(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091040
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】滅菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/07 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
A61L2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203722
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 崇嗣
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB05
4C058DD02
4C058DD12
4C058EE26
(57)【要約】
【課題】水封式の真空ポンプを備えた滅菌装置において、真空ポンプからの排水を再利用して節水運転でき、また状況に応じて節水運転の有無を切替可能とする。
【解決手段】被滅菌物が収容される滅菌槽3と、この滅菌槽3内の気体を外部へ吸引排出する水封式の真空ポンプ2と、この真空ポンプ2からの吐出流体を気水分離するセパレータタンク17と、このセパレータタンク17からの水を真空ポンプ2へ供給する循環給水路34と、セパレータタンク17以外からの水を真空ポンプ2へ供給する外部給水路35と、真空ポンプ2への給水系統の切替手段38,40,42と、この切替手段を制御する制御手段とを備える。切替手段は、真空ポンプ2への給水として、第一給水路36からの水を供給するか、第二給水路37と循環給水路34とからの水を供給するか、を切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被滅菌物が収容される滅菌槽と、
この滅菌槽内の気体を外部へ吸引排出する水封式の真空ポンプと、
この真空ポンプからの吐出流体を気水分離するセパレータタンクと、
このセパレータタンクからの水を前記真空ポンプへ供給する循環給水路と、
前記セパレータタンク以外からの水を前記真空ポンプへ供給する外部給水路と、
前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの水を供給するか、それに加えてまたは代えて前記循環給水路からの水を供給するか、を切り替える切替手段と、
この切替手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする滅菌装置。
【請求項2】
前記外部給水路による給水流量は、第一設定流量と、これよりも低流量の第二設定流量とで変更可能とされ、
前記切替手段は、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの第一設定流量の水を供給するか、前記外部給水路からの第二設定流量の水と前記循環給水路からの水とを供給するか、を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記滅菌槽内から空気を排除する操作において、
前記滅菌槽内の圧力が設定圧力を超えていると、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの第二設定流量の水と前記循環給水路からの水とを供給し、
前記滅菌槽内の圧力が設定圧力以下になると、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの第一設定流量の水を供給する
ことを特徴とする請求項2に記載の滅菌装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記滅菌槽内から蒸気を排除する操作において、
前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの第一設定流量の水を供給する
ことを特徴とする請求項3に記載の滅菌装置。
【請求項5】
前記真空ポンプにより前記滅菌槽内の気体を外部へ吸引排出して前記滅菌槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記滅菌槽内へ空気を導入して前記滅菌槽内を復圧する復圧手段と、前記滅菌槽内へ蒸気を供給する給蒸手段と、大気圧との差圧により前記滅菌槽内の気体を外部へ排出する排気手段と、これら各手段および前記切替手段を制御する前記制御手段とを備え、
前記制御手段は、前処理工程、滅菌工程および乾燥工程を順に含んで実行し、
前記前処理工程では、前記減圧手段による減圧後に前記給蒸手段により給蒸する初回真空パルス操作の後、前記減圧手段による減圧後に前記給蒸手段により給蒸する後続真空パルス操作を一回または複数回実行し、
前記乾燥工程では、前記減圧手段による減圧後に前記復圧手段により復圧する初回乾燥パルス操作の後、前記減圧手段による減圧後に前記復圧手段により復圧する後続乾燥パルス操作を一回または複数回実行し、
前記滅菌槽内から空気を排除する操作は、前記初回真空パルス操作と、前記後続乾燥パルス操作であり、
前記滅菌槽内から蒸気を排除する操作は、前記後続真空パルス操作と、前記初回乾燥パルス操作である
ことを特徴とする請求項4に記載の滅菌装置。
【請求項6】
前記真空ポンプへの給水の温度を検出する封水温度センサを備え、
前記設定圧力は、前記封水温度センサの検出温度に所定値を加算した温度の飽和蒸気圧力とされる
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【請求項7】
前記切替手段は、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの水を供給するか、前記循環給水路からの水を供給するか、を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項8】
前記セパレータタンク内の貯留水または前記循環給水路による給水の温度を検出する封水温度センサを備え、
前記制御手段は、前記滅菌槽内を減圧する操作において、
前記滅菌槽内の圧力が、前記封水温度センサの検出温度に所定値を加算した温度の飽和蒸気圧力を超えていると、前記真空ポンプへの給水として、前記循環給水路からの水を供給し、
前記滅菌槽内の圧力が、前記封水温度センサの検出温度に所定値を加算した温度の飽和蒸気圧力以下になると、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの水を供給する
ことを特徴とする請求項7に記載の滅菌装置。
【請求項9】
前記セパレータタンク内の水位が設定水位以上あるか否かを検出する水位センサを備え、
前記制御手段は、前記水位センサが設定水位以上の水位を検出していることを条件に、前記真空ポンプへの給水として、前記循環給水路からの水を供給する
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水封式の真空ポンプを備えた滅菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水封式の真空ポンプを備えた滅菌装置として、たとえば蒸気滅菌装置が知られている。蒸気滅菌装置は、滅菌槽内に被滅菌物が収容された状態で、滅菌槽内から空気排除を図った後、滅菌槽内に蒸気供給して被滅菌物を滅菌する。滅菌後には、滅菌槽内を減圧して保持したり、あるいは滅菌槽内の減圧と空気導入による復圧とを繰り返したりして、被滅菌物を乾燥する。
【0003】
このように、蒸気滅菌装置では、滅菌前の空気排除や、滅菌後の乾燥などのために、真空ポンプを用いて滅菌槽内を減圧する操作が行われる。この減圧のための真空ポンプの作動時には、封水と呼ばれる水が真空ポンプに供給される。この封水の温度が低いほど、真空ポンプの能力を向上(つまり高真空まで減圧)することができる。通常、封水は、掛け捨て(使い捨て)で使用されるが、それでは、運転コストの低減を図ることができない。
【0004】
水封式真空ポンプの節水を図るために、下記特許文献1に開示される装置が提案されている。この装置では、給水管5の途中の開閉弁3を開き、流量調節弁4により水タンク1内に、真空ポンプ7に吸い込まれる水の半分程度の量の水を給水しつつ、水タンク1内の水を真空ポンプ7に供給して、真空ポンプ7を運転する。
【0005】
ところが、従来技術では、給水源からの新水(給水管5による給水)は、常に水タンク1内に一旦供給されるので、水タンク1内の水(真空ポンプ7からの排水)と混合され、多少昇温された後、真空ポンプ7へ供給されることになる。そのため、給水源からの低温の新水を、低温のまま、真空ポンプ7にて使用することができず、高真空までの減圧に不利である。また、滅菌室11内の圧力や、滅菌室11内から吸引排出しようとする流体の種類(空気か蒸気か)、真空ポンプ7への封水の温度など、状況に応じて、節水運転の有無を切り替えることもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60-171439号公報(明細書第5頁第18行-第6頁第3行、図面)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、水封式の真空ポンプを備えた滅菌装置において、真空ポンプからの排水を再利用して節水運転でき、また状況に応じて節水運転の有無を切替可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被滅菌物が収容される滅菌槽と、この滅菌槽内の気体を外部へ吸引排出する水封式の真空ポンプと、この真空ポンプからの吐出流体を気水分離するセパレータタンクと、このセパレータタンクからの水を前記真空ポンプへ供給する循環給水路と、前記セパレータタンク以外からの水を前記真空ポンプへ供給する外部給水路と、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの水を供給するか、それに加えてまたは代えて前記循環給水路からの水を供給するか、を切り替える切替手段と、この切替手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする滅菌装置である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、水封式の真空ポンプを備えた滅菌装置において、真空ポンプからの吐出流体をセパレータタンクにて気水分離し、気水分離後の水を循環給水路から真空ポンプへ供給可能である。そのため、真空ポンプからの排水を再利用して、節水を図ることができる。
【0010】
また、真空ポンプには、セパレータタンクから循環給水路を介して水を供給可能とされると共に、セパレータタンク以外から外部給水路を介して水を供給可能とされる。そして、真空ポンプへの給水として、外部給水路からの水を供給するか、それに加えてまたは代えて循環給水路からの水を供給するか、を切替可能とされる。そのため、たとえば、滅菌槽内の圧力や、滅菌槽内からの排気流体の種類(空気か蒸気か)などに応じて、真空ポンプへの給水系統(外部給水路から給水するか、および/または、循環給水路から給水するか)を切り替えることができる。
【0011】
なお、外部給水路からの水は、まずは真空ポンプに供給されて使用された後、セパレータタンクに吐出される。そのため、外部給水路からの水を、一旦セパレータタンクに供給した後に真空ポンプへ供給する場合と比較して、低温のまま真空ポンプに供給することができる。それにより、滅菌槽内の減圧を容易に図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記外部給水路による給水流量は、第一設定流量と、これよりも低流量の第二設定流量とで変更可能とされ、前記切替手段は、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの第一設定流量の水を供給するか、前記外部給水路からの第二設定流量の水と前記循環給水路からの水とを供給するか、を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の滅菌装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、真空ポンプへの給水を、外部給水路から賄うか、循環給水路からも賄うか、を切り替えることができる。循環給水路からも給水する場合、真空ポンプからの排水を再利用して、節水を図ることができる。その際、外部給水路からの給水も併用することで、水温の上昇を抑えて、滅菌槽内の減圧を円滑に図ることができる。一方、外部給水路からだけ給水する場合、比較的低温の水で、滅菌槽内の減圧を迅速で確実に図ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記制御手段は、前記滅菌槽内から空気を排除する操作において、前記滅菌槽内の圧力が設定圧力を超えていると、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの第二設定流量の水と前記循環給水路からの水とを供給し、前記滅菌槽内の圧力が設定圧力以下になると、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの第一設定流量の水を供給することを特徴とする請求項2に記載の滅菌装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、滅菌槽内から吸引排出しようとする流体が主として空気である場合、滅菌槽内の圧力が設定圧力を超えていると、真空ポンプへの給水として、循環給水路からの水も利用することで、節水を図ることができる。一方、滅菌槽内の圧力が設定圧力以下になると、真空ポンプへの給水として、外部給水路からの水だけを利用することで、比較的低温の水で、滅菌槽内の減圧を迅速で確実に図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記制御手段は、前記滅菌槽内から蒸気を排除する操作において、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの第一設定流量の水を供給することを特徴とする請求項3に記載の滅菌装置である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、滅菌槽内から吸引排出しようとする流体が主として蒸気である場合、真空ポンプへの給水として、外部給水路からの水だけを利用することで、比較的低温の水で、滅菌槽内の減圧を迅速で確実に図ることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記真空ポンプにより前記滅菌槽内の気体を外部へ吸引排出して前記滅菌槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記滅菌槽内へ空気を導入して前記滅菌槽内を復圧する復圧手段と、前記滅菌槽内へ蒸気を供給する給蒸手段と、大気圧との差圧により前記滅菌槽内の気体を外部へ排出する排気手段と、これら各手段および前記切替手段を制御する前記制御手段とを備え、前記制御手段は、前処理工程、滅菌工程および乾燥工程を順に含んで実行し、前記前処理工程では、前記減圧手段による減圧後に前記給蒸手段により給蒸する初回真空パルス操作の後、前記減圧手段による減圧後に前記給蒸手段により給蒸する後続真空パルス操作を一回または複数回実行し、前記乾燥工程では、前記減圧手段による減圧後に前記復圧手段により復圧する初回乾燥パルス操作の後、前記減圧手段による減圧後に前記復圧手段により復圧する後続乾燥パルス操作を一回または複数回実行し、前記滅菌槽内から空気を排除する操作は、前記初回真空パルス操作と、前記後続乾燥パルス操作であり、前記滅菌槽内から蒸気を排除する操作は、前記後続真空パルス操作と、前記初回乾燥パルス操作であることを特徴とする請求項4に記載の滅菌装置である。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、前処理工程、滅菌工程および乾燥工程を順に含んで実行する滅菌装置において、前処理工程では、減圧後に給蒸する真空パルス操作を繰り返し行う(初回真空パルス操作後に後続真空パルス操作を行う)一方、乾燥工程では、減圧後に給気する乾燥パルス操作を繰り返し行う(初回乾燥パルス操作後に後続乾燥パルス操作を行う)。初回真空パルス操作と後続乾燥パルス操作では、滅菌槽内から吸引排出しようとする流体が主として空気となるが、その場合は、請求項3記載の発明に基づき制御して、同請求項に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。一方、後続真空パルス操作と初回乾燥パルス操作では、滅菌槽内から吸引排出しようとする流体が主として蒸気となるが、その場合は、請求項4記載の発明に基づき制御して、同請求項に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記真空ポンプへの給水の温度を検出する封水温度センサを備え、前記設定圧力は、前記封水温度センサの検出温度に所定値を加算した温度の飽和蒸気圧力とされることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の滅菌装置である。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、真空ポンプへの給水として、外部給水路からの水と循環給水路からの水とを供給するか、外部給水路からの水だけを供給するかを、真空ポンプへの封水温度に基づき切り替えることができる。実際の封水温度を考慮して制御することで、より確実で安定した制御が可能となる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、前記切替手段は、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの水を供給するか、前記循環給水路からの水を供給するか、を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の滅菌装置である。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、真空ポンプへの給水として、循環給水路からの水を供給するか、外部給水路からの水を供給するか、を択一的に切り替えることができる。循環給水路からの水のみを真空ポンプへ供給することで、一層の節水を図ることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記セパレータタンク内の貯留水または前記循環給水路による給水の温度を検出する封水温度センサを備え、前記制御手段は、前記滅菌槽内を減圧する操作において、前記滅菌槽内の圧力が、前記封水温度センサの検出温度に所定値を加算した温度の飽和蒸気圧力を超えていると、前記真空ポンプへの給水として、前記循環給水路からの水を供給し、前記滅菌槽内の圧力が、前記封水温度センサの検出温度に所定値を加算した温度の飽和蒸気圧力以下になると、前記真空ポンプへの給水として、前記外部給水路からの水を供給することを特徴とする請求項7に記載の滅菌装置である。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、真空ポンプへの給水として、循環給水路からの水を供給するか、外部給水路からの水を供給するかを、真空ポンプへの封水温度に基づき切り替えることができる。実際の封水温度を考慮して制御することで、より確実で安定した制御が可能となる。
【0026】
さらに、請求項9に記載の発明は、前記セパレータタンク内の水位が設定水位以上あるか否かを検出する水位センサを備え、前記制御手段は、前記水位センサが設定水位以上の水位を検出していることを条件に、前記真空ポンプへの給水として、前記循環給水路からの水を供給することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の滅菌装置である。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、真空ポンプへの給水として、循環給水路からの水を供給する際、水位センサが設定水位以上の水位を検出していることを条件とすることで、真空ポンプに空気が供給されてしまうことを防止することができる。これにより、滅菌槽内の減圧を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、水封式の真空ポンプを備えた滅菌装置において、真空ポンプからの排水を再利用して節水運転でき、また状況に応じて節水運転の有無を切替可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施例1の滅菌装置を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
【
図2】
図1の滅菌装置の運転方法の一例を示す図であり、滅菌槽内の圧力Pと経過時間tとの関係を示している。
【
図3】本発明の実施例4の滅菌装置の真空ポンプに対する給排水系統を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、水封式の真空ポンプを備える各種の滅菌装置に適用可能であるが、ここでは、蒸気滅菌装置に適用した例について説明する。つまり、以下の各実施例の滅菌装置は、蒸気滅菌装置である。
【実施例0031】
図1は、本発明の実施例1の滅菌装置1を示す概略図であり、一部を断面にして示している。以下、まずは、滅菌装置1の概略について説明した後、真空ポンプ2に対する給排水系統について具体的に説明する。
【0032】
本実施例の滅菌装置1は、被滅菌物が収容される滅菌槽3と、この滅菌槽3内の気体を外部へ吸引排出して滅菌槽3内を減圧する減圧手段4と、減圧された滅菌槽3内へ外気を導入して滅菌槽3内を復圧する復圧手段5と、滅菌槽3内へ蒸気を供給する給蒸手段6と、滅菌槽3内から蒸気の凝縮水を排出するドレン排出手段7と、大気圧との差圧により滅菌槽3内の気体を外部へ排出する排気手段8と、前記各手段4~8を制御する制御手段(図示省略)とを備える。
【0033】
被滅菌物は、特に問わないが、典型的には医療器具である。被滅菌物は、所望により、滅菌バッグ、不織布または滅菌コンテナなどに収容されている。被滅菌物は、滅菌槽3内の棚に載せられるか、カートに載せられてカートごと滅菌槽3内に収容される。
【0034】
滅菌槽3は、内部空間の減圧および加圧に耐える中空容器であり、典型的には略矩形の箱状に形成される。滅菌槽3は、ドアで開閉可能とされる。ドアは、滅菌槽3の正面に設けられるが、滅菌槽3の正面および背面の双方に設けられてもよい。ドアを閉じることで、滅菌槽3の開口部を気密に閉じることができる。
【0035】
滅菌槽3内を外側から温めるために、本実施例では、滅菌槽3の外壁に蒸気ジャケット9が設けられる。具体的には、滅菌装置1は、内缶10と外缶11とを備え、内缶10にて滅菌槽3が構成され、内缶10と外缶11との隙間が蒸気ジャケット9とされる。蒸気ジャケット9には、ジャケット給蒸路(図示省略)を介して蒸気が供給され、その蒸気の凝縮水は、ジャケットドレン排出路(図示省略)を介して外部へ排出される。
【0036】
減圧手段4は、真空排気路12を介して、滅菌槽3内の気体を外部へ吸引排出する。滅菌槽3内からの真空排気路12には、水封式の真空ポンプ2が設けられる。水封式の真空ポンプ2は、周知のとおり、封水と呼ばれる水が供給されつつ運転される。本実施例の水封式の真空ポンプ2は、円筒状のケーシング内に、放射状に羽根をもつインペラ(図示省略)が、ケーシングと偏心して設けられてなり、吸気口2a、排気口2bおよび給水口2cを備える。給水口2cからケーシング内に給水しつつ、モータでインペラを回転させると、吸気口2aから気体を吸引し、排気口2bから吐出する。排気口2bからは、使用後の水も排出される。
【0037】
滅菌槽3と真空ポンプ2の吸気口2aとが、真空排気路12で接続される。滅菌槽3内からの真空排気路12には、真空弁13および逆止弁14が設けられる。真空弁13の開閉は、真空ポンプ2の発停と連動して制御される。また、真空ポンプ2の入口側には、高真空時のキャビテーション防止のため、所望によりリーク弁15が設けられてもよい。リーク弁15は、開度調整可能な手動弁からなり、開放状態では、真空ポンプ2の作動時、開度に応じた外気を真空ポンプ2へ導入する。
【0038】
真空ポンプ2を作動させることで、滅菌槽3内の気体が真空排気路12を介して吸気口2aへ吸引され、排気口2bから排出される。前述したとおり、排気口2bからは、使用後の水も排出される。真空ポンプ2からの吐出流体は、排出路16を介してセパレータタンク17へ供給されて、気水分離される。気水分離後の気体は、排気路18を介して外部へ排出される一方、液体は、セパレータタンク17の下部に貯留される。但し、セパレータタンク17には、底面から所定高さに排水路(オーバーフロー路)19が設けられているので、所定以上の水は、排水路19を介して外部へ排出される。真空ポンプ2の給水口2cへの給水系統については、後述する。
【0039】
復圧手段5は、減圧下の滅菌槽3内に、給気路20を介して空気を導入する。滅菌槽3内への給気路20には、エアフィルタ21、給気弁22および逆止弁23が順に設けられる。滅菌槽3内が減圧された状態で給気弁22を開放すると、差圧により外気を滅菌槽3内へ導入して、滅菌槽3内を復圧することができる。
【0040】
給蒸手段6は、給蒸路24を介して、滅菌槽3内へ蒸気を供給する。滅菌槽3内への給蒸路24には、給蒸弁25が設けられる。給蒸弁25を開放することで、蒸気供給源(図示省略)からの蒸気(本実施例では飽和蒸気)を滅菌槽3内へ供給することができる。給蒸弁25の開閉または開度を調整して、滅菌槽3内への蒸気供給の有無または量を変更することができる。
【0041】
ドレン排出手段7は、ドレン排出路26を介して、滅菌槽3内から蒸気の凝縮水を排出する。滅菌槽3内からのドレン排出路26には、スチームトラップ27および逆止弁28が順に設けられる。給蒸手段6により滅菌槽3内へ蒸気を供給中、蒸気の凝縮水はドレン排出手段7により滅菌槽3外へ排出される。
【0042】
排気手段8は、加圧下の滅菌槽3内から、排気路29を介して気体を導出する。滅菌槽3内からの排気路29には、排気弁30および逆止弁31が順に設けられる。滅菌槽3内が加圧された状態で排気弁30を開放すると、差圧により滅菌槽3内の気体を外部へ導出して、滅菌槽3内の圧力を下げることができる。なお、図示例では、排気路29は、上流側(滅菌槽3側)において、ドレン排出路26と共通管路とされている。
【0043】
滅菌槽3には、滅菌槽3内の圧力を検出する圧力センサ32と、滅菌槽3内の温度を検出する温度センサ33とが設けられる。圧力センサ32の設置位置は、特に問わないが、たとえば図示例のように、滅菌槽3の上方側部に設けられる。一方、温度センサ33は、滅菌に関する各種の規格に沿って、所定の位置に設けられる。図示例では、前記共通管路(ドレン排出路26と排気路29との共通管路)の内、滅菌槽3からの出口部に設けられる。
【0044】
制御手段は、前記各センサ32,33の検出信号や経過時間などに基づき、前記各手段4~8を制御する制御器(図示省略)である。具体的には、真空ポンプ2、真空弁13、給気弁22、給蒸弁25、排気弁30の他、圧力センサ32および温度センサ33などは、制御器に接続される。さらに、後述するように、制御器には、真空ポンプ2への給水系統の各弁やセンサなども接続される。そして、制御器は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、滅菌槽3内の被滅菌物の滅菌を図る。
【0045】
以下、本実施例の滅菌装置1の運転方法の具体例について説明する。
図2は、本実施例の滅菌装置1の運転方法の一例を示す図であり、滅菌槽3内の圧力Pと経過時間tとの関係を示している。なお、
図2において、圧力P0は大気圧を示している。また、以下の説明において、滅菌槽3内の圧力は、圧力センサ32により検出でき、滅菌槽3内の温度は、温度センサ33により検出できる。
【0046】
滅菌装置1は、典型的には、予熱工程S1、前処理工程S2、滅菌工程S3、排気工程S4および乾燥工程S5を順次に実行する。以下、各工程について説明する。なお、初期状態において、給気弁22および排気弁30は開けられている一方、これら以外の各弁13,25は閉じられており、真空ポンプ2は停止している。また、前処理工程S2の開始までには、滅菌槽3内に被滅菌物が収容され、滅菌槽3のドアは気密に閉じられる。その際、給気弁22および排気弁30も閉じられる。
【0047】
予熱工程S1では、滅菌槽3内を加熱する。具体的には、蒸気ジャケット9内に蒸気を供給し、蒸気ジャケット9内を所定圧力(言い換えれば所定温度)に維持することで、滅菌槽3内を加熱する。予熱工程S1の開始から所定時間経過後、前処理工程S2を開始するが、予熱工程S1の内容は、少なくとも滅菌工程S3の終了まで、継続して実施される。
【0048】
前処理工程S2では、滅菌槽3内の空気を排除する。具体的には、減圧手段4により滅菌槽3内を減圧後に、給蒸手段6により滅菌槽3内に給蒸(蒸気供給)する操作を、少なくとも一回、好ましくは複数回行うことで、滅菌槽3内の空気を蒸気に置換する。減圧手段4による減圧は、真空ポンプ2を作動させることで行い、その後、真空ポンプ2を停止した状態で、給蒸手段6による給蒸は、給蒸弁25を開けることで行う。減圧後の給蒸は、大気圧またはそれ未満の圧力まで行われるが、場合により、大気圧を超える圧力まで行ってもよい。減圧後の給蒸で、大気圧を超える圧力まで滅菌槽3内を加圧する場合、次回の減圧は、排気手段8で行うことができる。
【0049】
本実施例では、前処理工程S2において、減圧手段4による減圧後に給蒸手段6により給蒸する初回真空パルス操作VXの後、減圧手段4による減圧後に給蒸手段6により給蒸する後続真空パルス操作VYを一回または複数回実行する。初回真空パルス操作VXと後続真空パルス操作VYとは、基本的には同様の操作であるが、減圧時に滅菌槽3内から吸引排出しようとする主流体の種類(空気か蒸気か)が異なる。そのため、前処理工程S2における減復圧(真空パルス操作)の内、第1回目の減復圧を初回真空パルス操作VXといい、第2回目以降の減復圧を後続真空パルス操作VYということにする。
【0050】
図示例では、まずは、初回真空パルス操作VXとして、減圧手段4による減圧目標圧力P1までの減圧操作V1の後、給蒸手段6による復圧目標圧力P2までの給蒸操作V2が行われる。減圧目標圧力P1は、たとえば、-90~-95kPaG(ゲージ圧)で設定される。一方、復圧目標圧力P2は、たとえば、0~-10kPaG(つまり大気圧P0付近)で設定される。
【0051】
その後、後続真空パルス操作VYとして、初回真空パルス操作VXと同様に、減圧手段4による減圧目標圧力P1までの減圧操作V3の後、給蒸手段6による復圧目標圧力P2までの給蒸操作V4が行われる。後続真空パルス操作VYにおける減圧目標圧力P1や復圧目標圧力P2は、初回真空パルス操作VXにおける減圧目標圧力P1や復圧目標圧力P2と同一で設定するが、場合により、異ならせてもよい。また、後続真空パルス操作VYを複数回行う場合、各回の減圧目標圧力P1同士または復圧目標圧力P2同士は、同一でもよいし、異なってもよい。
【0052】
図示例では、初回真空パルス操作VXの後、後続真空パルス操作VYが2回行われる。そのため、前処理工程S2の全体としては、真空パルス操作が合計3回行われる。そして、最後の後続真空パルス操作VYの後、引き続き、加圧パルス操作を行うのがよい。具体的には、最後の後続真空パルス操作VYの給蒸操作V4では、大気圧を超える所定圧力(滅菌圧力PS以下の所定圧力)P3まで滅菌槽3内が加圧される。その後、滅菌槽3内への給蒸を停止した状態で、排気手段8により、滅菌槽3内の圧力を大気圧P0付近まで下げる。
【0053】
いずれにしても、前処理工程S2では、最終的には、給蒸手段6による給蒸操作VEで、滅菌槽3内を滅菌温度TSおよび/または滅菌圧力PSまで加圧する。そして、温度センサ33の検出温度が滅菌温度TSになるか、および/または、圧力センサ32の検出圧力が滅菌圧力PSになると、次工程へ移行する。なお、滅菌温度TSおよび/または滅菌圧力PSの他、後述する滅菌時間は、滅菌運転の開始前に、設定器(たとえばタッチパネル)を用いて、予め制御器に設定される。その際、滅菌温度TSが設定されることで、その滅菌温度TS相当の飽和蒸気圧力として滅菌圧力PSが自動設定されてもよい。
【0054】
滅菌工程S3では、滅菌槽3内の被滅菌物を蒸気で滅菌する。具体的には、温度センサ33の検出温度が滅菌温度TS(典型的には121℃または135℃)を維持するように、および/または、圧力センサ32の検出圧力が滅菌圧力PS(滅菌温度TS相当の飽和蒸気圧力)を維持するように、給蒸手段6を制御する。つまり、温度センサ33および/または圧力センサ32の検出信号に基づき、給蒸弁25の開閉または開度を調整する。そして、滅菌温度TS以上の状態が滅菌時間以上になるまで、および/または、滅菌圧力PS以上の状態が滅菌時間以上になるまで、滅菌槽3内の被滅菌物を滅菌する。あるいは、滅菌温度TS以上で且つ滅菌圧力PS以上の状態が滅菌時間以上になるまで、滅菌槽3内の被滅菌物を滅菌する。その後、給蒸手段6による給蒸を停止して、次工程へ移行する。
【0055】
排気工程S4では、加圧下の滅菌槽3内から蒸気を排出して、滅菌槽3内の圧力を大気圧P0付近まで下げる。具体的には、排気弁30を開放して、滅菌槽3外へ蒸気を導出する。排気弁30の開放から設定排気時間経過するか、滅菌槽3内の圧力が設定排気圧力(大気圧P0またはそれよりも若干高い圧力)まで下がると、排気弁30を閉鎖して、次工程へ移行する。
【0056】
乾燥工程S5では、滅菌槽3内の被滅菌物を乾燥させる。具体的には、減圧手段4により滅菌槽3内を減圧後に、復圧手段5により滅菌槽3内に給気(空気導入)する操作を、少なくとも一回、好ましくは複数回行うことで、滅菌槽3内の被滅菌物を乾燥させる。減圧手段4による減圧は、真空ポンプ2を作動させることで行い、その後、真空ポンプ2を停止した状態で、復圧手段5による給気は、給気弁22を開けることで行う。減圧後の給気は、大気圧またはそれ未満の圧力まで行われる。
【0057】
本実施例では、乾燥工程S5において、減圧手段4による減圧後に復圧手段5により復圧する初回乾燥パルス操作DXの後、減圧手段4による減圧後に復圧手段5により復圧する後続乾燥パルス操作DYを一回または複数回実行する。初回乾燥パルス操作DXと後続乾燥パルス操作DYとは、基本的には同様の操作であるが、減圧時に滅菌槽3内から吸引排出しようとする主流体の種類(蒸気か空気か)が異なる。そのため、乾燥工程S5における減復圧(乾燥パルス操作)の内、第1回目の減復圧を初回乾燥パルス操作DXといい、第2回目以降の減復圧を後続乾燥パルス操作DYということにする。
【0058】
図示例では、まずは、初回乾燥パルス操作DXとして、減圧手段4による減圧目標圧力P1までの減圧操作D1の後、復圧手段5による復圧目標圧力P2までの復圧操作(言い換えれば給気操作)D2が行われる。乾燥工程S5(初回乾燥パルス操作DXおよび後続乾燥パルス操作DY)の減圧目標圧力P1は、前処理工程S2(初回真空パルス操作VXおよび後続真空パルス操作VY)の減圧目標圧力P1と同一であるが、場合により異ならせてもよい。また、乾燥工程S5(初回乾燥パルス操作DXおよび後続乾燥パルス操作DY)の復圧目標圧力P2は、前処理工程S2(初回真空パルス操作VXおよび後続真空パルス操作VY)の復圧目標圧力P2と同一であるが、場合により異ならせてもよい。
【0059】
その後、後続乾燥パルス操作DYとして、初回乾燥パルス操作DXと同様に、減圧手段4による減圧目標圧力P1までの減圧操作D3の後、復圧手段5による復圧目標圧力P2までの復圧操作(言い換えれば給気操作)D4が行われる。後続乾燥パルス操作DYにおける減圧目標圧力P1や復圧目標圧力P2は、初回乾燥パルス操作DXにおける減圧目標圧力P1や復圧目標圧力P2と同一で設定するが、場合により、異ならせてもよい。また、後続乾燥パルス操作DYを複数回行う場合、各回の減圧目標圧力P1同士または復圧目標圧力P2同士は、同一でもよいし、異なってもよい。
【0060】
図示例では、初回乾燥パルス操作DXの後、後続乾燥パルス操作DYが5回行われる。そのため、乾燥工程S5の全体としては、乾燥パルス操作が合計6回行われる。いずれにしても、乾燥工程S5では、最終的には、減圧手段4を停止した状態で、復圧手段5による復圧操作(最後の乾燥パルス操作における復圧操作D4)により、滅菌槽3内を大気圧まで復圧して、滅菌運転を終了する。
【0061】
次に、減圧手段4の真空ポンプ2に対する給排水系統について、具体例を説明する。
前述したとおり、減圧手段4は、水封式の真空ポンプ2を備える。この真空ポンプ2の吸気口2aには、滅菌槽3からの真空排気路12が接続される。滅菌槽3からの真空排気路12には、真空弁13および逆止弁14が設けられる。一方、真空ポンプ2の排気口2bには、セパレータタンク17への排出路16が接続される。セパレータタンク17には、上部に排気路18(外部への排気口)が設けられる一方、所定高さに排水路19(外部への排水口)が設けられる。
【0062】
真空ポンプ2は、給水口2cから給水されつつ運転され、吸気口2aから気体を吸引し、水と共に排気口2bから吐出する。真空ポンプ2からの吐出流体は、セパレータタンク17に供給されて気水分離され、気体は排気路18から排出される一方、液体は下部に貯留される。但し、所定水位以上の水は、排水路19から排出される。
【0063】
真空ポンプ2の給水口2cには、セパレータタンク17からの水が循環給水路34を介して供給可能とされると共に、セパレータタンク17以外からの水が外部給水路35を介して供給可能とされる。本実施例では、外部給水路35として、第一設定流量で給水する第一給水路36と、第一設定流量よりも低流量の第二設定流量で給水する第二給水路37とを備える。
【0064】
第一給水路36は、給水源(たとえば水道管)からの水を、真空ポンプ2の給水口2cへ供給する。第一給水路36には、第一封水弁38と第一定流量弁39とが設けられている。第一封水弁38は、開閉を切り替えられる電磁弁である。第一定流量弁39は、二次側(出口側)の流量を所定に維持する弁である。ここでは、第一封水弁38の開放時、第一定流量弁39は、第一設定流量で通水する。
【0065】
第二給水路37は、第一給水路36と同様に、給水源(たとえば水道管)からの水を、真空ポンプ2の給水口2cへ供給する。第二給水路37には、第二封水弁40と第二定流量弁41とが設けられている。第二封水弁40は、開閉を切り替えられる電磁弁である。第二定流量弁41は、二次側(出口側)の流量を所定に維持する弁である。ここでは、第二封水弁40の開放時、第二定流量弁41は、第二設定流量で通水する。
【0066】
図示例では、第一給水路36と第二給水路37とは、上流側において共通管路W1とされており、共通の給水源に接続されている。また、第一給水路36と第二給水路37とは、下流側において共通管路W2とされており、真空ポンプ2の給水口2cに接続されている。つまり、給水源からの外部給水路35は、共通管路W1を介した後、第一給水路36と第二給水路37とに分岐され、それぞれ封水弁38,40および定流量弁39,41を介した後、再び合流して共通管路W2を介して真空ポンプ2の給水口2cに接続される。本実施例では、第一封水弁38と第二封水弁40とは、双方が閉鎖されるか、択一的に開放可能とされ、第二封水弁40を閉じた状態で第一封水弁38を開ければ、真空ポンプ2には第一給水路36を介して第一設定流量で給水され、第一封水弁38を閉じた状態で第二封水弁40を開ければ、真空ポンプ2には第二給水路37を介して第二設定流量で給水される。
【0067】
第一設定流量は、好ましくは、真空ポンプ2の定格封水量とされる。たとえば、5L/minとされる。定格封水量が範囲(たとえば4~6L/min)で示される場合、その範囲内で第一設定流量が設定される(たとえば5L/min)。
【0068】
第二設定流量は、第一設定流量よりも低流量で設定される。第二設定流量は、第一設定流量未満であれば、特に問わないが、後述の作用効果を意図して、通常、第一設定流量の10%以上で設定される。また、典型的には、第二設定流量は、第一設定流量の50%以下とされる。たとえば、第一設定流量が5L/minの場合、第二設定流量が2.5L/minとされる。
【0069】
真空ポンプ2の給水口2cには、第一給水路36や第二給水路37だけでなく、循環給水路34からの水も供給可能とされる。セパレータタンク17の底部からの循環給水路34は、第三封水弁42および逆止弁43を介して、真空ポンプ2の給水口2cに接続される。具体的には、循環給水路34は、その逆止弁43よりも下流において、前記共通管路W2(第一給水路36と第二給水路37との共通管路W2)、または第二定流量弁41よりも下流の第二給水路37、もしくは第一定流量弁39よりも下流の第一給水路36に接続される。これにより、セパレータタンク17内の貯留水を、循環給水路34を介して、真空ポンプ2の給水口2cに供給可能とされる。
【0070】
第一封水弁38、第二封水弁40および第三封水弁42は、前述した制御手段(前記各手段4~8を制御する制御手段)としての制御器に接続される。そして、制御器は、前述した一連の工程による滅菌運転において、滅菌槽3内を減圧する際(言い換えれば真空ポンプ2を作動中)、以下に述べるように、真空ポンプ2への給水をどのように行うかを制御する。
【0071】
本実施例では、制御器は、真空ポンプ2への給水として、外部給水路35からの水を供給するか、それに加えて、循環給水路34からの水を供給するかを、各封水弁38,40,42により切り替える。より具体的には、真空ポンプ2への給水として、第一給水路36からの水を供給するか、第二給水路37からの水と循環給水路34からの水とを供給するかを、各封水弁38,40,42により切り替える。つまり、本実施例では、各封水弁38,40,42は、真空ポンプ2への給水をどのように行うのかの切替手段として機能する。実際の切替制御は、本実施例の場合、以下のとおりである。
【0072】
≪(X)滅菌槽3内から空気を排除する場合≫
滅菌槽3内から吸引排出しようとする流体が主として空気である場合、滅菌槽3内の圧力が設定圧力P4を超えているか否かにより、真空ポンプ2への給水として、セパレータタンク17からの循環水を利用するか否かを切り替えるのがよい。滅菌槽3内から吸引排出しようとする主流体が空気である場合、蒸気の場合と比較して、真空ポンプ2の封水温度を上昇させにくいので、この点を考慮した制御である。滅菌槽3内から吸引排出しようとする主流体が空気である場合として、前処理工程S2における初回真空パルス操作VXの減圧操作V1や、乾燥工程S5における後続乾燥パルス操作DYの減圧操作D3を含めることができる。これら各減圧操作において、真空ポンプ2への給水は、次のように切り替えられる。なお、設定圧力P4は、復圧目標圧力P2と減圧目標圧力P1との間で設定され、通常、その間の中間値よりも低く設定される(絶対圧でP4≦(P2-P1)/2)。
【0073】
(X1) 滅菌槽3内の圧力が設定圧力P4(たとえば20kPaA)を超えていると、
図1において破線矢印で示すように、真空ポンプ2への給水として、第二給水路37からの水と循環給水路34からの水とを供給する。具体的には、圧力センサ32の検出圧力が設定圧力P4を超えていると、第一封水弁38を閉じた状態で、第二封水弁40および第三封水弁42を開けて、第二給水路37からの第二設定流量の水と、循環給水路34からの水とを、真空ポンプ2に供給する。この際、真空ポンプ2の吸込みにより、真空ポンプ2には、第二給水路37と循環給水路34とからのトータルとして、概ね定格封水量の水が供給される。
【0074】
このようにして、真空ポンプ2には、定格封水量よりも低流量の水が第二給水路37から供給されると共に、それでは足りない分を循環給水路34から供給される。真空ポンプ2にて使用後の水は、セパレータタンク17に供給されるが、セパレータタンク17内には所定水位(排水路19の高さ)まで水が貯留されているか、真空ポンプ2の運転開始に伴い早期に貯留される。そのため、真空ポンプ2からの排水(第二給水路37からの水を含む)がセパレータタンク17に供給されると、それに伴い、セパレータタンク17内の貯留水の一部が排水路19から排出される。従って、セパレータタンク17内の貯留水の一部を入れ替えながら、セパレータタンク17内の貯留水が循環給水路34を介して、真空ポンプ2へ供給されることになる。
【0075】
(X2) 滅菌槽3内の圧力が設定圧力P4(たとえば20kPaA)以下になると、
図1において実線矢印で示すように、真空ポンプ2への給水として、第一給水路36からの水のみを供給する。具体的には、圧力センサ32の検出圧力が設定圧力P4以下になると、第二封水弁40および第三封水弁42を閉じる一方、第一封水弁38を開けて、第一給水路36から第一設定流量の水を、真空ポンプ2に供給する。この際、前述したとおり、本実施例では、真空ポンプ2には、第一給水路36により、定格封水量の水が供給される。
【0076】
なお、真空ポンプ2にて使用後の水は、セパレータタンク17に供給されるが、第三封水弁42は閉じられているので、真空ポンプ2へは再供給されない。また、セパレータタンク17において、所定水位以上の水は、排水路19から排出される。従って、真空ポンプ2への給水は、掛け捨てとなる。
【0077】
上記(X1)および(X2)から明らかなとおり、滅菌槽3内から吸引排出しようとする主流体が空気である場合、滅菌槽3内の圧力が設定圧力P4を超えていると、真空ポンプ2への給水として、循環給水路34からの水も利用(言い換えれば真空ポンプ2からの排水を再利用)することで、節水を図ることができる。その際、第二給水路37からの給水も併用することで、水温の上昇を抑えて、滅菌槽3内の減圧を円滑に図ることができる。一方、滅菌槽3内の圧力が設定圧力P4以下になると、真空ポンプ2への給水として、第一給水路36からの水だけを利用することで、比較的低温の水で、滅菌槽3内の減圧を迅速で確実に図ることができる。また、比較的高真空までの減圧が可能となる。
【0078】
≪(Y)滅菌槽内から蒸気を排除する場合≫
滅菌槽3内から吸引排出しようとする流体が主として蒸気である場合、滅菌槽3の圧力に関わらず、真空ポンプ2への給水として、第一給水路36からの水を利用するのがよい。滅菌槽3内から吸引排出しようとする主流体が蒸気である場合、空気の場合と比較して、真空ポンプ2の封水温度を上昇させやすいので、この点を考慮した制御である。滅菌槽3内から吸引排出しようとする主流体が蒸気である場合として、前処理工程S2における後続真空パルス操作VYの減圧操作V3や、乾燥工程S5における初回乾燥パルス操作DXの減圧操作D1を含めることができる。これら各減圧操作において、真空ポンプ2への給水は、次のようになされる。
【0079】
すなわち、滅菌槽3内の圧力に関わらず、
図1において実線矢印で示すように、真空ポンプ2への給水として、第一給水路36からの水のみを供給する。具体的には、第二封水弁40および第三封水弁42を閉じた状態で、第一封水弁38を開けて、第一給水路36から第一設定流量の水を、真空ポンプ2に供給する。この際、前述したとおり、本実施例では、真空ポンプ2には、第一給水路36により、定格封水量の水が供給される。この場合、真空ポンプ2の給水は、掛け捨てとなる。
【0080】
このように、滅菌槽3内から吸引排出しようとする主流体が蒸気である場合、真空ポンプ2への給水として、外部給水路35からの水だけを利用することで、比較的低温の水で、滅菌槽3内の減圧を迅速で確実に図ることができる。また、比較的高真空までの減圧が可能となる。
【0081】
図2の例では、前処理工程S2では、初回真空パルス操作VXの後、2回の後続真空パルス操作VYがなされる一方、乾燥工程S5では、初回乾燥パルス操作DXの後、5回の後続乾燥パルス操作DYがなされる。また、給水系統の切替圧力としての前記設定圧力P4が20kPaAであり、減圧目標圧力P1が10~5kPaA、復圧目標圧力P2が大気圧付近(約100kPaA)であるとする。そして、これら圧力を考慮して、復圧目標圧力P2から減圧目標圧力P1までの各減圧操作の減圧時間の内、復圧目標圧力P2から設定圧力P4までの減圧に8割の時間を要し、設定圧力P4から減圧目標圧力P1までの減圧に2割の時間を要するとする。また、第一設定流量が定格給水量Qであり、第二設定流量がその半分のQ/2に設定されているとする。この場合、前処理工程S2と乾燥工程S5とのトータルとして、前記Xの制御が6回(=初回真空パルス操作VXが1回+後続乾燥パルス操作DYが5回)なされ、前記Yの制御が3回(=後続真空パルス操作VYが2回+初回乾燥パルス操作DXが1回)なされるので、次式により、約27%の節水運転が可能となる。
【0082】
[数1] ((0.8×Q/2+0.2×Q)×6+Q×3))÷9=0.73Q
次に、本発明の滅菌装置1の実施例2について説明する。この実施例2も、基本的には前記実施例1と同様であるから、ここでは両者の異なる点を中心に説明し、同様の箇所については説明を省略する。
前記実施例1では、滅菌槽3内から空気を排除する場合、滅菌槽3内の圧力が設定圧力P4を超えていると、第二給水路37と循環給水路34とから真空ポンプ2に給水し、滅菌槽3内の圧力が設定圧力P4以下になると、第一給水路36から真空ポンプ2に給水した(前記X)。つまり、給水系統を切り替えるタイミングは、滅菌槽3内の圧力が設定圧力P4以下であるか否かとして、一定としたが、本実施例2では、真空ポンプ2への給水温度に基づき切り替える。
この場合、真空ポンプ2への給水の温度を検出可能に、第一封水温度センサ44が設けられる。第一封水温度センサ44は、真空ポンプ2の給水口2cに供給される水温を検出可能に設けられる。図示例の場合、第二給水路37と循環給水路34との合流部(またはそれよりも下流)に設けられる。そして、この第一封水温度センサ44も制御器に接続され、制御器は、滅菌槽3内から空気を排除中(前記Xの制御中)、第一封水温度センサ44の検出温度に基づき、給水系統を切り替える。なお、制御器は、予め登録された所定の演算式(またはテーブル)に基づき、温度から飽和蒸気圧力への換算も可能とされる。
本実施例2では、前記実施例1における給水系統の切替圧力としての前記設定圧力P4が、第一封水温度センサ44の検出温度に所定値αを加算した温度の飽和蒸気圧力とされる。そして、前記Xの制御は、次のように行われる。
滅菌槽3内の圧力が「封水温度+所定値α」の飽和蒸気圧力を超えていると、真空ポンプ2への給水として、第二給水路37からの水と循環給水路34からの水とを供給する。具体的には、圧力センサ32の検出圧力が、第一封水温度センサ44の検出温度に所定値αを加算した温度の飽和蒸気圧力を超えていると、第一封水弁38を閉じた状態で、第二封水弁40および第三封水弁42を開けて、第二給水路37からの第二設定流量の水と、循環給水路34からの水とを、真空ポンプ2に供給する。
滅菌槽3内の圧力が「封水温度+所定値α」の飽和蒸気圧力以下になると、真空ポンプ2への給水として、第一給水路36からの水のみを供給する。具体的には、圧力センサ32の検出圧力が、第一封水温度センサ44の検出温度に所定値αを加算した温度の飽和蒸気圧力以下になると、第二封水弁40および第三封水弁42を閉じる一方、第一封水弁38を開けて、第一給水路36から第一設定流量の水を、真空ポンプ2に供給する。
前記所定値αは、真空ポンプ2の運転による封水の温度上昇幅に基づき設定される。つまり、真空ポンプ2に所定温度の封水を供給すると、真空ポンプ2による発熱量が封水を昇温させて排出されるが、その昇温幅を考慮して前記所定値αが設定される。前記所定値αは、通常3~8℃の範囲で設定され、本実施例では、たとえば5℃である。
この場合、第一封水温度センサ44の検出温度が55℃であると、その封水温度55℃に所定値5℃を加算した温度60℃の飽和蒸気圧力は約20kPaAなので、圧力センサ32の検出圧力が20kPaA以下になると、第二封水弁40および第三封水弁42を閉じる一方、第一封水弁38を開けて、掛け捨て運転に切り替えることになる。このようにして、前記Xの制御において、実際の封水温度を考慮して制御することで、より確実で安定した制御が可能となる。一方、前記Yの制御など、その他の構成は、前記実施例1と同様のため、説明を省略する。