(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022091046
(43)【公開日】2022-06-20
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
B60G 11/10 20060101AFI20220613BHJP
B60G 11/08 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B60G11/10
B60G11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020203743
(22)【出願日】2020-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯野 信次
(72)【発明者】
【氏名】中山 壮一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA74
3D301AA79
3D301AA89
3D301CA02
3D301DA03
3D301DA89
3D301DA95
3D301DA96
3D301DB10
3D301DB20
(57)【要約】
【課題】設置対象に対して形状を調整することができる懸架装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る懸架装置は、帯状に延びる板ばねと、板ばねの一端部を支持する第1アームと、板ばねの他端部を支持する第2アームと、第1及び第2アームを回転自在に連結する連結部材と、連結部材に対する第1アームの相対的な位置関係を調整可能な第1調整部と、連結部材に対する第2アームの相対的な位置関係を調整可能な第2調整部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に延びる板ばねと、
前記板ばねの一端部を支持する第1アームと、
前記板ばねの他端部を支持する第2アームと、
前記第1及び第2アームを回転自在に連結する連結部材と、
前記連結部材に対する前記第1アームの相対的な位置関係を調整可能な第1調整部と、
前記連結部材に対する前記第2アームの相対的な位置関係を調整可能な第2調整部と、
を備えることを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
前記第1調整部は、前記連結部材に対する前記第1アームの傾斜を調整し、
前記第2調整部は、前記連結部材に対する前記第2アームの傾斜を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記第1及び第2調整部による前記板ばねの支持位置は、前記第1アームと前記連結部材との第1の連結位置、及び、前記第2アームと前記連結部材との第2の連結位置の間に位置する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記第1調整部は、
前記連結部材と連結する第1の本体部と、
前記第1の本体部及び前記第1アームの位置関係を調整する第1の調整部材と、
を有し、
前記第2調整部は、
前記連結部材と連結する第2の本体部と、
前記第2の本体部及び前記第2アームの位置関係を調整する第2の調整部材と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の懸架装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の本体部には、前記板ばねを挿通する貫通孔がそれぞれ形成される、
ことを特徴とする請求項4に記載の懸架装置。
【請求項6】
前記第1及び/又は第2調整部は、
第1本体部と、
第2本体部と、
前記第1および第2本体部に対して着脱可能に接続する接続部と、
を有し、
前記第1及び第2の本体部、並びに前記接続部によって、前記板ばねを挿通する貫通孔が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項7】
前記板ばねは、繊維強化プラスチックからなる、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に設けられ、路面の凹凸による振動が車輪を経て車体に伝わらないようにする緩衝機能を有し、車両の乗り心地や操縦の安定性などを向上させる懸架装置が知られている。懸架装置のうち、リーフスプリング式の懸架装置は、板ばねを用いて構成される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
板ばねは、車輪を支持するアームと、車体を支持するメンバーとに取り付けられる。具体的に、板ばねは、右側の車輪を支持する右アーム、左側の車輪を支持する左アーム、車体を支持するメンバーに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の大きさや形状によって、懸架装置の大きさや形状が変わる。このため、車両の大きさや形状の差異に応じて形状を調整できる懸架装置が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、設置対象に対して形状を調整することができる懸架装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る懸架装置は、帯状に延びる板ばねと、前記板ばねの一端部を支持する第1アームと、前記板ばねの他端部を支持する第2アームと、前記第1及び第2アームを回転自在に連結する連結部材と、前記連結部材に対する前記第1アームの相対的な位置関係を調整可能な第1調整部と、前記連結部材に対する前記第2アームの相対的な位置関係を調整可能な第2調整部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る懸架装置は、上記の発明において、前記第1調整部は、前記連結部材に対する前記第1アームの傾斜を調整し、前記第2調整部は、前記連結部材に対する前記第2アームの傾斜を調整する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る懸架装置は、上記の発明において、前記第1及び第2調整部による前記板ばねの支持位置は、前記第1アームと前記連結部材との第1の連結位置、及び、前記第2アームと前記連結部材との第2の連結位置の間に位置する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る懸架装置は、上記の発明において、前記第1調整部は、前記連結部材と連結する第1の本体部と、前記第1の本体部及び前記第1アームの位置関係を調整する第1の調整部材と、を有し、前記第2調整部は、前記連結部材と連結する第2の本体部と、前記第2の本体部及び前記第2アームの位置関係を調整する第2の調整部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る懸架装置は、上記の発明において、前記第1及び第2の本体部には、前記板ばねを挿通する貫通孔がそれぞれ形成される、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る懸架装置は、上記の発明において、前記第1及び/又は第2調整部は、第1本体部と、第2本体部と、前記第1および第2本体部に対して着脱可能に接続する接続部と、を有し、前記第1及び第2の本体部、並びに前記接続部によって、前記板ばねを挿通する貫通孔が形成される、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る懸架装置は、上記の発明において、前記板ばねは、繊維強化プラスチックからなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設置対象に対して形状を調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る懸架装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態に係る懸架装置の構成を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施の形態に係る懸架装置の要部の構成を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施の形態に係る懸架装置の要部の構成を模式的に示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す懸架装置の形状を調整した一例を示す斜視図(その1)である。
【
図6】
図6は、
図5に示す懸架装置の構成を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す懸架装置の要部の構成を示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す懸架装置の形状を調整した一例を示す斜視図(その2)である。
【
図9】
図9は、
図8に示す懸架装置の構成を示す平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の変形例に係る懸架装置の要部の構成を模式的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る懸架装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の一実施の形態に係る懸架装置の構成を模式的に示す平面図である。懸架装置1は、例えば車両に設けられ、右側の車輪101、左側の車輪102、及び車体(ボディ)の間に介在して、車輪から伝わる振動が車体に伝達されることを抑制する。
【0018】
懸架装置1は、ナックル103を介して右側の車輪101を支持する右アーム11と、ナックル104を介して左側の車輪102を支持する左アーム12と、車体を支持するメンバー13と、車輪101、102からの振動に応じて弾性変形する板ばね14と、第1調整部15と、第2調整部16とを備える。懸架装置1は、メンバー13を経て車体に取り付けられ、路面の凹凸に応じて車輪から伝達される振動を吸収する。車輪は、ナックルやディスクロータ等を経てアームに支持される。なお、
図1において、X方向は車体に取り付けられた際の車両の左右方向であり、懸架装置1の長手方向に相当し、Y方向は車両の前後方向に相当し、Z方向は車両の上下方向に相当する。
【0019】
右アーム11は、本体部11aと、本体部11aに支持され、板ばね14の一端を把持する第1リンク11bとを有する。
【0020】
第1リンク11bは、板ばね14の一端を把持する第1把持部111と、本体部11aと第1把持部111とを連結する第1連結部112とを有する。第1把持部111は、第1連結部112に、Y方向と平行に延びる軸112aのまわりに回転可能に支持される。軸112aは、第1把持部111を貫通して、第1連結部112の一端に支持される。第1連結部112は、本体部11aに、Y方向と平行な軸112bのまわりに回転可能に支持される。軸112bは、第1連結部112を貫通して、本体部11aに支持される。軸112a、112bは、例えば、ピンやボールジョイントによって構成される。
【0021】
左アーム12は、本体部12aと、本体部12aに支持され、板ばね14の他端を把持する第2リンク12bとを有する。
【0022】
第2リンク12bは、板ばね14の他端を把持する第2把持部121と、本体部12aと第2把持部121とを連結する第2連結部122とを有する。第2把持部121は、第2連結部122に、Y方向と平行に延びる軸122aのまわりに回転可能に支持される。軸122aは、第2把持部121を貫通して、第2連結部122の一端に支持される。第2連結部122は、本体部12aに、Y方向と平行な軸122bのまわりに回転可能に支持される。軸122bは、第2連結部122を貫通して、本体部12aに支持される。軸122a、122bは、例えば、ピンやボールジョイントによって構成される。
【0023】
ここで、第1リンク11b及び第2リンク12bは、板ばね14の端部をそれぞれ把持する。本明細書では、部材面に圧接して、この部材の少なくとも垂直方向(ここではZ方向)への動作を拘束して保持することを面支持という。この面支持では、部材を取り囲んで水平方向(ここではY方向)への動作、回転動作をさらに拘束して保持してもよい。第1把持部111及び第2把持部121は、面支持によって、板ばね14の端部をそれぞれ保持する。
面支持に対し、突起等によって点や線で支持することを点支持という。点支持では、把持部に突起が設けられ、突起を支点として板ばね14が回転しうる程度の面積で板ばね14を支持する。第1把持部111及び第2把持部121は、点支持によって板ばね14を把持してもよい。
【0024】
メンバー13は、車体を支持し、車体と、車輪101、102、右アーム11及び左アーム12との間に介在する。メンバー13は、右アーム11を支持するアーム支持部13aと、左アーム12を支持するアーム支持部13bと、X方向(車体の左右方向)に延び、右アーム11及び左アーム12に接続する本体部13cとを有する。アーム支持部13a、13bは、本体部13cが延びる方向(X方向)に対して垂直な方向に延びる。
【0025】
アーム支持部13aは、Y方向かつ互いに反対方向に延びる軸部131、132を有する。軸部131、132は、右アーム11を、Y方向に延びる回転軸Y11、Y12のまわりに回転可能に支持する。回転軸Y11、Y12は、延伸方向の延長線上で一致する。
また、アーム支持部13bは、Y方向かつ互いに反対方向に延びる軸部133、134を有する。軸部133、134は、左アーム12を、Y方向に延びる回転軸Y21、Y22のまわりに回転可能に支持する。回転軸Y21、Y22は、延伸方向の延長線上で一致する。
ここで、メンバー13は、右アーム11及び左アーム12を回転自在に連結する連結部材に相当する。なお、メンバー13は、車体と一体化されたものであってもよい。メンバー13が車体と一体化されている場合は、車体が右アーム11及び左アーム12と連結する連結部材の機能を担う。
【0026】
板ばね14は、帯状をなしてX方向に延びる。板ばね14は、例えば、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)や、金属、樹脂を用いて形成される。板ばねは、一枚の板材からなるものであってもよいし、複数枚の板材を積層してなるものであってもよい。なお、板ばね14の形状や弾性力等を設計するうえで、FRPは、金属や樹脂と比して、その設計の自由度が高い。
【0027】
続いて、第1調整部15及び第2調整部16について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施の形態に係る懸架装置の要部の構成を模式的に示す平面図である。
図4は、本発明の一実施の形態に係る懸架装置の要部の構成を模式的に示す分解斜視図である。なお、
図3及び
図4では、第1調整部15の構成について図示しているが、第2調整部16についても第1調整部15と同様の構成を有している。
【0028】
第1調整部15は、U字状をなす本体部151と、本体部151及び右アーム11(本体部11a)の相対的な位置関係を固定するピン152とを有する。ピン152は、本体部151を挟み込むように二つ設けられ、Y方向に対向する。
本体部151の一端には、一方のピン152が挿通される複数の貫通孔153が形成される。また、本体部151の他端には、他方のピン152が挿通される複数の貫通孔154が形成される。貫通孔153は、回転軸Y11の周囲に設けられ、貫通孔154は、回転軸Y12の周囲に設けられる。
さらに、本体部151には、軸部131が挿通される貫通孔155aと、軸部132が挿通される貫通孔155bとが形成されるとともに、板ばね14が挿通される貫通孔156が形成される。
【0029】
また、本体部11aには、ピン152が挿通される貫通孔113が形成される。この貫通孔113は、貫通孔153、154の形成位置に対応させて複数形成される。さらに、本体部11aには、軸部131が挿通される貫通孔114aと、軸部132が挿通される貫通孔114bとが形成される。
【0030】
第2調整部16は、U字状をなす本体部161と、本体部161及び左アーム12(本体部12a)の相対的な位置関係を固定するピン162とを有する。ピン162は、本体部161を挟み込むように二つ設けられ、Y方向に対向する。
本体部161の一端には、一方のピン162が挿通される複数の貫通孔が形成される。また、本体部161の他端には、他方のピン162が挿通される複数の貫通孔が形成される。これら貫通孔は、回転軸Y21、回転軸Y22の周囲にそれぞれ設けられる。さらに、本体部161には、軸部133が挿通される貫通孔と、軸部134が挿通される貫通孔とが形成されるとともに、板ばね14が挿通される貫通孔が形成される。これらの貫通孔は、上述した貫通孔155a、155b、156と同様の役割をもつ。
第1調整部15及び第2調整部16による板ばね14の支持位置は、例えば第1調整部15では貫通孔156となり、右アーム11とメンバー13との連結位置(第1の連結位置)、及び、左アーム12とメンバー13との連結位置(第2の連結位置)の間に位置する。
【0031】
また、本体部12aには、ピン162が挿通される貫通孔が形成される。この貫通孔は、貫通孔153と同様の役割をもち、第2調整部16の貫通孔の形成位置に対応させて複数形成される。
さらに、本体部12aには、軸部133が挿通される貫通孔と、軸部134が挿通される貫通孔とが形成される。これらの貫通孔は、貫通孔114a、114bと同様の役割をもつ。
【0032】
懸架装置1では、例えば、本体部11aの貫通孔113及び第1調整部15の貫通孔153にピン152を挿通することによって、右アーム11及び第1調整部15の相対的な位置関係が固定される。この際、第1調整部15におけるピン152の挿通位置によって、メンバー13に対する右アーム11の傾斜が調整される。ここで調整される「傾斜」は、メンバー13の長手方向(ここではX方向)と、右アーム11の長手方向とがなす角度に相当する。このように、右アーム11及び第1調整部15の相対的な位置関係を、ピン152の挿通位置によって調整することができる。同様にして、左アーム12及び第2調整部16の相対的な位置関係も、ピン162の挿通位置によって調整することができる。
【0033】
図5は、
図1に示す懸架装置の形状を調整した一例を示す斜視図(その1)である。
図6は、
図5に示す懸架装置の構成を示す平面図である。
図7は、
図5に示す懸架装置の要部の構成を示す平面図である。
【0034】
図5~
図7に示す懸架装置1は、ピン152、162を挿通する貫通孔(例えば貫通孔113、153)を、
図1、
図2に示す懸架装置1とは異なる位置の貫通孔に変更している。このため、車輪101の中心を通過し、かつX方向と平行に延びる軸Qと、メンバー13の本体部13cとの間の距離が、
図2に示す懸架装置1の距離d
1と、
図6に示す懸架装置1の距離d
2とで異なる(d
2<d
1)。
【0035】
図8は、
図1に示す懸架装置の形状を調整した一例を示す斜視図(その2)である。
図9は、
図8に示す懸架装置の構成を示す平面図である。
図10は、
図8に示す懸架装置の要部の構成を示す平面図である。
【0036】
図8~
図10に示す懸架装置1は、ピン152、162を挿通する貫通孔(例えば貫通孔113、153)を、
図1、
図2、
図5、
図6に示す懸架装置1とは異なる位置の貫通孔に変更している。このため、車輪101の中心を通過し、かつX方向と平行に延びる軸Qと、メンバー13の本体部13cとの間の距離が、
図2に示す懸架装置1の距離d
1、及び、
図6に示す懸架装置1の距離d
2と、
図9に示す懸架装置1の距離d
3とで異なる(d
2<d
1<d
3)。
【0037】
以上説明した実施の形態では、懸架装置1において、ピン152、162の貫通孔への挿通位置を変えることで、車輪の中心と、メンバー13との間の距離を変えることができる。車輪の中心とメンバー13との距離は、車両の高さ方向の距離に相当する。このため、懸架装置1は、車両の種別による車高の差異に応じて調整可能と言える。本実施の形態に係る懸架装置1によれば、設置対象に対して形状を調整して対応することができる。
【0038】
また、懸架装置1では、アームの変位によって板ばね14が変形した場合であっても、メンバー13はその変形の影響を受けずに変形しない。すなわち、懸架装置1において、アームから板ばね14に振動が伝わった場合、板ばね14がその振動を吸収するとともに、メンバー13にはその振動が伝達されない。この際、右アーム11及び左アーム12は、メンバー13によって回転可能に支持されており、変動による荷重が回転力に変換されるため、アームの振動がメンバー13に伝達されることが抑制される。
【0039】
さらに、実施の形態によれば、例えば、板ばね14が、第1調整部15の本体部151に形成される貫通孔156に挿通され、該貫通孔156の内壁によって囲繞されるため、板ばね14の変形時に、他の部材との干渉が抑制される。
【0040】
(変形例)
次に、実施の形態の変形例について、
図11を参照して説明する。
図11は、本発明の変形例に係る懸架装置の要部の構成を模式的に示す分解斜視図である。変形例に係る懸架装置は、上述した懸架装置1の第1調整部15に代えて第1調整部15Aを備える。そのほかの構成は懸架装置1と同様であるため、説明を省略する。なお、第2調整部16の構成は、実施の形態と同様の構成であってもよいし、第1調整部15Aと同等の構成であってもよい。
【0041】
第1調整部15Aは、U字状をなして右アーム11に連結する。第1調整部15Aは、第1本体部157と、第2本体部158と、第1本体部157及び第2本体部158を接続する接続部159と、当該第1調整部15A及び右アーム11(本体部11a)の相対的な位置関係を固定するピン152とを有する。ピン152は、当該第1調整部15Aを挟み込むように二つ設けられ、Y方向に対向する。
第1本体部157の一端には、一方のピン152が挿通される複数の貫通孔153が形成される。また、第2本体部158の他端には、他方のピン152が挿通される複数の貫通孔154が形成される。貫通孔153は、回転軸Y11の周囲に設けられ、貫通孔154は、回転軸Y12の周囲に設けられる。
さらに、第1本体部157には、軸部131が挿通される貫通孔155aが形成される。また、第2本体部158には、軸部132が挿通される貫通孔155bが形成される。
【0042】
接続部159は、第1本体部157と第2本体部158との間に設けられ、両者を接続する第1部材1591及び第2部材1592を有する。第1部材1591及び第2部材1592は、それぞれ、ねじ1593を介して各本体部にそれぞれ固定される。第1本体部157、第2本体部158及び接続部159によって、板ばね14が挿通される貫通孔160が形成される。
【0043】
第1調整部15Aは、ねじ1593によって、第1本体部157及び第2本体部158と、接続部159とを脱着することができるため、貫通孔160への板ばね14の挿通を容易に行うことができる。
【0044】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0045】
なお、上述した実施の形態では、ピン152、162によってアームに対する調整部の位置関係を固定する例について説明したが、位置関係の固定ができればピン以外の構成も適用可能である。ピン以外の構成としては、例えば、スプラインやウォームギアが挙げられる。これらは調整部材に相当する。スプラインを使用する場合は、貫通孔に歯部を設け、スプライン軸を回転させることによって相対的な位置関係を調整する。また、ウォームギアを使用する場合は、アーム及び調整部に対し、ウォームとウォームホイールを設けて相対的な位置関係を調整する。
【0046】
また、上述した実施の形態において、アームにおける板ばねと接触する部分(把持部)にゴム等の緩衝部材を配設し、該緩衝部材を介して板ばねを支持するようにしてもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態では、各アーム及び各調整部によって、計4箇所で板ばねを支持する構成について説明したが、5箇所以上の複数の箇所において板ばねを支持する構成としてもよい。
【0048】
また、上述した実施の形態に係る懸架装置は、コイルばねを用いた懸架装置等の他の懸架装置と組み合わせて車両に設けてもよい。
【0049】
以上説明したように、本発明に係る懸架装置は、設置対象に対して形状を調整するのに好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 懸架装置
11 右アーム
11a、12a、13c、151、161 本体部
11b 第1リンク
12 左アーム
12b 第2リンク
13 メンバー
13a、13b アーム支持部
14 板ばね
15、15A 第1調整部
16 第2調整部
101、102 車輪
103、104 ナックル
131、132 軸部
152、162 ピン
153、154、155a、155b、156 貫通孔
157 第1本体部
158 第2本体部
159 接続部