(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091039
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】衣付き食品の製造または改質用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20220613BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20220613BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20220613BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20220613BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A23L5/10 E
A23L13/00 A
A23L17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203720
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木場 隆介
(72)【発明者】
【氏名】中越 裕行
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B035LC03
4B035LC05
4B035LC16
4B035LE17
4B035LG01
4B035LG12
4B035LG20
4B035LG22
4B035LG23
4B035LG25
4B035LG26
4B035LG27
4B035LP07
4B035LP27
4B042AC05
4B042AC06
4B042AC10
4B042AD18
4B042AD36
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK09
4B042AP05
4B042AP19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】唐揚げ等の衣付き食品を改質するための組成物、及び方法を提供する。
【解決手段】油含有粒子、及び任意で耐熱性増粘多糖類を含有する、衣付き食品の改質用組成物である。油含有粒子が、油を保持する多孔質粒子及び/又は粉末油であり、耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、カラギーナン、ジェランガム、β-グルカン主鎖を有する多糖、ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖、マンナン主鎖を有する多糖、及びそれらの組み合わせから選択される、該組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
衣付き食品の製造または改質用であり、
油含有粒子を含有する、組成物。
【請求項2】
前記油含有粒子が、油を保持する多孔質粒子および/または粉末油である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多孔質粒子が、ケイ素化合物粒子である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多孔質粒子が、シリカ粒子である、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、耐熱性増粘多糖類を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、カラギーナン、ジェランガム、β-グルカン主鎖を有する多糖、ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖、マンナン主鎖を有する多糖、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸ナトリウムである、請求項5~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記衣付き食品の製造の際に、食材に衣材を付着させる前に該食材に付着させることにより利用されるか、衣材と同時に食材に付着させることにより利用される、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記改質が、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記劣化が、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣のクリスピー感の低下、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記衣付き食品が、衣付きタンパク質含有食品である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記衣付き食品が、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、または衣付きベジミート食品である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
衣付き食品の製造方法であって、
下記工程(a)および(b):
(a)油含有粒子を食材に付着させる工程;
(b)衣材を前記食材に付着させる工程
を含み、
前記工程(b)が、前記工程(a)の後に実施されるか、前記工程(a)と同時に実施
される、方法。
【請求項15】
衣付き食品の改質方法であって、
下記工程(a)および(b):
(a)油含有粒子を食材に付着させる工程;
(b)衣材を前記食材に付着させる工程
を含み、
前記工程(b)が前記工程(a)の後に実施されるか、前記工程(a)および(b)が同時に実施される、方法。
【請求項16】
前記改質が、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記劣化が、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣のクリスピー感の低下、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記油含有粒子が、油を保持する多孔質粒子および/または粉末油である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記多孔質粒子が、ケイ素化合物粒子である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多孔質粒子が、シリカ粒子である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程(a)が、油含有粒子および耐熱性増粘多糖類を食材に付着させる工程である、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、カラギーナン、ジェランガム、β-グルカン主鎖を有する多糖、ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖、マンナン主鎖を有する多糖、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸ナトリウムである、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
さらに、前記衣材が付着した食材を油調する工程を含む、請求項14~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記油調が、油で揚げること、または、衣材に油を付着させてから焼成することである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記衣付き食品が、衣付きタンパク質含有食品である、請求項14~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記衣付き食品が、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、または衣付きベジミート食品である、請求項14~27のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唐揚げ等の衣付き食品を改質する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣付き食品を改質する技術としては、食材の表面に保水性粉末、卵タンパク質含有液、および衣材を順に付着させてから油調する方法が報告されており、保水性粉末として加工澱粉やゲル化剤が例示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、唐揚げ等の衣付き食品を改質する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、油含有粒子を利用することにより油調後の衣付き食品の経時劣化を抑制できること、および油含有粒子を耐熱性増粘多糖類と併用することにより油調後の衣付き食品の経時劣化をさらに抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
組成物であって、
衣付き食品の製造または改質用であり、
油含有粒子を含有する、組成物。
[2]
前記油含有粒子が、油を保持する多孔質粒子および/または粉末油である、前記組成物。
[3]
前記多孔質粒子が、ケイ素化合物粒子である、前記組成物。
[4]
前記多孔質粒子が、シリカ粒子である、前記組成物。
[5]
さらに、耐熱性増粘多糖類を含有する、前記組成物。
[6]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、カラギーナン、ジェランガム、β-グルカン主鎖を有する多糖、ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖、マンナン主鎖を有する多糖、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[7]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[8]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸ナトリウムである、前記組成物。
[9]
前記衣付き食品の製造の際に、食材に衣材を付着させる前に該食材に付着させることに
より利用されるか、衣材と同時に食材に付着させることにより利用される、前記組成物。[10]
前記改質が、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制である、前記組成物。
[11]
前記劣化が、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣のクリスピー感の低下、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[12]
前記衣付き食品が、衣付きタンパク質含有食品である、前記組成物。
[13]
前記衣付き食品が、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、または衣付きベジミート食品である、前記組成物。
[14]
衣付き食品の製造方法であって、
下記工程(a)および(b):
(a)油含有粒子を食材に付着させる工程;
(b)衣材を前記食材に付着させる工程
を含み、
前記工程(b)が、前記工程(a)の後に実施されるか、前記工程(a)と同時に実施される、方法。
[15]
衣付き食品の改質方法であって、
下記工程(a)および(b):
(a)油含有粒子を食材に付着させる工程;
(b)衣材を前記食材に付着させる工程
を含み、
前記工程(b)が前記工程(a)の後に実施されるか、前記工程(a)および(b)が同時に実施される、方法。
[16]
前記改質が、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制である、前記方法。
[17]
前記劣化が、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣のクリスピー感の低下、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法。
[18]
前記油含有粒子が、油を保持する多孔質粒子および/または粉末油である、前記方法。[19]
前記多孔質粒子が、ケイ素化合物粒子である、前記方法。
[20]
前記多孔質粒子が、シリカ粒子である、前記方法。
[21]
前記工程(a)が、油含有粒子および耐熱性増粘多糖類を食材に付着させる工程である、前記方法。
[22]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、カラギーナン、ジェランガム、β-グルカン主鎖を有する多糖、ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖、マンナン主鎖を有する多糖、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法。
[23]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェラ
ンガム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法。
[24]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸ナトリウムである、前記方法。
[25]
さらに、前記衣材が付着した食材を油調する工程を含む、前記方法。
[26]
前記油調が、油で揚げること、または、衣材に油を付着させてから焼成することである、前記方法。
[27]
前記衣付き食品が、衣付きタンパク質含有食品である、前記方法。
[28]
前記衣付き食品が、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、または衣付きベジミート食品である、前記方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、唐揚げ等の衣付き食品を改質することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1>有効成分
本発明においては、下記成分(A)を有効成分として利用する:
(A)油含有粒子。
【0010】
本発明においては、さらに、下記成分(B)を有効成分として利用してもよい:
(B)耐熱性増粘多糖類。
【0011】
上記成分(A)および(B)(ただし、成分(B)については利用される場合のみ包含される)を総称して「有効成分」ともいう。
【0012】
有効成分を利用することにより、衣付き食品を改質することができる、すなわち、衣付き食品を改質する効果が得られる。同効果を「食品改質効果」ともいう。すなわち、有効成分を利用することにより、有効成分を利用しない場合と比較して、衣付き食品を改質することができる。例えば、成分(A)を利用することにより、成分(A)を利用しない場合と比較して、衣付き食品が改質されてよい。また、例えば、成分(A)と(B)を併用することにより、成分(A)のみを利用する場合と比較して、衣付き食品が改質されてよい。よって、有効成分は、衣付き食品の改質に利用されてよい。
【0013】
また、衣付き食品の改質の結果、改質された衣付き食品が得られてよい。言い換えると、有効成分を利用することにより、改質された衣付き食品を製造することができる。すなわち、有効成分を利用することにより、有効成分を利用しない場合と比較して、改質された衣付き食品を製造することができる。よって、有効成分は、衣付き食品の製造(具体的には、改質された衣付き食品の製造)に利用されてよい。「衣付き食品の改質」と「改質された衣付き食品の製造」は、代替可能に用いられてもよい。
【0014】
有効成分は、後述する本発明の方法に記載の態様で衣付き食品の改質または製造に利用されてよい。
【0015】
衣付き食品の改質としては、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制が挙げられる。油調
後の衣付き食品の経時劣化は、例えば、油調後の保温に伴う衣付き食品の経時劣化であってもよい。劣化としては、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣のクリスピー感の低下、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下が挙げられる。有効成分を利用することにより、例えば、これらの劣化から選択される1つまたはそれ以上の劣化が抑制されてよい。有効成分を利用することにより、例えば、これらの劣化の全てが抑制されてもよい。衣付き食品が改質されたことは、例えば、有効成分を利用して製造された衣付き食品と有効成分を利用せずに製造された衣付き食品とで改質の対象となるパラメータを比較することにより、確認できる。改質の対象となるパラメータを測定する方法は、例えば、パラメータの種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。衣付き食品の歩留の比較は、例えば、衣付き食品の重量の変動を測定して比較することにより、測定できる。衣の歯切れ、衣のクリスピー感、衣剥がれ、食材表面の粘性、および食材のジューシー感の比較は、いずれも、例えば、専門パネルによる官能評価により実施できる。
【0016】
「油含有粒子」とは、油を含有する粒子を意味する。油含有粒子は、油からなるものであってもよく、そうでなくてもよい。
【0017】
油は、可食性のものであれば、特に制限されない。油は、常温で液体であってもよく、そうでなくてもよい。「油(oil)」には、特記しない限り、「fat」と呼ばれるものも包含されてよい。油としては、動物由来の油(動物油)、植物由来の油(植物油)、それらの硬化油が挙げられる。動物油としては、鶏脂、豚脂、牛脂、羊油、鯨油、魚油、卵油、バターが挙げられる。魚油としては、マグロ油、カツオ油、イワシ油、サバ油、サケ油、タラ油が挙げられる。植物油としては、菜種油、米油、紅花油、ヒマワリ油、オリーブ油、落花生油、パーム油、パーム核油、やし油、大豆油、コーン油、綿実油、ごま油、ぶどう種子油、えごま油が挙げられる。硬化油としては、部分硬化油や極度硬化油が挙げられる。油としては、特に、植物油が挙げられる。油として、さらに特には、菜種油が挙げられる。油としては、1種の油を用いてもよく、2種またはそれ以上の油を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
油含有粒子としては、油を保持する多孔質粒子が挙げられる。
【0019】
多孔質粒子は、油を保持できる可食性のものであれば、特に制限されない。多孔質粒子としては、ケイ素化合物粒子やセルロース粒子が挙げられる。ケイ素化合物としては、二酸化ケイ素(「シリカ」ともいう)やケイ酸カルシウムが挙げられる。多孔質粒子としては、特に、シリカ粒子が挙げられる。多孔質粒子は、不溶性粒子であってよい。「不溶性粒子」とは、水に実質的に溶解しない粒子を意味してよい。「不溶性粒子」とは、具体的には、例えば、25℃での水に対する溶解度が、0.1g/L以下、0.01g/L以下、または0.001g/L以下である粒子を意味してよい。多孔質粒子の粒子径は、特に制限されない。多孔質粒子の粒子径は、メジアン径として、例えば、0.5μm以上、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、または3μm以上であってもよく、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、または3μm以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。多孔質粒子の粒子径は、メジアン径として、具体的には、例えば、1~10μm、2~6μm、または2~4μmであってもよい。「メジアン径」とは、レーザー回折・散乱法によって得られた粒度分布における頻度基準での積算値50%での粒径を意味する。メジアン径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度測定装置(HORIBA LA-920)を用いて測定することができる。多孔質粒子としては、1種の多孔質粒子を用いてもよく、2種またはそれ以上の多孔質粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
油含有粒子としては、粉末油も挙げられる。
【0021】
粉末油は、可食性のものであれば、特に制限されない。粉末油としては、油の粉末化物が挙げられる。粉末油として、具体的には、上記例示した油の粉末化物が挙げられる。粉末油の粒子径は、特に制限されない。粉末油の粒子径は、メジアン径として、例えば、0.5μm以上、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、または3μm以上であってもよく、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、または3μm以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。粉末油の粒子径は、メジアン径として、具体的には、例えば、1~10μm、2~6μm、または2~4μmであってもよい。粉末油としては、1種の粉末油を用いてもよく、2種またはそれ以上の粉末油を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
油含有粒子中の油の含有量は、例えば、10%(w/w)以上、15%(w/w)以上、20%(w/w)以上、30%(w/w)以上、40%(w/w)以上、50%(w/w)以上、60%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、または90%(w/w)以上であってもよく、100%(w/w)以下、95%(w/w)以下、90%(w/w)以下、80%(w/w)以下、70%(w/w)以下、60%(w/w)以下、50%(w/w)以下、40%(w/w)以下、30%(w/w)以下、または20%(w/w)以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。油含有粒子中の油の含有量は、具体的には、例えば、10~95%(w/w)、30~90%(w/w)、または50~80%(w/w)であってもよい。
【0023】
油含有粒子としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。油含有粒子の製造方法は、特に制限されない。油含有粒子は、例えば、公知の方法により製造できる。油含有粒子は、所望の程度に精製されていてもよく、そうでなくてもよい。すなわち、油含有粒子としては、精製品を用いてもよく、油含有粒子を含有する素材を用いてもよい。
【0024】
油を保持する多孔質粒子は、例えば、多孔質粒子と油を接触させることにより、調製することができる。油を保持する多孔質粒子は、具体的には、例えば、多孔質粒子に油を滴下または噴霧して撹拌することにより、調製することができる。油が常温で液体でない場合、例えば、油を加熱して液状にしてから多孔質粒子と接触させてよい。多孔質粒子としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。市販のシリカ粒子としては、サイロページ(#721等;富士シリシア化学(株))が挙げられる。また、シリカ粒子としては、珪藻や珪藻土等の天然のシリカ粒子を、そのまま、あるいは適宜加工して用いてもよい。
【0025】
粉末油は、例えば、油と水を乳化して乳化物(例えばO/W乳化物)を調製し、該乳化物を乾燥させることにより、調製することができる。乳化物の調製には、油と水に加えて、乳化剤、糖、タンパク質等の成分を適宜利用することができる。乾燥は、例えば、噴霧乾燥、噴霧凍結、凍結乾燥、凍結粉砕、押出造粒等の、任意の乾燥方法により実施できる。乾燥物は、例えば、そのまま、あるいは適宜、粉砕、造粒、分級等の処理に供してから、粉末油として利用してよい。
【0026】
「耐熱性増粘多糖類」とは、耐熱性ゲルを形成する多糖を意味する。言い換えると、耐熱性増粘多糖類は、ゲル化能を有する。「耐熱性ゲル」とは、溶解温度が70℃以上であるゲルを意味してよい。以下、耐熱性増粘多糖類を、単に「増粘多糖類」ともいう。
【0027】
増粘多糖類は、可食性のものであれば、特に制限されない。増粘多糖類としては、アルギン酸、カラギーナン、ジェランガムが挙げられる。増粘多糖類としては、β-グルカン主鎖を有する多糖、ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖、マンナン主鎖を有する多糖も
挙げられる。
【0028】
「β-グルカン」とは、D-グルコースがグリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。β-グルカンとしては、β-1,4グルカンやβ-1,3グルカンが挙げられる。「β-1,4グルカン」とは、D-グルコースがβ-1,4グリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。「β-1,3グルカン」とは、D-グルコースがβ-1,3グリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。β-グルカン主鎖は、修飾されていてもよく、いなくてもよい。修飾されたβ-グルカン主鎖としては、側鎖が付加されたものや水酸基がメトキシ化されたものが挙げられる。修飾されたβ-グルカン主鎖として、具体的には、β-1,4キシログルカンが挙げられる。β-グルカン主鎖を有する多糖としては、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードランが挙げられる。β-グルカン主鎖を有する多糖としては、特に、タマリンドシードガム等のβ-1,4キシログルカン構造を有する多糖が挙げられる。
【0029】
「ポリガラクツロン酸」とは、D-ガラクツロン酸がグリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。ポリガラクツロン酸しては、α-1,4ポリガラクツロン酸が挙げられる。「α-1,4ポリガラクツロン酸」とは、D-ガラクツロン酸がα-1,4グリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。ポリガラクツロン酸主鎖は、修飾されていてもよく、いなくてもよい。ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖としては、ペクチンが挙げられる。
【0030】
「マンナン」とは、D-マンノースがグリコシド結合で直鎖状に連結された構造を意味してよい。マンナンとしては、β-1,4マンナンが挙げられる。「β-1,4マンナン」とは、D-マンノースがβ-1,4グリコシド結合で直鎖状に連結された構造を意味してよい。マンナン主鎖は、修飾されていてもよく、いなくてもよい。修飾されたマンナン主鎖として、具体的には、β-1,4ガクラトマンナンが挙げられる。マンナン主鎖を有する多糖としては、ローカストビーンガムが挙げられる。
【0031】
すなわち、増粘多糖類として、具体的には、アルギン酸、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガムが挙げられる。増粘多糖類としては、特に、アルギン酸が挙げられる。
【0032】
アルギン酸は、β-D-マンヌロン酸(M)とα-L-グルロン酸(G)が1,4グリコシド結合で連結された直鎖構造の主鎖を有する多糖であってよい。アルギン酸の由来は、特に制限されない。アルギン酸としては、コンブやジャイアントケルプ等の褐藻類に由来するものが挙げられる。アルギン酸における、MとGの比率および分布ならびに分子量等のパラメータは、アルギン酸が耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。アルギン酸のM/G比(Gに対するMのモル比)は、例えば、0.5~2.0であってよく、特に、1.0~1.5であってもよい。
【0033】
タマリンドシードガムは、タマリンドの種子から得られる多糖であってよい。タマリンドシードガムは、β-1,4グルカン主鎖を有する多糖であってよい。タマリンドシードガムは、具体的には、β-1,4キシログルカン構造を有する多糖であってよい。「β-1,4キシログルカン」とは、β-1,4グルカンの主鎖にD-キシロースの側鎖が連結された構造を意味してよい。D-キシロース残基には、さらに、D-ガラクトース残基が連結されていてもよい。タマリンドシードガムは、具体的には、XXXG、XXLG、XLXG、およびXLLGを繰り返し単位とする繰り返し構造を有していてよい。ここで、「G」はD-グルコース残基を、「X」はα-1,6結合でD-キシロース残基が結合したD-グルコース残基(すなわち、α-D-xylopyranose-(1→6)-β-D-glucopyranose)を、「L」は、D-
キシロース残基にβ-1,2結合でさらにD-ガラクトース残基が連結された「X」(すなわち、β-D-galactopyranose-(1→2)-α-D-xylopyranose-(1→6)-β-D-glucopyranose)を示す。タマリンドシードガムにおける、側鎖の構成(例えば、XXXG、XXLG、XLXG、およびXLLGの比率および分布)ならびに分子量等のパラメータは、タマリンドシードガムが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0034】
キサンタンガムは、Xanthomonas campestris等の微生物が産生する多糖であってよい。キサンタンガムは、β-1,4グルカン主鎖を有する多糖であってよい。キサンタンガムは、具体的には、β-1,4グルカンの主鎖にα-D-マンノース、β-D-グルクロン酸、およびβ-D-マンノースの3糖よりなる側鎖が1残基おきに連結された構造を有する多糖であってよい。側鎖末端のマンノース残基は、ピルビル化されていてもよい。主鎖に結合したマンノース残基は、アセチル化されていてもよい。キサンタンガムにおける、側鎖の構成(例えば、ピルビル化およびアセチル化の程度および分布)ならびに分子量等のパラメータは、キサンタンガムが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0035】
メチルセルロースは、β-1,4グルカン主鎖を有する多糖であってよい。メチルセルロースは、具体的には、β-1,4グルカンの水酸基がメトキシ化された構造を有する多糖であってよい。メチルセルロースにおける、メトキシ化の程度および分布ならびに分子量等のパラメータは、メチルセルロースが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0036】
カードランは、Agrobacterium属細菌やAlcaligenes属細菌等の微生物が産生する多糖であってよい。カードランは、β-1,3グルカン主鎖を有する多糖であってよい。カードランにおける、分子量等のパラメータは、カードランが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0037】
ペクチンは、α-1,4ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖であってよい。D-ガラクツロン酸残基には、アラビノースやガラクトース等の中性糖の側鎖が連結されていてもよい。D-ガラクツロン酸残基のカルボキシル基は、メチルエステル化されていてもよい。ペクチンの由来は、特に制限されない。ペクチンとしては、各種植物に由来するものが挙げられる。ペクチンにおける、側鎖の構成(例えば、側鎖の比率および分布)、メチルエステル化の程度および分布、ならびに分子量等のパラメータは、ペクチンが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。ペクチンとしては、ローメトキシルペクチン(LMペクチン)やハイメトキシルペクチン(HMペクチン)が挙げられる。ペクチンとしては、特に、LMペクチンが挙げられる。「ローメトキシルペクチン」とは、エステル化度が50%未満であるペクチンをいう。「ハイメトキシルペクチン」とは、エステル化度が50%以上であるペクチンをいう。ペクチンの「エステル化度」とは、ペクチンの主鎖を構成する全ガラクツロン酸残基に対するメチルエステル化されているものの比率をいう。
【0038】
カラギーナンは、D-ガラクトースがα-1,3結合およびβ-1,4結合で交互に連結された直鎖構造の主鎖を有する多糖であってよい。D-ガラクトース残基は、3,6-アンヒドロ化されていてもよい。D-ガラクトース残基は、水酸基が硫酸化されていてもよい。カラギーナンの由来は、特に制限されない。カラギーナンとしては、Eucheuma cottoniiやEucheuma spinosum等の海藻類に由来するものが挙げられる。カラギーナンにおける、3,6-アンヒドロ化の程度および分布、硫酸化の程度および分布、ならびに分子量等のパラメータは、カラギーナンが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。カラギーナンとしては、カッパカラギーナンやイオタカラギーナンが挙げられる。
【0039】
ローカストビーンガムは、カロブの種子から得られる多糖であってよい。ローカストビーンガムは、β-1,4マンナン主鎖を有する多糖であってよい。ローカストビーンガム
は、具体的には、β-1,4ガクラトマンナン構造を有する多糖であってよい。「β-1,4ガクラトマンナン」とは、β-1,4マンナンの主鎖にガラクトースの側鎖が付加された構造を意味してよい。ローカストビーンガムにおける、分子量等のパラメータは、ローカストビーンガムが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0040】
ジェランガムは、Sphingomonas elodea(旧名Pseudomonas elodea)等の微生物が産生する多糖であってよい。ジェランガムは、D-グルコース(D-Glc)、D-グルクロン酸(D-GlcA)、D-グルコース(D-Glc)、L-ラムノース(L-Rha)が順に連結したD-Glc(β1→4)D-GlcA(β1→4)D-Glc(β1→4)L-Rha(α1→3)を繰り返し単位とする繰り返し構造の主鎖を有する多糖であってよい。繰り返し単位の左端のD-グルコース残基の2位の水酸基は、グリセリル化していてもよい。繰り返し単位の左端のD-グルコース残基の6位の水酸基は、アセチル化していてもよい。ジェランガムにおける、グリセリル化の程度および分布、アセチル化の程度および分布、ならびに分子量等のパラメータは、ジェランガムが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0041】
増粘多糖類としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。増粘多糖類の製造方法は特に制限されず、例えば、公知の方法を利用できる。増粘多糖類は、例えば、化学合成、酵素反応、抽出、発酵、またはその組み合わせにより製造することができる。すなわち、増粘多糖類は、例えば、増粘多糖類を含有する農水畜産物から抽出することにより、製造することができる。また、増粘多糖類は、例えば、増粘多糖類生産能を有する微生物を培養し、培養物から回収することにより、製造することができる。アルギン酸は、例えば、コンブやジャイアントケルプ等の褐藻類から抽出することにより、製造することができる。タマリンドシードガムは、例えば、タマリンドの種子から抽出することにより、製造することができる。キサンタンガムは、例えば、Xanthomonas campestris等のキサンタンガム生産能を有する微生物を培養し、培養物から回収することにより、製造することができる。メチルセルロースは、例えば、セルロースの水酸基をメトキシ化することにより、製造することができる。カードランは、例えば、Agrobacterium属細菌やAlcaligenes属細菌等のカードラン生産能を有する微生物を培養し、培養物から回収することにより、製造することができる。ペクチンは、例えば、柑橘類の果皮等の植物体から抽出することにより、製造することができる。カラギーナンは、例えば、Eucheuma cottoniiやEucheuma spinosum等の海藻類から抽出することにより、製造することができる。ローカストビーンガムは、例えば、カロブの種子から抽出することにより、製造することができる。ジェランガムは、例えば、Sphingomonas elodea(旧名Pseudomonas elodea)等のジェランガム生産能を有する微生物を培養し、培養物から回収することにより、製造することができる。市販のアルギン酸ナトリウムとしては、キミカアルギンI(IL-2、IL-6、I-1、I-3、I-5、I-8等;キミカ(株))が挙げられる。市販のタマリンドシードガムとしては、グリロイド3S(DSP五協フード&ケミカル(株))が挙げられる。増粘多糖類は、所望の程度に精製されていてもよく、そうでなくてもよい。すなわち、増粘多糖類としては、精製品を用いてもよく、増粘多糖類を含有する素材を用いてもよい。増粘多糖類を含有する素材としては、増粘多糖類を含有する農水畜産物、増粘多糖類の生産能を有する微生物の培養物、それらの加工品が挙げられる。
【0042】
塩を形成し得る成分は、いずれも、フリー体として使用されてもよく、塩として使用されてもよく、それらの組み合わせとして使用されてもよい。すなわち、「有効成分」という用語は、特記しない限り、フリー体の有効成分、もしくはその塩、またはそれらの組み合わせを意味してよい。具体的には、例えば、「アルギン酸」という用語は、特記しない限り、フリー体のアルギン酸、もしくはその塩、またはそれらの組み合わせを意味してよい。アルギン酸は、特に、アルギン酸塩であってよい。また、これらの成分(例えば、フリー体や塩)は、いずれも、特記しない限り、非水和物および水和物を包含してよい。有効成分以外の任意の成分(例えば、本発明の組成物に含有され得る有効成分以外の成分や
、本発明の方法で用いられ得る有効成分以外の成分)についても同様である。塩は、食品改質効果を損なわない限り、特に制限されない。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。また、例えば、アミノ基等の塩基性基に対する塩としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、メチルマロン酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。例えば、アルギン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩が挙げられる。アルギン酸の塩としては、特に、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の、水溶性のアルギン酸塩が挙げられる。アルギン酸の塩として、さらに特には、ナトリウム塩が挙げられる。塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
有効成分を含有する素材を用いる場合、有効成分の量(例えば、含有量(濃度)や使用量)は、当該素材中の有効成分そのものの量に基づいて算出されるものとする。ただし、増粘多糖類については、簡便のため、特記しない限り、当該増粘多糖類が不純物を含有し得る混合物(粗精製品等)の形態で一般的に製造および流通する場合には、当該混合物全体の量を当該増粘多糖類そのものの量とみなしてよい。すなわち、例えば、上記例示した市販の増粘多糖類は、特記しない限り、その純度に依らず、その重量を増粘多糖類そのものの重量とみなしてよい。
【0044】
<2>本発明の組成物
本発明の組成物は、有効成分を含有する組成物である。
【0045】
すなわち、本発明の組成物は、下記成分(A)を含有する組成物である:
(A)油含有粒子。
【0046】
本発明の組成物は、さらに、下記成分(B)を含有していてよい:
(B)耐熱性増粘多糖類。
【0047】
本発明の組成物を利用することにより、衣付き食品を改質することができる、よって、本発明の組成物は、衣付き食品の改質に利用されてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、衣付き食品の改質用の組成物であってよい。
【0048】
また、本発明の組成物を利用することにより、改質された衣付き食品を製造することができる。よって、本発明の組成物は、衣付き食品の製造(具体的には、改質された衣付き食品の製造)に利用されてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、衣付き食品の製造(具体的には、改質された衣付き食品の製造)用の組成物であってよい。
【0049】
本発明の組成物は、後述する本発明の方法に記載の態様で衣付き食品の改質または製造に利用されてよい。
【0050】
本発明の組成物は、有効成分からなるものであってもよく、有効成分以外の成分を含有していてもよい。
【0051】
有効成分以外の成分は、食品改質効果を損なわない限り、特に制限されない。有効成分以外の成分は、例えば、衣付き食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。有効成分以外の成分としては、食品または医薬品に配合される成分が挙げられる。
【0052】
有効成分以外の成分として、具体的には、増粘多糖類のゲル化に有効な成分が挙げられる。そのような成分としては、カルシウムが挙げられる。カルシウムとしては、塩化カルシウム等のカルシウム塩が挙げられる。カルシウムは、例えば、アルギン酸等の増粘多糖類と併用されてよい。
【0053】
有効成分以外の成分として、具体的には、衣付き食品の製造に有効な成分も挙げられる。衣付き食品の製造に有効な成分としては、衣材を食材に付着させる前に利用され得る材料に含有され得る成分が挙げられる。衣材を食材に付着させる前に利用され得る材料としては、調味液、打粉、卵液、バッター液が挙げられる。衣付き食品の製造に有効な成分としては、衣材に含有され得る成分も挙げられる。そのような成分については後述する。
【0054】
有効成分以外の成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明の組成物は、例えば、有効成分および任意でその他の成分を適宜混合することにより製造することができる。
【0056】
本発明の組成物は、例えば、適宜製剤化されていてよい。製剤化にあたっては、添加剤を適宜使用してよい。添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、溶剤が挙げられる。添加剤は、例えば、本発明の組成物の形状等の諸条件に応じて、適宜選択できる。
【0057】
本発明の組成物の形状は、特に、制限されない。本発明の組成物は、例えば、粉末、フレーク、錠剤、ペースト、液体等の任意の形状であってよい。本発明の組成物は、特に、粉末であってよい。
【0058】
本発明の組成物における各成分(すなわち、有効成分および任意でその他の成分)の含有量は、食品改質効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物における各成分の含有量は、例えば、成分の種類、衣付き食品の改質または製造の際の各成分の使用量、衣付き食品の改質または製造の際の本発明の組成物の使用量等の諸条件に応じて、適宜設定できる。
【0059】
本発明の組成物における有効成分の総含有量は、0%(w/w)より多く、且つ、100%(w/w)以下である。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、例えば、1%(w/w)以上、2%(w/w)以上、5%(w/w)以上、10%(w/w)以上、15%(w/w)以上、20%(w/w)以上、30%(w/w)以上、40%(w/w)以上、50%(w/w)以上、60%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、または90%(w/w)以上であってもよく、100%(w/w)以下、95%(w/w)以下、90%(w/w)以下、80%(w/w)以下、70%(w/w)以下、60%(w/w)以下、50%(w/w)以下、40%(w/w)以下、30%(w/w)以下、20%(w/w)以下、15%(w/w)以下、10%(w/w)以下、または5%(w/w)以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。
【0060】
本発明の組成物が成分(B)を含有する場合、本発明の組成物における成分(B)の含有量は、成分(A)100重量部に対し、例えば、5重量部以上、10重量部以上、20
重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、または500重量部以上であってもよく、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、または20重量部以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。本発明の組成物が成分(B)を含有する場合、本発明の組成物における成分(B)の含有量は、成分(A)100重量部に対し、具体的には、例えば、5~2000重量部、20~500重量部、または50~200重量部であってもよい。
【0061】
本発明の組成物における各有効成分の含有量は、例えば、上記例示した有効成分の総含有量および量比を満たすように設定することができる。また、本発明の組成物における各有効成分の含有量は、例えば、本発明の組成物を利用して衣付き食品を改質または製造する際に、各有効成分の使用量が所望の範囲となるように設定することができる。各有効成分の使用量は、例えば、本発明の方法の説明(後述)において例示する範囲であってよい。
【0062】
本発明の組成物に含有される各成分(すなわち、有効成分および任意でその他の成分)は、互いに混合されて本発明の組成物に含有されていてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、本発明の組成物に含有されていてもよい。例えば、本発明の組成物は、それぞれ別個にパッケージングされた各有効成分のセットとして提供されてもよい。このような場合、セットに含まれる成分は使用時に適宜併用することができる。
【0063】
<3>本発明の方法
本発明の方法は、有効成分を利用する工程を含む方法である。
【0064】
すなわち、本発明の方法は、下記成分(A)を利用する工程を含む方法である:
(A)油含有粒子。
【0065】
本発明の方法においては、さらに、下記成分(B)を利用してもよい:
(B)耐熱性増粘多糖類。
【0066】
本発明の方法により、具体的には有効成分を利用することにより、衣付き食品を改質することができる、すなわち、衣付き食品を改質する効果が得られる。よって、本発明の方法は、衣付き食品の改質のために実施されてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、衣付き食品を改質する方法であってよい。同方法を「本発明の改質方法」ともいう。
【0067】
また、本発明の方法により、具体的には有効成分を利用することにより、改質された衣付き食品を製造することができる。よって、本発明の方法は、衣付き食品の製造(具体的には、改質された衣付き食品の製造)のために実施されてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってよい。同方法を「本発明の製造方法」ともいう。
【0068】
衣付き食品の改質または製造において、有効成分は、食材に付着させて利用できる。すなわち、有効成分の利用としては、食材に有効成分を付着させることが挙げられる。すなわち、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分を付着させる工程、および食材に衣材を付着させる工程を含む、衣付き食品を改質する方法であってよい。また、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分を付着させる工程、および食材に衣材を付着させる工程を含む、衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってもよい。食材に有効成分を付着させる工程を、「有効成分付着工程」ともいう。有効成分付着工程は、具体的には、食材に有効成分を付着させて有効成分の付着した食材を得る工
程であってよい。食材に衣材を付着させる工程を、「衣材付着工程」ともいう。衣材付着工程は、具体的には、食材に衣材を付着させて衣材の付着した食材を得る工程であってよい。有効成分は、特に、食材の表面に接触するように食材に付着させてよい。
【0069】
衣材付着工程は、例えば、有効成分付着工程の後に実施されてよい。すなわち、衣付き食品の改質または製造において、有効成分は、食材に衣材を付着させる前に食材に付着させて利用できる。すなわち、有効成分の利用としては、食材に衣材を付着させる前に食材に有効成分を付着させることが挙げられる。言い換えると、本発明の方法においては、食材に有効成分を付着させてから、さらに衣材を付着させることができる。すなわち、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分を付着させる工程、および有効成分の付着した食材にさらに衣材を付着させる工程を含む、衣付き食品を改質する方法であってよい。また、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分を付着させる工程、および有効成分の付着した食材にさらに衣材を付着させる工程を含む、衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってもよい。すなわち、衣材付着工程は、具体的には、有効成分の付着した食材にさらに衣材を付着させて有効成分と衣材の付着した食材を得る工程であってよい。また、言い換えると、有効成分は、衣付き食品の衣材と食材の間に配置して利用されてよい。
【0070】
衣材付着工程は、有効成分付着工程と同時に実施されてもよい。すなわち、衣付き食品の改質または製造において、有効成分は、衣材と同時に食材に付着させて利用できる。すなわち、有効成分の利用としては、衣材と同時に有効成分を食材に付着させることが挙げられる。言い換えると、本発明の方法においては、例えば、食材に有効成分と衣材を同時に付着させてよい。すなわち、有効成分付着工程および衣材付着工程は、例えば、食材に有効成分と衣材を付着させて有効成分と衣材の付着した食材を得る工程として、同時に実施されてもよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分と衣材を同時に付着させる工程を含む、衣付き食品を改質する方法であってもよい。また、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分と衣材を同時に付着させる工程を含む、衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってもよい。例えば、有効成分を含有する衣材を食材に付着させることにより、有効成分付着工程と衣材付着工程を同時に実施することができる。すなわち、本発明の方法は、具体的には、例えば、有効成分を含有する衣材を食材に付着させる工程を含む、衣付き食品を改質する方法または衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってもよい。
【0071】
有効成分は、食材に付着できる任意の態様で有効成分付着工程に利用してよい。有効成分は、例えば、本発明の組成物の形態で有効成分付着工程に利用してよい。すなわち、「食材に有効成分を付着させる」ことには、食材に本発明の組成物を付着させることも包含される。
【0072】
衣付き食品の改質または製造は、例えば、有効成分を利用すること以外は、通常の衣付き食品の製造と同様に実施してよい。すなわち、衣付き食品の改質または製造は、例えば、有効成分を利用すること以外は、通常の衣付き食品と同様の原料を用いて同様の製造条件で実施してよい。また、衣付き食品の原料や製造条件は、いずれも、適宜修正して衣付き食品の改質または製造に利用してもよい。本発明の方法は、衣付き食品の原料から衣付き食品を製造する工程を含んでいてよい。同工程を「衣付き食品の製造工程」ともいう。
【0073】
衣付き食品の種類は、特に制限されない。衣付き食品としては、クリスピーな衣を有する食品が挙げられる。衣付き食品として、具体的には、唐揚げ、カツ、フライ、てんぷら、コロッケが挙げられる。唐揚げ、カツ、フライ、てんぷら、コロッケとしては、それぞれ、後述する食材を用いた唐揚げ、カツ、フライ、てんぷら、コロッケが挙げられる。唐揚げとして、具体的には、鶏の唐揚げやタコの唐揚げ等の鳥肉やシーフードの唐揚げが挙
げられる。カツとして、具体的には、豚カツ、牛カツ、チキンカツ、メンチカツ等の畜肉や鳥肉のカツが挙げられる。フライとして、具体的には、アジフライ、カキフライ、エビフライ等のシーフードのフライが挙げられる。てんぷらとして、具体的には、シーフードのてんぷらや野菜のてんぷらが挙げられる。コロッケとして、具体的には、ポテトコロッケやクリームコロッケが挙げられる。
【0074】
衣付き食品の原料としては、食材や衣材が挙げられる。「食材」とは、衣付き食品において内側に配置される素材を意味してよく、具体的には、衣付き食品において衣材より内側に配置される素材を意味してよい。「衣材」とは、衣付き食品において外側に配置される素材を意味してよく、具体的には、衣付き食品において食材より外側に配置される素材を意味してよい。
【0075】
まず、食材に有効成分を付着させることができる。
【0076】
食材の種類は、特に制限されない。食材は、例えば、衣付き食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。食材としては、タンパク質含有食材が挙げられる。「タンパク質含有食材」とは、タンパク質を含有する食材を意味する。タンパク質としては、動物性タンパク質や植物性タンパク質が挙げられる。動物性タンパク質含有食材としては、食肉やシーフードが挙げられる。「食肉」とは、食用の肉を意味する。食肉としては、動物の肉や鳥の肉が挙げられる。動物としては、牛、豚、馬、羊、山羊、兎等の家畜;猪、鹿、熊等の野生動物;鯨、イルカ、トド等の海洋哺乳類が挙げられる。鳥としては、鶏、七面鳥、カモ、ガチョウ、ホロホロ鳥、ウズラ、ダチョウが挙げられる。シーフードとしては、アジ、サケ、タラ、フグ、キス、アナゴ、ホキ、メルルーサ等の魚、エビやカニ等の甲殻類、ホタテやカキ等の貝類、イカやタコ等の他の水産物が挙げられる。植物性タンパク質含有食材としては、ベジミートが挙げられる。「ベジミート」とは、植物性タンパク質またはそれを含有する原料を食肉様に加工した食材を意味してよい。植物性タンパク質としては、豆、麦、米、トウモロコシ、芋、種子、キノコのタンパク質が挙げられる。豆としては、大豆、エンドウ豆、ソラ豆、ヒヨコ豆、アーモンド、落花生、ルピン豆が挙げられる。麦としては、小麦、大麦、ライ麦が挙げられる。種子としては、ひまわりの種、かぼちゃの種、キヌア、チアシード、麻の実が挙げられる。植物性タンパク質としては、特に、大豆タンパク質が挙げられる。すなわち、植物性タンパク質含有食材としては、特に、大豆タンパク質含有ベジミート等の、大豆タンパク質含有食材が挙げられる。食材としては、野菜も挙げられる。野菜としては、キノコ類や根菜類が挙げられる。食材としては、特に、食肉等のタンパク質含有食材が挙げられる。食材としては、1種の食材を用いてもよく、2種またはそれ以上の食材を組み合わせて用いてもよい。これらの食材は、例えば、そのまま、あるいは適宜加工してから、本発明の方法に利用してよい。加工としては、切断やミンチ等の形状加工、加熱、調味が挙げられる。
【0077】
すなわち、衣付き食品としては、衣付きタンパク質含有食品が挙げられる。「衣付きタンパク質含有食品」とは、食材の少なくとも一部がタンパク質含有食材である衣付き食品を意味してよい。衣付きタンパク質含有食品としては、衣付き動物性タンパク質含有食品や衣付き植物性タンパク質含有食品が挙げられる。衣付きタンパク質含有食品として、具体的には、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、衣付きベジミート食品が挙げられる。「衣付きタンパク質含有食品」とは、具体的には、食材の50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、または90%(w/w)以上がタンパク質含有食材である衣付き食品を意味してよい。衣付きタンパク質含有食品についての説明は、衣付きタンパク質含有食品の各具体例にも準用できる。すなわち、例えば、「衣付き動物性タンパク質含有食品」、「衣付き植物性タンパク質含有食品」、「衣付き食肉食品」、「衣付きシーフード食品」、および「衣付きベジミート食品」とは、それぞれ、食材の少なくとも一部(例えば、食材の50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、または90%(w/w)以上)が
動物性タンパク質含有食材、植物性タンパク質含有食材、食肉、シーフード、およびベジミートである衣付き食品を意味してよい。
【0078】
また、衣付き食品としては、衣付き野菜食品も挙げられる。「衣付き野菜食品」とは、食材の少なくとも一部が野菜である衣付き食品を意味してよい。「衣付き野菜食品」とは、具体的には、食材の50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、または90%(w/w)以上が野菜である衣付き食品を意味してよい。衣付き野菜食品についての説明は、衣付き野菜食品の各具体例にも準用できる。
【0079】
有効成分付着工程を実施するタイミングは、衣材付着工程の実施前または実施時であれば、特に制限されない。すなわち、有効成分付着工程は、衣付き食品の製造工程において、衣材付着工程の実施前または実施時のいずれの段階で実施してもよい。
【0080】
以下、主に、衣材付着工程の前に有効成分付着工程を実施する場合を参照して食材への有効成分および衣材の付着について説明するが、当該説明は、有効成分付着工程と衣材付着工程を同時に実施する場合にも準用できる。
【0081】
食材に有効成分を付着させる方法は、特に制限されない。食材に有効成分を付着させる方法は、例えば、食材の種類や衣付き食品の種類等の諸条件に応じて、適宜選択できる。有効成分は、例えば、そのまま、あるいは適宜希釈等して、使用してよい。有効成分は、所望の形態で使用してよい。有効成分は、例えば、粉末等の固体の形態で使用してもよく、液体の形態で使用してもよい。有効成分は、特に、粉末の形態で使用してもよい。有効成分が粉末等の固体の形態で使用される場合、有効成分は、例えば、食材との混合や食材への振りかけ等の手段により、食材に付着させることができる。また、有効成分が液体の形態で使用される場合、有効成分は、例えば、食材の浸漬、食材への塗布、食材への滴下、食材への噴霧等の手段により、食材に付着させることができる。
【0082】
有効成分付着工程は、例えば、衣付き食品の製造工程を実施することにより併せて実施されてもよく、衣付き食品の製造工程とは別に実施されてもよい。衣付き食品の製造工程においては、例えば、食材の調味液への浸漬、食材への打粉の付着、食材への卵液の付着、食材へのバッター液の付着等の操作が実施されてよい。これらの操作は、例えば、食材の種類や衣付き食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。これらの操作は、単独で、あるいは適宜組み合わせて実施されてよい。よって、例えば、調味液、打粉、卵液、バッター液等の材料に有効成分を含有させて上記操作を実施することにより、食材に有効成分を付着させることができる。
【0083】
有効成分付着工程においては、さらに、有効成分以外の成分を食材に付着させてもよい。有効成分付着工程において利用され得る有効成分以外の成分については、本発明の組成物に含有され得る有効成分以外の成分についての記載を準用できる。
【0084】
有効成分以外の成分として、具体的には、耐熱性増粘多糖類のゲル化に有効な成分が挙げられる。そのような成分としては、カルシウムが挙げられる。カルシウムとしては、塩化カルシウム等のカルシウム塩が挙げられる。カルシウムは、例えば、アルギン酸等の耐熱性増粘多糖類と併用されてよい。
【0085】
有効成分以外の成分として、具体的には、衣付き食品の製造に有効な成分も挙げられる。衣付き食品の製造に有効な成分としては、衣材を食材に付着させる前に利用され得る材料に含有され得る成分が挙げられる。衣材を食材に付着させる前に利用され得る材料としては、調味液、打粉、卵液、バッター液が挙げられる。調味液に含有され得る成分としては、調味料が挙げられる。打粉に含有され得る成分としては、穀粉、澱粉、タンパク質、
調味料が挙げられる。卵液に含有され得る成分としては、卵や調味料が挙げられる。バッター液に含有され得る成分としては、穀粉、澱粉、油、卵、調味料が挙げられる。また、調味液、卵液、バッター液等の液体材料は、例えば、水、牛乳、溶き卵等の液体で希釈して調製されていてよい。このような液体は、有効成分や衣材の希釈にも利用してよい。これらの成分は、いずれも、上記材料に含有された状態で食材に付着させてもよく、上記材料とは別に食材に付着させてもよい。
【0086】
2種またはそれ以上の有効成分を利用する場合、有効成分の付着に関する記載は、特記しない限り、各有効成分に独立に適用できる。2種またはそれ以上の有効成分を利用する場合、それら有効成分は、全て同時に食材に付着させてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、食材に付着させてもよい。2種またはそれ以上の有効成分を利用する場合、それら有効成分を食材に付着させる順序は特に制限されない。2種またはそれ以上の有効成分を利用する場合についての記載は、有効成分と有効成分以外の成分を併用する場合にも準用できる。なお、成分(A)と(B)を併用する場合、それらの成分は、例えば、互いに接触可能な位置関係で保持されるように食材に付着させてよい。成分(A)と(B)を併用する場合、それらの成分は、典型的には、予め混合してから食材に付着させてよい。また、成分(B)とそのゲル化に有効な成分を併用する場合、それらの成分は、例えば、互いに接触可能な位置関係で保持されるように食材に付着させてよい。成分(B)とそのゲル化に有効な成分を併用する場合、それらの成分は、典型的には、予め混合してから食材に付着させてよい。
【0087】
有効成分の使用量は、食品改質効果が得られる限り、特に制限されない。「有効成分の使用量」とは、特記しない限り、食材に付着した有効成分の量を意味してよい。
【0088】
成分(A)の使用量は、食材100重量部に対し、例えば、0.01重量部以上、0.02重量部以上、0.03重量部以上、0.05重量部以上、0.07重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、0.7重量部以上、0.8重量部以上、0.9重量部以上、1重量部以上、1.1重量部以上、または1.2重量部以上、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2重量部以下、1.7重量部以下、1.5重量部以下、1.4重量部以下、1.3重量部以下、1.2重量部以下、1.1重量部以下、1重量部以下、0.9重量部以下、0.8重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、または0.5重量部以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。成分(A)の使用量は、食材100重量部に対し、具体的には、例えば、0.05~5重量部、0.1~3重量部、または0.5~2重量部であってもよい。
【0089】
また、成分(A)の使用量は、食材100重量部に対し、例えば、成分(A)に含有される油の量に換算して、上記例示した成分(A)の使用量の3/4の量であってもよい。
【0090】
成分(B)を利用する場合、成分(B)の使用量は、食材100重量部に対し、例えば、0.01重量部以上、0.02重量部以上、0.03重量部以上、0.05重量部以上、0.07重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、0.7重量部以上、0.8重量部以上、0.9重量部以上、1重量部以上、1.1重量部以上、または1.2重量部以上、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2重量部以下、1.7重量部以下、1.5重量部以下、1.4重量部以下、1.3重量部以下、1.2重量部以下、1.1重量部以下、1重量部以下、0.9重量部以下、0.8重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、または0.5重量部以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。成分(B)を利用する場合、成分(B)の使用量は、食材100重量部に対し、具体的には、例えば、0.05~5重量部、0.1~3重量部、
または0.5~2重量部であってもよい。
【0091】
成分(B)を利用する場合、成分(B)の使用量は、成分(A)100重量部に対し、例えば、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、または500重量部以上であってもよく、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、または20重量部以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。成分(B)を利用する場合、成分(B)の使用量は、成分(A)100重量部に対し、具体的には、例えば、5~2000重量部、20~500重量部、または50~200重量部であってもよい。
【0092】
ついで、有効成分が付着した食材にさらに衣材を付着させることができる。
【0093】
衣材の種類は、特に制限されない。衣材は、例えば、衣付き食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。衣材としては、穀粉や澱粉が挙げられる。穀粉としては、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、そば粉、大豆粉、トウモロコシ粉が挙げられる。穀粉としては、特に、小麦粉が挙げられる。小麦粉としては、強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉が挙げられる。澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉、小豆澱粉、それらの加工澱粉が挙げられる。また、衣材としては、パン粉、揚げ玉、クルトン、おかきも挙げられる。また、衣材としては、バッター液も挙げられる。衣材としては、1種の素材を用いてもよく、2種またはそれ以上の素材を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
食材に衣材を付着させる方法は、特に制限されない。食材に衣材を付着させる方法は、例えば、食材の種類や衣付き食品の種類等の諸条件に応じて、適宜選択できる。衣材は、例えば、そのまま、あるいは適宜希釈等して、使用してよい。衣材は、所望の形態で使用してよい。衣材は、例えば、粉末等の固体の形態で使用してもよく、液体の形態で使用してもよい。衣材が粉末等の固体の形態で使用される場合、衣材は、例えば、食材との混合や食材への振りかけ等の手段により、食材に付着させることができる。また、衣材が液体の形態で使用される場合、衣材は、例えば、食材の浸漬、食材への塗布、食材への滴下、食材への噴霧等の手段により、食材に付着させることができる。
【0095】
食材への衣材の付着量は、特に制限されない。食材への衣材の付着量は、例えば、衣付き食品を製造する際の通常の付着量であってよい。
【0096】
なお、衣材とそれ以外の材料は、相対的に区別されればよい。典型的には、油調時に衣付き食品の最外層に配置される素材を衣材とみなせばよい。すなわち、例えば、食材へバッター液を付着させた後に追加の素材を付着させずに油調する場合、バッター液を衣材とみなせばよい。よって、その場合、有効成分付着工程はバッター液を食材に付着させる前に実施すればよい。また、例えば、食材へバッター液を付着させた後に追加の素材(パン粉等)を付着させてから油調する場合、追加の材料を衣材とみなせばよい。よって、その場合、有効成分付着工程は追加の材料を食材に付着させる前に実施すればよく、例えば、有効成分をバッター液に含有させて食材に付着させてもよい。
【0097】
有効成分付着工程と衣材付着工程を同時に実施する場合、有効成分と衣材は、例えば、予め混合して用いてもよく、そうでなくてもよい。例えば、有効成分を含有する衣材を食材に付着させることにより、有効成分付着工程と衣材付着工程を同時に実施することができる。有効成分付着工程と衣材付着工程は、特に、バッター液等の液体の形態で使用される衣材を用いる場合に、同時に実施してよい。すなわち、有効成分を含有する衣材としては、有効成分を含有するバッター液等の、有効成分を含有する液体の形態で使用される衣
材が挙げられる。
【0098】
このようにして有効成分および衣材を食材に付着させることにより、衣付き食品が得られる。このようにして有効成分および衣材を食材に付着させることにより、具体的には、油調前の衣付き食品が得られる。
【0099】
衣付き食品は、例えば、油調前の状態で提供されてもよく、油調済の状態で提供されてもよい。また、衣付き食品は、例えば、油調前または油調後の状態で、冷凍等の加工がされた状態で提供されてもよい。油調前の衣付き食品を「生の衣付き食品」ともいう。油調後の衣付き食品を「油調済み衣付き食品」ともいう。衣付き食品は、例えば、衣材が粉末等の固体である場合に、油調前の衣付き食品として提供されてよい。
【0100】
本発明の方法は、さらに、生の衣付き食品を油調する工程を含んでいてもよい。同工程を、「油調工程」ともいう。油調工程は、具体的には、生の衣付き食品を油調して油調済み衣付き食品を得る工程であってよい。「油調」とは、油の存在下での加熱処理を意味してよい。油調としては、油で揚げることや、衣材に油を付着させてから焼成することが挙げられる。油調としては、特に、油で揚げることが挙げられる。
【0101】
<4>有効成分の使用
また、本発明は、上記例示した用途での有効成分の使用を開示する。すなわち、本発明は、例えば、衣付き食品の改質または製造のための有効成分の使用や、衣付き食品の改質または製造用の組成物の製造における有効成分の使用を開示する。
【0102】
また、本発明は、上記例示した用途に用いるための有効成分を開示する。すなわち、本発明は、例えば、衣付き食品の改質または製造に用いるための有効成分や、衣付き食品の改質または製造用の組成物の製造に用いるための有効成分を開示する。
【0103】
また、本発明は、他の有効成分との併用するための各有効成分の使用を開示する。すなわち、本発明は、例えば、成分(B)と併用するための成分(A)の使用や、成分(A)と併用するための成分(B)の使用を開示する。各有効成分は、上記例示した用途のために、他の有効成分と併用されてよい。
【0104】
<5>本発明の衣付き食品
本発明の衣付き食品は、有効成分を備える衣付き食品である。本発明の衣付き食品は、具体的には、食材と該食材に付着した衣材と該食材に付着した有効成分を備える、衣付き食品であってよい。本発明の衣付き食品は、より具体的には、食材と該食材に付着した衣材とを備え、前記食材と前記衣材の間に有効成分を備える、衣付き食品であってよい。本発明の衣付き食品は、より具体的には、食材と該食材に付着した衣材とを備え、前記衣材が有効成分を含有する、衣付き食品であってもよい。本発明の衣付き食品は、さらに、他の成分を備えていてもよく、いなくてもよい。本発明の衣付き食品については、本発明の方法により製造される衣付き食品についての記載を準用できる。本発明の衣付き食品を構成する食材、衣材、有効成分、その他の成分等の素材については、本発明の方法で利用される素材についての記載を準用できる。
【0105】
本発明の衣付き食品の製造方法は、特に制限されない。本発明の衣付き食品は、例えば、本発明の方法により製造することができる。
【0106】
なお、本発明の衣付き食品が油調済み衣付き食品である場合、本発明の衣付き食品を構成する食材、衣材、有効成分、その他の成分等の素材は、いずれも加熱後の素材として理解されてよい。また、例えば、本発明の食品が成分(B)を備える場合、成分(B)はゲ
ル化していてもよい。すなわち、本発明の食品が備える「耐熱性増粘多糖類」とは、ゲル化した耐熱性増粘多糖類を包含してよい。例えば、本発明の食品における「アルギン酸ナトリウム」とは、ゲル化したアルギン酸ナトリウム(例えば、アルギン酸カルシウムになったもの)を包含してよい。
【実施例0107】
以下、非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0108】
実施例1:油含有粒子の添加による衣付き食品の経時劣化抑制効果の評価
本実施例では、鶏唐揚げについて、油調後の保管時の歩留の変化を指標として、種々の素材の添加による経時劣化抑制効果を評価した。
【0109】
菜種油含有シリカを以下の方法で得た。500mL容量のビーカーにシリカ(サイロページ#721;富士シリシア化学(株))を10g計量した。攪拌子を入れ、スターラーを用いて回転速度450rpmに設定して攪拌した。攪拌中にピペットマンを用いて菜種油を5mLずつダマが発生しないようにゆっくり滴下した。この操作を6回繰り返して30mLの菜種油を10gのシリカに吸油させた。得られた粉末試料を菜種油含有シリカとした。尚、本操作にはオートクレーブ等で滅菌済みの器具を用いた。
【0110】
図1に示す通りに、市販国産鶏モモ肉(ブロイラー鶏種)の皮、脂肪、およびスジを取り除いた後、包丁を用いて大腿骨周辺の筋肉を得た。筋肉を、筋線維方向を横辺とする横40mm×縦20mm×厚さ5mmの直方体に整形した。浸漬液として塩化ナトリウム「ナクルM」(ナイカイ塩業社製)の0.3M水溶液を対肉20%重量で整形した肉に加え、真空包装機「V-455G-1」(TOSEI社製)を用いて真空パックし、4℃で18時間冷蔵保管した。その後、真空パックから取り出してザルの中で1分間静置して液切りを行い、打粉として片栗粉「北海道産 片栗粉」(アイワイフーズ社製)を対肉10%重量で加え、袋の中で30秒間反転混合した。尚、表1に示す添加量となるように各素材を浸漬液または打粉中に配合した。各素材を打粉中に配合する場合、打粉の使用量は、片栗粉と各素材の総量として、対肉10%重量とした。また、表中、シリカの配合量は、シリカに含有される菜種油の配合量を含まない、シリカ部分の配合量を示す。薄力小麦粉「日清フラワー」(日清フーズ社製)と水を1:1.5の重量比で混合して調製したバッター液をボウル内に準備し、打粉をまぶした肉を一度バッター液に潜らせ、液が垂れ落ちない程度になったところでクッキングシートを敷いたフライ網に静置した。これを菜種油「FMスーパーフライオイル」(J-オイルミルズ社製)中でフライヤーを用いて175℃で5分間フライし、唐揚げ試料を得た。得られた唐揚げ試料をホッター什器「CHS-090CSE」(サンデン社製)に移し、庫内温度70℃で3時間保管した。その後、ホッター保管前後の重量比率[%](ホッター3時間保管後の重量 / フライ直後の重量)を算出し、これを経時後の保水量を示す「経時劣化抑制指標値(n=4, 平均値)」とした。本指標値は無添加区の値77.5%を基準とし、77.5%以下を効果なし又は逆効果として「-」、77.6%以上82.5%未満を経時劣化抑制効果ありとして「+」、82.5%以上85%未満を高い経時劣化抑制効果ありとして「++」、85%以上を顕著な経時劣化抑制効果ありとして「+++」とした。
【0111】
結果を表2に示す。単独試験区(No. 1~10)では、アルカリ(炭酸ナトリウム)、トレハロース、アルギン酸ナトリウム、および菜種油含有シリカの試験区にて、経時劣化抑制効果が認められた。特に、菜種油含有シリカが高い経時劣化抑制効果を示すことが認められた。また、併用試験区(No. 11~15)では、アルカリ(炭酸ナトリウム)とトレハロースの併用試験区および菜種油含油シリカとゼラチンの併用試験区では経時劣化抑制効果の向上が認められず、菜種油含油シリカとアルギン酸ナトリウムの併用試験区でのみ顕著な経時劣化抑制効果の向上が認められた。一般的な食肉加工剤(既存素材)の中で効果を示したアルカリ(炭酸ナトリウム)とトレハロースの併用試験区にて経時劣化抑制効果の
向上が認められなかったこと、および菜種油を含有しないシリカは経時劣化抑制効果を示さなかったことから、油含有粒子の添加によって既存素材では得られない高い経時劣化抑制効果を得ることができると示唆された。また、菜種油含油シリカとゼラチンの併用試験区では経時劣化抑制効果の向上が認められず、菜種油含油シリカとアルギン酸ナトリウムの併用試験区でのみ顕著な経時劣化抑制効果の向上が認められたことから、経時劣化抑制効果の向上のためには、油含有粒子とアルギン酸ナトリウム等の耐熱性ゲル化剤の併用が有効であると示唆された。以上より、唐揚げ等の衣付き食品の製造工程中に、油含有粒子を食肉等の食材表面に接触するように添加することにより既存技術では得られない高い経時劣化抑制効果が得られること、また、耐熱性を有するゲル化剤の併用添加により経時劣化抑制効果がさらに向上することが明らかとなった。
【0112】
【0113】
【0114】
実施例2:油含有粒子と耐熱性増粘多糖類の併用添加による衣付き食品の経時劣化抑制効果の評価
本実施例では、鶏唐揚げについて、油調後の保管時の官能品質の変化を指標として、油含有粒子と耐熱性増粘多糖類の併用添加による経時劣化抑制効果を評価した。
【0115】
市販国産鶏肉の大腿骨周辺部位のモモ肉を包丁を用いて一口大サイズ(30±2g)にカットした。その後、実施例1と同様の方法にて、食塩水中の冷蔵浸漬、液切り、表3の各試験区に対応する素材(商品名および配合量は実施例1と同一)を配合した打粉まぶし、バッター液浸漬、フライ、ホッター什器保管を実施し、唐揚げ試料を得た。得られた唐揚げ試料は、官能評価に供した。官能評価は、衣の官能品質、肉の官能品質、総合的な官能品質について、8名の専門パネルにて実施した。衣の官能品質は歯切れ、クリスピー感、衣剥がれの3項目について評価した。歯切れとは一噛み目の歯通りの良さを、クリスピー感とは衣のサクサク感を、衣剥がれとは衣が肉表面から乖離して剥がれている度合いの低減を、それぞれ意味する。肉の官能品質はねちゃつき、ジューシー感の2項目について評価した。ねちゃつきとは肉表面の粘性が抑えられていることを、ジューシー感とは咀嚼する度に肉汁がジュワッと滲みだす多汁感を、それぞれ意味する。総合的な官能品質とは、上述した衣および肉の官能評価5項目について、全てに効果がある状態を意味する。官能評価結果は、無添加区1(ホッター保管時間4時間品)をコントロールとし、効果なし又は逆効果を「-」、効果ありを「+」、高い効果ありを「++」とした。
【0116】
結果を表3に示す。無添加区1やアルギン酸ナトリウム添加区では、ホッター保管後の総合的な官能品質が低いことが確認された。一方で、菜種油含有シリカとアルギン酸ナトリウムの併用添加区では、ホッター保管後の総合的な官能品質が高く、無添加区2と同等の官能品質であることが確認された。本結果より、油含有粒子の添加によって既存技術では得られない高い経時劣化抑制効果を得ることができると示唆された。菜種油含有シリカ
とアルギン酸ナトリウムの併用添加区の官能品質はホッター保管時間が他試験区の半分である無添加区2の官能品質と同等であることから、油含有粒子と耐熱性ゲル化剤の併用添加には衣付き食品の経時劣化速度を半減し得る効果があり、特に、衣のクリスピー感維持については更に高い効果が見込まれると示唆された。以上より、油含有粒子と耐熱性ゲル化剤の併用添加により衣付き食品の経時劣化を顕著に抑制できることが再度確認された。
【0117】