面側の内表面が細粒の骨材粒子からなるコート層30で被覆されるため、滑らかな面を得ることができる。
【実施例0040】
以下、図面等に基づいて実施例により本発明を詳しく説明する。
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例1]
(1)炉芯管用組成物
表1に示す実施例1に係る炉芯管用組成物の固形原料を調製した。
骨材粒子としては、セラミックA粒子としてのコージライトとセラミックB粒子としてのムライトを用いた。コージライトは、比重2.6、粒径1mm未満の細粒のみからなり、ムライトは、比重3.0、粒径5~45μmの粒子からなる。微細アルミナの粒径は10μm以下、ハイアルミナセメントの粒径は75μm以下である。
【0043】
(2)炉芯管の製造
<混練工程>
前記固形原料100質量%に対して、水25質量%を加えて混練し適度な流動性を有する混練物10Mを得た。
<成形工程>
図1(a)に示すように円筒状の成形用金型80(内径100mm、長さ700mm)に混練物10Mを流し込み、図1(b)に示すように、成形用金型80を水平に保ち、その中心軸の回りに回転させた。遠心回転が、成形用金型80内表面の周速度が1.0m/sとする第1段階と、2.2m/sとする第2段階と、3.7m/sとする第3段階とした。すなわち、第1段階では、混練物10Mを円筒型の内壁に均一の厚さにいきわたらせ、次いで第2段階では、更に内包する気泡を押し出し除去し、第3段階においては、水を押し出し除去して未硬化成形体10Aを得た。
<養生工程>
図1(c)に示すように、成形用金型80の両端側から蓋材85a及び85bを取り外して、未硬化成形体10A内表面上に染み出た水を排出した。
そして、図1(d)に示すように、再び蓋材85a及び85bを取り付けて、常温にて15時間、未硬化成形体10Aを養生した。こうして、脱型可能な強度となった硬化成形体10Bを得た。
<乾燥工程>
図1(e)に示すように、硬化成形体10Bを脱型して、図示しない乾燥炉において130℃で加熱して、内部に残留していた水分を除去した。
以上の工程により、外径100mm、肉厚10mm、長さ700mmの炉芯管20を得た。
【0044】
(3)評価
得られた炉芯管20は、外表面は気泡痕のない滑らかな「手直し」不要であった。内表面はコージライト粒子(細粒)の小さな突き出しがあるものの製品として許容できるレベルの面であった。
略同様の原料配合(但し、コージライトの粗粒が多め、セラミック粒子はアルミナ)の振動鋳込み成形品(以下、単に「振動鋳込み成形品」という。)と比較したところ、得られた炉芯管20の強度は振動鋳込み成形品の1.5倍であった。
熱伝導率は振動鋳込み成形品の0.85倍で優れていた。耐熱衝撃性は振動鋳込み成形品に比べて劣った。
耐熱衝撃性が劣ったのは、コージライトが細粒のみからなり、熱応力の吸収が十分でなかったことに起因する。
【0045】
[実施例2]
(1)炉芯管用組成物
表1に示す実施例2に係る炉芯管用組成物の固形原料を調製した。
骨材粒子としては、セラミックA粒子としてのコージライトとセラミックB粒子としてのムライトを用いた。コージライトは、比重2.6、粒径1mm以上、3mm未満の粗粒20質量%と粒径1mm未満の細粒25質量%からなり、ムライトは、比重3.0、粒径5~45μmの粒子からなる。微細アルミナの粒径は0.5~10μm、ハイアルミナセメントの粒径は75μm以下である。
【0046】
(2)炉芯管の製造
<混練工程>
実施例1の混練工程と同一であり、前述のとおりである。
<第1成形工程>
実施例1の成形工程と同一であり、前述のとおりである。
<第1養生工程>
実施例1の養生工程と同一であり、前述のとおりである。
<第2成形工程>
図2(a)に示すように、他端側80bを蓋材85bで閉塞して、第1養生工程で得られた硬化成形体10Bの内表面に少量のコート剤30Mを流し込んだ。コート剤30Mの固形原料は、骨材粒子であるコージライトを0.5mm以下の細粒とした以外は、実施例1に係る固形原料と同一とした。
次いで、図2(b)に示すように、一端側80aを蓋材85aで閉塞して、成形用金型80を水平に保ち、その中心軸の回りに回転させることで、コート剤30Mは遠心力で硬化成形体10Bの内面に均等な厚さで塗布され、硬化成形体10B表面に未硬化コート層30Aが形成され、未硬化コート層付き成形体20Aが得られた。
遠心回転は、成形用金型80内表面の周速度が1.0m/sとする第1段階と、2.2m/sとする第2段階と、3.7m/sとする第3段階とした。
すなわち、第1段階では、コート剤30Mを円筒型の内壁に均一の厚さにいきわたらせ、次いで第2段階では、更に、コート剤30Mから内包する気泡を押し出し除去し、第3段階においては、コート剤30Mから水を押し出し除去して未硬化コート付き成形体20Aを得た。
【0047】
<第2養生工程>
図2(c)に示すように、未硬化コート層付き成形体を脱型後、図示しない密閉容器内において常温で養生した。こうして、未硬化コート層30Aが硬化コート層30Bとなり、硬化コート層付き成形体20Bが得られた。養生時間は、15時間であった。
【0048】
<乾燥工程>
図2(d)に示すように、硬化コート層付き成形体20Bを、加熱温度130℃で、加熱・乾燥して、外径100mm、肉厚10mm、長さ700mmの炉芯管20を得た。炉芯管20は、炉芯管10の内表面側の内表面にコート層30が形成されたものである。
【0049】
(3)評価
得られた炉芯管20は、外表面は気泡痕のない滑らかな「手直し」不要であった。
硬化コート層がない状態の硬化成形体10Bのままでは、内表面にはコージライト粒子(粗粒)の小さな突き出しがあって滑らかな面は得られなかった。内表面にコート層30が形成されることで、滑らかな面が得られた。
振動鋳込み成形品と比較したところ、得られた炉芯管20の強度は振動鋳込み成形品の1.5倍であった。
熱伝導率は振動鋳込み成形品よりも小さい結果となり、優れていた。なお、炉芯管の使用目的は誘導コイルの保護であることから、熱伝導率が小さい(熱が伝わりにくい)程好ましいといえる。
また耐熱衝撃性は振動鋳込み成形品と同等であった。「耐熱衝撃性」の試験は、試験品(炉芯管20)の内部が1200℃になるように加熱した際に発生するキレツの有無、程度を比較評価したものである。
実施例1と比べ耐熱衝撃性が優れていたのは、コージライトの粗粒を配合したことにより、粗粒の粒子界面が内部応力の吸収場所として働き、成形体が熱衝撃を受けたとき熱応力を緩和して破壊を防ぐ効果があったことに起因する。
【0050】
[実施例3]
(1)炉芯管用組成物
表1に示す実施例3に係る炉芯管用組成物の固形原料を調製した。
骨材粒子としては、セラミックA粒子としてのコージライトとセラミックB粒子としてのムライトを用いた。コージライトは、比重2.6、粒径1mm以上、3mm未満の粗粒30質量%と粒径1mm未満の細粒15質量%からなり、ムライトは、比重3.0、粒径5~45μmの粒子からなる。微細アルミナの粒径は0.5~10μm、ハイアルミナセメントの粒径は75μm以下である。
【0051】
(2)炉芯管の製造
<混練工程>
実施例1の混練工程と同一であり、前述のとおりである。
<第1成形工程>
実施例1の成形工程と同一であり、前述のとおりである。
<第1養生工程>
実施例1の養生工程と同一であり、前述のとおりである。
<第2成形工程>
実施例2の成形工程と同一であり、前述のとおりである。
<第2養生工程>
実施例2の養生工程と同一であり、前述のとおりである。
<乾燥工程>
実施例2の乾燥工程と同一であり、前述のとおりである。
【0052】
(3)評価
得られた炉芯管は、実施例2で得られた炉芯管とほぼ同一の特性であった。すなわち、外表面は気泡痕のない滑らかな「手直し」不要であり、強度は振動鋳込み成形品の1.5倍であった。熱伝導率も振動鋳込み成形品よりも小さい結果となり優れていた。また耐熱衝撃性は振動鋳込み成形品と同等であった。これらの作用効果については、実施例2の(3)評価において記載したとおりである。
【0053】
[比較例]
(1)炉芯管用組成物
表1に示す比較例に係る炉芯管用組成物の固形原料を調製した。
骨材粒子としては、セラミックA粒子としてのコージライトとセラミックB粒子としてのアルミナを用いた。コージライトは、比重2.6、粒径1mm未満の細粒のみからなり、アルミナは、比重3.9、粒径1~45μmの粒子からなる。微細アルミナの粒径は0.5~10μm、ハイアルミナセメントの粒径は75μm以下である。
実施例1~3との相違は、セラミックB粒子として、ムライトに代えてアルミナを用いた点である。
【0054】
(2)炉芯管の製造
<混練工程>において、固形原料100質量%に対して、水20質量%を加えて混練した以外は、<成形工程>、<養生工程>、<乾燥工程>のいずれも、実施例1と同一の工程手順で炉芯管10を製造した。
【0055】
(3)評価
得られた炉芯管10は、外表面は気泡痕がなく滑らかで「手直し」不要であった。内表面はコージライト粒子(細粒)の小さな突き出しがあるものの製品として許容できるレベルの面であった。
振動鋳込み成形品と比較したところ、強度は振動鋳込み成形品の1.5倍であった。熱伝導率は振動鋳込み成形品に比べて1.2倍であり、劣るものであった。熱伝導率は、実施例1、2と比較しても劣る結果となっているが、実施例1、2のセラミックB粒子はムライトであるのに対して、本比較例では、アルミナであることに起因する。すなわち、ムライトの熱伝導率はアルミナの約1/8であり、セラミックB粒子としてアルミナを用いたことにより、材料全体の熱伝導率が大きくなったといえる。
また、ムライトの熱膨張率はアルミナの約2/3であり、材料の熱膨張率を小さくするように動くので、耐熱衝撃性の改善に有利に働く。更に、ムライトの比重はアルミナの約3/4であり、遠心成形時の原料粒子の分離を引き起こしにくいため、材料内部の不均質が原因となる耐熱衝撃破壊を起こしにくくするのに有利といえる。そのため、アルミナ粒子を用いると、耐熱衝撃性に劣るという結果となった。
【0056】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0057】
鋼材を鍛造するにあたって行う加熱処理において、誘導加熱コイルの内側に設置することによって加熱されて赤熱した鋼材が発する熱やスケールからコイルを保護する炉芯管の技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10;炉芯管
10M;混練物、10A;未硬化成形体、10B;硬化成形体
20;炉芯管
20A;未硬化コート層付き成形体、20B;硬化コート層付き成形体
30;コート層、30M;コート剤、30A;未硬化コート層、30B;硬化コート層
図1
図2